>>267
文選に掲載されている為曹洪與世子書(為曹洪與魏文帝書)という奴ね
じっさいには曹洪か陳琳か断言できないけど、文選の編集者は陳琳の代筆と判断したってこと

ちなみに仮訳はこんなん↓

 十一月五日、洪が申しあげます。さきに初めて賊を破り、ついつい喋ってしまい、誇大報告が過ぎたようです。
 九月二十日の書を戴き、拝見し喜笑し、手に取ったまま飽きず、陳琳に頼み返事を書いてもらおうと思いましたが、琳も多事多忙にして作ることができません。
 ただ若君に楽しんでいただきたく、ゆえに自ら老夫の思いを尽くします。
 言いたい事が多すぎて、いちいち述べるのも何ですから、おおまかな要点だけあげます。笑い話の話題にして下さい。

 漢中の地形は誠に堅固なこと、四方の嶽や三塗山も及ばないほどです。
 敵側は、数万の精兵が高所にたてこもり要所を守っております。一人が戟を振れば、万人が進むことも出来ません。
 しかし我が軍がこれを進むこと、鯨が小さな網からはみ出し、元気の良い獣が魯の薄絹を破るが如し。などといっても、この容易さを表現するには足りません。
 王者の軍隊は出征あり戦いなしと言えども、不義にして強いものも、古から常にいるとおりです。
 故に唐虞の時代、蛮族が夏の地を乱し、周宣王の最盛期ですら、大国に仇なすものがおりました。詩書に掲載された欺きも、その難しさを言うものです。
 いずれも険阻の地を拠点として、中原からの遠さを当てにしていました。ゆえに難しい、全く良く言ったものです。
 ここで改めてこの地形を察するに、中才(中ほどの才能)の武将が篭れば、一挙に落とす事はほとんど不可能と言えましょう。