オカ板住民が好きな音楽について語ろう 2 [無断転載禁止]©2ch.net
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「あぁ、やっぱり・・」
「因みに生きている歓びという意味だよ、坊や。」
「本当にそういう意味なんですか?」
「私がそのように念じた。そしてそれが永遠となった。信じるか?」
「わかりません」
「本には書いてない。だが、それさえ書かせることはできる。そう思わせることが
できるのが私だからだよ。音というだけでは、まだ何を示すものかはハッキリさせることは
出来ない。だが、私が発すれば、そこから感じれるものがその者にとっての意味となる。
そして、そうなってしまった者がこの地上に生かされているんだ。解るか?小僧。私は太陽だ。
私がいなければ、この地上に生きる生命は、すべて色を失う。暗闇だ。
私が見ている限り、誰がどんな者か、顔つきさえ覚えることもできれば、
どんな名前がつけられているかまで確かめに行く事もできる。
早く私のことを太陽だと思っておくべきだ。私は始まりだ。
だが、終わりではない。太陽は終わりを見つけていないのだ。」
「はい・・。何だか説得力のある論説、悼みいります。」
「悼まれているのは、今くらいなら君というところだがね。」
「正直で気に入った。
しばらく首は刎ねずにそのままにしておけ。」
「はい・・。」(女性の声)
わざわざイシュタルという名札をつけた少女のような
女性が、太陽の指令を引き受けたようだった。 「お茶目な方なんですね。」
「これ位しか、女性がしてやれることは無いですもの。」
「優しい、ということですか?」
「女性がいなかったら、あの世に天国を見つける道さえ
なかったでしょうよ。」
「だから、優しくならなきゃ、って事ですか?」
「優しくしようと思っても無理をすれば零れるでしょうね。
こぼれるというのは、自分の為を思ってしている事だと見抜かれる、
ということよ。だから、優しくしようと思ってなくても、
なぜか人からそう思われる人を目指せばいいんじゃない。」
「はぁ。そうなんですか。参考にしてみます。」
「ところでヤハウェって言うのはトップじゃ無いんですか?」
「トップクラスよ。でも、好かれる人と恐がられる人は違うの。」
「じゃ、トップはどっちなんですか?」
「ヤハウェという人は、トップをエホバだと云っても、事情を察して怒らないでいてくれる人よ。」
「そうなんですか。」 「好かれる人が怒る役までこなさないといけなくなると、
ややこしくなるのよ。人を恐がらせない神さまもそのままで
いてくれないと、私達は倒産してしまう集まりだから。」
「つまり、イメージの悪化は最小限に抑えるという事ですか?」
「ええ、そうよ。怒っているのはいつもエホバ。それでいいの。
そうでなくともね。怒るときがあるとすれば、あの人が怒るわ。
あの人、というか、ファラオのことだけどね、結局は・・・。」
「ファラオ?ええと、ファラオとエホバは同一人物なんですか?」
「あまり云わないで欲しいけど、正確には違うわ。ファラオは怒る時の為に再生している過去の記憶よ。
エホバこそが本当の主よ。人ではない存在。だから人と云ってしまったのは語弊があるわね。
誰もエホバの性格を知る者は居ない。だって本当の神さまなんですもの。地球上に生きている全ての
存在を肯定しているけれど、怒ることも必要だったから、ファラオを自分が怒る時の顔として呼び寄せたの。」
「え?じゃ、誰が操作しているかは突き止められないって事?」
「解ったなら解ったって云いなさい?その為に私達がいるのよ。」
「はぁ。よく解りません。」
「何かを止める時には解るわ。でも、見ない振りをする時は誰がやったのかは言いません。
それがこの家に入るという事よ。何か困ったことでも御有り?」 「何が問題なのか解らないのでそれも無いですけど。
誰もその独裁政権をひっくり返すことは出来ないんですよね?」
「誰も出来ないわね?私達が賛同してる限り・・。」
「そうですよね?
で、いざという時に怒ってくれる人は必要なんでしょ?
で、そういう時に怒ってくれるのはファラオが憑依したエホバだと。」
「そういう事だったわ。」
「で、皆さんはそのことについては異存は無い、と。」
「そうねぇ。本当は無い訳じゃないのよ。」
「と、言います、と?」
「ファラオが自由なのよね。」
「ファラオが?」
「あの人、女好きなの。」
「はぁ。そういう話ですか・・。」
「いちばん怒ってしまう人が女好きだから、
女性のほうも断り切れなくてね。」
「で・・、どうしたいと思ってるんですか?」 「イエスに任せたいとは思っていた。」
「あの有名なイエスさまにですか?」
「そうよ。」
「で、上手くいきそうなんですか?」
「恋人になったマグダラのマリアが私よりも
情に厚い人でして。誰のことも嫌いにならないように
生きてる人なの。」
「ほう。そうすると、どうなるんですか?」
「そうなるとね、イエスの一存ではいかないのよ。」
「はぁ。」
「イエスがなるべく穏便な人を集めようと思っていても、
マリアが庇ってしまうから、どういう人もそのままなのよ。」
「どういう人も、というと?」
「ファラオの代役を務めようとする男達よ。」
「ファラオの代役?」
「そう。支配欲が消えない男のことよ。」
「どうして庇ったりするんですか?」 「いい?私には、私の発言のテリトリーがあるの?
