沈黙して険しい顔をしているジラに、クァイーダは謝罪する。

 「……御免なさい」

 「何で謝るんです?
  何を謝る事がありますか?
  何か『私に』謝らなければならない事があるんですか?」

ジラは酷く不機嫌で、苛立った口調でクァイーダを責めた。
親衛隊の先輩後輩と言う間柄を弁えない、無礼な振る舞いと承知で、敢えて怒りを露にしていた。
クァイーダは静かに弁明する。

 「シャンリーの事……。
  私なら彼女を止められたかも知れない。
  ……止めていたとしても、止められなかったかも知れないんだけど」

 「でも、シャンリー班長が自分で決めた事なんでしょう?
  クァイーダさんはシャンリー班長とは、私より長い付き合いで、だから……」

全てを理解して、シャンリーの行動を止めなかったのではないのかと、ジラは言いたかった。
それならば、謝る必要は無い。
気分の悪い思いをさせたと言う事で謝っているなら、それは筋違いだと。
所が、クァイーダは意外な言葉を口にする。

 「私は彼女の友人として、十分な役目を果たせなかったかも知れない。
  シャンリーは外道魔法使いのマキリニテアトーに頼るより、自分が予知魔法使いになった方が、
  確実だって言ってた。
  彼の機嫌を伺って、気紛れに振り回される事も無くなるって。
  私は当然、それを上に報告した……けど、回答は無かった……。
  肯定も否定もされなかったと言う事は、『関知しない』と言う事。
  私は私の判断で、彼女を止めなかった。
  止めても良かったのに、そうしなかった」

今更そんな懺悔をされても困ると、ジラは首を横に振る。

 「私に言われても……」

 「御免なさい、どうしても告白せずには居られなかった」

クァイーダは俯いて黙り込む。
シャンリーが自殺した謎は解けたが、ジラの心には大きな痼が残る事となった。