石じじいの話です。

じじいは銃で撃たれたことがあるそうです。
じじいが朝鮮に住んでいた時、アムロッガンで発電所を作るための工事現場の近くを歩いていたときに、それは起こりました。
そこには、かなり広大なススキの原っぱがあって、そこを突っ切ると目的地にショートカットできるとふんだじじいは、そこに足を踏み入れました。
獣道のようなものはなく、ススキをかき分けて進みましたが、疲れてふと立ち止まると、静寂があたりを支配していたそうです。
風も吹かず、ススキはぴくりともそよがず、まったくの無音、鳥の声もなかったと。
一息ついてじじいはあたりを見渡していましたが、とつぜん近くで音がしたそうです。
「ガッチャ、ガッチ」
じじいはそれを聞いて、即座に「小銃の撃鉄を起こす音だ!」と気がついたそうです。
銃の扱いには慣れていたじじいでした。
じじい曰く:
最初のガッチャが、ボルトハンドルを回して弾倉から弾丸が出て、撃鉄が起きる音;
つぎのガッチが、弾丸を薬室に装填して、ボルトでそれを閉じる音なのだとか。
じじいは、腰をおとしてススキの中に身構えて、ホルスターから自分の拳銃を抜こうとしました。
そのとたんに、「バーン!」
正面のススキの間に銃火が光るのが見えたそうです。
つづく: