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【シェアード】学園を創りませんか? 5時限目
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0001創る名無しに見る名無し
垢版 |
2012/12/29(土) 02:18:33.42ID:8gP7kGRq
創作発表板に生まれた少し変わった学校、私立仁科学園。
このスレは、そんな仁科学園の世界観をSSや設定だけに留まらず、様々な表現で盛り上げ、また創っていくスレです。
貴方が創った生徒が学校の一員として誰かのSSに登場したり、気に入った生徒を自分のSSに参加させる事が出来ます。
部活動や委員会を設置するのもいいでしょう。細かい設定として校則を考えてみたり、制服を描いてみたりなどはいかがでしょうか。

また、体育祭や文化祭などの年間行事及び、生徒達の絆を深めるイベントや
仁科学園以外の学校や、生徒たちのバイト生活等世界観は仁科学園の外にまで広がります!
皆さんの想像力で、仁科学園の世界観を幅ひろーく構築していきましょう!

このスレはシェアードスレ(世界観を共有する)です。
ちょっとでも興味をもったらまとめWlikiをみて下さい。きっと幸せになれるはずです!

まとめWiki
http://www15.atwiki.jp/nisina/

避難所
http://jbbs.livedoor.jp/otaku/12930/




過去スレ

【シェアード】学園を創りませんか? 4時限目
http://engawa.2ch.net/test/read.cgi/mitemite/1281230460/

学園を創りませんか? 3時限目
http://namidame.2ch.net/test/read.cgi/mitemite/1267344255/

学校を創りませんか?part2
http://namidame.2ch.net/test/read.cgi/mitemite/1248533055/

学校を創りませんか 
http://namidame.2ch.net/test/read.cgi/mitemite/1248087645/
0047先輩!わたし、妬いてますから!
垢版 |
2013/08/17(土) NY:AN:NY.ANID:fRzUBDQW
 「先輩!水着です!夏です!え?夏なんて残すところもあと二週間?まだ二週間もあるんですよ!
  ほら!見て下さい!わたし、閑花ちゃんの華麗なるビキニ姿を!黄色いフリルが胸元をキュートに演出してます!」

 先輩こと先崎俊輔は困惑した。後輩こと後鬼閑花のビキニ姿が見えないのだ。
 それもそのはず、閑花はきっちりと制服を身につけていたからだ。ただ、ブラウスの隙間からちらほらと見える
黄色い布切れが先崎を大いに不安の泥海へと陥れた。なのにも関わらず閑花は紺碧の海の輝きで先崎の腕に絡み付く。
 ただでさえ暑い夏、目に入るものがゆらゆらと見える。それに加えて閑花の元気だ。むしろ……いらない。

 「先輩!見えないんですか?おかしいですねー。はっ!分かりました!わたし、制服着てました!
  だからですね!なるほどなるほど!じゃあ、おいそれと制服を脱ぐような閑花ちゃんではありません!
  ここは勝負です!日本の夏は日本の伝統文化に触れましょう!野球拳です!ベースボール★パンチ!」
 「俺に脱げとでも?」
 「無問題!先輩に優しいルールです!買っても負けても閑花ちゃんが脱衣……、いわせんな!ばか!わたしの召し物を……」
0048先輩!わたし妬いてますから!
垢版 |
2013/08/17(土) NY:AN:NY.ANID:fRzUBDQW
 「野球拳の意味無いな、それ。俺はしないけど!」
 「先輩!お肉は腐りかけ、閑花ちゃんは脱ぎかけが美味しいんですよ!白いブラウスだけの閑花ちゃん、
脚の付け根からちらちらと見え隠れする黄色い水着。恥じらう閑花ちゃんに堪えられない先輩はぎゅっと閑花ち……」

 きっと灼熱で頭がおかしくなってしまったのだろう。そう考えるしかない先崎は
閑花を置いて一人涼しい図書館へと消えた。閑花は仔犬のように先崎のあとをちこまかと追った。

 「閑花ちゃんの水着は閑花ちゃんしか似合わないと……思うんです」
 「わおー?意外にも似合ますねっ」

 聞き覚えのある鳴き声。尻尾ぶんぶん、耳ぱたぱた。演劇部の久遠荵だ。しかし、似合うと評したのは
残念ながらも閑花の水着姿ではなかった。荵の前で恥じらう演劇部・迫文彦だった。
 何故に後悔?荵の先輩である迫は後悔の念にかられながら学園の女子制服を着ていたのだ。 俯きがちに両手を握り締める眼鏡っ娘は太ももに涼しいものを感じた。冷や汗ではなく、無防備なるスカートからの空気だった。
 教えられなければ男子だとはぱっと見で分からないクオリティ。間違っても演劇部を敵にまわしてはならない。
0049先輩!わたし妬いてますから!
垢版 |
2013/08/17(土) NY:AN:NY.ANID:fRzUBDQW
 「迫先輩、男らしいですっ!シェパードみたいなハートですっ」
 「スカート姿な俺にそんなことを言ってもな、久遠。確かに罰ゲームだからしかたないが」

 軽い気持ちで迫と荵は勝負した。どんなことでも引き受けると。

 「『女装』するって言ったから、男らしく女装したっ!迫先輩、かっちぶー!」
 「俺は『除草』って言ったんだけどな……」

 ふわりと風がすり抜けると荵と迫が身に纏うチェックのスカートが同時に揺れる。慣れないリボンを
ちらちらと触る迫に荵は人差し指でちょっかいを出した。迫が付けるセミロングのウィッグからは
ほんのりと無機質な香りがしていた。元々、小柄で細い方の迫にとってはある意味、女装して正解だったのかもしれない。

 「あかねちゃんにも見せたかったなっ」

 迫は眼鏡を曇らせて大いに断った。だが、自らを捨てる神あれば拾う愚民あり。閑花がじっと迫を見ていたのだ。
 ゆらゆらと揺れるカゲロウサンシャワー。閑花の目にはきっととびっきりの美少女に見えたかどうかはさておき。

 「し、閑花ちゃんの方がぜったいかわいいです!」

 時折見せる男子の仕種に荵は人差し指で突き、時折見せる女装の香りに閑花は妬いた。
0050先輩!わたし妬いてますから!
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2013/08/17(土) NY:AN:NY.ANID:fRzUBDQW
 「男子になんか負けたくないです!ぜったい、ぜったい閑花ちゃんの方がかわいいです!」 「がんばれ!女の子!わおー!」

 他人事のように吠える荵はさておき、後輩女子二人に見つめられる健全なる男子高校生。
 恥ずかしいってレベルじゃない。これは恥だ!せめて卒業する際に
「わが高校生活に一片の悔い無し!」だなんて叫びたかったのに、そんな夢も潰えた。
 それが本当に迫の夢かどうかはさておき、迫の理性もエンプティ。ほっとけば走り出しそうな勢いだ。

 「久遠!そろそろ満足しただろ?」
 「わたし、イヌだから分かりません!」

 荵は尻尾をぶんぶんと振るので、迫は隣の少女に問い掛けた。

 「久遠の友人だろ?久遠をなんとかしてくれ」
 「わたし、あなたに妬いてますから。わたしの水着姿の方がぜったい……」

 いや、今や敵は迫だ。迫に閑花ちゃんのはじける肢体を見せ付けてやれ!閑花は叫んだ。

 「ベースボール★パンチやりましょう!」
 「俺に脱げとでも?ってか、着替えさせてくれないか」
 「無問題!先輩に優しいルールです!勝っても負けても閑花ちゃんが脱衣……、いわせんな!ばか!」
0051創る名無しに見る名無し
垢版 |
2013/08/17(土) NY:AN:NY.ANID:fRzUBDQW
以上。
さすが迫先輩、「さすさこ」です!
0052創る名無しに見る名無し
垢版 |
2013/09/12(木) 18:02:56.67ID:iVRGOVVD
先輩!今日は12日の木曜日ですね!ワクワクしますね!
0055創る名無しに見る名無し
垢版 |
2013/09/13(金) 22:10:07.47ID:h5ER5B+P
「わおーん!13人の金曜日!13匹の怒れる仔犬だよっ」
「12人じゃないの?」
0057創る名無しに見る名無し
垢版 |
2013/09/14(土) 20:36:33.22ID:sjqckk46
ふと、まとめWiki見てて思ったけど。
上原梢ちゃん、部活入ってるみたいだけど部活は何だろう。
個人的にはバレー部とかやってそうに思う。ちっこい体でコートを跳ね回る姿想像したら堪らん。
0058創る名無しに見る名無し
垢版 |
2013/09/15(日) 02:09:42.07ID:JHnLfDaq
何故か梢ちゃんが球と化してレシーブトスアタックされる姿が見えた
疲れているようだ。
0060創る名無しに見る名無し
垢版 |
2013/09/15(日) 11:51:28.41ID:eHb501O0
梢&葱&亜子&千鶴&和穂&迫(男の娘化)

VS

黒鉄懐

変則6人制バレー。試合開始!
0062創る名無しに見る名無し
垢版 |
2013/09/15(日) 17:07:51.65ID:FOG+ku0r
亜子がいるんじゃ勝てるイメージがまったく浮かばないw
葱あたりが拾いまくりそうだし
0063創る名無しに見る名無し
垢版 |
2013/09/23(月) 19:15:55.48ID:prJp4vMa
>>60-62
ttp://dl1.getuploader.com/g/sousaku_2/587/volley.jpg

扉絵は真田アリスだよ。
0064創る名無しに見る名無し
垢版 |
2013/09/23(月) 19:37:47.58ID:NEvqqiMW
何を嗅いでるwww
0065創る名無しに見る名無し
垢版 |
2013/09/29(日) 16:12:25.10ID:IkeMz2A4
土佐っ娘・浅野士乃ちゃんは一人暮らしなのかな。
いや、一人暮らしであって欲しい
0066創る名無しに見る名無し
垢版 |
2013/10/02(水) 21:38:53.87ID:99fWC/ph
士乃「葎ちゃん!物凄いものを作ったがよね!」

ttp://dl6.getuploader.com/g/sousaku_2/597/riccyan.jpg
0067創る名無しに見る名無し
垢版 |
2013/10/02(水) 21:55:01.86ID:/LRVa8nH
かわいいw乙です
0068創る名無しに見る名無し
垢版 |
2013/10/03(木) 03:53:49.39ID:wzs4p9f1
どこをアップにしておるwww
0070創る名無しに見る名無し
垢版 |
2013/10/21(月) 21:30:29.56ID:MXrwNJN9
わおーん!お題下さい!
0072創る名無しに見る名無し
垢版 |
2013/10/21(月) 22:43:22.55ID:MXrwNJN9
高等部3年
•神柚鈴絵
•真田アリス.ウェルチ姉妹
•霧崎

