石じじいの話です。

海の話をつづいて。

朝方、漁から帰って着た時、濃霧にあって港に近づけず、晴れるのを待っていました。
霧の向こうから、黒い影が舟に近づいてくるのに気がつきました。
それは、黒いコートを着て、海面をふらふらのしながら歩いて来たそうです。
舟に乗っているわけではなく、海面に直接立っていました。
それがどんどん近づいて来ます。
声をかけることはためらわれました。
肝をつぶして待ち構えていましたが、それはブイ(浮き)だったそうです。
ブイにコート(服)がひっかかっていたので、人間のように見えたのです。
ほっとしたのですが、なぜブイにコートがかかっていたのか?と疑問におもったそうです。

船の周りを小さな鳥が数千羽がとり巻いて時計回りにとびまわったことがありました。
1時間ほどそれが続いたあと、鳥たちは次々に落下してきました。
ほとんどは海面に落ちて漂いましたが、甲板に落ちたものもたくさんいました。
皆死んでいて、動かなかったそうです。

漂流する筏に出会ったことがあったそうです。
それは竹を組んだもので、帆が立っていました。
粗末な木箱のようなものが積んでありましたが、人は乗っていませんでした。
10分ほどのできごとで、筏は流れに乗って船と行きすぎました。
「なんのために、あがいな筏で海に漕ぎ出したんやろ?のっとった人はどうがいなったんぞ?」

最後の話は、「メアリーセレスト号事件」のようですね。規模は小さいのですが。