通常の何倍もの時間をかけてちらほら街頭のある里中にたどり着き、そこからは一目散に家に戻った。
伯母は自転車から子供を降ろすと「ここで待ってて」と言い、急いで軽トラの鍵を取りに行き、走って戻ると子供を軽トラに乗せて出発した。
薄明かりの中で見ても子供は異形だったが、両手をしっかり握りしめてしゃくりあげている姿が可哀想で、伯母は山道を急ぎ◯◯池へと向かった。
車で行けるギリギリの所まで行き、子供を車から降ろしてやると、子供は「ここから一人で行ける。おばちゃんありがとう。ありがとう」と言い、表情のない顔のままお辞儀をしたそうだ。
伯母が見送っていると、子供は何度も振り替えって頭を下げた。姿が見えなくなってしばらくして、パシャンという水音が聞こえたので、伯母は安心して山道を下ったのだが、子供が乗ってない帰り道のほうが怖くてたまらなかったそうだ。
先にも書いたが、◯◯池は人工池なので、何年かに一度、池の水をすっかり抜くことがある。池干しと呼ばれ、老弱男女があつまって、うなぎや鯉や鮒を手掴みで捕って遊ぶ行事でもある。
子供を送ってから最初の池干しの時、伯母は心配になって行事に参加したそうだ。