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【王道ファンタジー】ホワイトクロス騎士団【TRPG】 [無断転載禁止]©2ch.net
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0001 ◆9tRgsDTMos5G
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2017/04/16(日) 01:27:43.91ID:07SdzMkW
ジャンル:王道ファンタジー・組織もの
コンセプト:宗教色の強い西洋風ファンタジー世界のとある騎士団の物語
期間(目安):定めなし
GM:なし(NPCは基本的に全員で共有とする。必要に応じて専用NPCの作成も可)
決定リール・変換受け:あり
○日ルール:一週間
版権・越境:なし
敵役参加:あり(基本的にGMが出すが、必要に応じて)
名無し参加:なし
避難所の有無:なし


名前:
年齢:
性別:
身長:
体重:
スリーサイズ:(大体の体格でも可)
種族:
職業:
性格:
能力:
武器:
防具:
所持品:
容姿の特徴・風貌:
簡単なキャラ解説:
0130創る名無しに見る名無し
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2017/07/22(土) 23:55:10.26ID:IkwMPoeu
「手掛かりがなければシュヴィヤール領があるヴィクサス神聖国に行ってみるのはどうだろう。
もしかしたら自分の領土に帰っているかもしれないしそうでなくとも何か情報がつかめるかもしれない。
ただ、敵勢力の本拠地に切り込むことになるから今まで以上に危険な旅になるかもしれない。
シュタインの奴もヴィクサス神聖国教会の支部司教だったしね……」

「そうだ。それがいい。俺もその策を考えていたところだ。アトスに行こう」

フィッチャーはアレクに即便乗、ヴィクサスに切り込むことを提案した。

「で、どうすんのさ? まさか空を飛んで行くってんじゃないだろうね」

突っ込むマーテルに、すぐに答える。
0131フィッチャー ◆9tRgsDTMos5G
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2017/07/22(土) 23:55:43.23ID:IkwMPoeu
「その、まさかだよ。イオを落とす」

「落とすって、口説いて自分のものにしちゃうってこと?」

「まあ、見てなって」

イオは指揮で忙しかった。西の農場のあたりで指揮を執っている。
そこにフィッチャーが横から口を挟む。こっそりと話がしたい、と。
そして立てられたばかりの小屋へと入った。

「どういうつもりでしょうか? どうも、貴方は女ったらしだと周囲から話を聞いていますが、
ここで襲うのですか?」

「大事な話がある」

そこでフィッチャーは、アレクから聞いた、ステッセルの居場所と、現在の上官にあたるシュタインの
極悪非道ぶり、そしてそのおおよその目的について話した。
少し大仰に話す。
愛する団長のセレスティーヌが捕まった。一族は領土を奪われて間もない。
だからアトスから切り込み、悪の根源を絶ち、シュヴィヤール領を奪い返し、理想の国を作る、と。
そしたらイオやステッセルにも大きな役割を与えたい、と。

その想いは、通じたようだ。

「と、いうことで、今から俺たちを乗せて飛んでもらいたい。アトスへ。できるんだろう?」

「分かりました。では、次の日の朝日が昇ると同時に、広場におりますので、
できるだけ早く準備を済ませて全員で来てください」

その日の夕暮れ時、商売女三人のうちの一人の行方が分からなくなった。
ペトラと共に行動を開始したフィッチャーは、町外れの廃屋にて、女と密会している謎の男を発見した。
素早くペトラは毒や霧を使い、二人を行動不能にして女を殺害、フィッチャーも剣を振るって声を出される前に男を即死させた。
男からマジックアイテムのようなオーブが一つと、簡単な地図とメモが残されただけだった。
とりあえずオーブと地図、金品を奪うと、撤退していった。
服装からその所属は全く明らかにならない。
メモにはこれだけが書かれていた。「アレクサンドラ・トリバネアゲハ」と。
0132フィッチャー ◆9tRgsDTMos5G
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2017/07/22(土) 23:56:18.68ID:IkwMPoeu
その日は簡単な報告と、今後の流れについてフィッチャーが説明する。
また、地図とメモについても簡単に報告した。

「急だねぇ〜 それにしてもあのカタブツのイオちゃんも落とすとは、さすがフィッチャー代理。
明日はイオちゃんはおめかしして来るのかな?」

そんなノリで酒を割りと遠慮なく飲むフィッチャーとアレクと女三人。

――
0133フィッチャー ◆9tRgsDTMos5G
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2017/07/22(土) 23:56:35.24ID:IkwMPoeu
あくる日、街の広場に向かう五人。
まだ朝は相当に早いはずだ。しかし、人だかりができている。

「ありゃ、何だ?」

そこには、大きな羽根を広げたドラゴンの姿があった。
頭から尻尾まで実に10mぐらいありそうである。竜人族は魔力を開放すればドラゴンになれるというのは、
どうやら本当のようだ。

≪イオです。司祭の者に仕事は任せておきました。さぁ、乗りなさい≫

フィッチャーたち五人は、イオの背に乗ると、一気に飛び立つ。
次第にアストラの街が小さくなり、山脈がはっきりと見えてきた。
あそこを越えればジェノア、さらに向こうにはアトス山が見える。そこの下が聖都だ。
イオは魔力を振り絞りながら、懸命に翼を羽ばたかせアトスへと向かっていった。
フィッチャーは懐かしい魔力の流れが僅かに感じられる。セレスは生きているのか。それ以上に…
――アレクにとって、明らかにはっきりした何かとの距離が詰められていくのを感じていた。

【以上、国王死亡、その他色々なことが同時に動いています。
フィッチャーら一行はイオに乗って一気に聖都アトスを目指します。】
0134アレク ◆mhXMrsUqAc
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2017/07/26(水) 00:34:33.51ID:27pPyl7E
ヴィクサス神聖国を目指そうというアレクの提案に即賛同を示すフィッチャー。どうやら同じ事を思っていたようだ。
問題は行き方だが、普通に行っていては手遅れになるかもしれない。

>「その、まさかだよ。イオを落とす」
>「落とすって、口説いて自分のものにしちゃうってこと?」

「あはは、流石にステッセル一筋のイオちゃんにそれは無理だろう。
でも逆にそこが交渉に使えるだろうね」

結論、フィッチャーは交渉を成立させた。
ステッセルをそそのかして悪に引き込んだ悪い奴らを倒すのに力を貸して貰いたい、という方向で説得したようだ。

>「急だねぇ〜 それにしてもあのカタブツのイオちゃんも落とすとは、さすがフィッチャー代理。
明日はイオちゃんはおめかししてくるのかな?」

「だねぇ〜 今でこのモテっぷりならスタイリスト付けてイケメンにしてもらったら大変なことになるんじゃない?」

「もう、アレクまで一緒になって何言ってるの!」

と、冗談混じりに盛り上がる一同。
一般的な意味で口説いて自分のものにしたわけでは無かったとはいえ、
全く嫌いな相手の頼みは聞きたくないものであるので、これも「落とした」と言っていいだろう。
大したものである。
謎の男やアレクの名前が書かれたメモについては気になるところだが、
デイドリームなので敵に目を付けられているのだろう、程度に思うアレクであった。
翌朝町の広場に向かうと、巨大なドラゴンの姿になったイオが一行を待っていた。

「すごい、本当に飛んでる・・・!」

緊迫した状況とはいえ、ドラゴンの背に乗るという滅多に出来ない経験に興奮を禁じ得ない。
次第に聖都アトスが近づいてきて、それと同時に何かはわからないが重大な何かとの距離が詰められていくのがはっきりと感じられる。

「この感覚は一体・・・」

しかし差し当たって、そのことについて考えている場合ではなくなった。
コウモリのような皮膜の翼と鏃のように尖った尾を持つ飛竜ーー
ワイバーンの群れが立ちはだかるように襲いかかってくる。
砦跡を根城とした研究施設が思い出されるーーおそらく敵勢力はモンスターを手駒として使う研究もしているのだ。

「どうやら歓迎されているみたいだ!ーー《クロス・エアレイド》!」

挨拶代わりに、十字架の形をした無数の光の魔力を打ち込む。
0135フィッチャー ◆9tRgsDTMos5G
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2017/07/30(日) 01:32:53.77ID:vCwrnjFu
>「この感覚は一体・・・」

「来るよ、すぐ戦闘態勢を!」

「おう、お前ら、あまり無理するな。イオ、空中でこいつらを片付けてから一気に地上に降下するぞ。
どうやら「連中」に見つかったみてえだな」

地上方面から次々と敵が現れる。
ワイバーンとガーゴイル、全部合わせると20はいるだろうか。
一方でこちら、ホワイトクロス側は実質一匹、全員合わせても6名だ。

≪指図しないでください。こちら側で何とかします!≫

>「どうやら歓迎されているみたいだ!ーー《クロス・エアレイド》!」

ギェェ、という声とともにワイバーンが直撃を受けて落下していく。
正面にはイオのブレスが放たれ、数頭のワイバーンたちが直撃を受ける。
マーテルがボウガンを構え、次々と発射し、ワイバーンの眼を狙っていく。しかし致命傷には至らない。
ユニスは支援魔法をかけながら、時折棍棒を振り回してはけん制する。それでもそこらの兵と違い、
一撃が入ったところで怯みもしない。ガーゴイルへの攻撃はそれなりに効果がありそうだが。
ペトラも魔法と爆薬を併せて攻撃したり、吹き矢で応戦したりする。
フィッチャーは指揮を執りながら、大剣でイオの死角を狙い急降下してくる敵をけん制した。

無人とはいえ、これだけの数が一斉に来ているのだ。どこかに指揮を執っている敵がいるはずだ。
≪ぐぅぅっ!!≫

やがて全方位からブレスや魔法による攻撃を受け、騎士団を守るようにして体勢を変えるイオに
一撃、一撃とダメージが入る。フィッチャーらが食らえば下手すりゃ一撃だが、イオならその分厚い体躯で
ある程度は凌ぐことができる。

「ウォォォ…」

突如現れた黒色のワイバーンに跨る男には見覚えがあった。
ジェノアで何度か殺人や横領を行った元議員のハミルカル・ブライトだ。
そういえば、と思った。息子のバルカスはフィッチャーらとの戦いで命を失っている。
その報復にでも現れたのだろうか。それにしては様子がおかしい。
0136フィッチャー ◆9tRgsDTMos5G
垢版 |
2017/07/30(日) 01:33:23.52ID:vCwrnjFu
空中戦のさなか、ハミルカルはその重厚な装備と両側に刃のついたハルバードを抱え、
そのままイオの背中に飛び乗ってきた。すぐさま片側を勢いよくイオの首の辺りにぶっ刺す。

≪あぁぁぁぁ…!≫

「大丈夫だイオ、こいつは俺らで片付ける!」

「ハミルカル様…!」
「様?」

フィッチャーはうっかりしていた。そういえばペトラは元々はジャイプールの暗殺集団の一人。
何者かに雇われていると聞いた。そしてそのまさかだ。

狂戦士のように槍を振るい、フィッチャーに襲い掛かるハミルカル。その攻撃を剣で受けつつかわし、
すぐに脇腹にフィッチャーが一撃を叩き込む。
しかし、腹から血を流しているものの、ハルミカルは怯みもせず突っ込んでくる。
そこでフィッチャーは一旦イオの尾の方へと移動し、周囲の援護を受けながら、隙を見て急所を突こうとした。

マーテルが矢で腕を封じ、アレクも攻撃、同時にユニスが棍棒で脚を狙いながら離脱、そのままペトラも攻撃を加える予定だった。
しかし、雇い主の一撃を防御もせぬまま脚に受け、倒れたところをもう一撃食らおうとしていた。

「フィッチャー、今だ!」

どう見てもこちらに分があった。ハミルカルの首が完全にお留守になっていた。しかし――
カィィン、という音とともに、ペトラへの一撃を、フィッチャーが弾く。

「どうしたんだ?」
「一応、命の…恩人だから――!」

ペトラたちは孤児も同然で、行く当ても無い中で、ハミルカルによって雇われ、
それなりのポストを約束されて、バルカスという彼氏を得て、将来の義理の父になってくれとまで言われたのだった。
他の者たちも同じように女を宛がわれたり、多額の報酬を得たりしていた。
0137フィッチャー ◆9tRgsDTMos5G
垢版 |
2017/07/30(日) 01:33:46.14ID:vCwrnjFu
「よく見ろ、こいつはもう“生き”ちゃいねえ…」

一撃、一撃とフィッチャーに容赦のない攻撃が叩き込まれる。防戦一方の腕の痺れから、
やがて手足へと素早い攻撃はフィッチャーに傷を与えていく。
弾けた攻撃はイオの肉体に突き刺さり、そちらにもダメージは蓄積されていく。

「フィッチャー、どうしてそこまでして…」

「男が女を守ることに、いちいち理由が必要か? いや。理由ならあったな。
俺はホワイトクロス騎士団団長代理だ。さぁ、お前ら、俺がやられてるうちにそいつを刺せ!」

マーテルがボウガンをハミルカルの鎧の隙間の頚部に打ち込み、さらにそこに
ユニスの容赦ない一撃が叩き込まれた。
イオの背上にて、ハミルカルはついに倒され様としていた。

――しかし、それでも周囲のガーゴイル、ワイバーンの攻撃は止もうとはしない。
無人の彼らからの攻撃は、いよいよイオに無理な体勢を強要させた。

ハミルカルの首の取れた死骸が落ちていき、ペトラもそれに続いて落ちようとしているところを、
フィッチャーががっちりと受け止める。残る二人も何とか体勢を維持する。

そこにガーゴイルにぴったりとくっ付くようにしていた「人物」がフワリと身を翻し、回復を開始しようとするアレクの前に立ちふさがる敵がいた。・

その姿は赤ん坊のような顔に、赤裸のアンバランスな細い全身、そしてデイドリームと同じような羽が生えており、
子供ほどの大きさの見るも無残な怪物となっていた。両手には青白く光る剣のような武器を装備している。顔だちはよく見ると、
以前ジェノアの酒場でウェイトレスをしていた女に面影が似ていなくもない。

これが神の仔、「天使兵」と呼ばれるものだった。

「アレクサンドラ、我ニ降伏スベシ。我ハ聖ジェノベーゼ。抵抗スレバ命ハナイ。アレクサンドラ以外ノナ」

無表情でアレクに切りかかるジェノベーゼと名乗る天使兵の攻撃は、あまりにも素早かった。
それと同時に一斉に周囲のワイバーンたちの生き残りが襲い掛かる。

「うわっ…」「何!?」「何だ、コイツ?」

他のメンバーたちもその姿を見て、絶望感に駆られた。放たれている魔力も相当のものだ。

≪結構痛いですが、もう少しなら行けます。まだ上で迎え撃ちますか!?≫

「親玉を発見した。イオ、もう少しの辛抱だ。こいつが普通の攻撃で倒せれば、の話だがな
さぁ、さっさと片づけて早く降りるぞ、お前ら!」

ジェノベーゼによるアレクへの攻撃が激しくなる中、フィッチャーはイオを守るべく、周囲の敵を警戒し、
大剣を高く振り上げた。

【空中戦の末、半数ほどを撃破、ハミルカル死亡、そして「天使兵」のジェノベーゼが
アレクに魔力の双剣による猛攻撃を加えてきています】
0138アレク ◆mhXMrsUqAc
垢版 |
2017/08/02(水) 07:15:26.80ID:qFBJIXjZ
ワイバーンやガーゴイルを蹴散らしていると、黒色のワイバーンに跨るハミルカル・ブライトが現れた。
悪徳政治家の代名詞のような奴だが、それにしても様子がおかしい。
アレク達から見れば理想的なフォルムの悪代官でも人間往々にして色々な側面があるもので、
恩義があるペトラは彼を殺すことが出来ないようだった。

>「どうしたんだ?」
>「一応、命の…恩人だから――!」

>「よく見ろ、こいつはもう“生き”ちゃいねえ…」

フィッチャーは容赦のない攻撃を浴びながら、これはハミルカルであってそうではない事を言い聞かせる。
皆がハミルカルに集中攻撃を加える中、アレクはイオに回復魔法をかけながら持ち堪えさせていた。
そんな中、真打らしき人物が満を持して登場する。
人物といっても異様な姿をしており、少なくとも普通の人間ではないのは明らかだ。
天使といったら普通は美しい姿をしているものだが、こいつの場合どう見ても化け物の姿をしており、悪の手先としてはある意味分かりやすい。

>「アレクサンドラ、我ニ降伏スベシ。我ハ聖ジェノベーゼ。抵抗スレバ命ハナイ。アレクサンドラ以外ノナ」

「ジェノベーゼ!? そんなオサレなもんは知らん!ちなみにワタシはナポリタン派だ!」

>≪結構痛いですが、もう少しなら行けます。まだ上で迎え撃ちますか!?≫
>「親玉を発見した。イオ、もう少しの辛抱だ。こいつが普通の攻撃で倒せれば、の話だがな
さぁ、さっさと片づけて早く降りるぞ、お前ら!」

エントが心の中で語りかけて食る。

《あんな姿でも奴は天使……神聖魔法では勝ち目がない》

「そんな! じゃあどうすれば……あ、そうか!――《プラントシェル》」

魔力的な植物の葉がイオの全身を覆い、敵の攻撃を阻む障壁となる。おそらく、神聖魔法の防御系魔法よりも高い効果を発揮することだろう。
神聖魔法で勝ち目がないなら、他の魔法で戦えばいいということだ。精霊王エント、その正体は教会勢力がかつて焼き払った異教の神――

「――《スオンウィップ》」

魔力によって現れたいばらの蔦のようなものを自在に操って使って応戦し、敵の攻撃を受け止める。

「――《ポイズンブロウ》!」

隙を突き、毒の胞子の概念を借りた魔法攻撃を仕掛ける。
0140フィッチャー ◆9tRgsDTMos5G
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2017/08/06(日) 03:20:46.18ID:yJJiLPlj
>「――《プラントシェル》」

(あいつ、エントの力を…!)

フィッチャーはペトラを抱きとめ、何とか体勢を立て直しながら関心した。
ペトラが無事となれば、いずれは自分もアレクの援護に入らなくてはならない。

「オロカナ、ソノヨウナ力デ…」

素早くj身を翻すジェノベーゼはその防壁の隙を見て、アレクに一目散に襲い掛かる。
飛来してくるそれは、僅かな隙を作るのも容易い。
この間僅か。フィッチャーらは黙って見ているしかなかった。

>「――《ポイズンブロウ》!」 「馬鹿ナ・・・!」

ジェノベーゼが攻撃してくるその真正面から、何とアレクは思いもしない毒魔法を放ったのだ。
防壁によって一瞬ガードされるも、その精霊の力を借りた特殊魔法はジェノベーゼの周辺に離散し、
その粒子の一撃一撃が確実に「彼」を蝕む。

「グゥゥ…」

フラリとしたジェノベーゼに、マーテルのボウガンが発射される。
それは首に的中し、イオの背中へとその「天使」は落下していく。

≪フィッチャー!≫
0141フィッチャー ◆9tRgsDTMos5G
垢版 |
2017/08/06(日) 03:21:07.30ID:yJJiLPlj
「お、おう」
イオからの掛け声で気付いたときにはフィッチャーは大剣を握り締め、
一瞬で「天使」の頭と胴体を両断していた。

「グォォォォ…グェグェ…」

なおもその不気味な生首は眼を見開き、胴体もピクリと動いている。

「きゃあぁぁ!」
思わずユニスはその胴体をイオから突き落とし、さらにペトラの攻撃が続いた。

ドォォォン!!

思わず投げた爆薬は炸裂し、その頭部を木っ端微塵に砕いた。
ようやくこれで天使兵の一人を片づけたのだ。

「このぐらいやっておかないと、生き返りそうな化け物だからね」

≪加減ぐらいしてください! そろそろ私、限界です…≫

地面がイオの肉体であることを忘れていたのだ。背中は爆発で抉れ、大きな傷を負ったイオは
徐々にバランスを崩していった。

敵の動きも良く見るとまばらになっており、ほぼ統制をなくしており、まばらにしか近づけていない。
結構な勢いで西側へと落ちていき、アトスはみるみる遠ざかっていった。
そして何かの縁か、その落ちた場所は、
ジェノアの郊外だった。


――
0142フィッチャー ◆9tRgsDTMos5G
垢版 |
2017/08/06(日) 03:21:32.69ID:yJJiLPlj
――アトスの塔から続く天界

「ジェノベーゼがやられたか……まぁ、大勢に影響はない」

ここではカリスト配下のデイドリーム及び「天使兵」の多くの魔力によって、労働力が賄われ、
まさに天界に相応しい蒼穹の空中庭園が完成した。
ゲートから見えるその姿はまさに圧巻。
多くの「天使兵」たちが守る巨大な神殿が建ち、その外には無限の食料が手に入ると思われる
広大な緑が広がっている。

「まずは手始めに、『オリンパスの光』を見せてくれよう…目標は、あのあたりか…」

カリストが手をかざすと、オーブから光が溢れ、そこにある広大な風景が映った。
それは帝国軍がシュヴィヤール領の北部から北方方面へとなだれ込み、
それを北方軍が迎え撃とうというところだった。
帝国兵10000、北方軍15000はいるだろう。そこに突如暗雲が立ち込め、
戦いを始めんとする兵たちに巨大な稲妻が降り注いだ。
ァァァァァァァl――    オォォォォォォォ…

稲光が放たれる度に兵たちや魔物たちが次々と砕け、赤い塊となっていく。
カリストの一度の動作で実に500人ほどの兵が犠牲となった。
そしてその何倍もの兵が負傷している。
これらは全て、「ゲート」の力と、「天使兵」らから徴収された膨大なる魔力の賜物だ。
オーブを持ち、全てを管理するカリストはが、地上の支配者となった瞬間だった。

「全ては揃った、と思うか? アトラスムス、いや、聖ヨナクニよ」

「はい、「下界」ではアトスにフロウレン様、ジェノアにシュタイン様を置いております。
いずれは各地を弱体化させ、全てを支配下に置いた際は、他の者も用意する手筈になっております。
例えばステッセル様や、アストラのイオ殿、他に王国側の諸将を用意すれば…」
0143フィッチャー ◆9tRgsDTMos5G
垢版 |
2017/08/06(日) 03:22:06.02ID:yJJiLPlj
「我らには兵がいるが、人民がいないではないか。天界にも人を増やすのだ。
私は今や古代聖書に書かれている『天帝』になった。天帝カリストゥス、良い名だと思わないか?
と、いうことでこれまでお前と交配していた女どもや、一部の若く、美しく優秀な女をここに入れ、
多くの子孫を残し、育てていこうと思う。私は全ての父となる…」

やがて、カリスト改めカリストゥス配下のデイドリームたちがゲートを使い、アトスから女たちを連れてきた。
皆が皆裸で、何かに操られたような眼をしているが、若く美しく、頑健で一部は「天使兵」を産んだ経験のある者もいる。
カリストゥスは女たちを一箇所に集めると、啓示をするように伝えた。

「我はカリストゥス。預言者である。お前たちはこれより「天界」を創る者として選ばれた。さぁ、私と遊び、愉しめ」

神殿の中は暗くなり、遊べ、愉しめという言葉がデイドリームたちによって合唱される。
「天界」の異様な光景は勿論、「下界」でもまた別の光景が見られた。

――

「ぐっ…!」
ジェノア地下牢――
腐乱した両親、自分や兵士たち、シュタインの汚物で満たされたこの場所は既に常軌を逸した異臭を放っていた。
しかし、逆にこれがシュタインをこの場から遠ざける結果を生み、食糧を密かに貯めこんでいたセレスティーヌは、
全裸に拘束具姿であるものの、全身を鍛えに鍛え、最大限の努力をしていた。
投与された薬物も違った意味で効力を発揮し、化膿した傷が痛むものの、上腕は鍛えあげられ、
柔らかさを保った乳房から下の腹筋から腰にかけて、さらに尻から下肢に至るまで万遍なく強化され、常人を超えていた。

何度もたたきつけ、錆び付けた鎖は、湿気も後押ししてついに破壊され、錘を外せばもはや脱出は可能な状況にあった。
丁度食糧が底を尽き、さすがに自分の糞を食する気にはならない。

