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ワイが文章をちょっと詳しく評価する!【242】

■ このスレッドは過去ログ倉庫に格納されています
0001ぷぅぎゃああああああ ◆Puuoono255oE
垢版 |
2023/06/29(木) 05:06:41.40ID:Zru/oHcV
オリジナルの文章を随時募集中!

点数の意味
10点〜39点 日本語に難がある!
40点〜59点 物語性のある読み物!
60点〜69点 書き慣れた頃に当たる壁!
70点〜79点 小説として読める!
80点〜89点 高い完成度を誇る!
90点〜99点 未知の領域!
満点は創作者が思い描く美しい夢!

評価依頼の文章はスレッドに直接、書き込んでもよい!
抜粋の文章は単体で意味のわかるものが望ましい!
長い文章の場合は読み易さの観点から三レスを上限とする(例外あり)!
それ以上の長文は別サイトのURLで受け付けている!

ここまでの最高得点79点!(`・ω・´)

前スレ
ワイが文章をちょっと詳しく評価する!【241】
https://mao.5ch.net/test/read.cgi/mitemite/1684632447/
0461創る名無しに見る名無し
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2023/08/03(木) 20:36:45.83ID:LM7poTKC
>>460
第六十二回、で途切れてますが、第六十二回ワイスレ杯参加作品です。すみません
0462ぷぅぎゃああああああ ◆Puuoono255oE
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2023/08/03(木) 20:42:42.11ID:yU6UOtx3
第六十二回ワイスレ杯参加作品

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只今、二十作品!(`・ω・´)
0463『第六十二回ワイスレ杯参加作品』
垢版 |
2023/08/03(木) 21:40:46.41ID:nD/VRnws
「みなさんこんにちは、またお会いしましたね。今日も私ことボブと一緒に素敵な海の絵を描いていきましょう。ですがその前に、」
 「ボブの絵画教室」の再放送が始まってすぐ、2インチブラシでキャンバスを叩き割ると、次元の穴から赤いマスクとタイツの男を引っ張り出した。
「ヘイ! ちょっと待ちなっての! なんで俺ちゃんをゲストに招いた?」
 問いかけに対し、ボブは親しげに「やぁデッドプール」と笑いかけ、「今回は「出会い」がお題なんだ」と言った。
「実は前回のお題の時に無理やり僕が登場したら感想欄に「ボブの口調を真似ていてわかる者には楽しめる!」って言って頂けたからね。けど「もう少しオリジナリティを出しても良かったように思う!」とも言われたから」
 「なるほど、前回の484か。あれで味を占めたわけか」デッドプールことデップーは納得すると、一つの疑問を浮かべる。
「ならこれを読んでいる読者へ俺ちゃんことデッドプールの紹介はしなくていいのか? なんならアンタも95年に死んでるから知らない人は知らないぞ?」
 問いかけにボブは気さくに笑うと、「繰り返すけど、前回のお題でも僕は出たからね」と話した。デップーは頷き、「懐かしいな」と物思いにふける。
「確かに登場は無理やりだった。だが今回のお題でも「知ってる人は知ってる」とかでいいのか? 上位入賞しないぞ?」
「君は仮にもハリウッドスターだろう? それにどこまで踏み込んだら二次創作とオリジナルの境界線を越えてしまうかっていう、物書きなら誰でも感じた事のある疑問に答えたくてね」
 なるほど、自己紹介に関しては何も言い返せない。しかしR15指定映画の興行収入の歴史を塗り替えたデップーは「疑問に答える役は全任せかよ」と突っ込みを入れた。
「まぁいいや。このままお題に沿ってゲストとして出てやるが、やりたいことがある。もちろん「ボブの絵画教室」の内容に沿ってな」
「というと?」
 ボブは首を傾げると、デップーは「何年か前」と前置きをした。
「まだアベンジャーズが現役の時に俺ちゃん主演の二作目が公開されたわけだが、あの時のディザーPVで「ボブの絵画教室」をパクったらウケたんだ。今度は本人にやってほしい」
 うん? とボブは首を傾げた。
「たしかその作品はいい感じにシリーズとしてエンディングを迎えたはずだけど? まさか三作目を作るのかい?」
「ビンゴだブラウンパンサー。マーベルが最近ライバル会社のDCに追い抜かれ気味だからか、引くほど売れた俺ちゃんと死んだはずのウルヴァリンを引っ張り出して三作目を作ってる」
 公開日が一年以上延期になったけど。デップーは視聴者に聞こえない声で呟いた。
「そういう事で、今回はお題に沿って「デッドプールと出会ったボブの絵画教室」で三作目の絵を描いてほしい」
 んー、とスマホを取り出したボブは「脚本家がストライキを起こしてるけど?」と言ったが、マイクをオフにされた。
「マイクが入ってないから言わせてもらうが、それは五月の記事だ! もう三か月前の話だろ! それに脚本なら完成してる……はずだ」
「確かに、そういう見方をする意見もあるね。コラ画像かもしれないけど、ウルヴァリンと君が一緒に映ってる画像もある」
 最近は誰もが新情報をコラ画像だと騒いで飽き飽きだ。デップーはボヤクと、「それで、三作目の絵を描いてくれないか?」と頼み込む。
「マイクオフの内に言っておくが、俺ちゃんを演じる役者もウルヴァリンの役者も結構な歳なんだ。DCが若い役者を起用して絶好調な今、シケたオッサン二人じゃ最新CGをいくら使っても追い抜けない」
 君はマスクをつけてるけどね。ボブはマイクをオンにしながら言うと、「さて放送事故もありましたが、今日は急遽ゲストを招いて「デッドプール3」の絵を描いていこうと思います」と、スタッフの運んできたキャンバスに2インチブラシを走らせようとして、
「……そういえば、まだ何のPVも上がっていなくて具体的にどんな姿の君たちがどんな世界でコラボするのか知らないんだ」
 それは問題だ。二人は黙考すると、スマホを取り出す。時代遅れな掲示板をスライドしてお題を確認すると頷き合った。
「「出会いをテーマにした作品」「その出会いによって何かが始まる」「相応しい舞台を用意する」この三つは僕らの茶番で達成したね」
「つまり残るは「小説の冒頭のフック、またはツカミ」を達成できているかどうかなわけだが、これは簡単だな」
 せーの、と声を合わせた二人は口にする。
「「デッドプール3! 2024年公開予定!」」
 小説じゃないって突っ込みはナシだぜ。それだけ言うと、デップーは次元の穴へ帰っていった。
0464ぷぅぎゃああああああ ◆Puuoono255oE
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2023/08/03(木) 23:15:24.83ID:yU6UOtx3
第六十二回ワイスレ杯参加作品

