主従キャラバトルロワイアル part2
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当スレッドは、漫画やアニメに登場する主従キャラでリレーSSの形式でバトルロワイアルを進める
「主従キャラバトルロワイアル」という企画の為のスレッドです。
前スレ
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主従キャラバトルロワイアル@wiki (まとめ)
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主従キャラバトルロワイアル専用したらば掲示板
ttp://jbbs.livedoor.jp/otaku/15038/
【参加主従一覧】
【Fate/Zero】 衛宮切嗣/セイバー
【Fate/Zero】 ウェイバー・ベルベット/ライダー
【Fate/Zero】 雨生龍之介/キャスター
【コードギアス 反逆のルルーシュ】 ルルーシュ・ヴィ・ブリタニア/ジェレミア・ゴットバルト
【コードギアス 反逆のルルーシュ】 ユーフェミア・リ・ブリタニア/枢木スザク
【コードギアス 反逆のルルーシュ】 天子(蒋麗華)/黎星刻
【東方儚月抄】 レミリア・スカーレット/十六夜咲夜
【東方儚月抄】 西行寺幽々子/魂魄妖夢
【東方儚月抄】 蓬莱山輝夜/八意永琳
【HELLSING】 アーカード/セラス・ヴィクトリア
【HELLSING】 インテグラル・ファルブルケ・ウィンゲーツ・ヘルシング/ウォルター・C・ドルネーズ
【スター・ウォーズ】 ルーク・スカイウォーカー/C-3PO
【スター・ウォーズ】 ダース・シディアス/ダース・ベイダー
【ゾンビ屋れい子】 姫園れい子/百合川サキ
【ゾンビ屋れい子】 雨月竹露/姫園リルカ
【戦国BASARA】 伊達政宗/片倉小十郎
【戦国BASARA】 織田信長/明智光秀
【うたわれるもの】 ハクオロ/トウカ
【おまもりひまり】 天河優人/野井原緋鞠
【ジョジョの奇妙な冒険】 DIO/ヴァニラ・アイス
【そらのおとしもの】 桜井智樹/イカロス
【まよチキ!】 涼月奏/近衛スバル
【北斗の拳】 シン/ハート様
【魔法少女リリカルなのは】 八神はやて/シグナム
【物語シリーズ】 阿良々木暦/忍野忍
25組50人
雑談スレから転載
89 名前: ◆YwLV7iJ2fw[sage] 投稿日:2011/12/01(木) 19:46:52 ID:Gy1twSqI0
本スレが未だに規制中なのでこちらで。
本スレでご指摘ご感想をくださった方々、有り難う御座いました。
恥ずかしながらスザクの服装の件については完全に失念していましたので、
先程wikiの方で加筆保管して参りました。 そう言えば水と食料が基本支給品に入ってないロワって珍しいよな。
…良かったなセイバー、stay仕様じゃなくってw 土曜だけで書けると思ってたら、意外と時間かかった…
投下します 少女は、人ではなかった。
頭上には輝く輪を戴き、背中には二枚の翼を持っていた。
自らの存在を誇示するかのように、不可思議に煌めく白銀の翼。
その両翼で周囲の闇を切り裂きながら、シナプス最強の戦略エンジェロイドタイプαイカロスは疾走していた。
白い甲冑に包まれたほっそりとした体躯は、華奢な少女のものである。
だが、その両足がアスファルトを蹴り立てる轟音は、到底ただの少女のものでは有り得ない。
瞬き一つする合間にも、イカロスの身体は瞬間移動でもしたかのように前進し、その後には砕け散ったアスファルトの粉塵がたなびく。
周囲の耳目を大いに惹きつけるであろう、先程の大爆発。
それを我が身に集めるべく、イカロスはこうして囮としての役割を自らに任じていたのである。
周囲は開けた草原だ。
好戦的な人物であれば、こうして目立つイカロスの姿を捉え、狙って来るに違いない。
「こうするしかなかった……こうするしか、なかったんです。マスター……」
しかし、そんな荒々しくも大胆な行動とは裏腹に、イカロスは悲しみに満ちた声を力なく漏らす。
つい先程、イカロスは隠れ潜んでいた人間と、機械仕掛けの従者を殺害した。
相手の動向を、確かめる事すらせずに。
それは平和を愛し、人を傷付ける兵器を何よりも嫌う智樹の意に反する行為だ。
決して許されるはずもない罪科だ。
それを理解していてなお、イカロスはそうせざるを得なかった。
かつて、己が兵器たる本性を智樹に見せた時、彼はそれを許してくれた。
本当はただの女の子でしかないのに、そんな機能を持たされている事が可哀想だと。
でも、お前のその力のおかげで友達が助けられる――そう、言ってくれた記憶(メモリー)はイカロスの記憶領域の
一番大切な所に保存されている。
嬉しかった。
主の意と共に、空を自由に翔ける喜びを、初めて得た。
だが、今の状況はその時とは違う。
大勢の参加者の中から、マスターだけを生き残らせる。
そんなエゴイスティックな目的の為に、イカロスは自分達と同じ立場の参加者たちを――罪もない彼らを虐殺する事を決意したのだ。
太古の昔、シナプスの尖兵として地上を焼き払った時のように、無慈悲な空の女王となって。
自分の本性は、やはり兵器でしかなかったのだと、イカロスはマスターに申し訳ない気持ちでいっぱいになる。
他の道をシミュレートしなかったわけではない。
八雲紫なる女性との問答において、まず争いを回避しようとした者がいたように、この殺し合いを良しとしない者たちは
それなりにいるはずだ。
智樹ならば、そんな彼らと手を取り合い、この殺し合い自体を打開しようとするだろう。
――だが、それでどうなると言うのだろう。
打開派と手を組めばあの時、殺し合いの続行を望んだ者たちを排除する所までは可能だろう。
しかし、ここは既に殺し合いのシステムの中なのだ。
いつまでも殺し合いが停滞していては《禁則》に触れてしまう。
使える時間は有限。
その中で、あの八雲紫を打倒し、なおかつその間マスターの身の安全を保ち続ける……
そんな奇跡が起きる可能性は、ZEROに近いとイカロスの電子頭脳は算出していた。
なにせ、八雲紫の居場所すらわからないのである。
彼女に拉致された時も、今ここへと送られてきた時も、イカロスのセンサーは何の兆候も捉える事が出来なかった。
ならば、何かの奇跡が起こり八雲紫と対峙出来たとしても、次の瞬間には再びどこかへと落とされてしまうだろう。
そして、そここそが彼女の言うところの、地獄であるかも知れないのだ。
あの見せしめにされた男たちのように、大事なマスターが苦悶の絶叫をあげる様など、シミュレーションすら行いたくなかった。
しかも、それが五千四百万年も続くなどと。
7千万年前に建造されたイカロスには、その途方もない時間が実感出来る。
八雲紫との対決の道だけは選べない。
それが、イカロスの電算能力が導き出した結論であった。
その一方で、参加者たちの皆殺しという道も、実現困難である事は明らかだった。
最初の主従こそ予想外にも難なく殺せたが、何せ殺し合いと言うほどである。
決して、誰かが一人勝ち出来る様にはなっていない筈だ。
それは、イカロスに施されたデチューンからも判断出来る。
イカロスが本来の能力を発揮すれば、このような会場はAporonの一撃で跡形も無く消し飛んでいる。
それをさせないように制限しているという事は、八雲紫が望む殺し合いとは対等な力関係を基本としているのであろう。
1組ずつ、確実に。
それがこの殺し合いの、デフォルトスタイルなのだ。
「でも……それじゃ間に合わないかもしれない」
前述した通り、参加者を皆殺しにして智樹を救うというプランも、決して成功率が高い訳ではなかった。
時間を経る毎に、マスターが死ぬ確率は高まっていくのだ。
こうしてイカロスが走っている間にも、智樹に魔の手が迫っていないとは言い切れない。
マスターを護りながら、他の参加者たちを殺していくプランもあるにはあったが、マスターに静止された時点でイカロスには
行動の自由がなくなってしまう。
エンジェロイドにとって、マスターの命令は絶対なのだから。
故に、イカロスにとってマスターを救う道は『これしかなかった』のである。
だが、そうなると智樹の命運は、まさに運否天賦であった。
智樹は妙なバイタリティに溢れる少年ではあったが、能力的にはただの中学生に過ぎない。
どう見立てても最初の12時間を過ぎる頃には、生存率は半分を切っているだろう。
主の傍にいる事が出来ない以上、イカロスが取れる対策は、より早く他の参加者たちを皆殺しにする事だけだ。
イカロスが付近の参加者を殺せば殺すほど、智樹のエンカウント率は低下して安全となる。
だからこそ、こうして闇夜の中でも目立つ姿を晒しているというのに、一向に殺害対象を発見出来ない事にイカロスは焦りを覚えた。
「やはり……あの空に還らなければマスターは救えない……」
紅玉(ルビー)を大粒にカットしたかのようなイカロスの両眼が、夜空に輝く満月を捉える。
空の女王の異名通り、本来のイカロスにはマッハ24という高速で空を翔ける機能が備わっている。
それは単独で大気圏を突破し、宇宙空間への飛翔すらも可能とするほどの、驚異的な能力だ。
だが、いつのまにハッキングを受けたのか、現在のイカロスは兵装の展開はおろか、単純に飛ぶ事すら出来ずにいた。
走りながらもイカロスは自らのシステムをハックして、その制限を解除しようと試みていたのだが、電子戦に優れたタイプβニンフなら
いざ知らず、イカロスのハッキングは、遅々として進まない。
「それでも、飛ばなきゃ……マスターを救えないエンジェロイドに価値なんて……ないっ!」
手段は、ある。
絡め手が駄目なら、力押しをすればいいだけだ。
制限で翼への動力供給が絞り込まれているというのなら、そのか細い動脈(パス)に無理矢理高出力の力を供給してやればいいのだ。
イカロスに搭載された動力炉は、シナプス最高の技術の結晶。
可変ウィングの核(コア)。
それはイカロスというフレームに、収まりきらないほどの出力を内在している。
だから、フレームへのダメージを度外視すれば、理論的にはそれは可能なのである。
そう、フレームへのダメージを度外視すれば。
「可変ウィングシステムセーフティ解除、モードウラヌスクィーン――オーバードライブ」
決断を下すや否や、イカロスは自らを律する命令文(コマンド)を唱えた。
そのコマンドに従い、イカロスに内蔵された可変ウィングのコアは無限の力を翼へと流し込む。
それはイカロスの羽根を長く伸ばし、その翼を更に光輝かせる。 そして。
そして、限界を超えた力の発露は、やはりイカロスの身体を蝕むダメージとなってリバースする。
光り輝く羽根が大量に抜け落ち、全身の骨格が軋み声をあげる。
壊れた先から、自己修復機能で修復していくが、到底間に合うものではない。
「アアッ! ウアアアアアアァァァッ!!」
痛みに強いイカロスでも、思わず悲鳴を漏らすほどの激痛が走る。
痛みとは、身体が発する危険のシグナルだ。
このままでは壊れる。
壊れてしまう。
そんなシステムが発する危険信号を、イカロスは意思の力で無理矢理抑え込む。
壊れてもいいと。
どうせもう、マスターに二度と褒めて貰えないのだ。
二度と叱ってもらう事も、頭を撫でて貰う事もない。
この身はただ、マスターを生還させるためだけのただの道具。
それを達成出来る時間だけ持てば、それでいい。
だいすきなマスターと、ずっといっしょに居たい。
そんな分不相応な望みなど、とうに捨てている。
そうでなくては、成らない。
そうしてすら、事は成らない。
悲壮な覚悟を決めて、エンジェロイドの本分を全うせんとイカロスは飛び立つ。
疾走の勢いを借りて、大空へと一歩踏み出す。
「戦略エンジェロイドタイプαイカロス、出撃します!」
◇ ◇ ◇
そして戦場の空に、空の女王は再び君臨する。
零れ落ちた雫は、そらのおとしもの。
――さようならマスター。どうか生きて――生き延びてください。
【Dー4/空/1日目深夜】
【従:イカロス@そらのおとしもの】
[主従]:桜井智樹@そらのおとしもの
[状態]:オーバードライブ状態(現在『空の女王』になっており身体能力が上がっています)
[装備]:なし
[方針/行動]
基本方針:マスター以外の全参加者の皆殺し。
1:空から殺害対象をサーチする
2:掛けられた制限をなんとかする。
[備考]
※参戦時期はカオス戦(1回目)終了後です。それ以降の出来事はまだ知りません。
※このままだといずれ、身体が崩壊します。 投下乙です。
確かに翼持ちはある程度の飛行が可能だって制限だったが、この代償は大きいな…!
