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■LAST EXILE■ラストエグザイル■二次創作ス2
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0001創る名無しに見る名無し
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2013/12/08(日) 11:35:51.44ID:DC8N01MB
1期アニメ「LAST EXILE」、2期アニメ「ラストエグザイル 銀翼のファム」、漫画の「砂時計の旅人」等ラストエグザイル関連の二次創作スレ
単発・短編・長編・ネタ問わず。
エロネタや18禁ネタはエロパロ板に専用スレがありますのでそちらへどうぞ。

前スレ
■LAST EXILE■ラストエグザイル■二次創作スレ
http://engawa.2ch.net/test/read.cgi/mitemite/1344867493/
0002創る名無しに見る名無し
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2013/12/08(日) 11:46:03.51ID:DC8N01MB
http://farm4.staticflickr.com/3110/2580665450_006a6bd06d_z.jpg
http://www.lastexile-fam.com/img/chara_alvis_anime.jpg
アルヴィスたんと電話でお話しました。
「アルたんはどんな男の人が好きなの?」って聞いたんです。
そしたら「視野の大きい人が好き」って言ってました。
僕も視野の大きな男になってアルたんに好かれていっぱいチュチュしたいです。
アルたんに「視野大きくするからいっぱいいっぱいチューチューしていい?アルたん、いい?」
って聞いたんです。 そしたら「もう、(*´ε`*)ちゅきちゅきたん、知らない!」って電話切りました。
アルたんは照れてます。
きゃわみゅにゅいドキドキハートのピコピコ女神ですアルたんは。
あああああああアルちゅきアルちゅきアルちゅきちゅきちゅきたん・・・
チューしてチューしまくりたいアルちゅきたん(*´ε`*)キッチュキッチュ・・・ミュミュミュ
0004創る名無しに見る名無し
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2013/12/08(日) 13:51:32.93ID:EwQsEb2S
前スレまとめ

シルヴィウス回転十字砲火が生まれた経緯 >>2
デュシスがアデスとの戦争に登場しなかった経緯 >>10
シルヴィウスにギルドのお坊ちゃまが配属されたので、地上人としての常識を教えるタチアナアリスティア >>23
ディーオが救助された経緯 >>24
アンシャル撃墜のアデス側の反応 >>35
グラキエスのエグザイル大戦 >>43
クリスマス >>73
再会 >>77
韋駄天ゴライアスの由来 >>103
デルフィーネ母星に行く >>118
0006デルフィーネ母星に行く その56
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2013/12/08(日) 23:19:07.69ID:EwQsEb2S
・グラキエス国境付近の上空
ゴウンゴウンゴウン

ケイオス艦長「ヴァサント将軍。もうじきグラキエス国境です。しかし本当に同行しなくて良いのですか?」
ヴァサント「多数の戦艦を引き連れて行ってはグラキエスが警戒します。私の乗艦アナイティスだけで十分です」
ヴィマル「ヴァサント将軍の配慮は理解できますが、それでもやはり私は同行すべき戦力は多い方が良いと思います。まだ時間は少し残ってますので考え直してはいただけませんか?」
アナンダ「その辺にしておけヴィマル。将軍がアナイティスだけでグラキエスに行くと言ったんだ。ヴァサント将軍の決心を変えられるのは私達では無理だ」
ディネシュ「大丈夫だよヴィマル。アナイティスだけならグラキエスもそんなに警戒しないだろ。グランレースの時もファラフナーズ様は来訪者を威圧しないように警備の人間は少数精鋭にしたじゃないか」
ラケシュ「結果的にはあの悲劇に繋がったがな」
シヴァ「…少数精鋭と言う点ではツインもヴァサント将軍も同じだ。下手に同行者を増やしては足手纏いになるやも知れん。あのギルド人の帰還民の護衛のように、一人の方が却って安全かも知れないぞ」
アナンダ「そう言えばこの辺りでそのギルド人の帰還民と合流すると言う話でしたが…」
ディネシュ「おっ、2時方向の地上に空族の船とギルドの赤いヴァンシップ発見。あれが東の土地をアデスに譲ってくれたと言うギルド人ですかね?」
ヴィマル「赤いオドラデクと言うのはギルドのマエストロが乗る機体です。普通の白いオドラデクと違ってそうそう見かける物ではないので、例のギルド人で確定かと」

ピカピカピカ

ディネシュ「地上の一団から発光信号を確認。デルフィーネ・エラクレアと名乗っています」
ヴァサント「デルフィーネ殿を回収します。アナイティスを下ろしなさい。護衛のケイオス艦はそのままこの場で待機」
ケイオス艦長「了解しました。聞こえたか?ケイオス艦はこの場で停止。アナイティスがグラキエス首都に行くまでこのまま上空待機せよ」

・グラキエス国境付近の地上
ヴァサント「お待たせしましたデルフィーネ・エラクレア」
デルフィーネ「意外に早かったわね。それじゃあアナイティスに乗って早速グラキエスまで行こうかしら」
ファム「お姉さん。ひょっとしてこのアデスの鯨でグラキエスまで行くの?」
デルフィーネ「ええ、そうよ。戦争しに行く訳じゃないからこの船だけで十分よ」
ジゼル「大丈夫なんですか?グラキエスの攻撃機は国境に入った船を問答無用で撃墜します。上空から飛来して表面積の大きい船体上部に弾を打ち込むそうですから、アデスのこのタイプの船では簡単に撃墜されてしまうのでは…」
デルフィーネ「聞いてるわ。でもグラキエスに攻撃されない為の方法は考えてあるから大丈夫。但し捕獲されてそのままグラキエスの首都に連行されるでしょうけどね」
ファム「えー?グラキエスに捕まるの?」
ジゼル「あのー私達空族なんかそのまま縛り首になってしまうのでは…」
ヴァサント「グラキエスには少数精鋭で赴くつもりです。危険を感じるようでしたら無理に同行する必要はありません」
デルフィーネ「だそうよファム。あなた達はここで留守番していた方が良いかもね」
ジゼル「えーとそれじゃあ私とファムはここで空族の皆と一緒にスクラップを回収しながら待ってます」
ヴァサント「ではそちらの同行者はデルフィーネ殿とシカーダ殿に2名だけで良いでしょうか?」
デルフィーネ「ええ、それで構わないわ。行くわよシカーダ」
シカーダ「畏まりました。それではヴァサント将軍、宜しくお願いします」
ヴァサント「こちらこそ宜しくお願いします」

ゴウンゴウンゴウン

・グラキエス上空
ウィオラ「国境のアデス艦が1隻侵入してきた」
プリームラ「レーダーにてクラウディア反応確認。このタイプはモルヴァリードを防衛する艦隊の旗艦ではないか?」
ディアン「1隻だけか。伏兵に気を付けろ。囮かも知れない。マグノーリヤ、敵艦に接続して投降勧告しろ。人質にして様子を伺う」
マグノーリヤ「了解」
0007デルフィーネ母星に行く その57
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2013/12/08(日) 23:22:18.29ID:EwQsEb2S
・アナイティス
ヴァサント「ではそろそろ私は準備します。グラキエスが発砲して来るでしょうが、反撃せずにそのままグラキエス首都までこの速度のまま進んで下さい」
ヴィマル「分かりましたヴァサント将軍。それにしてもこんな方法で本当に有効なのでしょうか?」
デルフィーネ「聞いた所ではグラキエスは融通の利かない頭の中までカチコチの人間だそうじゃない。だったら前例の無い出来事には戸惑うはずよ。ねえシカーダ」
シカーダ「は、命令に忠実な軍人は自分で物事を判断する力が低いので、柔軟な判断が許されない現場ですと想定外の事態には対応できないケースがままあります。ヴァサント将軍にもそのグラキエスが想定しない事をやって貰うのです」
アナンダ「艦外に出て風に身を晒すだけでグラキエスが躊躇して攻撃してこなくなる…ですか」
デルフィーネ「大丈夫よ。グラキエスのヴァンシップが攻撃してきた時の対策も考えてるわ」
ディネシュ「空族から手に入れたこの金属箔っすね?これをグラキエス機が近づいてきたらばら撒けば良いんですね?」
デルフィーネ「そうよ。本当なら花弁を撒きたいんだけど、季節外れで手に入らなかったら空族から紙吹雪代りにこの金属箔を貰って来たの」
シヴァ「確かギルド伝統では花弁をばら撒くのは敵意のない事を意味するのでしたよね?グラキエスにも通じるでしょうか」
ヴィマル「ギルドの伝統を受け継いでるならば花弁や紙吹雪を撒く意味は知ってると思われますが、それでグラキエスが攻撃をしてこなくなるかはまた別です」
アナンダ「グランレースの時もファラフナーズ様は花弁を撒いたが結局テロリストに暗殺されてしまった…」
ラケシュ「ヴァサント将軍をファラフナーズ様と同じ目には遭わせない。その為に俺達が護衛として同行したのだ。アナンダ。ヴァサント将軍の準備が整い次第俺達も傍で待機するぞ」

・アナイティス甲板
デルフィーネ「準備は出来たかしらヴァサント将軍。使者を意味する白旗を風で飛ばされないようにしっかり持って下さるかしら」
ヴァサント「分かってます。この位の風で飛ばされる程ケイオス人は軟弱ではありません」
デルフィーネ「護衛のお二方も準備できたようね。それじゃあ金属箔を撒くわよ」

シヴァ「上で準備ができたそうだ。予定通り金属箔を入れた花火を順次打ち上げ開始」
ディネシュ「了解。打ち上げ開始!」

ヒューン ヒュルルルル ドーン

・グラキエス上空
ウィオラ「敵艦が発砲を始めた」
プリームラ「これは何だ?チャフ?」
マグノーリヤ「敵艦の甲板に人影が見える。白旗を持ってると言う事は…使者だ」
ウィオラ「ディアン、どうする?」
ディアン「白旗を持った使者に金属箔…花弁の代用品か。相手に戦意は見られない。マグノーリヤ、アデス艦に投降勧告しろ。投降を受け入れないようであれば即座に撃墜すると伝えろ」
マグノーリヤ「了解。プリームラ、行くぞ」
プリームラ「了解。アデス艦に接近する」

キュイーン ヒューン ガチャ

マグノーリヤ『そこの船聞こえるか?お前達はグラキエスの国境を侵犯している。直ちに武装解除し投降せよ。勧告を受け入れなければ撃墜する』
ヴァサント「(グラキエス機はこちらに発砲してこない…こちらに戦意は無いと理解して貰えたようだわ)我々はアデスの使者としてこちらに赴きました。争うつもりは無いのでそちらの指示に従いますので誘導をお願いします」
マグノーリヤ『わかった。だが誘導はできない。たかが1隻と言えどグラキエスの首都に戦艦を入れる訳にはいかない』
ヴァサント「!ならば私だけでも使者として首都に行く事は…」
マグノーリヤ『お前は捕虜だ。捕虜に選択の権限は無い』
アナンダ「雲行きが怪しいぞラケシュ。グラキエスはヴァサント将軍だけを連れていくつもりだ」
ラケシュ「…我々も同行できるか申し出てみよう」

スタッ

マグノーリヤ『そこの二人!止まれ!』

ズガガッ
0008デルフィーネ母星に行く その58
垢版 |
2013/12/08(日) 23:27:15.50ID:EwQsEb2S
ラケシュ「!」
アナンダ「!」
ヴァサント「大丈夫です。今のは威嚇です。二人ともグラキエスの指示に従って下さい」
アナンダ「グラキエスのパイロットよ。我々だけでも将軍の護衛として同行できないか?」
マグノーリヤ『それはできない。首都に連行するのはそいつ一人だけだ。わかったのであれば後ろに下がれ。指示に従わなければこいつを撃つ』
アナンダ「…」
ラケシュ「指示に従おうアナンダ」
アナンダ「しかし」
ラケシュ「今回のヴァサント将軍の任務はグラキエスとの接触だ。我々が無理強いしてその機会を潰してはいかん」
アナンダ「…分かった」

ススッ

マグノーリヤ『良し、そのまま後退しろ。そして使者のお前は我々と一緒についてきてもらう』

ピーッピーッ

プリームラ『マグノーリヤ、クラウディアに異常発生。圧力が低下してきている』
マグノーリヤ『何?こんな時に』
ヴァサント(グラキエス機に異常?)

・アナイティスブリッジ
デルフィーネ(そろそろ金属箔が効果を発揮する頃ね)
ディネシュ「おい、あのグラキエスのヴァンシップの様子がおかしいぞ」
シヴァ「クラウディアの異常か?バランス崩してこっちに突っ込んでくる」

ズガガガガッ

ヴィマル「グラキエス機が甲板に不時着しました!」
ディネシュ「甲板のヴァサント将軍は?!」
シヴァ「大丈夫だ。アナンダとラケシュも無事だ」
ヴィマル「良かった…とこうしてる場合じゃない。グラキエス機のパイロットは無事か至急確認してください!もし死んでいたらグラキエスからの報復もあり得ます」

・グラキエス上空
ディアン「どうした?!応答しろっ。プリームラ、マグノーリヤ!」
ウィオラ「アデスが発砲した様子は見られない。あの光るチャフをばら撒いてるだけで、アデスがプリームラ達に攻撃を加えた様子は無かった」
ディアン「ならばエンジントラブルか?いや、あのチャフを吸い込んだせいか?」
ウィオラ「だとしたら我々があのチャフの中に飛び込むのは不味い。同じ事故を誘発する可能性がある」
ディアン「ウィオラ、機体トラブルで敵艦に不時着した時のマニュアルはどうなってる?」
ウィオラ「マニュアルにはそのような事が起きた時の対応は載っていない。想定外だ」
ディアン「…そうか。では基地に連絡し指示を仰ぐ。それまでは敵艦を監視を続行する」
ウィオラ「了解」
0009デルフィーネ母星に行く その59
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2013/12/08(日) 23:38:44.76ID:EwQsEb2S
・アナイティス甲板
アナンダ「大丈夫かグラキエス人」
マグノーリヤ「近寄るな。この機体はグラキエスの物である。勝手に触るな!」
ラケシュ「と言ってますがどうしますか?」
ヴァサント「命に別条は無いようですね。もう1人の方は?」
プリームラ『私達を捕虜にしないのか?』
ヴァサン『「我々は貴方たちと戦う為に来たのではありません。当然捕虜にするつもりもありません。ヴァンシップのトラブルのようですが、お二方に怪我が無いようで良かったです。
機体の修理が終わるまでどうぞこのアナイティスでゆっくりしていって下さい』
マグノーリヤ「お前グラキエス語を話せるのか?」
ヴァサント「ええ、昔ファラフナーズ様から教えていただいた物です。実際に使うのはグランレース以来ですが」
プリームラ『プリームラ、相手は何と?』
マグノーリヤ『こいつはグラキエス語が分かるらしい。内緒話をするのは難しそうだ。下手に話すとこちらの情報が筒抜けになるから不要な会話は慎んだ方が良い』
プリームラ『そうか…私達を襲おうとしてないから良い人なのかも知れないな』
マグノーリヤ『簡単に相手を信じるなプリームラ。信じたら裏切られるかも知れないぞ。希望的観測をするのは危険だ』
ヴァサント『どうしました?ヴァンシップの修理をするのであれば、お手伝いしますが?』
マグノーリヤ「不要だ。我々の機体には近づかないで欲しい。放っておいてくれ」
ヴァサント「そうですか。人が近づかないように警備の者を立てて置きます。部品やクラウディア等が必要でしたら構わず彼らに言いつけて下さい」

デルフィーネ「第一段階は上手く行ったわね。上空にグラキエスのヴァンシップが飛んでるけどこちらに攻撃を仕掛けて来る様子は無いからこのままグラキエスの首都まで行けるかしら」
シカーダ「建前ではグラキエス人に戦艦を捕獲されて首都まで連行されると言う事になってますが、実態はアデスがグラキエスのパイロットを人質にしている状態です。グラキエス側が人質の安全を考えないようであればこの船も危ないでしょう」
デルフィーネ「でも今の所上空のグラキエス機が攻撃してくるようすは無いからグラキエスとしては人質の安全を考えているようね」
シカーダ「或いは想定外の事態に上からの指示を仰いでるのかも知れませんな」
ヴィマル「ちょっと宜しいでしょうかデルフィーネ殿」
デルフィーネ「何かしら?」
ヴィマル「先程のグラキエス機のトラブルですが、あなたが撒くように指示したこの金属箔。これはあなたが狙ってやった物なのですか?」
デルフィーネ「あら、あなたは空族がクラウディアを阻害する金属箔を使ってる事は知らなかったのかしら?」
ヴィマル「ケイオスは地理的にグランレイクを縄張りとする空族と直接的な戦闘を経験した事は有りませんが、空族の情報はアデス軍の回覧で通達されているので知っています。
しかし実際にこのような危険な金属箔を使うとはあなたは何を考えているんですか?一歩間違えばヴァサント将軍がヴァンシップの下敷きになっていたのかも知れないんですよ」
デルフィーネ「もしこの作戦を知っていたら止めたかしら?」
ヴィマル「当然です。このような危険な方法を取ると知っていたら私はヴァサント将軍を止めていました」
デルフィーネ「でも彼女に知らせていたら…グラキエスのパイロットとの関係も悪くなっていたかも知れないわよ。結果的に騙していた事をあのパイロットが知ったら怒るでしょうねえ」
ヴィマル「デルフィーネ・エラクレア…あなたは最初から我々を騙すつもりだったのですか?」
デルフィーネ「敵を騙すにはまず味方からと言うじゃない。もしヴァサント将軍がこの事を知っていたら本気でグラキエスのパイロットの命を心配せずに嘘くさい演技をする事になって不信感を持たせていたかも知れないわよ?
だったら最初から伝えない方が良いのではなくて?今回の交渉の主役はあくまでヴァサント将軍なんだから、私達は舞台裏で主役を目立たせる為にこそこそしていた方が良いのよ」
ヴィマル「それはそうかも知れませんが…」
デルフィーネ「何か不都合な事があったら知らぬ存ぜぬで私達のせいにすれば丸く収まるわよ。今回のあなた達の目的はあくまでグラキエスと交渉してアデスとの交流の切っ掛けを作る事なのよ?
多少の事は目を瞑る位でないと目的は達成できないわよ」
ヴィマル「…分かりました。あなた達のした事はヴァサント将軍には伝えないでおきます。しかしヴァサント将軍やアデスにもしもの事があったらその時は覚悟して頂きたい」

タッタッタ バタン
0010デルフィーネ母星に行く その60
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2013/12/08(日) 23:49:39.57ID:EwQsEb2S
シカーダ「あの地上人は相当頭にきているようですが、本当にヴァサント将軍に今回の工作の件を話さなくて良かったのでしょうか?あの者達の信頼を得ていた方が後々やり易くなるのでは」
デルフィーネ「いいのよ。どうせ似たような工作を暫く続けるつもりだから。それよりもシカーダ。ラドクリフの短剣は用意出来ているかしら?」
シカーダ「はっ、ここに一通り揃えております」
デルフィーネ「グラキエスに到着したらシカーダには一働きして貰うからお願いね」
シカーダ「承知しております。グラキエス到着後にグラキエスの動力部に侵入し動力源を止める…そしてグラキエスが困り果てた所をヴァサント将軍とデルフィーネ様がグラキエスを助けると言う筋書きですね?」
デルフィーネ「分かってるじゃない。ラドクリフの短剣の扱いについてはシカーダの方が詳しいから任せるわ」
シカーダ「それでは私はそろそろ準備の為に身を隠しますので、デルフィーネ様はくれぐれも身の安全にご注意下さい」
デルフィーネ「分かってるわ。じゃあお願いね」
シカーダ「では」

スッ

・グラキエス上空
ディアン「そちらの様子はどうだマグノーリヤ」
マグノーリヤ「クラウディアの異常は回復した。通信についても問題は無い。そちらの声は良く聞こえる。プリームラも怪我してないし私も大丈夫だ。今すぐにでもそちらと合流できる」
ディアン「まだアデス戦艦から離れなくて良い。首都から指示を仰いだ所、そのままアデスの者を首都まで連れて来いとの事だ。私とウィオラは上空から船を監視して、マグノーリヤとプリームラは船の内部からアデスを監視せよとの事だ」
マグノーリヤ「了解した。ではこのままアデスの監視を続行する」
ディアン「また異常があったら逐次報告して欲しい。回線は常に開いておく」

