だが、影の怪物は中々倒れなかった。
溶けた『雪達磨<スノーマン>』の様になっても、泣き叫び続けている。
一向に泣き疲れる様子は無い。
途方も無い活動力だ。
先に参ったのは、執行者の方だった。

 (な、何と言う奴……。
  しかし、時間は稼げた筈……)

1人が倒れると同時に、直ぐ全員が撤退する。
体力と気力に余裕のある者が、倒れた者を回収。
残された影の怪物は暫く泣いていたが、徐々に復元して完全復活すると、泣き止んで歩き始める。

 「ダーァダーァウ、マァーマァーウ。
  パァ、パァ、ムァ、ムァ」

相変わらず、不気味な声で父母を呼びながら……。
応援に駆け付けた執行者の処理課と外対課の者は、S隊の報告から遠距離攻撃を試みた。
初動対応係と治安維持部による住民の避難は、既に完了している。
協和会への突入作戦は遺憾ながら中止。
この正体不明の怪物を全力で始末するのが先と決まった。
黒い影の怪物、二十体余りは、どこへ向かおうとしているのか?
怪物の様子を観察していた、処理課と外対課の混成部隊は、テレパシーで話し合う。

 (怪物共は、どこへ行こうとしてるんだ?)

 (特に目的は無い様です。
  怪物は常に、何れかの個体が目に見える範囲で、行動しています。
  部隊を編成していると言うよりは、誰も居ない所で独りは嫌だって感じでしょうか……)

 (そりゃ嫌だ。
  俺だって嫌だ)

 (個々の動きに目的や統率感は無く、何と無く屯っているに過ぎないみたいです)