X



トップページ創作発表
234コメント478KB
幻想入りの話しを書くスレ
0001創る名無しに見る名無し
垢版 |
2014/03/16(日) 00:42:04.51ID:p10oboPW
ここではいわゆる東方二次創作という奴の一つ、「幻想入り」の話しを
考えたり書いたりするスレです。ほかの人とネタが被ったり
スレ内が文章でとっちらかっても気にしない
0184創る名無しに見る名無し
垢版 |
2016/05/19(木) 22:20:56.30ID:Sv8jMzvG
「ジャック」
「あげないホ!」

 目ざとくアリスがトークを試みるがフロストはこれを拒否した。肩をすくめる少女が
小気味よく首を振る。

「そうじゃないわ。この人形を戻してみたくないかって言おうとしたの?」
「え、悪魔食わせるのかホ!?」

 思わず引くフロストに、飛び起きる魔理沙。好奇心は劇物であることは分かっていた
が知り合いのそんな様子は見たくなかった。

「正気かアリス!?」
「勘違いしないで頂戴。それともっと別の方法をとるのよ」
「別のほうほう」

 アリスが頷く。自信に満ちた表情で彼女は講釈を始めた。周りで人形たちが動き出す。

「話か想像すると、その人形は元に戻っただけで、取り込まれた悪魔の血肉、魂、力は未だその人形の中に眠っている。それならば、この人形の記憶を呼び覚ますことで、いつかの姿を思い出させることはできるんじゃないかしら」
「……え、いけるのかホそれ?うーん、やったことないからなんとも言えないけどホ」

 フロストは腕を組んで考える。このドリーカドモンが自分の知っている造魔なら相当
に心強い仲魔である。しかしサマナー不在では命令を聞いてくれるかは不明で、もしも
英雄たちの憑代となった物なら、彼らの魂が幻想入りでもしていない限り復元、正確には再召喚は難しいだろう。
 しかしその一方で、もしドリーカドモンが自分の力、成長の記憶を自由に引き出せる
ようになれば、それはもう悪魔全書を内包しているに等しい。造魔用の悪魔全書!それ
が何を意味するのか、未知の危険に見合うハイリターンである。

「人形の記憶を呼び覚ますって言うが、そんなのいったいどうするんだよ」
「あら、いるじゃない。前に地底であった人のことを透かして見る悪趣味な奴が」
0185創る名無しに見る名無し
垢版 |
2016/05/19(木) 22:22:36.19ID:Sv8jMzvG
 その言葉が指す人物に魔理沙は心当たりがあった。地霊殿の主たる覚妖怪。古明地さとりだ。彼女はその能力で他人の心の声を通じトラウマを想起させることができる。

「あーいたなそういえば。じゃあ、お前らは地霊殿に行って、あいつに会うんだな」
「そうなるわね。一応以前に置いてきた人形から連絡してアポとっとかないと」
「アリスちゃん都会派―」

 仲間を集める旅に出て、早くも二人の目途が立った。ドリーカドモンも取り戻せてフロストの心には余裕が戻って来ていた。

「あ、そうだ魔法使い」
「私は魔理沙だぜ。普通の魔理沙」
「魔理沙、もしもまた香霖堂にいくなら、鬼の段平をこれと交換して博麗神社に届けて
欲しいホ」

 そう言ってフロストは頭巾の中から一丁の拳銃を取り出した。かなり古い物のようで、
ゆうに百年は経過しているかのような傷み具合だったが、不思議な霊験を感じさせる代
物であった。

「なんだ、これ?霊夢の陰陽玉と似たような感じがするな」
「たぶんそれ、退魔の武器でしょう。あちこちガタが来ているけれど」
「骨董品だけど十分値打ちもんだほ。ご先祖様がえらーーーーーーーーーーい魔払いか
ら麻雀で取り上げたお宝だホ」
「ふーん」

 魔理沙の興味は、今度はその銃に移ったが、自身のミニ八卦炉と比べて老朽化したそ
れは火力が低そうという理由でそれほどご執心とはならなかった。

「いいぜ、期待外れのお釣りくらいにはなるだろ」

 知り合いの店主に鑑定してもらって、大層な物なら借りてしまおうと考える魔理沙だ
ったが、そんなことは顔から筒抜けであり、フロストの顔もまた渋面に染まっていた。

「猫ババするなホ!絶対に猫ババするなホ!」
「朝には発ちたいから、そろそろ寝ましょうか」
「そうだな」
 フロストの警告はあっさりと無視された。そしてアリスに促されて、三人ともそれぞ
れに寝床へと移る。

(この先何人の仲魔が集まるのかホ。心配だホ)

 二人には見せなかったが、内心では不安があった。分かれて幾らも経っていないとい
うのにい、神社に残した皆の顔を思い浮かべて、フロストは軽いホームシックになった。
0186創る名無しに見る名無し
垢版 |
2016/05/20(金) 16:54:54.12ID:5163qqEj
投下乙
いまフロストくん一人だもんね、ホームシック当然だわ
0187創る名無しに見る名無し
垢版 |
2016/05/27(金) 07:08:38.11ID:wVfuHxH0
一方その頃の博麗神社では。

「お前、名前は?」
「オノマン」

 鬼が謎の覆面パンツマスクとの邂逅を果たしていた。

 時は遡ること二日前。フロストと別れた彼らは元気よく屋台仕事に精を出していた。
立地が良かったのだろう。名立たる妖怪が足繁く通うこの神社は、同じく妖怪の屋台の
聖地とも呼べる。

 オニが萃香に頭を下げながら仕事を教えていた、そんな折だ。屋台の前に、空から彼
が降ってきたのは。

「なんだ!?敵襲か!」
「どいつもこいつもうちの神社をなんだと……!」

 度重なる損壊と事故により博麗神社は二度ほど建て替えている。霊夢はその時の経験
からか、既に戦闘態勢を整えている。

 立ちこめる砂煙が収まっていくと、そこには頭から地面に突き刺さった大男。
ぴくりとも動かない下半身を萃香がその辺の棒でつんつんとつつく。

「生きてるねえ。あれだけの高さから落ちたのに」
「見るからにギャグ枠だな。余程のことがないと死なないぞ。ああいうの」

 遠巻きに見ていてもらちが明かないので、オニと萃香は男の足を掴むと一気に
引き抜いた。地面から救い出された顔は白目を向いており、体中はぴくぴくと小刻みに
震えている。
0188創る名無しに見る名無し
垢版 |
2016/05/27(金) 07:08:54.35ID:wVfuHxH0
「こいつどうする?」
「いやあ、流石に起きるのを待つしかないっすよ」
「また面倒臭そうなのが……」

 回復役が一人もいないために放置が早くも決定した。こういう未知との遭遇時に
フロストがいないことはオニにとっては心細かった。

「こうしていても仕方ねえ。仕込みをしねえと」
「酒の調達なら任せろ―」

 火を入れたおでん槽から立ち上る温かい匂いは、まだ昼間だというのにその辺の妖精や
妖怪を呼び寄せる。

「う、うう……め、めし……」
「もしかして腹が減ってるだけなの?あれで」

 パンツマスクが呻くのを見て霊夢がげんなりする。

「これ食うか?入れ替え用の残り物」

 丼に取り分けた具材をマスクの口元めくってどかどかと詰め込む。覆面を剥がさないの
は礼儀である。そして男はフォアグラのガチョウのように次々とおでんを飲み込んでいく。

「うわ気持ち悪!」「こういう妖怪なのかも」「ええー」

 遠巻きに見ていた三妖精が気色悪がっているが、食が進むにつれて男の目に光が戻って
来る。そして丼を空にすると、そのままバネ仕掛けのような勢いで直立したではないか。
倒れていた姿勢から!

「妖怪なの?」
「いや、魔性を帯びてはいるけど人間だね」

 霊夢の問いに萃香が答えた。言ってしまえば確かに彼は人間かモンスターか非常にデリケートな境界線上に存在している。
0189創る名無しに見る名無し
垢版 |
2016/05/27(金) 07:09:39.57ID:wVfuHxH0
「お前、名前は?」
「オノマン」

 オニは彼にどうして空から降ってきたのか経緯を聞いた。曰く、気が付けば幻想入りしており地底に住み着いていたが、この前クイズ大会で星熊勇儀が地底で一番可愛いかという○×問題に正解したばかりに投げ飛ばされて今日まで空を飛んでいたというのだった。

「よく死ななかったわね」
「風の魔法で落ちる速度を調節しました。でもその内お腹が減って意識が……」
「そんな馬鹿な」

 全体的な胡散臭さに皆が顔をしかめていたとき、オノマンがスススっとオニの側に近寄ると、
ぼそりと耳打ちした。

「……コラボ アリガト ゴザイマス」

 オニの顔に影が差す。彼はこの時気付いた。間違いなくコレはフロストと同系統のヤツ
だ。言っている意味は分からないが、分かってはいけない類の言葉。しかも何故かこの時だけ片言。

「よく分からないが、お前これからどうすんだ?」
「元の世界に戻る方法探します。見つかったら仲間を呼んでみんなで帰ります」

 簡潔にまとめると、オノマンはそのまま神社の中へと入っていった。あまりに無造作で、
かつ自然な挙動だったので、しばらくの間誰も気にも留めなかった。だが霊夢だけは当事
者だったのか、一番早くに気づいて急いで追いかけて行った。