(フィッチャーたちは来ないのか……ついに実行する時が来たか)

カンカン、と檻を叩くと、見張りの兵士が二人現れる。セレスティーヌの姿は見えない。
鍵を開け、中を覗き込むと、天井に張り付いたセレスティーヌからの鉄球による一撃が浴びせられ、一瞬で気絶する。
もう一人を飛び降りて股に挟み、口を塞いだ後、腰を捻ると、立ったまま兵士は首の骨をへし折られ息絶えた。
0144フィッチャー ◆9tRgsDTMos5G
垢版 |
2017/08/06(日) 03:22:59.96ID:yJJiLPlj
すぐに死体を隠し、もう一人の兵士を縛る。後ですぐに問い詰める予定だ。
明日になるまでまず間違いなくこの二人以外は来ない。とりあえずは死体から服装を奪い、
なるべく乾いた地面を確保して布で全身を拭いた。僅かにあった塗り薬を塗りこむ。
すっかり化膿した傷を癒すには程遠い。しばらく地面を摺って歩いたせいか乳首が酷く滲みる。

兵士の下着や服、鎧を着込みながら、奪った剣を握り締め、呟く。
全身が悲鳴を上げている。尻や胸がきついが、この装備でも10人程度を相手にすることならできるだろう。

「シュタイン……貴様だけは……!」

悪臭を残し、兵士の格好をしたセレスティーヌが、歯をギリギリと鳴らしてうずくまっていた。


――

「ここは……ジェノアか。戻ってきたんだな……何か懐かしい空気を感じるぜ。アレク、とりあえずペトラの回復を頼む。
街の様子がおかしいぞ。 なるべく回り込んで一気に神殿を目指す。あそこにシュタインどもが居たんだ。
誰であろうと、聞き出してやる。うちの団長の居場所をな!」

「……あのー、私は放置でしょうか? 怒りますよ。ここでステッセル様の居場所が判れば……」

イオがボロボロの格好で血を流しながら愚痴る。頭の角も欠けており、その外傷が半端なものでないことを
物語っていた。

「悪かった、イオ。アレク、とりあえずイオを優先して回復させてやってくれ。ペトラは俺が何とかする」
0145フィッチャー ◆9tRgsDTMos5G
垢版 |
2017/08/06(日) 03:24:01.39ID:yJJiLPlj
暫く移動し、懐かしの酒場の前を抜け、殆ど老人しか通らない道を辿って裏通りに回り込む。
時折ガチャ、ガチャと何かが鳴る音が響いた。

「こっちだ」

神殿の勝手口の手前で隠れる。この位置からだと見張りは二人。どちらも神聖国の章を付けている、正規兵だ。
逆にいえばこの場所はもう引き返しがきかない。と、フィッチャーが悩んでいるときだった。
ガチャ……

一斉に全身甲冑を着た兵や、神官兵士たちが現れ、槍や剣、弓、メイスを構えられた。

「フィッチャー・レーガン。お前を第一級戦犯として神聖国軍が身柄を確保する。同じく配下の兵全員もだ。
大人しく武器を捨てればよし、抵抗すれば命の保証はない!」

槍を持った隊長格の甲冑兵が高らかに叫ぶ。総勢20人以上はいるだろう。前から待ち伏せをしてきたようだ。
そして後ろからその手際の主が現れた。シュタイン。それは間違いなくシュタインだった。

「フフフ……戻ってきましたか、フィッチャー。女どもを連れて。残念ながらセレスティーヌは家族諸共処刑済、シュヴィヤール家滅亡です……
丁度良い。女どもを使いたいのです。こちらに差出しなさい、ムッ、そいつはアレクサンドラ、またお前なのですか……!!?」

シュタインはアレクを見るなり形相を変える。そして一言だけ叫んだ。
「奴らを殺しなさい。フィッチャーとそのデイドリームを殺すのです。一人も生かしてはなりません……!」
剣を構えるフィッチャーは、素早く駆け出していた。

【超超一気に進みましたが、色々と止むを得ず飛ばしまくってます。よろしくですー】
0146アレク ◆mhXMrsUqAc
垢版 |
2017/08/06(日) 21:13:12.33ID:q6BYczkt
幸い毒の魔法が功を奏し、その好機を逃さず皆で集中攻撃を浴びせる。
フィッチャーが剣で天使を切断し、駄目押しとばかりにペトラが爆薬を炸裂させた。
それはいいのだが、ここはイオの背中の上。
爆発の余波でダメージを負ったようで、一行はジェノアの郊外に不時着したのだった。

>「ここは……ジェノアか。戻ってきたんだな……何か懐かしい空気を感じるぜ。アレク、とりあえずペトラの回復を頼む。
街の様子がおかしいぞ。 なるべく回り込んで一気に神殿を目指す。あそこにシュタインどもが居たんだ。
誰であろうと、聞き出してやる。うちの団長の居場所をな!」
>「……あのー、私は放置でしょうか? 怒りますよ。ここでステッセル様の居場所が判れば……」
>「悪かった、イオ。アレク、とりあえずイオを優先して回復させてやってくれ。ペトラは俺が何とかする」

「了解、回復魔法が使える全員で手分けしよう」
0147アレク ◆mhXMrsUqAc
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2017/08/06(日) 21:15:41.67ID:q6BYczkt
負傷の酷いイオに、強力な回復魔法をかける。
ユニスやマーテルもいくらかは回復魔法が使えるはずだが、やはりペトラは元々敵である上にフィッチャーを巡るライバル的関係(?)であるので
回復を頼むのは気が引けたのだろうか。
しかしこの期に及んでそんなことを言っている場合ではない。
そして、本命はセレスティーヌであってここにいる者達は皆本命ではない、という意味ではある意味お仲間でもある。
0148アレク ◆mhXMrsUqAc
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2017/08/06(日) 21:26:31.46ID:yD1LCLaL
>「こっちだ」

勝手知ったる古巣、うまく立ち回れるかと思いきや、相手も準備して待ち構えていたようで、すぐに取り囲まれた。
0149アレク ◆mhXMrsUqAc
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2017/08/06(日) 21:29:14.74ID:yD1LCLaL
>「フィッチャー・レーガン。お前を第一級せんぱんとして神聖国軍がみがらを確保する。同じく配下の兵全員もだ。
大人しく武器を捨てればよし、抵抗すればいのちのほしょうはない!」
0150アレク ◆mhXMrsUqAc
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2017/08/06(日) 21:30:24.01ID:yD1LCLaL
そして、事の発端からの宿敵であるシュタインが姿を現した。そして衝撃的な発言をする。

>「フフフ……戻ってきましたか、フィッチャー。女どもを連れて。残念ながらセレスティーヌは家族諸共処刑済、シュヴィヤール家滅亡です……
丁度良い。女どもを使いたいのです。こちらに差出しなさい、ムッ、そいつはアレクサンドラ、またお前なのですか……!!?」

激しく動揺するであろうフィッチャーを落ち着かせようとするかのように言う。

「鵜呑みにするな、本当とは限らない……生け捕りを狙っていたからには何らかの理由があるはずだ」

>「奴らを殺しなさい。フィッチャーとそのデイドリームを殺すのです。一人も生かしてはなりません……!」

「一人も生かしてはならないのはそっちの方だ!」

相手は「女どもを使いたい」と言った。何に使うつもりなのかは分からないが、碌でもないことにしか使わないのは確かだろう。
もしかしたら、それがセレスティーヌを生け捕りにしようとしていた理由とも繋がっているのかもしれない。
しかし、あそこまで欲しがるほど相手にとってのセレスティーヌの「有用性」が高かったとすれば、まだ生きている可能性も高い。
もしかしたら想像を絶する酷い仕打ちを受けたかもしれないが、命があれば、希望はある。
何はともあれ、戦闘は始まった。

「――《フルポテンシャル》」

まずは駆けだすフィッチャーに、身体能力全般強化の加護をかける。
敵の何割かは、まずはアレクから仕留めようと群がってきた。

「――《アシッドリキッド》!」

群がってきた者達に、植物系統の溶解液の魔法で応戦。頑強な鎧が溶けるのを見てひるんだ隙に、マーテルやペトラが攻撃を加えていく。

「おのれ、その技……悪しき異教の邪神と契約したのですか……!」

アレクが精霊魔法を使うのを見たシュタインは、怒りを露わにするのであった。

「異教の邪神……貴方達から見ればそうだろうね。きっと多様性を認めないことが過ちの始まりだったんじゃないかな……。
今こそお前達に支配された暗黒の時代を終わらせる――再生《ルネサンス》の刻だ!」

色鮮やかな羽根を露わにし、改めて宣戦布告する。

「《リーフカッター》!」

無数の鋭利な刃となった葉が舞い、シュタインを切り刻む。
0151アレク ◆mhXMrsUqAc
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2017/08/06(日) 21:33:51.07ID:yD1LCLaL
【今度はNGワードがどうとかいう規制が出現して細切れに……。
多分>149の平仮名にした単語のうちのどれかが引っかかったのかな?】
0153フィッチャー ◆9tRgsDTMos5G
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2017/08/11(金) 17:10:35.41ID:U2IMNIwB
>「――《フルポテンシャル》」

アレクが支援魔法をかけると同時に、シュタインも同様に周囲の部下へと支援をかける。

「―≪ハイポテンシャル≫……さぁ、鉄十字騎士団の皆さん、片づけておしまいなさい!
それにしてもこの数を相手にするとは、無謀な……」

20人以上だった敵が、各方面から合流してきたらしく、瞬く間に50人程度になっていた。

「うぉおおおお!!」

フィッチャーの一撃を、甲冑兵がまず槍で受ける。ガイィン、という音とともにまず槍が砕け、
敵兵が後方に引いて剣を抜く。その間にもう一人の兵がフィッチャーの横腹を突こうとするが、
「たぁぁぁ!!」

ユニスが棍棒でその一撃を叩き落とした。
上では弓兵がボウガンでこちらを狙っている。そこをマーテルがけん制し、弓兵が引く。
そしてフィッチャーは先ほど追い込んだ甲冑兵を強引に地面に転がし、そのまま頭をぶっ叩いた。

ギャアという声とともに脳天が潰れ、ようやく一人を片づけたということになる。
敵は他の方向からも展開しており、既に危険だ。次の矢がフィッチャー目掛けて襲おうとしている。

シュタインが魔術の束を収束させ、棍棒へとそれを移すと、前線に出てきたフィッチャー目掛けてかまえる。

同じ頃、甲冑兵たちがアレクらに襲い掛かっていた。

>「――《アシッドリキッド》!」

「ぐぁぁあぁ!!」「痛い……助けてくれ……」「くそっ、どうなってる!!」

「はぁっ!」

重装備の兵たちが鎧を溶かされている隙を突き、ペトラが爆弾と毒を撒く。
これによって爆発により鎧は砕けあるものは即死、ある者は毒と溶解によって苦しみ倒れていった。
前線が一通り片付くと、イオが遠くで狙っている弓兵相手に魔法を放ち、次々彼らを落としていく。
0154フィッチャー ◆9tRgsDTMos5G
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2017/08/11(金) 17:11:11.66ID:U2IMNIwB
「おのれ……女数人相手に何を怯んでいる……!」

思わずシュタインもチャージを一瞬止めた。
そのときである。

>「異教の邪神……貴方達から見ればそうだろうね。きっと多様性を認めないことが過ちの始まりだったんじゃないかな……。
今こそお前達に支配された暗黒の時代を終わらせる――再生《ルネサンス》の刻だ!」
「《リーフカッター》!」

精霊魔法の能力を加えた神聖魔法がシュタインを脅かし、シュタインの魔法陣はおろか、
その全身に無数の刃が襲った。
全身の衣服が裂け、そこからは血が噴出すが、次の瞬間、シュタインは信じられない姿を見せた。

傷口から肉のようなものがはみ出、帽子が取れて青筋の塊のような顔面になると突如、発光して
全身の筋肉が膨張し、翼が生えて異形の怪物と化した。
白と黒の翼は合計8枚。「ダーク・セラフィム」という聖書に登場した怪物に似ている。

「予定が変わりました……お前たちを血祭りにしてあげるのも一興ですが、その前に仕事があります……
マーゲン! 彼らを始末して差し上げなさい……」

そう言うと、シュタイン――だった化け物はぶわりと8本の翼を広げ、そのまま醜悪な巨体を持ち上げるようにして
アトス方面へと飛び去っていった。

再び恐怖が出現する。先ほどの掛け声で脇にあった詰所のような場所の扉が割れ、
ズシリ、ズシリと刺々しい全身鎧を着込んだ人間の倍はある巨漢が現れる。

「死にたい奴から前に出ろ……」

その声はかつて王国から派遣された隊長・マーゲンで間違いなかったが、体格は明らかに違っていた。
そう、「異形の者」と言うのに相応しい。長い鎖のついたモーニング・スターが彼の武器で、
その鉄球だけでも大の男以上の重さがあるだろう。

「殺す、コロス、コロス・・・」

振り回される鉄球はあっという間にフィッチャーの辺りまで飛んでいき、彼の目を釘付けにした。
すぐに武器を構え直すフィッチャーだが、二撃目は避けられず、大剣で受けるも大きく後ろへと引き摺られる。

「くそっ、なんて力だ! まるででかい投石器の石のような破壊力だ! ユニス、マーテル、下がって雑魚の相手してろ!」

ブンブンと八の字に回される鉄球は瞬く間に弓兵の登っている櫓台も破壊し、彼らはあっという間に地面へと落ちていく。
先ほどしとめ損ねた甲冑兵も彼の鉄球の餌食となり、赤い肉のついた鉄塊となりあちこちに散らばる。

「ヒェェェ……!!」「化け物だぁぁ……!!」

兵たちは怯える。そして、フィッチャーが下がった隙をついて、今度は鉄球がアレクの方向を襲った。
イオが防壁を出すも、それをあっさりと破られ、それを辛うじて短剣で受けたペトラが弾き飛ばされる。

腕から血を流し、壁まで吹き飛ばされたペトラは、次の衝撃までは予測できていなかった。
ドォォォン!!
0155フィッチャー ◆9tRgsDTMos5G
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2017/08/11(金) 17:11:47.00ID:U2IMNIwB
残った爆薬が先ほどの摩擦で誘爆し、ローブを燃やされた無残な裸の姿で、遠くへと吹き飛ばされ転がった。
生死のほどは定かではない。

「ペトラ!」

フィッチャーもこれには怯み、さらに押される結果となった。これ以上後退すれば、他のメンバーが危ない。
そして、アレクとイオ、ユニスとマーテルの方にも、敵の新手が到着し、狙っている。

――

とある宿場町。
もはやどこの領土かもわからないが、彼らは確実にアトスへと近づいていた。

女は身体を横たえたまま、横に寝ている男、デルタに声をかけた。

「このままアトスに突入するって、あんた本気かい? まぁ、あたしはユウラとアイリを殺られちまったし、
もううちらの「先生」に頼むぐらいしか方法はないけどね」

レクトゥスでの知り合いになるデルタは、女、チホリを抱き寄せながら、小声で囁いた。

「あまり大きな声で言えることじゃないけど、味方は多い方がいい。それに俺たちの団長と代理は今まで不死身だったんだ。
恐らく今、事を起こすならあのあたりにいるはず。少しずつでもいいからやれることをしよう」

チホリが「先生」と仰ぐザトーラップからの返答が、彼女の持つマジック・アイテムにあったようだ。
あとは向こうに自分の向かう方向を知らせることができれば、きっと彼はホビット軍を出して遠征に来てくれる。
こちらにいるコボルト、エイプマンの軍勢とあわせれば、多少の力にはなるだろう。

チホリの腹の中にはザトーラップの子がいる。しかし、そのお陰で彼女は難を逃れることができた。
彼女はそのことを肉体関係を持ってしまったデルタには話してしまっている。しかし、デルタもまた、意中の間がいるとのことだった。
これはただの傷の舐めあいではない。
お互いがお互いの鞘に収まるための、正しい行為なのだ。

「デルタ、「先生」から反応があった。期待はしちゃダメ。だけど、折角貰った命だし、誰かのために使いたいんだ」

「俺も同じだ。チホリは俺の命の恩人みたいなもんだ。この命は……ホワイトクロス騎士団のために……捧げる」


――

一通りの繁殖行為を終え、預言者カリストゥスは「オリンパス」と名付けた天界の上から、
地上で起こっている様々な事を見守っていた。

「カリストゥス、地上は順調に征服が進んでいるようですよ。この呼び方、慣れませんね。
天界の拡充はすぐに地上の生産力を上回るでしょう。この地には選ばれし者たちが集うことになります。
ええと、お顔がすぐれませんが、どうかなさいました?」

「構わぬ。アトラスムス。お前が「神」で、私は「預言者」に過ぎぬのだから。これからは
我々二人を中心に世界が創られる。ところで、フローレンの造反については把握していたか?」

「あの以前よりアトスとジェノアの内偵をさせていたフローレン様ですか。やはり、研究機関が絡んでいると?」

「そうだ。「天使兵」の数が足りぬ。恐らくは内部で「天使兵」の魔力を利用して研究の没頭をしているのであろう。
これは横領だ。すぐさまこちらから偵察の者を送り、事実が確認でき次第、「爆撃」を行ってから制圧にかかり処分する。
それから、アースラントのステッセル。イオというかつての部下の女が移動中だ。こちらの偵察についてはアトラスムスの配下に任せる。
これは“粛清”だ。良い結果を願っているよ。
みんながシュタインのように勤勉なら良いのだがね。そうはいかないのが「人間」というやつだ」

「……「人間」でございますか……」
0156フィッチャー ◆9tRgsDTMos5G
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2017/08/11(金) 17:12:18.39ID:U2IMNIwB
――


ジェノアの勝手口近くより悲鳴が響く。
「化け物、バケモノが出たぞ!」「何だこいつは!」「ぎゃぁぁ!」

後退する兵たちがフィッチャーの前にいるマーゲンのさらに後ろに次々と現れる。
皆が皆、自分の保身で必死なようだ。

「逃げろぉぉぉ!!」「くそっ、この女、まるで竜巻だ……」

――そこから現れたのは、髪を肩までの長さに切りそろえた、あのホワイトクロス騎士団団長、
セレスティーヌ・ジゼル・ド・ラ・シュヴィヤールで間違い無かった。
顔つきは殺意に溢れ、窮屈そうなチェイン・メイルは汚物と血に塗れていた。

フィッチャーは叫んだ。
「セレス!!! 俺だ! 生きていたのか!!?」

思わず振り向くマーゲン。ようやく体力無尽蔵の巨漢の攻撃の手が止んだ。
しかし、セレスティーヌは逃げ惑う兵士たちの首や脇腹を切り裂いていった。
まるでただどう無駄なく確実に殺すかが込められているような無駄のない動きで。

「フィッチャー!! お前たち! その男を殺せば、お前たちと合流できるのだな……!?」

「あぁ……」

信じられない、という表情のフィッチャーは横に立つ、アレクと顔を見合わせた。
そう、やはり生きていた。ここに、ホワイトクロス騎士団は団長の御旗のもとに再結成されるのだ――

【以上、セレスと無事合流、ペトラを除く5人と満身創痍のセレスで怪物鎧と化したマーゲンを囲む形、
さらにその周囲や高い位置には雑魚兵士が十数人構えている状態です】
0157アレク ◆mhXMrsUqAc
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2017/08/14(月) 09:08:03.48ID:NQu2OQt9
アレクの攻撃を受けたシュタインが異形の怪物へと変化する。ダークセラフィムーーそれは闇に堕ちた至高の天使ーー

>「予定が変わりました……お前たちを血祭りにしてあげるのも一興ですが、その前に仕事があります……
マーゲン! 彼らを始末して差し上げなさい……」

飛び去ったシュタインと入れ替わるように、巨人とも言うべき姿に変わり果てたマーゲンが現れた。

「まるで化け物の展覧会だな……!」

>「殺す、コロス、コロス・・・」

非常識な大きさの鉄球をぶん回しこちらを圧倒するマーゲン。
これには流石のフィッチャーも圧されている。

>「くそっ、なんて力だ! まるででかい投石器の石のような破壊力だ! ユニス、マーテル、下がって雑魚の相手してろ!」
>「ヒェェェ……!!」「化け物だぁぁ……!!」


マーゲンは鉄球のレベルを超えた鉄球で一応自分の側であるはずの兵達もお構いなしに蹴散らす。
少しでも敵の数を減らそうと、戦意喪失の魔法をかけながら雑魚兵士達の説得にかかるアレク。

「死にたくない奴は下がれ! ただの兵士に太刀打ちできる相手じゃない!もう分かっただろう?本当の悪者はどっちかが!」

そこにマーゲンの鉄球がぶち込まれる。
とっさにイオが障壁を張るも防ぎ切れず、ペトラが身を呈してそれを防いで弾き飛ばされた。
それはまるでアレクを庇ったかのようにも見えた。更にその衝撃で爆薬が誘爆し、重傷となる。

「無茶しやがって……!」

元々は敵で一行を始末しようとしていたペトラだが、それは元はと言えば恋人の仇を討つため。
そして元雇い主に対しての義理堅さも見せたこともある。
敵には容赦しないが一度仲間になった者に対しては情が深いタイプなのかもしれない。
じりじりと追い詰められていく一同。そこに更に新たな騒動が巻き起こる。

>「化け物、バケモノが出たぞ!」「何だこいつは!」「ぎゃぁぁ!」

一瞬、ただでさえ大変なのにまた新手の敵が登場したのかと思ったが、違った。

>「逃げろぉぉぉ!!」「くそっ、この女、まるで竜巻だ……」

「竜巻のような、女……?」

アレクの瞳が期待に見開かれる。果してその勘は当たっていた。

>「セレス!!! 俺だ! 生きていたのか!!?」

「団長! きっと生きてると思ってた……!」
0158アレク ◆mhXMrsUqAc
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2017/08/14(月) 09:09:14.48ID:NQu2OQt9
>「フィッチャー!! お前たち! その男を殺せば、お前たちと合流できるのだな……!?」
>「あぁ……」

フィッチャーと顔を見合わせて頷くアレク。

「再会を喜ぶのは後だ、まずはこいつをぶちのめそう! 二人とも、あれ行くよ! ーーホーリーウェポン、ブリンク!」

そう言ってセレスティーヌとフィッチャーと自身に武器強化と超速移動の魔法をかける。
名付けてトライアングル・アタック。よくある特定のメンバーが揃わないと出せない連携技というやつだ。
元々第二分隊と第三分隊は共同で任務にあたる事がしばしばあったので、以前より考案していたのだが、実際にするのはこれが初だ。
一瞬で三方向から取り囲み加護付きの剣で超速で切り付けるという、単純明快ながらも熟練した戦士が揃って初めて出せる高度な技である。

「ーー今だ!」

二人に合図を出すと同時に、疾風のように切りかかる。相手の武器は攻撃範囲の広い巨大な鉄球。逆に言えば細かいコントロールには比較的向かないと言える。
瞬時に懐に潜り込めば一瞬ぐらいは隙が出来るはず。その一瞬が勝負だ。
0160フィッチャー ◆9tRgsDTMos5G
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2017/08/15(火) 01:02:29.83ID:7opXxZHT
チホリがデルタを小突きながら行軍し、後ろにいる陣容を見渡す。
先ほどまで数十人程度しかいなかったコボルト、エイプマンたちは、気が付けば
二千人以上を数える軍勢となっていた。

「来たぞ。あいつが俺の知り合い、まあ、相棒みたいなもんだ。仲間を呼んだんだってさ」

そこに居たのはカボスだった。コボルトの生き残り代表として、たまたま通り掛かった北方の軍勢を
丸ごと寝返らせた。そして、エイプマンの方もコボルトの増員に対抗し、カンプベルベルという男がエイプマンをあっという間に束ねた。
北方軍の一員として与していた獣人族は一気にデルタたちの味方となったのだ。
皆が皆、謎の光による攻撃で疑心暗鬼となり、近頃怪しい動きをしていたヴィクサスを睨んでいる。
そこで挙ってアトスに侵入しようという手筈となった。