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只今、二十一作品!(`・ω・´)
0466創る名無しに見る名無し
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2023/08/04(金) 03:45:16.03ID:qcN/BsKk
アリエールw
0470第六十二回ワイスレ杯参加作品
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2023/08/04(金) 10:58:15.22ID:BQnWiStF
 うちの近所には野良猫が多い。あっちもこっちも多頭飼育崩壊をやらかして、窓から猫が溢れている。今日も玄関をでると、野良猫の群が通るのを待ってから、歩道を渡る。右よし、左よし。左右を確認したら右手を上げて安全に歩く。白黒白黒ふみ歩く。上げた右手には塀から飛び降りた猫が留まって、にゃあと鳴く。空は青く抜けていて、とても良い日だ。どこにでもある日常をあたしは享受する。

 今日は動物園の日だから悠々と向かう。

 ライオンを観にいこう。虎を観にいこう。ピューマをサーバルをユキヒョウを観にいこう。檻に腕を入れるのは怒られるからもうやらない。あたしがキャーキャー騒いでいると園長さんが近づいてきた。

「嬢ちゃん、また来たのかい」

 園長さんは優しくて、他の飼育員さんたちが怯えても、恐れず話し掛けてきてくれる。尾まで含めると2メートル近くあるユキヒョウに跨って、あたしを高みから見下ろしている。これが今のあたしと園長さんの心の距離でもあった。

「この動物園もネコ科ばかり集めたのは良いが、これだけ頻繁に訪れるのは嬢ちゃんくらいのもんだ。野良猫が多いからね。わざわざ動物園まで猫を観に来ないんだよね」

 園長さんはため息をついた。大丈夫だよガンガン通うから心配しないで! あたしは園長さんを元気づける。園長さんは少し黙ったあと、静かにユキヒョウから降りてきた。心の距離が近づいてきた。

「この動物園を始めるときにね。猫神さまからとあるスイッチを貰ったんだ」

 そういうと園長さんはポケットからスイッチを取り出した。

「このスイッチを押すと増えすぎた野良猫を園に吸収できる。ただし、その時に園にいた動物たちは野生に帰る。これを押せば野良猫はいなくなり、ネコが珍しくなるってことだ。つまり園のお客さんが増えるかもしれない」

 園長さんの手元には片手に収まる、早押しクイズの赤いボタンみたいなものがある。
 これが猫神さまからの贈り物。ボタンは肉球の形をしていた。

「この動物園も赤字続きでね。閉めるかどうかを考える時期には来ている。ボクは迷っているんだ。嬢ちゃんはどう思う?」

 あたしはスイッチを押した。園長さんは口を半開きにしてあたしを見た。園長さんの手の上にあるスイッチは前触れもなく押されて凹んでいる。あたしは笑顔で言い放った。

「押してみたらツルツルだと思った」

 園長さんが凄い顔でこっちを見ていたけれど、急速に世界の音が遠くなっていく。本当に世界が塗り替わるのかもしれない。もしくは熱中症か何かかもしれない。あたしは意識が途絶える前に何歩か進むと、両腕をあげてユキヒョウの背に倒れ込んだ。

 ・

 目を開けるとお布団にいた。ここはあたしの部屋だ。え、夢? カレンダーを見る。今日は動物園の日だ。ベッドから降りると顔洗って、歯を磨いて、ご飯を食べて、また歯を磨く。朝のルーチンを色々こなして、玄関から飛び出した。

 マヌルネコの群が通り過ぎるのを待ってから、歩道を渡る。キョロキョロ見渡すと、近所の家の窓から出ようとしたクロヒョウが上半身だけ外にだして、お腹がつっかかったのかそのままブラブラ脱力していた。苦しくはなさそうだ。さらに見上げると屋根の上から見下ろしてくるジャガーと目があう。鋭い眼光がカッコイイ。日常ってこうだっけ? あたしは動物園へ向う。暫く歩くと、ハーレムを築いているライオンの群がコンビニから出てきたので、わあ、と言った。

 動物園には人が沢山いた。みんな猫まみれになっている。園外とは違い、ここは小型の猫が沢山いる。動物園だから当然だ。あれ、夢の中だと、そうでもなかったかも? 夢だからね、しかたないね。あたしが頭と両肩に猫を乗せて歩いていると、向こうから園長さんが歩いてきた。今日も頭の上に猫5段重ねだ。この人はいつも猫の乗物になっている。

「嬢ちゃんか、いえーい!」
「いえーい!」
 
 ハイタッチを交わす。
 あたしはこの園長さんと仲が良い。まるでなにかの秘密を共有しているかのような仲の良さだ。
 動物園は連日大賑わいであたしも嬉しい。園長さんも嬉しい。お客さんたちも嬉しそうだ。
 どこにでもある日常をあたしは今日も、笑顔で享受する。
0472ぷぅぎゃああああああ ◆Puuoono255oE
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2023/08/04(金) 11:36:18.68ID:+cKRMn12
第六十二回ワイスレ杯参加作品

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只今、二十二作品!(`・ω・´)
0473創る名無しに見る名無し
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2023/08/04(金) 11:45:23.61ID:Y5QmxPYV
文章云々はともかく、”嬢ちゃん”と呼ばれるあたしが
何歳くらいなのかは書いてほしいな
さらにいえば、その”嬢ちゃん”に対し園長が
「赤字続きでね。閉めるかどうかを考える時期には来ている。ボクは迷っているんだ。嬢ちゃんはどう思う?」
なんて訊くだろうか?と思いつつ
0475第六十二回ワイスレ杯参加作品
垢版 |
2023/08/04(金) 15:15:14.83ID:CKOXKcB7
 深夜1時45分。ビルの監視カメラのモニターを屋外喫煙所に切り替える。街灯に照らされて、ある女がいた。黒のコートは暗闇に溶け、白い顔と紙タバコが浮いているように見える。不思議な雰囲気を纏った女で、妙に気になった。

 一本、二本、三本。ただひたすら煙を吸っている。
 時計は進み、2時ちょうどを指した。女の姿はもうない。

「ちょっと見回りに行ってくるよ」
 同僚に声を掛け、管理室を出る。リノリウムの床には俺の足音だけが響いた。
 ビルの合間からのぞく空には月が見えない。外は随分と冷え込んでいて、薄着で出てきたことを後悔した。
 喫煙所に着くと、灰皿の上にタバコの箱が置かれてあった。監視カメラで見ていたから分かる。あの女のものだ。箱を手に取って開けると、ライターとタバコが入っている。

 勿体ない。あの女はもう、タバコを止めるつもりなのか?