「ちょっと!うちは酒場でもないし馬車でもないわよ!」
「あ、御嬢さん。私、オノマン。今後ともよろしくお願いします」
「挨拶したって誤魔化されないわよ!」

 結局のところ、何故か使える神聖な魔法や特技を教わる代わりに、神社の裏手の勝手口
の辺りに置かせてもらうことになったオノマンであった。

―オノマンが仲間になった!
 オノマンは嬉しそうに神社にかけこんでいった!
0190創る名無しに見る名無し
垢版 |
2016/05/27(金) 07:15:32.01ID:Rb0PkN30
一瞬新キャラかと思ったがw
そうか、投げ飛ばされたあとこんなことになってたのか
0191創る名無しに見る名無し
垢版 |
2016/05/28(土) 22:13:06.30ID:m9TrPhbm
「へーくし!」
「風邪?雪だるまでも風邪をひきのかしら」
「オイラ今ものすごく大事な場面に居合わせなかった気がするホ」

 場面は戻ってフロストたちと地霊殿。普段は騒がしく、娯楽に乏しいせいかやたらと
突っかかってくる住民がほとんどいない。たまに妙にしょげ返った者がいるが、それ以外
は普段の地底だ。

「静かね……本当に廃獄みたい」
「前来た時はもっと元気あったホ」

 二人は昼なお暗い地底を進むと難なく目的地へとたどり着く。

「いつ見てもイケブクロみたいなとこだホ。たのもー!」
「はいはーい。おや、あんたは前に異変のことを聞きにきた奴だね?」

玄関をどんどんと叩くと扉が開き一匹の黒猫が現れた。今や実質的なさとりの代理人。
火焔猫燐である。

「覚えててくれて何よりだホ」
「この街の人と知り合いなの?」とアリス
「賭場が建ってからすっかり暇になっちまってね。それに、ここに来た雪だるまなんて
あんたが初めてだからね、忘れようがないよ。あたい鳥頭じゃないし」

 それからお燐はアリスに人懐っこく「初めまして」と挨拶を交わす。アリスとしては初
対面ではないのだが、構わずに握手をする。

「今日はさとり様にお願いがあって来たんだホ。約束を取り付けたいホ」
 この約束は予約のことである

「ん?いいよ入りな。さとり様も今はそこまで忙しくないからね。大丈夫だと思うよ」

 すんなり話が進み過ぎることをフロストたちは訝しんだが、それは案内された先で
納得のいく説明があった。大きな事務机の前に佇んでいた少女さとりは、二人を見ると小
さくため息を吐いた。
0192創る名無しに見る名無し
垢版 |
2016/05/28(土) 22:13:39.96ID:m9TrPhbm
「お客様をお連れしましたさとり様!」
「ありがとうお燐、下がっていいわ」

 そう言うと、お燐が退室する。

「初めまして、私が地霊殿の主、古明地さとりです。今日はどのような用件で?」
「さとり妖怪なんだから心を読めばいいじゃない」
「もしも話す内容が同じなら、私が読むより聞くほうが早いこともあります」

 結果として同速だった。

「あなたはあの魔法使いの使っていた人形の持ち主で、あなたはここに来た新参のオニの
友人、ここに来た理由は」
「全部話す必要はないホ。話せば長くなるホ」
「長文は聞くより読むに限るわ」

 さとりは面白くなさそうな顔をした。地底の妖怪だが有名な彼女の能力は往々にして
このようなコミュニケーションの簡略化を要求させる。

「つまり、その人形の記憶を呼び覚ませば、妖怪としての姿を取り戻すと?」
「根拠はないけど試してみたいの」

 アリスの言葉にフロストが嫌そうな顔をする。仲魔を危険に晒すこともそうだが、その
理由が知人の興味本位であるという点が腑に落ちないのだ。どのみち全滅の危機に瀕して
はいるのだから、あまり気にすることでもないには違いないのだが。

「なるほど。こちらとしては断る理由はありません。しかし、これが付喪神だとして、
心を読んで、記憶を想起させたとしても変化があるとは思えませんがね」

 そう言ってさとりは己の体から伸びた第3の目でドリーカドモンを見つめた。瞳を通し
てさとりに人形の持つ記憶が流れ込む。しかしそれは人形一体分ではない。どれほどの間
そうしていたか、しばらくしてさとりは終わりました、とだけ告げる。
 人形に変化はない。
0193創る名無しに見る名無し
垢版 |
2016/05/28(土) 22:14:08.18ID:m9TrPhbm
「何も起きないホ」
「ふむ、これはやはり、人形は造魔の核に過ぎず、悪魔の体は贄となった悪魔に依拠して
いる。ということね」
「補足しておくと、この人形には多くの記憶が宿っています。この人形以外の記憶が。断
片的にではありますが」

 アリスの考察にさとりが付け加える。英雄や猛将の憑代ともなれば彼らの記憶が人形に
も残る。しかし魂までは持ち合わせていないので姿を復元することはできない。
 また造魔の肉体は一足飛びに強化することもできない。月の魔力と贄となる悪魔たちに
よってその成長段階を変えるのだ。この点からもドリーカドモンの『復元』はできない。

「やはり、やってみるしかないわね! 合体!」

 諦めきれないのか、アリスは普段からは想像できないほど意欲的だった。フロストも他
に仲魔の目途が立っていないので付き合うしかないと諦め半分になった。

「でも悪魔合体ができる所なんてオイラたち知らないホ」
「あら、ありますよ。いえ、できる人、というか神が」
「本当かホ!?」
「ええ、うちのペットに余計なことをしたかたで、妖怪の山の神様でしたね。確か、
守屋神社の」
「また守屋か!」

 フロストは言いたかった台詞を思いがけない場所で言えて嬉しそうだ。

「ご存知のようですね。注連縄のほうの神様がそういったことができたはずですよ」
「守屋神社へはこの上の間欠泉センターから直通のロープウェイが先日開通したはずよ!」
「来た!流れ来たホ!これで勝る!」

 一気に展望が開けたことでフロストたちは燥いだ。しかしさとりのため息が二人の気勢
を削ぐ。なんとも疲れ切った表情だった。

「どうしたホ?」
「いえ、お客さんに話すほどのことでは」
「言うだけならただホ!おいらたちまだお礼もしてないホ!」
0194創る名無しに見る名無し
垢版 |
2016/05/28(土) 22:15:09.69ID:m9TrPhbm
 フロストの内心を呼んで、さとりがくすりと笑った。
「『力仕事以外なら任せておけ』ですか。ふふ、ありがとうございます」

 そう言ってさとりは最近の地底について話し始めた。モンスター格闘場ができたこと。
地底に活気が出たこと、反面賭博に入り浸って困窮する者が増えたこと。そもそも見慣れ
ない動物が急速に増え始めたことなどを告げた。

 フロストの顔色が悪くなっていく。さとりが『ももんじゃ』のぽんち絵を見せた瞬間
目玉が飛び出る。それを拾って顔面に収めた。

(こ、コラボ先だホ!!)
「何か知っているようですね」

 内心を読まれてフロストは心臓が撥ね上がるのを感じた。フロストは手を前に突き出し
てタンマと言ってから頭の中を整理する。

「……たぶん、知り合いじゃないけど仕事で関わったことがあるところだと思うホ。
もしも動物たちの中でその、獣人みたいなのとか、誰かに飼われてたことがある奴がいた
ら博麗神社に届け出て欲しいホ。今あそここの異変関係者の避難所みたいになってるホ」

「分かりました。既に何名か該当する者がおりますので、後でおりんとおくうに言って
案内させます。ありがとう、これで少しは……」

 最後まで言わず、さとりはまたため息を吐く。今度のは安堵の色が出ていた。

「人のペットを預かるのが、こんなに気を使うとは思いませんでした」
「いや、もうなんて言っていいか分からないけど、あんた頑張ったホ!ありがとうだホ!」

 見知らぬ地で世話になった相手が非業の死を遂げなくて良かったと、フロストも胸を撫
で下ろす。そしていい加減待ちくたびれてきたアリスと共に、さとりとおりんに挨拶をし
てから、二人は守屋神社を目指した。
0195創る名無しに見る名無し
垢版 |
2016/05/28(土) 22:23:14.40ID:m9TrPhbm
「ごめんジャック、ロープウェイは麓からであって、ここからではなかったわ……」
「ちょっとヒートアップし過ぎたホ。いったん冷静になるホ」

 地上に出た後、少し熱が下がったフロストは同じく素に戻ったアリスに抱えられて守屋神社まで飛んで行った。
0197創る名無しに見る名無し
垢版 |
2016/06/04(土) 22:04:22.20ID:H7cW3XFM
「なるほど事情は分かった」

 秋の夜更けの守屋神社で、祭神八坂神奈子はそう言った。全体的になんか怪しい恰好を
しているフランクな神様だ。髪型もふつう。
フロストは自らオプション枠になり、アリスは異変中の主人公のように疾く飛んだ。時
刻はとっくに夜を回っている。

