下請けで苦しむ中小企業は「5%未満・中小企業白書」の現実
生産性(給与)の低い業種(小売業や宿泊・飲食業)ほど、下請け比率も低い
https://toyokeizai.net/articles/-/405935?display=b
デービッド・アトキンソン

中小企業の中でもっとも数が多いのは小売業(1位)で、次に宿泊・飲食(2位)です。建設業(3位)と製造業(4位)がこれら2業種に続きます。

IT関係や製造業では、下請け比率が他の業種より高いのは事実です。2017年度では、情報通信の下請け比率が36.2%で、製造業が17.4%でした。(建設業は約2割といわれている)

製造業では、中小企業の生産性はそもそも低くありません。国全体の生産性は546万円。それに対して製造業は720万円で、業種別に見ると5位につけています
情報通信の中小企業の生産性も636万円と、中小企業としてはかなり高いです。

一方、業種として生産性が最も低い宿泊・飲食業の下請け比率は0.1%です。生活関連も0.8%で、小売業は1.0%でした。

宿泊・飲食業は中小企業全体の14.2%を占めており、生産性は184万円です。生活関連は10.1%を占めており、生産性は282万円。小売業は17.4%で、生産性は321万円でした。
この3つの業界で、中小企業全体の41.8%を占めています。(女性の就業が多い業種)

つまり、下請けの比率が高い業種の生産性は決して低くなく、逆に生産性の低い業種は下請け業務を行っている比率が非常に低いというのが現実なのです

したがって、仮に大企業の搾取が中小企業の生産性の低さの一因だったとしても、白書のせいぜい5%程度の説明要因にしかなりません。「大企業による中小企業搾取論」はエピソードベースの議論にすぎないのです

日本の中小企業はほとんどが同族企業ですが、それらについて語るときは、イメージをいったん忘れて、実態を表すデータを探してみなければならないのです。