母方の今は亡きじいちゃんは昔釣船店をやっていたそうで釣り船を持っていた
だもんでガキの頃はじいちゃんちを訪れると毎回のように海へ船釣りに連れて行ってもらった
そんな楽しいひとときにじいちゃんの竿に異様な魚(…形はいちおう魚だった)が掛かることがあった

ちらりと見たそいつらは種類や大きさなどは毎回異なれども一様に人間のような顔つきをしていた
(昔話題になった人面魚のように単なる模様だけではなくもっと立体的だった)
おまけにそいつらは「おおうおおう」とまるで鳴き声(泣き声)のような音を立てた

そいつらを釣り上げるとじいちゃんは見たらおえん(だめだ)と言って
なるべく俺に隠すようにして即座に海へ還していた
そして必ず海に向かって手を合わせナムナムと唱えていた

そいつらについてじいちゃんが語ってくれることはとうとうなかった
太平洋に面した県で二十数年前にあった話