「しかしもう遅いかた続きは明日にしよう。今日は泊まっていきなさい」

 そう言われては流石にどうしようもないので二人は泊まった。アリスは客をもてなすの
がなんだかんだ好きだし逆もまた然りで、フロストもアリス邸からの強行軍の疲れが出て
いた。

「お客さん扱いされるのって慣れてないのよね。着替え持って来れば良かったわ」
「あの神様上手く言えないけどなんかオザワっぽさがあってオイラ苦手だホ」

 取り留めもない言葉を吐くが、どちらもお互いに話そうとはしない。自分の疲労に気付
かない子どもが家に帰るとぐっすり眠るように深い眠りへと落ちて行った。

 そして次の日。

「今こそロボットを作るべきです!目の前にあるんですよ!?直して守屋神社に新たなご
神体にすべきです!名前だってもう考えてあるんですから!」

「落ち着きなさい早苗。箱物は維持費がすごいんだから、迂闊なことをしてはダメよ」
「いざとなれば爆破して悲劇的な死を演出すれば良いんです!」

 激しい怒声と無茶苦茶な言い分にフロストとアリスは目を覚ました。来客が泊まるため
の離れにも届くその声は本殿から響いてきた。守屋神社の主人は三人、もとい三柱なので
そっくりそのまま本殿に寝泊まりしても問題はないのだ。

「朝っぱらからなんの騒ぎだホ」
「今度の2色は話が通じると思ったけれど、所詮幻想郷だったわ」
0198創る名無しに見る名無し
垢版 |
2016/06/04(土) 22:04:41.93ID:H7cW3XFM
「ああ、二人とも済まないね。この娘がちょっと興奮してしまって」
「これが興奮せずにいられますか!」

 埒が明かないと思ったのか、目の前の少女、東風谷早苗は来客二人に向き直ると早口に
まくしたてた。

「あなた方は、ええと、確か昨夜終電のロープウェイに乗ってきたお客さんでしたよね。申し訳ありません、今守屋神社では新しいご神体の準備をしていまして、核の力で動く新時代の霊験あらたかな神像なんですがお披露目の暁には是非またいらしてくださいね!」

※ 地図を確認したところ合ってそうなのでやはり乗せました。

「霊験あらたかな新時代のご神体って何。アリスよ」
「ロボットって聞いて嫌な予感しかしないホ。ジャックフロストだホ」

 流しながらも挨拶を忘れない二人に、神奈子が説明を始める。早苗が焦っているがそれ
を気にする者はいない。

「かくかくしかじかホ」
「なるほどねえ。確かに私は妖怪を合体させることができる」
「どうやって?」

 神奈子が手招きするので後を付いていく。本殿の裏手にはどこか懐かしい巨大培養層、
ではなく中身が空洞の御柱。それも三つ。足元のケーブルが注連縄だったり爬虫類を連想
させる得体の知れない管だったりとフロストの記憶にある物体とは微妙に異なっている。

「この中に妖怪を入れてちょっとアレをナニすると合体できます。成功例もあります。
持ち運びもできます」

 なんで最初から三つ作ったのかとか、ナニをアレするのかとか、気になったけどフロス
トは聞かなかった。アリスも顔にコレジャナイと万感の想いを露わにしていた。

「これにその人形と生贄を入れるがいい。君たちのどちらかがこの人形と合体するだろう。
それがどういう結果になるかは分からないけどね」

「私達は材料じゃないわよ」
0199創る名無しに見る名無し
垢版 |
2016/06/04(土) 22:05:11.88ID:H7cW3XFM
「そこは未定なんだホ」
「なんだ、まだ決まってなかったのか」

 神奈子が肩をすくめた。そこに気を取り直した早苗がやってくる。まだまだ諦めては
いないようで、神奈子の側まで行ってロボットの件を食い下がる。

「お願いします!ロボットなんです!あんなアドバルーンじゃなくて!ロボット!二足歩
行の巨大ロボット!お願いします神奈子様―――!!」
「止しなさい早苗、檀家さんの前ではしたない」
「ちげえホ」「違うわ」

「さっきからロボットロボットっていったいなんのことだホ?」
「自動人形のことよね、まさかそれを作れっていうのかしら」

 抱き着いて離れない緑色に苦戦しながら天を創るほうの神様が答える。

「この前河童がね、どこからかそのロボットの残骸を貰ってきたらしいんだよ。早苗がっ
それを見て、無理に貰ってきたんだ!くっこの、離しなさい!理系だからとか、直すとか
言って聞かないんだ!」

「それはどこに?」
「物置の周りに放ってある!大きすぎて入りきらなかった!早苗えええええええええ!!」

 二人を横目に、二人は守屋神社の探索に移る。フロストは今の説明でピンときた。以前
にレミリアの邸、紅魔館にて倒した物体があった。彼が知らないがレミリアが妖怪の山の
河童に払い下げていたのだ。

 河童たちは目の色を変えてこれを回収したが、運悪く理系の巫女に見つかってしまった
ばかりに奪われてしまったのだ。

「これかホ。バラバラでもでけえホ」
「これがロボット、自動人形なの?組み立てれば人型になりそうだけど」
「逆だホ。人間が自分を戦いのために人形にした、その成れの果てだホ」

 フロストの言葉にアリスも思う所があったのか、しばらくそれを見ていた。
0200創る名無しに見る名無し
垢版 |
2016/06/04(土) 22:05:34.86ID:H7cW3XFM
「ねえジャック」
「なんだホ?」
「あの人形の材料に、これ使えないかしら」
「え、これを!?」

 どうだろう。フロストは考えた。ボスを倒して条件を解除して作れるようになった仲魔
がまた悪魔合体の素材になることを考えれば別にボスだって合体はできるだろう。しかし
オオツキの種族は教師である。まあできないこともないだろう。

「ガイア教徒やメシア教徒や犬が使えないことはないから行けるとは思うホ、でも不安はあるホ」
「駄目なら駄目でいいわ。やってみましょう」

 アリスの提案が無茶だったが、フロストは何故かこれが正しい選択のような気がしてい
た。人形と神社の二人に手伝ってもらいながら例の木筒に詰めていく。不思議なことに木
筒、御柱はいつもの合体装置よろしく巨大極まるマシンの部品を入れても勝手に拡張され
ていき、あれよという間に合体の準備が済んでしまった。

(昔から気になってたけどこれって本当にサイズ差とかものともしねえ機材だホ)

 大きさから考えると培養層割れてないとおかしい悪魔同士の合体が平然とできる辺りは
よく再現されている。

「しかし早苗、良かったのかい?」
「いいんです。サイボーグ妖怪とかどっち付かないのってロマンじゃないですか!」

 良く分からない機嫌の直り方に一同がうんざりともがっかりとも言えない気持ちになる。
フロストがどこからともなく取り出した道半玉を使って無理矢理復活させていよいよ合体
の準備が整った。

「こんな時に限って諏訪子の奴はおらんのだからな、まるで誰ぞの妹だ」

 そう言って神奈子が目を閉じ何らかの祝詞を唱え、力を合体装置に込め始めると御柱が
妖しく光り始める。ガラス張りでないので中の様子が分からないのでフロストたちは不安
だった。
0201創る名無しに見る名無し
垢版 |
2016/06/04(土) 22:06:11.15ID:H7cW3XFM
「む、ん、な、なんだ、ここは、うぐ、ぐわああああああああああああああああああ!!」
ガラス張りでないので中の様子が分からないのでフロストたちは不安だった!!

「体力1で復活させといて良かったホ。暴れられたら困るホ」
「あなたって存外悪魔よね」

 御柱の中に謎の液体が満ちていく。そして双方が溶け合い、しばらくして中央の御柱が
光り、他の御柱の輝きが消えていく。最後に晴天の霹靂によって合体が完了する。

「これでいいはずだ。見てみるといい」
「さあ、サイボーグ悪魔ですよ!」

 煙が晴れ、御柱の内側から、一つの人影が歩み出た。

「これが、造魔……」
「あ、お!お前は!?」

 それはフロストにとって見覚えがある姿だった。しかしそれはここではない、どこか?
――北極である。

 それまではどこか生物と装備の中間にあったようなデザインだった。だが今目の前にい
るのは人間が装備をした姿。人類の英知を結集したスーツ。クレバーで、進化する戦闘服!

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

 造魔ジードが仲魔になった。

仲魔データ

造魔ジード(デモニカ仕様) LV ??

