超高速で降下してくるアルマクリスが見えます。加速によって赤熱した矛が。
……どう、対応しましょうか。
防御は困難。躱して包囲するように動いても……彼にとって上空が逃げ場になり得る以上、確かに「埒が明かない」。

「『天』」

だから私は右手のショートソードを、弓を引き絞るように振り被る。
そしてアルマクリスを迎え撃つ形で突きを放った。

「『げ』……」

より正確には……彼が構える矛、その切っ先に剣の腹を当て。

「き……って」

肘と膝の脱力で落下の勢いを殺し……矛先を地面の方向へといなす。

「おいおいマジかよ。半端ねえな。思わず素に戻っちまうぜ」

……そうする事で、一切の破壊を伴わずに、彼は再びその両足を地面に着けた。

「……あなたの、一番派手な技は、確かに見せてもらいました。
 次は……一番練習した技で向かってくる事を……お勧めします」

そう口走ってから……私はまた、顔が明るみを帯びるのを感じました。
ち、違うんです。私、舞い上がってる訳じゃなくて……ええと……
こういう時、どんな風に振る舞えばいいのか分からないから……憧れが、出てきちゃうんです。

……私の言葉に、アルマクリスは一瞬、面食らったように目を見開く。

「おいおいおい、なんだそりゃ!確かにさっきのはわりと驚いたけどよ!」

けれどすぐに……その表情は、業火のような敵意を宿したものに変わります。

「でもぶっちゃけお前、ただガードしただけじゃん!なに上から目線かましてくれてんの!?
 ……いや、でもそれは舐められちまった俺が悪いか!
 分かった分かった!次は二度とそんな口が利けねーようにしてやるよ!」

瞬間、周囲に響く爆音。
見れば私とアルマクリスを取り囲むように、爆炎の柱が地面から迸っていました。
……先ほどから矛先が地面に刺されたままだった事に、気を配るべきでした。

「んじゃ、サクッと終わらせっか!」

……ジャン様達が、あの火柱を取り除くまでの間に、私を仕留める、と?
私は武人ではありませんから、そのように低く見られたって構いませんが……。
彼は指環の勇者一行を相手に、互角の立ち回りをしてみせた。
ならば今度も……私を倒せると、確信した上でああ言っている、はず。
だけど……一体どうやって?

縦横無尽に迫り来る矛は鋭く力強い。
でも眼で追えている。全ていなし、逸らし、弾いている。その上で余裕もある。
油断するつもりはありませんが……私が負けるとも、思えない。
得体の知れない自信に不安を覚えながらも、私は剣を振るう。
殺すのは……したくない。だから急所を外して浅い傷を負わせていく。
出血で動けなくなってくれれば……そんな事を、思っていたら。
不意にアルマクリスが膝を深く曲げた。
いや……フェイントだ。飛び込んでくる訳がない。
だって私はまさに今、剣を突き出している最中で。
そんな事をすれば自分から刃に刺さりに来る事に、