速度や高度にも制限かかってる可能性は高いし、果たして目的を果たせるのか…?
しかし、なんとも悲痛な覚悟だが、その方向死体しかいないよイカロスさん。
まあ、飛行してる以上次に誰かに遭遇できる可能性はかなり高いけど。 投下乙です
ある程度の正気は残してる状態なのか
先走って奉仕マーダーに走ったがそのご主人様はなあ…
しかも皆殺しより先に崩壊する方の可能性が大きいのが泣ける
さて、何かで方向転換する可能性もあるがどうなるやら 【001】
「今度こそ成仏しろよ」
そんなことを言って僕はゴミ捨て場の前でパンパンと手を打った。
別に何かを拝んだりだとか手締めとして拍手を打ったというわけではない。ただ一仕事を終え、手から埃を払っただけだ。
あれから。
人気のない街中へと入り、続けて当て所なくぶらぶらと歩いていた僕たちは住宅街の一角にゴミ捨て場を見つけると
これ幸いにとあのかつては僕の愛車だったマウンテンバイクの残骸をそこに、多少の葛藤はあったものの捨てたのだった。
いやだって、鈍器にするならもうそこらじゅう、例えば交通標識なんかだとかをどこからでも調達できそうではあったし
そうなるとわざわざ自転車の残骸なんて使いづらいものを後生大事に抱えていてもしかたがない。
なにより格好がつかないし、どこか不憫なビジュアルですらある。それにそもそもとして一度は捨てたものなのだ。
そういう訳で、僕は改めてかつては愛車として活躍していたマウンテンバイクと別れを告げたのだ。
もしかすると、じゃあ捨てるんだったらどこでもいいだろう。なんなら海に向かって放り投げればよかったじゃないか。
なんて言う人がいるかもしれないが、しかし僕はそんな考えには断じてノー!だと言わせてもらおう。
そんなことをしては僕のイメージが……ではなく、一般的な常識としてゴミをルールを守らずに遺棄するのは犯罪行為だ。
尤も、その常識というものがここでだとどうなのかは不明なので、あくまでマイルールを暫定的に採用することになるのだが。
ゴミはゴミ箱に、資源ゴミは指定のゴミ捨て場にという訳で、わざわざゴミ捨て場を探してそこに捨てることにしたのである。
おいおい何を言っているんだ、自転車やなんかの大きなものは資源ゴミではなく粗大ゴミとして専用の業者に引き取って
もらうものだろう?とつっこんだ人は中々に鋭い。だがしかし、その点においても僕は抜かりない。
資源ゴミと粗大ゴミとを区別する分け目はそのゴミの大きさ――つまりはサイズによる。ここで素材は考慮されないのだが、
粉砕されたマウンテンバイクはもはや自転車の体をなしてはいなく、無数の細かいゴミでしかないから資源ゴミとして
捨ててもいいのだ。多少、規定のサイズを超えるパーツもあったが、それは吸血鬼の力を駆使して解体した。
ついでに、金属部品とプラスチック、ゴムのパーツも分別しておいた。一分の隙すらないのだ。
「こと、ゴミ捨てにおいてはこの阿良々木暦をあなどらないでいてもらおう!」
「……誰に向かって話しておるんじゃ我があるじ様よ」
忍の視線が冷たい。
「いや、決意をもってスタートしたのはいいけど、何も起きないもんだからちょっと、な」
「まぁ、それはわかるがのう」
あの砂浜から出発し、街中に入るあたりまでは誰かどこかに潜んでいないか、どこからか奇襲されるんじゃないかと
緊張しながら歩いていたものだが、どうやらこの島は思いのほか広いらしく、じゃあ滅多なことでは誰かと出会わないんじゃないか
という疑念を抱き、そしてそれから数時間ほどしてそれを実感してしまえば最初にあった緊張感など維持できるはずもない。
そして、ただ知らない夜の街を徘徊するだけという状況に耐えかねた結果が、僕をゴミ捨て場に駆り立てた……とか、みたいな。
「ミスタードーナツでも見つかればよかったんじゃがのう」
「それだとお前がドーナツ食ってるシーンだけでこの話は終わっちまうよ」
本当はもっと必死にならなくちゃいけないってことは理解してるし、あの決意は決して偽物じゃなかったはずなんだが
なんせ未だに僕らは自分達が島のどこにいるのかすらわかってないんだよな。
島の中にある市街のどこかってのはわかってはいるんだが。
「果報は寝て待てとも言うが?」
「この場合、待ってやってくるのは訃報だよ」
「うまいこと言えてるの」
「シャレにならないけどな」
さて、本当にどうしたものか――。 【002】
深く暗い森の奥であどけない少女の悲鳴が響き渡っていた。
「――ねぇ、お姉さんと一緒に遊びましょ? お菓子あげるから、ねぇ、いいでしょう?」
「ひっ! ちょ、ちょっと……嫌です! あひゃ、やめてくださいってば! ゆ、幽々子様! 見てないで助けて――」
いやいやを繰り返しながら助けを求めているのが妖夢で、小さな彼女にしがみついて息を荒げているのは百合川と言う。
二人は足元も覚束ない森の中を器用に、まるで情熱的な南米のダンスのようにつきつ離れつくるくると回っている。
一見喜劇のようではあるが、得体の知れない女に絡まれた妖夢の悲鳴には本物の恐怖が混じっていた。
「あらあら、どうしようかしら」
妖夢の主である幽々子はなにも考えていなさそうな笑みを浮かべ、ただ従者の危機を面白そうに眺めているだけだ。
事態の滑稽さが増し、なおのこと妖夢が不憫という風になってゆく。
「百合川〜〜っ」
翻って、百合川の主であるれい子はという額に青筋を浮かべていた。
従者が命を聞かず足並みを乱していること。そして彼女の趣味趣向があいも変わらずなこと、その両方に対しての怒りだ。
れい子は強く地面を蹴ると奇妙奇天烈な踊りを続ける二人のほうへと突進し――
「このどアホが――――ッ!!」
「ぶべらっ!?」
と、見事なドロップキックを百合川の即頭部に炸裂させた。
その時、れい子の短いスカートが全開で捲れ上がり派手な下着が露になったのだが、それはさておき
れい子の全体重(一応ダイエット中)がのせられたドロップキックを喰らった百合川はおもしろいくらい見事にぶっとび、
地面の上を勢いよくごろごろと転がると木の幹へとぶつかりそのまま動かなくなった。
そして、半泣きになっていた妖夢はというと、その隙に地面を這って幽々子の方へと避難している。
「ハァハァ……。あー、ほんと最悪ね、こいつは」
脳震盪でも起こしたのかぴくりともしない百合川を見下ろし、れい子は大きな溜息をついた。
百合川サキは完全な支配下にさえあれば実に優秀な戦闘力を持ったゾンビだが、こうも本性を曝け出してしまっては
ただのトラブル&キリング発生マシーンでしかない。一蓮托生の身としては気が重く憂鬱になるばかりだ。
「こんなことなら同じ百合川でも妹の方だとよかったんだけど……と、そうだ」
思い出したようにれい子は振り返る。
馬鹿なゾンビのせいで有耶無耶になりかけたが、今は殺し合いの場において敵と遭遇したという状況なのだ。
もう場が白けきったという感はあるが、それならば――とれい子は考える。
「えーと、その、どうしようかしら?
うちの相棒が失礼を働いたのはあやまるけど、だったらこの際、ここはひとまずこれで手を打つってのはどう?
私としては馬鹿正直に殺しあうってのもおかしいって思うし、もしあの八雲紫って女を出し抜くアイデアがあるなら――」
その正体はともかくとして相手は一見無害そうな女と子供だ。れい子としては殺しあいたくないというのが本音である。
いや、もし相手が女子供でないとしても極悪人でもない人間を殺すのはれい子のポリシーに反する。
今のところ、殺していいのは八雲紫という女ただひとりしかいない。だから、れい子は協力しないかと提案しようとしたが、
「――じゃあ、殺し合いを始めましょうか。尤も、生きているあなたと生きていない私とじゃ殺し合いっこにはならないけど」
しかし亡霊の女は軽い笑みを浮かべたままそれを無視した。
嫌な予感が走る。この時れい子はすでに自然と戦闘体勢を取っていた。
「ちょっと……、何を考えているの? あんたまさかあの八雲紫って女を信用して殺し合いをおっぱじめる気?」
「それを教える必要が……いえ、今ここであなたが知る必要があるのかしら?」 幽々子の周囲になにか淡く光るものがふわふわと浮かび始める。
「蝶……?」
それは蝶――幽々子の霊力から生み出された死霊の化身であった。
「蝶は死の前兆を知らせるもの。あなたはこの死の誘いを抗い続けることができるかしら?」
無数の蝶が森の中を少しずつ淡い光で照らしてゆく。そしてそれは次第にれい子を囲い、死へと誘いはじめた。
【003】
それを避けられたのはれい子がすでに身構えていたことと、これまでに幾度も異常な敵と戦いその経験を有していたからだ。
浮かび上がった死霊の蝶の群れから数羽が飛び出すと、一羽が一つの光弾と変じて音もなくれい子へと殺到する。
ゆるやかな弧を描いて飛来する光弾を、れい子は持ち前の運動神経を発揮し、飛んで避けた。
一発、二発、三発と、避けられた光弾は直前までれい子がいた場所やその背後に着弾し火薬が炸裂したような音を鳴らす。
「くっ……!」
首だけを振り向かせ、確認した光弾の威力にれい子は冷や汗を垂らした。
地面には小さなクレーターが生まれ、直撃を受けた木は樹皮が捲れ上がり、幹が抉れて生木の部分が覗いている。
爆弾――という程でもないが、少なくとも子供だけで遊んじゃいけない花火くらいの威力はあるらしかった。
「(このままだと、まずい……)」
れい子は光弾へと姿を変えて次々と襲い来る蝶を避けながらこの場を切り抜ける方法を考える。
現状は最悪に近い。百合川のスピードならば弾幕の間を縫って接近しあの幽霊へと一撃を加えることも不可能ではないが、
今は(れい子自身が気絶させたのだから自業自得だが)ゾンビの百合川を使うことができない。
「せめて、(私だけでも)逃げる方法を考えないと……!」
立ち並ぶ木々がれい子に盾とされその身を抉られる。避けに徹するだけならばそれはあまり難しいことではなかった。
だがそれだけでは問題の解決にはならない。これといった打開策も浮かばず、焦燥が募るばかりだ。
今のところ順調に光弾を避けてはいるが、いくら避けても蝶の数が減っている様子は窺えない。
無尽蔵というわけではないだろうが、しかしそれを避け続けるれい子の体力よりかは余裕があるだろうことは確実だ、
その上、森の中というシチュエーションはれい子にとってよい方向にも悪い方向にも同じように働く。
盾となる木は時に行動の邪魔となり、苔に覆われた地面はいつその足を取るとも限らない。
「――あっ!?」
そして危惧した瞬間はすぐに訪れた。
連なって発射された光弾を避けたのはよいが、その際に出っ張っていた木の根に足を取られたのだ。
地面に倒れこむまでの間に受身とそこからの離脱をシミュレートする――が、それよりも早く追撃がれい子の背中を打った。
その瞬間れい子が思い出したのは、もみじなどと言って裸の背中を叩き合う遊びのことだ。
光弾で身体を打たれる感触はあれとよく似ていて、そしてその何十倍も強烈だった。
「…………っ、…………!!」
雷を落とされたような衝撃に悲鳴を上げることすらもできず、れい子は地面へとそのまま倒れこんだ。
激しい痛みに手足は痺れすぐには起き上がれそうにもない。このまま続けて攻撃を受ければもうそこでお終いだ。
だがこの瞬間、無様に土へと顔をつけてその感触を感じ取った時、れい子の頭の中に一つの方法が浮かび上がった。
「(私の……“武器”を使えば……)」
だがしかし、それを実行するにはこの地面に伏せた状況はマズい。これでは“自分が最初の餌食”になってしまう。
すぐさまに立ち上がりあの幽霊女から距離を取らなければならない。しかし、まだダメージが回復するまでには時間がかかる。
故に――れい子は動くことを放棄し、“逆に動かないように努めた”。 「(ここは“気絶したフリ”で、少しでも時間を稼ぐ……!)」
無論、ここで相手が無慈悲にも追撃をかければそこまでだ。
だがしかし、れい子はこれまでの態度からあの女がそんなことをせずに“余裕”を見せるだろうと踏んでいた。
「なんてことないのね。それじゃあお遊びはお終いにして、あなたを殺してしまいましょうか」
そして、そのれい子の予想は正解だった。
幽々子は蝶を使うのではなく、自ら止めを刺すべく“ゆっくりと歩いて”近づいてくる。
れい子の元へと辿りつくのに要する時間はおよそ20秒ほどだろうか。できればもう10秒は欲しいとれい子は考える。
“30秒あればダメージは回復し、ダッシュで距離を稼ぐ”ことができる。
「(そうだ……もっと近づいてこい。こんな身体だと、近づいてきてもらわないと攻撃を当てることが)――できないからっ!」
地面に顔を伏せたまま足音だけで近づいてくる幽々子への距離を測り、
彼女が3メートルの位置まで来たところでれい子はスカートに挿していた拳銃を早撃ちの要領で抜き、――撃った。
雷鳴の様な耳を劈く音が静寂な森の中に響き渡り、れい子の測っていた通りの位置にいた幽々子が身体をくの字に折る。
「幽々子様ッ!?」
離れた位置で事の成り行きを見守っていた少女が悲鳴を上げる。
だがそんなことはどうでもいい。問題は“後10秒だ”。どうせこの攻撃は――この“幽霊女には通用しない”。
「…………あらいやだ。身体に穴が開いてしまったわ。こんな“弾”を受けるのは初めてよ」
やはりそうだった。幽々子は拳銃で撃たれたにも関わらずなんら痛痒を感じている様子がない。
ソンビと同じなのだ。もう生きてはいない者に、痛みはダメージとならない。
もし有効なダメージを狙うなら刃物や鈍器だ。亡霊だろうとゾンビだろうと動けなくなるまで崩すのが最良の攻略法である。
なので破壊面積の小さな銃弾は有効な攻撃ではない。そう、れい子も理解していた。これはただの時間稼ぎにすぎない。
「あなた、亡霊を前に死んだフリだなんておもしろい子ね」
そして、“やはり”。目の前の幽霊女はれい子の反撃に対しても激昂することなどなく余裕を保ったままだ。
強者であるが故、絶対死なないと確信してるが故に、弱者に興味を持ち、こんなにも簡単に隙を見せる。
拳銃を発射してから10秒、そして余裕を持ってもう1秒。
身体の中の痺れが取れたことを確認したれい子は猫のように素早く立ち上がり、彼女に背を向けて駆け出した。
「あら? 逃げちゃうの?」
それは正解だ。れい子は逃げる為に疾走する。だがしかし、今距離を取っているのは逃げるためではない。
“呪文を唱える時間”を稼ぐ為。そして、なにより――その“攻撃に自分を巻き込まないよう”にする為ッ!
