アイツに出会ったのは、親戚の法事の場だった。まぁ、俺とアイツの接点なんてそこ以外に無かったのだが。
 確か俺が生まれる前には死んでいた誰かの十七回忌だとかで、ひたすら詰まらなかったのだけは覚えている。
 クソ暑い中で堅苦しい格好をして訳の分からん経を黙って聞くと言うのは、当時クソガキだった俺には拷問以外の何物でもなかった。で、そこで俺以上にクソガキだったアイツと出会って意気投合し、俺達は俺達なりに法事を面白いイベントにしようと画策した訳だ。
 そこから先は、まあ語るまでも無いだろう。俺達は教育委員会が聞いたら顔面蒼白になるようなことをやらかして、児童相談所が聞いたら憤死するような数の拳骨を貰った。それだけの話だ。
 そういう時期だったのかはたまた『親戚』の範囲がやたらと広いせいか、その頃は毎年のように誰かの法事にぶち当たっており、次の年もその次の年も俺達は出会い、やらかし、そして説教された。今にして思えば、よく親戚連中も俺達を出禁にしなかったもんだ。
 あの頃は法事の意味なんて分からなかったから、毎年の集まりは無理矢理詰まらない行事に出席させられて悪戯して怒られるという、一連のイベントでしかなかったな。
 目の前の黒い礼服の群れを眺めながら、ぼんやりとそんな事を考えた。

 俺の番になったので、焼香台の前に進んで頭を下げる。
 道路に飛び出した子供を庇ったなんて、そんな漫画みたいな出来事があったのだと聞いた。
 そう言えば、何かを思い付いて真っ先に飛び出すのがアイツなら、真っ先にヘマをして大人達に怒られるのもアイツだったか。
 『バカは死ぬまで直らない』と言うのは、意外と真理なのかも知れない。
 慣れてしまった所作で抹香を炭の上にくべ、目を閉じて手を合わせる。
 ふと、何処かのクソガキ共の声が聞こえてくる。

「バカ、さすがにバレるって!」
「だいじょーぶだっつの。上手くやるから、まあ見てろって」