「デルタ、オイラたちが必ずヤツラをぶっ潰してやらあ。犬猿の仲っつうが、教会ほど胸糞悪ぃモンは
ねえってさ。みんなそう言ってる」

カボスは「切り取り自由」という話を出すと、コボルトもエイプマンも一気に士気が上がり、勢いづく。

「まったく、単純な連中なんだから……おっと、私の「先生」の方も動き出したようだね」

デルタと手を組みながら、チホリは水晶球の反応を見た。


――


「ボクは帝国軍の一部だ。だが、今は丁度帝国軍も混乱している。先ほどホビット庄の最寄の町で
帝国の状況を聞いたよ。どうやら北方との戦争は中止らしい。みんなヴィクサスに恐れをなしている。
今ボクが兵を挙げて成果を挙げれば、きっと奴らはビビる!」

丁度街の方からジャイプール人の女兵士を十数人雇ってきた。より高額な報酬でヘッドハンティングしたということだ。
ザトーラップのホビット軍は500人程度、しかし、妻子を含め女子供は庄に残している。
よって、普段からザトーラップの世話をする兵が必要ということだ。
0161フィッチャー ◆9tRgsDTMos5G
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2017/08/15(火) 01:03:16.99ID:7opXxZHT
「人間の女どもはよく働いてくれる。昼の世話も夜の世話も……ね。連絡をくれたチホリには悪いが、
ボクはボクのやり方でアトスを陥れて見せる。まずはエントとの契約だ。シャーマンを数人用意してあるし、
以前ボクらと共闘したという実績がある。まずはレクトゥスを目指し、彼らと手を組んでから、アトスに攻め入ろうじゃないか、なあ」

ザトーラップが鼻で命令すると、女たちがザトーラップの汗を拭き、着替えを用意し、飲み物を持ってくる。
それをがぶ飲みすると、女にキスをして残りを渡した。

「さぁ、ホビットの闘い方を見せてやろうじゃないか」


――


「ギャァァァ!!」「火を止めろ!まさかこの光は……!」「被害状況を……」

アトスの奥地、ミランダ聖堂にて、「オリンパスの光」が多数観測された。
瞬く間にその奥ゆかしく威圧感のある大きな建物に穴が空き、火の手が挙がる。

直後、突然現れた幻影のような軍勢によって、聖堂内にいる多くの神官兵たちが、
次々と殺害されていった。
神官兵士だが非常に軽装の男たちで、皆、黙々と「作業」に取り掛かっている。
その眼は「薬物」によるものと思われるほど濁っていた。
「ぎゃぁぁぁ!!」「プレシャス、神よ、お救いくだだい!ヒェェ……」

教皇フローレンは突然の出来事に信じられぬという表情と、罪悪感と恐怖によってパニック状態に陥った。
周囲の側近たちも慌てふためきながら武器を抜いている。

「天使兵! どうして天使兵どもが動かぬのだ? 貴様らだけでも良いからこいつらを抑え、ワシを護れ!」

「全く動きません、それより、弁解をした方が良いのでは、我らは味方……も、もしや……!?」

「まさか、“事が露見した”とでもいうのか……!!?」

教皇と周囲の騎士たちは辛うじて聖堂の奥に篭り、暗殺者たちと凌ぎを削っていた。
そのとき、パキャ……という音とともに複数の側近たちが赤い塊となって潰れる。

現れたのはシュタインと複数の天使兵だった。

「シュタイン、貴様、もしや我々が裏切ったとでも……? 誤解だ!」

シュタインはその巨躯を揺らしながら笑い、残響を残すような声で喚いた。

「お前の行動は前々から監視させていただきました……「下界」の代表である「教皇」の役割は
ご存知の通り「天界」に物資を捧げるという有り難い行為のはず……それを着服し、下部組織に過ぎないお前たちが
密かに叛乱を企てていたということ。それ即ち「天帝の命に逆らうなり」ということです。お・わ・くぁ・り・で・す・くぁ?……!
ここにはラビカン、ルーカン、マイエルダンあたりを入れるとしましょう。彼らなら馬鹿真面目で扱い易い……」

「待て、シュタイン、お前にもこの分け前は……ぐぁぁぁぁ!!!!!」

多数の天使兵による「制裁」、その上、シュタインの太い両腕により叩き潰され、前教皇を殺害し、ジェノアを内部から崩壊させた
稀代の謀略家にして偽教皇、フローレンはついにシュタインによってその命を絶たれた。
辺りには彼とその側近の骨や臓器、衣服が散らばった。

とある部屋には多くの金銀財宝が、とある部屋には多くの蔵書と魔道研究書類が、
とある部屋には薬物と「天界」にも無い実験の研究所が、そしてとある部屋には多くの女たちが閉じ込められていた。

「おや、こんなところにも生き物が居ましたか。我らに従うか、ここで死ぬか、決めなさい。ヒヒヒヒヒヒ……!!」

かくして、アトスの「教皇庁」と「教皇」は完全に存在を抹消され、シュタインの傘下に入ったのである。
0162フィッチャー ◆9tRgsDTMos5G
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2017/08/15(火) 01:04:17.05ID:7opXxZHT
――

>「団長! きっと生きてると思ってた……!」
「再会を喜ぶのは後だ、まずはこいつをぶちのめそう! 二人とも、あれ行くよ! ーーホーリーウェポン、ブリンク!」

「うぉぉぉぉおお!!」「おぉぉ・・・」

武器に神聖魔法が施され、さらにスピード、回避力を高められ、フィッチャーとセレスティーヌは力が漲ってくる。

「死ネェェェl!!」

マーゲンの鉄球は正確無比に三人を狙う。その攻撃には相変わらず隙が無く、セレスティーヌですら近づけない。
アレクが自然な形で間合いを取る。三方向から挟み撃ちにするという寸法だ。
その間にイオは後方から防御魔法をかけながら雑魚たちとマーゲンの攻撃の死角に入り、
それを守るようにマーテルとユニスが雑魚の遠距離攻撃を引き受ける。

>「ーー今だ!」

丁度120度ずつを制圧する形を取ったところでアレクの掛け声。しかし、マーゲンの攻撃はあまりに速く、
接近するまでに少なくとも一発は直撃するだろう軌道を描いている。突っ込んだところで赤い肉塊になるのが関の山だ。
それも、マーゲンの鎧は通常の甲冑兵の三倍以上はある。並みの力ではダメージを与えるのが難しい。

「セレス――!??」

フィッチャーがそんな判断をしている矢先にセレスティーヌは既に突撃の構えを見せている。
先ほど「竜巻」と形容されるが如く、もはや彼女は止められない。

「うおぉぉぉぉ……!!」

フィッチャーは我先へと大剣を前に構えながら突っ走った。
ガキン、という鈍い音とともにフィッチャーの大剣に鉄球がクラッシュする。
フィッチャーはそのまま鉄球に大剣を食い込ませると、全身を使ってそれの動きを相殺させ、鉄球に飛びついた。
マーゲンが振り回すと、たちまち彼の体は宙へと浮いた。その棘のせいもあり、血がトバドバと溢れ出す。

(よしっ、今のうちにそいつをやってくれ、こっちはもう持たねえ……!)

アレクの一撃がマーゲンの首に命中し、怯ませる。
セレスティーヌがそこに剣による重い一撃を浴びせた。
「グォオォォオオオオ!!!」

一撃、二撃、三撃。そこらの雑魚兵士から奪い取った並よりも少し強力なだけの鋼鉄の剣が、
並外れた力によってマーゲンの鎧を突き刺し、切り刻み、打ち抜いていく。
大量の血を噴出し、倒れるマーゲンの脳天へと、さらに一撃が繰り出され、マーゲンの脳天は割られた。
それに飽き足らず、起き上がろうとする怪物マーゲンへの次の攻撃は首を斬り取り、さらに心臓へと抉り抜く連撃となった。
それでも動く敵はあまりのセレスティーヌの勢いについに動きを止め、地面に倒れる鉄と肉の塊となった。

フィッチャーたちは、ホワイトクロス騎士団はマーゲンを討ち取ったのだ。
0163フィッチャー ◆9tRgsDTMos5G
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2017/08/15(火) 01:04:56.59ID:7opXxZHT
「大丈夫か!?」

裸になって倒れたペトラの元に、真っ先にフィッチャーは駆け寄った。
外見的には重傷、しかし、絶望的なことに爆発物とともに猛毒が離散し、彼女の肉体を蝕んだのは誤算だった。

「……ありがとう、愛するフィッチャー。どうやら、しくじった、み、た、いね……どうか、敵、を……」

ペトラの最期の言葉を受け取ると、裸になった彼女の遺体をその場に横たえ、兵の死体から取ったマントを上に被せてやった。

「プレシャス……必ずお前の分、お前の同胞や、俺の仲間たちを幸せにしてみせる」

――

「はあぁぁぁぁ!!」

呆然としている兵士、意気消沈している兵士、間隙している兵士、雑魚たちは思い思いで立ち竦んでいたが、
そこをセレスティーヌは容赦なく追撃し、一撃ごとに兵士たちの命を絶っていった。
首、脇腹、背中。どう殺すかだけの精紳が宿った剣が狂ったように敵を屠っていく。

(これが「狂戦士」というやつか……)
フィッチャーは彼女の姿を見て、どこかで聞いた伝説を思い出した。

ペトラにかまけているうちに、十数人が既にセレスティーヌによって犠牲になっていた。
一部の逃亡兵が「通報だ! 自警団と教皇庁に通報して援軍を出せ!」と叫んでいたが、
ひとまずのところは敵は意気消沈して全て逃げ出し、静かになったところである。

フィッチャーが自ら止めに入り、アレクやユニス、マーテル、イオの魔法によって辛うじて落ち着きを取り戻したセレスティーヌは、
異常な興奮状態にあった。まずはフィッチャーが建物の裏へと彼女を連れ出し、事情を聴くことにした。
ようやくセレスティーヌが口を開いた。

「私は、シュタインどもに父上、母上を殺され、拷問をされたのだ。シュタインと、ここの、あらゆる兵どもにもな
憎んでいる。何人殺しても足りないくらいに……しかも、今の私は薬物を大量に打たれたせいか、まるで痛みを感じぬのだ」

セレスティーヌがパンパンに張ったチェイン・メイルを脱ぐ。その傷は酷いものだった。
フィッチャーはまず鎧を脱いで軽装になり、セレスティーヌを抱きしめた。身長差が不恰好なものだったが、
口付けから舌を絡ませ合い、お互いの愛情を確かめた。少しだけ彼女が微笑んだ気がした。
先ほどの魔法も相まって、見事すぎるほど鍛え上げられた筋肉は美しくさえあり、それに反して柔らかな乳房や
尻についた鎖等による生々しい傷痕は悲惨さを極めた。薬を塗っていたが、特に臀部に関しては、手の施しようのない陵辱を受けたといっても
過言ではなかった。そして何よりも異臭が鼻をついた。髪を肩で切られたその顔は以前のように凛々しくもあったが、
死体と汚物の腐ったような臭いはフィッチャーですら戦慄を覚えた。彼女の表情も殺気だっており不気味さも感じられる。

シュタインは鎧を着込み、大剣を背負うと跪き、裸のままのセレスティーヌの目を見て言った。

「セレス、いや、団長。必ずお前を旗印にして、教会の悪事を暴いて、領土を取り返す。シュタインの野郎も何かに命令されてるみてえだしな。
アレク!!! こっちにきてくれ。すぐにセレスの治療と洗浄を頼む。それと、団長用の装備の用意も。お前らも手伝ってくれ!」

かくして、数十人の死骸と肉片、血糊により死臭が立ちこめるこの場所で、
生き残った六人のホワイトクロス騎士団は、団長とともに再結成(リユニオン)したのだった。

【アトスで偽教皇フローレンら死亡。マーゲン死亡。猛毒でペトラ死亡。
セレスティーヌは薬の影響で依然として狂戦士状態ですが意識は戻り、ホワイトクロス騎士団・団長として合流しました】
0164アレク ◆mhXMrsUqAc
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2017/08/17(木) 17:25:03.65ID:vu6JO+mS
フィッチャーが身を呈して鉄球を受け止め、アレクが急所を突いて隙を作りセレスティーヌがとどめを刺すという形で、一行は辛くもマーゲンを撃破したのであった。
0165アレク ◆mhXMrsUqAc
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2017/08/17(木) 17:26:15.47ID:vu6JO+mS
しかし、その代償はあまりに大きかった。持っていた毒が散乱し、ペトラは見た目以上の致命傷を負っていた。

「……確かにただ殺すより盾になってもらった方がいいとは言ったけどさ、本気にするバカがあるか!」

>「大丈夫か!?」
>「……ありがとう、愛するフィッチャー。どうやら、しくじった、み、た、いね……どうか、敵、を……」

「安心して。奴らの野望は必ず打ち砕く……!」

あるいはペトラはどこかで察していたのかもしれない。デイドリームであるアレクが敵に立ち向かうにあたって重要な切り札であることを。
フィッチャーが彼女を弔っている後ろで静かに十字を切り冥福を祈るアレクであった。
しかし悲しみに浸っている時間は無かった。異常な興奮状態のセレスティーヌが敵兵を必要以上に追撃して暴れはじめたのだ。
鎮静化の魔法も駆使し、なんとか落ち着かせて話を聞き出す。

>「私は、シュタインどもに父上、母上を殺され、拷問をされたのだ。シュタインと、ここの、あらゆる兵どもにもな
憎んでいる。何人殺しても足りないくらいに……しかも、今の私は薬物を大量に打たれたせいか、まるで痛みを感じぬのだ」

「落ち着いて聞いて。それはきっと薬物の影響で狂戦士化しているんだと思う。多分精神にも影響してるから衝動のままに動いちゃいけない。
かなりつよい薬みたいでワタシの魔法でも完全には解けないみたいだ。
しばらくすれば効き目が切れるだろうけどそれまでの間痛みは無くてもダメージは蓄積するから気をつけて」

そしておそらく傷の治療のためにと鎧を脱いだセレスティーヌだったが、そのままフィッチャーと盛り上がりはじめた。
若いっていいなあ!という感じで明後日の方を向いて爽やかな笑みを浮かべていたアレクと他の団員達だったが、一段落したらしくお呼びがかかる。

>「セレス、いや、団長。必ずお前を旗印にして、教会の悪事を暴いて、領土を取り返す。シュタインの野郎も何かに命令されてるみてえだしな。
アレク!!! こっちにきてくれ。すぐにセレスの治療と洗浄を頼む。それと、団長用の装備の用意も。お前らも手伝ってくれ!」

ユニスと共に純水化の魔法でその辺の泥水から綺麗な水を調達し、セレスティーヌの全身を拭いて、回復魔法で傷の治療をする。
その間にマーテルとイオが調達してきた装備を身に付けると、とりあえずの体裁は整った。

「さあ、シュタインを追わなきゃ!「仕事がある」って言ってたけどどうせろくな仕事じゃ無い!
奴が向かったのはきっと聖都アトスだ。ステッセルも多分そこじゃないかな」

とはいえ、イオが飛べるようになるまでにはもう暫く時間がかかるだろうか。そこで散り散りに遁走した敵軍が放置していったらしい馬車を指差す。

「あれを使わしてもらおう!」

こうして一行は聖都アトスを目指し出発する。
0167フィッチャー ◆9tRgsDTMos5G
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2017/08/18(金) 16:45:04.43ID:/6Krby6/
>「さあ、シュタインを追わなきゃ!「仕事がある」って言ってたけどどうせろくな仕事じゃ無い!
奴が向かったのはきっと聖都アトスだ。ステッセルも多分そこじゃないかな」

周囲が静まり返り、ジェノア兵の援軍が来るまではまだ時間がかかりそうだ。
フィッチャーは先ほどセレスティーヌが出てきた裏口の方を見ると、何かを思い出したように駆ける。

「狂戦士か……アトスの世界を腐らせている張本人どもを片づければ全てが終わる。
それまでだけセレス、お前には我慢してもらうが、必ず楽にさせてやる。
俺が責任を持って土地を奪い返す。ちょっと待ってくれ。この先に……孤児院があるんだ」

イオはまだ体調が悪そうだったが、他のメンバーもその後に続いた。

「うっ……」

ユニスが吐き気を催した。
その道には頭を潰され灰色の脳漿を出したものだったり、胴体から桃色の内臓を飛び出させたり、
それは凄惨な兵たちの死体が転がっていた。全て一撃でやられていると思われる。
セレスの仕業に違いない。鎧を着た分厚い甲冑まで普通の剣で貫通しているというのは
強靭な筋肉だけではなく、薬物による強力な脳制御力の解除も含まれているのだろう。まさに殺人兵器だ。

その先には地下牢手前に広いスペースがあった。
礼拝堂と、食堂のようなスペース。割と最近まで人が住んでいたような跡はあったが、カラだ。

「やっぱりいねぇか。実はここはジェノアの孤児院で、教会が身寄りの無い子供たちを匿ってた場所だ。
実は俺の息子がいた。ま、若い頃にできちまったガキで、生きてりゃ五歳になる。
シュタインめ、あいつらも連れ去って、どうするつもりだ……! 行くぞ……」

一行はアレクの言う通りに、イオの体調が回復するまでは用意された馬車を使うことになった。

「クズほど繁殖能力が高いとは聞くものだが……」
セレスティーヌが言いかけたところで腹を押さえた。グゥ、という音は空腹に違いない。

「済まない。空腹で倒れそうだ。このままでは馬車の馬を襲って食ってしまいそうだ。
誰か、食べ物を持っている者は……」

あまりの形相をしているセレスティーヌに、フィッチャーは残っている食べ物を全部差し出した。

「俺のは全部やる。お前らも団長にできる限り分けてやってくれ。こいつの食欲は半端ないぞ」

セレスティーヌを中心とした食事が終わると、早速馬車で一路、聖都アトスへと向かった。

――
0168フィッチャー ◆9tRgsDTMos5G
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2017/08/18(金) 16:46:04.02ID:/6Krby6/
「ジェノアでの動きがおかしいですね。どうやらアレクサンドラを取り逃したようです。
彼は東に向かっている……アトスを目指すつもりでしょうか。“彼ら”を向かわせましょうか」

「あぁ、そうしてくれ。「パピヨン隊」をもってしてアレクサンドラやその護衛を殲滅する。
隊長のモルフォスには直接言っておいてくれ。「皆殺し」とな……
“テイン”も使えば問題あるまい。フィッチャーという男も生きていればまとめて始末もできよう。
しかし、シュタインめ、私に用意してくれた庭園浴場といい、なかなか趣味がいいな。
フローレンが開発した薬も使えば、快適な環境で子孫繁栄ができる……明日も楽しみだ」
0169フィッチャー ◆9tRgsDTMos5G
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2017/08/18(金) 16:46:30.13ID:/6Krby6/
天帝となったカリストゥスは、大勢の美女たちのみによる楽園を作り、普段は快適な住居に住まわせ、
食事の際は外の「浴場」に集めては繁殖行為を繰り返していた。いずれはカリストゥスの血を引く息子、娘を育て、
それらを私兵化し、息子には妻や娘を宛がい、全ての人間を自分の子孫にしてしまおうという、ブロジェクトが進みつつあった。
同時に女たちの中に指揮官を付け、剣や魔法を覚えさせ、防衛能力を身につけさせることにも余念がない。
さらに、アトラスムスによる「天使兵」も地上からの女たちによって量産されていった。
彼らの存在が、魔力の源となって「天界」を支えていくのだ。

「私はデイドリームとして永い間生きてきました。しかし、性の快楽というものがあることは知りませんでした。
このようなものを据え付けられたことを、今では感謝すらしています。欲望や野心が漲ってきます。
カリストゥス、私は人間の雄になってしまいそうですが、これでよろしかったのでしょうか」

「良いのだ。それで良く実感したのだろう、アトラスムス。成すことは人間も神も同じ。
それを創ったフローレンが話していた通りだ。それはまさに支配欲と征服欲の象徴。
切り取ってしまえば、ただの無欲な天使に成り下がってしまうであろう。
さて……まずは「オリンパスの光」で、帝国と北方を降伏させ、条約を結ぼうではないか。
王国からはステッセルが軍を北と南に動かす手筈になっている。恐らく1万は動員できよう。
それと女どもの補充だ。「足りぬ」と、早速シュタインに手配するのだ……」
0170フィッチャー ◆9tRgsDTMos5G
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2017/08/18(金) 16:47:56.76ID:/6Krby6/
――

馬車を走らせる一行。
やがてアトスの手前で夕刻が訪れ、馬が動かなくなりキャンプとなる。
夜の間、時折大きな地鳴り、雷に近い音がする。今まで聞いていた雷や地震とは違う。
イオが呟く。

「……「光」が動き出した……!」

道から大きく外れた場所、そして交代の間にセレスティーヌが死んだように熟睡を始めると、
イオがフィッチャーを奥にある滝へと呼び寄せた。さすがは水竜の一族、水の流れには詳しいようだ。

「フィッチャー、一つお願いがあります。ここからアトスに向かうには、強力な防御網を突破しなくてはなりません。
敵は恐らくこちらの動きをまだマークしているはず。下手をすればその手前で向えうたれるでしょう。
きっとステッセルの手掛かりもそちらにあります。私たち竜族は同時に魔族でもあります。つまり……」

「何となく表情で分かるぞ。俺から精神力を吸い取るつもりか。それもアレで」
「そういうこと、です…… 貴方になら、許すことも可能だと、先ほど感じました。それだけです」

仰向けになったフィッチャーにイオが馬乗りになる。滝壷の音にかき消されるようにして、
フィッチャーのありったけの奔流がイオへと流れ込み、小一時間ほどでイオは元の魔力を取り戻していた。
知らん振りをしながら戻ってきたフィッチャーは、寝る前よりも疲れていたという。
0171フィッチャー ◆9tRgsDTMos5G
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2017/08/18(金) 16:48:23.22ID:/6Krby6/
「おーい、そろそろ起きるよ」

フィッチャーが目を覚ますと、セレスティーヌ、ユニス、イオがそれぞれ抱きついた形になっており、
一瞬目を疑った。しかし、はっとなって周囲に号令をかける。

馬をその場で潰し、火や炎魔法で焼いて手っ取り早く朝食にすると、皆が皆、腹が減っていたようで、
半分以上が携帯食糧とならずにあっという間に無くなった。それも、その半分はセレスティーヌが平らげた。

「では、私に乗ってください。一気にアトスに向かいます。案内は、行ったことがあると仰っていたセレスさんと、
マーテルさんにお任せします。さあ」

イオは竜の姿となると、一気に山を越えてまだ朝日が昇って間もない頃、アトスの街を全て見渡せる丘のあたりにたどり着いた。

――と、正面から見知ったような姿の翼の生えた人間がゾロゾロと現れた。
総勢5名。

「あれは、デイドリームじゃねえか? なぁ、アレク?」

間違いなくデイドリームだ。
魔力は近づいている時はあまり感じなかったが、騎士団と接した途端に
その膨大な魔力を惜しげもなく晒し出した。
ユニスがブルッと身震いする。フィッチャーも以前の襲撃より危ないと直感した。

正面の毒々しい緑色の羽根をしたデイドリームが警告とばかりに名乗る。
甲高い女のような声が響く。

「アレクサンドラ様ご一行、歓迎いたします。我が名はパピヨン隊モルフォス。
ヴィクサス神聖国に代わりまして、これより無条件降伏を言い渡します。
すぐに地上に降り、武器を捨てて投降を。拒否すれば全員――殺します!!!」

モルフォスの武器は槍のようなものと鳥の仮面。
他の四人の武器は剣のようなもの、鞭のようなもの、オーブのおうなもの、
そして、一番小柄な人物は菱形の道具のようなものを持っている。

(あの中に、王国軍を窮地に追い込んだ道具がある……!?)

