「ホータロー!」
「わっ!?」
廊下の窓でぼんやりと外を見ていた折木奉太郎の後ろから、いきなり抱きついてきた女生徒がいる。
髪の毛はサラサラのセミロング、キラキラと光る瞳。
まさに美少女という出で立ちの彼女は、そこにいるだけで目立っていた。
その金髪碧眼の少女、リナ・ハートレーは、アメリカから交換留学生として神山高校へやって来たばかりである。

「リナ、勘弁してくれ!」
「ドウして? ワタシの国ではスキンシップ大切ネ!」
「ちょっ、ちょっと折木!」
中学からの同級生である伊原摩耶花が、奉太郎の腕を掴み引っ張っていく。
「オゥ、ホータローまたネ!」

「折木、なにデレデレしてんのよ!」
「別にデレデレなどしていない。リナがくっついてくるだけだ」
「ふーん? 下の名前で呼んじゃって、そんなに仲いいんだ」
「本人がそう呼んでくれというんだから、仕方がないだろ」
「私は別にあんたがどうなろうと構わないけど、ちーちゃんがかわいそうじゃない!」
「千反田? なぜここであいつが出てくる?」
「このニブチン!」
摩耶花は呆れて自分の教室に帰ってしまった。
しかし奉太郎は気がつかなかった。
彼を見つめるもうひとつの視線を。