高等部2年
•秋月京
•天月音菜
•近森ととろ

「お姉さん」っぽい上級生あげてみた。
粒揃いですやん。
0075わんこ ◆TC02kfS2Q2
垢版 |
2013/11/06(水) 18:21:11.31ID:isn+oUF8
鈴絵先輩と亜子ちゃんお借りします。

おまけ
ttp://dl6.getuploader.com/g/sousaku_2/627/ako02.jpg
0076水玉ぱんつ先輩 ◆TC02kfS2Q2
垢版 |
2013/11/06(水) 18:21:55.89ID:isn+oUF8
 テンポよく神社の石段駆け登る足音に、リズムよく息切れする少女の胸。
 小さな体に似合わずたゆらたゆらと弾む豊かな胸。後ろで縛った金色の髪が上下に揺れる。
 一段一段登るたびに自分の力になってゆくと、黒鉄亜子はスニーカーでぎゅっと石段を踏み付けた。

 制服姿の亜子はひらりとスカートひらめかせ、両腕をぶんと振って、トレーニングに身を費やしていた。この神社の石段を
何度も何度も往復。前時代的な鍛練だが、基本のキは侮れない。金色の髪が青空にくっきりと浮かぶ、空気の澄んだ夕暮れ前。
 学校の近くの丘に鎮座する神にこの姿を見て欲しい……って、わけではないが、この柚鈴天神社に来ると何故か心が落ち着くのだ。
 振り返れば遠くに校舎がぽつんと見える爽快感。それもまた、走り込みの途中の清涼剤か。

 ふらふらになりながらも、亜子の脚はまだまだ力強く、表情も崩れることはなかった。
 空手で培われた亜子の精神力で脚に溜まった乳酸など蹴散らしてやる。巧みな技で、抜きん出た実力で。

 そう。亜子は空手の有段者だ。齢中三にして、この実力者だ。だが、それにあぐらをかいては真の有段者ではないと亜子は言う。
こうして日々鍛練を重ね、煩悩を払いのけた者だけに許される称号なのだ。迷いなど亜子にはいらぬ。

 石段の頂上が見えてきた。灰色の石に苔の視界から、空の色が広がる瞬間が亜子を迎えていた。

 周りの木々は緑鮮やか。
 胸一杯に吸い込む空気。
 足元すり抜ける風。

 そして、真正面に飛び込む水玉模様。

 「!!」

 真っ白で柔らかな膨らみに散りばめられた水色の玉。亜子の目は同化するように水玉のように丸くなった。
 見てはいけない物を見た。
 いや、認めてはならない物を見た。
 転んでいるのは年上の女性。
 高等部のお姉さんの……おパンツなと。

 「あっ。ごめんなさいね」

 水玉模様の持ち主は石畳に伏した格好からお姉さん座りに切り替わり、柔らかなる物腰で水玉模様をスカートで隠した。

 「急いでたら、石段で躓きましてね」

 お姉さんは澄ました顔に戻って、カーディガンの砂埃を払っていた。立ち上がって初めて気付くグラマラスな体つきが亜子の目を奪う。
それにあわせておっとり感。年上に向かって失礼かもしれないが、亜子の感じた印象は『かわいい』だ。恥ずかしそうな顔を僅かに残して
制服姿のお姉さんは石畳の奥の社殿の方へと姿を消した。
 さて、こちらはまだまだ思春期の扉を潜ったばかりの亜子だ。対応しきれずに心臓は激しく鳴る。石段を駆け登ったことに合わせ、
自分とは違う世界の住人と鉢合わせをしたことに……。

 「みずたま?」

 瞬きしても無駄無駄。
 目を擦っても無意味。
 いくら『水玉ぱんつ』が焼き付いた瞼を振り払おうとも、のれんに釘、豆腐に腕押し。つまり、糠にかすがいだ。

 静かだった木々にカラスの声がこだまする。
0077水玉ぱんつ先輩 ◆TC02kfS2Q2
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2013/11/06(水) 18:22:33.50ID:isn+oUF8
     #

 石段の頂に置いておいた亜子のスポーツバッグから、ドリンクを取り出して一口飲む。
 喉を潤すドリンクがいつも以上に甘い。

 亜子はトレーニングをおしまいにして鳥居を潜る。日が傾き始め、茜色に鎮守の森が染まっていた。赤と青のグラデーションが
一目で味わえる逢魔ヶ時。人の少ないこの時間が亜子は気に入っていた。やけにスポーツバッグが重く感じる。トレーニングの後だから。
しかし、いつも以上に重い。バッグからぶら下げたボクシンググローブが亜子のスカートをぶらぶらとなぞる。

 (そうだ。絵馬だ)

 今日、ここに来た目的は絵馬を奉納するためでもあった。
 亜子の書いた絵馬は一目、まさか空手の実力者とは想像できないような彩りで、よく読めば、なるほど流石空手の実力者だと容易に
想像できる内容だった。バッグから絵馬をこっそりと出し、絵馬掛の前に立ち、人目を気にしながら絵馬を結ぶ。ウチの冷蔵庫から
独り占めしていたプリンをこっそり抜き出すような緊張感だ。ただ、お願い事を叶える事はカルメラほど甘くない。
 こうしてみるといろんな人が柚鈴天神社にお願い事をしているもんだと、亜子は絵馬をがらりと手でなぞってみた。

 奉納を終えた亜子に声が掛かる。
 ついさっき、聞いたような声だ。

 振り向いて目にした人物は……さっきまで石畳で転んでいた年上のお姉さんが白い装束、紅の袴に身を包んでいるではないか。
 そうだ。水玉ぱんつのお姉さんは制服姿から巫女装束に変身していた。お姉さんは、この柚鈴天神社の巫女だ。

 「あっ。さっきの……石段を駆け上ってた子だよね?」
 「さっきはごめんなさい!お姉さん!わたし……見ちゃダメですよね!見てません!見てません!」
 「え?何、何?」

 他人の絵馬をまじまじと見つめてるようでごめんなさい。
 そんなことはしていないんです!
 涙目になった亜子は顔を夕焼けのように赤くした。
 慌てて亜子はバッグをぐるりと廻して、ぶら下げたボクシンググローブを背後に隠した。何故だかは上手く説明できない。
声をかけてきたのが『水玉ぱんつ』のお姉さんだったからなのか。お姉さんから見れば、色恋に浮足立つような娘に見えるんだろうな。
でも、そんな娘が格闘技なんかやっちゃって……。わたし、強くなりたいです。なんてお願いしたら、お姉さん笑いますよね?

 「気にしちゃう?」

 はい。
 水玉ぱんつ!を。

 「大丈夫。あなたのお願いを見たりしないから」

 わなわなと震える足が存在する。
 込みあがる熱。
 亜子に秘められた感情。

 「ありがとうございますっ」

 スポーツバッグからグローブをぶんぶんと揺らしながら、亜子はすっかり日の落ちた街へと駆けていった。
 その姿、蜂のように舞い、蝶のように刺す。

 お姉さん……神柚鈴絵は、明日もきっと晴れると思いつつ、夜の帳に溶け込んだ。


   おしまい。
0078わんこ ◆TC02kfS2Q2
垢版 |
2013/11/06(水) 18:23:31.63ID:isn+oUF8
お姉さま軍団(のうちの一人だけど)でした。
わおー!おしまい!
0080創る名無しに見る名無し
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2013/11/07(木) 01:05:00.38ID:Kti/2O8Q
そもそも空手はボクシンググローブ使わない。新空手なの?
0082わんこ ◆TC02kfS2Q2
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2013/12/29(日) 10:58:12.03ID:zmnu3WsY
亜子ちゃんがかわいすぎる。
投下します。
0083『あまおう』 ◆TC02kfS2Q2
垢版 |
2013/12/29(日) 11:02:56.61ID:zmnu3WsY
 兄とボロクソなケンカをした亜子は、家にいるのが窮屈になり町の喫茶店に逃げ込んだ。
 些細すぎて覚えていない原因に亜子は苛立ちを隠せず、お冷やの氷を人差し指でぐるぐると掻き回す。
 ケンカの結果は1ラウンド13秒右ストレートで亜子のKO勝ち。僅かな時間で完膚なきまでにたたきのめされた兄は、
大きな体を妹のベッドに沈めていた。

 亜子は空手を習っている。
 中学生とは言え、かなりの実力者だ。
 ただ、空手が強くなればなるほど、女子としての力、すなわちパワーへの反発も否定すればウソとなる。

 「強いね」よりも「かわいいね」が欲しい。

 兄といるだけで、知らず知らずに自分の思い通りに物事が進まない苛立ち。
 そんな気分さえも忘れさせてくれる喫茶店が気に入っていた。
 なにより、店員がかわいい。と、亜子は自分の物のように愛でる。

 亜子は喫茶店の店員をちらと見た。大正浪漫溢れる袴姿に白いエプロン。編み上げブーツが足元を引き締めて、
黒髪のツインテールが若々しさを印象付ける。歳は二十歳ぐらいか、ネコ目で明かりを追いながら給仕は暇を持て余していた。
 この喫茶店はマスターの趣味に彩られている。明かりに、窓に、椅子、テーブル、食器、そして給仕に至るまでタイムスリップに
惑わされる。そんな喫茶店に亜子は心を落ち着かせながら、そして給仕に憧れを抱きながら注文の品を待つ。

 「お待たせ致しました。シロノ・ワールです」

 温かいデニッシュパンに冷たいアイスを乗せた『シロノ・ワール』。
 マスターがどこぞの喫茶店に感化されて真似た一品だ。わざと区切りをずらしている所など憎らしい。
 白と黒との対比が見た目を楽しませる。亜子は手を合わせるとゆっくりとシロップをシロノ・ワールにかけようと……。

 「あっ」

 アイスの上にイチゴが鎮座。赤白黒の3連単。オッズ三桁の万馬券。

 「『あまおう』です。今朝、九州から届きました」

 亜子には予期せぬ贈り物だった。給仕の娘は目を合わせることを拒んでいた。
 あまくて、まるくて、おおきてく。

 イチゴの概念を振り払う大振りなイチゴが存在感をアピールする。

 「黒鉄くんの妹さんですよね?この間はありがとうございました」
 「は、はい?わたしを知っているんですか?兄が何かを」
 「この間、ここにいらしたときにしきりに妹さんのことを話してました。テーブルに乗りきれないほどの
  ケーキやお菓子を並べているお客さんなんて、忘れようと思っても忘れられませんし」