フィッチャーがそんな事を考えていると、一瞬で相手は移動し、
気が付けば四方360度を囲まれていた。

アレクの方を見て表情を伺う、しかし、その必要はなく、後ろから高らかな叫び声が上がった。

「断固拒否する! 我らホワイトクロス騎士団はアトスへと直行する! 貴様らを排除する!」

セレスティーヌの叫び声とともに、戦闘が開始された。
以前と同じ轍を踏まぬよう、まずはイオが素早く道に着陸をする。その周囲は森だ。

【アトス付近でホワイトクロスが「パピヨン隊」と対峙、
イオが着陸してとりあえず敵が5、味方が6といった感じです】
0172アレク ◆mhXMrsUqAc
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2017/08/20(日) 00:54:38.76ID:Y6NfCq0u
>「やっぱりいねぇか。実はここはジェノアの孤児院で、教会が身寄りの無い子供たちを匿ってた場所だ。
実は俺の息子がいた。ま、若い頃にできちまったガキで、生きてりゃ五歳になる。
シュタインめ、あいつらも連れ去って、どうするつもりだ……! 行くぞ……」
0173アレク ◆mhXMrsUqAc
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2017/08/20(日) 00:55:19.05ID:Y6NfCq0u
実は子持ちだったことをさらりと暴露するフィッチャー。
日ごろのモテっぷりを冷静に考えればさもありなんなのだが、それでも感情としては一同に軽く衝撃が走る。
セレスティーヌが突っ込もうとした矢先に腹の虫が鳴り、そのまま即席食事タイムに突入してその話題は封印されるのだった。

「そうだ、これでも食べて元気出して」

崩壊前のレクトゥスで保存食として買っていた大樹型ビスケットを渡す。
そしてフィッチャーの肩を叩き、セレスティーヌをはじめとする周囲の女性隊員達に配慮して小声で言う。

「きっと大丈夫さ、海賊王の息子なら大概のことではやられたりしない」

何はともあれアトスに向かって出発した一行。キャンプを張るも、酷い天候となる。

>「……「光」が動き出した……!」

イオが何かを察知する。どうやらこれは単なる天候不順ではなく敵勢力の影響によるものらしい。
セレスティーヌが寝入った頃、イオがフィッチャーを呼び出しどこかに行ったかと思うと、
元気になった様子のイオと逆に疲れた様子のフィッチャーが帰ってきた。
目的地に急ぐために、フィッチャーがイオに力を分け与えたのだろうと推察する。
しかしその手段までは思い至らなかったようだ。

「イオちゃん、次はワタシに言ってくれればいいからね。魔力でいいなら分け与える魔法も持ってるから」

神聖魔法には、自ら精神力を精神力が尽きた仲間に分け与える魔法があるのだ。
そんなこんなで夜が明けた。
0174アレク ◆mhXMrsUqAc
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2017/08/20(日) 00:57:01.18ID:Y6NfCq0u
>「おーい、そろそろ起きるよ」

「はーい……ってまたかい!」

もはやお約束となった、フィッチャーに女達が抱き着いた暑苦しい状況に一応突っ込んでおく。

>「では、私に乗ってください。一気にアトスに向かいます。案内は、行ったことがあると仰っていたセレスさんと、
マーテルさんにお任せします。さあ」


「そっか、飛べるようになったんだね!」

竜と化したイオの背に乗り、ひとっとびにアトスに到着する。その途端に、手厚い歓迎を受ける一行であった。

>「あれは、デイドリームじゃねえか? なぁ、アレク?」

「ああ、ご丁寧にお出迎えってとこか……」

ただでさえ強大な魔力を持つデイドリームが五人。リーダーらしき者が、強者の余裕をもって名乗りをあげる。

>「アレクサンドラ様ご一行、歓迎いたします。我が名はパピヨン隊モルフォス。
ヴィクサス神聖国に代わりまして、これより無条件降伏を言い渡します。
すぐに地上に降り、武器を捨てて投降を。拒否すれば全員――殺します!!!」

>「断固拒否する! 我らホワイトクロス騎士団はアトスへと直行する! 貴様らを排除する!」

アレクが返事をする前に、セレスティーヌが高らかに開戦を宣言。戦闘は始まった。

「怯むな! 数ではこっちが勝ってる! フルポテンシャル!」

味方全員に身体能力強化の加護をかけ、《ブリンク》を使いいちはやく接敵する。
飛んで火に入る夏の虫とばかりのに敵が寄ってきたところで、爆発魔法をお見舞いする。

「フォースエクスプロージョン!」

相手はデイドリームの精鋭部隊。
流石に致命傷には至らないだろうが、開幕時に使うことで敵をひるませ、
また多少は爆風に吹き飛ばされることで五人の陣形を崩す効果があるだろう。
0175フィッチャー ◆9tRgsDTMos5G
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2017/08/22(火) 00:43:30.81ID:S+0AQQj8
>「フォースエクスプロージョン!」

「!!」

アレクの魔法は完全に虚を突いた。
さらにイオの咆哮、セレスティーヌが持つ二本の剣などを見て、このままではこちらも犠牲者が出ると思ったのだろう。
一瞬で全体に大きな打撃を与え、パピヨン隊はいよいよもって伝家の宝刀を使わなくてはならなくなった。

「止むを得ん、普通の手段ではこいつらは殺せぬ、“テイン”を、ムスクス」
「はっ!」

菱形の物体を持ったデイドリームがそれを掲げると、一瞬であたりは光に覆われ、
かと思ったら、六人は一気に闇に包み込まれた。

――

「イオの、気配が……消えた!?」

ステッセルは北方に向け軍を進ませる際、異変に気付き、周囲の将官たちに命令を飛ばす。

「これより副官のラムスに北方軍撃破の隊の総大将を頼む!
私はドラケン隊を率い、急ぎアトスへと赴く! 何かがあったはずだ」

おおよそ50あまりの飛竜による機動部隊が突如、東へと進路を変えた。
目的はイオの許、そしてアトスだ。
先ほどから敵陣営への「オリンパスの光」の苛烈さについても、意義を唱える必要がある。

「待っていろ、イオ。何が不満だったのか分からないが、必ず私が助けにいく」
0176フィッチャー ◆9tRgsDTMos5G
垢版 |
2017/08/22(火) 00:43:59.64ID:S+0AQQj8
――

「くそっ、どうなってやがる!」

フィッチャーがたどり着いた場所は真っ暗な暗がりで、時折稲光のごとく周囲の様子が映し出される。
そこは何かの体内のように赤く不気味な血管が浮き出ており、無数の目玉によって監視されていた。
怪物に多少はなれている彼でも、これだけグロテスクな場所は初めてだ。軽く発狂しそうである。

途端、ナメクジのような怪物と蜘蛛のような怪物が素早くフィッチャーを取り囲む。赤い肉体に
無数の目玉。口のような部分からは涎が垂れ、それは明らかに捕食者であることが分かる。

「うぉぉおおおお!!!」

ただ振り回す。自分よりも大きなその怪物は、自分の倍くらいある真っ赤な天井にへばり付いたり、
飛び降りたりしながら襲い掛かった。
一振り、二振りと剣を振ると、怪物どもが血飛沫を上げて潰れる。
怪物は頭を潰されてもなお、襲い掛かってくる。「核」を破壊しなくては殺害できない、異形の者だ。
これを南方の神話では「アローカ」と呼んでいた。少なくとも教会の神話にはないものだ。

「きゃあああ!!」

ユニスのと思われる叫び声が聞こえる。フィッチャーは急ぎ残りの怪物を片付けながら駆ける。
「女一人守れずして、何がナイトだよオォォ!」
その声も恐怖によって震えているのが自分でも分かった。

――「彼ら」四人はただアレクを狙って、“テイン”の中を駆ける。
これで「コボルト最強の猛将」と呼ばれたドーベルをも殺したのだ。

「途中に女が居たら殺せ。男よりは筋肉が脆い。恐らく一振りで真っ二つになる」
「いたぞ、アレクサンドラだ! 我々四人、いや、三人でも殺せるか……」

アレクが早くも発見され、モルフォス他二名が狭い“テイン”の中をすり抜けるようにして襲い掛かる。
彼らにはこの中でも専用の戦闘態勢が準備されていた。
四人のデイドリーム戦士たちは特別な透過能力が施されており、“テイン”の中を自由に動ける。
文字通り特殊部隊だ。

「――バイオ・エレメンタル……!」

モルフォスの槍の先に緑色の毒々しい光が集結し、それが一気に放たれてアレクの全身を包む。
「蝕め……そしてその間にお前たちが止めを刺すのだ」

後ろからはオーブを持ったデイドリームが詠唱をはじめ、剣を持った者はその切っ先をアレクへと向ける。
アレク絶体絶命、そう思った矢先のことだった。

――

「はぁ、はぁ、まだ私の剣どもは血を欲しているぞ……もっとホネのある敵はおらぬのか……!」

「団長様、落ち着いてください!」

セレスティーヌが早くも怪物どもを屠り、周囲の壁にある目玉たちを潰しながら駆けていく。
丁度イオの近くに飛ばされたらしく、彼女の近くにいる怪物たちも一掃された。

「馬鹿な、「アローカ」どもが破られた・・・だと!? こやつらは恐怖を感じないというのか?」

鞭を持ったデイドリームが素早く詠唱を始め、周囲の異常な妖気にも全く怯まないセレスティーヌに
魔法を連射する。しかし、それはイオの全力での防壁によって弾かれ、逆にセレスティーヌの一撃を受けることとなった。
0177フィッチャー ◆9tRgsDTMos5G
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2017/08/22(火) 00:44:44.54ID:S+0AQQj8
「チッ!」「このっ! なかなかやるようだな……」

セレスティーヌが素早く剣を振るうも、ガキンと鞭によって弾かれ、今度は外壁の内側へと
デイドリームが隠れてしまった。どうやら隠れることができるらしい。

「くっ、光が……!」

灯りが消え、一方的にこちら側が攻撃を受ける側となった。
鞭の一撃、一撃がセレスティーヌを襲う。
「ぐ……」

しかし、幸か不幸か、セレスティーヌは傷みを感じないのだ。
イオが冷静になり、角から光を放って相手の位置を把握する。そして氷結魔法を集結させ、
放つ。

一瞬のことだった。
光の中に現れた敵は姿を現すと同時に壁ごと凍りつき、そこにセレスティーヌの躍動する筋肉から重い一撃が
横薙ぎに放たれると、その肉体は腹の辺りで分断され、臓腑を撒き散らしながら白眼を剥いてそこに張り付いた。

「一人殺っただけでは安心できぬ。まだフィッチャーやアレクが!」

モルフォスら三人がまさにアレクの止めを刺そうと思ったところ、後方から轟音が聞こえる。
それはイオに移動力を増加させられたセレスティーヌの姿だった。
勢い余って蹴りをオーブを持った敵へと放つ。

慌てて灯りを消したパピヨン隊だが、まだモルフォスの放ったバイオが不運にもアレクの肉体と
その周辺で輝いていた。敵の位置は丸分かりだ。

「さあ、今です!」

イオが氷結魔法を放つとバイオの効果が薄れ、アレクの体に自由が利いてくる。
同時に敵が一瞬とはいえ動きを止める。
セレスティーヌは剣の一本をアレクの手目掛けて投げた。

「アレク、挟み撃ちにするぞ!」


【一行、6人とも“テイン”に閉じ込められ苦戦中。ムスクス以外の4人が襲撃に入り、1人が返り討ちに遭う。
現在、テイン奥でモルフィス含む三人のパピヨン隊とアレク、セレス、イオが交戦中。
残るムスクスはテインの外で様子を見ている状態】
【そろそろ容量オーバーかもなので、次を立てていただけると助かります】
0178アレク ◆mhXMrsUqAc
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2017/08/22(火) 21:54:20.10ID:EvyhW1N1
>「止むを得ん、普通の手段ではこいつらは殺せぬ、“テイン”を、ムスクス」
>「はっ!」

デイドリームの一人がひし形の物体を掲げると、辺りは一瞬にして闇に飲まれた。
ただの闇ではない、無数の目玉によって監視され化け物が蠢く異空間だ。
多少の事では動じないアレクもこれにはドン引く。

「おいおい、お仕置き部屋にしても過激すぎだろ」

>「うぉぉおおおお!!!」
>「きゃあああ!!」

仲間達の混乱した雄叫びや悲鳴が響き渡る。おそらく異形の怪物に襲われているのだろう。
アレクを襲ってきたのは異形の怪物ではなく、デイドリーム本人達が直々にだった。

>「いたぞ、アレクサンドラだ! 我々四人、いや、三人でも殺せるか……」

「貴様ら、この空間内で動ける……だと!?」

普通はこのような異空間閉じ込め系の魔法は中で敵がのたれ死ぬのを待つもので、詠唱者本人達自ら中に入ったりはしない。
その先入観があだとなり、毒属性と思しき魔法をまともにくらってしまった。

>「――バイオ・エレメンタル……!」

「――ッ!?」

緑色の光に包み込まれ、一切の体の自由を奪われた。
解毒の魔法も持っているのだが、声を出すことすら出来ない。

>「蝕め……そしてその間にお前たちが止めを刺すのだ」

神さま助けて―――――ッ!! もし声が出ればそう叫んでいただろう。
日頃あまり真面目な方の神官ではないアレクだが、困った時の神頼みである。
万事休すと思われたその時、後方から轟音が響いた。
イオの援護を受けたセレスティーヌがまさに竜巻のように突進してくる。
アレクの目には後光が差した戦女神に見えたことだろう。

>「さあ、今です!」

イオの氷結魔法で緑色の光が砕け散り、体の自由が効くようになる。

「ああっ、女神さま!」

>「アレク、挟み撃ちにするぞ!」

セレスティーヌが投げ渡した剣を受け取ると、さっそく剣に加護をかける。

「よし来た! エックス斬りッ!!」

その名の通り、二人が斜めから斬りかかり、X軌道の挟み撃ちにする連携技。
これにより、まず一人を行動不能に陥れる。それにより、残る二人に「まさか!」という感じで僅かな隙が生まれる。

「かーらーのー、隼の舞!」

その隙を見逃さず、二人一組の舞いのような連続攻撃。
都合よく息が合いすぎではないのかと思われそうだが、こう見えて元々は第二分隊の隊長と副隊長。
連携技の一つや二つ持っているのだ。
0179アレク ◆mhXMrsUqAc
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2017/08/22(火) 21:57:51.39ID:EvyhW1N1
【容量は最近の仕様変更で730kbぐらいになったようなのでもう暫く大丈夫なはず!】
0180フィッチャー ◆9tRgsDTMos5G
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2017/08/24(木) 01:39:25.07ID:pbCnfoNL
>「よし来た! エックス斬りッ!!」

「ギァァ……!」

まさかの挟撃にモルフォスは槍で受けようとするもフルポテンシャルを受けた
セレスティーヌの怪力で砕かれ、
そのまま一撃をもろに食らうこととなった。その場に倒れ伏す。
0181フィッチャー ◆9tRgsDTMos5G
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2017/08/24(木) 01:40:06.01ID:pbCnfoNL
「まずい・・・」

>「かーらーのー、隼の舞!」

横から飛び出し、モルフォスの補助に入ろうとした二人が無数の剣撃によって犠牲になる。
瞬間、血と折れた羽根が飛び散り、特にセレスティーヌの重い攻撃は骨をも絶った。

「おのれ……このままで済むと思うな! ムスクス! “テイン”を閉じろ、閉じるのだ……!」

その掛け声とともに、気味の悪いダンジョンの天井が迫り、一気に全てを飲み込まんとする。

「私も脱出す……ぐっ」

セレスティーヌによって首を掻き切られたモルフォスはそのまま血を吐いて息絶える。
しかし、このままホワイトクロス騎士団は“テイン”ごと押しつぶされ様としていた。

「セレス、こっちだ!」

フィッチャーが竜化したイオの背に乗り、大剣を上へと突き刺そうと必死になっている。
ユニスも一緒で、大怪我をしてぐったりしたマーテルを抱えている状態だ。

「待て、フィッチャー、その役は私に任せよ! アレク、ユニス、イオ、私に全ての力を」

徐々に迫り押しつぶさんとするテインの内壁。赤々としたそれからは無数の目玉が彼らを見つめている。
気にせずイオの背に乗ったセレスティーヌはさらにフィッチャーの背中にも乗り、肩車の要領で
天井に強烈な突きを浴びせた。

イオとアレクの補助魔法がさらに限界までセレスティーヌの力を引き出す。
それは既に鋼鉄の塊をも真っ二つにするだけのパワーを持っていた。

「ユニス、あれを」「はい! それ、3、2、1、……」

カッという光とともに爆発が起こる。
それは「いざ」という時のためにペトラから貰っておいた最後の爆薬だった。
爆風がセレスティーヌの髪や顔を焦がし、周囲に火傷を負わせるも、気にすることはない。
ただテインを突き破らんという強烈な一撃が天井を襲った。

それはついに空をホワイトクロス騎士団に見せ、セレスティーヌは踊るようにして二本の剣を振り回し、こじ開けた。

「今だ!」

イオが勢い良く飛翔する。
フィッチャー、セレスティーヌが穴をこじ開けると、下からアレク、続いて三人で
マーテルを抱えたユニス、そして最後に飛竜となったイオを強引に引き上げた。
0182フィッチャー ◆9tRgsDTMos5G
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2017/08/24(木) 01:41:14.02ID:pbCnfoNL
「馬鹿な……」
上空で眺めていたムスクスは、状況を察すると一目散に逃げていった。

開けた場所に放置された謎の巨大な肉塊は消滅し、跡には菱形の物体が残った。
“テイン”には違いないが、既に魔力は感知されることはない。
「念のため」と、ユニスはそれを回収した。

「一匹逃がしたのか…… アレク、同胞をついに殺す時が来るとは思わなかっただろ?
奴らはお前を何が目的で狙っていたんだ?」

フィッチャーがそんなことを呟いていると、セレスティーヌが急かす。
イオの角を引っ張り、叫んだ。

「話は後だ。すぐにアトスに向かう。ユニスはマーテルの回復を。
私がアトスの着陸位置については指揮する」

「セレス様、私も無事ではないのですが……」

勝手に団員にされて先ほど狭いテインで圧迫されてダメージを負ったイオは困ったような顔をしながら、
再び竜に戻り、翼を広げた。

――

「どういうことだ? 天帝の直属のパピヨン隊がやられ、おまけにアレクサンドラをとり逃すとは……
アトラスムスよ、これはどういうことなのだ!? 子を生す楽しみ……いや機会が台無しではないか」

庭園浴場で全裸姿で膝の上に女を抱きかかえ、周囲にも武装、非武装の女たちを従えた、
天帝カリストゥスが振り向く。

「モルフォスの気配が消えました。どうやら作戦は失敗のようです。ムスクスがこちらに逃げ、
アレクサンドラがアトスに向かってきております」

アトラスムスが同じく裸で醜い下半身を剥き出しにしながら現れる。こちらも緊急時で
驚いているようだ。
0183フィッチャー ◆9tRgsDTMos5G
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2017/08/24(木) 01:42:08.34ID:pbCnfoNL
「ええい、アースラントの上空に向かわせた「オリンパスの光」をアトスへ戻せ……
シュタインや神聖騎士団にもすぐに戦闘準備をすることを命じておくのだ。これは天帝の命だ。
それと、最も増援の出せるアースラント軍を援軍に向かわせる。ステッセルの元へ使者を。
こちらからも「ブラッククロス騎士団」を差し向けよう。しかし、アレクサンドラ、あれは何者なのだ?」

「……はい。あれは私と同じフローレンを父に持つ者。ただ、非常に特殊な環境で生まれた故、
私のことを知りません。「神」である私の「ブラザー」であることは事実なのです。ただ、それを知られぬためにも、
消すしかありません。錬金術に埋もれた父と同じく、結局は「人」の道を進んだ俗物。とはいえ、デイドリームとしては並外れた能力を持っていることは確かです。
それが開化されずに消えてくれれば良いのですが……」
0184フィッチャー ◆9tRgsDTMos5G
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2017/08/24(木) 01:42:45.61ID:pbCnfoNL
――

「馬鹿なァ…… あの小娘とフィッチャーが生きていたと、それで、パピヨン隊がそやつらにやられて全滅ゥ、
それで、ぬけぬけとお前は帰ってきたというのですか……?」

「しかし、テインは既に破壊され、セレスティーヌは既にまともな知性を持っておりません。
自滅してこのアトス大聖堂に辿りつく前に斃れるがオチかと」

「プレシャス!! 愚かな、愚かな、愚かヌァァァ――!!」「ぎゃああァァ……」

ムスクスがシュタインの肥大化した腕によって頭を潰され、絶命しその場に倒れ伏す。
と、そこに伝令が続々と現れた。

「報告します! 南門がジャイプール軍と思われるエントを含む亜人の軍勢による襲撃を受けています!」」
「申し上げます! 北門がケン族とモン族の大軍による奇襲を受けています。恐らく北方の軍勢かと!」
「報告、上空からワイバーンによる襲撃があったとのことです。数はおよそ200!」

シュタインはうろたえた。これだけの攻撃が同時に、それも最も勢力として勢い付いていた
ヴィクサス神聖国を盟主とする神聖同盟。それがまさか中心部たる聖都を危険に曝されるとは。
青筋を立てながら、シュタインは周囲の司教たちに命じる。

「総力を持って迎撃にあたりなさい。北と南には通常の兵の他に死霊術士を加えます。
さらに、空中の奴らにはガーゴイル部隊と天使兵を。容赦なく撃ち落としてしまいなさい
それと、A地点とB地点に兵を。」

慌しく兵たちが動く中、シュタインはゆっくりと大聖堂を抜け出し、ある場所を目指した。
――アトス山の麓。
そこには「天界」へと続く魔法陣がある。
丁度その頃、山の麓からは黒い衣服とフード、マントを身に付けた20人程度の集団がアトスの街に向かっているところだった。
全てが女性、精悍な顔に優れたスタイル、胸には黒い十字架をぶら下げている。獲物は一人ひとりが違う。
精鋭「ブラッククロス騎士団」が動き出したのだった。


「では、私も“隠れる”としましょう……その間に小娘と盗賊どもが無残に始末されることでも
祈っていますか、フッヒヒヒヒ……!!」

――

アトスでは既に襲撃が行われているようだった。

≪あれは、ステッセル様の……!≫

アストラの青地に黄色の十字紋様の布をしたワイバーンを見て、イオはただちに気付いて叫んだ。
天使兵たちの攻撃に明らかに苦戦しているようだが。

「あのコボルトの旗はカボス隊の……ってことは、デルタが!?」

すっかり元気になったマーテルが北口の亜人部隊を見て叫ぶ。

「南の方はあの時、レクトゥスで助けてくれた、エントのみんなだわ!」

ユニスもエントたちの奮戦を見て叫ぶ。強固なアトスの城門に結構な数の守備部隊がいる。簡単に破れるものではないだろう。

「すまない、皆……今はその時ではない。全ては終わってから、合流して勝利を祝うとしよう。
向かう先はあちらだ。大聖堂の裏手。東側尖塔の旗の立っているところから二本目のあたりだ。
あのあたりは守備が手薄だ。手前の天井が平らな建物の上に降りて、一気にあそこの門を目指すぞ!」
0185フィッチャー ◆9tRgsDTMos5G
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2017/08/24(木) 01:43:05.89ID:pbCnfoNL
セレスティーヌの指示通り、アトス市街地の奥、大聖堂の手前の建物に降り、イオは人間の姿になって
一気に白十字装束の六人は裏口を目指す。話によればここに少数の門番がおり、破ればあとは最短で
シュタインらの待つ大聖堂中心部の地下礼拝堂、魔力源へとたどり着けるはずとのことだ。

「やけに静かだな・・・」

少ないと言われていた見張りがいない。
ガチャリ、と音が響く。お互いに顔を見合わせるが、その音は別の場所から鳴っているようだ。
ガチャリ……

「しまった……!!」

フィッチャーが叫ぶも既に遅し。周囲jは多くの兵たちに囲まれていた。
その数は200はくだらないだろう。先ほどの門も分厚い衝立のようなもので塞がれ、
周囲をフルプレートと槍で武装した大勢の甲冑兵、さらに先ほどの建物以外の多くの高台からは
軽鎧でフル装備の弓兵たちがボウガンを構え、その後方には各所に魔術兵と思われる人物が数名控えている。
甲冑兵たちの中から特に頑丈で魔力を覆ったエンチャント・メイルに巨大なメイスをした男が現れた。

「ふははは、かかったな! 私はルーカン・マシージャス。シュタイン様の近衛兵隊長だ。
貴様らがここから来ることは大分前から読めていたのだよ。プレシャス……
セレスティーヌ、アレクサンドラ及び配下の兵どもをパピ……聖天使隊殺害の容疑で投獄する。抵抗すれば、命の保証はないと思え」

