石じじいの話です。

じじいは、山中で放棄されていた荒れた寺に行き当たって、不思議な仏像を見つけたそうです。
山を歩いていると、山中にわりと大きな荒れ寺と思われる建物に行き当たったそうです。
だいぶ古く、半壊していましたが雨風はしのげそうだったので、一晩を過ごすことにしました。
周りには、ほとんど獣道しかなかったのですが、昔は建築資材を運び上げるような道があったのでしょう。
中に入ってじじいはちょっと驚きました。
仏具のようなものがたくさんあったからです。
金属製のものは全て錆びて緑青がういていました。
本堂と思われる部屋の鴨居の部分には、意味のわからない漢字が書かれた短冊のような紙ががびっしりと貼り付けられていたそうです。お札ではなかったと。
変色してぼろぼろだったので、ほとんど読めませんでしたが、読めた部分はお経ではなかったそうです。
仏像を見て、じじいは不思議な感じがしたそうです。
その仏像は、1メートルほどの立像でしたが、体がぐんにゃりと横に湾曲していたのです。
体は細身で、胴が異常に長く、それがすこしねじれて、かつ片側にぐっと曲がっていました。
仏像はふつうは、両手で印を結んでいるものですが、その仏像は両手の指を伸ばして広げて手のひらを前に向け、両腕をだらんとたらしていたそうです。すこし前かがみになって。
まるで、無防備なボクサーのようだったと。
つづく: