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つづき
じじいは怪しんで、その男性を呼び止めて、そのような案内人がどこにいるのか?と尋ねました。
「ほら、あそこに、待ってくれています」とその男性が指差した先には、誰もいない。
じじいは、敵愾心を持たれないように諭しました。
『よう見てみんさい。あそこに人がおるかな。よーに見てみんさい。』
『はあ、あそこにおられますが。ちょっと不機嫌そうにしてらっしゃいます。』男性
じじいは、そこで般若心経を唱え始めました。
男性は、非常に訝しんでいたようすでしたが、急に、はっと後ろに退き、自分でも般若心経を唱え始めました。
二人で必死に唱えたそうです。
真っ白な顔をしたその男性は、急に読経をやめました。
『どうかな、あの人、見えんようになったかな?』じじいが尋ねると、その男性は大きく頷いて、そこに座り込みました。
じじいは、その男性に、この路がまちがったルートであること;自分が正しい遍路路に案内すること;しかし、この時刻では夜になって真っ暗で往生すること;を説明して、自分の家に泊まってはどうか?と提案しました。
男性は、それに同意して、二人は麓から少し離れたじじいの家に向かいました。
つづく