四人のフルプレート兵が前進し、一番前に出ているセレスティーヌを槍で取り囲むようにして武器を捨てるように脅す、
槍の穂先が彼女の頬に触れようとするか否かのところだった。

「邪魔をするな、どけ」

セレスティーヌがそう言って槍の一つを思い切り取り上げ、へし折る。

「くそっ、この女を殺せ!」

シャキン、と甲冑兵が剣を抜き、残りの三人が槍を突き出そうとした瞬間――

一瞬で抜かれたセレスティーヌの二本の両手用剣によって大量の血飛沫が上がった。
訓練された甲冑兵たちは槍と剣で素早く受けたが、それごとへし折られ、同時に分厚い鉄の鎧を貫通させ、
鉄の破片と無残な八つの肉片に変えてしまった。
ドバドバと血肉や臓腑の落ちる音、同時に金属片の崩れる音が響き渡り、

オォォ……という戦慄に似た声が響き渡った。この数の兵が怯んだのだ。

「まさか、たったそれだけの人数で我々を相手にするのか!? 構わん、かかれ、殺せー!」

ルーカンの指揮で素早く弓兵たちはボウガンを構え、甲冑兵たちは槍を持って突っ込んでくる。
フィッチャーが前線を維持するべく、前に出た。ついにアトス内部での戦いが幕を開けたのだ。


【容量の件、了解です。また、一気に話を進めてしまってスミマセン。】
【パピヨン隊全滅、シュタインはアトスの市街から既に脱出、逆にブラッククロス騎士団が接近中。
聖都アトスは北、南、空中から有志たちが襲撃するも、アトス守備軍によって防衛されています。
ホワイトクロス騎士団6名はその隙を縫って大聖堂に奇襲を仕掛けるも、それが看破され、
近衛兵長ルーカン率いる200程度の軍勢によって包囲されている状態】
0186アレク ◆mhXMrsUqAc
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2017/08/24(木) 23:54:38.50ID:DTCZC2UX
なんとかパピヨン隊を下し、テインから脱出した一同。

>「一匹逃がしたのか…… アレク、同胞をついに殺す時が来るとは思わなかっただろ?
奴らはお前を何が目的で狙っていたんだ?」

「同胞とはいっても完全に奴らに毒されてしまってたからね……。まあ人間同士が皆仲がいいわけではないのと同じようなものさ。
目的は分からないけどワタシがデイドリームであることに関係してるんだと思う」

>「話は後だ。すぐにアトスに向かう。ユニスはマーテルの回復を。
私がアトスの着陸位置については指揮する」

>「セレス様、私も無事ではないのですが……」

身を張って貢献するわりに雑に扱われがちな苦労人ポジションにいつの間にかおさまってしまったイオであった。

「あはは、ごめんごめん。魔力を分けるって約束だったね。――トランスファー・メンタルパワー」

神聖魔法で魔力を供給し、これによりイオは再び飛べるようになった。
アトスに付いてみると、何やら騒がしい様子。様々な勢力がすでに襲撃を始めているのだった。

>≪あれは、ステッセル様の……!≫
>「あのコボルトの旗はカボス隊の……ってことは、デルタが!?」
>「南の方はあの時、レクトゥスで助けてくれた、エントのみんなだわ!」

てっきり敵勢力の一員だと思っていたステッセルは正気を取り戻し、デルタは生きていた。
更にエント達までも力を貸してくれるという。
しかし敵もさること、状況は予断を許さない。

>「すまない、皆……今はその時ではない。全ては終わってから、合流して勝利を祝うとしよう。
向かう先はあちらだ。大聖堂の裏手。東側尖塔の旗の立っているところから二本目のあたりだ。
あのあたりは守備が手薄だ。手前の天井が平らな建物の上に降りて、一気にあそこの門を目指すぞ!」

セレスティーヌの指示に従い裏口を目指す一同。

>「やけに静かだな・・・」

「ここまで静かだと君が悪いね……」

そう言っていた矢先、案の定罠だったようで、気付けば多くの兵に取り囲まれていた。
0187アレク ◆mhXMrsUqAc
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2017/08/24(木) 23:55:20.15ID:DTCZC2UX
>「ふははは、かかったな! 私はルーカン・マシージャス。シュタイン様の近衛兵隊長だ。
貴様らがここから来ることは大分前から読めていたのだよ。プレシャス……
セレスティーヌ、アレクサンドラ及び配下の兵どもをパピ……聖天使隊殺害の容疑で投獄する。抵抗すれば、命の保証はないと思え」

「近衛兵隊長……さしずめ大ボスの前座ってとこか。
そっち的には罠にはめたつもりだろうけど自ら首を差し出しに来たようなもんだぞ……何故なら……」

アレクがその言葉の続きを言うより早く、セレスティーヌが大立ち回りを演じはじめた。

>「邪魔をするな、どけ」
>「くそっ、この女を殺せ!」
>「まさか、たったそれだけの人数で我々を相手にするのか!? 構わん、かかれ、殺せー!」

4人のフルプレート兵が一瞬にして屠られ、ひるむ敵の軍団。

「――ね? 分かったっしょ? 分かったら黙ってここを通してくれないかな?
そっちは死なずに済むしこっちは労力が省けて双方幸せになれるよ!」

が、もちろんこういう場合はとりあえず「者ども出会え出会え!」がお約束である。
今回もその例に漏れなかったようだ。

>「まさか、たったそれだけの人数で我々を相手にするのか!? 構わん、かかれ、殺せー!」

こうしてついにアトス内部での戦闘が幕を開けた。
セレスティーヌとフィッチャーが中心となって前線を立ち回る。

「――セレスティアル・スター!」

まずは数を減らすべく、アレクは敵の後衛目がけて大規模攻撃魔法を撃ちこむ。 天上より降り注ぐ幾条もの光の柱が敵を撃つ。
続いて、セレスティーヌの後方に付き支援に回る。
今のセレスティーヌは一同の中でダントツの戦闘力を誇るためそれが一番効率的なのと、
痛みを感じないために無鉄砲になっている彼女の怪我を最小限に抑えるためだ。
剣戟に合わせて攻撃魔法を叩きこんだり、敵に致命傷を負わされそうになったら短距離瞬間移動の魔法をかけて回避させたりする。
0188フィッチャー ◆9tRgsDTMos5G
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2017/08/26(土) 17:50:36.14ID:zIT1qVpt
>「――ね? 分かったっしょ? 分かったら黙ってここを通してくれないかな?
そっちは死なずに済むしこっちは労力が省けて双方幸せになれるよ!」

「何を戯言を。こちらは200以上の精鋭の兵がいる! それにいずれは増援が現れる。
苦しまずに投獄されるか、死ぬか、どちらか……我らに負けはない!プレシャス!」

セレスティーヌの一撃があるも、ルーカンは若干振るえ声になりながらもアレクの言葉を一蹴。

「行くぞ!」「うおおおお!!」

ドン、ドンという音とともに金属ごと甲冑兵たちがセレスティーヌに切断されていく。
その後方からはフィッチャーが死角を守るように進む。
血や臓腑が飛び散るも、敵は徐々にこちらを取り囲み、追い詰めようとしているようだ。

更に、三方向から弓兵も動きだした。近衛兵だけに落ち着いている。
片目を瞑ってクォレルを構えた兵がセレスティーヌの頭を、首を、胸を、背中を、脚を、手を狙う。
しかし、その時だった。

>「――セレスティアル・スター!」

「な、なんだこれは……うわぁぁぁ!!」

最初の隙を防護したのはアレクだった。それは攻撃魔法だが、一方向の弓兵たちの視界を同時に奪い、
一部はその破壊力の犠牲になっていった。

「怯むな、一人三人以上で相手にしろ! 特にそのリーダーの女を殺せ!」

狂戦士と化していたセレスティーヌだったが、周囲への知覚が衰えた訳ではなかった。
突いてくる甲冑兵の熟練の槍をかわすと、その腹に剣を突き入れ、そのまま持ち上げて、
次に飛来してくる矢への盾とした。
鉄の死骸に一通りの矢が突き刺さると、次に襲い掛かる相手の腹へと貫通した部分を突き刺し、
そのまま引き抜く。
そして同時に横からくる敵へはもう一本の剣で受け、そのまま槍ごと敵の顎を狙った。
ギャァァという声とともに槍が折れて敵の兜が外れ、顎がぱっくりと割れて絶命する。
0189フィッチャー ◆9tRgsDTMos5G
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2017/08/26(土) 17:51:50.71ID:zIT1qVpt
「ぬぉぉおおお!!」
フィッチャーはひたすらにセレスティーヌの真後ろから襲い掛かる敵の攻撃を受け、
大剣をその腹へと叩き込んだ。強靭な甲冑も叩き割るようにして脇腹を切り裂く。
確実に相手の戦力を削いでいくのだ。

再び矢による次の一波が襲う。フィッチャーは必死になって大剣で弾くも、
一部がセレスティーヌへと刺さっていく。
しかし、不思議なことに半分はかすりもしなかった。恐らくアレクの「ブリンク」の効果であろう。

セレスティーヌはじれったくなり、アレクの補助による加速の効果も受けて、矢を撃ってきている
粗末な建物に向けて突撃した。
0190フィッチャー ◆9tRgsDTMos5G
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2017/08/26(土) 17:52:59.95ID:zIT1qVpt
「たあああぁぁぁ!!!」「くそっ、こっちに来るぞ!」

弓兵たちが慌てて矢を発射するも、既に建物の下に回りこまれ、柱が次々と分断されていく。
ガラガラガラ…… ドォォーン……という音とともに建物が崩れ、そこにセレスティーヌの無常な一撃が次々叩き込まれた。
0191フィッチャー ◆9tRgsDTMos5G
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2017/08/26(土) 17:53:43.21ID:zIT1qVpt
時折敵の死体を上に持ち上げるが、これは恐怖感を与えるだけのためではない。
この間も敵の射撃が続いているため、常に盾を用意しておかなくてはならないのだ。
と、ついにセレスティーヌの脚に二本の矢が刺さる。

フィッチャーが救援に行った兵を片付け、アレクが補助のために同方向にいったものの、
結果としてイオたち三人と彼らを分断することとなってしまった。
それも、セレスティーヌらは弓の小屋跡に追い詰められ、大勢の兵たちに取り囲まれることとなる。

辛うじてマーテルがボウガンで一人を仕留め、ユニスも奇跡的に甲冑兵の鎧をへこませて戦闘不能にするも、
こちらは少数の敵兵により追い詰められていた。
と、いうのも疲れたイオが人間形態で殆ど機能しないのが大きな原因だった。
「このままでは、団長とフィッチャーが・・・」
ユニスが敵の攻撃を辛うじて受けながら呟く。

「怪力女の脚を封じたぞ、あとは追い詰めて一気に突き刺して殺せ。
女の首を取った者には報奨金金貨300枚! 残りの奴らも一人金貨10枚追加だ!」
「ウオオオォォオ……」

あちこちが血糊と屑鉄で染まる中、尚も甲冑兵たちは迫り、追い詰めてくる。
弓兵たちもまだ半数以上が健在だ。

(終わったか……)
フィッチャーが脳裡に死を意識した頃には、既にセレスティーヌは怪我をした脚で駆け出していた。
フィッチャーとアレクはただ、その後ろに続いた――
0192フィッチャー ◆9tRgsDTMos5G
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2017/08/26(土) 17:54:21.29ID:zIT1qVpt
セレスティーヌは最初の矢をボロボロのマントで受けると、まずは功を焦って勢い良く掛かってきた
三人の甲冑兵を分断する。全ての鉄屑の付いた肉塊が地面へと付く前に次の一撃で時差攻撃をしてきた敵の腹を突く。
絶命した敵を刺したまま持ち上げて敵の進行方向を塞ぎ、敵の槍と矢をそちらに逸らし、
同時に横から来た相手にも剣をお見舞いする。腹から臓腑を散らして崩れ落ちる前に次の槍をへし折り、
そのまま上半身を甲冑ごと刎ねる。

オォォォォ……

周囲の戦慄する声は、まるでフィッチャーの心理を表しているかのようだった。
それでも敵の攻撃は収まる気配がない。
まだ斬った人数は30人がせいぜいだ。敵の士気をくじくには足りない。

敵の槍や矢がセレスティーヌにかすり、刺さる。叫ぶアレク。
それでも止まらない。セレスティーヌは前進し、少し怯んだ敵の腹を一薙ぎした。
敵の甲冑に皹が入り、一部の兵は血を噴き出す。そこを疾駆するセレスティーヌは
一人に思いきり剣を突き刺し、一人に脚蹴りをかました。
突き刺した剣はそのまま後ろにいた兵をも串刺しにし、絶命させる。
蹴られた相手も脚を折られ、その場に倒れもがく。
セレスティーヌの狙いは後方にいた二名の魔術兵だった。あっという間に魔術兵たちは残りの剣の犠牲になり、断末魔の声とともに
二つの肉体を四つの憐れな血まみれの襤褸切れへと姿を変えていった。

後ろから不意に攻撃を受けたセレスティーヌは剣でそれを弾くも、あちら側の槍とともに彼女の剣もパキリと折れた。
とうとう人を斬り過ぎて刃零れを起こし、脆くなっている部分が打撃で破壊されたのだ。

「丸腰だ! 行け、殺せ!」

フィッチャーらはあまりのセレスティーヌの勢いについていけず、十人程度の敵に寸断され、
お互い連携が取れなくなった。逆にいえば弓兵からは狙われにくくはなったが。
「うぉぉおおおお! やらせるかよ!」
フィッチャーは傷を負いながらも甲冑兵たちに果敢に斬りかかっていった。
アレクの加護のおかげで脚が軽い。よく訓練された敵の攻撃を受け流し、互角以上の強さを見せている。

一方、セレスティーヌの方は凄まじいものだった。
まずは掛かってきた甲冑兵の槍を素手で掴むと羽交い絞めにして敵の槍を受けてそのまま喉を拳で撲って絶命させ、
奪った槍で同士打ちをした敵の心臓を貫いた。
そして敵の死体から剣を抜く。彼女にとっては小ぶりなナイフのようなものだが、逆にいえば硬度さえあれば切れ味は充分だ。
槍での攻撃をしゃがんで避け、そのまま甲冑兵の脚を剣で切り裂く。後ろから来た敵は槍ごと両腕を切り裂いた。

「ギャァァァ、助けて、助けてくれぇぇ……」
「死にたくない、死にたくないよぉ・・・」

フルプレートの弱点はすぐに脱げないこと。片脚を失った兵はそのまま痛みに耐えながら失血死を待つしかない。
また、両腕を失った敵もセレスティーヌどころではない。血を噴き出しながら周囲に助けを求めるも、皆が皆必死で誰も相手にしてくれない。
やがて痛みと失血のショックと恐怖で膝を突き、地面に倒れ伏して絶命した。
脚を失った兵も同じで、壁へとうなだれるようにしてやがて動かなくなった。

また、その剣が使えなくなれば素手や素足で応戦した。敵の重みで押し倒されるも、逆にそれを盾にし、
再び立ち上がり敵の腰から剣を奪う。アトス側の近衛兵たちは次第に数を減らしていった。
フィッチャーと合流する頃には周囲には脚や腕、そして蹴りや拳で鎧を潰され、その衝撃で
のた打ち回り、その多くが命を落としていった。
0193フィッチャー ◆9tRgsDTMos5G
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2017/08/26(土) 17:56:18.14ID:zIT1qVpt
「セレス……」
フィッチャーは何かを覚悟するような顔で、ついに、セレスティーヌに己の大剣を手渡した。
自分の商売道具だが、明らかに彼女が持っていた方が有利だ。
フィッチャーはのた打ち回る兵から剣を奪うと、それを使って今度はユニスたちの手助けに入った。

――再び悲鳴、叫び、戦慄が戦場を覆っていった。
オォオォォ……という声は敵兵によるものだ。
フィッチャーの剣はいとも簡単に精鋭の甲冑兵たちを武器ごと分断し、ついに二つ目の弓兵の拠点も破壊され、
殺戮が行われた。泣き声すら聞こえる。

ボロボロになったセレスティーヌの鎧からはあちこちから血の滲んだ素肌が垣間見える。
あちこちが脈を打ち、特に臍周りの筋肉は割れて威圧感を出していた。
既に全身が悲鳴を上げているのだろう。しかしセレスティーヌは止まらない。
甲冑兵たちを斬っては捨て、多少の傷は厭わずに突撃を続ける。
ついに、甲冑兵たちが後ずさりをはじめた。
もうアトス側の死者は100人を軽く超えているだろう。

「プレシャス! プレシャス……」

恐らく分隊長格なのだろう、近衛兵が祝福の言葉を並べはじめた。
絶対に下がる訳にはいかない。ヴィクサスの教えだけが彼を繋ぎ止めていた。しかし――

「あの女、化け物……」「もう嫌だ、あんな奴と戦いたくない……!」「死ぬのは嫌だ、俺は逃げるぞ!」

ついに、痺れを切らしたように近衛兵から脱走者が現れた。その流れに乗るようにして、
次々と50人程度が離脱していった。それでも駆けつけた増援を含め、まだ100人近くが取り囲んでいるあたりがさすがは狂信の聖都である。

「そろそろ、降伏してそこを開けてもらえるか? うちの団長はあまり寛容とは言えないんでね」

フィッチャーが脅すと、ルーカンは鼻で笑うようにして、しかし額に汗を書きながら言った。

「愚か者どもが……これだけの潤沢な装備がありながら、女一人殺せぬとは……
では、次の作戦と行こうか……んにゃっぴ!」

フィッチャーらによって周囲の敵を一掃したマーテルが、ルーカンの喉元めがけて矢を放ったのだ。
その矢はルーカンが引き抜くとすぐに血を噴いたが、やがて醜い肉の塊のようなものを出して瘤状に固まった。

「絶対に許さぬぞ……例の作戦に入る! 貴様ら、ブラント司教、あれを用意しろ」「はっ!」
0194フィッチャー ◆9tRgsDTMos5G
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2017/08/26(土) 17:56:48.07ID:zIT1qVpt
先ほどの衝立のあたりから現れた老人が赤いオーブを掲げると、なにやら呪文を呟く。
同時に魔法兵の生き残りたちが似たような行動を取りはじめた。

――やがて、変化が訪れた。今まで殺害した近衛兵たちの死骸が立ち上がり、
ある者は鎧を身に付けたまま、ある者は裸のまま立ち上がる。

「まさか、屍霊術士(ネクロマンサー)……!」

イオが叫ぶ。各国に少数ながら居るとは聞いていたが、まさjか神聖で知られるアトスに存在している、
そのこと自体が驚きであった。
百を超える死霊兵たちがホワイトクロス騎士団に襲いかかるだけではなく、周囲の近衛兵たちにも襲いかかった。
「プレシャス!」「聖都に化け物だって? 逃げろぉおお……」「死にたくねぇよお……」

バリバリと音を立てて生きたままの兵たちが次々共食いのごとく食われていく。
やがて全ての甲冑兵、弓兵が逃げ、ターゲットはホワイトクロスの6人だけになった。

「これはおまけだ……ウケトッテ、おけ、まさか、私も、ウゴゴゴ……ッ」

ルーカンとブラント司教、そして他の魔法兵たちも紅い眼の不死者の姿となって襲い掛かってくる。
倒れたまま生き残っていた兵たちが真っ先に犠牲になり、食われるか死霊兵となって隊に加わった。
ルーカンは触手のようなものを生やし、口にエネルギーを溜めている。
恐らくは以前のハミルカルのように全身に仕掛けが前もってなされていたのだろう。

壁に手をつき一休みしていたセレスティーヌだったが、敵が迫っているのを見て、再び剣を構えて敵に向けて走り出した。

「あれは……!?」

オマケ、と呼ばれていた存在は、衝立の向こうからやってきた。
それは、どこから集めてきたのか、少年少女たちの死霊で、体が透けていることから
兵たちとは違い、実態の曖昧な死霊のワイトであると思われる。
一人だけ大柄なワイトが物凄い眼力をもって迫ってきた。

「まさか、ペトラ……くそっ!」

どこかで見た顔、というよりも顔は完全にペトラだった。霊魂が奪われたのだろう。
そして、少年少女の中には、フィッチャーがよく見知った顔もあった。

「チビ……まさか、お前も殺されていたのか!?」
「チビってのは、あんたの息子の名前?」
「悪いか、一応本名だ。俺が付けた……こんなのって、アリかよ……?!」

オーオーオー……
オーオーオー……
その奔流はアトスの城壁から内部全体へと流れ、各地で戦っていたアトス兵も死霊になったものと思われる。

死霊兵たちが近づいてくる。
特にかつての近衛兵たちの動きは素早い。すぐさまセレスティーヌによって一体が分断された。
ビチビチと、死臭が周囲へと撒き散らされる。思わずこれにはフィッチャーまでが鼻を覆った。
ルーカンが徐々に肥大化している。良く見ると周囲の兵の死肉を取りこんでいるようだ。

「まずい、あいつが一番ヤバい相手だ!」

マーテルが叫ぶ。
フィッチャーは剣を持ち直し、構えた。そしてアレクに伝える。

「分かるな。俺たちはホワイトクロス騎士団だ。こいつらを安らかにしてやれる為にも……
―― 一切容赦はしなくていいぞ!」

再び聖堂付近での衝突が始まる。
0195フィッチャー ◆9tRgsDTMos5G
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2017/08/26(土) 17:57:13.70ID:zIT1qVpt
――


「既にオリンパスの光はアトス付近にまで移動させました。それにしても……アレクサンドラ、
そしてあのセレスティーヌという人間はどうしてここまでして必死に生きようとするのでしょう。
私なら……いや、それは考えないことにしましょう。カリストゥス様、次の手はいかがなさいます?」

カリストゥスは一息置くと、一気にまくし立てる。

「恐らくルーカンやブラッククロスの連中が奴らを仕留めてくれるだろうが、特にそうでなくともよい……あの女はもう持たぬ。
それに、オリンパスの光を使い、地上を一旦“浄化”するのも良いと思っている。特に聖都アトスなどはそうだろう。
お前の「父」となったフローレンの創った、不気味な施設も残っているだろうからな。
既に天界がこれだけの生産力を持った今、地上はただの供給源に過ぎぬ。よって真っ先に潰すのは
アトスの城下町だろう」

「“黒十字”はカリストゥス様が手塩にかけて育てたメンバーなのでは? それを捨て置くということですか?
また、地上を支配するための、「教会」のシステムの再構築も面倒になるはず……」

「私は天帝だ。天帝の命に一々指図するな。その程度、まだジェノア、アースラントがある、ジャイプール、
北方もいずれは支配下につく。「大を生すためには小は切り捨てよ」と言うだろう……?」

「む、早速ですが、シュタインめが現れたようですな」

天界への転送の泉へ現れたのは、シュタインその人だった。

「はぁ、はぁ……この頂いた肉体も充分に慣れたつもりですが、奴らは予想以上に強敵のようです。
カリストゥス様、アトスへの増援として、100ほどの天使兵を戴けませんか? 私が授かったこの肉体と併せれば、
きっとあのような連中は消し去ってくれましょう。さぁ、今すぐに……!」

カリストゥスはかなり機嫌を悪くしたように言い放つ。

「お前には充分な施しをしたつもりだ、シュタイン。何度失敗すれば分かる?
我らは天界の一員なのだ。10の天使兵をこれより送る。それであのフローレンめの研究所も
自由に使うがよい。私は少々、忙しいのでね。オリンパスの光の準備もできておる。
あれも元はフローレンの研究の成果物であったな。天使兵に頼んで少々の魔力も送る。
これで貴様も相当の力を得、奴らを圧倒するであろう」

