そうやって集めていくと、例えば今では当たり前に認知されてる某型が、ある年代より前の時代の記録には
不自然なほど登場しない、なんていう事も見えてくる。そういう型ってのは実はひとつやふたつじゃない。

その年代に沖縄社会において唐手という存在に対し何が起こり何が求められたのか、唐手家達はどういう動きをしていたのか。
そういうのって案外リンクしてたりする。資料を探すのが苦手な人は、年代とか関係なく、型そのものを動画で見るのでもいい。
いつ中国から伝わったか不明な割には、やけに構成が似てる型ってのがあったりする。那覇手に限らず首里手も泊手も例外ではない。

誰が作ったのか明確に分かってる型や、明確ではないけどおそらく立場上作者は○○だなと可能性の高い型もある。
そして、それらの型がオリジナルの構成なのか、既存の型を下敷きにして改造したものなのか。
また、オリジナルであるならその型の構成やクセなどがその型以外の他の型にも見受けられるかどうか。

そういう考察をするときに冒頭で書いた単純な情報である唐手家の生年月日が活きてくる。

突如として現れた型の年代に誰が生きていて誰がまだ生まれていないか。誰が修行中で誰がすでに大家なのか。

そういう色んなバラバラだったピースを繋げていくと、何の型はいつごろ出来上がり、そして誰が作ったのか
その作業が行われた年代はいつなのかが浮かび上がってくる。そして製作者は○○だと判明しているあの型が
実はそうではなかったり、逆に型の創作なんかしそうにない人物がある型を作っていた可能性が濃厚だったり
なども分かってくる。

それらの型の真相は、時に沖縄社会における戦前の身分制度の変遷と関係していたり
学校の正科導入と関係していたり、本土への普及の動きと関係していたり、複合的な
影響と相まって色々と事情が見えてきます。

型ひとつ取っても、そういう膨大な資料や細かな調査の積み重ねなのです。
型以外の色んな唐手の他の項目も同様に地道な資料の収集と検証の繰り返しをしてきました。