これは犯人を掴ませない様にする為よ。」
「何を言っているんですか?」
「ファラオは、いつでも自分と似た人間がいないか探してるわ。」
「どこでですか?」
「地上の世界に。」
「地上の世界にそういう人を見つけると、そのあと、
どうなるんですか?」
「蓄電に回されるわ。」
「そういう人が蓄電ではなく、本当にファラオの後釜を狙うとしたら?」
「有り得るわね?わたしは、
怒ってくれる人がいるなら、それがたとえ誰であっても
構わないと思ってるの。」
「はぁ。」
「あ、これはマリアの発言よ。マグダラのマリアね。
私じゃないわ。私はそんな事、計画してないもの。
仮にどの人が計画した事だと噂されたとしても、
それを揉み消す為に怒ってくれる人を雇うんですから。」 「じゃ、あなたが計画していた事なんですか?」
「私じゃないわよ。あれ〜私って誰だっけ?私ってね、時々、
別の人になる時もあるから。」
「別の人・・?」
「イブよ。」
「へぇ。一人二役。」
「台本作りにはかなり私は貢献してるけど、詳細は省かせて貰うわ。」
「それは犯人逃れの為?」
「誰がどのくらい悪い事をしたか、なんて
その大きさによって解らなくなるものよ。
あなたは、イエスの話がお嫌い?」
「いえ、嫌じゃありません。ロマンチックかなって。」
「そう・・。
イブというのは、何かが起こる前夜という意味ね。
本当の夜は、イエスだったの。クリスマスのXという文字には
全てを含ませてあるわ。誰かにとってのあらゆるもの全て。
それはプレゼントよ。それをどう感じてくれるかは解らない。
けれど、いつも私達は想像している。どの人にとって何が
驚く事になるか。それを度々、思い出して貰いたいのよ。」 「何だか意味深ですね。」
「そうしてるわ。」
「何で意味深にするんですか?」
「野暮ね。届かない日が続いていたのに、
ある日、何かに届いてしまう日も訪れる。
その為には、隠さないとね。」
「なんで隠す必要があるんですか?」
「それを特別な事だと思わなくなった時に
堕落が始まるわ。特別だと思われている時がずっと
続いてくれることでそれを人に薦めたくなるものよ。
自分でそれを発見できた時、とても喜べるでしょうしね・・。」
「喜べないとどうなるんですか?」
「人には勿論、話すことはない。」
「そして堕落が訪れる。」(僕の声)(彼女の声)
僕と彼女は、何故か
同時に同じ言葉を口にしてしまった。
─堕落した時代ってどんな感じなんだろう?
自分の感情が浮き上がったり、落ち込んだりするのを
想像しながら、自分がショックな気持ちにならないように
その時だけの付き合いを望むような。 ─きっとそうなる前に少し落ち込むような恐れは
持っているんだろうな。だとしたら、そのあとにある
びっくりしない範囲でする贅沢とは・・。
─何だろう?それでも堕落だとは想像できない。
堕落って何にも有り難味を覚えない事だと思うけど。
びっくりしない程度に贅沢をするって言う点は聖書には
書かれていないけど、びっくりしない程度にという部分を
聖書から発見できた時は、嬉しかったように思う。
それは今でも思うね。でも、その上での贅沢ならいい、と
までは書かれていない。有り難味は思い出せる。でも、
それを堕落だと思えない。贅沢だとは思うけれども─。
─そもそも、望んでない状況って云うのは、
ショックを受けないように想像しておく部分を
たいして為にも成ってない助言のように感じる人が
多くなってしまうことを心配してるんだよね。
それが精神の堕落だったはず。
教えてくれたことは有益だと感じながら、
贅沢をしたいと思うことはいいんじゃないのかな。
─わからない。僕は、自分が堕落している─という事を
いまだ自覚できずにいる。
「何を考えてるの?」 僕の妄想を聞いている、という
口調で彼女が訊いて来た。
「いえ、何でもありません。」
「死者の世界には昔から見ている人がたくさん居るわ。
静かにしていることしか出来ないと思ってるなら、
その場所にはあなたがいるより空気だけの方が静かなの。
生きてもらいたいと思われるのは、何かに貢献してきた人や子孫にとって
何も云われの起きない先祖の方達よ。あと、怒ってくれる人も僅かだけど必要かもしれないわね。
でも、そこまで引き留めることもないの。なぜなら、怒ることに自信を持ってる人は、
今も未来も地上に居るんですから。ファラオのように怒ってくれる人は
肉体が存在してゆく世界には育ちやすいのよ。」
「僕も何か特技を持っていればよかったです。」
「まぁ、そう落ち込まないで霊界探訪を楽しんで。」
「そしてここが二階よ。でも、
ここは管理して下さってる人達のフロアだから
あなたにはお見せできません。」
「何がある場所なんですか?」
「一秒後とそれ以降の台詞かな。」 「全ての人の?」
「まぁ、そう云ってしまっていいわね。」
「どういう事ですか?」
「そう思っていた方が気をつけるようになるから、
問題ない、という意味よ。」
「そうですか・・。凄いですね。人間の世界も・・。
という台詞も予定だったという事ですね?」
「それは、あなたのアドリブよ。」
「じゃ、アドリブだけで乗り切りたいと思います。」
「そこまで自分の性格と違うことを選べる人だったら可能ね。」
「運命は、いつも自分の性格が握っているんですか。」
「そうね。でも、運命は
自分よりも先に生まれた人が握ってるのよ。」
「どういう意味ですか?」
「どういう事でも構わないわ。
あなたのご先祖さまでも、私達でもね。でも、
あなたの身体を借りる人があなたを見限った人だと言う点は、
間違いないかもしれない。そういう意味では、あなたも負けよ。」 「どうしてですか?」
「あなたは、あなたの身体を借りた人よりも
犯人にされるのが当然だからよ。あなたは期待できる程じゃ無かった。
だから、あなたに二度目以降の贅沢をするだけの時間があったのよ。」
「見てくれていた人が僕に努力する可能性があると思ってくれていたら、
状況が違っていたという事ですか?」
「そうね。それしか無いわ。」
地上三階に着いた。そこで彼女は別れを告げた。そこには二階の
窓越しに見たイエスとは違う少し冷たい雰囲気を持ったイエスがいた。
彼は僕を見つけるなり、こう云った。
「どんなに意志の固い人間が指揮を執ろうと思っても、
その者に近寄ってゆく人間が増えていかない限り、その者は誰かの
運命を創ることは出来ないし、名前を覚えて貰う事も出来ない。」
そこにはプールがあった。
何となくプールに手を入れると、
そこから洗い流そうとしていた《過去》が流れ込んできた。
「きみは恋人に何もプレゼントしていなかったね。」 イエスは流れてきたものを見るなり、そう云った。
続けてこのようにも云った。
「思い出して贅沢さを感じる側と値段を下げられたと感じる側では、
一人になったあとのご飯の味も違うだろう。いよいよ自分だけで
好きな食べ物を食べれるようになったと思えるのは、費やした時間が
失敗に終わったと思う側ではなく、交際することができて得をした、と感じているきみじゃないのか?」。
ベランダからは雲が浮かんでいる空が見えた。
「その雲に向かって飛んでみていいよ。」
最初は僕に自殺してみろ!と云う意味なのかと思っていたが、
「きみはもう、死んでるんだよ。」という言葉で我にかえった。
そこに飛んで往き、その雲の中に入ってみると、
懐かしい人達がいた。だが、それは僕にとって苦手な場面だ。
それを克服して来なかったから、今もこうなのかもしれない。
─いや、待てよ。平気になるのと、必要だと云われる事は
少し違うかな。
自分がやりたいと思った事なのだから、必要だと
思われていない事に焦らないといけなかったはずなんだけど、
僕はそう思い続けることが苦しかったんだもんな・・。
─苦しいと感じるうちは、それを感じないようにして
出て行ってはいけない。それを感じることが必要だったと云うことか・・。
僕は何かを終えたんだろうか。それとも終わってない? 今はもう思い出す事も無くなった光景だったけど、自分は切り上げるのが早かったんだろうか?
