【正論12月号】毒殺国家ロシアに迎合するな 産経新聞外信部次長兼論説委員 遠藤良介
ttps://www.sankei.com/life/news/201101/lif2011010004-n1.html
 毒物事件や疑惑が相次ぐ背景には、ロシアでは旧ソ連時代、毒物の研究と毒殺が組織的に行われていたという伝統がある。
 毒殺方法の研究は、1917年のロシア革命で世界初の社会主義政権が発足してほどなく始まった。21年には、ソ連国家保安
委員会(KGB)の前身であるチェカー(反革命・サボタージュ取り締まり全ロシア非常委員会)に専門の部署が設けられた。
毒物研究の部署は「12号研究室」、「カーメラ」(ロシア語で〇〇室の意)などと呼ばれ、とりわけ独裁者スターリンの時代に
暗殺技術を発達させた。
 ソ連軍の元情報将校で歴史家のボロダルスキー氏は、毒物開発の目標は「犠牲者の死や病状を自然に見せかけること、
あるいは少なくとも医師や法医学者を当惑させる症状を引き起こすこと」だったと著書で指摘している。むろん毒物は「無味無臭」
でなくてはならない。「囚人」が山ほどいた国なので、人体実験は日常的に行われていたという。