ジャスト3秒で15メートル駆けたれい子はその場で止まり振り返った。距離を取るのは必要。
だが相手に攻撃を再開させるのもまずい。速やかにこちらが相手に“有効な攻撃”を仕掛けなければいけない。
れい子はゾンビ召喚者の印である五芒星(スター)が描かれた右の掌を突き出すと、間髪入れずに“呪文”を唱えた。
「魔王サタンよ――ッ! 我が願いを聞き入れ給え!
この静謐な森に満ちる死せる者共を死の楔から解き放たんが為、そなたの偉大な力を持って今ここに一時の息吹を!」
それは反魂の呪文。魔王サタンと契約した《魔女》のみが行使できる“死者をゾンビとして蘇らせる力”だ!
「なんなの……?」
幽々子と、そして彼女の従者である妖夢が怪訝な顔をする。
彼女達は亡霊と半人半霊である。なので、れい子の呪文が真なる力を持っていようと影響を受けようはずもない。
例え魔王サタンの力を借りているのだとしても、ソンビ使いである以上、その呪文の効果は死体にしか適用されない。
ならば、何故れい子は呪文を唱えたのだろうか?
ここには死体など(すでにれい子のゾンビである百合川を除けば)ありはしないのに。
れい子は幽々子達の正体を見誤ったのだろうか? いや違う。彼女は“ここに死体があること”を知ってる! カチ……カチ……、カチカチ……カチカチ…………――
何かを打ち鳴らす不気味な音がどこからともなく聞こえ始めてくる。それは死神の持つ時計の針の音――死への秒読みだ。
カチカチ、カチ、カチ……カチカチカチ、カチカチカチカチ……カチカチカチ……――
「小さい頃、何度も同じ“失敗”を繰り返したわ。ゾンビ召喚術を試そうと公園や山の中で隠れて行使した時にね。
だから“学習”した。どこに“死体があって”どこに“死体がない”のか。
私のゾンビ召喚術は私の声が届く範囲に無差別に作用してしまう。無差別にゾンビ化してしまうッ!」
カチカチカチカチカチカチカチカチカチカチカチカチカチカチカチカチカチカチカチカチカチカチカチカチカチカチカチカチ――!!!
「これは“死番虫”!?」
不気味な音に完全に囲まれるに至ってようやく幽々子はその音の正体に気づいた。
それは“虫”だった。地面を覆いつくす無数の“虫のゾンビ”が頭や牙を打ち鳴らす音だったのだ。
「さっき地面に倒れて土の臭いを嗅いだ時に思い出したのよ!
そして、抉られた木の幹の中に“木の中を住処とする顎の強い虫が住み着いている痕跡”を発見した!」
自然の中にある虫や野生動物の死骸は、人間社会の中にあるものと違ってどこかに片付けられたり処分されるということがない。
故に、自然の地面とは積み上がった死体の層であり、どこにでも死体があるのだとれい子は幼い頃からの経験で知っていた。
「じゃあ私はおさらばさせてもらうわ。身体中が虫食いになるのは御免だからね」
言って、再びれい子は踵を返して走り出す。今度は二人の目の前から姿を消すまで振り返ることすらなかった。
【004】
「やれやれ、死霊魔術師だと思ったら蟲使いだったなんて……逃げられちゃったわね」
れい子が立ち去った後、幽々子と妖夢に襲い掛かってきた虫の大群はあっけなく幽々子の光弾によって打ち払われた。
虫のゾンビとは言っても、自然の中であればすなわちその分解(処分)も早いというわけである。
故に原型を留めているものは少なく、その脅威も見た目ほどではなかった。
そもそもとしてれい子の術で蘇った以上、れい子から離れてしまえばこの手の即席ゾンビは力を長く維持できないのだ。
つまり、虫のゾンビの大群――これすらも、逃げる時間を確保するための時間稼ぎだったという訳である。
「逃げられちゃった……じゃないですよ幽々子様!」
幽々子がくっついた虫を払い、身体に空いた穴を霊体をいじって埋めていると、従者の妖夢が詰め寄ってきた。
頭から虫を被ったのがよほど気持ち悪かったのか半泣きだが、ともかくして珍しい剣幕である。
「あらどうかしたのかしら?」
「いくら紫様の命だからって、見ず知らずの人間達と殺し合いをするなんて本気なんですか?」
粛々と進めていこうとする幽々子に対し、妖夢はこの殺し合いに対しては随分と抵抗がある様子だった。
斬ってから考える――が彼女の信条ではあるが、それも幻想郷の中に敷かれた不文律があってのものでしかない。
妖怪が人間を殺そうと脅かしてもいいが、殺しはしないし殺してはいけないのが現在の幻想郷だ。
故に、妖夢は強い人間や妖怪を問答無用で斬ったことはあっても、殺そうとしたことはない。
それは全て幻想郷(おままごと)の中での話だ。
「勿論、本気よ。それともここで他にすることがあるって言うのかしら?」
「これは紫様が起こした《異変》なんじゃないですか? だったら――」
「だったら、出会った相手を全部のして行けばいいじゃない。ほら、結局することは同じでしょう?」 「え、えぇ……? そ、そうなのかなぁ……うーん?」
「いいのよ。ここは幻想郷ではないのだから――」
苦悩する従者を前に幽々子はいつも通りの薄い笑みを浮かべ、枝葉に覆われて漆黒でしかない空を見上げる。
そこに、彼女の目には何が映っているのだろうか?
従者と違い、彼女はこの殺し合いに対しなんら疑問を抱いてないようであった。
それは彼女の気質なのだろうか、それとも彼女自身がすでに生者ではないからなのか、あるいは――……。
【E-3/山の中/1日目-黎明】
【主:西行寺幽々子@東方儚月抄】
[主従]:魂魄妖夢@東方儚月抄
[状態]:ダメージ(微)
[装備]:なし
[方針/行動]
基本方針:不明。
1:???
【従:魂魄妖夢@東方儚月抄】
[主従]:西行寺幽々子@東方儚月抄
[状態]:健康
[装備]:背負い袋(基本支給品)、不明支給品x4
[方針/行動]
基本方針:幽々子様に従う。
1:う〜〜ん。
【005】
「ハァハァ…………、もう、限界……くたびれた」
山を駆け下り、鬱蒼と茂った森を抜けてようやく月の光を拝むと、もう限界だとれい子は草原の中に飛び込んだ。
去り際に回収した背負い袋をそこらに放り出し、ごろりと横になって弾んだ息を整える。
逃げている途中、何度も木にぶつかったりこけたりしたので服や髪の毛は滅茶苦茶で、もう「……ぼろ」という風だが、
なんとか五体無事に彼女は逃げ切った。
光弾を受けた背中はどこかで手当てする必要があるが、立って歩けないというほどでもない。
「さて、いつまでも寝ているわけにはいかないわよね。こんな状態で誰かに見つかったら危険だし」
れい子は上半身だけを起こすと、目立たないよう姿勢を低くしたまま辺りを見回した。
「ラッキーね。街が近くにある。まずはこの背中を手当てして、それにもうもう服もボロボロだから調達して――」
再び草の中に身を隠すとれい子は素早くこれからの予定を立てる。
まず最優先は傷の手当てだ。そしてボロボロになった制服の代わりに新しい服が欲しい(かわいいやつという条件がつく)。
長期戦になるなら飲食物の確保もしておきたい(そういえばショートケーキが食べたくなってきた)。 「地図にはデパートってあったけど、ここどこかしら? まぁいいか。じゃあ行くわよ。百合か――」
立ち上がり、さぁ出発だ――というところでれい子はそのことにようやく気がついた。
「しまった……完全に忘れてた……」
己の従者を置き去りにしてきてしまっていることに。
これは、確かに不注意だと言われても仕方がないことだが、彼女を擁護する余地もなくはない。
本来、自分のゾンビとして召喚できる存在は召喚術という名前の通り、呼んだり帰したりできるものなのだ。
なのでいつも通りならばここで改めて百合川を召喚すればいいのだが――
「マズった……。実際、あいつがいないとかなり困る」
やはり、ここでは離れたゾンビを呼び戻すことはできないようであった。
これはここに連れて来られてた段階でなんとなしに感覚で理解していたことだが、図らずもそれが実証されたこととなった。
「戻る――ってのはなしよね。(死にたくないし)」
草原の中で立ち尽くし、山のほうを見つめるれい子の身体を夜の海風が静かに撫でる。
「うん」
そして、れい子は決断した。
「さぁ、行こう」
もう、あいつは見捨てようと――。
【E-3/南東・草原/1日目-黎明】
【主:姫園れい子@ゾンビ屋れい子】
[主従]:百合川サキ@ゾンビ屋れい子
[状態]:疲労(中)、背中に大きな傷
[装備]:コルトM1851@現実(弾数x5/6発)、コルトM1851の弾丸@現実(x30発)
背負い袋(基本支給品)、不明支給品x3
[方針/行動]
基本方針:殺し合いを勝ち抜く(?)
