石じじいの話です。

じじいは、石を求めていろいろと旅をしましたが、これは岐阜県を訪れた時の話のようです。
岐阜県は、化石や岩石で面白いものが多いのだそうです。
南北に長く、北部は非常に山深い。
南のほうでは、太古の哺乳類の骨や歯の化石がよく発見されるとか。
日本最古の岩石がある、というのは、最近のニュースで聞いた記憶があります。
山の中でじじいは、石を探している子供と出会ったそうです。
その子は、小学生高学年くらいでした。
ゲートルを巻いて、地下足袋を履いて、腰からはわらじを下げています。
簡易テントを背負って歩いていたそうです。
その時、じじいも同じ格好でした。
その子の着ている服は古いものだったのですが、綺麗に洗って補修してあり、少年自身の体も清潔だったと。
じじいが、何をしているのか?と尋ねると。
死んだ父親が求めて見つけられなかった石をさがしているのだ、ということでした。
それが父への供養だと。
母と住んでいて、母は自分の行動に納得している。
と言ったそうです。
その石は非常に珍しい石で、まず見つからないことをじじいは知っていました。
少年に、発見は無理だろう、と説得しましたが、死ぬまでかかっても見つける、とかたい決意でした。
いろいろと尋ねると、少年は学校にも行かないで山を歩いているようだったと。
いくら戦後そうたっていないといっても、未修学は・・とじじいは心配になりました。
少年は、各地の山のことを非常によく知っていて、じじいを「指導」してくれたそうです。
少年が岐阜の地元の人だったのか?のメモはありません。
その子は、里に下るじじいと山中で別れて、さらに山奥を目指して歩いて行ったそうです。
里に降りて、その少年のことを村人に話ましたが、ここら近辺に該当する子供はいない、ということでした。
「あの子は、今はもう、ええ大人になっつろうが、めざす石は見つかったんかいのう。」