備考 新月補正無効
所持スキル ?? ?? ?? ?? ?? ??
ステータス ?? 使用ソース デンレイソース

状態 奇妙な旅人 特徴 新時代の霊験あらたかなご神体
0202創る名無しに見る名無し
垢版 |
2016/06/04(土) 22:06:38.58ID:H7cW3XFM
「SF!?すごーい、B級映画みたい!」

 早苗が驚愕の声を上げる。一方でアリスは興奮が冷めたのか、落ち着いていた。

「どうやら合体自己、という訳ではないようだな」
「お前、オイラが分かるかホ!フロストだホ!」
「・・・・・・・(こくり)」

 ジードが頷く。どうやらさとりに記憶を呼び覚ましてもらった効果はあったようだ。

「よかったホ!これでようやく仲魔が増えたホ!アリス、ありがとうだホ……アリス?」
「え、ああ、良かったわねジャック。これが造魔……すごいデキだけど、私が思っていた
ものとは違うわ、これは冷たすぎる」

 アリスが首を振る。彼女からすればほとんど人間に近い存在が、あるいはその息吹が感じられる存在を想像していたのだ。

「アリス、それは違うホ」

 フロストはアリスの言葉を訂正した。その手はいつの間にかジードの手を握っている。

「心は、誰かの揺れる心に触れて動きだすんだホ。もしもアリスの考えている自動人形が
そういうことなら、初めからその心を用意することはできないホ。どれほど精巧な魂と肉
体があっても、一人ならそこに心は芽生えないホ」
「ジャック……」

「それで、もう用は済んだのか?」

 空気を読んで神奈子が声をかけた。フロストは頷いた。

「神様ありがとうだホ!おいら一旦神社に帰るホ!来てくれたらいっぱいご馳走するホ!」
「ふふ、覚えておこう。おかげでうるさい問題も片付いたしな」
「私も家に帰るわ」

 アリスが髪をかき上げながら言う。その目は少し寂しげで疲れの色が見える。得る物は
あったが、期待通りとはいかなかったからだろう。
0203創る名無しに見る名無し
垢版 |
2016/06/04(土) 22:07:00.85ID:H7cW3XFM
「アリス、アリスにはお世話になったホ!おいら感謝してるホ!オイラたちはしばらく
博麗神社に滞在しているホ!用がなくても会いに来てくれホ!約束だホ!」

 ジャックがそう言うと、アリスが苦笑して頷く。それきり二人の間から、急速に昔の
空気が霧散していく。二人の過去が清算されて、また新しい日々に戻っていくのだ。

「ジード!まずは拠点に戻るホ!おいらについてくるホ!」
「…………(こくり)」

 そしてまた昔の仲間を新しく加え、ジャックフロストたちは駆け出した。

「じゃあホー!また来るホー!」
「お元気でー!」

 目指す先は博麗神社、残る仲魔が何人か分からない。しかしここにも一人いる。何より
家に帰れるという気持ちが、彼の胸の中を温めたのだった。

――アリスと別れました。魔理沙と別れました。
0204創る名無しに見る名無し
垢版 |
2016/06/05(日) 05:39:00.80ID:seReGbXX
投下乙です
アリスちゃんずっとパーティメンバーってわけでもないんだ、また登場して欲しいなぁ
0205創る名無しに見る名無し
垢版 |
2016/06/08(水) 15:37:43.08ID:SzdJSyp4
俳優集団「D―BOYS」の高橋龍輝(23)引退「先月から少しずつ、体がおかしいと思っていて、病院にかかったところ、詳しい検査が必要だと言われました。」

『進撃の巨人』作画監督アニメーター杉崎由佳(享年26歳)5月28日死去。4月頃から、「頭が重たい」「歯が痛い」「服に血がめっちゃついているけど出血原因がわからん」

元SOFT BALLET/現minus(-) の森岡賢が、心不全。6月3日死去。


「致死量の放射能を放出しました」

2011年3月18日の会見で東電の小森常務は、こう発言したあと泣き崩れた / 芸能人が原発をPR! 500万円の高額ギャラも  勝間和代 三橋貴明 佐藤優
三菱商事の核ミサイル担当重役は安倍晋三の実兄、安倍寛信。これがフクイチで核弾頭ミサイルを製造していた疑惑がある。書けばツイッターで速攻削除されている。
https://twitter.com/toka iamada/status/664017453324726272


りうなちゃんは去年の暮れ、脳腫瘍のために亡くなった

2歳を過ぎたころ「放射能があるから砂は触れない」「葉っぱは触っちゃだめ」
https://twitter.com/Tom oyaMorishita/status/648628684748816384

UFOや核エネルギーの放出を見ることはエーテル視力を持つ子供たちがどんどん生まれてくるにつれて次第に生じるでしょう。
マイト★レーヤは原発の閉鎖を助言されます。
マイト★レーヤによれば、放射能は自然界の要素を妨害し、飛行機など原子のパターンが妨害されると墜落します。
マイト★レーヤの唇からますます厳しい警告と重みが発せられることを覚悟しなさい。彼はいかなる人間よりもその危険をよくご存じです。
福島県民は発電所が閉鎖されれば1年か2年で戻って来られるでしょう。
日本の福島では多くの子どもたちが癌をもたらす量の放射能を内部被ばくしています。健康上のリスクは福島に近づくほど、高まります。
日本の近海から採れた食料を食べることは、それほど安全ではありません。汚染されたかもしれない食料品は廃棄すべきです。
日本もさらに多くの原子力発電所を作ろうとしています。多くの人々が核の汚染の影響で死んでいるのに、彼らは幻想の中に生きています。
問題は、日本政府が、日本の原子力産業と連携して、日本の原子力産業を終わらせるおそれのあることを何も認めようとしないことです。
0206創る名無しに見る名無し
垢版 |
2016/06/12(日) 22:40:02.00ID:mfU818lX
「こいつらいったい何処から出てきたのよ!」
「いやあ、明らかに湧いて出たって感じだよ」
「しかも明らかに妖怪っていうより悪魔って連中だぜ」

 ジャックフロストが新たな仲魔を加えたその日、博麗神社では、一人の巫女と二人の鬼
が、突如として神社周辺に現れた妖怪や悪魔と対峙していた。いつも通りのはずだった。
それが、彼らの前で空間が避けるかのような、恐らくは本当に裂けたのかも知れない。そ
こから現れた敵は、弾幕や幻想郷のルールなど知らず、彼女たちに襲いかかったのだ。

「よいしょお!」「ほいさあ!」「てぇい!」

 最初に現れたのは下位の怨霊、外道、妖鳥など統一性もなかったが、とにかく数が多い。
倒しても倒しても増援が来るのだ。たまに獣人や悪乗りした妖精も来るがその都度殴り倒
し撃ち倒す。

 三度目の増援を蹴散らした辺りでようやく一区切りとなった。力のほうは相手にもなら
なかったが数は20匹近くいた。

「なんだもう終わり?まだスペカも使ってないよ」
「どうやら、いよいよ事態が動き出したようっすね」
「事態?あんたたちが言ってた異変のこと?」

 オニの言葉に霊夢が反応した。こういうことはちゃんと覚えている辺りは博麗の巫女だ。袖の内に針とお札、お祓い棒と陰陽玉を仕舞う。

(どこにあんなに入るんだろう)

 素朴な疑問に首を傾げるオニだったが、そんなことより気にしなければいけないことが
あるので、意識をそちらに向ける。それはつまり、とうとうエンカウントするようになっ
た悪魔たちのことである。

「ちょっと。あんた達が異変がどうこうとか言い出したんじゃないの。やっぱりあの妖精
の出まかせだったの?」
「いや、あいつが嘘を吐くときは笑いを取ろうとするときだ。それはねえ。だがこいつらは因縁がある訳でもねえ。これはいったい」

 外の世界で、歴史の転換点とも言える出来事が起こらぬ、それ故にあるべき未来が消滅の前段階として幻想入りするというのが今回の異変である。ではここに現れた夥しい悪魔
の群れはどういうことか。

「それは私から説明いたしますわ」
0207創る名無しに見る名無し
垢版 |
2016/06/12(日) 22:40:48.78ID:mfU818lX
 どこからともなく聞こえた不吉な声。その声の持ち主が神社の鳥居に空間を裂いて現れ
る。裂け目には不気味な目、目、目。欲望の象徴であり見る者を射竦める恐怖の合わせ鏡。

 現れたのは一人一種族。幻想郷古参の大妖怪、八雲紫であった。姿を見せるたびに外見年齢がいつも違うがいずれも少女の範囲内に収めている。今回は霊夢と同じくらいだ。

『紫!』

 霊夢と萃香が声を揃えて名前を呼ぶ。前者は噛みつくように、後者は面白がって。紫は扇子で口元を隠しながら足早に近づいて来る。それでも上から覗く部分は「けん」のある
表情で珍しく苛立ちを隠そうともしていない。

「とうとう世界が畳まれ始めたということですわ」
「世界?」

 霊夢の疑問に紫が頷く。彼女は扇子を閉じると片手にぺしぺしと打ち付ける。余談だが
三妖精は彼女の姿を見かけたときには既に逃げ去っている。

「ターニングポイント、転換点の喪失によりその“先”が幻想入りし始めたのです」
「それってつまり、俺たちの過去ってことかい!?」

 オニが焦って問いかけると、紫は目線だけを向けて頷く。そして続きを語り始める。

「これまでも他の場所で、今回のような大量流入は確認されていました。それでも内容は
混乱が起きない程度の木端妖怪や動物だったのです。そしてその度に私は結界を調整して
こちらへの放流を最小限に留めていたのですわ」
「それがどうしてこうなったのさ」

 萃香がひょうたんから酒を飲みながら尋ねる。こう、とは境内に散らばったゲル状の物
体や鳥の羽などだ。

「境界を弄っても隙間がなくなる訳ではありません。些細な漏れは免れません。幻想郷を
完全に閉ざせば数の圧力で結界自体が壊れてしまいます」
「でもおかしいぜ。俺たちの旅じゃこんなに一遍に襲われるなんてことは、あったが敵は
もっと強力で危うい状況だった。身に覚えがねえ」
「あなたは何を言っているのですか?」
0208創る名無しに見る名無し
垢版 |
2016/06/12(日) 22:41:15.25ID:mfU818lX
 紫がため息を吐いてじろりオニを睨む。オニは内心でひやりとした。彼女への恐怖ではない。うすうす感づいている事態から目を背けたがる彼の悪癖を責められているような気がしたからだ。そして、おそらくそれは違わないだろう。