プリームラ「上の様子はどうだった?」
マグノーリヤ「私達は船の内部からアデスを監視し、そのまま首都へアデス人を連行せよとの事だ」
プリームラ「首都へアデスを連行か…今までには無い命令だな」
マグノーリヤ「私達のヴァンシップが異常を起こしたせいだろう。アデス人が修理に協力してくれたおかげでクラウディアの異常は収まったが、あれは一体なんだったのだ?」
プリームラ「詳しい事は基地に戻って調べてみないと分からない。しかしこれでアデスに借りができてしまった」
マグノーリヤ「借りか。侵略の口実にならなければ良いがな」

・グラキエス首都
長老A「レーダーでアデス戦艦を確認。報告にあった通り1隻だけのようだ」
長老B「報告ではアデスの使者が乗ってるようだ」
長老C「翼の巫女が落ちた所を助けて貰ったそうだが、偶然か?」
長老D「グランレイク東岸に不完全覚醒状態のエグザイルが帰還した事と無関係ではあるまい。外の世界では戦争が終わったそうだが、我がグラキエスとも交流を持とうと考えているのであろう」
長老A「戦が終わったのであればファラフナーズの目指した世界が実現するやも知れぬ。我がグラキエスも変わる必要があるかも知れん」
長老B「だがまだ相手側の姿勢が不明だ。アデス人と直接接触した翼の巫女から直に報告を聞きたい」
長老C「アデスの使者からもな」
長老D「食糧プラントを失ったアデスが攻勢に転じて10年か。食糧が手に入り、腹が膨れればアデスも大人しくなるだろうが…さて、使者はどんな要求をしてくるのやら」

ゴウンゴウンゴウン

ディネシュ「おっ、何か見えてきた。あれがグラキエスの首都か?」
ヴァサント「ついにここまで来ましたね。各自グラキエスに失礼のないように心を引き締めて下さい」
マグノーリヤ「お前達はグラキエスの捕虜であるという事を忘れるな」
0011デルフィーネ母星に行く その61
垢版 |
2013/12/08(日) 23:57:18.97ID:EwQsEb2S
ピーッピーッ

プリームラ『マグノーリヤ、首都から通信だ』
長老A『任務ご苦労。機体の不調で墜落したと言うが怪我は無いか?アデスに何か危害を加えられれはいないか?』
マグノーリヤ『はっ、私とプリームラ二人とも怪我はありません。アデスも今の所我々には危害を加えるような様子は見られません。
しかしヴァンシップ墜落の原因が不明な為、私とプリームラはまだアデス艦に乗ったまま待機している状態です』
長老A『そうか、翼の巫女に怪我がなくて何よりだ。そこでお前に新たな任務を命ずる』
マグノーリヤ『私にですか?』
長老A『アダマース中隊で外国語を話せるのはお前だけだ。アデスの船をグラキエスにエスコートする際にグラキエス側の臨時の外交官として働いてもらいたい』
マグノーリヤ『外交官?まさか長老、グラキエスが外国に門戸を開くと言うのですか?!』
長老A『それを判断するのはアデス側の対応を見てからだ。グラキエスにアデスの使者を連れてきて我々が直に使者と話をする。
それまでお前はグラキエス側の代表として通訳をしつつアデス側の情報を引き出すのだ』
マグノーリヤ『了解しました』

マグノーリヤ「と言う訳だ。お前達を長老達に引き合わせる。くれぐれも物騒な真似はするなよ」
ヴァサント「わかりました。グラキエスの首脳陣と会えるのは私だけですか?」
マグノーリヤ「いや、そちらの最近帰還したと言うギルド人も連れていく。但しお前達に護衛は無しだ。長老達に危害を加えるとも限らんからな」
アナンダ「私達をヴァサント将軍の護衛として同行する事はできませんか?」
マグノーリヤ「駄目だ。グラキエスはまだお前達を信用した訳ではない。我々の指示には従って貰おう」
ヴァサント「大丈夫ですよアナンダ。我々は使者として来たのです。グラキエスと言えど使者に対し非道な真似はしません。ですからここで待っていて下さい」
アナンダ「しかし」
ラケシュ「アナンダ。あのギルド人を見てみろ。護衛の黒服のギルド人を連れずにいるではないか。
ギルド人ですらあのように堂々とした態度を取っているのだから、我々の代表のヴァサント将軍も同様に胸を張って送り出すべきではないのか?」
ディネシュ「そう言えばあのシカーダとか言うギルド人が見当たらないな。自分の主の護衛をしないと言うのは護衛としてやる気が無いのかそれとも主を信じているのか…」
デルフィーネ「ふふふのふーん」
シヴァ「護衛なしでグラキエスに連行されるってのに鼻歌歌ってる…余程度胸が据わってるなあのギルド人」
ヴァサント「アナンダ」
アナンダ「…分かりました。私もヴァサント将軍の勇気を信じてここで将軍をお見送りします。将軍、どうかご無事で」
ヴィマル「大丈夫ですよアナンダ。ヴァサント将軍はケイオス最強の人材です。戦闘力だけなら不意打ちを受けなければ護衛官時代のルスキニア総統に引けを取らない逸材です。何かあっても死ぬような事はありません」
マグノーリヤ「ケイオスのアメジストか…確かにお前の戦闘力は危険だ。念の為監視員を増やしておこう。ディアン、聞こえるか?」
ディアン『聞こえてる。そのケイオス人が何かしないようにこちらも監視と狙撃用の人員をスマラグドス中隊に頼もう。アデス艦の見張りはカンブンクルス中隊とサピュルス中隊に伝達しておく』
マグノーリヤ『こいつらの話だとギルド人の黒服の側近が一番強いとの話だ。黒服の奴が怪しい動きをするようだったら遠慮なく発砲しろと伝えてくれ』
ディアン『分かった。カンブンクルス中隊に伝えて置こう』
デルフィーネ「シカーダには大人しくするよう伝えているから大丈夫よ(大人しくさせるのはこのグラキエスの中枢部分だけどね)」
マグノーリヤ「ではこれから長老達に合わせる。二人とも付いて来い」
0012デルフィーネ母星に行く その62
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2013/12/11(水) 23:54:23.28ID:SM/i2UgJ
・グラキエス中枢
長老A『お前がアデスの使者か。アメジストの瞳を持つ者よ』
ヴァサント『覚えていただいて光栄です。グランレース以来になりますか』
長老B『そしてそちらは先日帰還したと言うプレステールのマエストロか。我々の言葉は通じるかな?』
デルフィーネ『あなた達の使ってる言葉は古代デュシス語と同じね。大丈夫よ。数百年の間に多少はニュアンスや発音が変わってるでしょうけどあなた達と私達の受け継ぐ伝統が同じであれば会話に支障は無いわ』
長老C『この星に帰還して早々アデスに付き、グランレイク東岸の土地を明け渡したそうだが何が目的だ。アデスに媚びを売る為か?』
デルフィーネ『媚びを売るとは心外ねえ。私はただ自分達の手に余る程の土地は必要ないと思っただけよ。
エグザイルは不完全だしプレステールの民は私達もエグザイルも必要としてないようだったから私達だけでこの星に来る事になったの』
ヴァサント『彼女は既にアデスの庇護下に入ったアデス人です。彼女の働きのおかげで我がアデスはトゥランとの戦争を終結させ、
東の地の食糧プラントも手に入れたのでもう食糧目的で戦争する事はありません。これはアウグスタと総統両者とも認識を同じくしております』
長老D『アデスはもう戦争をするつもりは無いか。だが10年前のグランレースのように、恨みを持った者がまたテロを起こして戦争が再燃するやも知れん。お前達にその気が無くても他の国や国民はそうとは限らん』
長老C『聞いての通りだ。我々グラキエスは10年前の悲劇で外国の者を信用する事は辞めたのだ。お前達アデスが戦争を止めたのは素晴らしい事だ。だが我がグラキエスには関係ない事』
長老B『その通り。我々グラキエスはこの氷に閉ざされた地で今までも、そしてこれからも鎖国したまま生活していく。
外国が平和になったからと言って国交を結ぶ必要もない。我が翼の女神がいる限りグラキエスは外国の助けも必要とせずに生きていける』
デルフィーネ『翼の女神?それはこの地にあるギルドの遺跡の事かしら?軽く見た所不完全な印象を受けたけど…この先もずっとこの遺跡を使い続けるつもりなのかしら?』
長老A『流石は帰還民のマエストロだな。お主の言うようにこの首都はエグザイルと同じ構造物で出来ている。
空を飛ぶ事は出来ないが、この地で生活する以上飛ぶ必要も無い。女神の機能が生き続ける限り、我がグラキエスは災厄の時代が訪れようとも生き残れる。外の助けは必要ないのだ』
デルフィーネ『エグザイルが動き続ける限りねえ…。つまり暫くは鎖国しながら生きていけるからアデスや他の国と交流する必要も無いって事かしら?』
長老A『その通りだ』
ヴァサント『長老殿。私はアウグスタから全権を委任されてグラキエスと国交を結ぶ為にここまで来ました。どうかアデスとの…いえ、残され人や帰還民の国を問わず外の国との交流を考えてはくれないでしょうか』
長老A『先程言ったように我々の生活は今のままで十分なのだ。我が民も10年前の悲劇をまた覚えている。
我々が代替わりして外の国への感情が変わるか、女神に何かがあって今の生活を維持できない状態にでもなったら外との交流をする必要は出て来るだろうが…今は必要ない』
ヴァサント『ですが』
デルフィーネ『やめましょうヴァサント将軍。彼らの言い分は理解出来たわ。こちらの都合を無理強いしても相手の態度が固くなるだけよ』
ヴァサント『しかしそれではアウグスタの…ファラフナーズ様の遺志が…』
長老A『そちらのマエストロの言う通りだ。だが結論を急ぐ必要も無い。折角グラキエスに来たのだから暫くゆっくりして行ってはどうだ?
我々も外の世界で何か起きていたのか詳しく知りたい。そちらのマエストロが帰ってきて何があったのか、良ければ我々に話してくれないか?』
ヴァサント『そういう事でしたら』
デルフィーネ『じゃあ決まりね。少しの間グラキエスの好意に甘えましょう』
0013デルフィーネ母星に行く その63
垢版 |
2013/12/14(土) 23:14:42.71ID:buUrBlng
・グラキエス首都地下(グランエグザイル推進器部分)
シカーダ(デルフィーネ様の命令で潜入してみたが、まさかここまで大きい遺跡だとはな…。
ダリウス様と一緒にデュシスの湖に潜った時も驚いたが、この遺跡の規模はそれ以上だ。さて、クラウディアの反応を見て中心部を目指さなくては。
どれだけ規模が大きくても人体のツボと同様にエグザイルやギルドの遺跡にも急所となる部分はあるはず。
そこにこのラドクリフの合金製の剣を打ち込めばクラウディアで動いている物なら機能を停止できる。
どうやらグラキエスはこの遺跡からエネルギー供給を頼ってるようだから、グラキエスのエネルギーサーキットに直接仕掛けなくても、
遺跡の方のクラウディアの供給を絶てばグラキエスも機能不全を起こすだろう。後はデルフィーネ様が上手く立ち回る事を祈るのみ)

ゴゴゴ

シカーダ(何だこの音は?地鳴り?)

プシュー

シカーダ(煙幕?いや違う、湯気…熱湯か。これが自然現象の間欠泉と言う奴か。ダリウス様の言っていたように母なる星にはプレステールには無い現象が存在するな。
しかし寒い地域で地下にこれだけの熱源が存在すると言う事は…グラキエスはこの熱源を再生可能なエネルギー資源として利用している可能性が高いな。どこかに熱交換器に相当する部分は…あった)

ゴウンゴウンゴウン

シカーダ(眠っている遺跡と生きている遺跡の境目?こっちはグラキエスだとするとこちらの遺跡は何だ?グラキエスが眠っている遺跡に寄生しているのか?
まあ良い。グラキエスはこの辺からエネルギーを吸収しているからここにラドクリフの合金製の剣を刺せば…)

ドスッ ゴウンゴウンゴウウンゴウウウンゴンゴンゴンゴゴゴゴゴゴッゴッゴッゴゴ…

シカーダ(クラウディアの数値が低下してきている。流石はエグザイルを倒したと言われるラドクリフの剣だ。500年を経てもその効果は顕在か。
後はこの刺した跡を分からないように隠して…これで完了だ。さて、上に戻るか。グラキエス首脳部との対応はデルフィーネ様が上手くやってくれる手筈だ)

・グラキエス中枢
ビーッビーッ

ディアン『どうした?!コントロールルームが襲撃でも受けたか?』
ウィオラ『首都全域で電力供給が低下している。』
プリームラ『女神のクラウディアの磁場が低下しているんだ。この反応はヴァンシップのクラウディアが異常を起こした時と似ている…』
ディアン『ヴァンシップの異常?アデスの船に墜落した時のか!』
ウィオラ『アデスの船…今回の首都の異常…。アデスの使者と何か関係があるのかも知れない』
プリームラ『アデスがクラウディアの異常を引き起こしているの?まさか…』
ディアン『断定するのはまだ早い。マグノーリヤがアデスの使者を監視しているはずだ。マグノーリヤを呼び出してみよう。長老達にも報告だ』