 俺の胃袋は宇宙だ?何、言ってるんだ。俺が宇宙だ。それに加え、金髪ロン毛の天突くほどの身の丈だ。
 世界中の茗荷を食べ尽くしても、兄のことだけは記憶に残るはずだ。

 「お冷やの氷を人差し指でぐるぐる掻き回してたんです。『妹がよくやるから俺にも染み付いたんだ』と、
  スマホで動画を見せてくれました」

 亜子は兄をまた右ストレートで打ちのめしたくなった。
 いや、右ストレートだけじゃ足りない。畳を返すぐらいに再起不能に……。

 「『あまおう』はお兄さんから教えて頂いたんです」
 「マジで?」
 「妹さんが初めてですね、このお店で頂くのは」

 黒鉄の城に真っ赤なイチゴ。アンバランスさに亜子は頬を赤らめた。イチゴの味に記憶が逃げる。
 第2ラウンドのゴングは、しばらく鳴らさないでおこう。

    おしまい。
0084わんこ ◆TC02kfS2Q2
垢版 |
2013/12/29(日) 11:20:40.44ID:zmnu3WsY
また食べたい、シロ・ノワール。

ささもり堂のあまもっちゃん。

ttp://dl1.getuploader.com/g/sousaku_2/672/amamoto_shiro_noir.jpg

投下おわり。
0085創る名無しに見る名無し
垢版 |
2013/12/29(日) 11:59:37.51ID:0qnmqcOx
コナミ新長田店のレイプ魔暴行歴あり中井貴之店長だけは、やめておいたほうがいい。

6年以上も居座っている。地元の住民からも、嫌われまわっている。 店長がかわれば、必ず行く。
0087創る名無しに見る名無し
垢版 |
2014/01/02(木) 20:43:20.22ID:nZoJxtEI
遅ればせながら、あけおめですっ。
右から…久遠荵、近森ととろ、黒咲あかね、後輩ちゃん、黒鉄亜子。ん…天月音菜?

http://s-up.info/view/201201/142796.jpg
0089創る名無しに見る名無し
垢版 |
2014/01/09(木) 17:51:44.18ID:9O2irJ11
お題下さい
0090創る名無しに見る名無し
垢版 |
2014/01/09(木) 19:27:45.09ID:8Cwkv2iU
では早速お題です↓

学校に突如出現した魔壁によって世界と隔絶されてしまう生徒達が魔壁を破壊し生還するまでの物語。

さて
0091わんこ ◆TC02kfS2Q2
垢版 |
2014/01/22(水) 19:57:46.35ID:0KUKYqBz
.>>90 
書きました。

       『wall』


 「どうあがいても、無駄だよ」

 無駄だと分かると、嫌でも意地を張りたくなる。

 薄い手で金剛石にも似た壁を叩いている黒咲あかねは、手を止めようとする声も気にしていなかった。
 部活を終えて家路を急ぐ逢魔ヶ時、誰にもすれ違わずに廊下を駆ける一日の帳が降りる頃。黒咲あかねの行くてを阻む
一枚の壁がずんとそびえいた。見様には咎人を隔離するかの要塞にも見える。ただ、この地上に存在しえない物質で
この壁は固められているような感触だった。
 見上げれば見上げるほど空が高く感じる。左右を振り向けば振り向くほど先が霞んで見える。
 例えようのない世界にあかねはすんのあいだ思考を止めた。

 この壁に出会う前に親友と別れた。
 名は久遠荵。同じ部活、仔犬のような娘だ。

 「あかねちゃんはもっと大胆になった方がいいよっ」

 ころころした声があかねの中で響く。あどけなさと、イヌを掛け合わせたような娘だと、あかねは荵を評する。
 だが、忘れ物を取りに校舎に戻った荵がいつまでたっても戻ってこない。どこへいったのだろう。
 あかねは荵を探しに歩き始めた途端、これだ。

 壁。
 壁。

 ちっぽけな自分を思い知らされる、硬い壁に阻まれた。

 「……あがいてもって……。あがかせてくださいっ」

 壁伝いに歩けば、出入り出来る場所はあるはず。あかねは壁の根本を注意深く眺めつつ、再び状況を捉らえようと試みていた。
歩き慣れた校庭が、見慣れた立木が、今や異質に見える。

 「誰もいない……」

 そうだ。

 一番疑うべきは、自分以外の者を見かけないこと。荵と別れて、今まで誰とも会っていない。
 あかねは巨大なる壁に気を取られて、気付くべきことを見事なまでにスルーをしていたことに呆れた。
 さっきまで部室で共にいた先輩の迫ですら見かけないこと。あかねは迫をほんの僅かでも忘れかけた事実に後悔をしていた。

 あかねと迫は演劇部だ。
 ちょっと前まで部室で演劇論について意見を交わしていた。
 ちょっと前まで迫の理屈にあかねは閉口していた。
 ちょっと前まであかねは夢を語っていた。

 「迫先輩。ロミオとジュリエットは女の子の夢ですっ」
 「いろんな解釈も出来ると思うんだ。ロミオは二十歳過ぎた青年、ジュリエットはあどけなさ残る6歳児。
  歳の差離れてるといえども、乗り越えられる障害が大きいほど胸打つと思わないか。いや、これは問題提起だ」
 「そんなジュリエットいやですっ。こんな舞台、出ませんっ」
 「勝手にしろ」

 そんな頃が懐かしい。ほんのちょっと前のことなのに。長針が360度も廻らないうちなのに。
 あかねの中で駆け巡る記憶とともに壁の間際を歩き続けていると、久方振りに人の声がした。

 違う。
 あかねには届かなかった、希望の絶望の声。
0092わんこ ◆TC02kfS2Q2
垢版 |
2014/01/22(水) 19:58:17.10ID:0KUKYqBz
「どうあがいても無駄だよ」

 あかねにその声が聞こえたのは、声だけでなく、ギターの弦の音と共にだから。
 校庭を横切る渡り廊下の屋根の上、波打つ鉄板に腰掛けてギターを鳴らす一人の少女があかねを見下ろしていた。
 高校一年生のあかねよりかは年上、落ち着いたたたずまい、白いシュシュで束ねた黒髪、そして涼しげな目元と片側を隠す前髪。
彼女は旅する吟遊詩人だと称しても疑われようはないだろう。ただし、彼女はあかねと同じ制服に身を包んでいるのが残念だ。

 「ぼくも『魔壁』に阻まれた。見下ろそうとも、それさえ許されない」
 「『魔壁』ですか?」
 「校舎の屋上からさえも見上げる『魔壁』だ。まるで何かを恐れているように」

 ギターの少女は脚を組み替えた。ちらと白い太ももがあかねの目を奪う。

 「ぼくの名前は天月音菜。また、君に出会うかもしれない」
 「分かるんですか?」
 「なぜなら、この学園は鎖されているからね。チョココロネが食べたいんだけど、学園には売っていないからね」
 「出口がないなんて、にわかに信じられませんっ」
 「ぼくも君を追って、気付かれないことに信じられないけどね」
 「え……」
 「面白い、実に。この状況を楽しめればだけど」

 口惜しいから、甘い洋菓子を。
 残念そうに音菜は前髪をかき上げた。
 ちらりと見える音菜の涼しげな瞳にあかねは吸い込まれそうになり、背筋を凍らせていた。

 音菜のセリフの後に『魔壁』を一瞥したことで、あかねは信じられないことを許されない状況の破片を握った。
 見れば見るほど『魔壁』が得体のしれない魔獣に見える。自分が演劇の台本を書くならば、そんな演技をさせる……
あかねの鼓膜に迫の言葉が蘇っていた。再び渡り廊下の屋根に目を向けたあかねには、天月音菜の姿もギターも捉えることはできなかった。

 孤独。
 孤独という言葉を繰り返せば繰り返すほど身震いをする。

 荵は?
 迫は?

 誰も教えてくれない恐怖、そして『魔壁』。

 「どうしようなか」

 天月音菜に気を取られている間に周りもすっかり暗くなり、光を求めてあかねは校舎に戻った。
 同じ境遇に合っているはずの迫に会うために。そして、屋上から学園を見渡すためだ。
 まだ、教員たちや部活生たちもいるはずであろうのに、誰ひとりとも出会わない。よその次元に吸い取られたかのように、
あかね一人だけが廊下に足音響かせる。

 「何がおこったのか、さっぱり」

 案の定……いや、またしても目当ての演劇部部室には、迫の姿はなかった。
 裏切りの後には救いあり。あかねの目の前に人影が再び現れたのだから、堪らず声をかけたくなる。
 あかねから話し掛けようと近寄った瞬間。
0093わんこ ◆TC02kfS2Q2
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2014/01/22(水) 19:58:48.47ID:0KUKYqBz
 ……求めていたのはあかねの方ではないのか。
 そうだ。話を仕掛けられたのだ。

 「ここにもいたね」
 「こ、ここに?」
 「『ケモノツキ』たち。ようこそ、宇宙の楽園へ」

 初めて耳にするフレーズであかねを迎え撃つのは、キツネ耳を生やし、秋の穂にも勝る尻尾を揺らしていた少女だった。
 コスプレでもなく、どうやら本物のよう。脳内がなんだか理解することを拒否し始めるから、ぐるぐると目が廻る。

 「戦いの準備は徐々に整い始めてますね。神がお気に召す戦果となれば……」

 服の上からも分かるナイスバディ、黒髪が良質な墨のごとく艶やかで、落ち着いた物腰がキツネの威厳を引き立ている。

 「間もなく戦いが始まります。愚かなる人間どもよ、裁きは終わったのだから。ですの」
 「え?え?」

 夢か、現か。

 キツネ耳の少女がはたと姿を消した。
 キツネにつままれるとは、まさにこのこと。何かにすがることも出来ず、ただただなすすべく。
 キツネ耳の少女でもいい、天月音菜でもいいから、あかねは人影を探しに校内を走った。
 廊下の窓からは依然としてそびえ立つ『魔獣』。普段は気にもしなかった街が急に恋しくなる。
 じりじりとタイマーが回る時限爆弾を抱えている気分だ。今にもあかねの不安が破片を散らして火を噴きそうなのだ。
 保健室、職員室、科学準備室、体育館、図書館。人が集うのに考えうる場所は探し尽くした。

