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そこで岡田氏は、原語である英語詞のニュアンスをひも解いていくことで私たちが思いもしなかった『アナ雪』像を浮き彫りにし、
あのシーンがいかに革命的な試みによって生まれたのかを明らかにする。

また、氏は登場人物の言動や表情は当然として背景、気象現象に至るまでアニメーションの中でのあらゆる描写は、
全て作り手の意図が与えられた「演技」だと強調する。
唐突に吹く風にも、キャラクターが一瞬見せる不可解な表情にも表現される一つ一つに意味が込められているというのだ。

これはアニメ制作を経験した岡田氏の基本的な鑑賞スタンスであり、
他の多くの動画でも1シーンに着目し何を描いているのかを読み解くといった形で解説を進めている。


彼の緻密な鑑賞スタイルから学べることが多く、お気に入りの回の一つである。


【2.分析を裏付ける知識と教養:『トイストーリー2』】

●西部劇とSFの狭間で

背景知識をふんだんに用いた解説を聴きたいなら、『トイストーリー2』の特集回を観てみてほしい。
『トイストーリー2』は、ピクサーの出世作の続編で、私も幼い時に繰り返し観た、個人的な愛着もある作品だ。

この回で明らかにされるのは、ピクサーの(あるいはジョン・ラセターの?)恐ろしいほどの拘りっぷりと、
それを解説しつくしてしまう岡田氏の歴史や文化に関する造詣の一端である。

冒頭に派手なアクションシーンを持ってきた意図などの映画の構造から、
アンティークとしてのウッディの価値を裏付けるさまざまな描写の解説までを、
その背景にあるアメリカ文化の変遷とともに解説してくれる。

それを可能にした50年代文化へのリスペクトやおもちゃファンならではのマニアックな仕掛けに溢れた映画でありながら、
背後で語られる主人公ウッディとバズライトイヤーの対比が、私たちが思うよりも残酷な事実を生々しく描く装置として機能しているのが『トイストーリー2』なのだ。