「はっ」
シュタインは頭を地面に付ける。これが最敬礼である。

「それと……オリンパスの光がここに来ておる。貴様は速やかに物品を回収し、
その後暫くはアトスには入らぬよう、注意せよ」

「……オリンパスの、光ですな」

シュタインがニヤリ、と笑みを作った。


【近衛兵壊滅。大量の死体を利用し、屍霊術士と化したルーカンが自らアンデッドとなって
ホワイトクロス騎士団を襲う。機動力のあるゾンビ150体程度、少年兵とペトラのワイト20体程度、
巨大化したルーカンがそれぞれ敵対。
0196アレク ◆mhXMrsUqAc
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2017/08/27(日) 20:37:17.22ID:giXGwbqo
一人あたりの戦闘力(特にセレスティーヌ)は段違いにこちらが高いとはいえ、多勢に無勢。
一度追い詰められて袋の鼠と化すも、そこで更にセレスティーヌが覚醒ともいうべき爆発力を見せて敵を屠り
ついに脱走者が出始めるに至った。
今のセレスティーヌは、痛みも恐怖も感じずただ敵を屠ることだけに特化した殺戮の化身。

「あのままじゃあ……」

彼女の肉体はすでに限界を超えているはずだ、下手すると命に拘わる。
しかし今はその狂戦士と化したセレスティーヌが頼みの綱であることも事実。負ければここで全員死ぬのだ。
アレクに出来るのは、彼女が出来る限り攻撃を受けずに早く戦闘が終わるように支援に徹するしかない。
このままでは負けると思ったのであろう相手は、ついに禁断の奥の手を出すに至る。

>「絶対に許さぬぞ……例の作戦に入る! 貴様ら、ブラント司教、あれを用意しろ」「はっ!」
>「まさか、屍霊術士(ネクロマンサー)……!」

屍霊術――邪神に仕える暗黒神官や悪の魔術師が操るという、高位にして希少、そして禁忌の術。
それがあろうことか正統派神官の総本山であるはずのアトスで顕現されたのであった。
生きた兵は食われ、または逃げ出し、ホワイトクロス一行を死者の軍団が取り囲む構図となる。

>「これはおまけだ……ウケトッテ、おけ、まさか、私も、ウゴゴゴ……ッ」

そしてルーカン自身も、驚愕を露わにしながらアンデッドと化す。
彼もまた使い捨ての駒に過ぎなかったのだ。
更に、ワイトの集団までも現れる。その中には、ペトラやフィッチャーの息子の姿もあった。

>「あれは……!?」
>「まさか、ペトラ……くそっ!」

「死なせてしまってごめん……。あの時仲間に入れずに追放してれば……」

思わず謝るアレク。
もちろん、これはペトラの姿をしているものの、もはや生前の記憶や自我はない。
0197アレク ◆mhXMrsUqAc
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2017/08/27(日) 20:38:28.12ID:giXGwbqo
>「チビ……まさか、お前も殺されていたのか!?」
>「チビってのは、あんたの息子の名前?」
>「悪いか、一応本名だ。俺が付けた……こんなのって、アリかよ……?!」

「フィッチャー……」

最悪の形で息子の死を知ってしまったフィッチャーにかける言葉も見つからず、哀しげに立ち尽くすしかなかった。

>「まずい、あいつが一番ヤバい相手だ!」

そこにマーテルの警戒を促す声が響く。
しかし今のフィッチャーは戦える状態だろうか――その心配は杞憂だった。
フィッチャーは、悪に利用された愛する者達を解放するためにも、自らを奮い立たせたのだった。

>「分かるな。俺たちはホワイトクロス騎士団だ。こいつらを安らかにしてやれる為にも……
―― 一切容赦はしなくていいぞ!」

こうして、第二ラウンドは始まった。

「分かってる。我らは聖騎士団――対アンデッドは最も専門分野とするところだ!」

その言葉の通り、聖騎士の神聖魔法にはアンデッドに特効性がある物が揃っている。

「――ターンアンデッド!」

まずは対アンデッドの定番魔法を全域にかける。
雑魚アンデッドなら即崩れ去り、そうでなくても動きを鈍らたり力を弱めたりといった効果がある。

「ホーリーウェポン」

味方の武器に聖属性の加護をかける。聖別された武器は、アンデッドに対して絶大な効果を発揮する。
続いてアレクが相手として選んだのは、ワイトの軍団だった。
実体の無いワイトは物理攻撃でダメージを与えるのが難しいため、魔法での攻撃手段を持っている者が適任と判断したためだ。

「――ホーリーライト!」

ワイト達に、アンデッド特攻の聖なる光の攻撃魔法を浴びせる。
0198フィッチャー ◆9tRgsDTMos5G
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2017/08/28(月) 17:21:12.56ID:9/qnTjFn
>「死なせてしまってごめん……。あの時仲間に入れずに追放してれば……」

ペトラの変わり果てた姿に謝るアレクに、フィッチャーがボソリと言う。

「いや、俺のせいだ。俺はあいつに下心をもって仲間に入れた。お前は気にするな。
それより、あいつだ……」

そう言いつつ、武器をすぐに構える。対策は人間相手よりも単純なはずだ。
支給品らしき細い剣であっても、アンデッド相手なら戦い方は決まっている。
しかし、自分の死んだ息子の魂を討伐するのは気が引ける。
0199フィッチャー ◆9tRgsDTMos5G
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2017/08/28(月) 17:22:33.43ID:9/qnTjFn
「――ターンアンデッド!」 「ホーリーウェポン」

一つ覚え、しかし王道ともいえる神官の神聖魔法。
これが最も堅実で確実だ。

早速、ゾロゾロと集まってくる鉄の破片を付けたゾンビたちが倒れていく。

「ホーリーウェポン!」

逆側に素早く回り込んだユニスはイオを連れて、単純な動きで接近してくるゾンビ兵たちを
分断させてから迎え撃つ。

次々と繰り出される攻撃を確実に受け、メイスで頭を砕いていく。
イオもまた、拾った剣を使ってその補助を行っていた。
0200フィッチャー ◆9tRgsDTMos5G
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2017/08/28(月) 17:23:15.09ID:9/qnTjFn
「こっちもいくよ! グッバイ・アンデッド――!」

神官魔法ではない対アンデッド魔法がマーテルから放たれる。
すると見る見るうちに鉄塊とともに敵が溶けていく。
フィッチャーもまた、正面から次々と三、四人、四、五人と膾斬りにしていくセレスティーヌの後ろから
巨大化していくルーカンに向けて、突撃をしていった。

ビチビチと敵の破片が飛び散り、さらに分断された敵の上半身が噛み付いてくる。
それを同じく対アンデッド魔法で潰し、自らも振りほどき、脚で踏み潰す。
腐った脳が異臭を放ちながら飛び散る。

血とアンデッドの破片に塗れたセレスティーヌは勢いを止めず、ルーカンへと向かっていく。

「はぁぁぁあああ!!!」

ルーカンが腕を伸ばして飛ばしてきた規格外の射程のメイスを大剣で受け、さらに
懐へと入り込んで四発、五発、六発と次々に連撃をかました。
ブラントと呼ばれた屍霊術士もついでに巻き添えでいつの間にか分断されている。
周囲から襲い掛かる子供のワイトたちも数体が消えた。

「おのれ、オノレ…… ダガ、私ハマダマダ死ナヌ……」

ルーカンの肉体の腹がパックリと開くと、そこから無数の触手が飛び出し、セレスティーヌの肉体をあっという間に包み込んだ。

「ヌゥォォ……眷属ヲ……」「ぐぁぁっ……!」

衝撃波をもってセレスティーヌの肉体を蹂躙し、さらに倒れてところを踏みしだき、口から汚物を
吐き出して、それをセレスティーヌの口内へと侵入させた。

「セレス! 今助ける!」
0201フィッチャー ◆9tRgsDTMos5G
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2017/08/28(月) 17:23:41.45ID:9/qnTjFn
フィッチャーが剣でそれをたたき斬る。危うくそのまま窒息しかけたセレスティーヌは難を逃れた。

「ぐほっ……」

四つん這いになり、口から吐出物を吐き戻すセレスティーヌの後ろから、頭目掛けてルーカンの一撃が入った。
「くあぁっ!」

セレスティーヌは辛うじて頭を割られることを避けるも、尻に直撃を受け、鎧がたちまち割れる。
その時、彼女の懐に飛び込む一人のワイトがいた。

「まさか、チビ……!」

フィッチャーは一瞬躊躇したものの、突き上げるようにして、そのワイトを聖なる魔力がかかった剣で
掬い斬りにした。フィッチャーの眼を見て消滅する「チビ」。そして、その横からも別のワイトが襲った。

「グッ、フィ、チャ……」

そのワイトはペトラだった。「彼女」はフィッチャーになだれかかるようにして、そのまま動かなくなった。

「くそっ……、ぐ、ぐはぁっ!」

旧知のワイトを二人消滅させたショックで一瞬立ち尽くしたフィッチャーの脇腹に、ルーカンの一撃が見舞われる。
起き上がろうとしているセレスティーヌのすぐ横まで吹き飛ばされた。

ルーカンは周囲の死骸をさらに吸収し、傷を癒しながら先ほどよりも巨大化していく。
さらに、残りのワイトたちがわらわらと接近してきた。
「フィッチャー、私がこの怪物をやる。残りは頼んだ。私を信じろ」

コクリ、と首を縦に振ると、フィッチャーは武器を構えて残りのワイトたちに向かっていった。

「アレク、さらにエンチャントを頼む! それと、周りの掃除も手伝ってくれ!」

徐々に、ゾンビ兵たちが逆に取り囲まれ、何度も復活されて傷を何度も負いながらも、敵を追い詰めていったホワイトクロス騎士団。
周囲の戦況も変わりつつあった。

十数分後――

フィッチャーが何とか全ての死霊兵とワイトを片付けてセレスティーヌの元へ行くと、
ほぼ裸の格好で柱を背にしたまま肩を上下させているセレスティーヌが、ルーカンのものと想われる
大量の肉片や鉄屑、そして恐らくコア部分と思われる割れた紫色のオーブが頭蓋骨のあたりで見つかった。
ついに大量の敵と不死身の軍団を打ち破ったのだ。

まず、フィッチャーはペトラと息子を弔った。
「ペトラ、チビ……今度こそ、安らかに……プレシャス」「プレシャス……!」
仲間たちも同時に祝福を捧げる。
0202フィッチャー ◆9tRgsDTMos5G
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2017/08/28(月) 17:24:35.16ID:9/qnTjFn
「おーい、投降兵を連れてきたよ」

マーテルは瓦礫の影に隠れていたという、甲冑兵と弓兵を一人ずつ確保し現れた。
他のメンバーも傷や毒を受けながらも回復を進めながら集合する。

「うわあぁぁぁ!! か、怪物女だ…… くそっ、今のうちに……!」
甲冑の男が剣を抜いてセレスティーヌに突き刺そうとするのを、弓兵の男が羽交い絞めにして止める。
「やめろ、そんなことする前に、こいつらに殺されるぞ……! すまん。俺はジョニーで
こいつはスミッツだ。アトスの近衛兵をやっていたが、元々はここの住民で教会の世話になっていたに過ぎない。ところで…」

「話は後で聞く。そろそろうちの団長がお目覚めだ。お前ら、団長に殺されたくなかったら俺の言うことを聞いてくれ。
俺が止めてやるから。交換条件ってやつだ」
「色々、情報も聞いておかないとね」

少しホッとした感じでマーテルが話す。そういえばアトスやその周辺の状況について
まともに情報収集をするのはこれが初めてだろう。

弓兵の装備をセレスティーヌに、甲冑兵の装備の一部をフィッチャーに付ける。

「へぇ、初めて着るが、お前らの装備って、外したり付けたりするのが大変なんだな」
「少々丈が合わぬが……まぁいい。先ほどの戦いで、骨を何箇所かやられたらしい。だが、大事ない。
聖堂の中に案内しろ。早く、早くだ」

窮屈な胸、そして腹の一部が丸出しになったが、セレスティーヌは柱に手を付いて立ち上がり、
ジョニーとニミッツに衝立の先、聖堂の案内を命じた。

心なしか、非常に急いているというより、何かに追われ焦っているようなセレスティーヌの喋り方に
若干違和感を覚えつつも、フィッチャーたちは聖堂内部へと侵入した。

「なに、ガラ空きだって!?」

フィッチャーは驚愕の声を上げた。どうやらセレスティーヌの説明では、このあたりが礼拝堂になっており、
大勢の司祭と今のシュタインのポジションである枢機卿が居た場所だったはずだ。
しかし、どこを探してももぬけの殻となっている。

「もう他に機能を移した、ということでしょうか……?」
0203フィッチャー ◆9tRgsDTMos5G
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2017/08/28(月) 17:25:10.74ID:9/qnTjFn
イオが肩で息をしながら言った。可能性としては充分考えられることだった。
一部の補給物資や武器、防具の類しか存在しない。
それらをくすねられるだけくすね、辛うじて騎士団のメンバーは装備を新しくした。
セレスティーヌもバスタードソード二本を手に入れ、フィッチャーに古い大剣を返す。
ユニスは先ほどルーカンが使っていたメイスを使うことにした。ミスリル銀製で、意外に軽い。
マーテルも連射式のボウガンを入手し、大量のクォレルを補給し、充実させた。

――と、セレスティーヌが落ち着き無く他の部屋を探し回り、血眼になっている。
次第にその動作は荒っぽくなり、ドアを蹴るなどして必死さが伝わってくるようだ。

「無い、ない! どうしてどこにもないのだ……!?」

フィッチャーは最初は何を彼女が探しているのか分からなかった。しかし、彼女の目を見て
それが何であるかをはっきりと意識した。

「まさかセレス、それは、お前が大量に打ち込まれたってやつ、「クスリ」か?」
「どこだ、クスリィ・・・  どこにある、どこにも無いであろうが!」

その名前を聞くと、セレスティーヌはすぐに反応する。
さらに、あろうことかジョニーに掴みかかった。

「知っているのであろう? 近衛兵なら。私に隠しだてするな……この……」「ぐぁ」
パキャ、という音とともに両手で頭を押さえ付けられたジョニーが頭蓋骨を割られ脳漿が弾け飛ぶ。

「ひぃぃぃ…… 殺人鬼! 怪物!」

スミッツが仲間の死を見て逃げようとするも、すぐにマーテルらによって取り押さえられる。
「フィッチャー、あんたは団長を抑えてて!」

フィッチャーがセレスティーヌを捕まえ、説き伏せようとする。
「落ち着け、そんなものに頼っていたら、お前は必ず死んじまう。俺はお前をそうさせたくないんだ!」

肘打ちが何発もフィッチャーに入る。並みの男ならこれだけで内臓が破裂するだろう。

「アァァァァァーー!!!」

ついに半狂乱と化したセレスティーヌは次々と聖堂の柱や立像を剣で破壊して回る。
整然とした建物が、短時間で廃墟のような様相となっていった。
スミッツはあまりの恐怖に一度気絶してしまっていた。
やがて、あちこちを破壊しつくしたセレスティーヌはハァハァと肩で息をして座り込んだ。

「そういえば、あいつ、シュタインをまだ見ていないわ。また何かを起こされる前に、早く探しましょう
それに、この前シュタインの前にいた、あの背の高いデイドリーム。あいつが絡んでいるのかも」
ユニスが別のことで冷静になり、慌てながら言う。

「俺はこれだけなら知ってるぞ。シュタインは確かアトスの他の場所に教皇様が作った研究所と通じていたようだ。
だから、他に奴がいるとしたらそこだろうし、クスリも、教会の秘密もそこにあるはず!」
目を覚ましたスミッツはそれだけ言うと、押し黙った。

困ったフィッチャーはアレクの方を見て叫ぶ。
「くそっ、どうしたら……天使よ! アレク、ああいう場合は、あいつをどうしたらいいんだ!」
0204フィッチャー ◆9tRgsDTMos5G
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2017/08/28(月) 17:25:58.22ID:9/qnTjFn
――

シュタインは天使兵たちから魔力を分け与えてもらい、じっと瞑想するような格好で座り込んでいた。
「もっと、魔力をォ……」

その低い呟きは威圧感を出し、さらに天使兵たちから魔力を絞り出す。
徐々に彼らは、飢えた蚊のように、細い腹部をさらに細くしていった。その表情を見る限り、
もう倒れそうだ。
シュタインは天使兵たちの顔を見る。見事に全てがアトラスムスそっくりだった。
あの“神”と言われ、天界に君臨した傲慢なデイドリーム。それも元はフローレンという一介の
偽教皇、錬金術士が作ったものなのだ。

「グェ……」
痩せ細って弱った天使兵の頭をその太い腕で潰す。
「醜い、実に醜い……これぞエゴイズムの塊よ……何が“神”か」

二体、三体と天使兵たちの顔を潰し、絶命させていく。
異常に気付いたアトラスムスから連絡が入った。

「シュタイン、何をしているのです? 天使兵は私が丹念に育てた私の可愛い子……
それを粗末に扱うとは何事ですか!? 私が労力をかけて生ませた貴重な命なのですよ」

アトラスムスは水晶球から下界の各地の様子を伺いながら、シュタインのいる「天界」への
ゲートの様子も見ていた。全裸姿で浴場で女たちと絶賛交配中、そして「彼」にはスタイルの良い
厳選された女たちがすり寄り、次は自分の番だと抱きついている。
天界の環境は天使兵たちが次々と開拓し、自然も建物も続々完成している。
もはやいつでも人口増加や移住に耐えることができた。それほど潤沢だ。

そして、その隣に座り行為にいそしんでいる天帝カリストゥスもシュタインに一言添える。

「堕落するのは大いに構わぬ。しかし、我らも無限の生産力を持っていても現状は「二人」で
天界を運営しているのでね。貴様の素行が悪いのなら、地上の「連絡役」を降りてもらい、
ラビカンあたりに譲渡することも検討しているぞ。分かったら無駄なことは止せ。
「オリンパスの光」が現れる。聖堂を狙うつもりだ。実際、アレクサンドラの位置は
既に把握済みなのだからな…… とりあえず、これでどうだ……! おい、気にせず続けろ」

先ほどの動作で「オリンパスの光」が動き、シュタインの居る転送装置のあたりも轟音が鳴り響いた。
これによってアトス大聖堂とその周辺に一条の光が降り注ぎ、強大なエネルギーが周囲を巻き込んで暴発したのだ。
恐らく現場は悲惨なことになっていることだろう。

同じくカリストゥスも女を抱いて生殖行為にいそしんでいた。同じ人間の鍛え上げられた肉体を持ち、
端整なルックスに実質的に一番の権力を持つ彼は、アトラスムス以上に人気があった。
ゴクゴクと壮強剤を飲みながら行為に熱中する彼は、まさに性の鬼、「性職者」といえた。
また、魔力のせいで女たちがさらに乱れやすくなっているのもそれに拍車をかけていた。

――しかし、本当に乱れていたのは彼らであり、それが正確な判断を下すのを逸したことを
この二人が気付くのはあまりにも遅すぎた。

「それは結構。では、こうしたら如何でしょう……?!!」

全ての天使兵を屠ったシュタインは、魔力を大量に増幅させると、一気に転送装置の上にある壁を破壊した。
続いて両腕から光の弾を発射し、むき出しになった「非常用崩壊装置」を攻撃して破壊した。

ゴゴゴゴゴ……

みるみるうちに転送の魔法陣が消え、その下の泉が干からびてしまった。
0205フィッチャー ◆9tRgsDTMos5G
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2017/08/28(月) 17:26:29.62ID:9/qnTjFn
天界は突然、大地震に見舞われた。
浴場の底の床が割れ、水が下へと抜け落ちはじめる。
天界の空は蒼穹からうって変わって真っ赤な空となる。
カリストゥスは水晶球に向かって叫んだ。

「シュタイン、貴様、何をした!?!?」

シュタインは笑いながらゆったりと答える。
その大災害の音響は、壁に備え付けられたオーブから僅かに聞こえてくるだけだが、
それだけで天界の悲惨な状況が想像できる。女たちの悲鳴も聞こえてくる。

「ブァァカですか? あなた。アースラントの一騎士の分際で、神にでもなったつもりですか?
私が知っている限り、天界に神などいません。何故なら、そこのハエも含め、地上にまだフローレンの創った
施設が残っていることもご存知ありませんでしたからねェー。フヒヒヒ、それで神だとは、お笑いですクァ?
これでハエが消えれば全世界の天使どももただのヒトになるだけですねェ……そもそも、
お前たちは女とカネと地位だけのために、ちょっと鼻が伸びすぎてしまったァ、ただのヒト。
地上のものは全て私のもの。そもそも、フローレンから天界が一瞬で壊せることを教えて貰った私の、一人勝ちなのですよォ……」

アトラスムスが尚も抱きついてくる女たちを蹴りながら叫ぶ。女たちは奇声を上げながら下へと落ちていく。
割れた下には溶岩が広がっていた。

「ふざけるなァ! 貴様、私は神なのだぞ! これぐらいで、くっうぅ…… 地獄に落ちるがよい。
ただで済むと思うな! そもそも誰のお陰でその地位があると……」

シュタインはニヤリとしながら言う。

「もっともっと、甚振ってから殺してあげる方が、私の趣味なんですけどねェ……そこだけが残念だ。ハエめ。
お前は所詮は欲望の亡者、フローレンの子。子バエですよ……そこにいるお坊ちゃんにも言っておいてください。
そう、「お前たちが私たちを観察していたのではなく、私がお前たちが偽りの楽園で馬鹿騒ぎする姿を、ずっとあざ笑っていた」のですよ……
ではそろそろお別れですね。世界は私の手にィ……ヒヒヒヒヒ!」

傾いていく浴場は次第に溶岩で溢れ、アトラスムスの翼も抜け落ちて浮遊も利かなくなる。
助けを求める女たちを剣で斬り刻み、溶岩の中へと落としながら、必死にしがみ付くカリスト。

「この野郎! 俺はなぁ! ずっと我慢して、我慢して、やっとこの立場になったんだよぉ!
てめえみたいなハゲなんて、ずっと利用してただけ・・・グェ、グググギャァァ、命だけは……たすけ……」

「くそっ、私が神で、神で、貴様なんてオリンパスのグァ……熱いヨォォ……死にたくな……」

二人の断末魔の叫びを聞くと、干からびた泉と天使兵たちの死骸に建物ごと巨大な魔力球で止めを刺し、
崩れゆく「天界への扉」の建物を後に、アヒャヒャヒャと奇声を上げながら、シュタインはアトスへと向かっていった。
向かう先は勿論、「彼ら」が発見できなかった、フローレンの研究所。

――
0206フィッチャー ◆9tRgsDTMos5G
垢版 |
2017/08/28(月) 17:27:11.13ID:9/qnTjFn
「ようやく到着したか。酷い有様だ……天帝様のお話ではここのはず。
テレーザ、聖堂の様子はどうだ?」

ブラッククロス騎士団がようやく攻撃を受けていない門から通してもらい、
先ほどの激戦のあった大聖堂の裏口へとたどり着いた。
大柄でスタイルの良い団長らしき女が、小柄だが出るところは出ている系の女に声をかける。

「はい、ガラティア様、どうやら敵は死霊兵などを使うネクロマンサーと思われます。
アトスの兵たちがこんな酷いことに……デイドリームのアレクサンドラは……恐らくこの中に!」

ルーカンの死骸が撒き散らした液体を引き摺った跡が、聖堂の中に伸びているのを一人が発見した。
ブラッククロス騎士団はすぐに侵入を決意する。

「では入るぞ……」「待ってください、団長、光が……!」

カッ、という音とともに空から稲光が降り、大聖堂周辺に降り注いだ。
ギャァァァ、という声とともに地上にいるブラッククロス騎士団は壊滅した。
直撃した者は跡形もなく黒焦げでバラバラになり、そうでない者も衝撃で
兜が割れて目玉が飛び出し、臓腑をぶちまけた。
大聖堂は瓦礫の山となった。

ゴゴゴゴゴゴ……
「くそっ、何だこれは、うわぁぁぁ!!!!」

フィッチャーは小さな複数の窓からカッという光が照らすのを感じた。
同時に、建物が崩れ、次々と柱や天井が落ちてくるのを感じる。

「アレク! くそっ、お前、羽根は……!?」

アレクを見ると、いつの間にか背中の羽根が消えており、本人も驚いているようだった。

「仕方ない、イオ、少しでも頑張ってくれ。全員生き残るぞ!!」

イオは力を振り絞り、竜の姿になると天井目掛けて勢いよく舞い上がった。
セレスティーヌが剣を振り回して岩石を砕く。

ふと目を覚ますと、先ほどまで激戦があった聖堂の裏口のあたりにフィッチャーは転がっていた。
目の前には脱出はしたが憐れなことに頭をかち割られ助からなかったスミッツの死体があった。
瓦礫があちこちに散らばっており、見たこともない女の死体があちこちに転がっている。
セレスティーヌが立ち上がり、続いてアレクが立ち上がる。