 「久遠っ。迫先輩っ」

 部室で意見が違い、経験差を見せつけられたことさえも懐かしい。
 パソコンルームの液晶モニタは沈黙を保って知らん顔。
 迫を思い出すからと、あかねは迫と荵の名を呼ぶことを諦めた。
 しかし、諦めきれないからもう一度。

 「先輩っ」
 「せ・ん・ぱ・い?先輩はどこですか!閑花ちゃんはここです!がおっ」

 扉の開く音以上に喧しい声を張り上げてやって来た一人の少女。おかっぱ黒髪はロリっぽく、薄暗いモノクロームな部屋を
パステルカラーに染め上げた。

 「あっ!?あかねちゃんがいる?先輩!先輩!先崎先輩がいないんです!尻尾ががびょん!」

 あかねと同級生がいてくれた幸せ。後鬼閑花が救った、あかねの孤独。
 いつもは学園を先輩、先輩ととある男子を追い回している、恋に恋する恋する少女。後鬼閑花という少女だ。
 先輩のことを話さない日がないぐらい、閑花は先輩、先輩と色めき立っていることは、この学園に通うものなら皆知っている。
 オオカミの尻尾を得ようとも、オオカミの耳を持とうとも、閑花の恋心は変わっていなかった。
 閑花はオオカミの大きな尻尾でミニスカートを跳ね上げて、オオカミ耳をくるりと回した。

 「後鬼も……ケモノツキ?」

 あかねは一歩退いて、閑花の姿を目に焼き付けた。

 突然。

 意思を持ったのごとく一斉にパソコンのモニタに光が灯る。電撃を受けたのごとくHDが起動する。
チカチカとLEDが瞬き、物理的にディスクが削れる音にあかねと閑花は戦慄を覚えると、一歩足りとも身動き出来なくなった。
 電脳が全てを支配した仮想現実の世界。だと、解釈しても間違わないだろう。

 それは、一人の声で打ち破られた。

 「戦いの時間です」
0094わんこ ◆TC02kfS2Q2
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2014/01/22(水) 19:59:19.13ID:0KUKYqBz
 あかねには聞き覚えのある声。
 そして、見覚えのあるキツネ耳の少女。
 全てのモニタが操られているのか、同じ顔が寸分違わずに映し出され、二人に語りかけてきた。

 「わたしは『神乃狐(かみのこ)』ですの」

 あかねはもう一度、モニターの中の少女の名を繰り返した。

 「神は人間を見放しました。天地開闢以来、愚かなる生業の繰り返しだと。大地の支配者に人間を選んだことを悔やみました」

 無機質に淡々とした、灰色がかった言葉。
 あかねは息を飲み、閑花は目を見開いた。

 「『このまま人間どものほしいままにしておくにはならない』。神は人間に太刀打ちすべく、動物たちに魔力を与えようとしました。
  しかし、動物たちとはいえ、彼らは獣。魔力を持てど操るすべはありません。そこで、人間たちに憑依させることで意思を持たせ、
  優性なる獣をえり抜き、新たなる支配者として大地に君臨させることにしました」
 
 キツネ耳の少女・神乃狐は機械的な話を淀みなく続けた。

 「神はこの学園に『魔壁』を築くことで結界を張り、『ケモノツキ』としての能力を保持する者だけを『魔壁』の内側に残したのです。
  後は自然の摂理……闘争本能と理性知性を兼ね備えた『ネオ・サピエンス』が生き残るだけ。さあ。倒しなさい、生き残りなさい。
  戦いの始まりです。獣の底からみなぎる魔法の叫びが聞こえませんか。覚醒するときですのよ」

 薄暗い部屋に閑花を囲んで浮かぶ魔法陣。発光した幾何学模様が意味するものを理解は出来なかったが、
閑花は獣の尻尾から得たい知れぬ力を手に入れた感触を掴んだ。ただ、それは……戦うためのものだ。

 ガシャンとけたたましいガラスの悲鳴が静けさを裂き、共に部屋の扉を薙ぎ倒して来襲した一人の……獣。

 「久遠っ」
 「わおっ」

 あかねが校内を血の滲む思いで探していた久遠荵とこんな形で再会するなんて。
 イヌの耳と尻尾を携えた荵がもんどり打ってパソコンルームに飛び込んできたのだから。

 「荵!」

 目の色が緋色に変わった閑花は荵から『ケモノツキ』の臭いを感じた。あかねには荵の周りに閑花と同じ
幾何学模様が浮かんでいることで、荵はもはや久遠荵ではないことを動物的に察知した。

 「イヌはイヌ。オオカミなんぞには……。オオカミの血を絶つときだっ」
 「何もできやしない人間に擦り寄る裏切りの獣に断種の裁きを!」

 荵の口上を受けて、閑花が手を振りかざすと青白い炎が現れる。蛍が纏わり付く幻想を見ているようだ。
 対して荵は尻尾を巨大なる鎌に見立て、ぶんと振りかざすと菜の花にも似た黄色い炎を尻尾の先から放った。

 「わおっ」

 荵が操る炎はやがて弧を描き、弓矢を形作る。きらきらと黄色い輝きを増しつつ、一つの武器に成り代わった。ぴんと張った
弦が冷酷なる武器としての指命を物語り、矢を携えた荵を一人のアーチャーとして成長させていた。それほどの霊力を弓矢は持っていた。
 一方、閑花も同じく炎は一振の剣へと姿を変えていた。制服姿で刃を片手に構えるオオカミ耳の少女。息の音すら聞こえない。
どこで剣の心得を知ったのかなど、疑問に感じることすら愚かしい。二人が武器を持つ空気が全てを支配していた。

 じりじりと間合いを計り、お互いに攻撃を仕掛けるタイミングを伺う。緊張と、そして、あかねにとってはクラスメイトたちが
なぜ武器を手に取らなければならないのかという、声にもならない疑問で部屋は糸が張り巡らされていた。
 とにかく、あかねとしては二人の手を止めたい気持ちだが、人間の言葉を受け入れることなど出来ない二人の状況になすすべなどない。
0095わんこ ◆TC02kfS2Q2
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2014/01/22(水) 19:59:49.97ID:0KUKYqBz
 「がおっ」

 攻撃を仕掛けたのは閑花だった。
 返り討ちを恐れぬ一撃は、まさにオオカミの威厳そのもの。光の筋さえ、冷厳なる畏怖をあかねに与える。
 幸か不幸か刃は荵の手を掠めた。ただ、荵は弦を掴む手を緩めることさえ拒んだ。閑花が体勢を整えるまでに一矢報いたい。
 荵は閑花の尻尾に向かい矢を放った。

 「久遠っ」
 「わうっ」

 閑花の目の前に飛び出したあかねは無我夢中だ。荵は弓矢を一度下ろし、あかねの動きを冷静に緋色の目で見つめていた。
 この空間を匂いに例えると、焦げ臭く、錆の匂いが立ち込めると言えようか。

 「演劇のことだけどっ」

 油断させようとあかねは荵に近づいてゆく。しかし、あかねの声などものとせず、位置を変えた荵はまた一つ矢を携えて閑花の脚を狙う。
動きを封じるつもりだ。しかし、二人とも、今やケモノツキ。ケモノの勘に揺すぶられ、閑花の剣で矢はたたき落とされてしまった。

 「はっ!?」
 「こっち。こっちだよ」

 あかねの眼球に見覚えのある姿。
 黒髪を束ねた、涼しげな目元の少女。
 天月音菜が閑花の肩越しに手招きをしているのだ。どうやって、ここに?そんな疑問など後回し。あかねは天月音菜に駆け寄った。
そんなあかねの行動に怯んだのは閑花だった。ぐらりと足をふらつかせ、隙という隙を荵に見せたミステイク。
 荵がそれを射ない理由などない。

 「とにかく、見せたいものがある」

 あかねを呼ぶ天月音菜は校庭の見える廊下の窓辺に走った。

 窓からは今だにそびえ立つ『魔壁』が不気味さを夜空に描く。ただ、一つ変化が。不気味さも不変でないという希望か、
はたまた気まぐれという不気味さか。不気味さを打ち消すのは、音菜の手に収まるチョココロネ。甘ったるそうで、香ばしい。

 「見てくれ。『魔壁』に揺らぎが」

 確かに音菜が指差す先はゆらゆらと白く光るもやが『魔壁』に掛かる部分が見える。あかねの記憶が確かならば、
閑花と荵の戦いまでには確認出来なかった事象だ。

 「神が全知全能だと信じているのかい?」
 「わかりませんっ」
 「ぼくは見つけたんだ。ケモノツキたちの戦いが始まると、一時的に神の魔力の影響が薄くなることを」

 確かに『魔壁』は神の力でそびえ立っているのだろう。だからか、ケモノツキたちが魔力を発動するにあたって質量保存の法則が
当て嵌まる……と、音菜は言う。

 「神の目を盗め……か。そう思わないか」

 あかねは音菜が髪をかきあげる姿に心奪われていた。そして、ちょっとの隙に荵と閑花のことを忘れかけていたことが恥ずかしくなった。
音菜は落ち着いた物腰で、チョココロネを一口かじる。

 「わかるかい。あのもやは……外界と通じているのさ」

 裏づけはチョココロネ。
 学内では売っていない物だ。だとすれば、外界に出ることが可能だとする一筋の光とも言える。
0097わんこ ◆TC02kfS2Q2
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2014/01/22(水) 20:00:20.16ID:0KUKYqBz
 「もしかしてっ」
 「今しかない。神の目を盗め!」

 閑花。
 荵。
 そして、今だに出会わぬ迫。
 ケモノツキに選ばれね運命を持とうとも、選ばれる宿命を持とうとも、あかねにとっては大切な人。
 彼らを見捨てて自分だけが甘い蜜を吸えというのか。あかねの頬は赤らんだ。

 「もやが薄らいできた。戦いが終結しているんだ。あと、ながくて5分……」

 天月音菜が窓を背に俯くと、あかねはその姿を見ていることが辛くなってきた。

 「あと4分」

 体の奥が熱い。何も出来ない悲劇の王女を演じているつもりか。
 なんの為の感情だ。哀れんでもらう為のちっぽけなプライドか。

 「あと3分」
 「行きますっ」

 あかねは走る。首輪を外されたイヌのようだ。
 廊下を駆け、階段をすっ飛ばし、パソコンルームに馳せ参じる。
 扉を開けると消えかけた魔法陣の中、苦悶の表情でうずくまる荵の姿があった。

