今野晴貴
https://news.yahoo.co.jp/byline/konnoharuki/20171109-00077917/
(1)退職を伝えるのは2か月程度前が良い
 そもそも、この「アドバイス」は法的な責任に基づいた話ではないことに注意が必要だ。雇用期間の定めがない社員(正社員)の場合、
退職日の2週間前に退職したい旨を会社に伝えるだけで良いと、民法627条で規定されているからだ。

 もし、転職活動中にすぐに良い会社が見つかり、すぐにでも働きに来てほしいという場合は、2週間前に退職を申し込めば十分なのだ。
仮に、先のアドバイスに従えばかなりの期間相手を待たしてしまうことになり、せっかく見つけた再就職先をみすみす逃してしまうこともあるだろう。

 また、転職先の「内定取り消し」が問題となるケースも多いことから、労働者にとってはなるべくぎりぎりまで勤務先に「退職の予定」は隠しておいた方が良い。
いざ、「内定取り消し」になった際にも、退職を伝えていなければ、元の鞘に収まることができるからだ。 

 実際に、転職者を採用する企業では、「事情が変わる」ことが珍しくはない。
現在の勤務先に退職を伝え、2か月間も「不安定な状態」が続くことは、労働者にとっては大きなデメリットである
(もちろん「内定取り消し」も法的に争うことはできるのだが、争うことなしに転職できた方が良いに決まっている)。

 さらに、ブラック企業のような違法行為が横行する職場では、一刻も早く辞めたいということもあるだろう。
ブラック企業とまでいかなくとも、退職を伝えるとパワーハラスメントを行う上司もいる。そうした職場では、
2か月間我慢をするあいだに、うつ病に罹患してしまう可能性もある。

 実は、違法行為やパワーハラスメントなど、相手側に問題がある場合には、
2週間すら待たずに、即座に退職することができる。我慢して働き続ける必要などまったくない。

 このように、一見「常識的」に見える「退職を伝えるのは2か月程度前が良い」というアドバイスには、
労働者側の大きなデメリットが潜んでいるのだ。