0:南無。
1:街へ行って、怪我の治療や物資の調達をする。
[備考]
※参加時期はイーヒン編終了後です。(8巻)
【006】
あれからも、僕たちはただ当て所なく歩き回ることを繰り返すだけだった。
なんとかしてこの現状を打開したいと思うのだが、まずはここが島のどこに位置するかを把握しないと何も始まらない。
なので、僕は地図を開き、あっちかこっちかとにらめっこしながらただ歩き回るのである。 「って言うか、アバウトすぎるよ! この地図!」
簡単なのはいいけど。びっしり細かく書き込まれた地図ってなんか逆に分かりづらいし読む気が失せてしまうものだから。
まぁ、こう言ってられるのも今のうちだけだろう。僕だって大体の当たりはもうつけているんだ。海の近くだ。とかな。
「はいそこ、残念な目で僕を見ない」
「そうは言うがなお前様よ。何が悲しくてバトルロワイアルの中で道に迷って右往左往しなければいけないのじゃ」
「お前だってわからないんだからお互い様だろ」
「儂らザ・ザンネンズって感じじゃの」
「ザが二つ被って呼びづれーよそのコンビ名」
とまぁ、先ほどからずっとこんな調子である。いつも通りの流れとはいえ我ながら恥ずかしい限りだ。
ほんとはやる男なんだぜ僕は。いや、ほんとに。
「お。お前様やそこに人がおるぞ。あいつに道を聞こうではないか」
「なるほど、それは名案だな。でかしたぞ忍」
あれ?
「なぁ、そこなケバい格好したボインボインのちゃんねーよ。ひとつ道を尋ねたいんだがよいかの?」
「お前はどうしてそう死語ばっかマスターしてんだよ――って、そうじゃなくて」
「死語の世界へようこそ」
「意味がわからねー!」
ほら、僕たちの目の前にふらふらと現れたお姉さんもちょっと引いてるじゃないか。
なんか気持ち顔色も悪いし、こりゃちょっとどころかドン引きってやつだぞ。
しかしまぁ、こんな夜道で会うには随分と扇情的で、忍の言葉を借りればボインボインのお姉さんだ。
大きさで言えば羽川と同じくらいかそれ以上あるかもしれない。僕の見立てだと比較して大よそ±2センチの範囲か。
それがチューブトップによってその天辺を露にしているのだというから、一見のセクシーさは比べるべくもない。
もっとも、僕くらい上級者だとこんなわかりやすいエロっぽさよりも、もっと奥ゆかしい中に秘められたものを求めるんだけどな。
「おい、おぬし大丈夫か?」
「そんなに素直に心配するな。悲しくなるだろう……と、ん?」
忍が大丈夫かと声をかけたのはセクシーパンクお姉さん(仮)の方だった。
よく見れば目つきが怪しく、息が上がっているのか随分とハァハァといっている。それにやっぱり顔色もよくないし。
ひょっとして、悪漢に襲われて逃げてきたのだとも言うのだろうか。
もしそうだとするならようやく僕らの物語も動き出すというわけだ。ギャグパートを終え、シリアスな本編というわけである。
「……あ、道? うん、道ならお姉さんが教えてあげる。だからこっちにおいで」
ようやく口を開いた彼女の声はまじかる☆タルるートくん(アニメ)の河合伊代菜ちゃんみたいな声だった。
まぁ、僕としては断然、伊知川累の方が好みなので特に感じ入るというところはないのだけど、見た目相応のかっこ可愛い声だ。
ともかくとして血も涙もない非情な物語かと思ったら案外親切な人物が出てきて一安心だ。これも普段の行いというやつだろう。
「おお、これは親切にすまんの。おい、あるじ様。この女が案内してくれ――ふにゃっ!?」
こっちを振り返った忍を、セク(略)お姉さんが後ろから抱きかかえるとそのまま向こうへと走り出してしまった。
ちょ……、確かに忍は抱きかかえて誘拐したいくらい可愛いが、だからといってそんな断りもなく抱くのはいけないだろう。
反則だ。とんだ協定違反だ。紳士淑女の風上にも置けない。
「忍を抱いていいのは僕だけだッ!」
「お、お、おお〜攫われる〜……って、何を抜かしやがるんじゃお前様は!?」
つい、誤解を与えてしまう発言をしてしまったような気がするが訂正する間もない。
ドップラー効果よろしく刻一刻と遠ざかる忍の悲鳴を追い、僕もセク姉(省略完了形)の後を追って走り出した。 「お姉ちゃん、いっぱい可愛がってあげるからね。最初はおままごとがいい? それとも一緒にお風呂に入ろうか?」
「追いついたら忍の身体を思いっきりぎゅうぎゅうするぞ。鎖骨も肋骨もぷにぷにのお腹も全部僕のものだぁああああ!」
「行くも帰るも地獄じゃああああ〜〜〜〜!」
――もうしばらくは、このノリらしい。
【Fー4/市街/1日目ー黎明】
【主:阿良々木暦@物語シリーズ】
[主従]:忍野忍@物語シリーズ
[状態]:健康(現在吸血鬼の力が高まっています)
[装備]:対怪物戦闘用13mn拳銃ジャッカル(残弾30)@HELLSING
背負い袋(基本支給品)、マスク・ド・パンツのマスク@そらのおとしもの
[方針/行動]
基本方針:ゲームを終わらせて島から脱出し元の日常に戻る。忍と行動を取る。
1:忍を誘拐したセク姉を追う!
2:なるべく戦わない。襲ってくる人間が居ても極力殺さない。
[備考]
参戦時期は鬼物語終了後です。それ以降の時系列の出来事はまだ知りません。
【従:忍野忍@物語シリーズ】
[主従]:阿良々木暦@物語シリーズ
[状態]:健康
[装備]:
[方針/行動]
基本方針:暦と行動を取る。
1:あ〜れ〜。
[備考]
参戦時期は鬼物語終了後です。それ以降の出来事はまだ知りません。
【従:百合川サキ@ゾンビ屋れい子】
[主従]:姫園れい子@ソンビ屋れい子
[状態]:ダメージ(微)
[装備]:クラブの鉤爪@北斗の拳
[方針/行動]
基本方針:基本的にれい子に従う。
0:アハハハハハハハハハハ!
1:れい子がいないなら自分の好きにする。
2:金髪ロリっ子をお姉ちゃんとして可愛がる。
[備考]
※参加時期はイーヒン編終了後です。(8巻)
【コルトM1851】
姫園れい子&百合川サキに支給。
名前の通り、1851年から生産が開始された古い回転式拳銃。.36口径弾を使用する。
弾丸を装填するシリンダーが簡単に取り外すことができるようになっており、
予備のシリンダーがあれば素早く再装填できるのが特徴。 投下乙
前回の引きからバトルに突入するとは
しかし、駄目だこのゾンビ
早くなんとかしないと 乙
物語組のギャグパートはいつまで続くのか
このノリ面白いからいいけどw
そしてゆゆこ……他の東方組となぜ差がついた
紫を信じるが故なのだろうか? 投下乙です。このゾンビ主従はほんとにもうw
よく考えたらサキ好みのキャラってまだまだいるな。天子とかはやてとかレミリア(危)とかスバル(原作的な意味で)とか。
しかしまあ、原作からしてそうなんだが、やっぱり幽々子は何考えてるか解らん。
ましてや、紫の真意が見えてない現状じゃ、メタ的な意味でも誰にも解らんな…w >対怪物戦闘用13mn
m「n」になってるよ
前回からだけど 投下乙です
ゆゆこはナチュラルに命を軽視するから…だけなのか?
主催者と親友な件もあるし、独自の概念で動いているみたいだが…
れい子はれい子で原作的にロワの状況が日常生活みたいなもんだからこのままマーダー路線行ってもおかしくはないんだが…
そして物語組と妹萌えのゾンビは何をしているんだ?
真面目にロワ(?)してる奴もいるのにこいつらはwww とりあえずマーダーは信長・光秀、龍・キャスター、イカロス、リルカ、ゆゆこ、れい子ってところか?
あと政宗とかもそうか? 少し筆休め(?)に一枚。
多分、ロワ中じゃ実現しないと思うドリームタッグ編・その1 「性格豹変コンビ 百合川サキ&ハート様」
ttp://blogimg.goo.ne.jp/user_image/40/f5/93dd428b81302e7f11739e2a8130492d.jpg >>59
イラストまで描けるとか何処の完璧超人ですか貴方は……本気で尊敬します。
これはwikiにもお絵描き掲示板を作らないといけませんね! …私にはそんな技術も知識もありませんがw
ともあれ、これより投下させて頂きます。
草木も眠る丑三つ時。満点の月と立ち並ぶ街灯によって照らされた夜の車道を、奇抜なファッションの二人の偉丈夫が歩いていた。
太陽に拒まれ、人の世の理(ことわり)に逆らいし夜の住人、吸血鬼。
自ら望んでソレになった男の名は、ディオ・ブランドー。通称DIO。
そのDIOの手によってソレになった事に歓喜し、二つの意味で同じ道を歩むのは、彼の忠実な従者、ヴァニラ・アイス。
二人が宿敵を待ち受けていたはずの館から、突然この殺し合いに参加者として放り込まれてより、約三時間。
宵の内に日の光の射さぬ拠点を求めて孤島の砦跡を後にし、支給されたカヌーで海を渡り、本島に上陸してからは市街地へと歩き続け、
しかし彼等は――他の大多数の参加者にとってもだが――幸運な事にその間誰にも遭遇する事無く、最初の目的地候補の一つと定めていた放送局まで辿り着いていた。
これは彼等が、もう一つの候補であった警察署までの道程は完全に拓けており、他の参加者との接触する可能性が高く、
それによって少しでも拠点到達が遅れる可能性を危惧し回避した事にも起因していた。
彼等の名誉の為に言わせてもらえれば、DIOにしてもヴァニラにしても、そこいらの人間に遅れを取るような事など無いのだが、
その自分達がこうして拉致されて“殺し合い”などという催しに参加させられている以上、支給された名簿の中に彼等の宿敵たる者達の名前が無くとも、
他の参加者に油断できない実力者ないしはスタンド使いがいないとは限らないと考えるのは当然の事だと言えよう。
まあ実際には、他の参加者にはスタンド使いなど一人もおらず、しかしそれ以外の実力者は何人もいるので、この判断はそこそこに的を射たものだったと言えた。
ともあれ、二人の吸血鬼は無事に当面の拠点となる予定の放送局への進入を果たした。
◇◇◇
「フム。エジプトの屋敷や先の砦跡に比べると、なかなか頑強にできているな」
エントランスの白塗りされただけのセメントの柱をコンコンと叩きながら、DIOが僅かに感心したような声で言う。
100年の時を経て(彼にとっての)現代に復活した彼だが、復活から現在でに至るまでは更に四年もの歳月が流れている。
その間にそれなりに現代の文明に触れ学んではいたものの、こと自分の生活空間に於いては、それに触れるのはこれがほぼ初めての事だった。
エジプトでの拠点たる洋館もかなり前時代の代物だったので、リノリウムの床やセメントの柱は彼にとって些か珍しい物なのだろう。
その傍らではヴァニラが、壁面に貼りだされた放送局の案内図を頭に叩き込んでいた。
「DIO様。二階に仮眠室があるようです。夜明けも近い事ですし、まずはそちらでお休みになられては如何かと」
「うむ」
忠実なる従者の主を慮っての申し出に、DIOもそれを良しとして頷き、二人で二階へと向かった。
ちなみに案内図によると、この放送局はそれほど大きな建物ではなく、総階層は地上四階までしかない。
内訳だが、まず一階は全体の三分の一がエントランスで、残るスペースは大倉庫、食堂、配電室。
二階は会議室、仮眠室、局長室及びそれに併設された局長の私室。
三、四階は完全に同じ構造で、それぞれラジオ用のスタジオ及びスタッフルーム、そして小さな控え室が八部屋ずつとなっていた。
ちなみに、トイレはちゃんと全ての階に男性用女性用があり、エレベーターや階段、非常階段も二つずつ設置されている。
本来この手の施設案内板は関係者しか立ち入れないスペースをここまで詳しく記載はしないものだが、この放送局は殺し合いの舞台にあるという特性上、
施設を余すところ無く利用させようといった意図があるのか、そういったスペースまで一切の抜かりなく記載されていた。
◇◇◇
「このDIOが……こんな寝所で眠れるかッ!!」