 「久遠っ。今、外界に連れ出してあげるからっ」

 夢中になると重さなど関係ない。荵をお姫様抱っこで部屋から連れ出し、消えかけるもやへ走る。
 見慣れた校内がラビリンスにも似ている魔を誘う。今、あかねが抱えているのは少女だ。ケモノでもない、血の通った少女だ。
外界に連れ出し助かる保障はないが、このまま神に弄ばれるよりかはマシだ。
0098わんこ ◆TC02kfS2Q2
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2014/01/22(水) 20:00:51.00ID:0KUKYqBz
 あと2分。

 校庭の土が見える。
 玄関のコンクリートなど冷たくはない。

 あと1分。

 ざっざっと砂埃が闇に舞う。
 だんだんとあかねの腕が荵の体重で痺れてきた。血が薄らぐ。

 あと30秒。

 「わおっ……」

 荵が目を覚まして跳ね起きる。
 あかねの腕が悲鳴を上げて、荵を大地に落としてしまった。二人共に外界へのもや目前で地面に倒れ込む。
 大地の冷たさは神への反逆の罰か。

 あと15秒。

 音菜はチョココロネをもう一口。

 「また、外界で会おう」

 と、言葉を残した。

 あと10秒。

 「久遠っ。許してっ」
 「わ、わおーっ」

 あかねは両手で荵を脇から抱え上げ、もやへと放り投げた。

 あと5秒。

 もやに吸い込まれたかのごとく、荵はそのまま姿を消し、同じくもやも消えて、再び『魔壁』が厳めしくそびえ立っていた。

 いいんだ。
 これでいいんだ。

 もう、神など信じない。
 だけど、ちょっとは神を信じていいかも。だって、奇跡が起きたんだから。
 あかねは息を切らせながら冷たい大地に両膝を付いていた。


     #


 『魔壁』が現れて二日目。
 依然として校内は閑散としていた。
 あかねは誰かの姿を求め、敬虔な信者に負けないぐらい再び校内を巡礼するように歩く。

 閑花も。
 音菜も。
 そしてキツネ耳の少女・神乃狐も。

 どこに失せた。

 そしてわかっていることは、ケモノツキたちはお互いに戦うこと。ケモノツキにはならない体質もあること。
0099わんこ ◆TC02kfS2Q2
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2014/01/22(水) 20:01:21.50ID:0KUKYqBz
 「すごいですね〜。烏丸も憧れちゃいます〜」

 無い物ねだりは幸せの証。
 昨夜の出来事をあかねから聞いた烏丸アリサは、のほほんとさた返事で事態を甘い綿菓子のようにぱくつく。
 あかねが烏丸アリサと出会ったのは生徒会室でのことだ。立ち寄った生徒会室が紙屑で埋まっていた。黒い墨が滲んだ半紙が
辺り一面に転がって、今までの魔法の世界と違い、一種異様な背景だったからあかねも肝を潰した。

 「上手く書けないんです〜」

 烏丸アリサは書道の筆を摘んだまま、自分の鼻を擦っていた。まるでケモノツキたちの戦いなどなかったのような、
烏丸だけの時間が流れていた。
 制服姿で床に正座しているアリサには、獣の耳や尻尾がない所からあかねはケモノツキではないと判断し、軽く彼女の肩を叩いてみた。
 あまりにも緊張感のないアリサは百年の眠りから覚めたぐらいに驚いて筆を真っ白な半紙に落とした。書きかけの文字が台なしに伏す。

 「ご、ごめんなさいっ。せっかく書き上げていたのに」
 「あうー。……いいんです〜。ゴミにしようか迷っていた所なので、むしろ諦めがつきました〜」

 アリサは惜しそうにただの紙屑と化した半紙を丸め、後ろ手でぽんと塵芥の海に葬った。
 黒髪を束ねた後ろ姿は純和風、前にまわればハーフのような顔立ちがエキゾチック。というスペックを持つ烏丸アリサは、
自覚しているのか、否か、書道の世界に再びふける。

 「烏丸。外界に出られるチャンスがあれば出てみたい?」
 「どうかなあ〜」
 「ケモノツキの姿のまま倒れると、消えてしまうんだけど」
 「それは嫌ですね〜」

 いまいちはっきりしないアリサに半ばあかねは呆れつつ、迷い多いアリサの筆を見守った。
 息遣いすら手に取れる気迫のなか、あかねはアリサの異変に気付いた。筆を動かす間と休める間、明らかにアリサの体がおかしい。
 アリサが息を吐いて筆を止める刹那、微かにイヌの耳や尻尾が生えているように目に映るのだ。

 「もしかしてっ」
 「はい?烏丸、おかしいですか〜?」

 あかねの言葉の続きを想像するのは容易だ。

 ケモノツキになりかけている。


     #


 「まだまだ。地球の新たな担い手はまだね」

 キツネ耳の少女は、校舎の屋上の柵に腰掛けて、学園をぐるりと囲む『魔壁』を眺めていた。
戦いの終焉まで待ちきれない様子で流れゆく雲を数えた。
 数えれば数えるほど、自分が過ごした年数がバカになってくる。ぴょんとスカートを翻し、柵から飛び降りた神乃狐は、
自分の尻尾を膨らませた。同時に胸の大きな二つのものがやゆんよゆんと揺らいでいた。

 「黒咲あかねは……保険ですの。あれほどのケモノツキになり易い子はいないし。お楽しみは取っておかなければね」


     #
0101わんこ ◆TC02kfS2Q2
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2014/01/22(水) 20:06:21.55ID:iic2ox91
おお。さるさんですっ。
次に投下出来るようになるのは、何時ぐらいかなあ?
0106わんこ ◆TC02kfS2Q2
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2014/01/22(水) 20:27:27.56ID:iic2ox91
 鏡を前に自分のイヌ耳に違和感を覚える。
 反してか尻尾はぶんぶんと揺れ動く。

 「烏丸っ」

 完全完璧ではないが、烏丸アリサはケモノツキになった。可能性は非常に高い。
 さっきまで羨望の目で見ていたケモノツキ、いざ自分の身に降り懸かると動揺を隠すことなんかできやしない。
それに対してあかねは一つの希望を見出だした。

 「完全なるケモノツキでないとしたら、神を倒すことが出来るかもっ」
 「ふぇっ?烏丸、そんなことできませんよ〜」
 「神はケモノツキ同士を戦わせている。神もまたケモノツキだ。ケモノツキの戦いに倒れたケモノツキは姿を失せる。
  ただ、ケモノツキを倒す為だけに」

 アリサの書き損じを拾い上げ、アリサの前で広げると、お世辞にも上手いと言えない『ほむら』という文字が現れた。
ただでさえ紅顔したアリサが更に赤らめる。

 「ひらがなは難しいんです〜」
 「上手く書けるときもあるんでしょ?」
 「勘ですよ〜、大抵は。烏丸、勘だけはいいんです〜」

 それだけでも凄いのに、あっけらかんとしている烏丸にあかねはちょっとだけ興味を抱いた。

 「そうだっ。外界に出れたなら……一緒に演劇を見に行こうっ。楽しいですっ。それにウチの部……演劇部の公演もあるし、
  迫先輩の演技は凄いですっ。公演は……」
 「どうしようかな〜」

 迫先輩。
 再び、演劇論を交わすことを誓う為に敢えてこの場で名前を出したあかねはつばきを飲んだ。
 その為には……外界に出る方法を考えること。正攻法はダメだった。物理的に『魔壁』を破壊することは不可能。
重機はおろか、自分は魔力を扱うことなど出来ないからだ。せめてケモノツキにでもなれれば……と、弱気がよぎる。
 もし、自分が荵だったら、どれだけ楽になれたか。

 荵?

 「わおっ」

 荵の真似をしてもただ、やるせないだけ。
 恋することと似た感情があかねの胸をちくちくと突き刺す。
 痛くて、痛くて、何かに縋りたくなるし。目の前にある物なんでもいいから、藁でもいいから掴んでみる。
 藁はないけれど、再びアリサの書き損じを摘み上げたあかねは頭上に電球を灯した。


 「荵との戦いで気付いたんだけど、ケモノツキ同士の戦いは人間に決して危害を加えないのっ」

 アリサの書き損じをみくじを結ぶように折りたたみ、一つの結び目をあかねは作った。無意識的に手を動かしていたのだ。
0107わんこ ◆TC02kfS2Q2
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2014/01/22(水) 20:41:35.46ID:iic2ox91
 お節料理のこぶまきみたいな結び目をひょいとアリサに投げ渡した。

 「もしかして神を倒せるのは人間かもっ。でも人間は非力、ケモノツキの力をわたしにっ」

 ぼんっ。
 アリサの手に結び目が乗ると黒い炎が湧いて出た。一瞬の出来事にみな息を飲む。

 「火?」

 部屋の壁にまですっ飛んだアリサは身を縮ませて、黄色く輝く弓矢を手に震えていた。

 それは荵が武器として携えていたものと同じもの。アリサからイヌ耳と尻尾が消えると、弓矢も後を追うように消えた。

 「そうかっ」

 あかねは確信した。神のきまぐれか、荵に憑依させていたケモノをアリサに託したことを。そして、火を操れるのは人間と、
ケモノツキと人間のはざまで揺れ動く烏丸アリサだけ。という希望のすき間風。賭けだ。百パー確実なことなどない。ましてや、
神でもない人間が考えること。それに神もまたドジを踏む。あの『魔壁』のもやがそうだ。魔力がひるんだことを人間に見せたことで
神が何者でもないということを露にしたに等しいのだ、とあかねは言う。

 「この紙屑、みんな折るよっ。日が落ちる前にっ」


     #


 「先輩!先輩!先輩がいないから寂しくって!オオカミは寂しいと死んでしまいます!」

 再び夜がやって来たから、オオカミの遠吠えは止まらない。
 がおーっと天高く雄叫びを上げても、返事は返らず、ただただ力を消耗するだけ。一人ぼっちの閑花は先輩の姿を校舎の上の
神乃狐に重ねた。その背後にはあまりにも大きな満月が重なっていた。