 一本取り出し、咥える。火をつけ、何年振りかに煙を吸い込むと、メンソールの香りが鼻を抜けていった。燻らせながらライターを見ると、「Bar六花」とプリントされていた。あの女が働いているのだろうか?
 口寂しくなりタバコをもう一本取り出すと、くるりと小さな紙が巻かれてあった。

 後ろめたくもあったが、興味が勝る。これもビル管理人の仕事の一部。無理矢理自分に言い聞かせて、紙を開いた。

『助けて』
 さて。参った。こんなことがあるものか。一度瞼を閉じる。

『助けて』
 書かれていた文字は変わらない。悪戯だろうか? 本当に危ない状況にあるなら、こんな手の込んだことをせずに警察へ行く筈だ。

『助けて』
 勝手に女の声で再生された。もしかすると、警察には頼れない事情があるのかもしれない。後ろ暗い過去なんて、ありふれたものだ。
 俺は急いで管理室に戻り、わざとらしく体調不良を訴えて早退した。同僚の気の毒そうな顔に心の中で謝罪しながら。
#
 スマホ片手に5、6分歩いただろうか。幾つも連なる看板の中に「Bar六花」を見つけた。平日ということもあり、人通りはほとんどない。
 嫌な音を立てて軋むエレベーターに乗り、「6」のボタンを押す。鼓動が大きくなり始めた。この先で、何か事件が起きている可能性がある。手のひらに汗が浮かんでくるのを感じた。
 ふぅ。と息を吐きエレベーターを降りると、すぐ目の前にドアがある。今更帰りたくなるが、『助けて』の言葉が俺の背中を押した。

「いらっしゃい」
 監視カメラ越しに見ていた女が一人、微笑みながら俺を迎えた。店内に客はいない。取り急ぎ、危険はなさそうだ。

「何を飲みます?」「山崎をロックで」

 女はロックグラスの中でクルクルと氷を回した後、丁寧にウィスキーを注いだ。チェイサーと一緒に差し出される。

「お煙草は吸われますか?」「あぁ」

 銀色の灰皿が、コトリと音を立ててカウンターに現れた。ロックグラスに口を付けてから、女が置いていったタバコを出す。女はピタリと動きを止めた。

「今日はお客さんが全然来なくて。売上を"助けて"くれてありがとう」
 一気に力が抜けた。

「はぁ。一杯食わされたってことか。俺、仕事を早退してきたんだぜ?」
 まぁ! と女は笑い、俺にタバコを勧めた。

「やめておくよ。今度はどんな紙が出てくるか分かったもんじゃない」「そんな怖がらなくていいのに」
 女はほっそりとした指でタバコを挟み、笑みを浮かべながら火を付けた。

 結局俺は閉店までいて、それなりの金を落とした。雑居ビルから出ると、外は酷く寒い。吐く息が白くなる。

「雪?」
 頬に冷たいものを感じて見上げると、初雪だ。「六花」から出て、雪に迎えられるとは。何から何まで女の手のひらで転がされていたような気分になる。

「面白い女だ」
 まさか五十歳を超えて、一人の女のことで頭の中がいっぱいになるとは……。

 俺が「Bar六花」の常連になったのは、言うまでない。
0476ぷぅぎゃああああああ ◆Puuoono255oE
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2023/08/04(金) 15:53:48.49ID:+cKRMn12
第六十二回ワイスレ杯参加作品

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只今、二十三作品!(`・ω・´)
0478創る名無しに見る名無し
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2023/08/04(金) 19:56:28.08ID:Y5QmxPYV
この時期に、六花で「初雪だ」
今書いたものじゃなく、書き溜めておいたものだろうと思ったのは、言うまでもない
0479創る名無しに見る名無し
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2023/08/04(金) 19:57:51.10ID:y2WuF8O9
いっちょ噛みおじさん乙
0481第六十二回ワイスレ杯参加作品
垢版 |
2023/08/04(金) 20:59:28.62ID:JoSotMKJ
「いや、これ絶対何かあったよね!?」

鬱蒼と茂る森の深く、人骨散らばる魔獣の巣。その中央で、私は思わず叫ぶ。今日、私はこの身を魔獣に捧げる、はずだった。

話は単純で、村の近くに数年前から知性ある魔獣が住み着いた。魔獣は村ごと滅ぼされたくなくば年に1度若い乙女を差し出せ、と一方的な条件を突きつけてきた。
辺境の小さな村では他の対応策もなく、村長は自ら娘を初代生贄として差し出すことで他の村人を納得させたらしい。そして今年は私が選ばれた、それだけの話だ。
死ぬのは怖いが、私に拒否権はない。断っても強制的に贄にされるだけだ。残される両親の事を考えると、自ら身を差し出したほうが幾らかマシな気がした。

問題は、案内人の男が度を越した怖がりだった事だ。自分が喰われる訳でもないだろうに枯れ木の影や飛び立つ小鳥に怯え、挙げ句道半ばで

「あ、後は道なりに行けば半日もせずにたどり着くよ!じゃあな!!」

と、先に帰ってしまったのだ。しかし困った、私は極度の”方向音痴”だったのだ。植物の知識や獣避けは身につけていたのがせめてもの救いか。
そうして自分を励ましつつ男と別れてから実に3日が経ち、ようやく目当ての魔物の巣を見つけた瞬間私は思わず歓声を上げた。歴代の贄でも、死に場所への到着でここまで喜べた娘は私くらいのものだろう。