「おのれ八雲紫!! またしてもDIO様を侮辱しおって!!!」
二階の仮眠室に到着した二人は室内を一目見るなり、いきなり怒りを爆発させた。
別に、部屋が汚かったりとか、設備が不十分だったとかではない(綺麗でもなかったが)。
彼等の――より正確に言えばDIOの感性とプライドに、部屋の造りそのものと、用意された寝具が相応しくなかったのだ。
その部屋の床には一面ジャパニーズTATAMIが敷き詰められており、その上には何組かの煎餅布団と小さな枕が鎮座ましましていた。
どうせ実際に寝るのは棺の中だからまあいいか、なんて考え方は、残念ながらこの二人にはできなかった。
「DIO様に貴様等薄汚い東洋人のように床に這い蹲って眠れと言うのかあのクサレビッチがァーーーーーーーーッ!!!!」
特に、DIO本人よりも彼を怒らせた事に対するヴァニラの怒りは半端ではなかった。
即座にクリームを喚び出すとその中に入り、仮眠室中を片っ端から暗黒空間に飲み込んでいった。
煎餅布団はもとより、部屋の壁から床、天井に至るまでが次から次へと円形状に削り取られて消滅していく。
勿論、DIOを巻き込まないように予め軌道を考えて動きながらだ。
かくして、ものの一分も過ぎる頃には、仮眠室の八割方が消滅してしまっていた。
部屋の全てが齧りかけのレンコンのようになっており、眼下には一階の倉庫が見え、天井を見上げれば三階のスタジオが、
右を向けば水色のタイルの男性用トイレが、左を向けば――それはそれは豪華なベッドが存在する、一際立派な装飾がなされた部屋が覗いていた。
「フン。ちゃあんとこのDIO様に相応しい寝具があるではないか」
少しだけ口の端を吊り上げ、DIOは満足そうに呟いた。
言うまでも無いがこのベッドのある場所は、案内図にもあった、局長の私室である。
風通しが現在進行形でよくなりつつあるものの、DIOはこの私室を自分の寝室とする事にした。
◇◇◇
ややあって、仮眠室を完全に「仮眠室があった所」にし終えたヴァニラがクリームの中から出てきた後、
結果的にDIOの寝室の壁をも破壊した事になってしまったと知り、どこぞのうっかり侍よろしく、再び首を刎ねて詫びんとしたがDIOに諌められ、
寝室への棺の運び入れと外敵の接近が無いかを見張る役を命じられた為、棺を私室に運んび込んだ後、周囲を見渡せる屋上へと昇って行った。
一方DIOはと言うと、すぐに休みをとる事はせずに、無事だった方の四階のスタジオへと足を運んでいた。
壁に掛けられた時計の示す時間は午前四時前。日が昇るまでにはまだもう少し余裕があるので、休む前にやっておきたい事があったからだ。
「防音設備は問題なく整っているようだな。では、一つ試してみるとするか」
そう言ったDIOの両手には、最初に背負い袋から取り出してヴァニラに献上された、支給品の武器と防具がそれぞれ握られていた。
ヴァニラはスタンドがあるのだから全く必要無いと断じていたが、DIOの方はそう思ってはおらず、
寧ろ、スタンドと組み合わせる事でより自分の力とならないかを模索しようとしていた。
実際――といっても既にほぼ在り得なくなってしまった未来の話ではあるが、DIOは宿敵たるジョースター家の一族、空条承太郎との一戦で、
戦場となった市街の商店で調達したナイフと自分のスタンド能力を組み合わせて、承太郎を窮地に追い詰めた経験が“在り得た”のだ。
もとよりDIOは慎重かつ頭も切れ、利用できる物は利用し尽くすという考え方を持っていた。
故に、これらの武具の使いどころを把握しておこうと考えるのは、彼にとっては至極当然の事なのである。
そういった経緯はさて置き、兎に角DIOはまずスタジオの片隅に、防具である青いドーム状の携行盾を立て掛けると、
少し離れた所からスタジオのマイク等の機材や備品やらを、少しずつ重い物にしながら、少しずつ勢いを増しながら投擲していった。
何をやっているのかと訊かれれば見ての通り、盾の強度テストをしているとしか答えようが無い。
それなりに強度があれば、そのまま普通に盾として使うなり胸元に仕込むなりして、いずれ訪れるであろう戦闘時に役立つやもと考えての事だった。
だが、そんなDIOの考えは、彼にとっていい意味で裏切られた。
「む?」
ある程度まで投擲の勢いを増した時、奇妙な現象が起きた。
それまで投げた物を単純に強度と形状で以って弾いていたその盾が、投擲されたマイクスタンドを「止めた」のだ。
まるで慣性を消されたかのようにマイクスタンドはぴたりと盾の表面で止まり、ごとりとその場に落下した。
奇怪な現象には色々と慣れているDIOだったが、無機物が超常の力を発揮するというのは、彼の知る限り『石仮面』と『弓と矢』以外に無く、
些かに彼をも不思議に思わせた。
「フム…それではこれも試してみるか」
謎の盾の性能を更にテストせんと次にDIOが構えた物は、先程から携えていた武器。
アブトマット・カラシニコフ。別名AK-47。制式名称を7.62mmアブトマット・カラシニコバと言う、
世界で最も流通しているとさえ言われる歩兵用アサルトライフルである。
どのみちこの銃も試し撃ちをするつもりだったので丁度良いとばかりに、単射モードに切り替えたその銃口を盾に向け、DIOはトリガーを引いた。
一発、二発、ついでにもう一発と計三発の銃弾が、立て続けに盾へと撃ち込まれた。
勿論スタジオ内には銃声が響いたが、この音を外部に洩らさぬ為に、DIOはここをテストの場に選んだのだ。
果たして結果はと言うと、盾は一切傷付く事無く、着弾の衝撃で倒れる事すら無く、さながら己の力強さと描かれた翼の意匠を誇示せんと、その場に悠然と在り続けた。
撃ち込まれた弾丸は先程のマイクスタンドと同様に、盾の真下の床で転がっていた。
「ほう……見事だ。ではこれならどうかな!? “世界(ザ・ワールド)”! 時よ止まれ!!」
最後のテストとして、DIOは己のスタンド“世界”を喚び出し、その真価たる時間停止の能力を発動させた。
そして、“世界”の両の拳を矢鱈滅多に盾に叩きつける。
「無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄ァ!!!!」
近距離パワー型であるDIOの“世界”の破壊力は凄まじく、その一撃一撃が人体程度なら容易に貫いてしまえる。
その“世界”の能力である時間停止によって、止まった時の中で突きのラッシュを受け続け、衝撃を蓄積され続けた盾は―――
「そして時は動き出す」
―――それでも尚、ただの一つの傷も生じさせずにその姿を保っていた。
この堅牢無比たる盾の名は『aegis=L(イージス=エル)』。ギリシャ神話に於いて、主神ゼウスが娘アテナに授けたとされる伝説の盾の名を冠されており、
とある世界の局地戦闘用戦略兵器に搭載されている、その名に恥じぬ逸品であった。
「ふ、フフ、フハハハハ!! 素晴らしいぞ! この盾は帝王たるこのDIOに“相応しい”ッ!!
八雲紫よ、なかなか面白い物を献上してくれたじゃあないか。少しだけお前の事を評価してやろう。……だが」
数時間前にヴァニラが思った事とほぼ同様の内容を口にしながら、上機嫌で盾を回収するDIOだったが、すぐにその表情には険しさが走った。
その原因は、先程のラッシュの際に彼が覚えた違和感にあった。
「時を止めれる時間が短くなっていた…。この私のスタンドに干渉したというのか…ッ!!」
この場に喚ばれるまでは確かに5秒ほど止めれた時間が、先のテストの時には2秒半ほどしか止めれなくなっていた。常時の凡そ半分である。
加えて、時を止めた事による体力・精神力の消耗も激しく、連続で時を止める事も難しそうだった。
「あの女……まさかこのDIOより強力なスタンドを持つというのか!?
或いはスタンドへの干渉を得手とするスタンド使いの仲間がいるのか……。ええい、どちらにしても忌々しいッ!」
怒りのままに手近にあった鍵付き棚を思い切り“世界”で殴りつける。
申し訳程度の止め具がひしゃげて外れ、衝撃で中からガチャガチャと音を立てながらカセットテープが雪崩れ落ちた。
「…フン、まあいい。今は判らん事を考えていても始まらんか。どれ、少しリラックスするとしよう」
部屋の隅にあったカセットデッキに目を留めると、DIOは適当にカセットテープをいくつか拾い上げ、デッキと一緒に寝室へと運び込んだ。
どうやら優雅に音楽鑑賞と洒落込むつもりらしい。或いは、現代の音楽に興味を示しただけかも知れないが。
基本的に好奇心旺盛なところのある男なのである。DIOという人物は。
◇◇◇
『BEAM my BEAM! わたしのヒカリと♪ BEAM my BEAM! あなたのヒカリ 愛ゆえにとぎすまされる♪―――』
「ほほう…なかなか乗れるリズムの曲ではないか」
『Faiien down♪ BLUE 青い空 どこまでも飛んでゆきたい♪ だけど飛べるのはあなた 私は飛べない――なぜなら―――』
「フフフフハハハハ最高に「ハイ!」やつだアアアアアアハハハハハハハハハハーッ!!!」」
『きもちのいいとことび出てる♪ ボクたちキミたちとび出てる♪ 神様が決めたコトなの…? ピクピクふるえて怖いよ…―――』
「ウリイイイイヤアアアッー! ぶっつぶれよォォッ!!!」
ドグシャア――――――z___ッ
【カセットデッキ@現実 再起不能(リタイア)】
【D-2/放送局二階・局長私室/1日目-早朝】
【主:DIO@ジョジョの奇妙な冒険】
[主従]:ヴァニラ・アイス
[状態]:健康
[装備]:セラスの棺、AK-47(残弾27発)@現実、AK-47のマガジン(7.62×39弾30発入)×3、aegis=L@そらのおとしもの
[方針/行動]
基本方針:八雲紫を始末する。他の参加者に自分が支配者だと知らしめる。
1:そろそろ休みをとる。
2:他の参加者は倒すか支配する。
[備考]
※参加時期は26巻冒頭直後。その為、まだジョナサンの肉体は完全にはなじんでいません。
※八雲紫をスタンド使いと誤認しています。
※“世界”の時間停止に関する制限に気付きました。
【D-2/放送局屋上/1日目-早朝】
【従:ヴァニラ・アイス@ジョジョの奇妙な冒険】
[主従]:DIO
[状態]:健康・吸血鬼
[装備]:背負い袋(基本支給品、折り畳みカヌー)
[方針/行動]
基本方針:八雲紫を始末する。他の参加者にDIOが支配者だと知らしめる。
1:外敵の接近が無いかを見張る。
[備考]
※参加時期は26巻冒頭直後です。
※自分が吸血鬼になった事に気が付きました。
※八雲紫をスタンド使いと誤認しています。
[共通備考]
※D−2放送局二階の仮眠室が消滅しました。一階大倉庫、二階男性用トイレ、二階局長私室、三階スタジオの四室が素通しになっています。
【AK-47@現実】
1947年にソ連のミハイル・カラシニコフによって設計された歩兵用アサルトライフル。全長870mm。
セミとフルオートの切替射撃が可能で、発射速度は約600発/分もの連射性を持つ。
【aegis=L(イージス=エル)@そらのおとしもの】
局地戦闘用エンジェロイド、タイプ(デルタ)アストレアに搭載されている携行盾。
長時間の展開や前方以外のカバーが不可能といった欠点も持つが、発生される防御フィールドの強度はイカロスのAegisを上回る。
このロワではアストレアの装備から切り離されており、長時間展開不可の欠点は解消されている。 これにて投下完了です。
短い割に時間がかかってしまって申し訳ありません。 >>58
政宗は単にアーカードとの戦いを楽しんでるだけじゃないかな。
方針欄こそ???だったけど、俺はそう解釈した。
マーダーならルルジェレ組と、場合によってはスザクもそうなり得るな。
>>59
即座に保存しました。
新しい予約が無いと思ったら…w
その1って事は続きも期待していいんですね!?