もっとその人と話さないといけなかったのかな?いや、それは違う。僕は自分の性格を知っていた。
だから自分がイメージ通りに動けない人間である事をそこで痛感したんだ。
「その場面は、君がやっと
普通でいられる人の方が羨ましいと思えた瞬間だったよね。」
僕の全部を知っているかのようにイエスが呟いた。
「信じられないとは思うが、霊界は鏡のような世界だ。
地上の人間には必ずいつものメンバーの心が送球されるようになっている。
君と話している私も君が生まれた時に用意された○○○○○番目かのイエスだよ。」
「じゃあ、僕が生まれてきた時からずっと?」
「そうだ。○○○○○番目かのイエスである私は、
他のメンバーと一緒にずっと君に対する予感を与えてきたんだ。
それが階層を巡るパターンでもあり、君が落ち込んだ時や短気を起こした時に
回答してくれている[気のせい]の事でもある。」
「本当に只の幻影なんですか?」
「幻影なんかじゃない。君が話した言葉は、本人に届けられている。
ただ、想像と少しだけ結果が異なっている場合も起きるがね。
君が生まれる前に私と会話をする機会はすでに用意されていたんだ。
だけど今、イエスの実体が何処にあるかは教えられない。それが必要だとも思えないよ。
君が私をイエスにしか見えない今という時間が続いてるのだから。」 「誰がこんな事を考えたの?
本当にいるはずのイエスに対して失礼だと思わないの?」
「話が脱線したね。君は以前の落胆した場面を見せられたはずだ。
イエスのことは私達に任せて。君と会っている私が本当のイエスかも
しれないし、君がイエスだけではなく他の人からも好かれてゆく事が
未来の目標なんだから。」
「この会話は誰が考えてるの?」
「当然、と思えることを想定して台詞は用意してる。君もそう思うだろ?
君は会話をしてくれた人達のことを君より変人だと感じたことは今まで無かったくらいだ。
君にそれが無いと思えるなら、是非、この当たり前に思える会話の内容を受け入れて欲しいものだね。」
「わかった。誰が台詞を考えたか?という事よりも、
必ず誰かには云われていただろうと思って聞く事にするよ。」
「そうしてくれたまえ。で、何かな?
私達が君の性格からイメージしていたものとは違う結果が稀に
あるようだね。君は、もう自分を知っている、と。
どうやらそんな話だったかな。」 「そう。僕は喧嘩ができない。
当時、僕が気にしていたのは下手だという自覚ではなく喧嘩ができない
という自分を乗り越えられなかった事なんだ。人が好さそうな感じのする人には
いつも言い返していた自分だったけど、鋭い雰囲気を漂わせている人に対しては
急に萎んでしまって負けずに言い返すほどの自信や、いざとなったら組み合っても
勝つほどの腕力が自分にあると思えなかった。」
「だから自分に対して
以前から望んでいた理想のイメージを抱くことは不可能だったと?」
「そうなんです。それがその時、解ったはずなんだ。僕には、面白く会話を始める能力もないし、
他人を惹きつける魅力もない。もし、その人に一回だけ言い返せたとしてもそれから何度もそういう人が
現れたらそのあとも気持ちを前に進ませられるか不安だったから。だから無理だと思ったんだ。
何年も挑戦していたら別だけど、最初の入口で誰かに笑われて足がすくむ位なら、そのあとで
誰に会っても同じ顔をしてしまう。だから自分はその時、受け入れたよ。成りたかった自分の姿と、
実際に露わになってしまった自分の姿。」
「それで・・、いまは幸せなのかい?」
「とっても幸せだよ。だって幸せじゃ無かったのは、
自分を勝たせたいと思って応援してくれていた背中にいる人達だったと思うから。」
「つまり、君と一緒に生きていた人達のことかい?」
「そう、思うよ。なぜかって云うと、がっかりしてる自分より
もっとがっかりしている別の女性がいつも傍に居たように思うから。」
「それは君の恋人だった女性のお母さんかな。
彼女は早くに亡くなっている。君に何かを想わせる為にいつも
近くに居たんだと思うよ。」 「でも、どうして?」
「君と彼女のお母さんが地上で会っても、君はその人から
何かを貰うことはできないだろう。君が何かを思ってしまった事に
ついても、地上で挨拶を交わすだけになるなら、その人の常識観を
壊すことはできない。人には此方で決めるタイミングというものがある。
亡くなるタイミングのことだよ。君はあの世に残って貰う女性に対して、
知ってほしい事柄を伝えたんだ。それが何か君に解るかい?
それは、まとまってゆかない、という事だ。誰かの夢は、
誰かの夢を満たす為、叶えられてゆく。それが感じられるようになる頃に
丁度、君の夢は終わりを見るということだよ。」
「それは、どういうこと?」
「それは君のお母さんでは無かった人が、
君のお母さん役をして一緒に落ち込んでくれるくらい、
やさしい人になれることが判明した、という事だよ。」
「じゃ、僕は、自分の一生として順調なのかな?