「幻想入りするのはあなたたちの旅路に留まりません。その旅路が描かれた時間、世界が
幻想入りするのです。この意味が分かりますか?」
「まだるっこしいわね、どういうこと?」

 ピンと来ないのか霊夢が聞く。彼女の頭脳は勘と一部の妖怪の知識に傾倒しているので
空想じみた想像や推察は不得手である。幻想郷なのにと思えるが、小説よりも奇妙な事実
の集まりである幻想郷では考えるだけ無駄という連中が大勢いる。

「王様が代替わりしたとするだろう?その後の世界から遡って、別の人間を王様に据える。そうすると前の王様と関わりのあった人物だけでなく、時代そのものが入ってくるんだ。
乱暴に計算するとだ、十年あったら十年分の時代の人や妖怪が入ってくるってこと」
「はあ!?」

 当たり前だが主人公が世界を歩いている間にも、他のサマナーや町人たちにも時間が流れている。あるサマナーや魔人の旅の裏側でどれほどの闘争、生存競争、悪魔合体が行わ
れているか。計り知れないその膨大な数が、消える前に幻想郷に流入しようとしているの
だ。言わば崖から落ちる前に掴まれた淵が幻想郷であり、それは今にも崩れんとしていた。

「人間に忘れ去られようが生きていける力ある一部の妖怪、悪魔は自分で何とかするでしょう。大半は結界で弾いてしまえます。ですが隙間に零れてくるもの、中途半端な力を持つものが厄介なのです」

「解決する手段は!?どこに行って誰を倒せばこの異変は解決するのよ!」
「この場所から、それぞれの時代に縁のある者たちを、その時代に向かわせ時代の流れを正すこと。そのためにはあの雪だるまの帰りを待つ必要があります」

「過去に戻るなんてそんなことできるのかい?あんたのチート能力があってもさ」
「改変された時間が正史になるには時間がかかります。言わばこの幻想郷という点により
川の流れが二分されている平行線の状態なのです。時の流れの定着には文字通り莫大な時
間と力が必要です。改変された世界が及ぼす影響はさておき、まだ場所の域を出ないでし
ょう。そこに仲魔たちを送るのです」
0209創る名無しに見る名無し
垢版 |
2016/06/12(日) 22:41:54.06ID:mfU818lX
「俺たちか。その場所ってのに俺たちが行くとどうなる?」
「恐らく歴史を変えている存在、特異点のような何かがあなた達という波の揺り返しを受
けて姿を現すでしょう」
「そこで何とかすれば元通りって訳だ」
「しち面倒臭いことになったわね」

 紫の説明にそれぞれがぞれぞれの表情をする。このまま放置すれば改変された時間が本
流となり、こちらの世界が干上がる、滅びてしまうだろう。それも人知れず、多くの人間
の妖怪たちがだ。

「ですがそれは言うほど簡単なことではありませんわ」

 紫は尚も続ける。オニの顔には深い苦悩の影が浮かんでいる。

「人間と悪魔の邂逅は、ほとんどの場合が悲劇から始まります。その後どれほどの喜劇へ
繋がっていようとも。その原点を守るということは、悲劇を覆させないということに外な
らない。縁者たちはそれを承知でやらねばならない。そしてもう一つ。そこに幻想郷から
の出身者がついていかなければいけません」

「え、なんで?」
「仮に特異点を解消したとして、そこでの出来事もなかったことになり歴史が戻ったとし
て、その後どうなります?何事もなかったことになりその場所ごと仲魔も消えるかも知れ
ません。そしてまた同じことの繰り返し、良くて堂々巡りです。それを避けるには特異点
を解消した結果を残さねばなりません。つまり、幻想郷に帰って楔を打たねばならないの
です」

「俺たちがそんなことはなかったって言わなきゃいけないんだな」
「でもそれならなんで幻想郷の者がついていかないといけないのよ。勝手に行って帰って
来たらいいじゃない」

「彼らは幻想郷に来て日が浅い。こちらへ戻るには幻想郷の者の縁を頼らねばいけないの
です。私からの説明はこれで終わりです。何か聞きたいことは?」

 一同は沈黙した。今までの規模の割には弾幕勝負という真剣ながらも遊戯で済んでいた
異変とは異なり、霊夢や萃香からすれば限りなく日常の延長に近い殺伐さをもっていたか
らだ。
0210創る名無しに見る名無し
垢版 |
2016/06/12(日) 22:43:08.87ID:mfU818lX
「人数の制限は、あるのか?」

 オニが聞くと、紫は静かに頷いた。

「あまり大勢でいけば私のほうでも制御は難しくなります。それに縁の数が増えて『道』
が増えてこじれてしまう。できる限り少数、2,3人がせいぜいでしょうね」

「分かった」
「紫はどうすんの?」
「藍も帰ってきたことですし、今しばらくは結界の維持に努めますわ」

「御嬢さん、一つ頼みがあるんだ」
「あら何かしら」

 オニが言うと、今度は顔を向けて紫が答える。彼の真剣な表情を前にして、あどけない
少女の表情を引っ込めた。

「紅魔館にいるマミゾウとパスカル、それと出払っているヒーホーを呼び戻してくれ」
「初めからそのつもりですわ」

 そう言って扇を開くと、境内の地面が割れて、謎の空間から今言った仲魔たちが現れる。

「ムウ!」
「な、なんじゃ!いったい」
「お、ただいまだホー!」

 隙間空間から現れたのはパスカル、マミゾウ(肌蹴ている)、フロスト、そしてジード。

「それではこれで失礼いたしますわ」
 混乱する彼らを余所に紫は文字通り「いなくなった」。忽然と姿を消したのだ。

「騒がしくなってきたねえ!」
「これどうやって収集つけるのよ……」
 霊夢が心底うんざりとした様子で呟くと、オニが彼らの前まで歩み出る。

「お前ら、詳しい話は中で話す!全員集合!」

 音頭をとって神社の邸へと促すと、全員がぞろぞろ後に付いて行った。昼だが残も終
わろうとしている秋口の風は、冬の予感を含む冷たさを持っていた。
0211創る名無しに見る名無し
垢版 |
2016/06/14(火) 07:25:11.44ID:i8ZdL7m4
話進んできたなぁ、投下乙です
0213創る名無しに見る名無し
垢版 |
2016/06/20(月) 22:39:31.39ID:t+glIRoL
「かくかくしかじか!」
『なるほどなー』

 オニの説明に集合した皆が理解する。宴会が行われることもあるせいか、こういう時に
はその広さがありがたい。説明が一言で終わるや否や、博麗邸では会話に華が咲いていた。

「まさかまたお主と会うとはな」
「知らねえ顔も懐かしい顔も揃ったもんだぜ」

 ケルベロス、フロスト、ジード、オニ、オノマンの五体の悪魔?と女性側は霊夢、萃香、
マミゾウの三人。絵面では賊が神社に押し込みをかけたようにしか見えない。

「いやー、帰ろうと思った矢先に足元に穴が空いたもんだから焦ったホ。あわやアメリカ
かと思ったホ。空中で足を泳がせてから『?』ってなって下見て落っこちてって、日ごろ
から練習してなかったら危なかったホ」

 ちなみにその時変な声を上げることは忘れなかった。

「それで、お前は今まで何してたんだよ」
「何って、マミゾウ殿に力を吸われておった」

 オブラートな表現だが要するにいたしていたのだ。さっきからそのマミゾウから熱い眼
差しが送られている。

「おばちゃんのレベルがけっこう上がってるホ」
「うむ、何せそこは経験が少なかったようでな。我も含めた魔獣で足りない分が大分補わ
れたと思う」
「要するに搾られただけじゃねえ」

 そんな男子の会話の横で、萃香とマミゾウの猥談に霊夢が顔を赤くして背けている。
なんやかんやお年頃なので気になるし恥ずかしいのだ。他人の逢引きに気を遣うことも
ある。

「で、どうだったの?」「えがった」
「どうえがったの?」
「地獄の番犬というだけあっての、熱いんじゃ、これが」
0214創る名無しに見る名無し
垢版 |
2016/06/20(月) 22:40:15.56ID:t+glIRoL
 そんな益体も無いことをしばらく話していたが、次第に話題は途絶えていく。やがて、
意を決したのか、オニがフロストに問いかけた。

「で、どうすりゃいいんだ」
「……ここがゲートエリアなんだホ。鳥居の前でこれを使うホ」
「なんだこれは?」

 フロストが帽子から取り出したのは剣と、鏡のような何かだった。

「メシアの角と瞳だホ。役目を果たして久しいけど、今もその機能は失われてないホ。こ
れを使えばたぶん、それぞれの時代に飛べるはずだホ」

 それはかつて、世界の命運を賭けたプログラムを巡る冒険で、悪魔の子どもたちが持っていたものだ。今日という明日が選ばれてから、それぞれのカギは再び剣と鏡に分かれて
少年少女の手に戻された。