>>66
投下乙です。
DIO様すらハイにさせるイカロスの歌声マジパネェ。
そして一気にマーダーらしい支給品がお披露目。aegis=Lとか最強クラスの防具じゃねぇか。 アストレアから切り離されているから長時間展開不可の欠点は解消されているという理屈がよくわからん
むしろ逆じゃないの? このロワではアストレアの装備から切り離されており、また、長時間展開不可の欠点は解消されている。
こういうことだろう。
欠点を勝手に解消していいのかという疑問はあるが。 投下乙です
DIOさまも意外とお茶目というかノリノリだな、おいw
お前もかよw
そしてなんかすごい支給品が来たが序盤でそういうのを出すと誰かに奪われるんだぜw >>68-69
ああ、説明不十分ですみません。
私はaegis=Lの原作に於ける「長時間展開できない」というダイダロスの言葉を、
「アストレアは長時間展開させる事ができない」と解釈し、アストレアのいないこのロワでは、
「アストレアの兵装から独立したaegis=L」なら長時間展開可能なのではと考えてああ表記させて頂きました。
…解り難さ極まる解釈と策説明、申し訳ありません。
それで、執筆当時は本来の制限をアストレアのいないこのロワでどう再現するか思い付かなかったのですが、
確かに仰られるとおり、ただでさえ強力な装備の欠点を解消するというのはバランスに欠ける事になってしまいますので、
色々考えた結果、「最初にaegis=Lが攻撃を受けてから15分経過すると、自動的に最も近くにある背負い袋に収納される」
という制限を設けようと思うのですが、いかがでしょうか?
是非がどうあれ、このままでも可というご意見が過半数を占めない限りは、aegis=Lの制限にはなんらかの修正をさせて頂きます。
こちらの勝手でお手数をおかけしますが、どうか皆さんの忌憚無きご意見をお願い致します。 まずは投下乙。つーかタイトルwww
普通なタイトルの作品が2つ続いたと思ったらこれだよ!w
DIO様がギャグパートを担当するロワなんて他にあったろうか…w
aegis=Lの制限に関しては、したらばの議論スレの方に私見を書いておきます。 二時間に一回だけ起動出来るくらいのシンプルさでいいんじゃない? 投下乙です。変なテンションがあって楽しいw
支給品の制限に関しては提案されたもので問題ないと思います。
で、
多分、ロワ中じゃ実現しないと思うドリームタッグ編・その2 「ロリ吸血姫コンビ レミリア・スカーレット&忍野忍」
ttp://blogimg.goo.ne.jp/user_image/49/e3/b9240a55883b8aa2259aa20c0261f6f2.jpg 世紀末臭全開な前とはエラく違うノリだ
織田信長&アーカードの魔王コンビを希望 >>75
アニメでしか忍知らないんだけど、ロワだと全然印象違うんだよな
結構可愛いな 描いたよー。
多分、ロワ中じゃ実現しないと思うドリームタッグ編・その3 「悪鬼魔王コンビ アーカード&織田信長」
ttp://blogimg.goo.ne.jp/user_image/33/2e/35101242b992ca595d4554e5fd445bf1.jpg 乙ですううううううううううううう!!
何このクオリティwww
ってかこのコンビに勝てる気がしないw 皆様、こちらとしたらば議論スレでのご意見有り難う御座いました。
各ご意見をもとに改稿版をしたらばの仮投下スレに投下してまいりました。
お手数をおかけしますが、したらばの方までご足労頂ければ幸いです。 Studio D.IO!の改稿版を投下させて頂きます。
草木も眠る丑三つ時。満点の月と立ち並ぶ街灯によって照らされた夜の車道を、奇抜なファッションの二人の偉丈夫が歩いていた。
太陽に拒まれ、人の世の理(ことわり)に逆らいし夜の住人、吸血鬼。
自ら望んでソレになった男の名は、ディオ・ブランドー。通称DIO。
そのDIOの手によってソレになった事に歓喜し、二つの意味で同じ道を歩むのは、彼の忠実な従者、ヴァニラ・アイス。
二人が宿敵を待ち受けていたはずの館から、突然この殺し合いに参加者として放り込まれてより、約三時間。
宵の内に日の光の射さぬ拠点を求めて孤島の砦跡を後にし、支給されたカヌーで海を渡り、本島に上陸してからは市街地へと歩き続け、
しかし彼等は――他の大多数の参加者にとってもだが――幸運な事にその間誰にも遭遇する事無く、最初の目的地候補の一つと定めていた放送局まで辿り着いていた。
これは彼等が、もう一つの候補であった警察署までの道程は完全に拓けており、他の参加者との接触する可能性が高く、
それによって少しでも拠点到達が遅れる可能性を危惧し回避した事にも起因していた。
彼等の名誉の為に言わせてもらえれば、DIOにしてもヴァニラにしても、そこいらの人間に遅れを取るような事など無いのだが、
その自分達がこうして拉致されて“殺し合い”などという催しに参加させられている以上、支給された名簿の中に彼等の宿敵たる者達の名前が無くとも、
他の参加者に油断できない実力者ないしはスタンド使いがいないとは限らないと考えるのは当然の事だと言えよう。
まあ実際には、他の参加者にはスタンド使いなど一人もおらず、しかしそれ以外の実力者は何人もいるので、この判断はそこそこに的を射たものだったと言えた。
ともあれ、二人の吸血鬼は無事に当面の拠点となる予定の放送局への進入を果たした。
◇◇◇
「フム。エジプトの屋敷や先の砦跡に比べると、なかなか頑強にできているな」
エントランスの白塗りされただけのセメントの柱をコンコンと叩きながら、DIOが僅かに感心したような声で言う。
100年の時を経て(彼にとっての)現代に復活した彼だが、復活から現在でに至るまでは更に四年もの歳月が流れている。
その間にそれなりに現代の文明に触れ学んではいたものの、こと自分の生活空間に於いては、それに触れるのはこれがほぼ初めての事だった。
エジプトでの拠点たる洋館もかなり前時代の代物だったので、リノリウムの床やセメントの柱は彼にとって些か珍しい物なのだろう。
その傍らではヴァニラが、壁面に貼りだされた放送局の案内図を頭に叩き込んでいた。
「DIO様。二階に仮眠室があるようです。夜明けも近い事ですし、まずはそちらでお休みになられては如何かと」
「うむ」
忠実なる従者の主を慮っての申し出に、DIOもそれを良しとして頷き、二人で二階へと向かった。
ちなみに案内図によると、この放送局はそれほど大きな建物ではなく、総階層は地上四階までしかない。
内訳だが、まず一階は全体の三分の一がエントランスで、残るスペースは大倉庫、食堂、配電室。
二階は会議室、仮眠室、局長室及びそれに併設された局長の私室。
三、四階は完全に同じ構造で、それぞれラジオ用のスタジオ及びスタッフルーム、そして小さな控え室が八部屋ずつとなっていた。
ちなみに、トイレはちゃんと全ての階に男性用女性用があり、エレベーターや階段、非常階段も二つずつ設置されている。
本来この手の施設案内板は関係者しか立ち入れないスペースをここまで詳しく記載はしないものだが、この放送局は殺し合いの舞台にあるという特性上、
施設を余すところ無く利用させようといった意図があるのか、そういったスペースまで一切の抜かりなく記載されていた。
◇◇◇
「このDIOが……こんな寝所で眠れるかッ!!」
「おのれ八雲紫!! またしてもDIO様を侮辱しおって!!!」
二階の仮眠室に到着した二人は室内を一目見るなり、いきなり怒りを爆発させた。
別に、部屋が汚かったりとか、設備が不十分だったとかではない(綺麗でもなかったが)。
彼等の――より正確に言えばDIOの感性とプライドに、部屋の造りそのものと、用意された寝具が相応しくなかったのだ。
その部屋の床には一面ジャパニーズTATAMIが敷き詰められており、その上には何組かの煎餅布団と小さな枕が鎮座ましましていた。
どうせ実際に寝るのは棺の中だからまあいいか、なんて考え方は、残念ながらこの二人にはできなかった。
「DIO様に貴様等薄汚い東洋人のように床に這い蹲って眠れと言うのかあのクサレビッチがァーーーーーーーーッ!!!!」
特に、DIO本人よりも彼を怒らせた事に対するヴァニラの怒りは半端ではなかった。
即座にクリームを喚び出すとその中に入り、仮眠室中を片っ端から暗黒空間に飲み込んでいった。
煎餅布団はもとより、部屋の壁から床、天井に至るまでが次から次へと円形状に削り取られて消滅していく。
勿論、DIOを巻き込まないように予め軌道を考えて動きながらだ。
かくして、ものの一分も過ぎる頃には、仮眠室の八割方が消滅してしまっていた。
部屋の全てが齧りかけのレンコンのようになっており、眼下には一階の倉庫が見え、天井を見上げれば三階のスタジオが、
右を向けば水色のタイルの男性用トイレが、左を向けば――それはそれは豪華なベッドが存在する、一際立派な装飾がなされた部屋が覗いていた。
「フン。ちゃあんとこのDIO様に相応しい部屋があるではないか」
少しだけ口の端を吊り上げ、DIOは満足そうに呟いた。
言うまでも無いがこのベッドのある場所は、案内図にもあった、局長の私室である。
風通しが現在進行形でよくなりつつあるものの、DIOはこの私室を自分の寝室とする事にした。
◇◇◇
ややあって、仮眠室を完全に「仮眠室があった所」にし終えたヴァニラがクリームの中から出てきた後、
結果的にDIOの寝室の壁をも破壊した事になってしまったと知り、どこぞのうっかり侍よろしく、再び首を刎ねて詫びんとしたがDIOに諌められ、
寝室への棺の運び入れと外敵の接近が無いかを見張る役を命じられた為、棺を私室に運んび込んだ後、周囲を見渡せる屋上へと昇って行った。
一方DIOはと言うと、すぐに休みをとる事はせずに、無事だった方の四階のスタジオへと足を運んでいた。
壁に掛けられた時計の示す時間は午前四時前。日が昇るまでにはまだもう少し余裕があるので、休む前にやっておきたい事があったからだ。
「防音設備は問題なく整っているようだな。では、一つ試してみるとするか」
そう言ったDIOの両手には、最初に背負い袋から取り出してヴァニラに献上された、支給品の武器と防具がそれぞれ握られていた。
ヴァニラはスタンドがあるのだから全く必要無いと断じていたが、DIOの方はそう思ってはおらず、
寧ろ、スタンドと組み合わせる事でより自分の力とならないかを模索しようとしていた。
実際――といっても既にほぼ在り得なくなってしまった未来の話ではあるが、DIOは宿敵たるジョースター家の一族、空条承太郎との一戦で、
戦場となった市街の商店で調達したナイフと自分のスタンド能力を組み合わせて、承太郎を窮地に追い詰めた経験が“在り得た”のだ。
もとよりDIOは慎重かつ頭も切れ、利用できる物は利用し尽くすという考え方を持っていた。
故に、これらの武具の使いどころを把握しておこうと考えるのは、彼にとっては至極当然の事なのである。
そういった経緯はさて置き、兎に角DIOはまずスタジオの片隅に、防具である青いドーム状の携行盾を立て掛けると、
少し離れた所からスタジオのマイク等の機材や備品やらを、少しずつ重い物にしながら、少しずつ勢いを増しながら投擲していった。
何をやっているのかと訊かれれば見ての通り、盾の強度テストをしているとしか答えようが無い。
それなりに強度があれば、そのまま普通に盾として使うなり胸元に仕込むなりして、いずれ訪れるであろう戦闘時に役立つやもと考えての事だった。
だが、そんなDIOの考えは、彼にとっていい意味で裏切られた。
「む?」
ある程度まで投擲の勢いを増した時、奇妙な現象が起きた。
それまで投げた物を単純に強度と形状で以って弾いていたその盾が、投擲されたマイクスタンドを「止めた」のだ。
まるで慣性を消されたかのようにマイクスタンドはぴたりと盾の表面で止まり、ごとりとその場に落下した。
奇怪な現象には色々と慣れているDIOだったが、無機物が超常の力を発揮するというのは、彼の知る限り『石仮面』と『弓と矢』以外に無く、
些かに彼をも不思議に思わせた。
「フム…それではこれも試してみるか」
謎の盾の性能を更にテストせんと次にDIOが構えた物は、先程から携えていた武器。
アブトマット・カラシニコフ。別名AK-47。制式名称を7.62mmアブトマット・カラシニコバと言う、
世界で最も流通しているとさえ言われる歩兵用アサルトライフルである。
どのみちこの銃も試し撃ちをするつもりだったので丁度良いとばかりに、単射モードに切り替えたその銃口を盾に向け、DIOはトリガーを引いた。
一発、二発、ついでにもう一発と計三発の銃弾が、立て続けに盾へと撃ち込まれた。
勿論スタジオ内には銃声が響いたが、この音を外部に洩らさぬ為に、DIOはここをテストの場に選んだのだ。
果たして結果はと言うと、盾は一切傷付く事無く、着弾の衝撃で倒れる事すら無く、さながら己の力強さと描かれた翼の意匠を誇示せんと、その場に悠然と在り続けた。
撃ち込まれた弾丸は先程のマイクスタンドと同様に、盾の真下の床で転がっていた。
「ほう……見事だ。ではこれならどうかな!? “世界(ザ・ワールド)”! 時よ止まれ!!」
最後のテストとして、DIOは己のスタンド“世界”を喚び出し、その真価たる時間停止の能力を発動させた。
そして、“世界”の両の拳を矢鱈滅多に盾に叩きつける。
「無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄ァ!!!!」
近距離パワー型であるDIOの“世界”の破壊力は凄まじく、その一撃一撃が人体程度なら容易に貫いてしまえる。
その“世界”の能力である時間停止によって、止まった時の中で突きのラッシュを受け続け、衝撃を蓄積され続けた盾は―――
「そして時は動き出す」
―――それでも尚、ただの一つの傷も生じさせずにその姿を保っていた。
この堅牢無比たる盾の名は『aegis=L(イージス=エル)』。ギリシャ神話に於いて、主神ゼウスが娘アテナに授けたとされる伝説の盾の名を冠されており、
とある世界の局地戦闘用戦略兵器に搭載されている、その名に恥じぬ逸品であった。
「ふ、フフ、フハハハハ!! 素晴らしいぞ! この盾は帝王たるこのDIOに“相応しい”ッ!!