 「まだまだ人間を捨てきれないようね。閑花にオオカミを託したのは失敗立ったかしら」

 上からの眺めは気分がよい。何もかも神が思し召すものなら、血を流すことさえも構わないから。
 キツネ耳の少女……神乃狐の次の一手は決まったようなもの。

 「オオカミに罰を」

 ケモノに成りきれなかったから、恋心を抱いているから、そして荵を仕留められなかったから。
 理由は掘り返せばいくらでもある。地上の閑花が気を許した隙を突いて、神乃狐は尻尾を大きく薙ぎ払った。稲妻が走り、
曇天に包まれる。火花散る校舎はまさに修羅の門。月の明かりが冷ややかに学園を照らしていた。

 「うきゃあっ!」
0109わんこ ◆TC02kfS2Q2
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2014/01/22(水) 20:50:44.17ID:iic2ox91
 頭を抱えて閑花がしゃがみ込んだ後、真っ白な世界に陥り、聴覚が侵された。キツネの魔力、極まり。
 そして、閑花が正気を戻すと、自分がたくさんのオオカミに囲まれていたことに絶望を感じた。

 「うそ……。たすけて!せ、せんぱーい!」

 じりじりと忍び寄るオオカミたちは四つの足で閑花を追い詰め、恐怖に陥れ、そして『魔壁』を背に逃げ場を奪っていった。

 「やだやだ!オオカミさんたち!しっし!しっし!ハウス!ハウス!先輩が、お前らを倒しちゃうんだから!
  やだやだ!やだ!失せろ!消えろ!バカバカ!わおおおおおお!せんぱーーーーーーい!」


 オオカミが憑依しているはずなのに、オオカミに仕留められるなんて。後悔するものはあるのかと閑花に尋ねても答はなし。
背中から脊髄に渡って冷気が駆け登るのは、まだ人間の世に未練があるからなのか。聞いたこともない脈を打つ音が、喉の奥から
聞こえてくる。頸動脈がこれでもかと異常なまでに氾濫していた。

 「裁きの時間は過ぎた。オオカミたち、処刑人の剣を振り下ろせ!」

 一匹のオオカミが弧を描いて閑花に飛び掛かるとき、閃光のように烈火が走った。オオカミは怯み地上にたたき付けられる。
 そして、目を疑うべきか……あれだけ強固な『魔壁』に炎が燃え移り始めていたのだ。


 「神の目を盗んで、人間の英知で刃を突き立てる。だよねっ、烏丸」
 「烏丸の矢が当たりました〜」

 遥か遠く、弓矢を従えたイヌ耳尻尾の烏丸アリサが、夜中に太陽のような笑顔を見せていた。
 側にはアリサの書き損じを結んだ矢を多数携えた、黒咲あかねの姿があった。

 ケモノには扱えず、人間だけが扱える、長年の知恵。
 火、そして、文字。
 ケモノの魔力を僅かながら持つアリサが書いた文字に、火の魔力が宿ったのだ。
 アリサは矢を片手に弓に装着する。荵のものと同じ弓だが、アリサのものには新たな魔力が加わっている。

 「神様、人間なめちゃダメです〜」

 ぼうっと鏃に結ばれた書き損じに黒炎が点る。それを見たオオカミたちは怯み、後退り、中には逃げ出したものも。
 炎の矢を放つと『魔壁』に垂直に当たり、今まで以上に火勢を増していった。オオカミたちを蹴散らしたアリサは次々と
『魔壁』に炎の矢を打ち込み続ける。黒炎がぼうぼうと、煙を立てて灼熱とともに焼き尽くす。
0112わんこ ◆TC02kfS2Q2
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2014/01/22(水) 20:57:15.98ID:iic2ox91
 「なんですって……。神としたことが」

 屋上で立ちすくむ神乃狐の茫然自失加減に、地上の閑花は牙を剥きはじめた。
 何が神だ。
 名ばかりの神は木でこしらえとけばいい。
 存在もしない神は踏みつけられればいい。
 周りは炎で顔が熱い。もう、なにもかも振り乱して、言葉の刃を首に突きつける。

 「ちょ、ちょっと!所詮、あんたは神の使いっぱしりじゃない!」
 「黙せ!ケモノの存在で意見すると言うのか」
 「先輩が黙ってません!」

 炎は止まるすべを知らず、学園を炎の輪が包んでいた。陽炎のように閑花がゆらゆらと炎を背にして立つ。
その姿は見た者誰も忘れられないだろう。そして、あかねが閑花の異常を察知して校舎の屋上を指差した。
余りにもとっさの行動だ。思考が脳に伝わる前に、つられてアリサが指先の先へと矢を放ったのだ。
 雷電を間近で見るがごとくの瞬間、炎の矢は神乃狐の尻尾に当たった。

 「烏丸。凄いよ……」
 「あかねちゃんの方がもっと凄いです〜。あんな大胆なこと、烏丸は出来ません〜」


 ぼうと身を焼き尽くす炎が神乃狐を包み、神の無力さを表す火の柱が屋上に立つ。
 同時に神の魔力が全て失われて『魔壁』の存在も地上から否定されたこととなった。

 つまり、神の力など赤子同然。

 「……面白いですわ。オオカミもイヌもキツネも何もかも、神を信じぬなんてね。よろしい。
  わたしの姿を最後まで焼き付けなさい。愚獣たちよ。それに黒咲あかね……もっと殻を打ち破れ……」

 あかねもよいケモノツキになれたかもしれない。
 神乃狐の夢は潰えた。
 業火の中、神乃狐の炎は何故か、神々しく、そして気高く見えた。
 遠い異国で死者が土に返る儀式を行うのならば、それよりも神秘に満ちた煌きが闇夜を切り裂いていた。
 あかねたちが聞いた、最後のお告げ。
 神乃狐が消えし頃、炎のほしいままにされた『魔壁』が音を立てて崩れ落ちた。
 アリサと閑花のケモノもすっと息を吐くように消えた。

 「勘だけはいいんですよ〜」

 弓矢の腕前を勘のせいにしたアリサはあかねの背後に隠れた。
0113わんこ ◆TC02kfS2Q2
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2014/01/22(水) 21:01:02.94ID:iic2ox91
    #


 学園に現れた『魔壁』の存在が記憶から薄らいで、誰もかもが日常を取り戻した頃。それを象徴するかのように、
講堂の中では演劇部による公演で静まり返っていた。演目は『ロミオとジュリエット』。迫が書き上げた内容だった。
劇は恙無く進行し、一つの見せ場に入る頃、舞台袖であかねはカーテンに隠れて迫と荵の演技を覗いていた。

 「こんな内容なら、わたし出ません」

 迫の台本に不満を持ったあかねのせめてもの抵抗。
 あかねは不名誉を浴びるぐらいなら、役を捨てた方がマシだと言い放ったのだ。

 「勝手にしろ」

 させて頂きます。
 後悔はなかった。

 「ジュリエットはいちどでいいから、ぶとうかいにでてみたいなっ」
 「ほう。随分とませたことを言うではないか」
 「もう6さいだよっ。ロミオはジュリエットのことをずっとこどもあつかいするんだからっ」

 ただでさえ幼く見える荵が演じるジュリエットに違和感を覚える者はいなかった。それはあかねでさえもだ。だから、悔しくて。
 わざわざ繕ったドレスも荵の為に、劇の為に、と精一杯に場を盛り上げる。

 「ロミオっ。イヌになれっ。イヌになってわたしをうばいされっ」
 「よし。わんっ」

 ロミオ役の迫が荵を両腕で抱え上げた。……お姫様だっこ。女子の憧れを台本を理由に迫はためらいなく掻っ攫った。
荵も劇を忘れて頬赤らめるほど。舞台袖からの眺めはさぞかし辛いだろうと、あかねはそのシーンを観劇することは見送って
舞台奥からの階段を降りた。背中越しに聞こえる舞台の声に未練はなかった。

 「黒咲さーん。烏丸からの差し入れです〜」

 黒髪ポニーテールの少女が階段の下でチョココロネの山を抱えて息巻いていた。
 寸志・烏丸アリサ。お世辞にも上手いとは言えない毛筆の手紙がチョココロネを一級上にランクアップさせる。
 あかねは遠慮なく一つ頂くと、『魔壁』で出会った少女の事をふと思い出した。

 「えっと、天月さんってお姉さんがよろしくねって〜。天月さんに教えてもらったんですよ〜」
 「はっ」

 彼女だ。天月音菜だ。
0114わんこ ◆TC02kfS2Q2
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2014/01/22(水) 21:02:29.88ID:iic2ox91
 そばにいるようで姿を見せず、姿が見えないと思いきやそばにいたりする。なんとも天月音菜らしいな、とあかねはチョコの糖分で
平常心に戻る。あかねからは舞台が高く見える。いつもそばにいるはずの荵でさえ、手に届かないもどかしさ。
 ドレスに身を包んだ荵をお姫様だっこをしたまま、ロミオ役の迫が舞台袖にやって来た。
舞台では暗転に入る。シーンのひとくぎりだった。

 「……」
 「どうしましたか〜」
 「なんでもないですっ」

 『魔壁』に囲まれた校内で魔力に操られた荵を抱き抱え、疾走したことがふと蘇る。

 迫よりも早く荵をお姫様だっこしたのは黒咲あかねですっ。ただ、荵さえも覚えていないだろう記憶を抱えたままなど、
あかねにはちょっと悔しい。

 「もうひとつっ」

 食べてわすれてしまえ。
 チョココロネを手に入れることさえ阻む『魔壁』は、すでにないんだから遠慮はいらない。


     おしまい。

意地で投下したじぇ!紫煙ありがどうごさいますっ。


天月音菜
ttp://www15.atwiki.jp/nisina/pages/74.html
烏丸アリサ
ttp://www15.atwiki.jp/nisina/pages/240.html

今年の書き初め、投下おしまいっ
0116創る名無しに見る名無し
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2014/01/30(木) 13:31:34.58ID:FI0LjDNc
いぬわんわん
0117創る名無しに見る名無し
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2014/02/04(火) 22:43:57.32ID:TreNwgXb
先輩!
0118わんこ ◆TC02kfS2Q2
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2014/02/14(金) 19:40:02.81ID:iWM8hYzW
ttp://dl1.getuploader.com/g/sousaku_2/757/sinobu+valentine.jpg

バレンタインでわんわんお!