自分の傍で落胆している人がいたというのはそういうこと?」
「実際は、どう転ぶかわからない。そういう時、
君が死ぬかもしれないし、傍にいる女性にとってまだ殺したくない
自分がいたのかもしれない。でも、
君が死なない限り、成果はでてくる。それは此方の話だ。」 「じゃ、まとまらない話になる、って云うのは?」
「それはね、君が見た夢は、君以外の誰かに渡された、
ということだ。君が浮かべていたもので地上にまだ現れていないものが何かあるかい?」
「いえ、数年のうちに形として登場しているものが殆どです。」
「じゃ、まとまらなくてよかったな。君の中だけで願いをまとめようとしても、
君は充分にそれを果たせなかったろう。アイディアは君のものではないんだ。
君の中でイメージが残り続けていても仕方がない話で、
君は受け取ってしまったイメージをめとめようとせずに手放す事だけ
が唯一、残されたカルマだったと云える。」
「はい。全くその通りだったと思います。」
「それならいいね。じゃ、今は普通というものに成れたんだ?」
「全然、成ることができないよ。ときどき、体調が不安定になるんだ。」
「それは、おそらく・・遠慮したくなる程じゃないという事だな。」
「それって、どういう事なんですか?」
「あの世の人も君と一緒の時は、寝そべってしまってる、という事だよ。」
「それは僕がやっぱりダラシナイという事ですよね。」 「まぁ、そういうことだ。でも、葬式をあげて貰ってる人達ばかりのはずだから、
本来、居た場所は君が暮らしてるアパートじゃ無かったはずだよ。」
「それは、仏壇の中に居たって云うことですか?」
「そうだね。日本では、位牌の中に居る霊が多いだろうね。」
「何故、その位牌から飛び出してきたんですか?」
「君が心配になる子供だったという理由と、君がいつも
自分という性格がどんな性格であるのか、周囲とズレていた事かな。」
「お調子者に見られてたという事ですか?」
「うん。試行錯誤していたということかもね。
君は威勢よく大声を出している時もあれば、人には打ち明けずにくよくよとしている時もあったから。」
「その両方が自分だと?」
「どちらが自分なのかは、本当は君が決めてよかったんだけど、
君は、どちらが自分なのか決められないまま来てしまったんだ。」
「それで結局、どちらも自分として続けた、と?」
「そうだね。それを自分だと思っていた、というのが正確かもしれない。
その調子じゃ、これからも君の性格は統一感なく増え続けると思うよ。
それを君は、自分の感じ方が増えたと思って喜ぶのかもしれないね。」
「じゃ、どれも霊の憑依が原因なのかな?」 「いや、君の性格もあると思うよ。今はこの位にしておく。
君がどの自分を最後に自分だと思うかは私の方で云わないでおくよ。」
「どうしてそうするの?」
「まだ、君は君に会ってないかもしれないからなんだ。」
「は?」
「いやいや、本当に会ってないとはね。
君に対して指示を出す霊がいなくなった時、
君は、初めて自分がどんな雰囲気だったのかを知ることになる。」
「それは必ずしも弱虫というイメージではないもの?」
「どうだろう。これが自分だと思う地点は君が決めていいよ。
もし、そうじゃなかったら、誰かが違う体験をさせてくれるから。」
「じゃ、いつまでも近くに誰かは居てしまうんですね?」
「誰かはいるよ、必ず。でも、君にはそれが解らないだろう。
君は部屋に誰もいない事を清々しく思うかもしれないけど、
清々しい気持ちで誰もいないだろうな?と思わせてくれるほど、
穏やかにしていられる人が傍についてくれているのかもしれないよ。」 「じゃあ、空の心境って結局は、
落ち着いている誰かの空気を感じてるってこと?」
「そうだと思う。誰もそこにはいない、と思っている時に
そのままにしてくれるなら、それが君に与えられた空気だよ。」
「その空気の名前は、だれのことですか?」
「ショウイチだよ。」
「ショウイチ?」
「そう。君が中学三年生の時、亡くなったショウイチだ。」
「彼が、僕に空気というものを教えてくれた人?」
「そうだね。空気というか、
寂しさに襲われても、どんな風に思えばよいかを
君でも感じれるようにしてくれた人さ。」
「今も、この部屋の中にいるの?」
「今もいるかもしれないけど、呼んでも返事をしてくれるかな・・。」
「どうして?」
「いつもどんな人が傍に居るかを云わずに続けていた人だから。」
「今は返事をして貰えないの?」 「何かを聞きたい時になって自分の方が声をかける、というのは、
いつまでも自分を残す人と同じだよ。」
「それじゃいけないのかな?」
「何かを聞きたい時になって誰もいない、というのを受け入れたとき、
君の中で変化してゆくものがあると思うよ。それは形かもしれない。」
「かたち・・?」
「そうさ。形。
その瞬間、君の腹の中にいた誰かが崩れるから。
君の中に住んでいた矢印がいずれ何処も示さなくなる。」
「それが答えなの?」
「そう。
でも、そうなる前に整理は必要だ。
腑に落ちない疑問があるうちは、それに
向かって何だったのか、想像するだろう。」
「そのあとはどうなるの?」
「そのあとは、君以外に家族がいれば、
君のご先祖さまが家系を続ける目的を
定め直すかもしれない。」 「それは、どういう風に思えばいいの?」
「地上を入れ物だと思えばいい。
未来の人類として生まれ変わるのは、
死後の世界にいても火が消えてゆかない人だ。」
「火が消えてゆかない人?」
「そう。でも、それはどんなに時間をかけてもいい。
自分がここに居続けても変わらない部分がある、と
思ってしまった時点で輪廻を申し込むかもしれない。」
「それはどんな思い?」
「変わりたいという思いさ。」
「どんな風に?」
「それは解らないけど、変わりたくないという思いが、
いつまでも変わらない部分の事を指してるんだろうね。」
「それだと、どうなるの?」
「そのまま使うことが多い。」
「何を?」
「その人の性格を。」
「と、いうと?」 「人は生まれ変わった後からでも希望する性格を
その人に付け足せるんだ。そのようにすることもあるし、
何より地上にはその人以外にも人がいるからね。
それを頼りにしてる。」
「その人達が変えてくれるということ?」
「そうだといいよ。自分が
続けたい性格になれないからと云って、すぐに
自殺する訳にもいかないだろうしね。人は、
自分の命惜しさに自分から腰を低くできるものさ。」
「なるほど、自分から笑っていける人の方が、
味方してくれる人も増えてくれるから好ましい、って事だね。」
「そう。
男の人が自分から話しかける事に悔しさを覚えるのと同じだよ。」
「男の人だけ?」
「男の人だけって事にしていた方がいい。」
「どうして?」
「男も女も無視できる人はいるけれど、
いつも話しかける順番くらい男にしなきゃ、
女の人が疲れちゃうよ。」 「はは。そうだね。」
「きっかけを作ってあげたのに、
時間まで盗まれてしまう事が多いなら、
きっかけくらいは男にしておかないと。」
「でも、霊界では静かにしていなきゃいけないんでしょ?」
「そうだよ。
その為に男性は結婚をするべきだし、
美人がお婆ちゃんになってゆく過程は、
どんな元気だった男性さえ大人しくさせてくれるものだと思うよ。」
「本当にそれでいい?」
「あぁ、それでいいんだ。」
「そうじゃなくてあなたの口ぶりだよ。」
「あぁ、少し失礼だったな。
でも、君にはそれで通じた。」