ピーッピーッ

マグノーリヤ『こちらマグノーリヤ。先程から電圧が不安定のようだが何があった?』
ディアン『首都全域で電力供給に問題が発生している。原因はどうやら女神のクラウディアの異常の為らしい。アデスの使者に怪しい動きは無いか?何か工作をしたような様子は?』
マグノーリヤ『あの二人はグラキエスの各所を見学しているが立ち入り禁止区域には入っていない。私の監視から外れ場所にも行っていない。今の所怪しい行動は取ってないように見えるが…あの二人と何か関係があるのか?』
ディアン『プリームラが今回のクラウディアの異常が先日のヴァンシップのクラウディアの異常と似ていると言っていた。アデスが何らかの手段で女神に対して破壊工作をしている事を想定に入れている』
マグノーリヤ『女神に対しての破壊工作?首都全域に影響の出るレベルの?あの二人で?まさか』
ディアン『そうだ。何か不審な点は無かったか?』
マグノーリヤ『いや、とてもじゃないがそんな大規模な工作をしているような時間も素振りも無かったぞ。
首都全体の異常ならば女神の動力炉とかメインサーキットとか長老達のコントロールの方に工作しないとここまで大規模な物にはならないのではないのか?』
ディアン『そうか。アデスの使者ではないか…。いや、すまない。何せアデスの使者が訪れた時期にヴァンシップの件も含めて何かあったのではと思ったのでな。
使者に不審点が無い事は長老達に報告しておく。マグノーリヤは引き続き使者の監視を継続してくれ』
マグノーリヤ『了解』
0014デルフィーネ母星に行く その64
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2013/12/14(土) 23:25:41.24ID:buUrBlng
デルフィーネ「どうしたの?やっぱりこの停電と何か関係があるのかしら?(シカーダが上手くやってくれたようね。ここからは私の仕事だわ)」
マグノーリヤ「ああ、使者殿には迷惑をかけて済まない。電力供給に問題があったようだ。現在原因を調査中だ。ところでお前達。
先日私のヴァンシップがお前達の船の上空を飛んでいた時に不時着する事になったが、お前達の国…或いは帰還民の国でクラウディアに異常を引き起こすような物質や自然現象に心当たりはあるか?」
ヴァサント「そう言えばあの時デルフィーネ殿が金属箔を撒いていましたが…デルフィーネ殿、まさかあの金属箔は空族の物だったのでは?」
デルフィーネ「ええそうよ。確かこの星でも花弁を撒く事は危害を加えない事の象徴でしたわよね?グラキエスへ使者として向かう為に花弁を持ってこようと思っていたのでしたけど、
寒い地域のせいかお花屋さんが見当たらなかったので空族達が持っていた金属箔を使う事にしましたの」
ヴァサント「デルフィーネ殿…その金属箔がヴァンシップ墜落の原因です」
デルフィーネ「あらそうなの?(流石に気付いたか)」
マグノーリヤ「どういう事だ。説明して貰おう」
ヴァサント「空族は戦艦を盗む事を生業としていて…いえ、『していた』ですね。その戦艦を捕る過程でクラウディアの圧力を低下させる金属箔を使用するのです。
デルフィーネ殿が空族から手に入れた金属箔を撒いた結果、マグノーリヤさんのヴァンシップが異常を起こした物ではないかと…」
マグノーリヤ「何だと!あれはお前達の仕業だったのか?!」
デルフィーネ「あらそうだったの?空族の金属箔にそんな作用があるだなんて…じゃああの時の金属箔がヴァンシップにくっ付いてきて、
グラキエスに入った結果今回のこの停電を引き起こしたのかしら?(空族の金属箔にはそこまでの力は無いわよねえ)」
ヴァサント「いえ、あの程度の量の金属箔ではとても都市サイズのクラウディアに異常を引き起こす程の力はありません。
しかし大量に用意すれば理論的にはエグザイルを作動不能にさせる事は可能です」
マグノーリヤ「大量にか。それはどれ位の量なのだ」
ヴァサント「エグザイルの規模から推測すると、そうですね…容積にしてモルヴァリードのドーム2杯から3杯といった所でしょうか」
マグノーリヤ「モルヴァリード3杯分?流石にそれだけの量の物資を持ち込んだらいくらなんでも気付くぞ」
デルフィーネ(ふうん。ラドクリフの剣1本に相当するのに金属箔がモルヴァリード3杯じゃあ随分と効率が悪いのねえ。これならシカーダがやった事もバレずに済みそうねえ)
ヴァサント「このグラキエスもモルヴァリードもエグザイルの船体のミニチュアプレステールと互換性はあると言う話ですが、
エグザイルの一部でも機能停止させる程の量の空族の金属箔となるとそれを運ぶ船自体が影響を受けて飛べなくなると思います」
デルフィーネ(ラドクリフの剣もクラウディア機関に近づけるだけでクラウディアを停止させられるから当然ね)
マグノーリヤ「そうか…ではこの停電はお前達が何か工作した物ではないのだな?」
ヴァサント「マグノーリヤさんが見ていたように私達にはそのような工作するような時間も人手もありません。
それにグラキエスに混乱を起こす事はアウグスタにとっても利益にはなりません。アウグスタはグラキエスとは戦をするつもりは無いと仰っていました」
デルフィーネ「このグラキエスの首都は見た所かなり古いようだけど、グラキエスの首都自体が古くなって異常が出たと言う事は無いのかしら?」
マグノーリヤ「それは…お前達が気にする事では無い」
デルフィーネ「(と言う事はこのグラキエス自体も相当ガタが来ているって事ね。案外簡単に攻略できそうだわ)
ねえ、宜しかったら私にこのグラキエスの中枢を見せてくれないかしら?何か助言位はできるかも知れないわよ」
マグノーリヤ「帰還したマエストロの助言か…分かった。先程の件と合わせて長老達に報告して指示を仰ぐ」
0015デルフィーネ母星に行く その65
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2013/12/18(水) 00:12:42.41ID:lhCQB/vh
・グラキエス中枢
長老A『そうか、ヴァンシップの異常は空族から取り寄せた金属箔で、デルフィーネがそれを知らずに使用したと…そういう事なのだな?』
デルフィーネ『ごめんなさーい。私この星に来てから日が浅くて…空族の金属箔を花弁代わりに空に撒けばグラキエスに敵意が無いと伝えられると思って使ってみましたの』
ヴァサント『申し訳ございません。彼女もてっきり空族の金属箔の事を知っている物とばかり…』
長老B『それよりも問題は今起きている首都全域に渡るクラウディアの異常だ』
長老C『さよう。先程の報告を受けてヴァンシップに付着していた金属箔の解析を終えた。確かにあの金属箔にはクラウディアを阻害する力がある事は分かった。
だがその力は微力で小型のドラム缶に入る量でも戦艦のクラウディアユニットの半分を停止するだけの力しかない』
長老D『そして戦艦のクラウディアユニットを全開起動させればこの金属箔も吹き飛ばせるという事も判明した。とてもではないが、お前達が持ち込める量でこのグラキエスを動作不全にさせる事は不可能だ。
よってお前達アデスの使者が今回の首都の異常には関わっていないと言う事になる。お前達と一緒にいたマグノーリヤの証言でもそれは明らかだ』
長老A『お前達の潔白は我々が保証する。それで、帰還民のマエストロよ。お主は今回の件に関して我々に助言できるらしいがそれは真か?』
デルフィーネ『プレステールから帰ってきたばかりのギルド人だから、あなた達よりはクラウディアやギルドの遺跡については詳しいと思うわよ?』
長老B『ではお主はこの現状をどう見る?』
デルフィーネ『詳細な部分は調べてみたいと分からないけど、このグラキエス自体の寿命じゃないかしら?
この首都はギルドの遺跡の上に載ってて遺跡からエネルギーを補給してるように見えるけど、その遺跡自体に何らかの異常があったんじゃないの?
(シカーダが遺跡のエネルギーサーキットに工作したのだから上に載ってるだけのグラキエス側の問題じゃないけど、こいつらはそれに気づいてるかしら?)』
長老C『寿命だと?我々の女神の寿命が尽きかけているとでも言うのか?』
長老D『女神はお前達がエグザイルと呼ぶ古代ギルドの超科学で生まれた船と基本的には同じ物だ。それが寿命等と…エグザイルが寿命で死んだとは聞いた事が無いぞ』
デルフィーネ『あら、でもこの星の各地にあるギルドの遺跡でも機能を停止している物は多いと聞きましたわよ。
グランレイクの水もザ・ホールと呼ばれるギルドの遺跡から湧き出てるそうだけど、年々湧き出る水の量が少なくなって湖面が少なくなってるらしいじゃない。
あなた達の言う女神が機能を停止しない保証はあるのかしら?私のいたプレステールでさえ気象制御装置が止まって動かし方が分からないまま苦労していたのよ?現にあなた達のグラキエスは機能を停止していてるじゃない』
長老B『それはそうだが…ならばお主は女神が止まった事を黙って見ていろとでも言うのか』
デルフィーネ『解決策はいくつかあるわよ。まずは女神を…あなた達のエグザイルを再起動する為にミュステリオンを使う事。
私はグラキエスの鍵やミュステリオンを知らないけど、それに相当する物はあるんでしょ?
折角指導者が4人もいるんだからミュステリオン位はあるはずよね?それを使ってエグザイルの再起動を試す。これが一つ目。
二つ目はグラキエスの動力供給源を変える事。グラキエスは地下にある遺跡にエネルギーを依存しているようだから、別の遺跡かエネルギー源を探し当てて都市機能を復活させる。
グラキエス領内にそれが無ければ外国の帰還民諸国にそれを求めても良いわ』
長老C『外国に?外国を侵略してエネルギーを強奪するような真似には賛成できない』
ヴァサント『デルフィーネ殿は外国からエネルギーを奪えとは言っておりません。戦争などしなくても貿易をする事で資源の輸入は可能です。
グラキエスの都市の移動が出来なくてもパイプラインを伸ばしてノトス辺りから熱源を引っ張る事もあなた方の技術ならば十分可能ではないでしょうか?』
長老A『貿易か…成程、戦をしなくてもお互いに利益となる方策はあると言う事か』
0016デルフィーネ母星に行く その66
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2013/12/18(水) 00:14:57.52ID:lhCQB/vh
ヴァサント『グランレイクを横断する程のパイプラインを作るのであれば、アデスを含むグランレイク周辺諸国との会議や条約の締結が必要になってきます。
勿論アデスはグラキエスの条約加盟には反対しませんし、他の国々もそれは同じでしょう。暫く時間が必要となりますが』
長老D『時間がかかるか。首都のライフラインが回復しなければ凍死する国民が出て来る。どれ程の時間がかかるか分からぬのであれば、条約加盟した時に既に凍死してしていたでは話にならん』
デルフィーネ『解決策はまだあるわよ。三つ目はグラキエスがこの地を捨てて他の国に移住する事。
別に他の国永住しろと言ってる訳じゃないのよ?冬の寒い時期にバカンスや旅行のつもりで暖かい地域に行って過ごすだけで良いの。
渡り鳥が暖かい気候を求めて空を旅するのと同じように、あなた達も寒い時期は暖かい国に行って太陽を満喫すれば良いってだけ。
その間にグラキエスの遺跡の異常を直すなり今後の生活をどうするか考えるなりすれば良いわ』
長老B『外国に旅行か。外国人が我々グラキエスの民を受け入れてくれるだろうか。文化も生活習慣も違う民の接触は不幸しか呼ばぬのでは?』
ヴァサント『最初はお互い誤解する事や異なる価値観からいざこざは発生するでしょう。しかしお互いの違いを理解すればその摩擦は減らす事はできます。
10年前のグランレースを見に来たグラキエス人は他国の文化の違いを一時期経験したので、免疫がまるっきり存在しない訳ではありません。
我がアデスも帰還民国家と価値観の違いから争ってきた歴史の蓄積があり、外国の文化の違いを歴史として蓄積しています。ケイオスのように文化を残したまま併合を受け入れたケースもございます。
グラキエスのようにお互いの違いを理解した上に問題を避ける為に必要以上に接触しない考えも理解できますが、現状では時間がそれを許してくれないかも知れません』
デルフィーネ『それと四つ目。これはアデスのアウグスタの協力が必要不可欠なのだけど…このグラキエスが載っている遺跡「グランエグザイル」と言ったかしら?それを活性化させれば機能停止した遺跡も再活性するかも知れないわね』
長老A『グランエグザイル…アデスの伝説にある巨大な古い女神の事か』
ヴァサント『ご存じなのですか?』
長老A『グランレースの時に先代アウグスタから聞いた事がある。グラキエスの地には帰還民の乗るエグザイルとは比較にならない程の大きさのエグザイルが眠っていると…しかしそれは本当にあるのか?
そんな物があればアデスは残され人とは呼ばれていないだろうに』
デルフィーネ『グランエグザイルの話がどこまで本当かは重要ではないわ。重要なのはアウグスタがこの地下の遺跡を活性化できる可能性があるって事よ』
長老B『しかしそのような信憑性の低い昔話に頼るのは…』
デルフィーネ『どの解決策を試すかはあなた達の判断次第よ。グラキエスの都市機能がマヒしたままだったら凍死者が増えるでしょうし、できる物から順次試してそれで駄目だったら他の解決策を試せば良いだけよ。
どの解決策がメリットが多いのかは私には判断できないわ。グラキエスの事情についてはあなた達の方が詳しいでしょうからね』
長老A『…分かった。お前達の助言をこちらで検討しよう。こちらで解決できなかった場合はアデスや外国に協力してもらう事になるかも知れん。
今回はお前達を使者として受け入れた。今後はこちらから使者を送る事になるかも知れない。その時は宜しく頼む。マグノーリヤ!』
マグノーリヤ『はっ』
長老A『使者を国境までお送りせよ。ヴァサント殿、デルフィーネ殿。今後は何かあったらこのマグノーリヤを使者として向かわせる。その旨をアウグスタに伝えてくれ。
そちらの使者も限定して受け入れる事を検討するが今回はそれで宜しいかな?』
ヴァサント『はい。このヴァサント、アウグスタにグラキエス首脳部の言伝を必ず伝えます』
デルフィーネ(上手く行ったようね。ま、グラキエスの動力が復活しても今回は交流の切っ掛けを作れたから良しとしようかしら。さて、帰ってから今後の対応を考えないと)
0017デルフィーネ母星に行く その67
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2013/12/21(土) 22:45:04.46ID:FCNEBIiW
・アナイティス
ヴィマル「ヴァサント将軍。ご無事でしたか」
ヴァサント「ええ、グラキエスの首脳部の対応は好意的でした。流石にいきなりアデスとの交流を即決するまでには至らなかったですが、今後は彼女をグラキエスの使者としてアデスに向かわせるそうです」
マグノーリヤ「そういう事になった」
ヴィマル「わかりました。それで将軍が留守の間グラキエス側で何かあったのですか?見た所首都の明かりが突如消えて騒がしかったようですが」
デルフィーネ「グラキエスがいきなり停電しちゃったのよ。まあそれでグラキエス側も外国に助けを求める事になりそうだから、交渉する側にとっては怪我の功名って所なのでしょうけどね」
ヴィマル「怪我の功名ですか…。もしその偶発的な事故とやらが発生していなかったらあなたはどうするつもりだったんですか?
運が悪ければグラキエス側に敵意を持たれて銃殺されていたかも知れなかったのですよ?(あなたが裏工作するのは勝手だが、ヴァサント将軍にもしもの事があったら許しませんよ)」
シカーダ「デルフィーネ様にもしもの事があったら、その時は助けに行けば良いのだ。お前達もいざと言う時に備えてヴァンシップと決死隊を用意していたではないか。ヴァサント将軍も何かあった時に備えて信号弾位は用意しておいただろう」
デルフィーネ「でももし心配したあなた達がグラキエスに突入したらグラキエス側の態度も硬化していたでしょうね。でも結果的に上手い具合にグラキエスと交流の切っ掛けが出来たんだから良いじゃない」
ヴァサント「そうですよヴィマル。確かに私達は危険を冒しました。しかし今は将来に向けてグラキエスと共に歩んでいく事が大切です。過去の事は糧にして将来の礎としましょう」
ヴィマル(事が上手く進んでるのは良いけど、将軍がデルフィーネに利用されてるってのは癪に障るなあ…)
マグノーリヤ「ところでお前達はこれからアデスに戻るのだろう?ならばグラキエスの使者である私も同行する。女神が回復しなかった時の為に長老達からアウグスタへの言伝を伝えなければならない」
ヴァサント「分かりました。グラキエスの冬は寒いですから、急ぎましょう。全艦に発令。最大速度にてモルヴァリードへ帰還する。機関室エンジン全開」
ヴィマル「グローリア!」
0018デルフィーネ母星に行く その68
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2013/12/21(土) 22:50:31.10ID:FCNEBIiW
・モルヴァリード
ヴァサント「と言う訳です」
サーラ「成程、グラキエスでそんな事があったのですか。分かりました。アデスとしてもグラキエスに出来るだけの事はすると伝えて下さい」
マグノーリヤ「アデスの協力に感謝する。早速グラキエスの首脳部にこの事を報告するので少し良いか?」
ルスキニア「クラウディア通信か。構わない。使者の働きは邪魔しないつもりだから、リアルタイムでアウグスタとグラキエス首脳部を繋ぐホットラインを開設しても良い位だ(グランエグザイルを起動できるならば安い物だ)」
マグノーリヤ「では少し席を外す」

トコトコ

サーラ「それにしても良くやりましたねヴァサント」
ルスキニア「私からも礼を言う。これでアデスの…ファラフナーズ様のご遺志に一歩近づいた」
ヴァサント「アウグスタ…それに総統まで…(見てますか天国のファラフナーズ様。ヴァサントはやりましたよ!)」
ルスキニア「ところでアウグスタ。もしグラキエスがエグザイルの再起動に失敗した場合は、最も早い方法としてアウグスタがグラキエスに赴いて、グランエグザイルを起動する事になりますが宜しいでしょうか?」
サーラ「大きな古い女神ですか。私は構いませんがどのようにして起動するのですか?やはりミュステリオンを使う事になるのですか?」
ルスキニア「はい。幸いアデスのミュステリオンは諜報部の調査によりグランエグザイル起動に必要なミュステリオンとその他の道具は揃っています。最低でもアウグスタと私がグラキエスに赴けばグランエグザイルの起動は可能です。
高速艇を使えばグランエグザイルの入り口があると思われる場所まで行き、グランエグザイルのブリッジでミュステリオンを唱えて起動するまで1時間とかかりません」
ヴァサント「そんなに短時間で起動できるのですか?」
ルスキニア「あくまで邪魔が入らず順調に行った場合の事です。ですが多少手間がかかったとしてグラキエスからノトスまでパイプラインを引くとか、
グラキエス人を全員他の国移住させる計画よりは早いかと。一番早いのはグラキエスが再起動に成功する事なのですが…」

タッタッタ

マグノーリヤ「場を外してすまない。本国に連絡を取った所、首脳部より『アデスのアウグスタに遺跡を起動して欲しい』との言伝を受けた。
どうかグラキエスの女神の再起動は上手く行かなかったようだ。どうかグラキエスの為にアデスの力を貸してはくれないか?」
サーラ「分かりました。こうしている間にもグラキエスの民は刻一刻と寒さに苦しんでます。ルスキニア、高速艇を用意して下さい。
同行者は最小限にして私が直接グランエグザイルに向かいます」
マグノーリヤ「グラキエス領内に入るのであれば私が同行する。アデス機が無断侵入すれば発砲してこないとも限らない。
私からも本国に報告するが、末端まで報告が行き届かない事もこの状況ではあるかも知れない」
ヴァサント「では高速艇に乗るのはアウグスタと総統とそれから…」
デルフィーネ「私も一緒に行って良いかしら?それとリリアーナ姫も」
ルスキニア「デルフィーネ・エラクレア…何しに来た」
デルフィーネ「グラキエスの再起動が失敗したそうじゃない。ならグランエグザイルを起動するのにも失敗してしまったら困るんじゃない?
トゥランの鍵のリリアーナ姫も立ち会わせればエグザイルの起動の力になるかも知れないと思ってね」
リリアーナ「私からもお願いします。ファラフナーズ様の目指した世界の実現の為に私も協力させてくれませんか」
ルスキニア「…分かった。グランエグザイル起動に何かと必要になるかも知れない。但し起動の邪魔になるような真似は辞めてもらいたい
(グラキエスでどんな工作をしたのか知らないが、アデスの役に立つ事をするのであれば我慢しよう)」
デルフィーネ「わかってるわよ。グランエグザイルが起動するように風の女神にでも祈っておくわ(シカーダにラドクリフの剣を抜かせてグラキエスを復活させてしまえば恩を売れるわね)」
リリアーナ「グラキエスに向かうのであればトゥランのエグザイルに乗船すれば大人数でも問題無いと思います」
デルフィーネ「あら、良い考えねリリアーナ姫。うちの不完全なエグザイルを使うよりもあなたの意思で動くエグザイルなら色々と便利でしょうね」
サーラ「そういう事なら私も許可します。ルスキニア、グラキエスにトゥランのエグザイルで向かうと伝えて下さい。ギルドの通信技術だけでなく使者にも正式な通信筒を持たせて下さい」
ルスキニア「グローリア、アウグスタ」
0019デルフィーネ母星に行く その69
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2013/12/21(土) 22:58:25.39ID:FCNEBIiW
・グラキエス領内(グランエグザイル埋没地点)
ゴゴゴゴゴゴゴ

長老A『あれがトゥランの女神か』
ディアン『良いのですか?我がグラキエス領内に外国のエグザイルの侵入を許して』
長老A『若いお前達が憤る気持ちは分かる。だがこの事態に対処できないのは我々グラキエスの首脳陣の失態だ。それにあのギルド人が帰還してからこの世界は変わりつつある。
我々グラキエスも変わる必要が出てきたと言う事だ。もう儂ら老人には新しい時代には相応しくないのかも知れない。ディアンよ。頭の固い我々よりも若いお前達がこの先のグラキエスを支えていくのだ。
若いお前達に教育してきた儂らが言うのも何だが…若者の方が新しい時代に適応できるだろう。我々はグラキエスが外国の手を借りて復活したならば、何もできなかった責任を取って引退するつもりだ』
ディアン『引退?それはいくらなんでも…』
長老A『何もできない老人が責任も取らずに国の中枢に居座っていれば国が腐敗するだけだ。だがグラキエスの後継者たるお前達に外国の言いなりになれとも言わぬ。
お前達若者には我々老人よりも時代の流れの良い部分も悪い部分も見えているだろう。お前達若者は仲間達と協力してグラキエスの国益に繋がると思った事を実行していけば良い』
ディアン『私達がこの国を支えるとは責任が重大過ぎます。それに情報も足りません』
長老A『我々は引退するが国の運営で困った事があったらアドバイス位は出来る。情報については使者の役目を受けた翼の巫女がいる。暫くは彼女を通じて外国の情勢を知ると良い』

プシュー ウィーン

長老A『さて、アデスのアウグスタ達が到着した。儂はグラキエスの旧世代として最後の仕事をしてこよう。ディアン、未来のグラキエスの事は頼んだぞ』
ディアン『…了解』

アラウダ「資料によればここがグランエグザイルの入り口だ」
ルスキニア「周りに何もない所を見るとグラキエス側はここを重要視していなかったと見えるな」
リリアーナ「ルスキニア、向こうから来るのは…」
ルスキニア「グラキエスのトップ自ら出向いてきたか。この遺跡の稼働にグラキエスの命運がかかってるから当然と言えば当然か」
長老A『ようこそグラキエスへ。と言いたい所だが、グラキエスはご覧の有様で歓待している余裕は無い。
早速だが女神の起動準備に取り掛かって欲しい。女神が起動してグラキエスが助かったならばそちらの出す要求について考えよう。
もし女神が起動しなかった場合、グラキエスは人が住めない土地になるだけだ。アデスにも利はあるまい』
ルスキニア『アデスは先代アウグスタファラフナーズ様の遺志の実現を目指している。武力でグラキエスを従えようとはもう思ってない。
将来の事はグランエグザイルの起動が完了してからだ。今はグラキエス領内で作業する為の許可と権限を認めて貰いたい』
長老A『良いだろう。許可する』
ルスキニア『了承して頂き感謝する。それでは作業に取り掛かる。アラウダ』
アラウダ「分かった」

カチッ シュシュシュシュカキンカキンカキン ゴゴゴゴ

アラウダ「ロック解除完了。通路は開いたが…ルキア、この遺跡の様子を見ると」
ルスキニア「まさか…グランエグザイルが不完全だとでも言うのか?」
リリアーナ「どうしたのですルスキニア。顔色が悪いですよ」
ルスキニア(最悪だ…遺跡の様子が想定よりかなり悪い状態にある。動かしただけで倒壊するかも知れない。くそっ、グランエグザイルを起動できるチャンスを得たと言うのにこれではアデスの夢が)
デルフィーネ「総統殿は先程から黙ってばかりだけど何か都合の悪い事でもあったのかしら?アデスの総統たる者がアウグスタの前でそんな態度しててはアウグスタが不安になるわよ?」
ルスキニア「(そうだ。アウグスタの前でこのような姿を晒していてはアウグスタだけでなく周りの者に不安が伝染する。ここは堂々と総統として振舞わなければ)
心配には及ばない。伝説のグランエグザイルを目の当たりにして感動で声が出なかっただけだ。アウグスタ。これよりグランエグザイル内部に入りますが、
何分災厄の時代を経た遺跡ですので、周りが老朽化しております。遺跡のセキュリティが誤作動しないとも限らないので、諜報部が先導しつつ遺跡内部を進みます。アラウダ」
アラウダ「承知した」

スッ タタタタタ

デルフィーネ(これで諜報部の目は逸れたわね。それじゃあシカーダ宜しくね)
シカーダ(承知しました。それでは行ってきます)
0020デルフィーネ母星に行く その70
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2013/12/21(土) 23:12:47.86ID:FCNEBIiW
・グランエグザイル内部
皆殺し部隊「Aポイントクリア」
アデス兵「Bポイントクリア」
空族「Cポイントクリア。こっちも問題ありません」
リリアーナ「それにしても随分と広い遺跡ですね。ルスキニア、あなたは迷わないのですか?」
ルスキニア「大丈夫だ。遺跡の基本構造はインペトゥスと同じ…と言うか、アデスの戦艦はグランエグザイルの構造を元にして設計されている。
アデス戦艦の構造を熟知している者であれば迷わずブリッジまで行けるだろう。そこの空族、余計な道には入るな。遺跡のセキュリティを刺激したらひとたまりもないぞ」
ファム「えー、こんなに広いんだし少しくらい見物したって良いじゃん」
ジゼル「駄目よファム。この遺跡に一番銛刺したのはあの諜報部の人なんだから」
アラウダ(刺したのは銛じゃなくて入口の鍵なんだけどな)
ファム「でもあの人さっきから全然しゃべらないんだもの。一番銛刺したんだったらその人が指示しないと。一番銛刺してもいない人に指図される筋合いはないもんね」
デルフィーネ「と言う訳でファムちゃんはルスキニア総統の指示よりもアラウダ君の命令を聞くそうよ。その方が空族も命令系統に組み込めてメリットが多いんじゃないかしら?」
アラウダ「(俺が空族に命令するのかよ。仕方ねーな)分かった。俺が指示する。空族、総統の言うように余計な道に入るな。ブリッジまで最短距離を進むから余計な扉やスイッチは極力触れるな」
ファム「了解。翼に風を!」
アラウダ「(この場合返答しないといけないのかなあ…)…追い風を祈る」
デルフィーネ「そうそうそれで良いのよ。良くできました。空族には空族の流儀があるんだから一番銛を刺したアラウダ君が指示すれば余計なトラブルは起きないのよ」
アラウダ(こいつのペースに上手く乗せられてる気が…ファラフナーズ様を思い出すなあ)

