日本が「先進国脱落」の危機にある理由は、IT化に乗り遅れたため
先例がある衰退国家・アルゼンチンの二の舞いになるのか? 
https://diamond.jp/articles/-/295119
加谷珪一 経済評論家(2022年)

アルゼンチンは19世紀以降の世界で唯一、先進国から脱落した国家として知られる
農産物の輸出で成長したが、工業化の波に乗り遅れて、急速に輸出競争力を失なったことが要因だ

国民生活が豊かになったことで、高額年金を求める声が大きくなり社会保障費が増大したことや、既得権益者が諸改革を拒むなど政治的な問題も起きて、衰退につながった
競争力の低下に伴う国産化(国内回帰)への過度な期待、ナショナリズムの勃興など、時代背景は違うが、アルゼンチンと日本の共通点は非常に多い

アルゼンチンは世界第8位の広大で肥沃な国土をもつ
ペロン以降顕著になった、福祉のための放漫財政や労働組合の強さにより投資のしづらい国となり、1960年代以降に頻発した政変に加え、1982年の英とのフォークランド紛争と敗北、民政移管後も長年の放漫財政のツケで混迷する経済状況に、安易なポピュリズムで対処したため、国の累積債務(国債)は雪だるま式に増えていった

特に1988年から1989年の間には5,000%というハイパーインフレーションを記録、物品の価値は1年間で50倍に跳ね上がり、通貨ペソは紙屑同然と化し、国内経済は崩壊状態となった
結局、1989年に対外債務のデフォルト(国債の債務不履行)を宣言する。2度目のデフォルトで国内の貧困も拡大し、1980年代に国民の約60%を占めていた中間層は、2005年には国民の約20%となり、貧困率は2002年には53%に達した

この間の経済的混迷により、富裕層は没落、中産階級(医者や知識層)のスペインやイタリアなどへの海外流出が続いた
インフレ率が2桁に達したことも1回や2回ではなく、過去に8度のデフォルト(債務不履行)を経験している
国が破綻・破産すると、最初に打撃を受けるのは貧困層や高齢者や障碍者など社会保障で生活している人々である