天心流は一つの技法に複数の名称が付いている場合があります。
立合抜刀術 勢法
【本数】 【諱名】 【隠し名】
一本目 抜合 朽野太刀
二本目 面影 傘雪剣
三本目 抜留 驀地剣
四本目 巻外 月影
五本目 除身返 畷太刀
六本目 袖返 野分太刀
七本目 袈裟乱 柵太刀
etc...

諱名とは「いなみな」と読みます。
これは一般には諱(いみな)と呼ばれ、また真名(まな)、忌み名とも呼ばれるものです。
近年「実名敬避俗」と呼ばれるようになった漢字圏に見られる習俗で、生まれた時や元服後に名付けられた本名を隠すというものがあります。
その本当の名前が諱です。

幼名(ようめい)と呼ばれる、幼い頃にのみ呼ばれる名前はよく知られています。
徳川家康公の「竹千代」は有名です。
伊達政宗公は「梵天丸」、源義経は「牛若丸」など。
民俗学的には様々な意味合いがいわれており、中には「綺麗な名前は神に目をつけられるから」と汚い名前、普通な名前が良いとも。

諸芸などでは号(ごう)と呼ばれる現代でいうところのペンネーム、芸名が用いられました。
実名敬避俗の文化が廃れた後、武家社会の名残として武術界隈では「武号」などとして諱に変わって名を付けている流儀があり、天心流もある程度修業年数を経た門人に師家より授けられます。