・グランエグザイルブリッジ
ルスキニア「到着しましたアウグスタ。ここがグランエグザイルのブリッジです。伝承によれば、このブリッジでミュステリオンを唱えればアウグスタが覚醒しグランエグザイルも起動します」
デルフィーネ「もしブリッジからアウグスタが離れたらどうなるのかしら?アウグスタの居場所をブリッジに限定すると言う事は、アウグスタがブリッジから離れたらグランエグザイルが休止するとか影響あるのかしら?」
ルスキニア「それは…今は伝承にある通りグランエグザイルを起動できればそれで良い」
デルフィーネ(あらあら。って事は想定外の事態には対応できない頭の固い伝承を受け継ぐだけのギルド人て事ねこいつも。どうやら付け入る隙はまだありそうね)
サーラ「私がここに居れば良いのですね?」
ルスキニア「はい、そこにお立ち下さい。では…『雪の大地に眠りしものは』」

・グラキエス首都地下(グランエグザイル推進器部分)
ゴゴゴゴゴ

シカーダ(この反応はミュステリオンの波動か。どうやらグランエグザイルの方が動き出したようだな。俺の役目はタイミングを見計らってラドクリフの剣を抜くのみ)

ゴゴゴゴゴ

シカーダ(まだだ、まだ)

ゴゴゴゴゴ

シカーダ(3つ目のミュステリオンか、4つ目が唱えられたタイミングに合わせて抜けば良いだろう)

ゴゴゴゴゴ

シカーダ(良し、今だ)

グッ ズポッ ゴゴゴゴゴ

シカーダ(剣を抜いた場所にクラウディアの流れが戻りつつある。暫く放置しておけばナノマシンが自己修復を始めるだろう。さてデルフィーネ様と合流するか)

ゴゴゴゴゴ

シカーダ(!まだミュステリオンの波動が?グランエグザイルのミュステリオンの数が我々のプレステールと同じであるとは限らなかったか。
まあ良い。この振動だと下手をすると遺跡が崩壊しないとも限らない。崩落に巻き込まれる前にここを去るか)
0021デルフィーネ母星に行く その71
垢版 |
2013/12/21(土) 23:35:40.88ID:FCNEBIiW
・グランエグザイルブリッジ
ルスキニア「グランエグザイル起動…。アウグスタ、いえマエストロ・サーラ。ご気分は如何ですか?どこか不調な点はありませんか?」
サーラ「…」
ルスキニア「サーラ様?」
サーラ「え、ああっ、はい、大丈夫です。遺跡のデータベースから大量の記憶が入ってきたのでボーっとしてました」
デルフィーネ「(意識が朦朧としてるのはそれだけが原因かしら?見た所グランエグザイルは不完全のようだし、アウグスタもまだ幼いから脳の情報処理が追いつかない?
それとも同じ鍵であるリリアーナが近くにいるせいかしら?)リリアーナ姫。あなたは何ともないのかしら?」
リリアーナ「私は大丈夫です。どうやらアウグスタはエグザイルの鍵として覚醒したようです。同じ鍵として存在を認識出来ました。どうやら鍵として覚醒すると他の鍵の気配がある程度分かるようになるみたいです」
デルフィーネ「それは便利ねえ(と言う事はまだこの星には未覚醒の鍵がいる可能性があるって事?リリアーナ姫がアウグスタを鍵として初めて認識したと言う事は、これが別の鍵の覚醒を認識したと言う事よねえ。
覚醒していないだけでまだ鍵が存在する可能性はあるか…)不味いわね」
リリアーナ「えっ?何が不味いのですか?デルフィーネ・エラクレア」
デルフィーネ「あ、えーと、ほらアウグスタが意識朦朧としているからグランエグザイルを完全起動しちゃうと気を失ってしまうかなーと思ったのよ。
ちょっとルスキニア総統。医者として忠告するわ。アウグスタはグランエグザイルの起動に耐えられない可能性があるわよ。
今のままだと失神してしまうかも知れない。鍵であるアウグスタがグランエグザイルの制御を失ったら何が起きるか分からないわよ(こんなボロ船の崩壊に巻き込まれるなんて御免だわ)」
ルスキニア「…」
リリアーナ「ルスキニア!デルフィーネ殿が忠告しています。トゥランの鍵である私もアウグスタの体がグランエグザイルの制御を仕切れていない事を把握しています。このままだとアウグスタの体が」
ヴァサント「総統!」
ルスキニア「しかし、それではアデスの夢が…ファラフナーズ様の遺志が…」
サーラ「ルスキニア…」
ルスキニア「サーラ様?」
サーラ「私は大丈夫です。グランエグザイルのデータベースを見て分かりました。グランエグザイルは未完成のまま放棄されました。この船は星の海に飛び立つ事はできません」
ルスキニア「!」
サーラ「ですがグランエグザイルが起動した事でグラキエスのエグザイルにも十分なエネルギーが注がれたようです。当初の目的は達成しました。今回はこれで良しとしましょう」
ルスキニア「サーラ様…」
サーラ「あなた達のやろうとした事も今となって何となくわかりました。今の段階では『まだ』グランエグザイルは飛べません。
将来アデスが豊かになってこの船を飛べるよう完成させる事が出来れば、その時は我々アデスの末裔がこの星から飛び立ち、プレステールよりも更に遠くの星の彼方へと旅立てるでしょう。
ですが今はまだその時ではありません。ルスキニア、グランエグザイルを再び眠らせます。もし将来この船が飛べるようになった時、アデスは新しくなります。
その時はプレステールに比肩するアデスとして船団の名前をプレ・アデスと名付けて下さい」
ルスキニア「サーラ様。何故今そのような事を」
サーラ「少し…眠くなってきました…後の事は任せます…お母様の目指した皆が仲良く暮らせる国を…先祖の目指した飛び立てる船を…」

ガクッ

ヴァサント「?!アウグスタ?アウグスタ?!いやああああああああっアウグスタがぁーっ!」
デルフィーネ「ちょっと待って。脈を確かめるわ」

スッ トクントクントクン

デルフィーネ「アウグスタは生きてるわよヴァサント将軍。どうやらグランエグザイル制御の情報処理に耐えられなくて自動的に鍵がスリープモードに移行するみたい。
グランエグザイルが崩壊してないって事は…鍵が眠っても大丈夫なようね」
ヴァサント「良かった…。しかしグランエグザイルを起動したままだと…」
デルフィーネ「このブリッジにいる限りアウグスタはグランエグザイルをスリープモードで動かし続けるでしょうから目覚めないでしょうねえ。どうする?ルスキニア総統」
ルスキニア「…我々の当初の目的は達成された。サーラ様のお言葉に従い、グランエグザイルを再び眠らせる。皆の物ご苦労。これより我々はアウグスタを連れてグランエグザイルより立ち去る」
0022デルフィーネ母星に行く その72
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2013/12/27(金) 22:05:46.52ID:h4ptZYKw
・グラキエス
ゴゴゴゴゴ

プリームラ『首都の明かりが戻った』
ウィオラ『基地の暖房も動き始めた』
マグノーリヤ『アデスの連中が遺跡の起動に成功したのか』
ディアン『これでグラキエスはアデスに借りを作ったと言う事になるな』
ウィオラ『長老達は責任を取って辞任すると言っていたが、どうするつもりだ?』
ディアン『アデスには借りを返して差引きゼロにしないとな。そしてゼロになった時点で対等の関係を築けば良い。まずは連中の言うように国交を結ぶ位の要求は飲んでやろう』

・数か月後:アデス
ルスキニア「と言う訳で、グラキエスを含めたグランレイク周辺諸国との和平の調印も完了し、ファラフナーズ様の目指した世界が実現した訳だが…アラウダ、君はどう思う?」
アラウダ「デルフィーネ・エラクレアのやった事が我々にとって良い方向に作用したのは事実だ。しかしあの女は危険だ」
アラネア「我々もその意見に同意する。あの砂時計の同胞は放置していたら危険だ。我々の調査でもあの女はこの星を滅亡させる為に各地の遺跡に手を出したとしか考えられない点が多い」
ウロクテア「となるとこの先の事を考えたら始末した方が良いと?」
アラネア「ああ、だがグランレースが迫ってるこの時期に大騒ぎにするとグランレイク諸国の和平がまた遠のく。
穏便に済ませるなら政治に介入しない事を確約させて表舞台から退場して貰うのがベストだ。ルスキニア、アラウダ、君達の意見を聞きたい」
ルスキニア「アウグスタはデルフィーネに対してファラフナーズ様の面影を重ねている節がある。
ヴァサントやカイヴァーンも同じだ。彼女を暗殺したらアウグスタ達にショックを与えるから、あからさまな暗殺は避けたい」
アラウダ「暗殺するにしても我々の実力では束でかかってもシカーダと相討ちになるだろう。奴がデルフィーネから離れていれば殺す事は可能だ」
アラネア「シカーダをデルフィーネから離すか、或いはデルフィーネをシカーダから離すか…。方法はあるが失敗したらグランレースの時の悲劇を繰り返す事になるかも知れんぞ」
アラウダ「暴走したシカーダが周りの人間を無差別に殺す…か」
ルスキニア「…殺されても問題の無い連中を周りに配置しておけば被害は軽くなる。アラネア、お前の考えを聞こう」
アラネア「では…」

・エリダラーダ
デルフィーネ「ルスキニアに『お前は良くやってくれたから引退しろ。エリダラーダでの闇レースでも見物して来るが良い』と言われて来てみたけど、汚い所ねえ」
シカーダ「ホライゾンケイヴと雰囲気が似ていますな。ここのレースのコースは立体的ではなく、地下の空洞を利用して周回するようになっているようです。
ルスキニアが言うにはロシャナク・ババールと言う没落貴族がここの闇レースの主催者のようです」
デルフィーネ「没落貴族ねえ。ルスキニアは用済みになった私に没落貴族にでもなれとでも言いたいのかしら?」
シカーダ「ルスキニア達は我々のした工作の意図に気付きつつあります。今まではデルフィーネ様の行動がアデスの利益になっていた為、
表向きはデルフィーネ様を排除しようとはしませんでしたが、この星の国々の和平が実現しつつある今となってはデルフィーネ様にこれ以上動かれると厄介だと考えているように思えます」
デルフィーネ「今までは見逃していたけど今後は下手に動いたら容赦しないって事ね。余計な口出しをしない限りはギャンブルでもやって遊んでおけと言いたいのかしら」
シカーダ「この場所に行けと言ったのもそのような意図があると思われます」
デルフィーネ「ふ、まあ良いわ。今まで色々働いてきたんだから、地上人のレースでも見て暫く羽を伸ばしましょう。シカーダ、そのロシャナクと言う貴族の館はどこ?」
シカーダ「ルスキニアの寄越した地図ではこちらの方ですね。…見つけました。あれです」
0023デルフィーネ母星に行く その73
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2013/12/29(日) 21:20:07.46ID:s1hRL+of
・ナーヒード
デルフィーネ「あなたがここの闇レースの元締めのロシャナク・ババール男爵かしら?」
ロシャナク「ええ、そうよ。あなたが噂の和平の立役者となったデルフィーネ・エラクレアね。ようこそナーヒードへ。あまり歓迎できないけどゆっくりしていって」
シカーダ「貴様、デルフィーネ様に対してその口の聞き方は」
ロシャナク「プレステールのマエストロと言っても所詮は用済みとなった負け犬でしょ。ここでは元の身分がなんであれ皆平等よ。
貴族だろう平民だろうと帰還民だろうと残され人だろうと、ここに来るような人は皆人生上手く行かなかった負け犬よ」
シカーダ「デルフィーネ様が負け犬とは何たる無礼」
デルフィーネ「落ち着きなさいシカーダ。あなた面白い人ねえ。この私に負け犬だなんて…お父様にも言われた事無いのに。余程怖いもの知らずのようね」
ロシャナク「怖い物知らずねえ…あなたは怖い物は無いのかしら?デルフィーネ・エラクレア」
デルフィーネ「私が何を怖がると言うの?エラクレア家の当主たるもの怖い物があっては務まらないわよ」
ロシャナク「ふうん、どうやら今まで大切な物や人を失った事なんて無さそうって顔してるわねえ。そちらの付き人がいなくなったりしたら泣き喚いて必死になるようなタイプかしら?」
デルフィーネ「あら。シカーダが私の傍からいなくなるなんて事は無いわよ。ねえ、シカーダ?」
シカーダ「は、仕事上デルフィーネ様のお傍を離れる事はあっても、デルフィーネ様を見離したりする事はございません」
ロシャナク「あなたがそのつもりでも寿命や怪我、病気で離れ離れになっちゃう事はあるかも知れないわよ。その時は彼女は悲しむかしら?」
シカーダ「それは…」
ファム「あっ、お姉さんだ!ギルドのお姉さーん。ここに来たって事はやっぱレース観戦しに来たの?だったら私のレースに賭けて見ない?もうすぐ私とジゼルの出番なんだよ」
ジゼル「どうもデルフィーネ様、シカーダさん、お久しぶりです」
デルフィーネ「あら奇遇ねえ、休みを満喫していると思ったらこんな所で会うなんて」
ジゼル「ファムがグランレースの予行演習だと言って聞かないんですよ。ここのレース場にはグランレースで準優勝者がいるので、ファムが対抗意識燃やしちゃって」
ロシャナク「お知り合いのようね。でもこの子達に賭けるのは辞めておいた方が良いわよ。先日のレースで反則負けしてお説教されたばっかりだから」
デルフィーネ「反則?何をしたのあなた達」
ファム「えーと…銛をコーナーに仕掛けてその勢いでコーナーリングしたら後ろのヴァンシップに対する進路妨害って言われて…」
ジゼル「空族の草レースじゃなくて正式なレースのルール知らなかったんでつい…」
ロシャナク「と言う訳よ」
デルフィーネ「反則で失格だなんて情けないわねえ」
ロシャナク「そうでもしないとグランレースの準優勝者には勝つ見込みが無いって事よ。ちなみにグランレースの優勝者のカイザーはテロで亡くなっているから、現在ではこの星で最速のヴァンシップ乗りはうちのヤシュバルって事になるわね」
デルフィーネ「最速ねえ。それはギルド人を除いてって話よねえ?」
ロシャナク「さあ?レースに出てもいない人をヤシュバルよりも早いと判断するのは買被りじゃないかしら?あなたがレースに出場すればヤシュバルよりも早く飛べるのかしら?」

デルフィーネ「シカーダ」
シカーダ「は」
デルフィーネ「このレースに出場して地上人達の鼻を明かしてやりなさい。地上人はギルド人に勝てないと思わせる位の印象を刻み付けるのよ」
シカーダ「ではこの者達が使っているヴァンシップと同型の機体を使いましょう。オドラデクを使っては機体性能の差と言われるかもしれないので」
デルフィーネ「任せたわよシカーダ」
0024デルフィーネ母星に行く その74
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2013/12/29(日) 21:49:37.12ID:s1hRL+of
シカーダ(俺はデルフィーネ様にとっての何なのだ?デルフィーネ様は俺を一人の男として認めてくれたと思ったが…気まぐれなデルフィーネ様の事だ。
プレステールにいた時にコキネラやディーオ様に目移りしたようにこの星でも俺以外の男に目移りする可能性は無い訳では無い。
それに俺はデルフィーネ様の事をどう思っているのだ?俺はデルフィーネ様の事を愛していると思っているが…それはギルドやマエストロに対する忠誠や身近な女性に対する庇護義務を恋愛と勘違いしているだけではないのか?
俺は…俺自身が分からなくなってきた…)

ピ・ピ・ピ・ピーッ ブオオオーン

ファム「レースが始まったよ。あれ、お姉さんレース見ないの?」
デルフィーネ「シカーダが勝つに決まってるから見る必要は無いわ」
ファム「でもあのお兄さん後ろの方にいるよ。油断してると不味いんじゃない?」
ジゼル「シカーダさんはレースに慣れてないだろうし、ヴァンシップの機体性能の確認も含めて様子見してるんだと思う。後ろから他の機体をチェックしてレース後半で追い上げる堅実なやり方をするんじゃないかなあ」
デルフィーネ「昔のシカーダだったら感情に任せて激しい操縦をしたでしょうけど、今のシカーダは昔と違って面白味が無いのよねえ。その点に関しては何をするか分からないファムの操縦の方が見ていて楽しめるわ」
ファム「えへへ、褒められちゃった」
ジゼル(それは精神的に未熟って事なんじゃ…)

