>>429
(つづき)
狂死した男性の葬式が終わり、四十九日が終わったあと家族はいなくなりました。
その朝は皆いたのに夕方には全員が失踪していたのです。
夜逃げではなく昼逃げです。
田舎なので、昼間に、ひと目に触れずに行動することは不可能なのに
金目のものを含めて家財道具も、お金(現金、貯金)も手付かずで残されていて、家や田畑も売却されてはいなかったらしいのです。
ただ、位牌とお骨も残されていました。
そのときから、現在(じじいが子供の私に話してくれたとき)に至るまで、その家族の消息はようとして知れない、と。
家族の人たちにとっては、老人がボケることはよくあることだし、それを特に世間様への恥と考えるようなことは無く、恥じて姿をくらませる必要もないのです。
疾走する前兆もなかったし、理由も思い浮かびませんでした。
家業の農業もうまくいっていたし、旦那さんは町の役場に努めていたので生活は安定していました。
「もしかしたら、その死んだ男性が言っていたことは本当だったのではないか?」と、子供のじじいは思ったこともあったそうです。

家族を含めて周りの人々が知らない間に「別のモノ」によって置き換わっていく、というのはSF小説や映画でたびたび出てくるモチーフです。
何度も映画化されている「ボディスナッチャー」は有名ですね。
ドナルド・サザーランドの絶叫が怖いラストシーンが印象的です。
一度、皆さんもまわりを確認してみてください。