あかねと後輩ちゃんでSS投下します。
どぞ。
0119『先輩!長崎は雨ではありません!』 ◆TC02kfS2Q2
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2014/02/14(金) 19:41:08.77ID:iWM8hYzW
 「先輩!長崎です!坂の街は雨模様なんかじゃありません!手を伸ばせば届きそうな海、見渡せばちゃんぽん!先輩ー」

 ステンドグラスが色とりどりな教会の窓を飾る丘。
 『後輩』こと後鬼閑花は真っ青な冬空を突き抜ける声で、遠い『先輩』に声を届けた。
 連休を利用しての家族旅行だ。はるばる九州・長崎にやって来た後鬼家。お目当ての名所も巡り、名物も胃の腑に収めたから、
閑花はこの幸せを遠い空の下の先輩に伝えたくなった。教会までの石畳の坂道は街の表情だ。みな、足で街のご機嫌を伺って日々を過ごす。
 初めてこの地に来た閑花にはまだまだ分からない、地元民だけの伺い方だ。

 「おみやげ、何がいいですか!?やっぱり閑花ちゃんですよね!ずっとお会い出来てないし、
  お正月からためてるんじゃないですか!?閑花ちゃんではぁはぁして下さい!わたしもはぁはぁします!」

 新調した白いダウンジャケットが少し暑いくらいだ。なぜなら先輩の声が聞けたからだ。
 麓の通りに路面電車が行き交うさまが見下ろせる。上り下りの車両が電停に留まり、乗客たちが細い安全地帯でひしめき合っていた。

 「アレですよ!ためてるぐらいなら、閑花ちゃんに下さい!アレです!お!と!し!だ!ま!」

 乗降を終えた路面電車が発進すると同時に先輩との通話は一方的に切れた。閑花の目は少し淋しげに見えた。

 「先輩の声が聞けない日があるなんて。明日からホームシックにかかります!」
 「後鬼っ。旅行?」

 聞けない声が聞こえた。
 聞くとは思っていなかった声だ。

 みどりの黒髪にちょっと高い背丈、黒タイツに包まれた脚。閑花の目の前に現れたのは同じ学年の黒咲あかねだった。

 「こ、こんな所で出会うなんてねー。今日はわんわんおは?」
 「おばあちゃんちが長崎なんですっ。わんわんおはいませんっ」

 すらりとしたあかねは街に溶け込むのが得意だった。足元を飾るショートブーツも文明の町で自然に映える。

 「後鬼は長崎は初めてっ?」
 「初めてです!っか、その名前で呼ばないで!」

 ロリっぽさ残る閑花は街から浮くのが得意だった。足元を飾るくしゅくしゅブーツも履かされている感が否めない。
 閑花はあかねの後を追うが、他人からすればでこぼこな姉妹に見えて仕方がなかった。それでも構わずと言ったところか、
あかねは閑花に見せたい場所があると、賑やかな電車通りから閑静な住宅街の路地に入っていった。閑花の目の前に現れたのは、
石畳敷き詰められた坂道だ。ただの坂道なら、この街には掃いて捨てるほどある。ただ、閑花を圧倒しているのは勾配だ。
0120『先輩!長崎は雨ではありません!』 ◆TC02kfS2Q2
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2014/02/14(金) 19:43:54.73ID:iWM8hYzW
 「ひょえぇ」

 麓から見上げると、天に昇る竜の様相。閑花の側を駆け登るカブも敬意を払ってか、いや、角度が急過ぎて極端に速度が落ちる。
 地元の人たちは慣れ親しんだもので、気性の荒い聖獣も手の上で遊ばせていた。

 「オランダ坂っ。後鬼が駆け登る動画を撮ってあげますっ」

 あかねは閑花が文句を言っているのも聞かず、閑花のスマホを持って坂道を登った。
 かつかつと踵の音がリズムよく鳴り響き、おさまりつかない閑花を丸め込む。
 坂の中腹であかねは麓の閑花へと振り返り、カメラを起動させて手を振ってみせた。

 「後鬼、オランダ坂を駆け登るまで……さん!に!いち!」
 「ちょっと!だから、その名前で……」

 ぶんと、あかねが手を振り下ろす。動画の撮影ボタンを押す。小さな画面の奥から、小さな体を走らせる姿がだんだんと迫ってきた。
息も絶え絶え、必死に竜の背中を渡る。両手をぱたぱたと、髪を振り乱し、全力で急な坂道を走る。

 「え?電話?」

 スマホは空気を読まない。
 着信をけたたましく主張するから。
 発信主は、先崎だった。

 坂道に格闘して、白い息を吐きまくる閑花ははいつくばりながら、あかねからスマホを奪った。
 先崎の声だ。いきなり電話を切った負い目からか、再び閑花へと発信したのだ。

 「要件なら手短に言えよ」
 「せ、先輩ぃ……はぁはぁ……、先輩は……はぁ。声を聞けて……しあわ……」

 はぁはぁしている閑花の便りに、先崎は迷わず電話を切った。


    おしまい。


最後にバレンタインねた。
「あかねのもうそうにっき」

ttp://dl1.getuploader.com/g/sousaku_2/758/mousou_nikki01.jpg

投下おしまいです。黒髪ロングにイヌ耳わおー!
0121創る名無しに見る名無し
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2014/02/18(火) 13:12:33.80ID:pFOlbd8s
ごほうびおあずけ。
ttp://dl6.getuploader.com/g/sousaku_2/762/shinobu_inu.jpg
0124創る名無しに見る名無し
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2014/02/21(金) 01:03:58.25ID:KLgMJHh2
もちのろんよ
0125わんこ ◆TC02kfS2Q2
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2014/02/22(土) 23:24:23.97ID:b9+CtjqO
『午前二時の黒鉄亜子』


 空腹に耐え兼ねて、むくりとふとんから跳ね起きる。
 二月も下旬、そろそろ暖かくなっても良い頃なのに、ふとんの外は真っ白な空気で薄ら寒い。
 すべて兄のせいにしておけば腹の虫は収まるものの、やはり腹は空くものは空く。

 午前2時15分、闇が街を覆い尽くし、よい子たちが寝静まる深夜、黒鉄亜子は着る毛布を羽織りひんやりと冷たい廊下を踏み締める。

 一番小さなサイズだが、亜子が羽織ると袖が見事に隠れてしまう。裾を引きずりながら慎重に階段を降りる。ひとりきりだと寂しいので、
手にしたスマホを行灯がわりに歩き慣れたキッチンへの道を進む。うっすらと着る毛布の袖から明かりが漏れるだけで、亜子は安心感を
手にしたつもりだ。ぎしっぎしっと軋む音が墨のような夜に相まって不安を煽ることに亜子は思わずぐずる。
 そんなときはにっくき兄の顔を思い浮かべよう。高笑いする兄の顎目掛けて遠慮なく拳で突き上げる。
 想像の世界とはいえ、亜子は胸の空くような思いでしばし空腹と恐怖を忘れることができるのだ。

 忘れもしない、午後8時49分。冷蔵庫の中のプリンが兄の手によって消滅した。
 たった一個残されたプリンが兄の胃の腑に収められ、亜子の楽しみが叩き潰された。
 9時以降は甘いものを控えよう。女子中学生らしい悩みに、亜子は悩みに悩んで明日に取っておくつもりだった。
 それが兄の胃袋に消えた。

 「己の身は己で守るんだな、亜子。犠牲なくして成長はないぞ」

 戦国武将の高笑いで亜子を愚弄する兄・黒鉄懐は空になったプリンのカップをごみ箱に投げた。
 たったそれだけの行為さえも亜子には屈辱的に映った。
 たどり着くはキッチン。誘惑多き食材の魔窟。スナック菓子に柿ピー、はてはラスク。空腹で理性の制御が不能の亜子がお腹を抑える。
 この間、学校近くの喫茶店で買ったラスクだ。お店で作っている出来立てほやほやのラスクがひとりっきりで相手を待っている。
喫茶店のウエイトレスがぼそりと勧めてきたからつい財布の紐が緩んだ。ウエイトレス……と言うより、大正浪漫の給仕を思わせる袴に
編み上げブーツ、そしてふりふりなエプロンを身につけた娘が「美味しいですよ」とやる気なさそうに呟いた。
 ネコみたいな目で、ネコみたいにマイペース。亜子は給仕に自分の姿を重ねていた。何となく、自分に似ていると。
 妙に沸き立つ親近感を抑えるのはナンセンス。

 「下さい」

 そのまま誰にも食べられることなく残ってくれている事実に感謝。あのバカ兄からでもさえ。
 ただ、今はじっと堪えなければ体重計の神から罰を受けるのだ。

 「……」

 ラスクを包むビニルの音が耳を裂く。
0126わんこ ◆TC02kfS2Q2
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2014/02/22(土) 23:26:01.77ID:b9+CtjqO
 「はっ」

 黒鉄亜子は女子中学生だ。
 花も恥じらう乙女だ。
 ここで誘惑に負けるなら、体重計がきっと兄のように高笑いするだろう。
 魔女の微笑みでりんごの誘い。亜子は短剣の代わりにスマホを目の前に突き出した。
 時間は午前2時18分。この数字を呪文にして、魔女のりんごを払いのけようと亜子は瞬きを繰り返した。
 とにかくお腹が空く。その事実が亜子を苦しめる。空腹さえ紛らわせれば……、亜子は冷蔵庫から牛乳を取り出した。
何も口にしないよりかはましだという亜子なりの打算だ。
 すきっ腹の牛乳は胃を活発にさせた。口一杯に広がる白濁の宴、そして喉を潤す優しい甘味。右手にコップ、左手にスマホ。
親指でぐりぐりと画面を操作して、ひとりっきりの回廊の不安を拭う。

 「……かわいい」

 こんなときにはネコ動画だ。
 くったんくったんと戯れる子ネコたち、イヌとネコの種族差を越えた友情。亜子は子ネコの気持ちで牛乳を口にしていた。
 美味しい。
 牛乳が美味しい。
 もしかして深夜にこっそりと飲むからかもしれない。
 一人酒を嗜む恋に敗れたOLの気持ちが今は分かる。

 生まれ変わったらネコになりたい。いつも甘えて好きなときに寝て食べて。
 スマホの画面に閉じ込められた子ネコたちが、今、とてつもなく羨ましい。ウチの愚兄と引き換えにいかがですか、ネコの神様。
 夢中になって牛乳をまた一口、桜色の唇が白く濡れるという罰を甘んじることなく受け入れて、口寂しくなった舌を癒す為に
ラスクを一つ口にし……。

 「あーっ!」

 にゃー!