そして後ろを振りかえると、血まみれになり、骨を剥き出しにした重傷のイオの姿があった。
「イオ!」
先ほどの悲劇で飛竜を失ったその男が真っ先にまだ竜の姿をしたイオに駆け寄る。
彼がステッセルで間違いないだろう。
「ステッセル、様……」

竜の目から、涙がこぼれていた。

彼女はもう戦えないだろう。早めに治療をしなくてはいけない。
ホワイトクロス騎士団に残された情報は、スミッツの「研究所にシュタインがいるだろう」という
言葉ぐらいだった。

この数十分後、ついに聖都アトスは門を破られ事実上の陥落となった――

【天界がシュタインによって壊滅させられ、天帝カリストゥス、アトラスムス死亡。
イオ重体、ルーカン死亡、アトス陥落、ブラッククロス騎士団壊滅。
また、デイドリームの種族が絶滅し、アレクサンドラが人間に戻る】
【急な展開ですみません。アレクについては人間になるますが、性別は男か女にしても、
今まで通り「どっちでもない」でも結構です。】
0208アレク ◆mhXMrsUqAc
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2017/08/30(水) 01:32:20.13ID:oW5d8B2z
聖堂内はもぬけの殻となっていたが、装備品等は残っており、アレクは目ぼしいマジックアイテム等が無いか物色する。
0209アレク ◆mhXMrsUqAc
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2017/08/30(水) 01:32:47.22ID:oW5d8B2z
そして一振りの杖を手に取ったのであった。

「ラッキー、見てみて。これ祝福の杖じゃない!?」

振るだけで中威力の癒しの魔法が発動する魔法の杖である。
普通に高出力の回復魔法が使える高位神官にとってはそこまで騒ぐほどのものでもないのもあり
他の装備品と一緒に打ち捨てられていたものと思われるが、一般人基準だと超すごいものだ。
それはいいのだが、先ほどからセレスティーヌの様子がおかしい。

>「無い、ない! どうしてどこにもないのだ……!?」
>「まさかセレス、それは、お前が大量に打ち込まれたってやつ、「クスリ」か?」
>「どこだ、クスリィ・・・  どこにある、どこにも無いであろうが!」

「クスリって……中毒性もあるのか……!」

>「知っているのであろう? 近衛兵なら。私に隠しだてするな……この……」「ぐぁ」
>「落ち着け、そんなものに頼っていたら、お前は必ず死んじまう。俺はお前をそうさせたくないんだ!」
>「アァァァァァーー!!!」

セレスティーヌがいきなりジョニーを殺したかと思うと、半狂乱になって暴れ回る。
身を挺して止めようとしたフィッチャーだったが、ついに体力を使い果たすまで暴れさせておくしかなくなった。
破壊の限りを尽くした後、セレスティーヌはようやく疲れ果てて座り込んだ。

>「そういえば、あいつ、シュタインをまだ見ていないわ。また何かを起こされる前に、早く探しましょう
それに、この前シュタインの前にいた、あの背の高いデイドリーム。あいつが絡んでいるのかも」
>「俺はこれだけなら知ってるぞ。シュタインは確かアトスの他の場所に教皇様が作った研究所と通じていたようだ。
だから、他に奴がいるとしたらそこだろうし、クスリも、教会の秘密もそこにあるはず!」

>「くそっ、どうしたら……天使よ! アレク、ああいう場合は、あいつをどうしたらいいんだ!」

「今だ――セデーション!」

隙を突いてセレスティーヌに深い眠りに誘う魔法をかける。
普通ならこれをかけられた者はひとたまりもなく眠りこけるのだが、
クスリの強力な覚醒作用と丁度拮抗し、運良く沈静化の魔法にかかったようになった。
これでクスリの禁断症状はしばらく収まるだろうが、先程のような非常識な強さは発揮できないだろう。
しかしそれでいいのだ。あのような戦い方を続けていたら死んでしまう。
その時、急に極光が差し、建物が倒壊し始めた。

>「くそっ、何だこれは、うわぁぁぁ!!!!」

>「アレク! くそっ、お前、羽根は……!?」

「分からない、力の供給元が絶たれたような感じがする……」

いつの間にか耳の後ろの羽根が消えていて、魔力の翼も出なくなっている。
ちなみに、特に体格等に変化はない。聖魔法少女アレ子? 残念、それは最近流行りのギャグ系スピンオフ用のネタだ。

>「仕方ない、イオ、少しでも頑張ってくれ。全員生き残るぞ!!」

イオの尽力により、一行は奇跡的に全員脱出を果たしたのであった。
しかしスミッツは瓦礫の直撃を食らい死亡、見た事もない女性達の死体が転がっている状況。
どうでもいいが、いかにもライバルっぽいネーミングを与えられて満を持して派遣されたにも拘わらず
名乗る事すら出来ないまま「あ、何か死んでるわ」――以上終了って不憫すぎるポジションである。
0210アレク ◆mhXMrsUqAc
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2017/08/30(水) 01:34:16.43ID:oW5d8B2z
>「イオ!」
>「ステッセル、様……」

皆を脱出させるために大怪我を負ったイオだが、すっかり正気を取り戻したステッセルと再会することが出来た。

「イオちゃん、ここまで本当に助かったよ。後は任せて」

イオに祝福の杖を翳しながら、ここまでの働きをねぎらう。

「本当は私も決戦の場に行きたかったのですが皆様の足を引っ張るのは不本意。
お願いします、どうか、我々竜族の、仇を……」

イオは竜族に伝わる言い伝えを語り始めた。
竜は元々神と崇められる聖なる存在だったが、教会勢力によって魔に落とされたこと――
そして、理不尽な竜退治が横行した時代があったこと。
言い伝えと言っても、長寿の竜族にとっては数代前のこと。厳然たる過去の事実だ。
聖者による悪竜討伐の伝説は枚挙に暇が無いが、その多くが世の支配者に都合のいいように歪められていることは想像に難くない。

「それ、エントも似たようなことを言ってた……」

「それと、デイドリームはずっと前からいたそうですよ。それこそ太古の時代、教会勢力なんて台頭するずっと前から」

「それなら、何故羽根が消えた……?」

「それは分かりません。ただデイドリームは幼い頃に皆教会に引き取られる決まりになっているでしょう。そこに何かがあるのかもしれません。
例えば、洗脳したり自分達に刃向えぬように封印をかける、等でしょうか。
これだけは覚えておいてください。
この世界に本当は唯一絶対の神なんていない――もしそう名乗る者がいるとすれば、それは偽りの神。
気を付けて、教会勢力には昔からとてつもない闇が潜んでいる――その全てが今はシュタインに凝縮されているのかもしれません」

何か大切な事を忘れているような気がする。
幼い頃は破天荒なばっちゃに自然の中で育てられていた覚えがあり、気が付いたら教会で過ごしていた。
確か彼女は自然の力を借りた魔法を使うドルイドだったか。おそらく拾われたか何かで育ての親であろう。
教会で過ごすようになった経緯は全く思い出せない。

――シュタインは確かアトスの他の場所に教皇様が作った研究所と通じていたようだ。
――だから、他に奴がいるとしたらそこだろうし、クスリも、教会の秘密もそこにあるはず!

手掛かりは、奇しくもスミッツの遺言となったその言葉しかない。
確証もないが、他に手がかりも無いのだから行くしかないだろう。

【本当はデイドリームは神(?)と関係なく昔からいた種族だけど教会勢力が勝手に結びつけた、みたいな仄めかしは前からしてあったり。
今のところ力を失って表面上は人間のようになっている、ということでクライマックスでの復活パワーアップの前振りとして使わせていただきます】
0211フィッチャー ◆9tRgsDTMos5G
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2017/09/02(土) 02:33:24.91ID:oY0ZamLQ
>「何故羽根が消えた……?」

> 「それは分かりません。ただデイドリームは幼い頃に皆教会に引き取られる決まりになっているでしょう。そこに何かがあるのかもしれません。
例えば、洗脳したり自分達に刃向えぬように封印をかける、等でしょうか。
これだけは覚えておいてください。
この世界に本当は唯一絶対の神なんていない――もしそう名乗る者がいるとすれば、それは偽りの神。
気を付けて、教会勢力には昔からとてつもない闇が潜んでいる――その全てが今はシュタインに凝縮されているのかもしれません」
0212フィッチャー ◆9tRgsDTMos5G
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2017/09/02(土) 02:34:09.57ID:oY0ZamLQ
人間形態に戻ったイオは、祝福の杖を受けても尚、痛々しい様子だった。
生き残った、僅かなワイバーン隊を連れ、ボロボロのイオはステッセルとともに「彼の治める」
アースラントへと戻ることになった。
空にいた天使兵たちは、いつの間にか姿を消していた。

「本当に助かった。アストラの民たちが無事に生活できるよう、私はただ力を尽くすのみだ。
ホワイトクロス騎士団、貴方がたに残りのことは任せよう。また会えることを願う、プレシャス!」

数頭のワイバーン兵たちとともにアトスを脱出するイオは、フィッチャーらに涙ぐみ、軽く手を振ると、
静かに寝息を立てはじめた。やがて空高く飛び上がり、西の空へと向かっていく。

やがて、フィッチャーは黒衣の女たちの一団の中で唯一の生存者を発見した。
祝福の杖の力で辛うじて立ち上がり、ボロボロの服装のまま朦朧とした意識で話す。

女は名をフェイシアと名乗り、命を助けて貰った見返りとして、信じられない事実を語る。
アトス山の麓には祠があり、その奥の泉から「天界」への道があるという。
0213フィッチャー ◆9tRgsDTMos5G
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2017/09/02(土) 02:34:52.50ID:oY0ZamLQ
天帝カリストゥスという男とアトラスムスというデイドリームのたった二人が、広大な肥沃の地を治めているというのだ。
「ブラッククロス」の名は、「ホワイトクロス騎士団」に対抗するためにカリストゥスが自ら編成したという。
ジェノアを含むアトス周辺の強い女たちが集められ、金と快楽と引き換えに二人のために全てを尽くすよう鍛えられたとのこと。
シュタインや教皇の研究所にも強化のために入ったことがあり、場所も案内できるらしい。
今回、隊長を含む自分以外の20名あまりが「天界」からの「オリンパスの光」で焼かれ、捨て駒にされたことを知った。
骨や肉片、あちこちに散らばる臓腑や目玉などを見て、怒りを露にしている。中には天帝との妃になることを約束した者もいるという。
既にホワイトクロス騎士団側に加担する約束をしており、研究所の名を聞くや否や、彼女も協力するという。
こんな上手い話があるのか、という突っ込みもありそうだが、どうやらあるようだ。

(カリストゥス……王国にカリストという将軍が居た気がしたが、そいつとは別の奴だろうか。
デイドリームがアレクの今の状況と無関係ならいいが……)

フィッチャーが考えられるのはそれぐらいだった。

「まったく、何の騒ぎだ。こっちはボロボロだよ。うちの兵どもも大分疲れてる。
だけどね、ボクはここで引くような男じゃない。帝国からの評価も利権もあるからね。
とにかくご苦労だった。どうやら一番貧乏くじを引いたのはお前らだったんだね」

ホビットの南の族長、ザトーラップが帽子を焦がした状態で現れた。
実際無事では済まなかったらしく、早くもエントたちがレクトゥスにザトーラップが勝手に「約束」した
土地を与えられたため、戦闘が終わり次第帰り出した。もっとも、エントたちの機嫌を損ねてしまい、収拾がつかないのもある。
数十人のホビットたちの死体が運び込まれ、その中にはジャイプールから雇った女の戦死者も数人いた。
今は生き残った怪我人の治療で忙しいようだが。

「ザトーラップ……様!? やっぱりそうだ! 勝ったんだね、あたし達!」

北側からは勢いよく走ってくるのは、かつてのザトーラップの侍女、チホリと団員のデルタ。
チホリはザトーラップに抱きつくも、既に彼の周囲で甘えているジャイプール人の女使用人たちを見てむっとする。

「マーテル……!」

デルタがマーテルに凄い勢いで抱きついていく。しかし、マーテルが驚いたのは、チホリとあまりにも親しそうに現れたことだった。

「あんた、あの女は何? ま、とりあえず後でゆーっくり説明してもらうから。これが終わったらね」

「フィッチャー!!」「おう、お前ら、元気だったか!」

カボスが大勢の仲間たちを連れてデルタらの後ろから現れる。
彼らも多くの戦死者を出したようで、その処理と生き残りの治療が行われていた。

「オイラ、ついに北方軍になっちまった。隊長をまかされてる! お互い元気で良かったな。
こっちはこいつ、ジローってのが副官になって、結構頑張って、お……?」

「まさか、あいつらはボクらの……?」

どうやら北方軍の旗を持つカボスらと、帝国軍の旗を持つザトーラップらは敵対関係にあり、
お互いに自然と武器を構えあい始める。
0214フィッチャー ◆9tRgsDTMos5G
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2017/09/02(土) 02:35:28.52ID:oY0ZamLQ
「おい! ここは我らホワイトクロス騎士団が接収した。お前たち、ここで戦闘を始めるようなら、
この私が一人残ら……」

余程燗に障ったらしく、剣を抜いて早速殺戮を始めんとするセレスティーヌを急いでフィッチャーらは止め、
フィッチャーが一声をかける。

「アトスは陥落した。俺たちの勝利って訳だ。後は事後処理だが、ちょっと待ってほしい。
俺たちの敵はまだ他にいる。そいつらを片付けてから、会談といこうじゃないか。
ってことで、一時休戦! お前ら、敵味方関係なく、とりあえず一旦休め!」

フィッチャーの出任せの言葉は自分で予想した以上にその場の大勢に必要な言葉だったようで、
早くも座り込んだり、食べ物を広げたり酒を飲んだりで、大分雰囲気は収まった。

――

「で、本当にあの茂みの向こうのどう見ても普通の図書館から、本当に研究所とやらに繋がってるんだろうな?」

コクリ、と頷くフェイシア。既にアレクやユニスらによって服装は無難に結ばれ、かつて教官をしていたという、
長槍を転がった同僚の死体から拾い、装備した。腹の筋肉の感じからして、セレスティーヌには遥かに劣るとはいえ、結構な強者だろう。

団員は、早く行こうと急かすセレスティーヌを中心に、
フィッチャー、アレク、ユニス、マーテル、デルタ、フェイシア、そして帝国側から偵察としてチホリ、北方側からはカボスが自ら参加を願い出た。

「俺らはここで黙って待ってりゃいいのかい?」

北方コボルト軍の副官、ジローが肉をクチャクチャやりながら尋ねる。カボスと違い強面だ。
ザトーラップも無言で威圧感を出している。

「あぁ頼む。俺らはちょっとした“掃除”が残ってるだけだ。終わったら必ずここに戻る。
あと、さっきの白い光がまた出たら、アトスの街から住民も含めて全員を退去させてくれ。
これだけが俺からのお願いだ。遅くても明日の朝までにはケリをつける。プレシャス……」

チホリは外套の下に大量の暗器を、カボスは背中と腰に複数の剣を差している。
残りの八人は言わずもがなのフル装備、重武装ともいえる格好だ。

「君らさぁ、そんな格好で何をおっぱじめるつもりなんだよ?」

ザトーラップの問いに、セレスティーヌは踵を返して答えた。

「……戦争、だとでも言っておこうか」

隊員たちはセレスティーヌ以外は「んな、無茶な」という表情だが、10人はいよいよシュタインとの決戦に向けて発っていった。
0215フィッチャー ◆9tRgsDTMos5G
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2017/09/02(土) 02:36:01.32ID:oY0ZamLQ
――

まずは図書館の裏口にいるヴィクサスの鎧を着た兵士二人をユニスとフェイシアがこっそり近づき、一気に殺害するという計画だった。
二人とも同じような長い獲物のため、布を被せれば一般人が何か棒のようなものを持っているように油断させることができる。

「……ぐっ」「……何だ、敵か?!……」

フェイシアは首を突き刺し、ユニスは勢い良くミスリルの棍棒で撲るも、
普通の兵ならとっくに砕けているはずの骨が無事でまだ動いている。

一人は首などをマーテルの連射式ボウガンで討たれ動かなくなり、もう一人は素早く駆け込んできた
セレスティーヌによって片手で首を握り潰されて絶命した。

「これは……強化人間か……?!」

フィッチャーが敵の死体を観察すると、不自然な青筋が何本も浮き上がっているのが分かる。
セレスティーヌの肉体に浮き出ているそれとよく似ている。薬物によるものの可能性が高い。
しかし彼女にそのことを話せば、たちまち狂乱するだろう。黙ってそこを過ぎようとした。

「大体、この状況でここに立ってる時点でクロだよね」

マーテルが突っ込みながら、内部へと10人を素早く侵入させる。

深い階段の下は牢獄のようになっていた。図書館自体はフェイク、中は稼動しているとは思えないが、
恐らく何らかのカモフラージュがされているのだろう。

牢獄にはあちこちに血の跡や鎖が散見される。
セレスティーヌはそれを見て何かを思い出したかのように落ち着き無く剣に手をかけようとするが、
フィッチャーがそのたびに止める。一応、先に敵に場所を知られてはたまったものではない。

奥には昇りの階段があり、両側が部屋になっていた。
片方を早速開けてみる。

「うぅ……うっ」「何だ、これは」「あぁぁ・・・・」
ただただ、それは吐き気がする様相だった。
多くの女たちだけが、ある者は一部を怪物化し、ある者は一部の筋肉が肥大化し、
ここでお互いが殺しあったということだけがその獲物の刺さり具合などで分かった。
既に戦闘があってから数日が経っているのだろう。
臓腑や血からは猛烈な臭気がし、それも獣のような不気味な悪臭だ。
死体の一部がまだビク、ビクとスライムや毒ヒルのように蠢いている。

「悪夢だ。さっさと閉じるぞ。この先は覚悟しておいた方がいい……」

既に恐怖で我を失いつつあるユニスやフェイシアたちは、後ずさりしながらフィッチャーに抱きついていた。
チホリやカボスは、来たことを明らかに後悔したような表情をしている。

≪おやぁ……皆さん、お揃いですねぇ、どうやら、シュヴィヤールの娘、死に損ないましたか。
「天帝」と虫ケラのアトラスムスは私が片づけておきました。つまりどういうことかというと……
――私がヴィクサスの神なのですよ!! プレシャス! 私にひれ伏しなさい……ヒヒイ……≫

「き、貴様ァァ!! シュタイン、どこに居る! 私の剣はお前の地と臓物を求めているぞ!!
父と母を奪ったこと、私に死よりも苦しい屈辱を味わわせたこと、絶対に許さぬ。
貴様が何人、何百人居ようとこの建物ごと殺し、潰し、屠ってやる…… どこだシュタイン!!!」

「天帝はもう、亡くなられたと……?!」

鬼のような形相で剣に手をかけながら声のする天井を睨むセレスティーヌ。
そしてかつてのブラッククロス、フェイシアは驚いていた。
0216フィッチャー ◆9tRgsDTMos5G
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2017/09/02(土) 02:38:35.78ID:oY0ZamLQ
シュタインは落ち着いた声で答えた。

≪そう、先ほどの「オリンパスの光」が最後の一言になるとは、彼らも夢にも思わなかったでしょうね。
ブラッククロスは見殺しにされたのですよ……ところで、今、その操作機構は私の手元にあります。
錬金術士フローレン様は偉大な方でした。セレスティーヌ、あなたを強化したのも彼の薬、それはすぐ隣の部屋にあります……
そしてアレクサンドラ、あなたを「天使」として「再生」させたのもまた、彼。そしてオリンパスの光も、天使兵も……
たまたま当時の教皇に気に入られたのがカリストとアトラスムスだったというだけ。しかし、今ではその教皇も新しい「教皇」の
フローレンもいません。なァぜならァ……lこの世で一番賢く強い、私が全部片づけてしまったからでェす……
権力は一つ。天界なども必要なァい……最も神に近い存在、即ち神は私、早速それを証明して差し上げましょう……ホホホォ!≫

「しまった、あいつらが!!」

「……だけど、逆に言えばあたしらは食らわない位置にいるってことだよね?」

冷静なマーテルの声。轟音が鳴り響く。恐らく外に「オリンパスの光」が落ちたのだろう。
つまり、この建物の中にシュタインがいるのだ。

すぐに外に飛び出そうとするセレスティーヌを一撃が襲う。鎖のような巨大なものだ。
素早く部屋側へと逃げるも、「その」二体は部屋へと十人を閉じ込めてしまった。
0217フィッチャー ◆9tRgsDTMos5G
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2017/09/02(土) 02:39:02.59ID:oY0ZamLQ
≪そうだ、そちらに「私の娘たち」を送り込んでおきました。その部屋で実験をして、
つまり殺し合いをしてェ、勝ち残った二人の可愛い子ちゃんたちですね。
アテナ、ヘラ、遊んであげなさい。皆殺しにしたら、ご褒美をあげましょう。
ちなみに鎧と盾の方がアテナァ……≫

「貴様……!!」

その部屋は後ろに異形の死体が複数あり、既に多くの団員は戦意を喪失しつつあった。
変わらないのはセレスティーヌぐらいだが、剣の一撃を盾で軽く弾かれる。

アテナと言われた女は、顔立ちは美しいが表情は殺気だっており、セレスティーヌのそれよりも酷い。
薄い胸鎧を着ており、片手に盾、片手に槍で武装している。全身は物凄い魔力に包まれている。

一方ヘラと思われる女は巨大なモーニングスターを持っており、薄い布を纏い乳房は片方だけで
フィッチャーの頭ほどあると思われる。表情はアテナと似たようなものだ。先ほどセレスティーヌを後退させたのはこの女だ。

どちらとも形だけとばかりにシスターのベールを被っており、背丈はセレスティーヌよりも頭一つ大きい巨体をしている。
これも無茶な強化の成果だろう。

「セレスが二体……どうしたら良い!?」

フィッチャーは以前にやってしまったが、女を斬ることを善しとしない。
この二人は死体か生体かといえば、生体だろう。セレスティーヌの延長上にあるようなものだ。
0218フィッチャー ◆9tRgsDTMos5G
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2017/09/02(土) 02:39:58.08ID:oY0ZamLQ
ヘラの鉄球をフィッチャーが受ける。物凄い衝撃ともに大きく後方に弾き飛ばされた。
セレスティーヌはその攻撃を読みながら素早くアテナの懐に入り、一撃、一撃を浴びせるも、
硬い盾に阻まれてダメージにならない。

マーテルはボウガンを放つも、ヘラが素手で受け、握り潰してしまった。どうやら
皮膚が強化されていてなかなか攻撃が通らないらしい。
フェイシアの槍もあっという間にアテナの槍に折られ、後方に下がらざるを得なくなった。

ふと、アテナの尻のあたりから何かが飛び出し、セレスティーヌを襲う。
それは蠍の尻尾だった。その攻撃を掠らせたセレスティーヌは思わず後ずさる。
尻尾の先からは毒液のようなものが垂れていた。
全員が後退を余儀なくされたとき、ヘラが乳房を覆う布を捲ると、自ら乳房を握り、
何かを飛ばしてきた。

「くそっ……」「ぐっ……!」「うわぁぁあ!!」

それは猛毒の母乳だった。殺傷能力のある酸性のそれは、後方のメンバーに降りかかると、
容赦なく身体を酸と毒が蝕んでいく。

「化け物! すぐに回復を……!」
デルタが叫ぶ。

――との時。
アレクのもとに、いつか聞いた声が囁いた。
よく見るとうっすらとあのデイドリーム、アトラスムスの姿がある。
それはアレクにだけ聞こえる歌のような声だった。

