就職しても幼馴染は俺の事が好きだった。暫くして彼女にプロポーズした。幼馴染に報告すると、そうなんだと言った。そういう所が駄目なんだ。可哀想な女だった。
親友スピーチをする幼馴染は少し泣きそうだった。俺と彼女は泣いた。中高の友人達も泣いた。どこまでも一途な女で可哀想だった。付き合えなくてもせめてこれからも特別な親友でいてあげてと嫁は俺に言った。俺もそう思った。新居に招いて三人で団欒している最中、幼馴染は困っていた。嫁に嫉妬していたんだ。嫁が「私のいない日にも呼んであげたら」と言うから何回か呼んだ。嫁に遠慮して断るから手を引くと着いてきた。
ある日「好きだからもう呼ばないで欲しい」と言われた。嫁も俺も知っている。その事を話すと幼馴染は俺を殴った。驚いた。まさか手を上げる女だったなんて。幼馴染はそれきり俺達の前に現れなくなった。仕事をやめた噂が伝わってきて、気付いたら幼馴染は実家を出ていた。幼馴染の父母は何も話してくれなかった。逃げたくなる程俺の事が好きだったなら早くに俺を受け入れていれば良かったのに。キスも駄目。抱くのも駄目。そんな女と何故付き合おうとすると思ったんだ。道理の分からない女だから入試に落ちたんだ。男一人落とせないんだ。顔だけで最終面接に行くような女と俺とは価値観が違う。
嫁は「可哀想だったね」と時々言う。幼馴染の父母が引っ越してから俺の心はぽっかりと穴が空いたようだ。
見た目だけは良かった。可哀想で俺がいないと駄目だと思う。それは俺も同じだ。嫁では満たされない部分を幼馴染で埋めていたのだ。