 が、日常生活では邪魔なので魔界に帰る際にフロストが預かったのだ。

「本来は各魔界へ行くためのアイテムだけど、たぶんその辺の問題はあの妖怪少女もどき
がなんとかするはずだホ」
「紫のことだね痛え!」

 萃香が茶々を入れるが誰も否定しない。突然空間が開いて彼女は後頭部を墓で殴られた。
次いで声が降ってくる。

――その剣と鏡、一対で一つの世界に飛べます。また、一時的に結界を広げるので敵、と
いうよりは過去の存在が溢れて来ます。皆はその辺を何とかしながら見送ってあげてね。

 語尾にハートマークでも付きそうなイントネーションで紫が言う。

「だ、そうだホ」

 そこで一区切りして、フロストが周りを見回した。その意味するところは一つ誰が『誰』
の元へ行くか。『誰』が付いていくかだ。
「アイツの所へは、オレが行く」
0215創る名無しに見る名無し
垢版 |
2016/06/20(月) 22:40:42.98ID:t+glIRoL
 オニが言うのはかつて東京受胎という変革期に現れた、人とも悪魔ともつかない存在。

「分かってると思うけど、オイラたちが行くのは前日譚だホ。皆とは会えないし、汚れ仕
事だホ」
「構わねえ」

「我が行くのは当然、主の元だな」

 ケルベロスの飼い主。ある日悪魔召喚プログラムを得た青年。破壊と混沌の世界を平ら
げ共に翻弄された仲間を手にかけてしまった、悲しい救世主。

「………………」
「ジード、お前がどっちのマスターのとこに行くのかは分かんねえホ。でもオイラから言
えることは一つだホ。マスターを守ってもマスターは死ぬ運命にある。だから、敵を倒し
てお前のマスターを守ってやって欲しいホ」

 こくり、とジードが頷く。今の彼には酒で酔ったときの感情が全て在る。そしてその時
抱いた想いも、記憶も。

「オイラとこのおっさんは皆の状況を見てから動くホ。とくにパスカル。お前だけは、
ぜっっっっっったいに失敗は許されないホ!」
「そんなつもりはないが、何故だ?」

 ケルベロスことパスカルが疑問符を浮かべる。ヒートアップしたフロストから湯気が立ち水が零れていることからもその真剣さが伝わってくる。

「お前が一番入り組んだ人生を送っているからだホ!お前が無事に帰ってこないとたぶん、もう一人がここに来れないホ!お前は自覚ないかもしれないけど!お前はもしもの世界と
接点結んじゃってるんだホ!」

 並行する可能性の世界が、可能性ではなく、両立しているのだ。それはある一団が神々
の余計なミサイルで時間と空間を跳躍したり、ターミナルからパスカルがこの世界に来て
しまったことに起因しているのだった。

「なんだか分からんが良く分かった。任せておくがいい」
 ケルベロスもまた頷くと、軽く一声吠えた。
0216創る名無しに見る名無し
垢版 |
2016/06/20(月) 22:41:08.00ID:t+glIRoL
「一先ず3人。後は誰が付いていくかだホ」
ちらりと女性人を見れば、既に二人が進み出ていた。マミゾウと萃香だった。

「儂が旦那と行こう。儂とて新参じゃが、何、戻れなくても実時間で合流すれば良かろう」
「おばちゃん!……こいつをよろしく頼むホ」
「しおらしいのう。こういう空気は嫌いじゃないぞえ」

 フロストは黙っていた。その手があったかと思ったが、パスカルがこの瞬間に至るまで
何がどうあったのか、正確な時間が図れないし到底無事には済まないので黙っておくこと
にしたのだ。

「オニの誼さ。面白そうだし、私もいくよ」
「姐さん!」

 萃香は千鳥足のまま言う。彼女にとっては戦も祭りで、生き死にを賭けることも悪魔と
して当然覚悟を持っている。

「お前、絶対こいつの足引っ張るなホ!こいつが食いしばったら面子立てろホ!」
「いいねえ。そいつ聞いてますますワクワクしてきたよ!」
「本当にわかってるかホ!」

 フロストがキレ気味に言う。何故かフロストは萃香を見ると妙に苛立つのだ。虫が合わ
ないとはこのことか。

「ジードは」「私が行くわ」
「その声は!?」
「話は聞かせてもらったわ」

 人形に障子を開かせて入ってきたのは七色の人形使い、アリス・マーガトロイド!

「アリス!できる女アリス!なんでいるんだホ?」
「あの後、あなたに言われたことが頭から離れなくて。やっぱり付いていこうと思って先
回りしたつもりだったけど、隙間に飲まれていたとはね。取り込み中だったから話が落ち
着くまで出るタイミングを計っていたのよ」

 かくかくしかじかの辺りで既にいたのだが、彼女は出番を待ったのだ。気配りである。
0217創る名無しに見る名無し
垢版 |
2016/06/20(月) 22:41:26.48ID:t+glIRoL
「その造魔には私が付くわ。最悪取り残されても魔界を経由して帰ってくればいいでしょ」
(こいつらなんでこんなにホイホイ迂回路が出るんだホ。助かるけど)

 ともあれこれで最初のメンバーが決まった。今日のところは準備に徹して、翌日から順
次出発する手筈となった。

「準備と言ってもどうしたもんかのう」
「案の定白黒が間に合わなかったからこっちから乗り込むホ。トラポート解禁だホ!」
「屋台の支度済ませてからな」

 たった二人で、過去への救出劇に乗り込むこととなった悪魔たちと幻想郷の少女たち。
これから先に待ち受ける危機を知って尚、誰一人として恐怖を感じる者はいなかった。
0218創る名無しに見る名無し
垢版 |
2016/06/26(日) 22:33:48.07ID:OKiMNm2+
 おでん槽に蓋をして、火元の確認をしてから屋台を萃香とオノマンに任せると、オニは
フロストと共に魔法の森の入り口、香霖堂へとやって来た。

「まさか終盤の拠点がここになるとはな」
「神社がちょっと豪華なセーブスポットってだけなのがいただけないホ」

 ぶつぶつと文句を言いながら店の敷居を跨ぐ。薄暗くやや埃っぽい店内には、店である
ことが疑わしいほど雑多な物が陳列されていた。どれも値札は付いておらず、店主が物々
交換や面倒事(肉体労働)を押し付けることで入手することができ、お金で済まそうとすると
とんでもなくふっかけられるという厄介なところだった。

「……なんだ客か」

 そんなことを言いながら、店主が店の奥から現れた。白髪に眼鏡をかけた男で、黒と青の二色でほぼ半々になった和装とも洋装ともつかない服に身を包んでいる。玄関横のカウンターらしき場所には福助が置いてある。居留守のつもりだったんだろうか。

「店主さん!お久し振りっす!」
「初めましてだホ」(こいつら基本二色なんだホな)

 オニが勢いよく頭を下げ、フロストが軽く手を上げる。それを見て店主、森近霖之助は
おや、と小さく声をあげた。間違いなく珍客だったであろうオニを見て無表情だった顔が
少しだけ変化があった。

「君は夏ごろにおでん屋台を買って行ったオニだな」
「その節はお世話んなりました!おかげさまでなんとかやっていけてやす!」

 体育会系のノリでへりくだるオニに対して、霖之助は少し嫌そうな顔をする。他の客や
少女に比べて格段に礼儀正しいのだが声が大きく暑苦しいのだ。加えてアウトドア派とイ
ンドア派である。

「それは良かった。で、今日は何の用だい?」
「実は……」

 オニとフロストは改めて自己紹介がてらにこれまで経緯を話した。そして魔理沙に頼ん
だはずのものが来ないので取りに来たということ。
0219創る名無しに見る名無し
垢版 |
2016/06/26(日) 22:34:11.48ID:OKiMNm2+
「なるほど、確かに君たちの言うとおり、魔理沙は来てないし、そんな銃も来てない」
「店主さん、頼んます。あの段平、買い直すなんて言いやせん。貸しちゃくれませんか。
金だってちゃんと払います。この一戦だけ使わせてもらえれば」

 オニがその巨躯を縮めて懇願する。幻想郷に来てからの営業ですっかり節度というもの
が身についていた。地道なドサ周りが彼のトークに磨きをかけたのである。

「いや、そこは心配してないよ。君はオニだし、僕の知ってる連中よりもよっぽど上等だ。客としては。それに、スペルカードルール外の異変となれば、遊びじゃ済まないだろう。
有事に際して動き方を間違えないのは商人の鉄則だよ」

 霖之助は来なさい、と言って店の外に出ると、そのまま裏手に周り、倉庫らしき小屋の
前まで二人は案内される。立てつけの悪い扉を雑に開けると、霖之助は中から長い麻袋に
包まれた棒状の物を取り出すとそれをオニに手渡した。流石に重かったのか若干つらそう。

「ふう、ふう。これだろう。随分と傷んでいたから鍛え直しておいた。流石に本職にも手
伝ってもらうことになったが、随分と勉強になったよ。唐傘お化けが傘の張り直しに来て
いたのは好都合だったね。それにしてもオニの使う刀剣類の出所はある程度知っていたつ
もりだったがどういう造りをしているのかまでは把握していなかった。東洋における鋭さ
や取り回しの良さよりも力に耐える頑丈さを優先するのは西洋の思想に」