八雲紫よ、なかなか面白い物を献上してくれたじゃあないか。少しだけお前の事を評価してやろう。……だが」
数時間前にヴァニラが思った事とほぼ同様の内容を口にしながら、上機嫌で盾を回収するDIOだったが、すぐにその表情には険しさが走った。
その原因は、先程のラッシュの際に彼が覚えた違和感にあった。
「時を止めれる時間が短くなっていた…。この私のスタンドに干渉したというのか…ッ!!」
この場に喚ばれるまでは確かに5秒ほど止めれた時間が、先のテストの時には2秒半ほどしか止めれなくなっていた。常時の凡そ半分である。
加えて、時を止めた事による体力・精神力の消耗も激しく、連続で時を止める事も難しそうだった。
「あの女……まさかこのDIOより強力なスタンドを持つというのか!?
或いはスタンドへの干渉を得手とするスタンド使いの仲間がいるのか……。ええい、どちらにしても忌々しいッ!」
怒りのままに手近にあった鍵付き棚を思い切り“世界”で殴りつける。
申し訳程度の止め具がひしゃげて外れ、衝撃で中からガチャガチャと音を立てながらカセットテープが雪崩れ落ちた。
「…フン、まあいい。今は判らん事を考えていても始まらんか。どれ、少しリラックスするとしよう」
部屋の隅にあったカセットデッキに目を留めると、DIOは適当にカセットテープをいくつか拾い上げ、デッキと一緒に寝室へと運び込んだ。
どうやら優雅に音楽鑑賞と洒落込むつもりらしい。或いは、現代の音楽に興味を示しただけかも知れないが。
基本的に好奇心旺盛なところのある男なのである。DIOという人物は。
◇◇◇
『BEAM my BEAM! わたしのヒカリと♪ BEAM my BEAM! あなたのヒカリ 愛ゆえにとぎすまされる♪―――』
「ほほう…なかなか乗れるリズムの曲ではないか」
『Faiien down♪ BLUE 青い空 どこまでも飛んでゆきたい♪ だけど飛べるのはあなた 私は飛べない――なぜなら―――』
「フフフフハハハハ最高に「ハイ!」やつだアアアアアアハハハハハハハハハハーッ!!!」」
『きもちのいいとことび出てる♪ ボクたちキミたちとび出てる♪ 神様が決めたコトなの…? ピクピクふるえて怖いよ…―――』
「ウリイイイイヤアアアッー! ぶっつぶれよォォッ!!!」
ドグシャア――――――z___ッ
…全くの余談だがこの直後、DIOの傍らに置いてあったaegis=Lが、課せられた制限によりヴァニラの持っていた背負い袋の中へと戻り、
何があったのかと危惧して屋上から降りてきたヴァニラがDIOから事情を聞き、またしてもDIO様を侮辱したかとまたまたプッツンし、
その現況たるカセットデッキは、破片の一欠片も残さず暗黒空間にバラ撒かれてしまったとか。
【カセットデッキ@現実 再起不能(リタイア)】
【D-2/放送局/1日目-早朝】
【主:DIO@ジョジョの奇妙な冒険】
[主従]:ヴァニラ・アイス
[状態]:健康
[装備]:セラスの棺、AK-47(残弾27発)@現実、AK-47のマガジン(7.62×39弾30発入)×3
[方針/行動]
基本方針:八雲紫を始末する。他の参加者に自分が支配者だと知らしめる。
1:そろそろ休みをとる。
2:他の参加者は倒すか支配する。
[備考]
※参加時期は26巻冒頭直後。その為、まだジョナサンの肉体は完全にはなじんでいません。
※八雲紫をスタンド使いと誤認しています。
※“世界”の時間停止に関する制限に気付きました。
※aegis=Lの制限には気付いていません。
【従:ヴァニラ・アイス@ジョジョの奇妙な冒険】
[主従]:DIO
[状態]:健康・吸血鬼、八雲紫への更なる怒り
[装備]:背負い袋(基本支給品、折り畳みカヌー、aegis=L@そらのおとしもの(防御フィールド再発動可能まで残り二時間))
[方針/行動]
基本方針:八雲紫を始末する。他の参加者にDIOが支配者だと知らしめる。
1:外敵の接近が無いかを見張る。
[備考]
※参加時期は26巻冒頭直後です。
※自分が吸血鬼になった事に気が付きました。
※八雲紫をスタンド使いと誤認しています。
※aegis=Lの制限には気付いていません。
[共通備考]
※D−2放送局二階の仮眠室が消滅しました。一階大倉庫、二階男性用トイレ、二階局長私室、三階スタジオの四室が素通しになっています。
【AK-47@現実】
1947年にソ連のミハイル・カラシニコフによって設計された歩兵用アサルトライフル。全長870mm。
セミとフルオートの切替射撃が可能で、約600発/分もの連射性を持つ。
【aegis=L(イージス=エル)@そらのおとしもの】
局地戦闘用エンジェロイド、タイプ(デルタ)アストレアに搭載されている携行盾。
長時間の展開や前方以外のカバーが不可能といった欠点も持つが、発生される防御フィールドの強度はイカロスのAegisを上回る。
このロワでは従来の欠点に加え、以下の仕様・制限が課せられている。
・aegis=L自体が一定以上の衝撃を受けるまで防御フィールドは発生しない。それまではただの頑丈な盾。
・防御フィールドは発生から10分が経過すると一度解除され、一番近くの背負い袋に自動的に収納される。
ただしaegis=Lの装備者が背負い袋を所持していた場合は、その背負い袋は収納対象から除外される。
・一度防御フィールドが発生し終えると、以後二時間が経過するまで防御フィールドを展開する事はできない。 これにて投下完了です。
今回はご迷惑をおかけしました。
貴重なご意見をくださった皆様に改めて感謝致します。 小物だったりカリスマだったり天国云々言ったり自分のスタンドが最強と言ってるけどスタンドに強い弱いはないと言ったり
1部3部6部でキャラが安定しないのがDIO様 俺の知ってるDIO様は人の家の飼い犬にひざ蹴りかますロックな奴 そんな酷い奴なのか
このロワに徳川綱吉が参戦してたら間違いなく殺されるな それは1部最初の少年時代の時だが、ただ残忍だからやったってわけじゃなく
出会い頭にガツンとやって「俺が上!お前が下だジョジョォ!」と飼い主である主人公との上下関係を作るって打算あってのことだがね
>無機物が超常の力を発揮するというのは、彼の知る限り『石仮面』と『弓と矢』以外に無く
アヌビスのこと忘れんといてえな >>96
うあ、失念してました。ご指摘感謝します。
wiki収録後に修正しておきます。 アヌビスはスタンドだから微妙なんだよね
『力』や『運命』みたいなタイプに分類していてもおかしくない DIO様はいつになったらジョナサンから借りた時計返すん? あの時計を壊れるまで(そう、時が止まるまで!)返さないという思いがDIOのザ・ワールドの能力のもととなったのだ!! ジョナサンの体の能力だから
僕の時計(時)は二度と帰ってこない気がする…きてるんじゃね? ジョナサンの身体の能力がハーミット・パープル、ザ・ワールドはDIOの能力だな メリークリスマス。また来年もよろしくです。
クリスマスとは関係ないけど、うちの主催様。
ttp://blogimg.goo.ne.jp/user_image/5d/56/cbb0fcec12aa1b2a114f5c71484d1153.jpg 乙!
この絵の感じ…どこかで見覚えが!
鳥は違うがあなた様はまさかあのロワの…!
>>109
フルカラーだと!?
ブラボー……おおブラボー! うたわれのDVD借りてきて見てる
ムティカパのこどもがかわいい ……と思ってたら、あっと言う間にデカくなってワロタwww
成長早すぎるだろムックル 全て遠き理想郷(コミケ)か…。年末が一番仕事忙しい田舎者には無縁の話だわ…w おお、新しい予約がきてるじゃなイカ!
これは保守しとかないと : : : : : : /: : : : : : : : : : : : :/ \: : : : : : / \: : : : : : : : : : : :\――――‐
―――― /: : : : :__ : : : : :/ `ヾ:.:/ \: : : : : : : : : : : \
/: : : /: : : : : : : / \ / `ヾ: :\: : : : : : : : :ヽ
∨: /: : : : : : : : / \ / V: : :\ : : : : : : /
∨: : : :_:_: : : / \: : : : . . . . . : : : ;. ´ '. ∨: : : \ : : : /
│: : / __ `ヾ! ヽ.,___ \ : : : : : : : / __ノ ミ/ ̄ヽ:ヽ.:./
│: : | l ヽ | / \ ヽ : : : / ,. '" `ヽ リ イ l |: : /
│: : | l | i /-―- ., :\ 、/ / ____ : ! ´ ! l |: : | 今また再び我らは
│: : l :,. | { ぃγ77ヽ \ : \ ハ // / γ77ヽ 〉 } ! ′: ! 救世の旗を掲げよう!
