そして番組は三日目、テリーの言うとおり確かに多くの「よき隣人達」が
レイダーを助けているが、彼の逃げる先を次々とマフィアに教えているの
も同じ「隣人達」だった。
 また追いつめられたレイダーを突然現れた一台の車が救う。
 慌てて乗り込んだ車の運転手は女だった。
 礼を言うレイダーに彼女は番組のスタッフだと告げる。
 あと数時間でクリアなのにここでリタイア=死なれたら困ると言うのだ。
 しばらく走った後で車から降ろされたレイダーは、今までの「よき隣人」
も彼女と同じように番組の仕込ではないかと疑念を抱く。
 では彼の居場所を通報するやつらも……それはない。
 自分で選んだ場所で出くわすやつらが次々と密告する。
 レイダーは思う、みんなは自分と同じ凡人が困難を打ち破る姿が見たいん
じゃないんだ。
 自分と同じ凡人が、身の程知らずに出来もしないことをしようとして死ぬ
姿を見たいんだと。
 逃げた末に墓場に追い詰められたレイダーは、掘り途中の墓穴につまずき
転落する。
 その彼にマフィアたちが銃口を向け、恐怖と絶望でレイダーの精神が粉々
に砕け散った瞬間「時間切れだッ!」というテリーの声が響いた。
 逃げ切ったレイダーの勝利、しかし勝利者インタビューをしようにも彼は
もう口も聞けない状態。
 間を持たすため、テリーは時間一杯レイダーと彼を助けた「よき隣人達」
への賛辞を繰り返すのだった。
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 いかにもありそうな話に見えるが、この小説が書かれたのが1957年だと
言えばその凄さがわかるだろう。