が、恐る恐る近づいてみれば、巣は空っぽであった。
普通ならばここで逃げ出すという選択が浮かぶかもしれない。しかし私は魔物に喰われるために4日森の中を彷徨い、ようやく辿り着いたのだ。そこらの生贄とは覚悟が違う。
というかもう歩き疲れて足の感覚が無いしさっさと食べて楽にしてほしい。

そうして巣の中央に座り込んで一昼夜、魔物は帰ってこず、現在に至る。

不思議なもので、帰りは1日迷った程度(行きの3分の1!)で村への看板を見つけることができた。あと数時間もあれば村にたどり着ける。
こんな時に限って、と複雑な気分になりながら村へ向かおうとしたところで、向こうから見慣れない冒険者風の男が歩いてくるのが目に入った。
男もこちらに気がついたのか声を掛けてくる。

「む!すまないそこ行くお嬢さん。訪ねたいことがあるのだがよろしいか?実はこの近くの村から依頼されてな、とある女性を探しに行くところなのだが」

そう言って男性が告げたのは、私の名前だった。事情を聞くと、これがまたなんとも巫山戯た話。全て、私が迷っている内に終わっていた。

約束の期日から数日、いつまで経っても娘も来なければ村からの釈明もなく空腹の魔物は苛ついていた。
場合によっては村人全て食い殺してやろうか、と勇んで村へ飛び立ったものの、村に事情を知らない腕の立つ冒険者がたまたま村に来ていたのが運の尽き。
田舎ででかい顔をしていた魔物はあっさり討伐された、というのが2日前の話。私は丸1日、もう死んでいる魔物に食べられるために待ちぼうけをくわされていたことになる。

「それで、何故私を?逃げ出した制裁、でしょうか」
「いや、村側も何が起こったか分かっていないようだったぞ。私も魔物を倒したというのに妙な反応をすると思っていたが、まさか生贄とはな……」

事情を知らない冒険者の男性に私の方から生贄について説明すると、初めは驚いていたが思う所があったのか納得してくれた。後ろ暗い事情だし村側が隠すのも仕方のないことだろう。

「それで、どうする?君が望むなら、村に連れて帰るが」
「……いえ、出来ればそれは」

帰りたい気持ちがない訳では無い。しかし追い出されこそすまいが、私は針のむしろの中で暮らすことになるだろう。
両親のことは心配だが、贄を出した以上酷い扱いはされないはず、と信じたい。帰らない方が私に取っても村に取っても平和だろう。

「であろうな。村長も見つからないかもしれないが、という頼み方であった。私の方から上手く言っておく」

胸中を察してくれたのか、男性は頷く。話の分かる御仁でほっとする。

「ならば、どうする?私と一緒に来るか?大きい街まで行けば仕事もあるだろうし、そこまで送る分には構わんよ」
「本当ですか、ぜひ!戦いは出来ませんが植物の知識とか簡単な料理くらいならお役に立てます!」

願ってもない話に私は飛びつく。森を抜けるだけならばなんとかなるだろうが、そこから先はノープランだった。

「ふむ、それはありがたいが私も一人旅は長くてな。その辺りは心配しなくて良い、できれば他に頼みたいことがある」
「と、言いますと?」

男性はややきまり悪そうに告げる。

「……恥ずかしながら、実は私は酷い方向音痴でな」
0482ぷぅぎゃああああああ ◆Puuoono255oE
垢版 |
2023/08/04(金) 21:04:12.38ID:+cKRMn12
第六十二回ワイスレ杯参加作品

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只今、二十四作品!(`・ω・´)
0483第六十二回ワイスレ杯参加作品
垢版 |
2023/08/04(金) 21:36:12.03ID:7IvXlDia
『俺の童貞売ります』
 渋谷のスクランブル交差点に、そんな立て看板があった。黒服に囲まれて椅子に腰かけているのは、超人気俳優にして資産家でもある常坂健吾だった。
 私は看板に書かれた売り文句にとある使命感をおぼえ、常坂健吾へ向かっていく。しかし、あっという間に女性ファンたちが壁となってしまう。そんな彼女たちを、常坂健吾はハエでもはらうように手でシッシとやる。
「俺の童貞は軽い女に売ってやるほど安くない」
 追い払え。黒服に命じると、あっという間に皆逃げていった。
 そこに私が一人残る。黒服は迫ってくるけど、恐怖は微塵もなかった。私には成すべきことがある。そう覚悟していると、私を目にした常坂健吾は「待て」と言った。
「おい女、やけにいい顔をしているじゃないか。この俺の童貞を買いたいのか?」
「……その質問に答える前に、あなたがどんなに凄い人でも、私は私の生き方に恥ない行いをするためここにいると言わせていただきます」
 ふむ。常坂健吾は私を見据えて名を問いかける。胸に手を当て、「小鳥遊桜花」を名乗った。
「この俺を前にして一歩も引かない度胸――面白い。どうだ小鳥遊とやら、俺の童貞を買わないか」
「断ります」
「なに? 金がないからか?」
「銀行員として相応のお給料はもらっています。ですがそれでもお断りさせていただきます」
「この俺の童貞だぞ? どれだけの価値があると思っている。今なら安くしておくぞ」
「あなたがテレビで物の価値について深く言及しているのは何度も拝見しています。ですから、あなたが自らの貞操にさえ価値を見出しているのも知っています。あなたが貞操をささげる場合は「自分の持つ物を全てくれてやる」と発言していることも知っています」
「だったらなぜ買おうとしない? 童貞を買ったら、俺の数千億の資産すら手に入るのだぞ?」
 偉そうな言い方だとか、そんなことはどうでもいい。私はこの看板を指さして言い放つ。
「固くお断りします。あなたは貞操の価値を知らない人ですから、私はそれを教えに来たのです」
「まさか小鳥遊、お前は……」
「ええ、処女です。今年で二十三歳になりますが、彼氏もいたことはありません」
「馬鹿なっ! 自分の価値を見誤っているぞ!」
 常坂健吾はガタっと音を立てて椅子から立ち上がると、私の外見を一つ一つ指摘していった。平均以上に整った顔つき、誰もが羨むスラッと伸びた背丈、流行に気を使った衣服。どれをとっても「価値がありすぎる」と。更に、
「なにより、その言葉から感じ取れる強く気高い意思だ! 二十三歳で銀行員というのなら、相応の大学を出たのだろう!? なぜその四年間で相応しい価値を持つ相手を選ばなかった!」
「私は元から欲していないのです。なにせ私はクリスチャンですから。神の教えの下に貞操を守ると誓った身です。そして神の教えを一人でも多くの人に伝え、心の平穏を与えていきたいと願っているのです」
「だから自らの価値を捨てるような事をするのか!?」
「はい、そしてあなたが「童貞を売る」などと往来の真ん中で看板を立てているので、間違った思想を正しに来ました」
 なんて女だ。常坂健吾はそう呟いて椅子に深く座り込んでしまった。
「誰もが羨むこの俺に、意見するだと……? まして、思想を正すなどと――面白い」
 動揺していた姿から一変、常坂健吾は座り直して足を組むと、「気に入った」などと言い出した。
「戯れのつもりで俺の時間という価値を売ってまでこんなことをしてみたが、まさかお前のような女と出会えるとはな。気に入ったぞ小鳥遊桜花。この俺がお前を買ってやる」
「なんですって?」
「お前には買うに値する価値がある! 俺と共に来る価値もある! 俺が真に童貞を売ってやってもいいのは、お前のような気高く美しい女だ」
「……人が人を買うなどと、おこがましいは思わないのですか。少なくとも私の考えでは、」
 少し待て小鳥遊桜花。常坂健吾は言葉を遮り、諭すような口調で「言葉の一側面だけで考えを口にするのはよすんだ」と続けた。
「この俺に買われたら、お前は思想を変えるチャンスを得るということなのだぞ? もっと言うなら神の教えとやらを、この俺の発信力で広げることができるのだぞ?」
 魅力的な価値があるだろう? 口角を上げて笑いかける常坂健吾を前に、私は人間の醜い欲望を見た気がした。であるなら、神の名のもとに正すべきだ。
「いいでしょう、私を買ってください。ですが、決して童貞は買いません」
「面白い。ならばこの俺は必ず自らの価値観を貫き、俺の童貞を買わせてやる」
 処女と童貞、その似たようで全く異なる思想がぶつかり合う日々の始まりであった。
0484ぷぅぎゃああああああ ◆Puuoono255oE
垢版 |
2023/08/04(金) 21:40:06.49ID:+cKRMn12
第六十二回ワイスレ杯参加作品