「ええ。通じました。」
「ほう。どんな風に通じた。」
「普通のことでよかったと思います。」
「そう。普通でいいんだ。」・・。 「ところで、君に好きな人はいるのかい?」
「いまは、とくにいません。」
「そうか。では、あの娘はどうだ?」
「あの娘は、と云われてもまだ、何も知りません。」
「そうだろうとも。けれど、そのくらいから付き合って好きになれたのが、昔の人達だったんだよ。」
「お見合いですか:。」
「そういうこと。」
「それって一体、どんな事なんでしょう?」
「自分が好きだと思ったものを追いかけてるうちは怒ってしまう。
近くに置かれたものを好きになるようにしなさい。」
「近くと云われても、いつの間にか近寄ってきた人が
いる時は、相手にどんな説教をすればいいんですか?」
「ちょっとだけ付き合ってあとは別れなさい。」
「その人がいつまでも相手の出来ない人だったら?」
「じゃ、君がその人を僻みっぽくしない為に生まれてきたんだ、と
思って、彼女を幸せにしてやりなさい。」 「はぁ:。幸せかどうかの埋め合わせは、僕の方でするんですね?」
「よろしく頼むよ。それをそう思わずにしてくれるなら、君はいい男だったよ。」
「すいません。」
─空ってこんな風にできてるんだ。
空って何も無いようで実は、何も無い方が
知らないうちにみんなを好きになるんだろうな。
ひとりだけ好きな人が出来たって、
そういう時だけ、自分が足を取られてしまうのかもしれない。
勿論、自分のことが嫌いな人ばかりに囲まれては、
それからどうやって行動をとったらいいのか、解らなくなって
逃げ出すのが僕のしてきたことだろうけど。
「霊界では、いつもそこにいるのに隠れてる人達がいる。
どうしてそれをしているかと云うと、誰かの口を使って伝えてゆく方が
いつまでも代わりに云ってくれる人を見つけられるし、自分が誰かに
余計な恨みを持たれることも起きないからね。」 ─誰にも見られてないようで実は見られてる。
どのようにして人の気持ちが生まれているかをイエスが教えてくれたような気がした。
「ここでそういう話をしたのは、どうしてなのかわかるだろう?
そこには誰も居ない、と思ってても、君には力不足だと云ってくれる人がそこらじゅうに隠れていたんだ。」
─なるほど。あの世の人達が不慣れなままで
何も手につかない様子をまるで知らない小道に入り込んでしまった
ような気持ちで見てたのかも・・。
だから、返される返事は、いつも自分を見ていない顔ばかり。
そうでなくとも、その人だけで同じことはしてくれたと思うけど。
きっと僕がそれに向いてると思ってくれている霊ばかりが隠れていたら、
その担当者だっていつか、自分を見抜いてくれたのかもしれないけど。
でも、まぁ、
その人だって僕に会うまでその仕事が続いてるのだから、誰かに
信頼されたんだと思うし、周りに見えない誰かが沢山いたんだと思う。
と、そこに4階のイエスが降りてきた。
彼は3階のイエスとは違い、どこか後ろめたさを持っているようだった。
というのも、彼の目は黒い眼鏡で覆われていて何処を見ているのか傍目からは解らない。
何かを隠しているに違いない─。
僕の生来の直感は、僕自身にそう思わせてくれた。
4階のイエスは僕にこう告げてくれた。 「きみは何かを見抜いているようだけど、そんなことはどこの国でも
同じことさ。無償で優しいことをしてやる奴なんて何処にもいない。
わたしはいつも、願い事を叶えてあげている。だけど、叶えてあげている
願い事は、いつもその前にこちらで叶わなくしてあげていたものばかりだ。
だから、叶わないはずの願い事をするときになってやっと神を思い出すんだよ。
そうしなければ神を思い出してくれないからね。悲しいよ、ほんとうに。
願い事をする時にだけ人は純粋になれる片鱗を垣間見せる位なんだよ、いつも。
だから、純粋さを取り戻すように帰還させたいと思ってる奴には願い事が
叶うようにしてやってるさ。何でもかんでも立ち塞ろうとすると、あとから
それを思い返して渇くのが人間だからね。思い出作りに協力してやってるのが
私や一緒に働いている人達だよ。」
続けてイエスはこう云った。
「わたしにも憎たらしいと思える奴はいる。
だけど、自分から先にはそれを打ち明けてしまわないよ。
神に引き取られてしまった若者を多く生むことになれば、
まだ自分も生きたかったという悔しさを滲ませながら、
妬ましい眼差しをそいつに向けてくれるんだ。だから、
わたしの方から嫌いだと云う必要性は生まれない。
早く亡くなってしまった人というのは、まだ生きてる人を
見せるだけで悔しがる人が多いから。だから、私にとって
嫌いな人物が現われる迄、地上の様子を披露するタイミングは
幾らでも勿体ぶることは出来るし、そうすることでいつも
憂さ晴らしを申し込まれる側に立つことが出来る。ましてや、
見せたい場面を敏腕のイシュタルの方で勝手に編集できるとしたら、
ちょっと印象の悪いことをした事がある奴なんか、幾らでもその場面を
見せて地縛霊にとっての仇役に仕立てあげることさえ出来るんだから。」 僕はそれが本当にイエスの心境であるかは確かめようともせずに、
ただ、なんとなく珍しい話でも聞いているかのような返事をした。
「へぇ。そうなんですか。」
「簡単なものだよ。最初は、私が嫌いな奴だったのに、
一緒にそいつのことを追い掛け回してくれて。挙句は私が側に付いて居なくとも、
自分の方から「彼を不幸にする為の見張り役をやらせて下さい」って願い出る始末だしね。」
「本当にそんな人が沢山いるんですか・・?」
僕はまるで自分がそんな人になりそうな事さえ想像できずに
そんな人になってしまっているかのような相槌を打ってしまった。
「元々は、そいつのことを殴りたかったのは自分だったんだよ。それなのに、
地縛霊の連中ときたら、「お願いしますから一泡吹かせてやって下さい」と申し込んでくる。」 「ほうほう。」こういう時って、
ついつい好奇心だけが先に立つ─。
「私の頼みごとだったのにね。いつも仕方ないから叶えてやるかと云った面持ちで
私の方は地縛霊からの頼み事でもあるかのように自分がしたかった腹いせを地縛霊の罪に成るように
やらせてしまうんだ。彼らと来たら、本当にメシアを名乗った私を信じてくれて困っちゃうくらいだよ。」
「信じたら駄目なんですか?」
「私は信仰と疑いの間を生きる神だよ。どう思ってくれたって構わないが、
私を信じ過ぎても傲慢だ。だけど、私の大変さに敬意を感じてしまえない奴は、
どんな出来事が起きても何とも思ってくれない人と同じだよ。イエスはどんな人かという部分を
変えたくない人はいつも現われる。でも、それは変化してゆく事を受け入れない人と同じで
それまでと違った想像が出来ない人のことを指すんだ。私が信じてくれる人に何を望んでるかと云えば
働いてくれないことじゃない。死んだあとの世界で働いて欲しいと思ってるんだから、
自分が云われてショックな言葉を持っていてはやり通せないし、それを誰かに
感じさせる仕事をし続けるなんて無理なんだから。」 僕は4階のイエスの言葉を聞きながら、いつも思っていた事とは違う、
何かもっと他のことを思わなきゃいけないような不安を強く感じていた。
「いいかい。死んでから自分が思い描いた通りのイエスを見て安心した、
といわれても、私はそれから何も仕事が出来なくなるし、その人は
休んでいるくらいしか能が無くなるんだよ。そんな人が何の役に立てる?
