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俺はキョトンとしていた弟の手を取り無我夢中でばあちゃんちへ引き返した
坂道なのによく転ばなかったもんだ

ばあちゃんに戻って落ち着くと子供なりにあれこれ考えてみた
真っ先に思ったのは【死角にいた人が向きを変えてからまた死角に入った説】
でもこれは無理だろうと思った
最初に案山子を見てから二回目に案山子を見るまで本当に一瞬だったから
ほとんど無風だったので【風で向きが変わった説】もナイ
あとは【紐かなんかが結わえてあって離れた場所から向きを変えた説】
【まさかのハイテク電動式だった説】【どう見ても案山子だけど実は人間説】これぐらいか
どれもピンとこないがきっとこの中のどれかだろう
【自分の意志で自らこちらを向いた説】は必死で頭から追いやった

結局この年の夏は二度とあの田んぼへ近付かなかった
翌年ばーちゃんと一緒に通った時に立っていたのは普通の案山子だった
俺が案山子恐怖症になったのは言うまでもない