フェレトリは執拗にジャヴァニに同意を求めた。

 「今ここで始末した方が良くはないか?
  どうにも嫌な予感がしてならぬ」

 「私達は『協和会』の者として、この場に居ます。
  迂闊な行動は取れません。
  どうやって、これだけの人に気付かれず、始末すると言うのですか?」

 「我が下僕を使う。
  協和会を敵視する、不埒者の仕業と言う事にすれば良かろう」

 「下手な工作は魔導師会に見破られてしまいます。
  この『計画』が失敗したら、後が無くなると申し上げた筈」

反論するジャヴァニの口調が徐々に刺々しくなる。
それに応じて、フェレトリの口調も挑発的な物に変じた。

 「後が無くなる等と大袈裟な。
  この様な迫々(こせこせ)した計画が挫けた所で、何の問題があると言うのか?」

フェレトリはジャヴァニとは違い、この計画は遊びの様な物だと思っていた。
強大な力を持っているが故に、一々人心を掌握して撹乱を狙う真似が、迂遠に見えるのだ。
もし失敗しても、圧倒的な力で叩き潰せば良い。
マトラも同じ考えだろうと彼女は理解している。
小細工が必要になるのはジャヴァニが「弱者」だからと、フェレトリは軽蔑していた。

 「マスターノートに逆らうな」

ジャヴァニは今まで他人に見せた事が無い、鬼気迫る表情と、低く重々しい声で、
フェレトリに忠告する。
何事かとフェレトリは目を見開き、硬直した。

 「……その必死さに免じて、見過ごしてやろう」

彼女は気圧された事を覚られない様に、強がりの言葉を吐いて物見を決め込む。