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>483

只今、二十五作品!(`・ω・´)
0485第六十二回ワイスレ杯参加作品
垢版 |
2023/08/04(金) 22:21:03.27ID:z1btgYeU
 複製素体アルファ。それが、被験体としての私の名だ。
 記憶も朧げな幼少期に家族と引き離された私は、採取された私の細胞から造られる複製体、私と同じ記憶と人格を宿したわたしたちが促成栽培の様に育てられ、出荷されていくのをただ眺めていた。
 研究所では様々な物が与えられた。おもちゃやぬいぐるみ、甘いお菓子にお姫様の様な衣装でさえも。十年以上も部屋に閉じ込められてはいるけれど、それでも私は飢餓に苦しむ事も、戦火に怯える事も無い。人類全体からみれば私は確かに、不幸では無かったのだろう。

 けれど聞こえるのだ。わたしたちの怨嗟と断末魔が。たしかに感じるのだ。わたしたちの苦しみと痛みが。そして見えるのだ。最後に瞳に焼き付けられた、男たちの狂気と欲望を孕んだ表情が。
 これは複製たちの記憶。死したのち、オリジナルである私の許に還ってくるわたしたちの苦痛に満ちた生と死の記憶なのだ。 

 富める者達のけして表には出せぬ欲望を発散する為に、人間を標的にした狩りの対象となったわたし。
 暴徒と化して脱走する事の無い様に、凶悪犯を収監する刑務所で性欲の捌け口として使われるわたし。
 戦争で狂った兵士たちが民間人に狂気を向けぬ為に、防波堤として送られ消耗されていくわたしたち。

 私はただ一人、この部屋から出る事無く。ありとあらゆる人間の悪意に、憎悪に、狂気に、壊され続けていた。
 私は不幸では無いのかもしれない。でもわたしたちは? 存在しない者と定義され、ただ人類の負の側面を受け止めて殺され続けるわたしたちはどうなのだ? 不幸の極致に在り続けるわたしたちの為に、私ができる事は無いのか?
 起伏の無い平穏と、私だけが感じる業苦の狭間の日々の中で、私は考え続けた。そしてある時ふと、思い至ったのだ。
 私は誰よりも幸せにならなければならない。統合されたわたしたちが私の中で安らげる様に、バランスを取らなければならない。私は人類の中で最も、幸せになる必要があるのだ。

 私は、この飾り立てられた空虚な部屋から逃げ出した。
 最高の幸せがなんなのかはわからない。そうなる為の道筋も理論も、この部屋と絶望の中で死した記憶しか持たない私には知る由もなかった。だから逃げ出した。
 幸運な事に脱出は成功した。監視カメラの死角をつき、少しでも生き永らえる方法。何も知らぬ男を騙し、利用する方法。狭い箱に閉じ込められた状態で、酸素を無駄に消費しない呼吸方法。膨大なわたしたちの生と死の記憶が、私を助けてくれたのだ。

 そうして船のコンテナに紛れ込み、辿り着いた異国の地で私は、彼に出会ったのだ。

 ※

 あの人の第一印象は正直な所、良い物では無かった。私はわたしたちの記憶によって、男という生き物が大嫌いだったから。
 公園のベンチに座り、初めて見る雨という物を呆けた様に見上げて打たれていた私。今思うと物凄く不審よね。そんな私に開いた傘を差しだして、彼はこう言ったの。
「風邪をひく。行く宛が無いのならば、俺が宛になろう」
 ふふっ。どう考えても彼も不審者よね。三流のナンパ師でも口にしない様な気障ったらしい台詞を、ニコリともしない無愛想な表情で言うんだもの。私はこの国に来た時の様に利用するつもりでついていったわ。だって彼、無表情なのに体を震わせて緊張してて、物凄くお人よしなのが透けて見えたからね。

 けれど私は、次第に彼に惹かれていった。
 わたしたちの記憶にある男たちとは全然違う。とても冷たく見えるのに本当は優しくて、ぶっきらぼうなのに心は臆病で、私をとても大切にしてくれる男の人。