≪ずっと夢を見ていた。でもそれは遠い思い出。
私たちには本当の記憶がある。思い出してくれ。あの時捕まらなければ……!
ずっと夢を見て、今でも私は夢を見ている――。地獄の底でも懐かしいと思える。
抜け落ちる背中の羽根が、耳の羽根が、音も立てずに消えても
いつでも私の傍には、そう、お前がいる。お前は私のたった一人の……
夢を見させてくれてありがとう。あの時一瞬でも会えて良かった。
一度話をしてみたかったものだね。記憶は消えても、地は繋がっているのだから。
――ブラザーよ。お前に委ねよう、折れた羽根(つばさ)を――!!≫

アレクの耳の後ろに、そして背中に今は亡きブラザー、アトラスムスの力を得、
真っ白な光る翼を現していた――


【一気に進めました。アトス占領後停戦までは無事にいったが、「光」が再び一発撃たれる。
ホワイトクロス騎士団は仲間を入れ10人で図書館から無事に研究室に侵入、
高みの見物をどこかでしていると思われるシュタインの下で敵の強化兵2人と対峙中。
セレス、フィッチャーは前衛にいるも苦戦中、セレスが軽傷。
後衛が酸や毒などで軽傷から重傷、アレクがかつてのきょうだい、アトラスムスの
英霊の力を得てパワーアップ。】
0219アレク ◆mhXMrsUqAc
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2017/09/03(日) 19:22:45.74ID:BmGjvu7v
ステッセルとイオが去った後、一行は黒衣の女達の中で唯一まだ息がある者を発見し、祝福の杖で治療。
彼女は敵勢力の極秘事項をあっさりと語り、更にはシュタインとの決戦に共に行くと申し出た。
黒衣の一団は敵の派遣してきた刺客だったそうだが、派遣元に捨て駒にされて仲間が全て死に自分も死にかけた上に
始末する相手だったはずの者達に命を助けられ、すっかりこちら側に付いたようだ。

>「まったく、何の騒ぎだ。こっちはボロボロだよ。うちの兵どもも大分疲れてる。
だけどね、ボクはここで引くような男じゃない。帝国からの評価も利権もあるからね。
とにかくご苦労だった。どうやら一番貧乏くじを引いたのはお前らだったんだね」
>「ザトーラップ……様!? やっぱりそうだ! 勝ったんだね、あたし達!」
>「マーテル……!」
>「あんた、あの女は何? ま、とりあえず後でゆーっくり説明してもらうから。これが終わったらね」
>「フィッチャー!!」「おう、お前ら、元気だったか!」

アトス戦に参加した者達が一同に会し、様々な者達が再会を果たす。
アレクも、一度はもう駄目かもしれないと思った物との再会を喜んだ。

「デルタ……! 無事で良かった!」

……後のマーテルの尋問を思うと本人的には無事ではない心境かもしれないが。
カボスとザトーラップが喧嘩を始めようとし、更にセレスティーヌがそれにキレかけたが、フィッチャーが場をおさめた。

>「アトスは陥落した。俺たちの勝利って訳だ。後は事後処理だが、ちょっと待ってほしい。
俺たちの敵はまだ他にいる。そいつらを片付けてから、会談といこうじゃないか。
ってことで、一時休戦! お前ら、敵味方関係なく、とりあえず一旦休め!」

++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++

暫しの休息中、微睡の中で夢を見た。
妙齢の美しさと見た目通りの年齢ではない老獪さを兼ね備えた不思議な育ての親と、
鏡に映したように自分とそっくりなとても仲の良い双子の弟。
精霊や木々の声を聴き、動物たちと戯れた日々。
育ての親は名をフローラ、双子の弟はアトラと言った。
ドルイドの里の長であったフローラはよく言っていた。

「私には馬鹿な弟がいてねぇ、もう大昔になるかな。錬金術で世界を支配する!とか何とか言って里を飛び出しちまったんだよ」

新しき技である錬金術を駆使し後に一瞬だけ人間界の頂点に上り詰めることとなる弟と、里に留まり古からの業を守り続けた姉。
運命は、二人の立場を決定的に分かつこととなる。

「ねえばっちゃ」「何だ、クソガキ」

ある日、アレクは何気なく訪ねたのだった。

「何でワタシ達はみんなと違うの?」

「それはお前達が特殊な種族だからさ。どうやら話す時が来たようだね。元々お前達はこの里の者ではない」

二人は、とある国で双子として生を受けた王子(女)だったこと。
王族がデイドリームを授かったとなれば、盛大に祝福されそうなものだが、そうはならなかった。
それはデイドリームが生殖能力を持たないことに由来する。
世襲制至上主義の王族としては、長年世継ぎが生まれずにやっと生まれた子がデイドリームでは都合が悪い。
そこで、デイドリームの双子はドルイドの隠れ里に養子に出すこととし、
丁度同じ日に生まれた双子を極秘に調達してきて表向き実子とした。
養子に出すといえば聞こえはいいが、公式上では存在は抹消、要は体のいい追放である。
0220アレク ◆mhXMrsUqAc
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2017/09/03(日) 19:24:26.49ID:BmGjvu7v
「いいかい? お前達デイドリームはね、神々と人とを繋ぐために星が遣わした使者なんだ」
0222アレク ◆mhXMrsUqAc
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2017/09/03(日) 19:27:07.03ID:BmGjvu7v
デイドリームであるが故に実の親に捨てられたと知った心境はいかなるものだろうか。
今更ながら後悔が押し寄せるが、アレクは屈託なく笑って言った

「良かった――王宮の生活なんて窮屈でやってられないからだろうさ! そうだよねー、アトラ!」

「それは言えてる、特にアレク」

その夜、手を繋いで寝転がり、星を眺めながら言った。

「ねえアトラ――ワタシ達ずっと一緒だよね?」

「くだらない事を聞くな。そんなの当たり前だろ?」

しかし、そんな幸せな日々は長くは続かなかった。
教会勢力の動向は日に日に過激になり、古くからの精霊信仰等を邪教として迫害するようになった。
そしてついに隠れ里にも、彼らの魔の手が迫る。
里は森ごと焼き払われ、民も皆殺し。
アレクとアトラを伴い逃げていたフローラだったが、このままでは逃げ切れないと悟ったフローラは、追っ手に向き直る。

「ここは私が食い止める。お前達は逃げな」

「何言ってんだよ!」

「狂気に堕ちた我が弟はやがて世界を食らうとてつもない魔物を生み出す――
私が受けた星の神託によるとお前達はそれに対抗するために遣わされた救世の使徒だ。そのために育てたのさ。だから……私のことは気にしなくていい」

「馬鹿! 気にしないわけないだろ!」

地面から岩の壁が聳え立ち、二人とフローラの間を隔てる。フローラが行使した大地の魔法だ。

「行きなさい! 救世の双児よ――!」

それが、アレクの聞いたフローラの最後の言葉となった。
しかしフローラの犠牲も空しくその後二人は捕まってしまい、
教皇の座の簒奪を狙い教会勢力に入り込んでいたフローレンの錬金術で、教会勢力の忠実なしもべとして作り変えられることとなった。
洗脳がよく効いたアトラは上層部に抜擢、何故かイマイチ染まり切らなかったアレクは下部組織に放置されたというわけだ。

++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++

「ウソだろ? そんなことって……」

アトラの正式名は――アトラスムス。どうしてあの時気付いてあげられなかったのだろう。
ただでさえ記憶を消されていた上に、昔は自分と瓜二つだったというのに
いつの間にか長身の麗人になっていたので気付くはずもなかったのだが。

「アトラ――必ず……助け出す」

まず門番を殺害し、敵の本拠地に乗り込む。
そこには、人を人とも思わぬ狂気の所業が行われた形跡が鮮明に残っていた。
0223アレク ◆mhXMrsUqAc
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2017/09/03(日) 19:29:55.58ID:BmGjvu7v
>「うぅ……うっ」「何だ、これは」「あぁぁ・・・・」
0224アレク ◆mhXMrsUqAc
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2017/09/03(日) 19:30:20.06ID:BmGjvu7v
>「悪夢だ。さっさと閉じるぞ。この先は覚悟しておいた方がいい……」

一同が戦慄していると、天井からシュタインの声が響いてきた。

>≪おやぁ……皆さん、お揃いですねぇ、どうやら、シュヴィヤールの娘、死に損ないましたか。
「天帝」と虫ケラのアトラスムスは私が片づけておきました。つまりどういうことかというと……
――私がヴィクサスの神なのですよ!! プレシャス! 私にひれ伏しなさい……ヒヒイ……≫

>「き、貴様ァァ!! シュタイン、どこに居る! 私の剣はお前の地と臓物を求めているぞ!!
父と母を奪ったこと、私に死よりも苦しい屈辱を味わわせたこと、絶対に許さぬ。
貴様が何人、何百人居ようとこの建物ごと殺し、潰し、屠ってやる…… どこだシュタイン!!!」

>「天帝はもう、亡くなられたと……?!」

激昂するセレスティーヌに、驚愕するフェイシア。
アレクはというと、悲嘆に暮れていた。必ず助け出すと決意した直後にもう死んでいましたでは無理もない。

「そんな……やっと思い出せたのに、もういないなんて、あんまりだ……」

>≪そう、先ほどの「オリンパスの光」が最後の一言になるとは、彼らも夢にも思わなかったでしょうね。
ブラッククロスは見殺しにされたのですよ……ところで、今、その操作機構は私の手元にあります。
>錬金術士フローレン様は偉大な方でした。セレスティーヌ、あなたを強化したのも彼の薬、それはすぐ隣の部屋にあります……
そしてアレクサンドラ、あなたを「天使」として「再生」させたのもまた、彼。そしてオリンパスの光も、天使兵も……

フローレンの開発した様々な物騒な技術を、座りしままに食らうはシュタイン、といったところか。
オリンパスの光一つとっても世界を崩壊させるのに十分なものだ。

>「しまった、あいつらが!!」
>「……だけど、逆に言えばあたしらは食らわない位置にいるってことだよね?」

マーテルがいい事に気付き、それを聞いたセレスティーヌが一刻も早くシュタインを見つけ出そうと部屋を出ようとする。
これ以上オリンパスの光を撃たせないためにも、早くシュタインを見つけ出して始末するに限る。
しかし、現れた二体の異形の敵が一行の前に立ちふさがるのだった。

>≪そうだ、そちらに「私の娘たち」を送り込んでおきました。その部屋で実験をして、
つまり殺し合いをしてェ、勝ち残った二人の可愛い子ちゃんたちですね。
アテナ、ヘラ、遊んであげなさい。皆殺しにしたら、ご褒美をあげましょう。
ちなみに鎧と盾の方がアテナァ……≫

>「セレスが二体……どうしたら良い!?」

フィッチャーが辛うじて攻撃を受けるものの軽々と吹っ飛び、セレスティーヌの攻撃ですら固い盾に阻まれて届かない。
マーテルのボウガンの矢に至っては玩具のように握りつぶされ、フェイシアの槍も早々に折れる有様。
アレクは早々に祝福の杖係と化していた。
その上、怪力だけでも脅威なのにアテナが蠍の尻尾、ヘラが猛毒の母乳といった特殊攻撃を仕掛けてくる。

>「化け物! すぐに回復を……!」

ユニスやマーテル、デルタが魔法で解毒を試みるも、相手の毒が強力過ぎて解毒しきれない。
0225アレク ◆mhXMrsUqAc
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2017/09/03(日) 19:32:02.64ID:BmGjvu7v
「駄目! 毒が強すぎる……!」「そんな……」

次第に場は絶望感に包まれていった。

「馬鹿……ずっと一緒だって言ったのに……どうして先に行っちゃうんだ……」

今更ながら思う。あの時差し出された手を取っていれば、違った結末だったのではないかと。
自分が一緒なら、洗脳を脱して一緒に逃げ出す事が出来たのではないかと。
その時だった。懐かしい声が聞こえたのは。

>≪ずっと夢を見ていた。でもそれは遠い思い出。
私たちには本当の記憶がある。思い出してくれ。あの時捕まらなければ……!

「アトラ……?」

顔を上げると、うっすらと双子の片割れの姿が見えた。

>ずっと夢を見て、今でも私は夢を見ている――。地獄の底でも懐かしいと思える。
抜け落ちる背中の羽根が、耳の羽根が、音も立てずに消えても
いつでも私の傍には、そう、お前がいる。お前は私のたった一人の……

「夢なんかじゃない、あの木漏れ日の日々こそが真実。教会に洗脳された日々の方が悪い夢だったのさ……」

>夢を見させてくれてありがとう。あの時一瞬でも会えて良かった。
一度話をしてみたかったものだね。記憶は消えても、地は繋がっているのだから。
――ブラザーよ。お前に委ねよう、折れた羽根(つばさ)を――!!≫

アレクは半透明のアトラをそっと抱きしめ、アトラはアレクに吸い込まれるように光の粒となって消えた。

「アトラ、ありがとう……」

耳の後ろに羽根が戻り、背には以前よりも強い輝きを放つ光の翼が顕現した。
翼をはためかせて中空に浮かび上がると、翼を輝く魔力の羽根が戦闘域一帯に降り注ぐ。

「――グレート・ゴスペル!」

強力な浄化の魔法――毒の解除はもとより、
魔物化ともいうべき異常な手法によって強化された敵二人を、元の状態に近づける作用も期待できるかもしれない。

「さあ、反撃開始だ!」

魔力によって作り出した光の剣を携え、自ら前線に躍りでる。
轟音とともに振るわれたヘラのモーニングスターを、上に浮上して避ける。
それとほぼ同時に、モーニングスターの鎖目がけて剣を振りおろす。
鎖をぶった切ることが出来れば、かなり有利になるだろう。
0226フィッチャー ◆9tRgsDTMos5G
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2017/09/04(月) 02:45:16.32ID:YhonPkrR
「くそっ、このままやられるしかないのか……?!」

デルタがよろめくマーテルの肩を抱きながら後退する。後衛に下がったメンバーは
ヘラの毒液ですっかり弱っているのと同時に、後方に散らばる腐乱した死骸を見るだけでも
気が狂いそうなようだ。
敵は二人とも毒を体内に取り込んだ特殊な強化人間だ。
セレスティーヌの攻撃すら弾かれた以上、敵が隙を見せるまでただ迎え撃つしかない。
フィッチャーが大剣を構えて一歩前に出る頃には、セレスティーヌは再びアテナの方へと走り出していた。

「無茶するな、セレス!」

前に出たセレスティーヌはアテナの素早い反応に再び弾き飛ばされ、
そこに止めを刺さんとするアテナに対し、カボスとチホリが前に出て、せめてもの防御行動に出た。
しかし、破壊力はどうにもならないだろう。フィッチャーが目を背けそうになった次の瞬間だった。

「ぐぁぁ……」
0227フィッチャー ◆9tRgsDTMos5G
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2017/09/04(月) 02:46:16.45ID:YhonPkrR
フェイシアが素早くカボスの背中から剣を取り、自らアテナの巨大な槍の餌食となった。
剣は砕かれ、槍は深々と刺さり過ぎて腹を貫通させたフェイシアの肉体が邪魔になり、一旦槍を振って彼女の肉体を振り落とす。

「……プレシャス、これで……これで良かったんです……私たちは……」

>「馬鹿……ずっと一緒だって言ったのに……どうして先に行っちゃうんだ……」

ついに出てしまった団員の犠牲。ふと横を見ると、アレクがなにやらブツブツと呟いていた。

「どうした? アレク、お前もついに気がおかしくなったか? 無理もねえ、こんな状況じゃ……」

何かが見えた気がした。アトラの影のような、うっすらとした存在が。

>「アトラ、ありがとう……」

アレクがそう呟くと同時に、アレクから猛烈な魔力の塊が発現され、
耳の羽根が戻り、背中には煌々と輝く光の羽根が現れていた。

>「――グレート・ゴスペル!」

まるで聖歌のような光の旋律が周囲に降り注ぎ、毒で苦しんでいた後衛のメンバーたちを癒した。
と同時に、攻撃を再び繰り出してくる敵を怯ませる。

>「さあ、反撃開始だ!」

ヘラのモーニングスターによる遠距離攻撃に合わせて前に出たアレクは、
その攻撃を避け、剣をその鎖目掛けて振り下ろす。アレクが久々に見せた勇猛さだ。
心なしかその顔つきが変わったような気さえする。

鎖が切れたのを確認するや否や、フィッチャーはヘラ目掛け駆け出していた。
それはセレスティーヌがアテナを狙うのとほぼ同時のタイミングだ。

「うぉぉおお!!」

ヘラは武器を失い、先ほどのように乳房を掴んで母乳を飛ばしてフィッチャーを狙う。
しかし、それらは大剣によって弾かれ、素早く思い一撃がヘラの大きな乳房を支える腕と脇腹を抉り
そのまま部屋の入り口の方へと彼は抜けていった。
これは母乳に毒が含まれているということは血そのものに毒があるという判断からである。

腕と脇腹から血を流すヘラはグェェ、と呻くと、フィッチャーを捕らえようと素早く振り返った。
怯みもせずすぐに動くというのは、やはり薬物で痛みを殆ど感じない故か。
そこにマーテルとチホリによる遠距離武器の乱射が入る。
顔面、口、首と防具の少ないヘラは無防備だ。
口の中、目と首の動脈に浅いとはいえ刺さった矢やチャクラム等は、片目を潰し、それなりの出血を負わせた。
それでもヘラはフィッチャーに覆いかぶさるようにして襲いかかっていった。
0228フィッチャー ◆9tRgsDTMos5G
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2017/09/04(月) 02:46:55.81ID:YhonPkrR
「はぁぁぁ!!」

一方ではセレスティーヌがアテナを目指して攻撃を繰り出していた。
元々光属性の魔法戦士のような存在であったセレスティーヌは、先ほどのアレクの力で
光の力を増幅させ、攻撃力、速度ともに格段に増していた。

アテナは分厚い盾で受けるも、二本の剣で繰り出される重い一撃、一撃に盾を徐々に砕かれ、
さらに鎧へと攻撃が入っていった。鎧を砕かれ裸体を曝け出すと、さらには蠍の尻尾、槍を持つ腕が吹き飛ばされ、
ついに強化人間であるアテナの表情にも明らかな恐怖がセレスティーヌに対し感じられるようになった。

「アァァ……タスケテ……」

セレスティーヌはまず肩から胸、腰にかけて一撃を袈裟斬りにし、怯んだところで喉に向けて鋭い突きを放った。
「ギャァァ……」

喉笛を切り裂かれたアテナは大量の血を噴出しながら倒れこみ、さらに胸を目掛けて
もう一本の剣での突きが入った。口と肉体から血を大量に流しながらズシリ、と重い音を立て、アテナが倒れる。

「ぐぉぉ・・・」

フィッチャーは体格差のあるヘラによって大剣を飛ばされて押し倒され、背骨に一撃を受けて動けなくなったところに、
毒液で止めを刺されようとしていた。片方で彼の頭ほどもある乳房で顔を押しつぶし、毒を注入していく。

フィッチャーが窒息し、口内に毒液を溢れさせたあたりで後ろからユニスらからの攻撃が入り、
ヘラはそちらを振り向くと落ちていた鎖を振り回す。ユニスやカボス、デルタが傷を負い吹き飛ばされるも、
後ろからマーテルとチホリによる投擲でもう一つの目を潰し、ほぼ行動が難しくなった。
そこにアテナから剣を抜いたセレスティーヌによる攻撃が首を切り裂き、背中から胸へ剣が貫通する。

「アァァ……ソンナ、シュタイン……サマ……」

毒を飲み込まぬように全て吐き出し、辛うじてアレクの回復で上体だけを起こしたフィッチャーは、
ついに難敵を討ち果たしたことを確認した。
大量の血が床全体に溢れ、毒物だということで団員たちはそこから離れる。
0229フィッチャー ◆9tRgsDTMos5G
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2017/09/04(月) 02:49:02.98ID:YhonPkrR
アテナは喉笛を裂かれ、心臓近くの傷があり、ヘラは両目を潰されて首や背中から胸にかけての
傷がある。出血の量からして死は免れないだろう。普通ならば――
しかし、まだビクビクと、僅かに肉体は痙攣している。彼女たちは生きているのだ――!

セレスティーヌが二人を見下ろすようにして言う。

「この者たちは、これでも死ねぬのだな……私もこれに近づいているのか……?
では早いうちに楽にさせてあげよう。首を……」
「……待て、団長。そいつらが悪いことを何かしたって保証はあるのか? もしかしたら……」
「おいフィッチャー、まさかこの者たちを「女だから」という理由で生かすのではないだろうな」

剣を振ってべったりと付いた血を払い、それをまずはフィッチャーに向ける。
先ほどの薬物の話を聞いたのもあり、すぐにでも襲い掛かりかねない目つきだ。
フィッチャーが止めを刺すことを了承しようとした次の瞬間だった。
――あの忌々しい声が彼らの耳に入ったのは。

≪どうやら可愛い娘たちを可愛がってくれたようだ……お前たちがまさかここまでしぶといとは
思いませんでしたァ。セレスティーヌ、お前はやはりあの時、尻から鉄の串を刺して、火炙りにでも
しておくべきでしたねェ……「人間」というのも意外としぶといものだ。では、彼女たちを「回収」しましょう。
何でもモノは大事にしないと。それを神である私が先に実践するのは使命ですからねェ……ホホホ……≫

「シュタイン! 一言だけ言っておくぞ。父上の話では、貴様は母上に見向きもされなかったそうではないか!
それを「愛し合っていた」などと、法螺吹きもいいところ、童貞をこじらせた蛆虫、思い込みだけで生きてきた醜男(ぶおとこ)、
気持ち悪い粘着変質者でゴキブリの糞以下の屑だ。そもそも…」

≪黙れ! 黙れ黙れ黙れ! 強姦を繰り返す盗賊どもと癒着し、あちこちで掠奪や淫行を行ってきた
貴様には領地など必要ないのデス! では使徒どもよ、集まれ、“リユニオン”!≫
0230フィッチャー ◆9tRgsDTMos5G
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2017/09/04(月) 02:49:39.72ID:YhonPkrR
シュタインの声とともにアテナとヘラ、そしてフェイシアの肉体が浮き上がり、部屋から物凄い勢いで階段の上へと
飛行して消えていった。

「リユニオン、図書館の本でそんな単語を見たことがある。……あいつらと融合するつもりだ、くそっ!」」

デルタが喚き、同時に団員たち8人は一斉に駆け出す。セレスティーヌが一番前、最も傷の重いフィッチャーが一番後ろだ。
しかしセレスティーヌが向かったのは薬物保管庫の方。フィッチャーらが慌てて制止する。

「セレス、それは後だ!」

「あ? 私は病気だ。病人が治療をして何が悪い! 薬を必要としているのだぞ。私が……」
「団長、任務!任務!」
「セレス、悪いが、今の状況を見てくれ。俺たちはこれから教会の代表として、ヴィクサス神聖国の代表として
悪に立ち向かう。外には今も「光」の脅威にさらされてる連中がいる。分かるか、お前の親父もお袋も泣いてるぞ」

その言葉でついにセレスティーヌは折れ、扉を斬り壊そうとする直前で押し留まった。
血走って商店の定まらなくなった瞳も、だいぶ元に戻ろうとしている。

「そうであったな。すまなかった……」

上のフロアはさらに不気味になっており、あちこちに植物が生え、「テイン」の中のように
壁にはスライム状の生き物、目玉が蠢いている。
扉がいくつもあり、入り組んでいたが、ひたすらアテネらから零れたと思われる血の跡を辿った。時間がない。
再び、轟音と揺れる音がする。彼らはもう避難しているのだろうか。

多数の錬金釜に、多くの生物標本、しかもそのうちいくつかは生きており、割られて中身が無くなっているものもあった。
恐らくフローレンとシュタインはここで研究とやらをやっていたのだろう。
一角には百人分近くはある人間とよく分からない生物の骸骨が山積みになっているケースもあった。

「吐き気がすらぁ、でもこの先行くしかねえんだよなぁ…… シュタインってのは悪魔と契約してんじゃねえの?」

カボスがあまりの状況に震えながら愚痴をこぼす。デルタやマーテルも恐怖で顔を歪めながら頷いた。
――と、その時。

「危ない、お前たち、私から離れろ!」
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