コロナ禍で見えた「オンライン授業」の意外な限界 (2)

◆都内より圧倒的に進んでいる「熊本市」

だが、同じ公立でも双方向型のオンライン授業をすでにはじめている自治体もある。熊本市だ。
市内の公立小学校に子どもが通う母親は「全国どこもみんな始まっていると思っていた」と都内の様子を聞いて驚く。

学校の休校がはじまった直後には、以前から取り組んできたタブレット学習を継続、4月15日からはZoom を使った双方向オンラインでの学習がスタートした。
宿題の提出もオンライン上で行っており、子どもがログインすることで出席をとっている。

一回の授業は30分から1時間程度。双方向で行われているのは今のところ算数と国語の授業のみだ。
生徒側のマイクの設定をミュートにすることで雑談にならないよう配慮がされていたという。
教室での授業と同じように、先生に当てられた子はマイクのミュートを外して発言するという具合だ。

「同じオンラインでも、好きな時間にできてしまうドリル形式だと親にやれと言わなければならない。
双方向型の授業は決まった時間に受けないといけないので、そこがいいです。それに、友達の顔が見られ、声が聞けるから子どもはうれしそうです。
親の方もテンションが上がりました。双方向型がはじまって、やっと新学年になれた気分です」

教育ジャーナリストの佐藤明彦氏は「勉強の仕方がある程度分かっている中高生の場合は試聴型のプログラムでも学びを進めることができますが、小学生では難しい。
オンラインの学びについては管轄の自治体により取り組みに差が出ている」と指摘する。

公立小中学校の方針や対応を決めるのは文部科学省ではなく、設置者である各自治体だ
それまでICT化にどれだけ取り組んでいたかによっても進み方は変わってくる。

熊本市の場合、震災を機に小中学校のICT化を強化、2018年度から3年をかけて市内の小中学校134校に2万3500台のLTE通信タブレット端末を導入する計画で動いていた背景がある
すでに小学校では昨年度から市内全ての学校で3年生以上を対象にタブレットを使った授業をはじめていた。