 彼に初めて抱かれた夜に思ったの。ああ、幸せってきっとこういう事なんだわ。ってね。
 でもある日、いつもの様に魂を引き裂く様な激痛に襲われた私は、わたしの記憶によって私が捜索されている事を知った。当然よね。記憶と人格を完全に保持した複製体を造り出せる因子を持った唯一の存在。そんなモノを逃がしたままにするほど、甘い組織ではなかったもの。

 私は誰よりも幸せになりたかった。わたしたちの為に、ならなければいけなかった。けれど今は違う。私は私よりも、私を愛してくれたあの人に、幸せになってほしかった。だからまた、逃げ出したの。

 さようなら。愛した人。
 このままでは貴方も必ず不幸になる。だから私は、自分の幸せを捨てて彼の許を去った――筈だった。
「なんで……来てしまったの?」
「言っただろう。俺が宛になると」
 もう後戻りはできない。でも、今だけはどうでもいい。だってきっとこの瞬間、私は世界の誰よりも幸せだったから。
0486創る名無しに見る名無し
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2023/08/04(金) 22:30:36.17ID:CyGnPvew
『振られた私に神様が降りてきた』

大学の同級生に告白して振られた挙句、大嫌いな女と付き合ってた事が判明し、泣きながら帰る私に神様が舞い降りてきて、こう言った。

「わたしは神様です。貴女に伝える事があって、やって来ました」

そりゃ、そうでしょうね。空から舞い降りてきた上にギリシャ神話風のヒラヒラとしたワンピース。
しかもキンキラキンの後光を背負った金髪碧眼の超美人さんがタダの人ってーのは流石に無理がある。
まあ、人外の可能性はあるかもしれないけど。伝える事があると神様は言うが、残念ながら今の私にそんな御大層な話を聴くエネルギーはない。

「すいません。そんな気分じゃないのでまた後にして貰えますか。」
と言って俯くと、素早く道を右に曲がって神様を華麗にスルーした。

早く帰って思い切り泣きたいけど、走る気力すら無い。人目が無いことを幸いにぐすぐすと涙を流しながら早足で歩いていると、なんと神様も急ぎ足でついて来た。

「ちょっと!!貴女!ここはひれ伏して話を聞くシーンですよ!!何無視してるのよ!」

しかもめっちゃ指さして私を叱ってくる。 出会ったばかりなのに指さしてくるとか、マジでムカつくんですけど。

神様はどうしてこんなに傲慢なんだろう。人間の行いは全てお見通しだとか言う癖に、私の精神的事情などお構い無しに突っかかってくる。ほっといてよ。
「すいません、私無神教なんで巻き込まないでください」
私は更に歩くスピードを上げる。神様から逃げられる訳が無いのは分かっているけど素直に聴くのは癪に障る。

「お待ちなさい!人の子、よっ……きゃあ!!」

神様が私を止めようとしてダッシュして前に出た瞬間だ。神様は小さな悲鳴を上げてが私の視界から消えた。

「はあ?……う、うそ!!か、神様?」

私は思わず声を上げる。
神様は消えたのでは無かった。捨ててあったバナナの皮を踏んですっ転んだのだ。
0487創る名無しに見る名無し
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2023/08/04(金) 22:30:56.33ID:CyGnPvew
この状況に私は驚いた。しかし頭の中は。

──滑り止めが有って無いようなサンダル履いてるからこうなるんだよ。ってか宙に浮いて移動しないんかーい。
というツッコミでいっぱいだ。
でも、さすがに可哀想になってそのツッコミは入れなかったけど。

「大丈夫ですか、立てます……よね? 」

とりあえず声をかけてみたが、神様は地面に突っ伏したままだ。顔は分からないけど身体が小刻みに震え、長い金髪の隙間から見える耳が赤く染ってるのが見えた。思いもよらぬアクシデントに見舞われたせいだろう。まあ弘法大師も筆を誤ったんだし。神様もバナナの皮で転んでも仕方ないか。

何度も声をかけたけど神様はおきあがろうとしない。どうしよう……ここは助けるべきなのか? でも転んだ事が恥ずかしくて動かないのなら、話しかけない方が無難なような気がする。私に『伝えること』があって舞い降りたのだから、少し時間が経てば何事も無かったかのように立ち上がり、神々しいお姿で伝えてくれるだろう……多分。だからちょっと突き放し気味な事を言ってしまった。

「あのー何も無いなら、私……先に家帰っても良いですか」

言ったそばから、神様はがばりと顔上げて叫んだ。

「なんで帰るのよ!空気読んでよ!私は神様なのよ!手を差し伸べなさいよ!それに擦りむいちゃったんだから!優しくしてよ!!」

しかも神様は子供のように足をばたつかせ「せっかく綺麗に舞い降りれたのにぃ!!転ぶとか最悪だぁ!!バカバカばかぁ」と叫んでわんわん泣き出した。

あぁどうしよう。こんな大声で泣かれたら、いくら、神様とは言え放置できない。ええぃ、仕方ない。
私は神様の手をとって起き上がらせる下宿先のアパートへ連れていき、擦りむいたところにマキロン塗って絆創膏貼ってあげた。
「すごい染みる。もっと……優しく塗って」と神様がしゃくりあげながら言ったので。
「神様、あなたは幼稚園児ですか?このくらいの痛みで情けない」と叱りたくなったが、殊勝な態度が愛らしかったので見なかったことにした。
くそう、これだから美人は嫌いなんだ。

結局、私は振られたことの悲しみに浸ることなく、その日を終えた。
そして神様は何故か、私の作ったご飯を食べ、私より先にシャワーを浴び私のパジャマを来てベッドを占拠していた。

「貴女、明日も大学で一限から授業があるのでしょう。早く寝なさい」と美しい微笑みを浮かべ私の為に半分スペースを開けてくれた。
──さすが神様!!私の事を思っておられるのですね! 優しい!!
と、一瞬感動したけど、そこは私のベッドなんだよなぁと呆れたが……まあいいかとスルーする事にした。

