石じじいの話です。

晩秋に林道を歩いているときに、道を少し離れた樹木の幹に「看板」が設置されているのを見つけたそうです。
秋になって葉っぱが落ちて見通しがよくなったので、それを見つけることができたのでした。
近寄って見てみると、それはかなり古いものでしたが、墨で文字が書いてあるのが読めました。
「来て見つけてください」と読めました。
それは三角形の板で、二本の釘で幹に打ち付けられていました。
おそらくその三角形の鋭角の方へ行くのだろうと思い、森の中をその方向に進んでみました。
あたりの樹木はほとんどが落葉樹で、すっかり葉が落ちて見通しはよかったそうです。
少し歩くと、また看板が。
さっきの看板と同じものでした。
「来て見つけてください」
矢印(三角形の方向)に向かって進みます。
看板がまたありました。
「来て見つけてください」
今度の看板は、板が少し割れて、一本の釘を中心にして回転して下を向いていました。
しかし、それを元に戻すと指していた方向はわかります。
その方向に進みました。
そこから、看板が見つからなくなりました。
何度も行きつ戻りつして周りを探しましたが見当たりません。
看板を探している途中で、落ち葉に埋もれた石積みを見つけたそうです。
そこには、人工物はまったくありませんでした。
その看板は、この石積みを見つけて欲しくて設置されていのか?
すでに、それに従って誰かが訪れていたのか?
全くわからなかったと。
じじいは、意味がよくわかりませんでしたが、いちおうお経を唱えてその場を立ち去ったそうです。

よく、落葉して森の見通しが良くなると、森の中で自殺している人が見つかることがあります。
経験があります。