・エリダラーダ
アラウダ「ロシャナクが上手くデルフィーネとシカーダを離れさせてくれたようだ。後は頃合いを見計らって事故に見せかけて始末すれば良い」
ウロクテア「鍾乳洞に爆薬の設置完了しました」
アラネア「地盤の崩落に見せかけてデルフィーネを暗殺するか…。良いのかアラウダ?デルフィーネはともかく無関係なあの者達まで巻き込むのは気が引ける」
アラウダ「我々とシカーダの実力差を考えればこれが一番犠牲が少ない。もし我々の戦闘技術がシカーダを凌駕していれば、
無血でシカーダとデルフィーネを拘束する事も出来たかも知れないが、こちらの実力が劣っていては正面から対決すれば返り討ちにされるだろう」
アラネア「しかし…」
アラウダ「心配しなくても出来る限り被害を少なくするように配慮する。あのファムと言う少女はサドリ元帥の孫だ。
デルフィーネから離れるよう工作してしまえば死者はデルフィーネだけで済む。問題は主を失ったシカーダが暴走する可能性についてだ」
ウロクテア「ナーヒードにも燃料漏れと漏電するよう細工したとの事ですが、シカーダを倒すのにそこまでしなければならないのですか?」
アラウダ「そうだ。だがマエストロ・デルフィーネが死ぬ事でシカーダの精神にも影響が出るだろう。
洗脳されていてその洗脳が解ければ我々と敵対する事も無くなる。だがもし暴走するようであればナーヒードの自爆に巻き込んで始末した方が良い」
アラネア「自爆でもシカーダが死ななかった場合は?」
アラウダ「エリダラーダを粉塵爆発で吹き飛ばすが、酸素を奪って窒息死させるか…方法は考えてある。できればそのような被害が大きい方法は使いたくないがな」
アラネア「…そうか。作戦が上手く行く事を祈るよ…」
0025デルフィーネ母星に行く その75
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2013/12/31(火) 23:35:44.47ID:EyYjdkum
・ナーヒード
ロシャナク「あなたの付き人中々堅実な飛び方するわね」
デルフィーネ「全くもうシカーダったら、さっさと先頭集団追い越して周回遅れにしてしまえば良いのに」
ジゼル「デルフィーネ様。機体性能は同じなのでそう簡単には周回遅れにはできません。相手はグランレース準優勝者なんですからシカーダさんみたいなギルド人でも油断すると負けるんじゃないかと…」
ファム「そうだよお姉さん。ギルドの人は身体能力は凄いけど、ヴァンシップの操縦だったら機体性能が物を言うんだからギルド製の改造機体でも無い限りは良い勝負になると思うよ」
デルフィーネ「あら、レースってそう云う物なの?」
ロシャナク「そう云う物なのよ。あなたって世間知らずねえ。まあプレステールから最後に帰還してきた帰還民だから常識に疎いのは仕方ないわね。でも自分の立場を弁えないと足元すくわれるわよ」
デルフィーネ「何ですって?」
ロシャナク「さっきの話の続きになるけど…あなたは自分が万能で自分に出来ない事は何もないとか思ってるんじゃないかしら?」
デルフィーネ「ええ、だって私はプレステールのマエストロだったんですもの。大抵の事だったら何でも出来るわよ。伊達にマエストロが技皇と言われてる訳でわないわ」
ロシャナク「若いって良いわね。私も昔は自分は何でも出来ると思っていた時代があったわ」
デルフィーネ「あなたが?ギルドのマエストロでも目指していたのかしら?」
ロシャナク「そんな大層な物じゃないわ。若さにありがちな根拠の無い自信て奴よ。でもね、調子に乗っていたらある日どん底に落ちて今ではご覧の有様よ。まあここでの生活も慣れればそんなに悪くないけどね」
デルフィーネ「負け犬の人生が悪くないですって?」
ロシャナク「ええ、そうよ。自分がリーダシップとって家や組織を率いようと背伸びするよりも、自分よりも能力がある人間がいたらその人に任せれば自分は楽になれるわ。
背伸びしなくても能力がある人が国を率いてくれるし、自分が前へ出ようとして足を引っ張る位ならこの穴倉でレースでもやっていた方が迷惑かからないし気楽で良いわよ」
デルフィーネ「責任取らなくて良い人生なんて素敵ね。他人に仕事を任せて自分は遊べるってんなら私もマエストロの地位を他の人間に押し付けとくべきだったわ。
ま、能力があって責任感のあるプリンシパルがギルドに残っていればの話だけどね。私がマエストロの地位を受け継いだ時は、他の家はギルドの仕事を放り出して地上に逃げ出しちゃったんですもの」
ロシャナク「あなたも苦労した人生送ってたのねえ。でもこの星ではもうマエストロの地位なんて何の意味も無いからあなたも片意地張らないで負け犬人生を謳歌したらどう?
下手に頑張ろうとすれば怖い人に目を付けられて、追いかけられちゃうかもしれないわよ?」
デルフィーネ「責任追わなくて良い負け犬の人生ねえ…この穴倉が汚い事を除けばそんな人生も良いかも知れないわねえ」
ロシャナク「雑然とした環境も慣れれば良い物よ。そうね、折角だから賭けをしない?」
デルフィーネ「賭け?」
ロシャナク「今やってるレースであなたが勝ったらこのレース場の主催権をあなたにあげるわ。もし私が勝ったら、そうねえ…あなたのマエストロの地位でも譲って貰おうかしら?」
デルフィーネ「マエストロの地位?ギルド戦艦でもお望みかしら?」
ロシャナク「別に何でも良いわ。戦艦なんてギルドでもアデスでももう使わないから飾りにしかならないでしょうから、こことは別の違う世界に行く権利でもあったら欲しいわ」
デルフィーネ「エグザイル…うふふっ、面白いわねえ。この穴倉のレースの権利とエグザイルが釣り合うと思ってるのかしら?」
ロシャナク「別にエグザイルの価値なんてどうだって良いわよ。どうせ今では役に立たないボロ船なんでしょ?それともあの彼氏がヤシュバルに負けるのか怖いのかしら」
デルフィーネ「まさか。シカーダが地上人に負ける事なんてありえないわ」
ロシャナク「なら賭けは成立ね。ねえそこの空族さん。あなた達が証人よ。今ので賭けが成立した事を後で証言しといてね」
ファム「えっ、私達が?!ええっと…分かった!このファム・ファンファンが立会人として賭け金成立の証人になります!」
ジゼル(うわあ…なんか凄い事に巻き込まれちゃったみたい)
0026デルフィーネ母星に行く その76
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2013/12/31(火) 23:48:40.59ID:EyYjdkum
・エリダラーダ
ウロクテア「ロシャナク男爵はデルフィーネと賭けをした様子。ロシャナク男爵が勝てばデルフィーネからマエストロの地位若しくはエグザイルに相当する物を譲るとの事です」
アラネア「賭けでエグザイルを?レースでエグザイルを賭けるとはギルド人の風上にも置けないな。やはりあの女はマエストロに相応しくない。
だがデルフィーネが負ければ権力を取り上げて暗殺の危険を冒す必要も無くなるのでは?」
アラウダ「レースの決着が付けばシカーダがまたデルフィーネの傍に付くだろう。デルフィーネが勝った場合には我々はデルフィーネを抹殺する機会を失う。この機会を逃してはならない」
アラネア「そうか、では手筈通り作戦を決行しよう」

・ナーヒード
ジゼル「レース残り時間は後半分。シカーダさんはもう機体や他のレーサーの癖も把握してる頃だし、もうそろそろ仕掛ける頃かしら」
ファム「あのお兄さんナビ無しで乗ってるんだから重量一人分は軽いからもう少しスピード出ても良いのになあ。何やってるんだろ」
ロシャナク「ナビ無しでこの地下空洞を飛ぶだけでも大した物よ。流石は天使…いえ、もう地上に降りたから堕天使って所ね」
デルフィーネ「グランドストリームならまだしもこんな地下じゃあギルド人の本来の能力を100%発揮できないわよ。あなた最初からその事を計算に入れて私に賭けを持ちかけたわね?」
ロシャナク「さあどうかしらね。でも大空を舞う鷹でも空を飛べなくなったら地べたを這いずる負け犬にも劣るよの」
デルフィーネ「くっ。シカーダ何をしてるの!さっさと本気を出してこのレースを終わらせなさい!」
ジゼル(うわ、デルフィーネ様が怒った)
ファム(このお姉さん怒ると怖いなー)

召使の少年「ロシャナク様。ロシャナク様にお手紙です」
ロシャナク「あら珍しいわね。誰からかしら?どれどれ…成程、ふーんそういう事。デルフィーネ・エラクレア。私はちょっと野暮用が出来たから少し席を外すわ。レースが終わる頃には戻って来るわよ」
デルフィーネ「レースを観戦しないって事はあなたのレーサーが勝つ事に自信を持っているって事かしら?」
ロシャナク「まあそう言う事になるかしら」
デルフィーネ「?」
ロシャナク「じゃあそういう事で」

パタパタ

ジゼル「何かあったのかしら?」
ファム「別に何でも良いじゃん。折角だからここにある果物とかお菓子とか全部持ち帰っちゃおうよジゼ」
デルフィーネ「相変わらずあさましいわねファム。あなたそれでもアデスの元帥の孫なんでしょ?貴族だったらそれなりの礼儀って物を身につけなさいな」
ファム「えー、でもここにある果物やお菓子を食べずに腐らせちゃうのは勿体ないよー。あのロシャナク男爵だってお客さんに食べさせる為にこのお菓子置いていったんでしょ」
召使の少年「ロシャナク様からここに置いてある菓子類果物類はご自由にと申しております」
デルフィーネ「と言ってるわよ」
ファム「なーんだ、それならやっぱり私達が全部持って行って良いって事じゃん」
ジゼル「でも流石に全部持っていくのは止めようよファム…」
フリッツ「おーい二人ともここにいたか。お前らにアデスから呼び出しがかかってるぞ」
ファム「フリッツ?!私達にアデスから呼び出しって何があったの?」
ジゼル「特に予定は無かったはずだけど…緊急の用件?」
フリッツ「用件の中身は知らねーよ。俺もキールス艦長を経由してお前達を探すよう言われただけだから。ほれ。何があったのか知らないけどさっさとサドリ元帥だっけか?お前の祖父さんの所に戻った方が良いんじゃね?」
ジゼル「まさかファムのお祖父さんに何かったんじゃ」
ファム「お祖父ちゃんに?まさか危篤?!こうしちゃいられない!行くよジゼ」
ジゼ「待ってよファム。あっデルフィーネ様、そういう事で私達はこれで」
デルフィーネ「分かったわよ。あなた達はさっさと身内のお爺様の所に行きなさいな」
ジゼル「それでは失礼します」
0027デルフィーネ母星に行く その77
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2014/01/01(水) 00:42:01.84ID:EcXdTbHj
ササッ

デルフィーネ(これで私一人か…いつも周りに誰かいたから一人きりになるのは久しぶりね。子供の頃はお父様お母様、マエストロにディーオ、それにシカーダがいたから寂しくなかったけど…今じゃシカーダだけか。
これでシカーダが死ぬような事になったら本当に私は一人ぼっちになるわねえ。一人ぼっちになるってのは寂しいわね。さっさとこのレース終わらないかしら。1人でいるのは何だか不安だわ)

ガガン

デルフィーネ(揺れ?これが自然現象の地震て奴かしら)

ガガッ ガタガタガタ

デルフィーネ「何よこの揺れ、天井が崩れてきてるじゃないの。ちょっとこの船どうなってるのよ。乗組員位いるんでしょ?さっさとこの船浮かすなりしてこの揺れをどうにかしなさいよ!」

ガタンガタン バタン

デルフィーネ「!何よこの安普請。シカーダ!シカーダ!」

・エリダラーダ
ウロクテア「ナーヒードの爆破完了しました。デルフィーネの死亡は確認してませんが、救助を遅らせれば時期に死ぬはずです」
アラネア「地下レースの群集の避難誘導を優先しよう。地上との通信回線は爆発による影響で切断してデルフィーネの救助は遅れたと言う事で良いのだなアラウダ」
アラウダ「それで良い。む…シカーダがレースを放棄してデルフィーネの救出に向かったようだ」
ウロクテア「ヤシュバルはロシャナク男爵の姿を確認をしてレースを続行しています。この場合賭けはデルフィーネの負けと言う事になるのでしょうか?」
アラウダ「デルフィーネの試合放棄によりロシャナクの勝ちだ」
アラネア「ギルドが不正なレースの片棒を担ぐとは…今後はこのような事はしたくないな」
アラウダ「俺やルキアの仕事はこの星の平和を保つ事だ。その為ならば何度でも汚れ仕事を請け負うさ」

・ナーヒードの残骸
シカーダ「デルフィーネ様!デルフィーネ様!どこにおられるのですかデルフィーネ様!くそっ、おいレースを止めろ!ヴァンシップの音でデルフィーネ様の声が聞こえない。
おい、レースを止めろと言ってるのが聞こえないのか!今すぐヴァンシップを止めろヤシュバル!聞こえてるのかグランレース準優勝者!」
ヤシュバル「ギルド人。俺はロシャナク様からレースを続けるよう命令されている。ヴァンシップ乗りとは例えグランドストリームの中でも任務の為に信書を届けるのが仕事だ。
レースもそれと同じ。俺はロシャナク様の命令がある限り飛ぶのを止めない」
シカーダ「ならば俺が今すぐお前の息の根を止めて静かにさせてやる…」
ロシャナク「ヤシュバル。彼の気持ちも考えてエンジン音を抑えてなさい。あなた程のヴァンシップ乗りなら無音航行位の芸当はできるでしょう?」
ヤシュバル「そういう事でしたなら…」
シカーダ「発光信号で器用に会話しやがって…いやそんな事よりデルフィーネ様の救助を…確かデルフィーネ様がいたのはナーヒードの後方の銃兵の台座のあたりだったから…ここか!」

ガシャガシャ

シカーダ「いた!デルフィーネ様!…?脈が無い…?死んだ?デルフィーネ様が死んだだと?そんな…昔あれ程のことをして私を置いてあなたが死ぬと言うのですか?!デルフィーネ様!」
アラウダ「シカーダ。そこまでだ」
シカーダ「貴様はアデスの…」
アラウダ「騒ぎを聞いてここに来た。群衆の避難は済んでいる。死傷者が少ないのが幸いだ。お前の主が死んだのは残念だが、死んでしまったのは仕方がない。
俺もファラフナーズ様を守れなかった。だが主を失ってもお前は生きているから今後はお前の人生を生きろ」
シカーダ「デルフィーネ様の死を受け入れろと?冗談じゃない。デルフィーネ様の体はまだ温かい。今ならまだ蘇生が間に合うかも知れない」
アラウダ「気持ちは分かるがギルドの掟では蘇生術は禁止されている。死ぬべき人間を生き返らせていては不老不死の人間を増やして人口増加を招き戦争によって滅びた古代人と同じ道を辿るぞ」
シカーダ「古代の故事の事など関係ない。デルフィーネ様のエラクレア家は医術を司る家系だ。俺も先代エラクレア当主に使えて医術を学んだ事がある。
プレステールを離れてギルドの役目を終えた今、ギルドの掟など知るか。
俺はダリウス様の教えに従い医術を人の為に役立てる」
アラウダ「辞めろ。無駄だ」
0028デルフィーネ母星に行く その78
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2014/01/01(水) 16:35:34.36ID:boCDLRZ2
サッ

シカーダ「邪魔をするなアラウダ。お前は主を助けられなかったが俺は違う。俺は自分の主を助けて見せる。手助けしないのなら黙ってそこで見ていろ。まずは心臓マッサージをして、次に人工呼吸を…」
アラウダ「見苦しいぞシカーダ。マエストロの護衛たる者、マエストロを護衛できなかった時点でその存在価値は無くなる。諦めるんだ」
シカーダ「お前達がそうだからと言って俺までも巻き込むな」

ドッドッ スーハースーハー

シカーダ「まだ息が戻らない…もう一回だ」

ドッドッ スーハースーハー

シカーダ「まだだ、まだ」

ドッドッ スーハースーハー

アラウダ「辞めろ、無駄な努力だ…」

ドッドッ スーハースーハー

シカーダ「私があの時デルフィーネ様をお止めていれば…。グラフを説得出来ていれば…。ダリウス様のお帰りがもう少し早ければ…デルフィーネ様はこんな事にならなかったかも知れない…」
アラウダ「…」

ドッドッ スーハースーハー ドクン

アラウダ「!」
シカーダ「動いだ!もう少しだ!」

ドッドッ スーハースーハー ドクンドクン

アラウダ「蘇生しただと?!辞めろシカーダ。お前は過去の時代の人間の犯した間違いを繰り返そうとしてるぞ」
シカーダ「俺は古代人の不老不死なぞ興味は無い。単にデルフィーネ様がまっとうな人生を歩んで共に老いて土に返るまでお傍にいられればそれで良いのだ」
デルフィーネ「うっ」
シカーダ「デルフィーネ様!」
デルフィーネ「シカーダ?どうしたの?何が起こったの?ここはどこ?体が痛いわ…お父様とお母様はどこにいるの?ディーオはどこにいっちゃったの?」
アラウダ「?」
シカーダ「デルフィーネ様…記憶が…幼児退行を起こしているのか」
ロシャナク「災難だったわね。デルフィーネの付き人さん」
ヤシュバル「レースが終わったぞ。お前にとってはどうでも良い事だろうが、ロシャナク様とそちらのご婦人の賭けはロシャナク様の勝ちだ」
ファム「うわあ、何これどうしちゃったの?何でナーヒードがガラクタになってるの?」
ロシャナク「あら、あなた達も爆発を免れたのかしら?」
ジゼル「ええ、ファムへの手紙が偽手紙だったらしくて、キールス艦長が偽の手紙を掴まされてサドリ元帥の無事を確認したら、アデスの連絡網でエリダラーダで事故があったって聞いて戻ってきたんです」
ファム「まったくどこの誰がお祖父ちゃんが危篤だなんて偽情報流したんだか!人を悲しませるような偽手紙作って人を騙すなんて許せないよまったく!」
ジゼル「(今までそれをやっていたのが私達空族なんだけどなあ)ナーヒードの事故を見ると、どこかの誰かが空族の手口を真似てナーヒードを盗もうとしたのかも知れません。デルフィーネ様は怪我してるようですけど、命に別状は無いようで良かったです」
0029デルフィーネ母星に行く その79
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2014/01/01(水) 16:39:37.85ID:boCDLRZ2
デルフィーネ「私?あなた誰?私の事知ってるの?」
ジゼル「え?」
ファム「やだなあお姉さん。この未来のグランレースの優勝者のファム・ファンファン忘れるだなんて」
シカーダ「落ち着いて聞けファム、ジゼル。デルフィーネ様は今事故の影響で記憶を失っている」
ファム「記憶喪失?」
ジゼル「忘れちゃったんですか私達の事?」
シカーダ「一時的な物かも知れないし長期的な物かも知れない。医術の心得はあるが、専門家ではないのでどう対応したら分からない状態だ。
だが命に別条は無いので最悪の状態は避けられた。俺は暫くデルフィーネ様のお世話に専念したい。デルフィーネ様がこの状況なので、お前達には連絡要員として満足な仕事を与えられなくなるかも知れない」
ファム「仕事の事だったら大丈夫だよ!お姉さんが今まで私達の為に色々としてくれたから、空族も今別の仕事をやる為に色々頑張ってるんだからお姉さんに頼らなくても大丈夫!」
ジゼル「私達の事よりもデルフィーネ様の方が心配です。ロシャナク男爵との賭けに負けてしまってエグザイルだかマエストロの地位だかと譲るって話になっちゃったから…デルフィーネ様の全財産を巻き上げられるって事になりそうなんですが」
デルフィーネ「エグザイルだなんてまたお父様は研究に熱中しているのかしら。こんなんじゃジェームス様の後釜を狙ってバシアヌスが地上人と組んでマエストロの地位を狙ってきたらどうギルドを守れば良いのやら…」
ロシャナク「賭けには勝ったけど彼女がこれじゃあねえ。ギルドの技術を教えて貰おうかと思ったけど記憶が無いんじゃ現物を無理に貰ってもねえ?」
ヤシュバル「エグザイルは然るべき手段を使って起動させないと暴走すると聞いております。無理に手に入れようとすればロシャナク様の身を危うくするかと」
ロシャナク「と言う事で記憶が戻るまでは暫く賭け金の徴収は待ってあげるわ。別にエグザイルでなくてもギルドの技術だったら何でも良かったのだけど…
ま、彼女がこの世界を新しい世界に変えてくれたような物だから、平和な時代になるのであれば徴収は無期限延期でも良いわよ?」
シカーダ「…」
ジゼル「えーと、今のロシャナク男爵の発言を私達が記憶したので、今後戦乱の時代が来ない限りはロシャナク男爵はデルフィーネ様から徴収できません。
だから戦争になったりしなければデルフィーネ様やシカーダさん達の財産は無事って事です。もし裁判沙汰になっても私達が証言します」
ファム「という訳でお兄さんは心配しなくて良いよ。どーんと大船に乗ったつもりで安心して!お姉さんの財産を狙う不届き者はこのファム様が許さないんだから」
アラウダ「今の話はアデス諜報部も記録した。諜報部長の私が証人になろう。ときにシカーダ。デルフィーネが一時死んだ事でお前の精神処理はどうなった?誓約の印の効果は失われたのか?」
シカーダ「誓約の印?デルフィーネ様がマエストロになった時は俺は既に17を過ぎていた。俺がデルフィーネ様に仕えているのは精神処理は無関係だ」
アラウダ「そうか。ならばお前は自分の意思でデルフィーネの護衛をしている訳か…分かった。シカーダよ。今後記憶を失ったデルフィーネを狙って様々な輩が寄って来るだろうが、お前はそれらの危険からデルフィーネを守れるか?」
シカーダ「当然だ。デルフィーネ様に近づき利用するような輩は俺が成敗してくれる」
アラウダ「逆にデルフィーネが暴走したら止められるか?自我を失った権力者を野放しにするような事になれば、自然と敵を増やすだろう」
シカーダ「記憶が戻ればその心配は無いが…今のデルフィーネ様は純真だった少女時代のままだ。俺は…あの時の後悔を繰り返さない」
アラウダ「お前が過去にどんな後悔をしたのか知るつもりは無いが、デルフィーネの暴走を止められるのであればそれで良い。
では事故の処理があるので我々はしばらく現場を調べる。お前はデルフィーネを連れて帰れ。そして暫くこの星の政治から遠ざける事だ」
シカーダ「政治か。デルフィーネ様は元々政治は好きなタイプでは無かったからな。政治に関わらない方が心が痛い思いをしなくて済むだろう。では俺はこれにて失礼する」
0030デルフィーネ母星に行く その80
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2014/01/01(水) 16:43:46.67ID:boCDLRZ2
サッ

ウロクテア「良いのですか?デルフィーネを始末しなくて」
アラネア「インチキレースには勝った。デルフィーネは蘇生したが一度死んだ以上暗殺には成功したと言う事か。お役所仕事だなアラウダ。それとも記憶喪失で無力化できたから良しとするのか?」
アラウダ「ロシャナクの賭けについては証言を取った。デルフィーネが暗躍してこの世界を危険に晒さない限りはエグザイルの所有権はそのままで良い。
もしデルフィーネが戦争を起こすと言うのであれば、その時はロシャナクを使ってエグザイルの所有権なりを主張すれば良い。今回の作戦の目的は達成した。アデスに戻り今回の件をルキアに伝える」