 誓いはたやすく破れた。
 夜の誘惑に騙されて、決して食べまいと、兄を打つ拳に誓ったのに。
 亜子の口元をざらざらと砂糖とパンくずが汚し、暗闇の底に乙女の願いがかけらとなって飛散していた。

 午前2時22分。
 外からは一斉にネコたちの声が「にゃー」と年に一度の夜を祝福していた。


  おしまい。

>>123
わお!

ネコの日おめです!
ttp://dl6.getuploader.com/g/sousaku_2/769/ako_amamoto_neko_no_hi.jpg

投下おしまいっす。
0127創る名無しに見る名無し
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2014/02/23(日) 00:17:43.39ID:aZGEbmU4
かわいい
0129創る名無しに見る名無し
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2014/03/04(火) 20:57:59.58ID:AV7KFJXp
>>128
先輩、後輩ちゃんの二人だけでも見てください。
あとはなんとかなります。

待ってます。
0135わんこ ◆TC02kfS2Q2
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2014/04/06(日) 22:35:39.66ID:6TzT8AbO
>>131
わ、わおおお?
笑顔がこんなに似合うとは、自分でも気付かなかった!!!
あ、あざーーーっす!

>>133
シュッとされとんしゃる!
0136わんこ ◆TC02kfS2Q2
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2014/04/30(水) 10:19:54.86ID:UbGoQIXB
   
   『おおかみちゃん』


 「おばあちゃん、おばあちゃん。どうして耳が大きいの?」
 「お前の声をよく聞くためだよ」
 「おばあちゃん、おばあちゃん。どうして毛むくじゃらなの?」
 「お前が寂しくて凍えそうなときでも、暖めてあげたいからだよ」
 「おばあちゃん、おばあちゃん。どうして……。どうして牙が生えてるの?」
 「お前を……守るためだよ」

 うそです。
 作り話です。
 黒咲あかねはウソツキです。

 オペラグラス片手に男女二人の成り行きを盗み見しながら、黒咲あかねの作り話に頷いてるのは、紛れも無く近森ととろだった。
 高等部二年生の近森ととろは、言わずとしれたカップルウォッチャーだ。幸せそうな男と女を遠目で覗いて、幸せをちょっぴり
御相伴する。ととろは幸せを貯めながらふんはと二人の幸せを祈るのだった。

 隣の黒咲あかねは演劇部に所属する高等部一年生。ととろが観察していたとある男女の二人をちらと見て、
『赤ずきん』を語りはじめた。いや、正しくは……。

 「ちょっと、アレンジしてみました」

 ととろと背中合わせで座るあかねは自分の顔が赤くなっているのを見られることを恥じた。
 黒タイツの両足をぴっちりと閉じて、遊んだ手でスカートの裾をいじいじと弄る。

 「恥ずかしがることないよ。即興でそこまで出来るのって、さすが演劇部って感じだしー」
 「だって、赤ずきんとオオカミが幼なじみって設定なんですよ。それを知っているおばあちゃんが、二人をくっつけようと……
  猟師と画策するなんて」
 「わたしもオオカミさんに食べられたい!」

 ととろの黄色い声に廻りが桃色がかる。背中でととろの体温が上がっていることが伝わった。
 ととろもあかねも花も恥じらう高校生。このお年頃は惚れた腫れたに敏感なとき、人を想うことをきゃっきゃと喜び、
うふふと隠したがる、甘くも脆い思春期真っ盛り。あかねは自分の隠しつづけた妄想が、即座に閃いた作り話で不用意にも尻尾を
見せてしまったのではないかと息を止めたが、零れたミルクはカップにはもう戻ることはなく、あかねの黒タイツの太ももを
真っ白く、白く汚したのだった。一度濡れた脚は拭いても拭いても染み込むばかり。決して元の色へとは戻らない。
0137わんこ ◆TC02kfS2Q2
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2014/04/30(水) 10:25:25.51ID:UbGoQIXB
 「こんな……」
 「女子の憧れじゃない?」
 「オオカミですよ」

 脚を組み替えたととろはもう一度オペラグラスを二つの瞳で覗いた。
 視線の先にはととろやあかねと同じ制服姿の女子高生。明るくも落ち着いた髪がレンズ越しに香る。やはり花も身もある
女子高生にはパステルカラーが似合う……はずだが、彼女自身が拒んでいるかのように見えた。
 相手は年上の男性だ。スーツ姿に身を包み、身なりはかなり整っている。かなり、金には不自由しない生活をしていると伺える。
ただ、そこはかとなく硝煙のような匂いがぷんとする、ぶっちゃければ堅気を感じさせない空気が彼の周りには張り付いていた。
抜き差しならない世界に生きる者に似合うのは無彩色。これは誰の目にも見えた。

 あかねとととろは二人が知らない世界をちょっと垣間見た。
 それだけで胸の高まりが止まらない。

 「ふう……」

 オペラグラスを下ろしたととろは自分たちの世界に舞い戻り、それを確認しようと口火を切った。

 「さて、オオカミさんの想いを知った赤ずきんは、どう答えるんでしょうかね!?あかねちゃん」
 「わ、わかりませんっ」
 「出し惜しみなんてずるいよっ」

 うそです。
 オオウソです。
 黒咲あかねはウソツキです。

 これ以上顔を赤らめたくないから、あかねはそっとウソをついた。


   おしまい。

ttp://jbbs.shitaraba.net/bbs/read.cgi/internet/3274/1297603322/261
避難所・タロット企画。11【正義】カップルウォッチャーととろ
去年の夏の企画だけど、できたよー。

ttp://dl6.getuploader.com/g/sousaku_2/794/totoro_justice_.jpg

おしまいです。
0139わんこ ◆TC02kfS2Q2
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2014/05/01(木) 21:40:09.94ID:sTIf036P
かわいすぎる。登場させちゃった。

烏丸アリサ
>黒髪、碧色の目を持ったハーフの少女。
>肩まで伸ばした髪をポニーテールにしている。
>高校一年、普通科。習字を勉強しているようだ.

http://www15.atwiki.jp/nisina/pages/240.html

イキます。

     『アリサとわんわんおー』


 「わんっ」
 「がぶっ」
 「きゃんっ」
 「わおっ」

 高等部一年の体育はまるでドッグランにいるようだ。ゲージに囲まれた広場で所狭しと駆け巡る一匹の仔犬がいるからだ。
バレーコートに響き渡る鳴き声に生徒一同目を見張る。寒い外とは違って暖かな体育館の中、久遠荵は雪降る庭の仔犬に負けじと
ボール追いかけ走り回っていた。

 買ったばかりのスーパーボールさながら荵は跳ぶ。 
 自分の守備範囲から大きく逸脱していても、隕石かと見紛うスパイクも、右手左手体全体で跳ね返す。

 「荵ちゃん。無理しないで」

 目の前に飛び出した荵には、額に汗を垂らしてしまうこと請け合い。
 いつも大人しい烏丸アリサでさえもだ。

 「烏丸りんが利き手痛めちゃいけないっ」
 「これ、授業なんですけど〜」
 「この後、お昼休みに書いてもらうんだからねっ」

 目を輝かせた荵は、くんくんとアリサの体操着に鼻を近づけた。微かに香る墨汁のにおいで不思議と落ち着くからだ。
 一方、微かに膨らんだ胸に当たりそうなぐらいな荵の髪がアリサの鼻孔をくすぐった。

 「烏丸りんの書道はごちそうだっ」
 「恥ずかしいです〜」
 「恥ずかしいのもごちそうのうちっ」

 とにかく他の生徒の目が気にかかる。アリサとしては、いち早くゲームを続けてほしいとやきもきしていたが、
再開したら再開したでアリサのレシーブを荵が奪ってしまうのだ。業を煮やした体育教師がホイッスルを鳴らした。

 「始めるぞ。久遠!」
 「わおっ」
0140わんこ ◆TC02kfS2Q2
垢版 |
2014/05/01(木) 21:41:41.67ID:sTIf036P
 ゲーム再開、サービスを迎え撃つはアリサと荵のチーム。
 アリサは右後方、荵はセンター後方を守る。掛け声と共にボールが宙を舞い、放物線を描いてコートすれすれのラインに飛び込む。
 アリサが利き手伸ばしてグーでボールを受け止めようとしたときのこと。荵の脚では間に合わず、水泳のスタートよろしくダイブして、
顔面でボールをレシーブという偉業を成し遂げた。そのままコートに沈んだ荵の周りには人だかりが築き上がっていた。

 落胆と唖然の意味を込めてアリサもまた両膝ついてへたりこんでいた。

 「もう〜」


      #


 程なくして保健室のベッドの中、荵はアリサが制服姿で頭をもたれているのを発見した。
 もじもじと荵と目を合わせることが恥ずべきことかと言わんばかり。

 「べ、別に体育ぐらいで筆持てなくならないし〜」

 表情の読めないセリフは何だか不安を掻き立てるもの。荵がくうぅと鼻を鳴らしていると、アリサは後ろ手で荵に
一通の書簡を差し出した。きれいに折り畳まれた便箋がアリサの性格を良く表し、お世辞にも上手いとは言えない文面と文字が
アリサの不器用さを良く表していた。わざわざ文面にしてアリサの思いを伝えなくても……上のように考えるだろう。
しかし、荵はアリサの手紙を読んで安心をしていたのだから結果オーライだ。

 「ふふっ」

 荵のくすくす笑いにアリサは目を合わせる勇気を持った。

 「メールじゃなくて、筆で手紙なんて烏丸りんらしいっ」
 「あの、あの……メールは……苦手です〜」

 荵はアリサの制服から墨のにおいがしていたことに尻尾を振った。


     おしまい。


ラノベのお試し版っぽく。
ttp://dl6.getuploader.com/g/sousaku_2/797/alisa_shinobu.jpg

ではでは。
0141創る名無しに見る名無し
垢版 |
2014/05/19(月) 21:29:08.46ID:4blKa7HF
からすまりん
0142創る名無しに見る名無し
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2014/07/23(水) 13:19:15.15ID:ckO+2sr7
先輩!夏休みですよー
0143創る名無しに見る名無し
垢版 |
2014/08/11(月) 21:01:12.09ID:caWm4dDc
お題ください
0144創る名無しに見る名無し
垢版 |
2014/08/12(火) 01:30:59.17ID:1k7b+l52
体 操 着
0146創る名無しに見る名無し
垢版 |
2014/10/21(火) 21:42:44.49ID:q/01qOub
先輩!いますか!?
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