マトラが退室しようとした所、1人のシスターが小走りで駆け寄った。

 「マザー、この子達が……」

彼女の後には、若いシスターが2人並んでいる。

 「分かった。
  こっちに来なさい」

マトラは若い2人のシスターを預かると、地下の別室に案内する。

 「『出来て』しまったのね?」

彼女は打って変わって優しい声で、2人のシスターに問い掛けた。
2人は俯いて無言で頷く。

 「大丈夫、ここで『処理』するから。
  痛みは無いし、勿論、体に悪い影響が残らない様にする」

そう言うとマトラは1人のシスターを衝立の向こうに誘い、もう1人は待機させた。
だが、彼女は人間の体の仕組みに、然して詳しい訳では無い。
内臓の位置や、大凡の機能は把握していても、その生理に就いて十分な知識は持っていない。
取り敢えず、外面に問題が無い様にする事しか出来ないが、そんな事は微塵も気にしない。

 「ここで横になって、呼吸を落ち着けて、楽にして」

彼女はシスターをベッドに寝かせると、額を軽く撫で、奇怪な魔法で眠りに落とす。
そして下腹部を撫でると、魔力の手を子宮に沈め、臍の緒を切って胎児を掴み上げた。
手の平に収まる程度の大きさしか無い子を見詰め、マトラは満足気に微笑む。
それから魔力で作った幾重もの黒い膜で胎児を包み、自らの体内に収めた。