・グランレイク東岸の更に東の土地
シカーダ「お食事が出来ましたデルフィーネ様」
デルフィーネ「ありがとうシカーダ。それにしてもこの土地には何も無いわね。まるで世界の果てみたい。シカーダ。お父様達との連絡は取れたのかしら?」
シカーダ「いいえ、気象制御装置の再起動に失敗してギルドが滅んでから生き延びれたのは我々二人だけです。プレステールに戻れなくなった今となってはダリウス様達との連絡できる可能性は少ないでしょう」
デルフィーネ「私は記憶が戻らないので覚えてないのだけど…バシアヌスがクーデター起こして気象制御装置の再起動に失敗して、お父様は私達をバシアヌスの手の届かない世界の果てに飛ばしたって事なのよねえ?」
シカーダ「そうですデルフィーネ様。どのようなメカニズムでこの土地に漂着したのかは如何せんダリウス様でも説明が難しいと思われますのでとても私には説明できるレベルではありません。
しかし、バシアヌスが地上人と一緒になってギルドの権力を握っていたとしたら、この地上人の政治に関わればいずれバシアヌスに気付かれる可能性があるかと思われます」
デルフィーネ「でもギルドの知り合いが少ないってのは寂しいわね。この土地のファムちゃんとジゼルちゃんだったかしら?彼女みたいな地上人がもっと頻繁に来れば良いのに」
シカーダ「彼女達はこの汚染された世界に適応した人類です。我々ギルド人が外に長時間出たら汚染された空気を吸い込んで意識を失うでしょう。
アラネア達も我々と近い種のギルド人ではありますが、デルフィーネ様は外の環境には適応できません。
くれぐれも外出せぬようお願いします」
デルフィーネ「分かったわシカーダ」

シカーダ(デルフィーネ様がエリダラーダで記憶を失ってから、俺はデルフィーネ様を陰謀渦巻く政治の世界から離すべく、アラネア達の管理していたグランレイク東岸の土地の更に東の土地に移住した。
記憶を失ったデルフィーネ様は少女時代の性格に戻っている。多感な少女時代にバシアヌスのクーデターや気象制御装置のプレッシャー等が重なってデルフィーネ様は暴走し、ついには自分でギルドの権力を握るべくクーデターを起こした。
だが今のデルフィーネ様ならば与える情報を制限すればあそこまで道を踏み外さなかったのではないかと俺は思う。いや、これは俺の勝手な期待なのかも知れない。
だが、下手にアデスやグランレイク諸国の政治権力と関わればこの先お互いにとって良からぬ影響を与える可能性が高い。
俺はそれを避けるべく、デルフィーネ様に接触できる人間を制限してこの東の土地に移住した。俺はデルフィーネ様に嘘を付いている。主に嘘を付くとは護衛官として失格だ。もしグラフが今の俺を見たら失望するだろう。
だが俺はそれでも良い。護衛官としての栄光を失っても、デルフィーネ様と一緒に生活できる事が俺の幸せだ。それに外の良からぬ問題からデルフィーネ様を守ると言う意味では形は違えど護衛官として仕事をしている事になるか?
ルシオラだったらどう思うだろう。あいつとは離れ離れになったが、デルフィーネ様がプレステールにいたら俺かルシオラどちらか或いは両方とも死んでいて、主を失っていたかもしれない。
そうなるよりは俺達がプレステールから離れて結果的には成功だった訳だ。今でも俺とデルフィーネ様は問題を避ける為に離れた土地で暮らしている。
いつまでこの生活が続くかどうか分からないが、いずれデルフィーネ様も外の連中もお互いの関わり方のコツを掴むだろう。
グラキエスが過去にそうしてきたように、今は俺達が外との接触を制限して上手く生活できている、今はこの生活を送れる事に感謝しよう)
0031デルフィーネ母星に行く その81
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2014/01/01(水) 16:56:14.33ID:boCDLRZ2
デルフィーネ「シカーダ何ブツブツ言ってるの?折角外の土地が余ってるんだからここに薔薇の畑を作らない?花が咲いたらきっと綺麗よ?」
シカーダ「薔薇畑ですか?これだけの土地を薔薇で埋め尽くすにはさぞかし長い年月が必要になるでしょうな」
デルフィーネ「あら良いじゃない。折角時間が余ってるんだから有効活用しないと。ほら、さっさと準備しないと私がお婆ちゃんになっちゃうわよ」
シカーダ「それでは私もお爺さんになるまでデルフィーネ様の暇潰しに付き合うとしますか」

・アデス
ルスキニア「そうか。シカーダは我々と避けて東の果てに移住したか」
アラウダ「デルフィーネの記憶が戻らない限りは向こうから接触してくる事は無いだろう。地上人が居住できる土地がデルフィーネのいる土地まで到達するにはまだ時間がかかる。
居住可能地域が届く頃にはデルフィーネは寿命で死ぬ頃だ」
ルスキニア「お互いの接触が不幸を招くなら過去のグラキエスのように接触を絶つ事も有効か…皮肉な物だな」
アラウダ「いずれはデルフィーネの子や孫の代に接触する事になるだろうが、それは次の世代に任すとしよう。ルキア、お前が次世代の人間を育てるんだぞ」
ルスキニア「分かってる」
アラウダ「その為にもさっさとリリアーナ姫と結婚して子作りをする事だな。頑張れよ未来のトゥラン王」
ルスキニア「婿養子かよ!」

・プレステール:デュシスの湖周辺
クラウス「ルシオラの額の印が閉じたんだって?」
ディーオ「うん!これでデルフィーネの洗脳に怯える事は無くなったよ。コキネラやアピスも誓約の印に縛られる事は無くなったから、今後は自分の人生を楽しむってさ」
ラヴィ「額の印が閉じたって事はデルフィーネが死んだって事よねえ。これで私達のデルフィーネ帰還に備える仕事も終わりかあー。短いようで長かったなー」
クラウス「デュシスの冬は応えたからね。でもこれでデルフィーネ対策に国力割かなくて良い分アナトレーとデュシスの復興も早くなるよ」
ディーオ「問題は艦長さんかなー。あの人デルフィーネ倒す事に燃えていたから、デルフィーネが死んだと知ったらどんな顔するかなあ」

・グランドストリーム:ギルド城
アレックス「マエストロが死んだだと?確かか?」
ルシオラ「私達の額の印が閉じたと言う事はマエストロが死んだと言う事です。生き返ったりしない限りは死んでると考えた方が妥当かと」
レシウス「マエストロが死ねば、そのマエストロの時代に誓約の印を受けた者の印は効力を失う。ジェームスが死んだ時に俺やグラフの額の印が閉じたようにな」
アレックス「そうか、マエストロが死んだか…」
レシウス「自分で仇を取れなくて残念か?」
アレックス「そうだな。贅沢を言えば自分の目でマエストロの死を確認したかった…だがマエストロが死んだ事を確認できたならそれで満足だ」
ヴィンセント「で、お前はこの先どうする」
アレックス「そうだな。ユーリスや師匠の墓参りをしてから…その後の事はそれから考えるさ」
ヴィンセント「今のアナトレーとデュシスが異常気象と先の戦争で人口が減っているのは知っているな」
アレックス「何の話だ?」
ヴィンセント「減った人口と国力を回復する為に皇帝陛下はデルフィーネ対策の予算を人口拡大の為に回すそうだ」
アレックス「国力の回復か。戦争が終結したならそうするのが王道だ。ソフィアの判断に間違いは無い」
ヴィンセント「それについて皇帝からお前に人口増加の為の協力要請が来ているが…どうする?」
アレックス「俺に?軍人の俺に何でそんな事を…いや、軍人が失業してもヴァンシップ乗りの育成の為の教官位はできるか。分かった。全面的に協力すると伝えてくれ」
ヴィンセント「だそうだシルヴァーナの聴音員。今の会話はしっかり記録したな?」
ウィナ『はいバッチリです!アレックス艦長はソフィア副長の人口拡大政策に協力すると言質を取りました』
ヴィンセント「と言う訳だ。頑張れよアレックス。」
アレックス「?ああ、分かった」

パタン

レシウス「良いのか?もっと直接的に『皇帝ソフィアと結婚して家庭を築け』とか言った方が良かったんじゃないのか」
ヴィンセント「直接言ったら逃げられるから絡み手を使わせてもらった。今までマエストロの事追っかけていたのだから、少しは身近な女性の事を構ってやった方が良いんですよあいつは」
0032デルフィーネ母星に行く その82
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2014/01/01(水) 17:01:59.84ID:boCDLRZ2
・ギルド
エフェメラ「いやー、長くなりましたけどこれで俺達もマエストロの影に怯えなくて済みますねえ」
アピス「結局マエストロが死ぬまで誓約の印は消えないって事もな」
コキネラ「死ねば額の印が消えるんだったら、アゴーンの試練の時に僕の心臓を停止させて仮死状態にしていれば僕の額の印も消えていたのかも…」
エフェメラ「まだ洗脳逃れの方法を考えてるんですか?真面目ですねーコキネラ君は」
アピス「もうマエストロは死んだんだ。誓約を逃れる方法を考えなくても良いじゃないか」
コキネラ「僕達の代ではね。でも地上人がギルドの技術を手に入れた今、地上人が誓約の印を悪用しないとは限らない。
あの皇帝ソフィアならそんな考えは起こさないかも知れないけど、将来の事は分からない。
僕はこれからも洗脳逃れの方法を模索するよ。将来のまだ生まれてない弟や妹達の為にもね」
エフェメラ「誓約が無くなった今では何をするにもコキネラ君の自由ですよー。何をするにも君が考え君が決定し気味が行動して、その結果良い事も悪い事もぜーんぶ君の責任です。
自由の責任を自分で負う事が出来るならば君の人生は君の物です。さ、コキネラ君や我々の新しい人生の門出を祝って乾杯でもしますか」
コキネラ「では我々の新しい人生の門出を祝って『良き風と共に』」

終わり
0033創る名無しに見る名無し
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2014/01/01(水) 17:07:43.75ID:boCDLRZ2
長期間スレを占有しましたが今回の投下は以上です
自分も面白い作品読みたいので、ネタ被りやネタの流用は構いませんので作品できたら投下してください
また時間ができたらSS投下します
0034創る名無しに見る名無し
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2014/07/21(月) 23:40:45.00ID:jz7QFAUL
ダリウスがエグザイルを発見するまで その1

時系列:ギルド暦650年頃(1期の15年位前)
・デュシス
雪の降るデュシスの巨大湖の湖畔にギルドの立会い船が着陸している。
湖畔から離れた所では巨大な円筒状の黒い塔のような物が複数建設されている。
塔の建設にはデュシス人とギルド人が共同で関わっているようで、
ギルド人の技術官(テクネと言う役職)が設計図をデュシス人に見せながら作業指示を出している。
塔は移民カプセルと呼ばれていて、将来デュシスの寒冷化が絶望的になった時の為に
グランドストリームを通ってアナトレーに移住する目的で作っている。
デュシスはここ近年寒冷化が一気に進んで、このままでは十数年後には人間が生存できない状況になると言われている。
元はと言えばギルドが気候を管理できてないのが原因で、ギルド側はマエストロの号令の元、デュシスを救う為にギルド技術の供与を決めた。
ギルド人達も寒冷化に苦しむデュシス人には同情的で、ギルドの規定に反しない程度にデュシスのアナトレー居住に協力的だ。
その移民カプセルの建設地とは離れた湖畔の立会い船の内部では、移民計画とは一見無関係に見える聞き取り調査をやっていた。
「ダリウス様。デュシスのネストル艦長が到着したとの報告が入っております」
白い服を着たギルドの護衛官の若者が机に向かって資料調査に没頭している黒服のギルド人に声をかける。
「…ダリウス様?」
声をかけても反応が無い。
黒服のギルド人は声をかけられても机の上に開いた書物を前にして何やらぶつぶつと独り言を言っている。
「…やはりそうだ。あのアーチ状の構造物は湖や大量の水の前に作られるモニュメントだ。ならば何故あの砂漠に半分埋まった状態で露出してるのか?
昔のミナギスは巨大な湖だったのか?それともあそこに湖を作る予定だったのか?そもそもどこからあの大量の砂が…」
ダリウスと呼ばれた黒服のギルド人は目の前の作業に没頭してるせいか声をかけても耳に入っていないようだ。
そこで白服の護衛官は大声を出して再度呼びかける。

「ダリウス様!」
「おおっと、何だどうしたシカーダ?いきなり大声を出すな、びっくりするじゃないか。お前は激情家だがすぐに怒鳴る癖をどうにかしないと女の子にもモテないぞ」
「私が感情的な事は否定しませんが、それはともかくネストル艦長から準備が出来たとの報告が入っております」
「ネストル艦長?デュシスの?…おおそうだそうだそうだった。今日はデュシスの昔話に詳しい人間から聞き取り調査をする予定だったな。…到着時間が少し遅れているようだが?」
「先方は遅れておりません。遅れているのはダリウス様です」
「何?私がか?」
「何度も声をお掛けしても反応しませんでした。研究に集中するのは構いませんが、地上人を待たせるのは失礼に当たるかと」
「む、そうだな。気象異常で地上人は色々と余裕が無くなってきている。折角聞き取り調査に来たのに、機嫌を損ねたら昔話をして貰えなくなるかも知れん」
「ダリウス様。地上人の前では空気を読まない発言はお控え下さい。地上人の怒りを煽ればマエストロの指示したデュシスの移民計画に支障をきたします」
「わかってるわかってる。地上人の前では平均的なギルド人を演じるよ。マエストロの計画を妨害するつもりも毛頭ない。今のギルドでは権力抗争などやってる暇は無いからな」
ダリウスはそう言うとシカーダを連れ、昔話を知るデュシス人の艦長の待つ部屋へと出向いた。

「お待たせして申し訳ない。私がこの度デュシスの調査をマエストロ・ジェームスに命じられたダリウス・エラクレアと申します。この度は厳しい状況の中ご足労頂き感謝します」
「デュシス軍のネストル・メッシーナだ。今はレパラシオン級の艦長をやっておる」
ダリウスが挨拶すると髭を生やしたデュシスの軍人ネストルが簡単に自己紹介を済ませる。
「あなたがデュシスの昔話を聞きたいと言うギルド人か?黒い服を来たギルド人とは珍しいな」
「ダリウス様はギルド四大家系の一つエラクレア家の人間である故、黒服のロリカの着用を許されています」
ネストルの疑問にシカーダが答える。

「ほう?ギルドにはアナトレーのように貴族階級が存在するのか。で、そのギルド人が何故デュシスの昔話に興味を持つ?
見ての通りデュシスは寒冷化が進んで人も家畜もどんどん死んでおる。軍人の昔話を聞きに来る程ギルド人は暇なのか?」
0035創る名無しに見る名無し
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2014/07/21(月) 23:44:40.59ID:jz7QFAUL
ダリウスがエグザイルを発見するまで その2

ネストルのダリウスに対する態度は厳しい。異常気象を解決しないギルドに対する不満が溜まっているのだろう。
(地上人め…我々とて何も仕事を怠けている訳ではない。気象制御装置を直そうにも直し方が分からないのではどうしようもないではないか)
シカーダはこの軍人に対して反論したかったが、ギルドへの忠誠心と理性で自分の感情を押し殺す。
ここで自分が怒鳴りつけても問題が解決する訳ではない。それどころか地上人のギルドに対する印象が増々悪化するだけだ。
ダリウスがシカーダの内心の怒りを察したのかネストルの不満意見に応える。

「ギルドでもこの気象異常を解決する為にこうして調査に来ております。昔話にデュシスを救うヒントがあるかも知れません。
些細な事でも構いませんのでどうかご協力お願いします」

ダリウスの言ってる事は嘘ではない。
ギルドの気象制御装置が故障して管理責任者のエラクレア家でも直し方が分からないのだ。
事態を重く見たマエストロ(ギルドの統治者)のジェームス・ハミルトンはこの世界の終焉を止める術を見つけるべくプレステール各地に調査隊を派遣していた。
ダリウスの調査隊もその1つだ(ダリウスの場合は自分の考古学趣味もあったが)

「昔話にデュシスを救う方法があると言うなら喜んで話そう。役に立つかどうか分からんが」
「宜しくお願いします」

ダリウスはネストルに酒を出す。
デュシス人は寒い環境のせいか酒を飲む機会が多いと聞く。
酔って呂律が回らなくなると聞き取り調査の意味が無いのでダリウスは酔わないように成分を調合した酒をグラスに注ぐ。
ネストルはそれを一口飲むと味に満足したのか多少態度が軟化した。

「酒か、体が温まるな。さて、何から話そうか」
「デュシスの湖とエグザイルについてお願いします」
「エグザイルか…この湖の周りの土地ではエグザイルの話等珍しくも無い。数が多いがそれでも構わないか?」
「この寒い中聞き取り調査に協力して頂いてるのはこちらの都合なので、そちらの都合で区切りを付けて構いません」
「そうか、ではまずお決まりのこの世界の創世伝説から話そうとするか」

デュシス人の昔話が始まる。
ダリウスの側に控えていたギルドの立会人(地上人が最も良く目にするタイプのギルド人である)が、
ギルド製の蓄音機と思われる機械を動かしネストルの昔話を記録する。
立会人の仕事は色々あるが、ここ最近はデュシスとアナトレーとの交戦の監視が多い。
立会人は交戦規定と呼ばれるルールを地上人が守って戦争するかどうかを監視し、不正があればそれを処罰する権限を持つ。
言わば戦場における審判だ。
不正が起きないよう管理する仕事が多く、不正が起きた時の証拠を取る為にも多数の監視装置も有する。
今回の聞き取り調査にも蓄音機を始めとし、話している人間の体温や脈拍も見ただけで分かる装置も持ってきてる。
しかしそれらの装置は一見しても地上人のネストルには分からないし、目立たない場所から監視しているので、
ネストルからすれば心理的圧迫感は感じない。
単なる聞き取り調査だからと言えば当然だが、尋問ではなく接待を受けているような感じか。

「遥か昔、大地に人が溢れ、思うままに天と地を穢し、ついには大いなる裁きを受けた。
天は荒れ、地は震え、水は全てを押し流し、そして人々は天の果ての<砂時計>に身を隠した。
故郷に帰るその日まで…」

ネストルの話す創世伝説はグランドストリームを挟んで反対側にあるアナトレーと同じ物だ。
だがデュシスにはアナトレーやギルドには無いエグザイルの伝説も多いと聞く。
ダリウスが興味を持ってるのもそちらの方だ。
ネストルの昔話が続く。

「この世界が作られた時、エグザイルは我々の祖先の故郷からこのデュシスの湖を通りこの世界に人々を運んできたと言われている」

デュシスの創世伝説がアナトレーと違う所は「湖」の存在である。アナトレーにはデュシスのような巨大な湖は存在しない(貴族の所有するダム湖は存在する)

「エグザイルに乗りこの世界にやってきた人々はグランドストリームを挟んで別れ、それぞれ国を作った。それがアナトレーとデュシスだ」
ネストルの話はギルドに伝えられている数多くある伝説の一部とも一致する(当のギルド人達はそれはあくまで伝説であって実際にエグザイルが存在するとは思ってないが)
「エグザイルは故郷の大地に帰る時までグランドストリームに眠りにつき、ギルドはその時が来るまでこの世界を管理する事を神に命じられた」
0036創る名無しに見る名無し
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2014/07/21(月) 23:49:12.77ID:jz7QFAUL
ダリウスがエグザイルを発見するまで その3

ダリウスと立会人が頷く。
ギルド人ならば子供でもこの世界を管理する事を宿命付けられている事を知っている。
地上人にもギルドがこの世界の管理者である事の話はまだ忘れられていない事を知り、側で話を聞いていたシカーダは少し安心した。

「しかし今から約500年前にエグザイルがこの湖に降りてきた」

ネストルの話がギルドやアナトレーと違う流れになるのはここからだ。

「グランドストリームにあったはずのエグザイルは傷付き、傷を癒す為にこの湖に降りてきた。
湖はエグザイルがこれ以上傷つかないよう鋼の壁でエグザイルを覆い包み、エグザイルが湖底に辿り着くまでその防壁を解かなかったと言う」

ネストルの話は昔のギルドならばギルドの権威を汚す物として審問の対象になるような内容だ。
ギルドはこの世界を管理する絶対の存在であって、そのギルドが管理するグランドストリームから
傷付いたエグザイルが降りてくるなどギルドの管理不届きを指摘するような物だ。
だが所詮は地上人の昔話。それに今のギルドには昔のような権威は無くなってきてる。
仕事上地上人の話を記録してはいるが、気に留める事の程でもないだろうと立会人は思った。
しかしダリウスはネストルの話に興味を惹かれたようだ。

