>>630
つづき
女性に向けた文章だったとか。
女性へ、幸福な結婚を祝うことば;
楽しかった思い出を得たことへの感謝のことば;
手の届かないところへ彼女がいってしまうことへのさびしさと無念;
と。
文章から察するに、持ち主は、その女性と付き合っていて結ばれなかったのでしょう。
詳しい内容はわかりません。
じじいが話してくれたときには、私が子供だったので、あまり理解できなかったし、じじいもその内容を詳しく私に語ることを避けたのでしょう。
自分の母親への感謝の気持ちをあらわす文章もありました。
その手帳には持ち主の住所氏名が記されていました。紛失した場合の拾得者へ返送の願いも書かれていました。
じじいは、それを読んで大慌てで雨合羽のあった場所の周りをさがしまわりました。
他の残留物を探すためです。
何もありませんでした。もちろん遺体の一部なども。
ただ、その雨合羽の近くに、ピッケルの頭と思われる金属があったそうです。
それにはローマ字と数字が刻印されていましたが、じじいには読めませんでした。
数字のみ1935と読めたそうです。
つづく