子供は大人になるまで何処かで落胆して動揺しない人になってゆかないといけないのに、
自分で少し位、毒舌を思いつくことが出来なくてどうする?
私は言うよ。そいつがどんな事を云われたらショックなのかを感じ取って
云われたくない事をズバリ言う。そうしないと結局は、人生の体験に満足できずに
終わった人を増やしてしまうだけだからね。」
僕はこの時、雷に打たれるほどの衝撃を覚えた─。
─まさか、イエスが自分からキツイ言葉を言う為に
色んな人の人生を視察してたなんて・・。
「いや、それはイシュタルの仕事だ。」
口にできなかった驚きを察知したかのようにイエスはそう言った。
「イシュタル?」
「そうとも、イシュタルだ。
知らないかい?シュメール神話に出てくる・・」
「イシター!」
僕は昔、ファミコンで遊んだことがあるソフトのタイトルを思い出して
思わず叫んでしまった。 「そうすると、もしかしてイースター祭って言うのは、
イシュタルの願いを継いでイエスが復活したことを
お祝いしたものなんですか!」
「それはあまりはっきりとは言いたくない。でも、それまでは彼女が歴史を作ってきたのは事実だ。
私が十字架に架かったあとは、私も監視する人間として指揮を執らせてもらってるが、私は私の発言の範囲がある。
彼女の代役として私が居るという風に思ってもらっても誰も喜ばないだろうし、彼女は余興さえも創るんだ。
人生の余興。それは余興を見ていても怒らない人間が見守ってやれる仕事だからね。私のテリトリーは違う。
私は早く自分で蒔いた種を思い出して信徒に帰って来て欲しいだけだがね。」
その発言をしたあと、イエスが一瞬、寂しそうな目をしたのを
僕は見逃さなかった。そう、まるで
イエス自身も色んな事柄に興味を持って楽しみたかったかのように。
そういえばイエスは公の人なんだ・・。
自分からは斬新すぎる発想や趣味に時間を費やしてる暇を
持てない人だと言うことを、僕は忘れていた。
「イエス先生。ひとつ質問していいですか?」
何だか急に、切なくなってしまってこの人のことを改まって先生と
付け加えたくなった事に僕は何の躊躇いも感じずに
訊きたくなった事があった。 「なんだい?」
「先生ってもしかして、自分が趣味を持てない立場の人間だから、
色んな体験を身近に感じていようと多くの人を赦してあげてるんですか?」
「その件はもういい・・。ちょっとその質問はしないでくれるかな?」
僕が質問しようとするや否や、
瞳の中に涙を滲ませていたイエスを見て、僕は
自分の不甲斐なさを呪いたくなった。
─死ぬまでに面白い特技を持って死ぬんだった・・。
「いいよ。君は相談に乗ってやれる人が沢山いるじゃないか。」
「どんな相談ですか?」
「君が後悔していたことは君がそのまま持ってていいんだよ。君が後悔している限り、
それを思い続けながら生きている人達の励みになる。後悔というのは、どんなことに
後悔するか見つかった、という事なんだから。
その先の人生にはそれをやろうとする自分がいたんだと思うよ。それが想像できてよかったんだ。
あとは実際に、その勝利のベルトを身に付けたいかどうかなんだろうけど、どうしてベルトを
手にしたいのかまで自分に問えばベルトを手にしなくなるところまでは想像してしまえるはずだ。
自分が作りたかったものがまだこの世に無い、と言うのなら行動したい気持ちも残るだろうけど、
どんな仕事でも構わないから花道が欲しいという願いなら諦められるだろう?」 「そんなもんなんですかね?」
「君のそんなもんが本当にそんなもんなのかは解らないけど、
君が後悔に耐えながら生き続けることは同じように
死んだ世界で生き続けている人の安心になる事は確かだよ。」
「・・・・・。」
「どうする?本当は、私から告げたく無いんだ。
後悔している気持ちが、その先を知りたがっている事をね。
後悔というのは、生まれ変わろうとしている格闘だから・・。
後悔の強さそのものが、自分で始めない自分になるのを
何処かで待っているんだ。それまでは打ち込んでいたい。打ち込んで
自分が続けたいか辞めたいかをいつも確かめたい。まだ何か浮かぶようだったら
それを発言するだろうし、それに向かって取り組むだろうし、
いつも後悔は傍にあってそれを解消しようと時間があったはず。
つねに後悔を生まないように毎日を解消している人なんて本当に
抜け目ない人だよ。勿論、人間の世界では自分以外の人間が競争
の為に押さえ込もうとするから、気を配らないといけないけど。
それも有って普通に後悔は自分以外の人間が存在している分、
増えてしまうものだけど、それも日々、解消しながら生きている
人は、よほど、感じることをサボらなかった人だと思う。本当は面倒臭いんだけどね。
怒りそうな雰囲気の人を怒りそうになる前に味方にしてゆく、ってのは。」 なんだか、僕にとっては出来そうも無いことを
言われているような気がして、いっそ聞き流してしまおうと思いたい位であった。
「君はまだ、此処に暫く居ていいんだ。そうでないと私の仕事も増える。もっと沢山、
色んな人と喧嘩をして自分がなりたい人はどういう人かを模索した方がいい。時間をかけてみると
意外にもそれまで憧れていたような性格を捨てて違う雰囲気を持てるようになる場合もあるんだ。
君がそういう雰囲気になってしまう事を照れ臭くならなければ。案外、人が求めるイメージに
近づけてゆくとあまり喋らない人になってしまう事はある。人が求めるイメージと云っても、
主に、女性が不快にならない、って事になるけど。」
「もし、女性が、そう思ってくれない時は?」
「盛んにお喋りをしたい女性がいるなら、きっと、その女性も後悔をしているんだろう。
言葉というのは、どんな口ぶりであれ、何らかの後悔を示しているんだ、って、これ、聖書に
載っければよかったかな?」
「イエスさんは、これからどうするの?」