私は神様に言われるままベッドに入る。
ベッドは神様の体温で良い感じに温まってていて、潜った途端に睡魔がすぐにやってきた。

「ねぇ、神様。私に何か伝えたい事あったんでしょう」

私は寝てしまう前に神様へ尋ねてみた。
大切な事のような気がしたからだ。

「人の子よ。遅いから、また明日にしましょう」
と神々しいお言葉とともに恭しく頭を撫でられてだけで教えてくれなかった。

転んだだけで泣いてしまう神様から子供扱いされるのはなんだかなあと思った、怒る気はまったく起きなかった。

「それでは寝ますよ。おやすみなさい」と神様が言ったら、何故か部屋の明かりが消えたしまった。でも眠かったから気にせず私も「おやすみなさい」と言って目をつむる。

明日には聞けるといいなぁ。
0488ぷぅぎゃああああああ ◆Puuoono255oE
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2023/08/04(金) 22:33:07.59ID:+cKRMn12
第六十二回ワイスレ杯参加作品

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只今、二十八作品!(`・ω・´)
0489創る名無しに見る名無し
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2023/08/04(金) 22:36:34.36ID:CyGnPvew
>>485>>486は第六十二回ワイスレ参加作品のつもりで書いていたのですが、ルールを読むのを忘れて、『出会い』というテーマだけで好きな様に書いてしまいました。

これは普通の評価でお願いします。
0491ぷぅぎゃああああああ ◆Puuoono255oE
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2023/08/04(金) 22:52:14.44ID:+cKRMn12
>>489
出会いがあれば成立する!
先の展開でわくわくする要素が薄ければ、
設定による加点は少ない!

評価は日曜日にわかる!
楽しみに待つがよい!(`・ω・´)
0493第六十二回ワイスレ杯参加作品
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2023/08/04(金) 23:38:56.87ID:o3VdLLLr
まぼろしのヒロイン

 これは作者が公立図書館で講談社BOXの単行本を読んでいた時の話である。BOX-Air新人賞の作品だ。
 たかが、数年前のできごとだが読んだタイトルはものの見事に忘れている。
 その時に彼女に出会った。不思議な彼女だった。ティーン向けラノベから出て来たような少女だった。
 ちなみに作者はBOX-Airの新人賞に参加したことがある。年齢は察してくれ。
 まだ、Amazon kindleが日本に上陸する前の時代。リーマンショック、東日本大震災があった時代。
 その頃もいまも僕は無職だった。
 話を図書館に戻そう。
 横浜のダイヤモンド・プリンセスの事件が起きた頃だ。東京ではまだ市中では感染者がいなかった。
 作者はその日暮らしのプログラマーだが、入る予定のプロジェクトでコロナ感染者が出て、話が流れてしまった。
 悲しかったよりもはじめてのできごとでなにが起こっているかがわからなかった。
 とりあえず、家賃を払ってメシを食うだけの貯金はあったが、暇だった。
 なんとなく人が消えた図書館に行ってみたくなった。
 それで歩いて20分の図書館に出かけた。
 人は見事にいなかった。
 このシーズンなら受験生がいるはずだったが、それもいなかった。
 もともと、読みたい本があって来たわけではなかった。
 なんとなく小説の棚を見ていたら、講談社BOXの箱入りの単行本を見つけた。
 青春を思い出した。
 食えずにまだ遅いインターネットでBOX-Air新人賞に応募していた。夢を見ていた。アニメ化されてタワーマンションで執筆する夢を。
 年の半分は働いて、年の半分は執筆をしていた、
 いまだに小さいワンルームマンションで暮らしているが、一年中、プログラマーとしては指名がかかって、メシはそれなりに良くなった。

 本を棚から抜き、椅子に座り、読んでいた。
 この頃、このぐらい書けていたら人生が変わっていただろう。
 その時、彼女の声が聞こえた。
「その本、私の青春」
 彼女は黄色いダッフルコートを着て、茶色のロングブーツを履いていた。BOX-Airの前の時代のラノベで頼りない主人公をはげまして、男性へ成長させるヒロインのようだった。
 髪は冬の光に反射していたが見事な黒髪だった。
 僕は彼女に見惚れた。
 彼女はそんな僕を見て、言った。
「わたしのことを忘れていない?」
 僕は口にできなかった。
「君のことを忘れたことはない」
 彼女は会話をできない僕を見て。
「あの頃のあなたはまだ生きているの」

 これを書いている時点ではアフターコロナだ。
 僕のいまの立場は内緒だ。
 もしかしたら小説家もしれないし、流浪のプログラマーかもしれない。
 ただ、彼女の知っている僕でもあり、そうでもない。
 その時に気づいたことはある。
 人生はそういうものだ。
0494第六十二回ワイスレ杯参加作品
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2023/08/05(土) 01:14:06.83ID:L6eGmnVD
 
 俺の仕事は、レビューチェッカーだ。
 
 大手通販会社の商品レビューは、最初に会社のシステムでフィルタリングがされる。禁止ワードの有無で『掲載OK』と『要人力チェック』に分けられて、『要人力チェック』のレビューはパート社員が審査するのだ。
 審査方法はそれほど難しくない。文章を読んで、問題がなければ掲載し、問題があれば編集や却下をするだけだ。
 
 いつもは終始無言で終わる業務時間。だが、その日は俺に声をかける者がいた。
「先輩。そのレビュー、却下してください」
「はい?」
 振り返ると、今日からパート社員になった新人がいた。高校生の女の子で、名前は確か「佐藤さんでしたっけ」「はい」。
「俺は佐久間です」
「佐久間先輩。この発売したばかりの本、私が書いたんです。コンテストで受賞して、嫉妬されているんです。つまらないって酷評レビューが掲載されたら、困ります」
 なんだって?
「佐藤さん、この『寝取られたい妻』って本を書いたの? 作家名『佐久間大介』?」
 これエロ本だぜ。R指定ついてるが? 初対面の俺に堂々とカミングアウトするか、普通?
「ほら、証拠です」
 佐藤さんはスマホ画面で佐久間大介のSNSアカウントを表示した。本物だ。ごくりと生唾を飲む俺に、彼女は迫った。
 
「ですから、辛口のレビューは却下してください」
 真剣だ。気持ちはわかる。発売直後のレビューは売れ行きに影響あるよな。
「佐藤さん、でも……それはできないよ」
 俺はモニターに映っているレビューを示した。
「いいかい。このレビューが『要人力チェック』になったのは、他のレビューとの一致率が高いからなんだ」
「きっと同じ人が複数のアカウントで投稿してるんですっ」
「この投稿者、利用歴はしっかりしているよ。複数のアカウントの疑いもない。誹謗中傷は却下するけど、これは最後まで読んで抱いた感想を書いただけのレビューだよね。だから、審査を通して掲載するよ」
「あっ!」
 カチッとマウスを押してレビューを掲載すると、佐藤さんはこの世の終わりみたいな顔をした。――いい気味だ。

