石じじいの話です。

メモから短い話を2つ。
(1)海の話
じじいの島の友人が話してくれたそうです。
ある漁夫は、信心深い人で、他の者よりの多く魚を取り、年を重ねても体がよく動いたそうです。
ある日、彼は、「今日往生する」と言って、島の人々を訪ねて回って挨拶をしました。
その後、彼は、浜に行って腰まで水に浸かって西に向かって合掌して念仏を唱えました。
光明遍在の偈を唱えて、「願以此功徳」の文を高らかに誦していましたが、念仏の第七遍目に晏然として息絶えたそうです。
海に浸かったまま立って往生を遂げていたのです。

(2)虫を呼び寄せる鏡があったそうです。
鏡といっても、今の鏡ではなく、銅板を磨いて錫メッキをした昔の鏡です。
そのような鏡は、すぐに曇るので、ザクロの汁で毎日磨いて曇らないようにするのですが、問題の鏡は、そのときにはすでに曇ってしまっていたそうです。
その鏡は普段は木箱にしまわれていました。
鏡を取り出して、鏡面を上にして縁側などの、外に置いておくと、どんどん虫がよってきたそうです。
もう、黒山の状態になるほど虫が集まったということです。
大昔の武家の嫁入り道具の一つで、もともとは支那で作られたのだ、とも、
備前の古墳から盗掘されてきたものだ、とも言われていたそうです。