イエスは言葉を詰まらせた。まるで嘘を言う準備をしている素振りだ。
「実を云うと、わたしの仕事はもう終えている。意味はあまり感じようとしなくてもいい。
わたしの仕事は聖書を広めることだ。イエスである私がどの様に捉えられてるか正確に伝えることが
出来ているから、そのままの印象で来てくれるのを待っているんだ。私に会いたいと願ったとき、
〔 ─ 私は、私だと思いたくない人になる ─ 〕ことで、その後の続きが生まれるかどうかを
調べるけれど。それはいい。兎に角、君はもう少し、此処で色んな人と喧嘩をしてみるといいよ。
そのあとでまた私に会おう。私が会いに来るときには、きっと君も喧嘩をしようと思わない人に
なってるだろうから。」 「君だよ。○○。」
僕は、空白にされた部分を、自分の名前だと思って聞いた。
「イエスさん?あなたが今、半分以上、仕事を終えた、という風に
言っていましたが、いま、仕事をしているのは、一体、誰なんですか?」
「うん、いい質問だ。
実を云うと、これも社外秘なんだが、仕事をしていることがあるのは、
君のようなお喋り屋さんだよ。君が何か疑問に感じることが有れば、
それは瞬く間に地上の世界へと流れてしまうんだ。そしてそれが地上の誰かにとって
「まだ広まってない疑問の答え」に成ってゆく。それを漫画にする人も居れば、
映画にしてみたいと思う人も居る。会話として広まってゆく事もあるだろうし、
その様な会話が聞く人の未開拓部分になるなら、気持ちが広がってしまう快感を
抑えられずに流行してしまう言い方として持て囃されるんだ。何にせよ、
死んだあとの世界で誰かが何かを想ってくれる事は、地上にとっても
取り沙汰になる会話の種類として歓迎される。云われてきた議論に関しては、
想うことがあっても、インスピレーションを受け取る地上世界で回答がされるから、
どのような人が過去の歴史の中ですでに発言しているものかを感じる事はよくあるかもしれない。」
「なるほど、では、発想することは、あの世とこの世、
どちらの世界からも有り得るという事ですね?」 /「その通りだ。だから、思いつきそうな事は、取り合えず、
言葉にしてみるといいよ。」
「イエスさん、わかりました。これからもそうしてみます。ところで、
イエスさんのお話は、もう終わりですか?」
「君のほうに質問が無ければ、私のほうからは無いよ。」
「ありがとうございます。どうもお世話になりました。
ところで、5階のイエスさんって、どんな方なんですか?」
「はぁ、5階のイエス、ねぇ。5階は誰も居ないんだよ。」
「って、どういう意味ですか?
此処には、7人のイエスがいる、とお聞きしましたけど。」 「実は、5階のイエスも私がやっていた。今は5階から降りてきたところなんだ。
でも、誰か居るかもしれないな。でも、居ないとも云える。私がいま、云ってること、
すぐに解ると思うから、解らなくなったら、大声で何か叫んでみるといいよ。」
「たとえば、どんな言葉をですか?」
「そうだね、たとえば・・、
神というのは、こういう事を云うんですかーっ、とか。」
「ははぁ。」
僕は何か見当でも付いてしまったかのように
上に続く階段を駆け上がらずにはいられなかった。 「じゃね。」
「はい、では、本当にありがとうございました!」
「うん・・。」
イエスは、理解できるか心配そうな顔をしながら、
僕とは最後、目を合わせないようにして背中を向けた。
そして5階。これでようやく7階分、廻って来た事になる。
ここに居るのは、どんな人か─。
「あれ・・屋上だ。」
ほんとうに誰もいない。屋上というか、
屋上の風景も遂に無くなってしまった。
(さて・・どうしよう。ここまで来たのだからこれで最後なのだが、
此処にいても仕方が無い。一体、何をすればいいのだろう。)
僕はしばらく考えていた。
何を考えたらいいかは解らないまま、僕は考えることを探していた。
(もしかしたら、僕はこのまま、休んでいられるのかもしれない。)
と思ったとき、4階のイエスが上がってきた。 「いつもここで待機するのは、私だよ。
君は、人の中に混ざっていなさい。」
「はい。わかりました。」
階を降りようとすると、いま、最上階にいたはずのイエスも戻ってきた。
「どうして降りてきたんですか?」
「あの場所に居ても仕方が無い。あの場所に行くのは、
誰かがその椅子に座ろうとした時だけだ。」
「どうしてそんなことをするんですか?」
「どこにいても、誰も居ないと思うことはできる。
本当に誰もいないところに行って誰も居ないことを
満喫しようとしても、その人には自分があるんだ。」
「わかりました。つまり、一人になろうとする人を、
そのままでは、一人にすることはできないと云って
引き留めてるわけですね?」
「そうだよ。その意味が君にも解るかい?」
「はい。だって、さっき、そう仰ったじゃないですか。
一人になろうとするのは、一人になりたい人が自分の中に隠れているからだって。」 「そうだ。それが君だよ。君の中には、もう一人の
誰かが君を手伝っていたはずなんだけど、その責任は、
君にもある。君がその人にとって息のしやすい人間だったから、
その人も留まっているんだ。つまり同じ罪を犯している。その人が
何も云わなくなるまで私は君の事を気に掛けてるよ。」
「ありがとうございます。」
「まだ、解らないみたいだな。早く人の中に混ざりなさい。
人の中に混ざってゆけば、君は誰かに見つけてもらえる。
見つけてもらった理由が、誰かの気に障ったという話でもいい。
そうしていつかは、君も気にならない人になってゆくんだよ。」
「はい。どうやら、そういう事みたいですね。
とにかく人の中に混ざってゆけば自分がいいか
悪いか云われてしまうって事ですね。」
「わかったら、もう行きなさい。」
「先生、お世話になりました。」
「また、どこかでね。」