「それ以来、エグザイルの眠るこの湖では時折エグザイルの心臓の鼓動が聞こえ、
傷付いた体を癒す為に湖底に近づいた物を触手で食らっていると言う事だ。
これがこの湖に伝わるエグザイルの伝説だ」

ネストルは一度話の区切りを付ける。そして当時のデュシスに伝わっていたアナトレーやギルドについて話し始める。

「エグザイルが湖に眠りについた頃、グランドストリームを挟んで反対側にあるアナトレーにはギルドの城が落下し地面に大穴が開いたらしい」

ギルドとデュシスとアナトレーはそれぞれ独立しているが、ギルドが一部の人材を地上から登用している為、ギルドにはデュシスやアナトレー出身の地上人がおり、
地上出身のギルド人はギルドでの長い年月に渡る勤めを終えると故郷の地上に帰ったり反対側の国に移住したりそのままギルドで家庭を持つなど様々だ。
デュシスにアナトレーの話が伝わっているのも地上出身のギルド人が関係してるのだろうとダリウスはネストルの話を聞きながら内心考察する。

「風の噂ではアナトレーで内乱が起きて、アナトレーの王座を奪おうとする貴族とその配下の刀匠が作り出した不可思議な合金製の刀剣でエグザイルが傷つき、
ギルド城もその合金により浮力を失い地に落ちたと云う。ダリウス殿。こちらから聞きたいがアナトレーに巨大な穴が開いてると言う話は本当なのか?」

昔話をしていたネストルがダリウスにアナトレーの事情を尋ねる。ギルドとしては地上人にギルドの技術や反対側の国の事情を漏らすのは戒められている。
ましてや相手はアナトレーに侵攻しているデュシスだ。アナトレーの土地の事を話すのは軍事機密に抵触する可能性が高い。
しかし今は世界の崩壊を食い止める為に古代技術の探索をしている最中だ。ダリウスはネストルにアナトレーの事情を多少話しても構わないと判断しネストルに返答する。

「私はアナトレーについては詳しくないのですが…アナトレーの最下部に位置するノルキアと呼ばれる土地には地層をいくつか貫通する穴が開いているのは確認されています」
「そうか…と言う事はデュシスに伝わっている話もまんざら嘘ではないと言う訳が」
「ネストル殿。話の続きを」
「うむ。そのギルド城の落下の衝撃は地面を伝わり反対側のこのデュシスまでに音が響き、鐘が鳴るように何日もその反響音が世界中に響いたと云う」
今の地上人の大半はこの世界(プレステール)が瓢箪のような形をした世界である事を気にしていないが、
ギルドからすれば中身が中空の物体を叩けば鐘や音叉を叩くのと同様に音が長時間持続する事は十分理解できる。
ネストルの話には今の所科学的矛盾点は存在しない事を確認しダリウスは話の記録を続ける。

「そのアナトレーの貴族と刀匠はさらにこの世界の彼方にある壁に穴を開け、虚無の世界に通じる道を作ろうとしこの世界を滅亡の危機に陥れたらしい」
0037創る名無しに見る名無し
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2014/07/22(火) 00:03:35.13ID:wUOpQ154
ダリウスがエグザイルを発見するまで その4

この「虚無の世界」とはギルドに伝わる「宇宙」の事だろうとダリウスは想像する。
遥か大昔のギルドは空気も上下の概念も存在しない純粋な物理法則しか存在し得ない「宇宙」とか「真空」とか呼ばれる空間に世界を創造したと伝えられている。
この世界プレステールはその宇宙と言う空間の中に生物が存在できるようにした水槽のような物らしい。
水槽に穴を開ければ中の水が流れ出して水槽の中にいる魚は呼吸出来なくなって死ぬのと同様に、プレステールの壁や地面に穴を開けるとその「宇宙」と呼ばれる虚無の空間と繋がってプレステール内部の大気等が流れ出し、
プレステールは生物の住めない死の世界になってしまうと言い伝えられている。
尤もこのプレステールの内壁を貫通するだけのエネルギーや武器はギルドが厳しく管理しているので本来はそのような事は起こりえないはずなのだが…。

「ギルドとアナトレーは協力し、世界を滅亡に追いやる貴族を討ち取り、この世界に破滅をもたらす武器を作った配下の刀匠を虚無の世界へ追放し、虚無の世界へ繋がる穴を塞ぎこの世界の滅亡を防いだ」

ネストルが現在語っている内容はアナトレーに伝わるギャラハッド騒乱の話と一致している。
ギルド側の歴史でも500年程前にアナトレーのミナギスの地方豪族であるギャラハッド公と呼ばれる人物が存在し、その配下であるラドクリフなる人物がギルドで物理と化学を司るバシアヌス家でも製造不可能な合金を作り出したと言う話が「伝説」として残っている。
細かい点では刀鍛冶ではなく剣術の達人だった等の違いはある(刀鍛冶で剣の扱いが得意だったとしても矛盾は無い)が、大まかな点ではギルドやアナトレーに伝わってる話と大差ない。
他に違ってる点と言えば、ラドクリフが「この世界から追放された」のではなく「この世を去った」との表現されている位だ。
まあ虚無の世界に追放されて生きてる事は考え辛いので「死んだ」と表現しても間違ってはいないのだろうが、伝言ゲームの繰り返しで内容が大幅に変わる事は歴史においても良くある事なので、
アナトレーとデュシスに伝わる昔話の差異も歴史の真実を追究するダリウスにとっては無視できない考察対象だ。
ネストルの話は続く。

「しかし世界の穴を塞ぐ為とアナトレーに落ちたギルド城の復旧が優先された為にデュシスの湖で眠りに付いたエグザイルには手が回らず、それ以来エグザイルは未だこの湖で目覚めの時を待っている」
「ご老人。ギルドがエグザイルを引き上げようとした話は伝わってないのですか?」
「ある。だがどれも失敗した話ばかりだ。先程エグザイルが湖底に近づく物を触手で食らうと話したように、エグザイルを引き上げようとするギルドの船をエグザイルは捕食し続け、ギルドはエグザイルの引き上げを諦めた。
ギルドも『エグザイルが必要となるのは青き星の浄化が済んでから』と言って、エグザイルの引き上げには急ぐ必要は無いとの態度だったと伝えられている」
「『青き星の浄化』ですか…」

ギルドに伝わる創世神話に「青き星」とか「母なる星」の名称が出てくる。
アナトレーとデュシスの創世神話にもこの世界プレステールは先祖が元々いた世界が住めなくなって、
元いた世界の居住環境が回復するまで一時的に暮らす為に作った居留地であるかのような表現が見受けられる。
他にもこの世界は刑務所のような物でギルド人は罪人である地上人を管理する看守のような役割であるとか、
地上人がこの世界の主人でギルド人は地上人に仕える為に作られた召使であるかのような解釈もギルドには存在する。
だがギルド神官が伝える神話にはエグザイルはグランドストリームに存在するべきなのに、現実にはエグザイルはグランドストリームに影も形も無いので、
ギルドでも創世神話やエグザイルやギルドの役割についても先祖がギルドの権威を高める為に作り出した寓話かハッタリだろうとの意見が主流だ。
エグザイルの存在を真面目に信じてるのはダリウス位な物だろう。

「デュシスにアナトレーの昔話の詳細が伝わっていたとは驚きです」

ダリウスがネストルの話を聞いて感想を漏らす。
0038創る名無しに見る名無し
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2014/07/22(火) 00:12:31.31ID:wUOpQ154
ダリウスがエグザイルを発見するまで その5

「普通ならグランドストリームの向こう側の国の話題なぞ伝わってこない。しかしこちらにアナトレーの話が伝わっていると言う事は、500年前の出来事は余程の事態だったのだろう」
「ネストル殿。それでその湖底のエグザイルの鼓動は今でも聞こえるのですか?」
「湖に潜れば湖底から音が響いてくるのが聞こえるはずだ。今の時期は寒いから好き好んで潜るような奴はいないが、まさかあの湖に潜る気か?」
「必要と判断すればそうします」
「エグザイルの眠る湖は冬でも凍結しないが、湖から上がったらあっという間に体が凍るぞ?最も今の異常気象の続くデュシスにいれば凍傷で指が動かなくのも時間の問題だがな。ギルドの技術を使えば大丈夫かも知れんが…」
「お心遣い感謝します。ですが春までのんびり待ってる訳にもいきますまい。今こうしてる間にも気象異常は刻一刻と進んでいますので。
シカーダ。湖に潜水調査する旨をデュシス政府に通達しろ。一度グランドストリームに戻り、準備が整い次第湖の潜水調査を始める」
「かしこまりましたダリウス様」
「ネストル殿。貴重な話を有難うございます。我々は明日以降この湖を調査しますので、また機会があれば昔話を伺いに来るかも知れません。その時はまた宜しくお願いします」
「ギルドは仕事熱心だな。だが湖を調査しても何も発見出来ぬかも知れぬぞ?何せ昔話だから話した内容が真実かどうかもわからん。それでもあの湖を調べるのか?」
「それでもこの世界を救う為にはほんの少しの手がかりでも虱潰しに調べねばなりません。例え目的の物が見つからなくても、ヒント位は見つかるでしょう」
「ダリウス様。デュシスへの湖調査の通達完了しました。移民カプセル建造の邪魔にならなければ明日以降いつでも良いとの事です」
「わかった。ではシカーダ、ギルドにこれより帰還すると伝えよ。ネストル殿、それではいずれまたお伺いします」

ゴゴゴゴゴ
ネストルを立会い船から下ろしたのを確認し、ダリウス達は立会い船をギルド城の存在するグランドストリームへと向け移動を開始した。
0039創る名無しに見る名無し
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2014/07/22(火) 00:20:26.04ID:wUOpQ154
ダリウスがエグザイルを発見するまで その6

・グランドストリーム:ギルド城:マエストロの間
「マエストロ。今日の御加減はどうですか?今日は家の庭園で薔薇の花がこんなに咲いたのでマエストロに見て頂きたく持ってきました」
「おお、エラクレア家のデルフィーネか。いつもいつもすまんな。しかし薔薇の花を持ってくるのは構わんが、この老いぼれには薔薇の花は似合わんと思うぞ?」
「そんな事ありませんよマエストロ。マエストロはギルドで唯一赤い服を着るのを許されてるんですから、この赤い薔薇を飾ればもっと似合いますよ」
「そうかのう…グラフよ、お前はどう思う?」
「護衛官である私には良く分かりません。ですが医学に携わるエラクレア家の人間がマエストロに花が似合うと言うのでしたらお体に害は無いかと」
「そうよ。マエストロは遺伝子工学を司るハミルトンの家系ですけど、医学の事なら私の家の方が詳しいんですから、心配なさらず薔薇の花に埋もれて下さい」

ギルドの議会を統括する現マエストロのジェームス・ハミルトンは高齢の為ここ最近体調が思わしくない。
ギルド内部でもジェームスの寿命が尽きるかデュシスが滅亡するかどちらが早いかプリンシパルの間でも噂になっている。
気象制御装置の不調はジェームスが子供の時から数十年に渡って顕在していたギルドの問題ではあるが、
10年ほど前に気象制御装置が停止してからはデュシスとアナトレーの異常気象のスピードは早まり、
マエストロのジェームスにも地上人からの陳情が増え心労や過労も目立つようになりジェームスは床に伏せる事が多くなった。
4大家系を含むギルドのプリンシパル達に仕事を割り振っているのでマエストロ自身の仕事は減ってはいるが、
気象異常によるデュシスとアナトレーからの抗議と陳情は止む事が無く、ストレスによりジェームスの心体は衰えるばかりだ。
ここ最近は腕の上げ下げも億劫になってくる程だ。

ピンポーン
「マエストロ。ダゴベール卿がお見えになりました」
「あら?ダゴベールの当主様がマエストロにお会いになるなんて珍しいじゃない。ここ最近はずっとアナトレーに降りてバシアヌスと一緒に何かやっていたみたいだったけど、ギルドに戻ってくるなんてどうしたのかしら?」
「デルフィーネよ。レシウスとはチェスをする約束をしていたのでな。すまんが席を外してくれんかのう。老人同士水入らずで久しぶりにチェスの対戦をしたいのでな」
「チェス?ああ、内緒話の事ですね」

ギルドでは過去の権力抗争の経験からチェスの駒の動きを現状に見立てて内緒話をする伝統が出来上がっていた。
どんなに不穏な話をしていても「チェスの駒の動きについて感想を言っていただけ」との名目で盗聴や密告等の摘発をのらりくらりと逃れていた時代があった。
昔はそのチェスの会話全てを盗聴して不穏分子を摘発しようとした事もあったが、チェスをする人数が多過ぎて聴音する人間の労力を超えてしまった為、
それ依頼ギルドではチェスをしている時の会話には口を挟まない風習が出来上がっていた。

「デュシスに調査に行ってたダリウス殿もこちらに戻ってくるとの信号を打ってきました。この分ではレシウス殿と入れ違いになるかもしれません」
「お父様が?なら私はお父様をドックまで迎えに行ってきますわ」
「うむ、ダリウスに宜しくな」
「それではまたお見舞いに来ますわ。マエストロ」

そう言うとデルフィーネはマエストロの部屋を出ていき、船のドックへと向かった。
0040創る名無しに見る名無し
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2014/07/22(火) 00:27:11.54ID:wUOpQ154
ダリウスがエグザイルを発見するまで その7

・ギルド城:通路
ウィーン、プシュー
「何だ、エラクレアの嬢ちゃんか。ジェームスに会いに行ってきたのか?」
「お久しぶりですダゴベールの当主様。あら?そのチェス盤は何ですの?歯車が沢山ついてますが…」
「ああ、これは自動チェスマシーンだ。手で駒を持たなくても音声入力で駒を動かす事が出来る。ジェームスが寝たきりになって手を動かすのも億劫になってきたと聞いたんでな、
手を動かさなくてもチェスが出来るチェス盤を作ってきた。嬢ちゃんの見た感じではジェームスの容体はどうだ?」
「ここ最近地上人からの陳情が五月蠅くて気が滅入ってます。マエストロの健康を考えたらお仕事の方は暫く休んだ方が良いかと思います」
「マエストロの座にいる限りそう簡単には休めん。あいつもそろそろ引退してプリンシパルにマエストロの座を譲った方が良いとは思うが…」
「ダゴベールの当主様は次期マエストロに立候補しないんですの?」
「俺はマエストロの座には興味が無いんでな。機械弄りしてる方が性に合ってる。ダリウスの奴はどうだ?」
「お父様も発掘調査に没頭してるのでマエストロの座には興味無いように見えます」
「まあそうなるだろうな。気象制御装置の問題が解決せん限り誰がマエストロになっても同じ事だ。誰も地上人の苦情を受け付ける役目を背負いたくはないだろうからな。
お嬢ちゃん。ダリウスは何か異常気象を解決する修理のヒントになるような書物でも発掘できたか?」
「…いいえ、お父様からは何も…」
「そうか、ならばダリウスに趣味に没頭しとらんで気象制御装置の修復をしろと伝えて置いてくれんか?」
「…はい、伝えておきます」

デルフィーネとの会話を終わらせるとレシウスはマエストロに会いに場を去った。

(何よ。いつもいつも挨拶代りに『気象制御装置はどうなった?』って。家の書庫を探したって気象制御装置の修理法を記した本なんて見つからなんだから直しようが無いじゃない。
そんなに気象制御装置が気になるならダゴベールが直せば良いのよ)

デルフィーネは物心ついた時から他の家の人間から挨拶代りに気象制御装置の事を持ち出される事にうんざりしていた。
0041創る名無しに見る名無し
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2014/07/23(水) 23:16:51.83ID:y71xe/yJ
ダリウスがエグザイルを発見するまで その8

・ギルド城:マエストロの間
「お久しぶりですダゴベール卿。マエストロがお待ちです。おや?そちらの機械は…念の為改めさせて頂きます」
「相変わらず仕事に熱心だなグラフ。なあに心配せんでもマエストロに害を為すような仕掛けは入っとらん。ただのチェスマシーンだ」
「マエストロの身を守るのが私の使命ですので気を悪くしないで下さい。…何も怪しい点は見つかりませんでした。それではこちらへどうぞ」

グラフは手早くチェスマシーンをチェックし終えると、レシウスをマエストロの間へ通した。

「レシウスか。こちらに帰ってくるのは久しぶりだな。その機械が自動チェスマシーンか」
「ああ、早速だが試運転も兼ねて一局対戦してもらうぞジェームス。では…ポーンを前に」
レシウスがそう言うと声に反応したチェスマシーンはガチャガチャと歯車を回し、チェスの駒を前に動かす。
「ほう、そうやって動かすのか。ではこちらも…ポーンを前に。おお、動いた動いた」
「最初の一手は成功だ。後は雑談の声に駒が誤って反応しないかどうかを試さねばならん。グラフ。あんたも何か喋ってくれんか?」
「では…バシアヌス家のアナトレーへの技術供与についてレシウス殿に尋ねたい事があります」
「構わん。そのままポーンを前に」
「アナトレーが数年前に発明したヴァンシップと称されるクラウディアを用いた飛行機械ですが
『地上人が発明したレーシングカーにギルド戦艦の旗から落ちたクラウディア管を繋げたら浮いた』とバシアヌス家当主マリウス殿は仰ってましたが、
我々の調査ではアナトレーの自動車は発明されたばかりでレースをする程の能力はありません。
クラウディア管についてはグランドストリームの風に耐えきれない部品が地上に落下する事はありますが、
マリウス殿のアナトレーへの入れ込みようから判断すると意図的に地上人にギルドの技術を供与したように見えます」
「レシウス。そのまま駒を動かすとポーンが取られるぞ」
「地上人のヴァンシップの性能はまだ未熟な状態ですが、マリウス殿がそのままギルドの技術を供与し続ければ地上人もいずれはグランドストリームにやってきてギルドと衝突するかも知れません」
「まだポーンを取られる訳にはいかないな。どれこちらのキングを動かすか」
「マリウス殿はギルドの人間でありながらアナトレーの宰相を兼任し、アナトレーの皇帝を焚き付けてギルド打倒を狙っているのではないかと地上人も噂しています」
「それ、儂のポーンがもうすぐそちら側に届くぞ」
「デュシスへの技術供与に関してはギルドの議会の決定で許可された物ですが、アナトレーのヴァンシップ開発は議会の許可を得ていません。それにマリウス殿はプリンシパルの地位も放棄しています。
ギルドにいるプリンシパル達やマエストロの許可を得てない以上、アナトレーへの技術供与は不正な物です」
「せっかちだなジェームス。まだ勝負は始まったばかりだぞ。ビショップでポーンを」
「そう来るか。強気だなレシウス」
「気象制御装置の異常によるここ数十年の異常気象で地上人の不満が高まっているのはマエストロもご存知です。
しかしダゴベール卿までもが地上人の不満を逸らす目的でマリウス殿のアナトレーへの技術供与を見過ごすのは如何な物かと」
「確かに地上人のギルドへの不満は高くなっとる。地上に行って直に見聞きすればその事は尚更分かる。だが俺はマリウスがアナトレーに肩入れするのも仕方ないと思っとる。
地上人がレーシングカーを作ったと言う話はマリウスの方便だろう。だが地上人が自力で原始的な自動車を作ったのは事実だ。
自動車が発展するような事になったら自動車の為に道を舗装して動植物の成長を阻害する事になるかも知れん。アナトレーでは砂漠化が進んどる。
恐らくマリウスはヴァンシップを発展させる事で道を舗装するのを回避しようと考えとるのだろう」
「アナトレーの状況はそこまで酷くなっているのか」
「ミナギスが砂漠なのはギャラハッドの時代から変わらんらしいが、アナトレーの王族貴族連中の方が国土の状況を正確に把握してる分危機感は高い。
それにデュシスがアナトレーへの移民に成功したら少ない資源を巡って砂漠化は更に加速するだろう。その辺の計算についてはジェームス、お前の方が詳しいはずだ」
0042創る名無しに見る名無し
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2014/07/23(水) 23:30:32.42ID:y71xe/yJ
ダリウスがエグザイルを発見するまで その9