│: : :ヽ :, :,\l//ノ ヽ ! ヽ ノ、∧ / ! / {////' / / / /: : 八
/: : : : : :\ __:, :, `ー―-- 〉 //ヽ /´ヽ 、 /__,.`< / ′'´/: : : : : ヘ―――‐
―――/イ: : : : : : : ハ :, ヽ __,. '"/ 〈 | | :, \`ヽ __,.ノ ' /: : : : : : r 、ヘ..:..: : :
: : :/.: :.|: :∧: : : : : ゝ.,_! / '. | | / \ /イ: : : : : : : : ′ ヾ\ : :
: : : : : |: ; | : |: : : : : :∧ / :, │ | / \ /: : : : : : : : : : ′ : : `: : :
: : : : : ∨ !:.:.|: : : : : : :∧ / ` | | ヽ /: : : : : /!: : /|:| : : : : : : :
: : : : : : : !: :|\: : : : : :∧ ,,., `ヽ | | / /: : : : : /│:/: |:| : : : : : : :
: : : : : : : 乂| : \: : : : :ハ ヾ::..、_ `ー―‐´ _,,.. イフ .〃: : : / : |/ : リ .: : : : : :
: : : : : : : : : ! : : :\: : : ハヽ \ 〉 、ニニニニニニイ:::::/ '/イ: /: : : : : : : : : : : :
: : : : : : : : : : : : \: :ヘ \ \ヘ:_:_:_:_:_:_:_:_:_:_:ノ/ /./ |/ : : : : : : : : : : : :
: : : : : : : : : : : : : :| `ヾ 丶 ` ー――‐ ´ / │ : : : : : : : : : : : : : 予定より遅くなってしまい申し訳ありません。
これより投下致します。
硬い剣戟が、連続する銃声が、人や獣や人ならざる者の咆哮が、そしてそれらが連鎖的に生み出す轟音が、宵闇の下で響き渡る。
そこに時折、完全にそれらの音に負けている波飛沫の音が混じる。
何者をも寄せ付けぬかのような音と、殺気と、闘気。それらによって島の東端の岩棚一帯は、隔絶された戦場となっていた。
そして、あちらこちらが抉られ、削られ、砕かれたた車道や岩石の惨状が、その戦場の尋常で無さを物語っていた。
何も知らない一般人が後でこの場を訪れようものなら、砲撃戦でもあったのかと思ってしまっても無理なからぬ程の有様である。
「Go to hell!!」
そんな戦場を生み出している原因の一人、奥州筆頭が伊達政宗が身の丈の二倍近くもある巨大な銀十字架を横薙ぎに振りかぶれば、
その一撃を軽くステップして回避してみせるのは、HELLSING機関が誇る最強の吸血鬼、アーカード。
振り切られた腕が戻る前にそれを切り落とさんと、一気に駆け寄って白銀の剣閃を走らせるが、それを読めぬ政宗ではなく、
十字架を振って生まれた慣性と遠心力に身を任せて斜めに跳躍し、その一撃を回避する。
その傍らで、アーカードの“飼い犬”(些か適切でない表現ではあるが)たる黒犬獣バスカヴィルが、政宗の従者、
“竜の右眼”たる片倉小十郎の身体を引き裂かんと爪を立てて飛び掛れば、
「甘い!」
小十郎は先の踏み付けの時と同じようにその一撃を跳んでかわし、再び着地と同時に機関銃の弾丸を、弾倉が空になるまで撃ち続けた。
だが、しかしと言うかやはりと言うか、黒犬獣にさしたるダメージを与えれたようには全く見えず、
またも不機嫌そうに低い唸り声をあげながら、小十郎を睨みつけてきた。
(…全く、躾けがなってねえ上に性質の悪い犬だぜ。やはり火縄じゃ分が悪いか? となると…)
そう考えると小十郎は弾倉の交換をせずにそのまま機関銃を背負い袋に仕舞い込み、代わりに最後の支給品であるナイフを一本取り出した。
弾丸に余裕があるとは言え、それが一切合財通用しないとなっては、牽制にすらなりはしない。
となれば、リーチと火力が圧倒的に劣るとは言え、攻撃の手段を完全に変えた方が良い結果を生む可能性は高いだろうと彼は考えた。
何より、重火器と比べれば刃物の方が圧倒的に使い慣れているというのもあるし、このナイフ、実は一本だけではない。
背負い袋の中には、まだ数十本もの同じナイフが詰め込まれているのだ。
これは、このナイフの本来の持ち手であるとある洋館のメイド長が、普段から数十から数百ものナイフを一度に使っている事に起因している。
(さて、こっちが効いてくれればいいんだが、もしこれでも駄目な場合はどうするか…)
今現在こそ政宗小十郎も、それぞれアーカードと黒犬獣との1対1の状況になっているが、もし相手側が政宗に攻撃を集中させてきたら、
ナイフも黒犬獣に通じなかった場合、政宗を守りきるのは非常に非情に難しいと言わざるを得ないだろう。
最悪の場合、自分の命はここで捨てなければならないか…と、小十郎は重い覚悟を胸に、冷や汗が滲む掌を強く握り締めた。
「いいぞヒューマン。否、サムライと呼んだ方がいいか。こんなに楽しい闘争は久し振りだ!」
にやり、と鋭く伸びた犬歯を覗かせながら哂い、アーカードが賞賛する。
その表情には言葉通りの愉悦の色のみが浮かんでおり、怯えや焦り、恐怖と言った感情は、当然の事ながら一切感じられない。
しかし、それは相対する政宗にしても同じだった。
小十郎の悲壮とも言える覚悟と心境を知ってか知らずか、彼もまた、この常ならぬ闘争を心の底から楽しんでいた。
「それはお互い様だぜMonsterの旦那。こんな馬鹿げた戦場でなきゃもっと良かったんだがな。ついでに使い慣れた獲物がありゃ言う事無しだ」
「ハハ。全くだ」
政宗の常の獲物は、『六爪』と呼ばれる六本の日本刀。それを両手の指の間に挟んで振るう六爪流こそが、彼の本来の戦闘スタイルだ。
現在手にしている巨大十字架は、彼の膂力を以ってすれば扱う事自体に難は無いが、僅かずつながら過剰な疲労は蓄積するし、何よりやはり融通が効かな過ぎる。
特に、振るう度に過剰に発生する慣性は、政宗の動きに無視できないレベルのマイナスを科していた。
如何に眼前の相手に対してクリティカルな威力を叩き出すとは言え、彼からしてみれば、使い勝手は間違い無く悪い部類に入る。
一方、アーカードが普段使用しているのは、大口径の拳銃だ。
黒犬獣ら眷属による攻撃や、自身の身体能力に任せた“暴力”を除外すれば、基本的に中〜遠距離での闘いを特に得手としている。
『心渡』の六尺半という、近距離向きともならぬ中距離向きともならぬ中途半端な長さもさる事ながら、
そもそもアーカード自体が、刀を振るうという行為自体に慣れていない。
その行為は正しく、眼前の相手こそが得意としているもののはずであり、それは即ち、相手に読まれ易過ぎるという事だ。
事実、アーカードも政宗も、これまでの相手の攻撃の半分以上は、受けず流さず、軌道を読んで回避していた。
そして、アーカードの方はそれとは別に、この闘争について、そして己の身に起きている異変について若干の危惧があった。
(傷の治りが遅すぎる……。ヤクモユカリと言ったかあの女、何か細工をしてくれたようだな…)
セラスを庇った政宗の先制攻撃による一撃で抉られた肩口が、未だに回復しきっていないのだ。
既にこの傷をこさえられてから、二、三十分は経過している。
十全の状態の、ましてや夜のアーカードならば、「これぐらい」の傷ならば既に治癒しきっているはずなのに、だ。
(だが、それ故に楽しい闘争もある!)
「「!!!」」
ぶわっ! と、アーカードの放つ漆黒の狂気と凶喜が、一瞬だけだが政宗と小十郎をも気圧すまでに膨れ上がり、
そしてそれが合図とばかりに黒犬獣が今度は政宗へと、更にアーカード自身もまた、神刀・心渡を振りかぶりながら、
こちらは変わらず政宗へと向かって超スピードで突撃していった。
「政宗様!!」
威圧されて隙を生んだという不覚を恥じるよりも前に、覚悟を決めていた小十郎がバネ仕掛けのように政宗の前に飛び出し、
振り下ろされかけていた黒犬獣の両の前足を、ナイフの一閃で一気に切り落とした。
だが、黒犬獣の勢いそのものを殺しきる事はやはり叶わず、前足を失ってバランスを崩した巨躯に、思い切り圧し潰される形となった。
「ぐあ…っ!」
「小十郎!!」
ズゥン…と、重い物が大地に落下する音と、くぐもった小十郎の苦悶の声が、静寂の宵闇に響き渡る。
「チェック・メイトだ。サムライ!」
「しまっ…!」
漆黒の威圧。そして、眼前での己の従者の危機。一瞬の隙も、二度続けば充分すぎるものとなる。
迫り来る刺突に対し、回避は間に合わぬとの判断から政宗は十字架を盾代わりにして受け止めんと翳そうとするが、それも既に時遅し。
白銀に光る心渡の刃が、政宗の左の脇腹に深々と突き刺さった。
「ガッ…デム…」
ここに、闘争の幕は下りた。
―――あくまでも、「この闘争の」だが。
心渡の刃は政宗の身体に突き立てられはしたが、に背中側へと貫通される事も無く、
或いは一思いにそこから横薙ぎに胴体を両断する事も無く、肉と血管をいくらか傷付けるだけに留まっていた。
それでも軽症とは言い難いが、政宗の体力ならば反撃するに不都合は無い程度のダメージである。
「…どうした。トドメはささねぇのか…?」
「戯れが過ぎる所だったからな」
「どういう、事だ…」
「この戦場に於いてのマスターからの命はまだ受けていないからな。貴様達を殺していざマスターと合流した時、見敵必殺(サーチアンドデストロイ)と言われればいいが、
この殺し合いを止めろとでも言われようものなら、その命をまっとうする事は叶わなくなる。それでは困るのだよ」
「…テメェは…主の側じゃ…ねえのか?」
アーカードのその言葉に、いつの間にか黒犬獣姿を消した事により解放された小十郎が、覚束ない構えでナイフを構えながら問いかける。
ナイフを握る手に込められた力は幾分も緩んでいないが、口調から感じられる切迫感は、先の絶叫の時と比べるとほんの僅かながら減じていた。
「従者の主の上に更に主がいるなど、組織ではよくある事だろう? サムライの君主よ」
「…Ha! 違いねぇ」
言われて自分達の従者の従者、すなわち共に戦場を駆ける兵卒達の姿が脳裏に浮かび、政宗は破顔一笑して肯定した。
そしてその笑みがそのまま、この戦いの〆の合図となった。
◇◇◇
「それじゃあこれからどうするんだい? Monsterの旦那よ」
戦闘後、互いに大きすぎる獲物を体内なり背負い袋なりへと収めながら最初に交わされた言葉は、
小十郎の手によって応急手当を済ませた政宗から、ようやく初撃の傷が癒えきったアーカードへの、そんなちょっとした質問だった。
勿論、戦闘を経て彼等の間に友情が芽生えたとか、それ故に相手の事が心配になっているだなんて甘っちょろい事はさらさら有りはしない。
寧ろ逆に、一つ間違えればまたすぐにでも戦闘が再開されかねない、一触即発の雰囲気はまだ充分に残っている。
政宗とアーカードにとってしてみれば「ちょっと冷静になった。闘争は後回しにしよう」と言うだけに過ぎず、
いつまた戦う事になるかも判らぬ警戒すべき相手が、これからどう動くのかという事が気になっただけと言っても過言ではない。
「私はここで我が従者を待つとするさ。ヤツがちゃんと働くか、或いはその前に運が良ければマスターがここに現れるだろうし、
何より、闇雲に探し回って逆にマスターと入れ違っても困るしな」
「道理だな。それじゃあ俺達は逆に動き回るとするか、小十郎。じっとしてるってのは性に合わねぇし…何より俺達も探さなきゃならねえ奴等がいる」
「御意」
「フ。どちらも重傷ではないとは言え、たいしたタフさだな。これだから人間と言うものは素晴らしい」
かくして、アーカードは己がマスターであるインテグラと合流すべく、またその為に従者であるセラスを待つべくこの場に留まる事を選び、
それとは反対に政宗達は、己の当面の目的の為にこの場を離れる事を選んだ。
「じゃあな旦那。運が良かったら……否、悪かったらまた闘(や)り合おうぜ。Good Bye」
「ああ。願わくばあの女の支配下にあるこの戦場ではないどこかでな」
【D-6/北東・路上/1日目-深夜】
【主:アーカード@HELLSING】
[主従]:セラス・ヴィクトリア@HELLSING
[状態]:健康
[装備]:神刀・心渡@物語シリーズ
[方針/行動]
基本方針:???
1:セラスを待つ。
2:インテグラの命令(オーダー)を待つ。それまでは取り敢えず無闇に殺害はしないように努める。
[備考]
※参加時期は、北アイルランド地方都市ベイドリックでアンデルセンと対決した後。(1巻)
※再生の制限に気付きました。
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