 突然始まった薀蓄に二人はぎょっとしたが、霖之助は構わずに続けた。誤解である。こ
の段平は他のオニが使っている物に似ているが、かつての仲魔からもらった剣を打ち直し
たもので、鬼が島製の物ではない。しかし一般的な人間の扱う刀剣類とは別物であること
は変わりがない。

 やや興奮気味に語る店主へのフォローを考えるが次から次に話が飛んでいくのでとても
追い付かない。さっき思いついた辻褄合わせが次の瞬間には使えなくなっていくことに、
フロストとオニは戦慄した。

――そしてそんなことやってる内に日が暮れてしまった。

「ということなんだ。どうかな? 今のは僕の推察なんだが、本家からしてどの程度合っ
ているか、採点してみてもらえるかな?」

「えっ。えっあっはい。えーと」
0220創る名無しに見る名無し
垢版 |
2016/06/26(日) 22:34:31.86ID:OKiMNm2+
「オイラメモ取ってるホ」

 そう言ってフロストがいつの間にか付けていた記録。まるで暗号電文のように長く伸び
た巻物には箇条書きされた要点が点々と並んでいた。

(ええ、何これ。最初が全然違うのに結論があってるってどういうことだ……過程に修正
入れると結論が間違っちゃうな……過程だけ修正してえけどこれどうやるの……?)

「ええと、結論は合ってる。でも、過程が、間違ってる」
「ほう。どこだい」

 オニが油汗をかきながら言葉を絞り出す。フロストが太ももに『正直に言え』と助言を
くれる。彼は意を決して話すことにした。

「こ、この段平、実は知り合いの剣士から貰ったもんでして、たぶん、鍛え方も鬼が島製じゃないんじゃないかな、と。それに妖精の魔法もかかってるし、だから、でも、うーん、なんで結論が合ってたんだろう?」

「ああ、なるほど。僕もこの説に疑問点が無いわけでは無かったよ。そして今、君の話で
いくつかの疑問が解決した。これで修正のあったほうが過程もより正しいということだ」

「え、それってどういうことだホ」
 口に出してフロストは、その引き金を引いたことを激しく後悔した。霖之助は待ってましたと言わんばかりに眼鏡を光らせる。もう半日外で過ごしているというのに。

「それを今から教えてあげようじゃないか。折角正しい情報も入ったことだし僕の考え違
いだった点と、何故そう考えたか、そしてこの段平が何故このように鍛えられ、造られたかを話そう」

「いえ、オレたちちょっと急いでるんで!」
「もう夜も暗くなるホ!」
「何を言ってるんだ君たち妖怪だろ!」

 そして、その日が終わり霖之助が満足するまで彼らは拘束された。結局。ソードナイト
ほどの実力者となると、実力に耐えうる剣が必要だったから、魔界の鬼たちに獲物を鍛え
直してもらったというそれだけの結論だった。
0221創る名無しに見る名無し
垢版 |
2016/06/26(日) 22:35:05.21ID:OKiMNm2+
「じゃあ、気を付けて行って来給え」
「はい、ありがとうございました……」

 段平一つ取り戻すのに丸一日要する罠にかかった二人はくたくたになりながら帰宅する
こととなった。既に辺りは妖怪の時間だったが、彼らはそんな気にはなれなかった。

「そういえば店主さん。店主さんは悪魔に襲われた時の備えってできてるのかホ?」
「ああ。魔石を売っておけばとりあえず大丈夫だろう」

 あっさりとそう返す霖之助の言葉に、今更ながらショップが無事な理由を垣間見たフロ
ストであった。

 そして、余談だが帰った後の博麗神社、というかおでん屋台は萃香が看板娘をしたせい
なのか、いつもより客が入っており、オニが余計に悔しい思いをしたとかしなかったとか。

「オレの店なのに……」
「今度から仕込みだけやったらどうだホ?」

 フロストの言葉に、彼は真剣に考え込んでしまった。言われてみれば、これまでマミゾ
ウや美鈴といった少女がいてくれた時のほうが地底で一人でやっていたときよりも上手く
行っていた。

「この戦いが終わったら、オレ、正式に看板娘を雇うんだ……」
非常に雑な死亡フラグを建てようとするオニだったが。

「そう、関係ないね」
取り合うようなこともせず、フロストはとても冷たかった。

※オニは武器を取り戻したことで借金のスキルが暗夜剣に戻った。
0222創る名無しに見る名無し
垢版 |
2016/07/21(木) 22:39:28.38ID:OaAPrb/m
三章 仲魔

翌日、ついに元の世界へと出発することとなったフロストたちは、博麗神社の鳥居の前
に集まっていた。今回行くのはオニと萃香の二人だ。

「いいかホ?使い方分かるホ?もっかい説明いるかホ?」
「おう、大丈夫だ。それじゃあ行ってくるぜ」
「ちょっとは楽しめるといいけどね」

 オニはいつもの帽子と前掛けを外し、幻想郷に来た時と同じ着の身着のままの姿だった。
萃香もまた同じだ。有事の際にも自然体で臨む彼らは豪胆なのか、それとも無計画なのか。
うららかな晩秋の一日に、世界と幻想郷の明日を賭けた戦いが始まる。

 言葉にすれば大仰だが、それはいつものことと言えなくもなかった。
「この剣と鏡を翳せばいいんだよな」
「そうだホ」

 フロストが頷くとオニは鳥居にそれを向けた。
「オレがいない間、屋台を頼んだぜ」
「格好つけてねーでいーからはよ行けホ。後がつっかえてるホ」

 まったく取り合ってくれないフロストにオニは苦笑した。お互いに何度もこんな場面が
あった。最初の二、三回こそシリアスなことを言い合ったりしたが、今はこんなものだ。

「それと萃香、たぶん行先では胸糞悪いことになるホ。だからこいつをしっかり頼むホ」
「お!初めて名前を呼んでくれたねえ。いいねえ、こういう潤いが大事なんだよ。まあ任
せておきなって!」

 瓢箪をぐいっと一口呷ってから萃香が笑う。約束だ、と軽く言って手を振る。霊夢が不
満気に萃香を睨む。

「今回に限っては帰ってきなさいよ」
「姿は見せないけど、毎日帰ってるよー」

 そこまで話して、二人は前を向く。
0223創る名無しに見る名無し
垢版 |
2016/07/21(木) 22:39:47.10ID:OaAPrb/m
「使ったら結界が一時的に裂けるホ。そしたら一気に悪魔がやってくるホ。雑魚はオイラたちに任せて、お前らは思いっきり飛び込むホ!」

「分かってらあ!」
オニが剣を掲げた。
「メシアの角よ!世界を繋げる穴を、ここに!」

 鳥居の下の空間が裂け、禍々しい六芒星の浮かぶ暗黒が姿を見せる。空間の縁を何者か
が掴み、羽のある悪魔が飛び出してくる。オニは更に鏡を翳した。
「メシアの瞳よ!己の道を照らし出せ!」

 六芒星が光り、一本の道となってオニたちの足元へと伸びる。

「じゃあ、行ってくるぜ!」
「あとよろしく〜!」

 二人が悪魔の流れに逆らって飛び込むと、開かれた空間がゆっくりと閉じていく。しか
し閉じていく間にも、悪魔は我先にと現れてくる。

「こういう異変なのね……つくづく昔を思い出すわ」
 アリスが人形を展開する。

「いやはや、じゃあちょっと久しぶりに堅気の妖怪をやろうかい」
「アクマモ イロイロ タイヘンダ」
 マミゾウが葉っぱとお札を取り出し、ケルベロスが首を振る。

「ここから先に行きたけりゃ、オイラたちを倒してから行けホ!」
「雑魚妖怪のくせにうじゃうじゃと、仕事させんじゃないわよ!」

 霊夢とフロストが、現れる悪魔の流れへと躍りかかる。

 師走を間近に控えたこの日、博麗神社では霊夢と奇妙な仲魔たちの戦いの火蓋が切られ
たのだった。その一方で、その光景を遥かな高みから覗き見る者があった。

「人と歩みし悪魔の業、見せるが良い」
 誰とも付かないその悪魔は見守るように、そう呟いた。
0224創る名無しに見る名無し
垢版 |
2016/07/21(木) 22:40:42.62ID:OaAPrb/m
――代々木公園

 ある年の、ある日に、この公園では凄惨な粛清劇があった。カオスの急先鋒たるガイア
教団の教徒同士の抗争。陽中の陰とでもいうべき異端の男が運命の扉を開けた。その日。

 その日に、オニと萃香は来ていた。彼らの目の前ではたった一人の男を前に、正確には
一人の男と、男が召喚した悪魔の前に、他の教団員たちは健闘虚しく力尽きていった。
その光景を、二人は見ていた。オニからすれば懐かしい敵の顔ぶれが並んでいる。

「ここかい」
 オニが呟いた。目の前の光景は半透明で、映像の様だった。手を伸ばしても触ることも
できない。元より助けるつもりはなかったが、干渉できないことは分かった。