「儂の計算でもルジュナ家のギータの計算でもデュシスの寿命は後20年も無い。第一次ミナギス会戦でデュシスとアナトレーの共存が上手く行かない以上、我々ギルドが地上の政策に口出しすべきではない。
デュシスからもアナトレーからも戦争を避けようと我がギルドに仲介するよう毎月毎月陳情してくるが…『湯水のように使う』と言う言葉の使い方だけ取っても意味が逆になるのにどうして共存ができよう」
「お互いの生活環境の違いからくる文化や言葉の解釈の誤解をギルドが説いても損は無いと思うが?」
「ギルドと言えど互いの国書の書面を盗み見たり改竄するような事はあってはならん。レシウスの言いたい事は分かるが所詮我々はギルド人であって地上人の生活文化習慣を全て理解できる訳では無い。
親切のつもりで互いの国書の文面に口出ししてもそれが原因で誤解や勘違いが拡大する事もある。お節介で混乱を拡大するよりは、互いに気が済むまで戦って頭を冷やした方が理解が早まる事もある」
「それがマエストロ・ジェームスの考えか」
「プリンシパル達を含めた今のギルド議会の総意だ。個人個人によって考えに差異はあるが、地上人の諍いにギルドが口出しすべきではないと言うのは皆同じだ。
デュシスには既にグランドストリームを超える技術を与えた。既にアナトレーに到達しているデュシスがアナトレーと戦をしているのであれば、それは地上人同士の問題だ。
水が豊富な国が水の貴重な国と言葉を交わしても一つの言葉の解釈の違いで友好的か敵対的か、全く逆の印象を相手に与える。
鳩を食う食わないで話し合いよりも殺し合いを選んでる連中に説教しても反感を買うだけだ」
「グラフよ。お前さんはどう思う?」
「ギルドを守る護衛官の私としては地上人の敵意がギルドに向かう事は避けたいです。ただギルドへの不満があるだけならまだしも、アナトレーとデュシスが手を組んでギルドを攻撃するような事にはなれば少々面倒な事になります」
「心配せんでもアナトレーのヴァンシップ技術はまだまだ原始的だ。グランドストリームを超えてギルド城に攻撃するような能力はまだ無い」
「『まだ無い』だけであって、いずれはそうなる可能性もありますダゴベール卿。デュシス艦のグランドストリーム突破能力をアナトレーが手に入れた場合、アナトレーがギルドに攻撃を仕掛ける可能性は0ではありません」
「もし地上人に提供した技術が合わさって両国がギルドに牙を剥いても、ロリカのお前さんやスクトゥム部隊が出なくてもアスピス部隊がオドラデクを使えば簡単に撃退できるだろう」
「勿論です。指揮官が無能か指揮系統が断絶されでもしない限りはギルドの優位は変わりません。ですが我々の使命はギルドの安全を確保する事。悪い芽は摘んでおきたいと言うのが本音です」
「グラフが危機感を持つのは当然だ。儂らギルドとてグランドストリームで完全に自給自足の生活を出来る訳でもない。地上人の使う動力機関よりは遥かに効率が良いがそれでも燃料は消費する。
地上人の船にクラウディアユニットを貸し出す事と引き換えに地上の資源を手に入れたり、加工品を流す事でギルドは維持できている。地上人同士が戦っている現状はギルドにとっては損では無い」
「地上人達がその言葉を聞いたらギルドに対して失望するだろうな」
「失望でも何でもさせておけば良い。人口を調節する銃兵システムもそうだが、我々ギルドはこの世界を維持するのが仕事だ。間違ってもデュシスとアナトレーが全滅するような事態にはさせんよ。
暫くは戦争が続くだろうが、両国が戦争に飽きた頃を見計らって仲裁を買って出るつもりだ。地上の人口が適度に減ればこの世界はまだ維持できる。
デュシスの移民カプセルがアナトレーに着地できる場所は限られているから、アナトレー政府に不毛の砂漠地帯をデュシスに譲るよう圧力をかければそれで事足りる。
アナトレーは水不足だからデュシスに水や氷を手土産にするよう促せば、憎しみはあっても利害が一致すれば戦争も治まるだろう。
移民問題でいざこざが起きるだろうがそれは地上人同士で解決すれば良い」
「アナトレーの温暖化が進んでも寒冷化したデュシスからデュシスの船を使って水を輸送すれば、異常気象が続いても当面は国を維持できるか…」
「マリウス殿とてデュシスとアナトレーが全面戦争をする事は望んでないでしょう。寧ろデュシスとアナトレーが同盟を結んでギルドに反旗を翻す方向に動くと思われます」
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2014/07/23(水) 23:41:54.87ID:y71xe/yJ
ダリウスがエグザイルを発見するまで その10

「バシアヌスは良い意味でも悪い意味でも変革家だ。錬金術師気質と言うか何というか…チェスに例えると決められたルールを良しとせずにチェス盤を広げたり駒の動きを変えたり、
既存のルールを破壊する傾向がある。この世界が狭くなければ才能を生かせただろうが世界の安定を目的とするギルドの精神とは相性が悪い。
レシウスよ。マリウスの娘はアナトレーで暮らしているそうだが、やはりバシアヌスの気質を受け継いでいるのか?」
「ユーリスとはたまに顔を合わせる位だが、俺の見た限りでは普通の子供だ。同い年の少年と一緒にヴァンシップを乗り回している位でギルドに対して反抗的とかそんな印象は無いな。
強いて言うならギルド人の血を引いてるのを気にしてるのと、ヴァンシップに乗る時はじゃじゃ馬になる位か」
「マエストロ。マリウス殿は御息女をプリンシパルにするつもりは無いと以前から主張していますが」
「バシアヌスにその気が無くてもいざとなったら人質として使う方法はある。誕生週にギルド城に召喚してしまえばギルドに反抗する事も出来なくなる。
あくまでバシアヌスがギルドに反旗を翻した時の保険だ。グラフ、それまでは泳がせておけ」
「承知しましたマエストロ。それでデュシスの方は如何なさいますか?従来通りにエラクレアに一任しても、エラクレア家に移民カプセルの建造を指揮させるのは畑違いかと思われますが」
「古来からデュシスはエラクレアが担当すると決まっておる。今更その伝統を覆した所でまた昔のように4大家系同士の権力抗争の切っ掛けになるだろう。
理想を言えばロケット推進の移民カプセルはバシアヌスが担当するのが道理だが、バシアヌスがアナトレーを受け持ってる以上仕方あるまい。
それに地上人にクラウディアの技術を渡すよりはクラウディアを使わないロケットの方がまだマシだ。完成した移民カプセルを飛ばしてテストすれば何度か失敗してもいずれまともに飛ばせるようになるだろう」
「試験飛行をする余裕がデュシスにあるのか?アナトレーのヴァンシップと違って移民カプセルは1隻製造するのにも時間も資源も手間もかかってるそうじゃないか。
ギルド戦艦よりも巨大な物体を飛ばすのは我々ギルドでも苦労するぞ」
「伝説にあるエグザイルでもあれば移民は簡単に出来るのだがな。だが伝説は伝説。そんな神がかり的な物に頼るよりも現実に存在する材料を使って工夫するしかあるまい」
「その伝説のエグザイルの探索を命じたのはお前だぞジェームス」
「ギルドのプリンシパル達の意見をまとめた結果だ。大体地上人がせっつくから『ギルドとしてはエグザイルが起動できる状態になったら神話に従って地上人の移民に協力する』等と言わねばならなくなったのだ。
何時の時代の誰がグランドストリームにエグザイルが存在すると言う話をでっち上げたのか知らんが…幾らなんでもギルド城に匹敵する物体がグランドストリームに存在したら存在したら我々に見つけられない訳がなかろう!」
「マエストロ、興奮なさいますと体に毒です」
「ほっとけ!どうせ老い先短いこの体だ。多少の毒等誤差の範囲だ。伝説が本当ならば儂の家系にエグザイルの巫女が産まれてミュステリオンを聞かせればエグザイルが動くらしいが、
儂の祖母の時代や姉が生きている時にミュステリオン聞かせたが、聖コントロールルームに何の反応も出なかった。もし儂に女の子の孫ができて同じ事をしても何も起きないだろう。
エグザイルもエグザイルの巫女も所詮は伝説だ。得体の知れない物に頼るよりも、移民カプセルの建造や過酷な環境でも生存できる遺伝子を地上人に注入した方が手っ取り早い」
「人間追い詰められるて切羽詰ると神がかり的な物に頼ろうとする傾向があるが、お前はまだ大丈夫なようだな」
「神なぞ存在しない事は我々が一番良く知っておる。地上人は我々を神であるかのように敬っていた時代があったが、天気すら操作できない今となってはギルドの栄光も過去の物だ」
「エグザイルと言えばダリウス殿がデュシスでエグザイルの探索をすると先程の通信で申しておりました」
「あいつはまだ夢を追いかけているのか…。子供が2人もいる歳になったのにをいつまで道楽趣味を続けるのやら」
「エラクレア家は気象制御装置の管理責任者として以前からプレッシャーを受けていました。ダリウス殿の考古学趣味も幼少期に責任を感じて書庫を調べ始めた事が切っ掛けだと思われます」
0044創る名無しに見る名無し
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2014/07/23(水) 23:54:14.39ID:y71xe/yJ
ダリウスがエグザイルを発見するまで その11

「修理方法を探している内に目的と手段がすり替わって、資料を探す事を楽しいと感じるようになったのだろう。三つ子の魂百までとは良く言った物だ。あの性格は思考改造しない限りは治らんぞ」
「ダリウス殿やエラクレア家はギルドに対して反抗しようとする動きは無いので洗脳する必要は低いかと思われます」
「分かってる。ダリウスの趣味はマリウスのやってる事に比べたら人畜無害だ。無論ギルドにとって益になる事でもないがな」
「ジェームス、余所見をしてるとあらぬ方向から攻撃を受けるぞ。それ、チェックメイトだ」
「む、いつの間に?」
「投了でございますな」
「さて、チェスマシーンの動作テストも完了したし、ダリウスも戻っているようだから少し顔を見て来るとしよう」
「うむ、ではまた後でな」


・ギルド城:戦艦ドック
「到着しましたダリウス様。あちらにダゴベール卿の船が停泊しているので、ダゴベール卿もこちらに戻っていると思われます」
「ほう、レシウス殿が帰ってきているのか?折角だからアナトレーの話でも聞きに行くか」
「お父様、シカーダ、お帰りなさい!お仕事の方は上手く行ってる?」
「おおデルフィーネじゃないか。私が帰って来るのを待っていたのか」
「マエストロからお父様が帰って来ると聞いて迎えに来たの。あ、そうだ。マエストロはダゴベールの当主様とチェスしているから、会うのはもう少し待ってからが良いと思う」
「今会いに行くのは遠慮しといた方が良いか…ならばレシウス殿がまた地上に行く前に潜水艇を作っておくか」
「潜水艇?」
「うむ、デュシス人からデュシスの湖底にエグザイルが眠っていると言う話を聞いてな。その湖に潜る為の船を作って湖底を調べる予定だ。完成次第またデュシスに行き調査をするつもりだ」
「えー、また地上に降りるの?」
「うむ、デュシスが調査を認めてくれたのでな。夏場に調査するよりは湖を利用する人の少ない冬場が良い。何、本格的な調査ではなくあくまでちょっとした調査だ。すぐに終わるさ。
シカーダ、手頃なクラウディア船を潜水仕様に改造するぞ。オドラデクを積み込めるようにするだけで良い」
「デュシスの湖は底無しと言われています。クラウディアの力場で守られているとは言え、船体にかなりの水圧がかかると思われます。本格的に潜るのであればバシアヌスの協力が必要かと思いますが宜しいので?」
「本格的な作業はクラウディア船がどの位の深度まで潜れるかデータを取ってからだ。まずは簡単な実験から始めよう。バシアヌスの手を借りるかどうかはその時に判断すれば良い」
「畏まりました。それでは有線で遠隔操作できるようにオドラデクを調整します」

カンカンカンギーギュインガンガンガン
シカーダがクラウディア船の改造をしていると、ジェームスとの話が終わったレシウスが興味を持った目で船体を眺めていた。

「む、何だこのユニットは?改造しているのはシカーダか?」
「ダゴベール卿。マエストロとの会談は終わったのですか?」
「ああ、久し振りに長丁場のチェスになってな。随分と時間がかかった。俺がジェームスとチェスをしている間にダリウスが帰ってきたようだが…デュシスで何かあったのか?」
「はい、デュシスの湖にエグザイルが眠っているとの話を聞きまして、ダリウス様の命令で湖底探査用にクラウディア船を改造している所です」
「エグザイルか…シカーダ、お前はエグザイルの存在を信じているのか?」
「信じる信じないの判断はプリンシパルやマエストロに任せています。私はただ与えられた仕事を実行するのみです。それが培養器で生まれた我々純正ギルド人の勤めですから」
「そうか、お前は真面目だな」
「ダゴベール卿やマエストロはエグザイルを信じておられるのですか?」
「子供の時はな。だが成長していくと段々と現実が分かるようになってくる。夢を見ないようになったと言えば良いのか…神がかり的な物を信じるよりも手元にある自分の技術の方が確実だと確信するようになったよ。
ま、エグザイルが存在するのであれば死ぬ前に一度は見てみたい物だがな」
「デュシスでの聞き取り調査ではエグザイルはこの世とあの世を結ぶ船とも解釈できる話を聞きましたが…」
0045創る名無しに見る名無し
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2014/07/24(木) 00:05:17.92ID:C/tijKmw
ダリウスがエグザイルを発見するまで その12

「グランドストリームに実物が存在しない以上そう考えるのが妥当な所だろう。だとしたら俺もジェームスも臨終の際にエグザイルに乗る事になるがな。
ギルドでの仕事を真面目にしていれば清浄な地に行き、仕事を怠ければ災厄の地に落とされ罪が許されるまで地獄を味わうと子供の時にギルド神官に怖い話を聞かされたが、
若い頃は魂の存在や天国地獄等と馬鹿にして信じておらんかったが、やはり年を取ると少しばかりその事が頭を過るようになる」
「ダゴベール卿の寿命はまだ先でしょう」
「肉体や頭脳をオドラデクに移植でもできれば500年は動けるだろうが、俺は権力抗争やってた時代みたいに不老不死を追求するつもりはない。
エラクレアの歴代当主のように死を直視し受け入れるような度胸は俺には無いが、やはり悔いを残したまま死ぬのはちょっとな…。
気象制御装置の問題を解決しないままあの世に行くと言うのは癪に障る。そうだ、あの世と言えばさっきデュシスの湖を調べると言っとったな。
ダリウスは自分であの世に繋がる湖に潜るつもりか?」
「はい、恐らく私も同行する事になると思いますが、それが何か?」
「やれやれ、エラクレアは相変わらず命知らずだな。あの世に繋がる湖にエグザイルを調査しに行くとは…地上人にもグランドストリームを飛ぼうとする命知らずがいるが、ダリウスと良い勝負だ」
「おお、レシウス殿ではないですか。今私の名を呼んでいたようですが?」
「噂をすれば何とやらか。ダリウス、お前はデュシスの湖に潜ると言う話だが、地上はグランドストリームと勝手が違うぞ。デュシスの状況はアナトレーとはまた違うだろうが、あの世に繋がると言う伝説のある湖だ。
迷信だろうとは思うが何かしらの危険はあると覚悟しといた方が良い。下らぬ迷信に振り回されて死んだら家族が悲しむぞ」
「聞いたかシカーダ?!ダゴベールの当主がエグザイル探索をする私達の事を心配してくれているぞ!これは是非とも探索を成功させねばならんな!」
「ダリウス様、ダゴベール卿は迷信で身を危険に晒す事は無いと仰られている訳であって、エグザイルの探索に期待をしている訳では…」
「そうと決まったらすぐに出発だシカーダ!指示通りの改造は済んでるな?クラウディア圧良ーし、バラスト良ーし、オドラデクのリモコン操作良ーし。
準備万端出発進行だ!どうしたシカーダ、何を溜息ついてる?レシウス殿も」
「シカーダ…お前さんも大変だな」
「いえ、これも仕事ですので…。いつもの事なのでもう慣れました」
「それではレシウス殿、また後ほど。行くぞシカーダ、超特急でデュシスの湖に直行だ!まずはこの船体が着水の衝撃に耐えられるかテストしよう!クラウディア圧カット!」
「…承知しましたダリウス様。ダゴベール卿、もし生きて帰れなかったら私の弟に名前を付けて私のような人生を歩むなと伝えておいてやって下さい」
「縁起でもない事を…生きて帰って自分で伝える事だな」
「何をグズグズしているシカーダ。デュシスに向かって降下だ!」
「はっ、では航路設定、デュシス艦隊と衝突する可能性がありますのでレインバードの道は通らずに暴風域を通ります。衝撃が予想されますので何かにお掴まり下さい」
「操縦桿の操作は任せろー!降下開始ー!」

降下と言うよりは落下の軌道を描いて、ダリウスの潜水艇はグランドストリームをデュシスに向かって飛んで行った。
0046創る名無しに見る名無し
垢版 |
2014/07/26(土) 21:01:42.84ID:lKT03Hkw
ダリウスがエグザイルを発見するまで その13

・デュシスの湖
ドッパーン
1時間程かけてデュシスの湖に到着した潜水艇はそのまま湖底へと向かって潜航を開始する。

「うむ、無事に湖に着水できたようだな。やはりクラウディア船だけならギルド戦艦を飛ばすよりも早く飛べるな」
「ダリウス様、これは着水とは言わずに墜落と言うのでは?それとグランドストリームをクラウディア機関を動かさずに飛ばすのはやはり危険です。
墜落の衝撃で船体もダメージを受けたでしょうし無事とは言えないのでは…」
「なあに、科学の発展に犠牲は付き物だ。科学技術を伝承する我々ギルドが犠牲を恐れてどうする?我がエラクレア家だって先祖代々の医学を伝える為にどれだけ犠牲を払ってきたか…」
「その犠牲はエラクレア家でなく切り刻まれる被験者の方が多いと思うのですが…。それと我々は物理学に関してはバシアヌスには到底及びません。
いくら下が水でも高速で水面に衝突すれば水はコンクリートに匹敵する固さを持つと言われています。クラウディア船が頑丈とは言ってもこのような無茶は控えた方が宜しいかと思いますが」
「うーむ、言われてみればそうかも知れんなあ。人間も水に飛び込む時に角度を間違えれば全身を打ち付ける。クラウディア船も角度を間違えれば衝撃で船体に重大なダメージを受けるかも知れない…。
そうだ、飛び込む時の要領で船体の先に衝角を付けて飛び込む時の衝撃を抑えるのはどうだろう?潜水艇を改修する時のアイディアとして今の内に記しておこう」
「飛び込むと言う方針は変えないのですかダリウス様…。それに衝角を付けて水面に切り込んだとしてもクラウディアユニットの出っ張りがあるので衝撃を受け流し切れるとは思えません」
「ならばクラウディア管の出っ張りを無くす事で水の抵抗を無くそう。うむ、これで少しはスマートな形になったな」

ダリウスの手元のメモ書きにはクラウディア管が楕円形になり衝角の付いたクラウディア船の絵が描かれてた。

「他に何か改善案は無いかシカーダ。思いつく事があれば何でも言ってくれ。まだ湖底に付くには時間がかかりそうだし、船体も水の圧力に耐えていられるから問題ない」
「改善案ですか。ならば船体下部に垂直安定板とバランスを安定させるバランサーが必要かと思われます。本来ならブリッジ部分が船体下部についてる事でバランスを保っていたのですが、
ブリッジを船体上部に移動しましたのでバランスが悪くなっています。それと船体をもっと重くした方が良いかと」
「船体を重く?何故だシカーダ」
「高度計、いやこの場合は深度計ですか。先程から深度計を見ると潜航するスピードが落ちてきてるのが分かります。
クラウディア船は元々軽量化されているので、水に潜る為にクラウディア機関を動かさなくても軽すぎる為に水中で沈み難くなり、いずれは水中で船体の重さと水の重さが吊り合って潜れなくなります。
湖底を目指すのであれば船体を重くして…いえ、どうせなら水圧に耐えられるだけの装甲を沢山追加しましょう。
そうすれば湖底の水圧に耐えつつ潜航の為の重さも稼げます。浮上する時はクラウディアを活性化してそのままグランドストリームまで戻れば良いかと」
「成程、重さが足りなくなるとは想定していなかった。やはり経験に勝る学習は無いな。これ以上潜れないのであれば水圧の試験も出来ないか。仕方ない、ここから下はオドラデクを有線操作で探索するとしよう。
シカーダ、オドラデクを下すので操作は任せる」
「畏まりました。オドラデク下ろします」
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