誰でもいい─。そう思った瞬間、僕の意識は途切れ、
再び、別の僕になっていた。 ─そういえば、僕って、「しもべ」って読めるんだっけ。
手には浦島太郎が持っていそうなお重箱があったのだが、
以前の僕は、何処でどんな話をされたのかは覚えていない。
覚えている、といえば、思い出せないことがあっても、
今は、何故か悲しくならないってことだけだ。
そのようにしてくれた神さま、ありがとう。
やはり、そう云わなければいけないのだろう。
悲しくないのだから。
悲しくなることや、
楽しい気持ちになること、
それを、これから自分で選んでゆける。
僕はまだ、傷ついてない。
傷がどんなものかも知らない。
まっさらだ。
僕は、許されている。何かを感じる、という事を。
──これは、チャンスなんだ。
<終劇> 予定タイトル「女王蜘蛛の鉄塔」 「地下牢」
さて、ここで地下にあるフロアの案内だ。先ほどの少年が
地下まで行って来たと口にしていたのは、我々が彼の中に
別の記憶を入れていた為だ。
実際にはここには誰も来ていない─。それでも、
どうしてなのかこんな事をいつも思ってしまう人がいる。
それは確かだ─。それはイエスという男が
もう以前のような男では無いのではないか?という不安。
それを補うために幾つもの善人がイエスという男のイメージの
保存の為に引き抜かれているという予感。
だが、あなたの前に現われるイエスが、もし、
あなたの想像を落胆させないならば、やはりこの人が
イエスのようだと思うだろうし、イエスだと思わせるほどの優しい人が
疲れたイエスに成り代わり、イエスは生きている─、と思わせて
くれているのだとしたら、このような話もまた、
あってよかったのではないだろうか。
地下2階にある扉を開けると、そこには何も置かれてない
灰色の独房だけがぼつんと佇んでいる。
そこには髪の長い一人の男がいる。痩せ細っていて身体は天井から落ちてくる雨漏りの水滴を浴びたせいなのか、所々濡れていた。 私は彼こそが7人いるうちで憑依が行なわれずに残された純粋なイエスなのでは無いか、と云う
想いを胸に彼に打診を試みることにしてみた。
「あの、他には誰もいませんけれど、ここで何をされてるんですか?」
目は窪んでいて酷く怯えた顔をしている。
まるで数ヶ月間、誰からも話をされていなかったようだ。
「私は、自分が話したいことを話すことが出来ない罪を持った男だ。
君には関係ない・・。」
─これは、間違いなくイエスの一人だ。
だが、彼のどのような一面を見せている姿なのかは、まだ解らない─。
「もしあなたがイエスなら、ここにいる訳を教えてくれますか?」
「私は自分が権力者になりたいだけなのか、それとも本当に人を助けたかったのか、
それが解らなくなった。だから、この独房に自分の卑しい姿を隠してるんだよ。
とても人前では見せられるものじゃない。」
「そうですか。では、あなたはイエスの中に存在していた
心境のうちの側面ということで宜しいんですか?」
「そうだね。さっきも言ったように私は、
私の中にある醜い気持ちだけを抜き取ってこの牢屋に置いてるんだ。
見せる為に此処に居る訳じゃない。誰にも見せないように過ごしてるよ。
どうせ、口から出てくる言葉は愚痴ばかりさ。会話はしたくないね。」 何を聞いたらいいか解らなかったが、イエスの中に潜む一番、嫌なイエスがこの人なのだとしたら、
もっと何かを聞かなければいけない─。
そう焦ると、何から質問したらいいか頭が混乱するばかりだった。
「あなたの中でもっとも好かれているイエス像は、あなたの中には
居なかったのでしょうか?」
「いや、そういうものはあったよ。あったけれど、
そういうものは、誰でも欲しがるものなんだ。」
「欲しがる?確かに輝いていた頃のあなたであれば、
誰もがあなたのようでありたいと思っていたかもしれませんけれど、
一体、誰に取られたんです?」
「要領を心得ていた者さ。霊の作り方については身を持って教えられたよ。」
「それは誰ですか?」
「ファラオだ。」
「ファラオ?あのツタンカーメンで有名な。」
「そう。あのお面は自分の顔つきを誰も覚えることが
できないように彼自身、画策したものなんだ。」
「どうして生前から顔を覚えられないようにしたんですか?」 「彼が自分の顔を隠すことを思いついたのは生前じゃない。死後だ。
死後の世界から地上の遺族に向けてそうするよう意識を送ったんだ。」
「この死後の世界から?何故です?」
「死んだあとにイシュタルから求婚されて
こちらの云うことを聞いてもらえば天下を取らせると・・」
「入れ知恵された?」
「そうだよ。そして優れた人物を引き抜いたあと、
その霊を盗むことで自分達以外の全ての人間を
奴隷にできる方法を実践したんだ。」
「ファラオとイシュタルが?」
「そう。ファラオは私の顔と霊を盗んだことで
精神を満たし、そのあと、エホバを名乗っている。」
「エホバを?そんなはずはありません。エホバの名前が
登場する旧約聖書はあなたが生まれるより前のものですよ。」
「そうかい?私はそうは思わないよ。
歴史を覚え直すのは同じ成功を目指す者だけで
いいんだからね。エホバを名乗る前にエホバの名を誰かに書かせ、
顔つきが変わってきたところでエホバを宣言すれば済む話だ。」
「すると、あなたは、神は初めから存在しておらず、
ファラオが始めたものだと云いたいんですか?」 最後の何行かをオープンスレの意味不明スレで確認して下さい。
レス番は470です。宜しくお願いします。では。 長文にお付き合い頂きましてありがとうございましたm(_ _)m
スレのテーマを元に戻したいと思います。取り敢えずラヴェルのピアコンを。
Martha Argerich - Ravel Piano Concerto
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