「これってさあ、今どうなってんの?」

 萃香が瓢箪から酒を呷りつつ尋ねる。何の抵抗もなく公園の会談に寝そべると、ひとつ
欠伸をした。その辺に転がっている空き缶を投げつけるが、映像をすり抜けて向こう側へ
と飛んでいくだけだ。

「たぶん、この先で、アイツに何かが起こるんでしょうや」
 そう言う間にも見る見る内に数を減らしていく。オニの記憶にあるのは喧しい妖精たち
に道に迷わされたり、異端のマネカタが呼び出した中途半端な邪神と戦ったくらいだ。

 それより前のことは、彼も知らない。だが、それでも異変と分かる出来事が、今目の前
で起ころうとしていた。

 ガイア教団側が一人のデビルサマナー、ヒカワに敗れた後、それは起こった。すぐ近く
に二人の人間、悪魔だろうか。どちらともいえない存在が、モノも言わずヒカワに襲いか
かる。

「あいつらか。人間の頃から悪魔らしかったって話だったがよ」
「知り合いなんだ?」
 オニは頷いた。

 一人は子どもだった。少年で、虚ろな瞳をしている。手に持ったナイフをチラつかせて
いる。酷薄でまったく手垢のついていない貌。
0225創る名無しに見る名無し
垢版 |
2016/07/21(木) 22:41:05.15ID:OaAPrb/m
 もう一人は中年から壮年の男、怒りと憎しみで眼が濁り切っている。身なりは上等で、
スーツ姿だが、興奮した形相からは一遍の理性も見られない。

 両者に共通しているのは正気でないことだが、そもそも自分の意思があるのかも不明だ。
本来なら、この二人はここに存在しているはずのない人物だった。
 これより後に、悪魔となって、ある意味望んだ生を掴んだ彼らの、その前身。それこそ
が紫が言っていた「特異点のようなもの」だろう。

 ヒカワが彼らに何かを言って悪魔をけしかける。堕天使や邪神を中心とした悪魔が各々
魔法や特技を駆使して応戦するが、それも次第に崩されていく。どちらも非常に火力が高い上に執拗に一人一人を撃破していく。

 ヒカワも手を出しているし、追い詰めていってはいるが、少しずつ陣容を崩されていく。特異点側の悪魔も見る見る内に傷ついていくが意に介さず、攻め手を緩めない。

 最後にはヒカワに一太刀を浴びせたところで二人は消滅した。ヒカワは呪詛を吐いてど
こかへといなくなってしまった。恐らく、これで何か予定が狂うのだろうとオニは漠然と
ではあるが事態の把握ができていた。

「終わっちゃったけどさ、どうすんのこれ?やっぱ助けに入ったほうが良かったかな?」
「いや、たぶんこれからですぜ。姐さん」

 そう言うやいなや、彼らの前に赤い煤の様なものが現れる。それは次第に集まって、
先ほどの悪魔を形作った。そして、世界が逆再生映像のように時間を遡っていく。
ガイア教団が全滅する前、彼らが公園に集結する以前まで。

 その悪魔たちとオニ、萃香を残して。
「分かりやすいね。こいつら倒して帰ればいいんだ」
「そっすね。意外に強いんで気を付けて。それにしてもなあ。いったいどんな奴が立ちは
だかるかと思えば、お前らか。つっても、たぶん中身は人間じゃねえんだろうな」

 向こうもオニたちを敵と認識したのか、彼らのほうへゆっくりと歩み寄ってきた。迎え
撃つように構えた二人を見て、彼らは、一気に間合いを詰めて襲い掛かってきた。

――悪魔 サカハギ と フトミミ が 出現 した!!
0226創る名無しに見る名無し
垢版 |
2016/08/07(日) 21:58:46.78ID:1C7QEzYt
 全てが元通りとなったということは、ボルテクス界で悪魔となっていた者たちもまた
元通りということである。

 家庭や仲間の温もりに憧れを抱いていた少年も、憎しみに身を焦がし苛まれていた男も
また、この世界に戻っていたということであり、強力な悪魔に転生するだけの魂を持ちな
がらも自らに何のコトワリも持たない彼らが、歴史改変のための尖兵として選ばれたのは
ある種自然なことであった。

「おー、ちょっとは強そうじゃん。おーい。お前らー、お前らはなんだい?」

 萃香が楽しそうに語りかけるも彼らは答えない。正気は元より自我さえ既にないようで
あった。躊躇無く繰り出されるナイフと拳、それらを難なく躱しながら萃香舌打ちをする。

「ちぇっ。中身は傀儡か。戦り甲斐のない」
「姐さん!遊んじゃいけません!」

 オニの警告を聞き流す、敵の攻撃も受け流す。あまりにも軽やかな動きで物理攻撃の類
が萃香には当たらない。体を霧に変えることさえせず、ひょいひょいと翻弄していく。

「すげえ、まるでスクカジャが限界までかかっているみてえだ!」

 オニが感嘆の声を上げると、サカハギが狙いを彼へと切り替える。鋭く繰り出される何
度も襲い来る突きが赤い肌を刺して、その度に血の紅が上塗りされていく。

――だが、浅い。

「つッ、舐めんじゃねえぜ!」
オニが一歩引いて腰に溜めを作る。そして追い打ちにかかるサカハギを真正面から殴り
飛ばした。相手の体がバウンドし、後方へと吹き飛ぶ。

「はっはー!お前やっぱりやるじゃん!」
 フトミミを連続で殴り鎖分銅で引き寄せまた殴るというコンボを決めながら萃香が喝采を送る。
 最後にもう一度殴り飛ばして寄ってくる。その目には子どものような感動と、獲物を見
つけた獣の光があった。
「ねえねえ。帰ったら私と一発殺ろうよ!平の殴り合いでさ!」
0227創る名無しに見る名無し
垢版 |
2016/08/07(日) 21:59:19.24ID:1C7QEzYt
 腕を半端じゃない力で掴まれながら、しかしオニは吹き飛ばされたフトミミとサカハギ
を見ていた。

「呆気なさすぎる……」
 確かに過去の彼らと今のオニとでは実力に開きがある。それは確かだ。しかしあまりに
も動きが単調だった。先ほどの氷川を迫ったような力は感じられない。

「力配分してるってこと?」
 萃香の問いに頷くオニ。見ればゆっくりと起き上がる両者に、赤い怨念のような何かが
流れ込んでいく。先に立ち上がったフトミミが萃香へと振り向く。

『!飛べ!』
 全く同じ危機感を抱いて、全く同じ警告を発し合い高く飛ぶ。足元に一瞬で通り過ぎて
行くフトミミと、そのまま彼らの後方の自販機を拳で貫くのが見えた。

 まるで物理的な干渉がないのか、文字通り貫通したのだ。萃香の顔が一瞬で剣呑なもの
へと変わり、オニが唾を呑む。そして背中には悍ましい痛みが走る。瘴気に染まった湿っ
た風が二人の背を叩いたのだ。

「ぐ、こいつは!?」
「いでででで!!」

 サカハギが発した湿った風により体勢を崩し、フトミミのほうへと押しこまれる。オニ
は回避を諦め反撃に全神経を集中させる。しかしフトミミは萃香に焦点を合わせていた。

(け、優先順位を良く分かってやがる!)

 オニは所詮、どこまで言ってもタフな妖怪に過ぎない。そこを見れば萃香は何をしてく
るか分からない曲者さと俊敏さがあった。フトミミの拳が着地際の萃香を襲う。その拳が
空を切る。見れば萃香は宙に浮いていた。幻想郷の人里以外に住む少女は空を飛べるのだ。

「惜しいねえ、でも、まだまだこんなんじゃ物足りないよ!」
 攻撃を外し手番を譲ることになったフトミミに、萃香は飛び込みから先ほどの連携を
再度叩き込む。追い打ちでオニも段平で一撃を加えることに成功する。

「さあさあ折角の異変だ。もっと頑張らないと、食べちゃうぞ〜!マージ―でー!」
0228創る名無しに見る名無し
垢版 |
2017/12/27(水) 10:59:03.05ID:C1Z7QFDy
家で不労所得的に稼げる方法など
参考までに、
⇒ 『武藤のムロイエウレ』 というHPで見ることができるらしいです。

グーグル検索⇒『武藤のムロイエウレ』"

E6D9QHEPM5
0229創る名無しに見る名無し
垢版 |
2018/05/21(月) 08:13:44.54ID:tRZnwP6O
知り合いから教えてもらったパソコン一台でお金持ちになれるやり方
参考までに書いておきます
グーグルで検索するといいかも『ネットで稼ぐ方法 モニアレフヌノ』

06I44
0230創る名無しに見る名無し
垢版 |
2018/07/03(火) 19:40:40.93ID:f1dClnnX
RY9
0231創る名無しに見る名無し
垢版 |
2018/10/17(水) 18:22:29.60ID:ZU7x6aHX
中学生でもできるネットで稼げる情報とか
暇な人は見てみるといいかもしれません
いいことありますよーに『金持ちになる方法 羽山のサユレイザ』とはなんですかね

DGS
0233創る名無しに見る名無し
垢版 |
2022/10/18(火) 20:17:50.70ID:TaWZMMeK
>>231
喋んな
レスを投稿する


ニューススポーツなんでも実況