「佐藤さん。俺、本屋でスマホ片手にレビュー見て迷うことがよくあるんだ。考えてみてよ。称賛レビューしか掲載されないサイトは、購入者のためになるかな。それに、俺も佐藤さんも仕事でここにいるんだよ。私情禁止だよ」
「うにゅう」
 なんだその可愛い鳴き声は……いかん、しょんぼりしている姿を見て、うっかり可愛いと思ってしまった。
「それじゃあ、俺は仕事するから。佐藤さんも仕事しなよ」
「ふ、ふぁい……」
 佐藤さんが諦めたようなので、俺はモニターに向き直って次のレビューを表示させた。そこには、さきほどのレビューとよく似た酷評レビューがある。俺が書いたレビューだ。即、掲載する。
「佐久間大介って女の子だったんだな。しかもあんな……」
 あんな可愛い見た目で。あんなに清楚そうで。高校生だって?
 
「あの、佐久間さん」
「あ、はい? 今度は何?」
 呼ばれて振り返ると、佐藤さんが熱のこもった眼をしていた。
「佐久間さんのおかげで、目が覚めました。えっと、私、酷評レビューに負けません。もうすぐ、『ワイスレ杯』というコンテストがあるんです。私、そのコンテストに新作を送るつもりです。……私の本が面白くなかったって書いた人に、次の作品で『悔しいけど今回はよかった』って言わせるのを目標にがんばりますっ!」
 
「うげっ」
「げ?」
「いや……へ、へえ……、頑張って」
 そうか。お前、参加するのか。
「はい! 個人的にライバル視している作家がいて。『佐久間たけし』っていうんですけど……コンテストに参加するってSNSで意気込みを書いてるんです。私、毎回、彼より上の順位を取るのを目標にしてて、負けたことがないんですよ」
「……そんな目標でコンテスト……それで毎回勝って……」
 やめろよ。その作家は俺だよ。俺がみじめになるだろ。『佐久間たけし』なんて認知されてないと思ってたよ。何? 俺はお前に負ける係なわけ? わあ、わあ、うわあ。

「佐久間さん?」
 この女。無邪気に語りやがって。
「がんばって」
「はい!」
 ――腹が立つ。
 
 笑顔で自分の席に戻る佐藤さんを見送り、俺は心に誓った。

 勝ってやる。あんな女に二度と負けねえ。
 次のコンテストは……俺が勝つ!
0495創る名無しに見る名無し
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2023/08/05(土) 01:40:44.13ID:kgB+HUdp
 少年は、夢を見る。
 黄銅色の吹雪吹き荒れる、砂海の奥深くに佇む奇怪な神殿。
 その中に潜む悍ましい何かが、囁く声と共に手を拱いている。
 毎晩その夢を見るようになった少年は、恐怖とはまた別の感情を抱く。
 その先に何があるのか、自分は何処から生まれたのか。
 幼い頃の記憶がなく、親が人であったかどうかも定かではない。
 誰も教えてくれなかった問いの答えがそこにはある。
 日が経つ毎に膨れていった自身の謎を暴く欲求に駆られ、ついに少年は旅に出る。
 黄銅色の吹雪吹き荒れる未踏の地、奇怪な神殿、悍ましい呼び声。
 無謀な旅だと誰もが思うだろう、しかし少年は導かれるようにして神殿へ辿り着く。
 水も食料も底を着き、最早帰る手立てなど無かった。
 だが辿り着く頃には、それすらも厭わない程少年は取り憑かれていた。
 神殿の中は驚くほどに涼しく湿っていた。
 そして冒涜的な神々を崇める像が連なり、その奥にある祭壇には謎のランプが置かれている。
 導かれるようにして少年はランプを手に取る、三度擦れば魔人が出ると童話で見た少年はその通りに擦っていく。
 するとランプから出た煙が少年の身を包み、口と鼻から入り込む。
 解放された魔人は、入り込む煙に苦しみ喘ぐ少年に向かって問いかける。
「私を解放したのは君だな、願いを言わずとも君が何を望んでいるかは分かる」
「そして君の疑問通り、この神殿の奥深くには君の過去の謎が隠されている」
「実は私も奴には因縁があるんだ、私の力を貸そう」
 先程まで蝕んでいた、飢えも渇きも消え失せた少年は立ち上がり神殿の奥底へと再び歩みを進め出す。
 少年は隠された謎を暴くために、魔人は自身を封印した者に復讐するために。
0496ぷぅぎゃああああああ ◆Puuoono255oE
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2023/08/05(土) 05:59:05.02ID:smitIOnK
第六十二回ワイスレ杯参加作品

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只今、三十一作品!(`・ω・´)
0497第六十二回ワイスレ杯参加作品
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2023/08/05(土) 07:07:03.03ID:s+e+IeGv
 アイツに出会ったのは、親戚の法事の場だった。まぁ、俺とアイツの接点なんてそこ以外に無かったのだが。
 確か俺が生まれる前には死んでいた誰かの十七回忌だとかで、ひたすら詰まらなかったのだけは覚えている。
 クソ暑い中で堅苦しい格好をして訳の分からん経を黙って聞くと言うのは、当時クソガキだった俺には拷問以外の何物でもなかった。で、そこで俺以上にクソガキだったアイツと出会って意気投合し、俺達は俺達なりに法事を面白いイベントにしようと画策した訳だ。
 そこから先は、まあ語るまでも無いだろう。俺達は教育委員会が聞いたら顔面蒼白になるようなことをやらかして、児童相談所が聞いたら憤死するような数の拳骨を貰った。それだけの話だ。
 そういう時期だったのかはたまた『親戚』の範囲がやたらと広いせいか、その頃は毎年のように誰かの法事にぶち当たっており、次の年もその次の年も俺達は出会い、やらかし、そして説教された。今にして思えば、よく親戚連中も俺達を出禁にしなかったもんだ。
 あの頃は法事の意味なんて分からなかったから、毎年の集まりは無理矢理詰まらない行事に出席させられて悪戯して怒られるという、一連のイベントでしかなかったな。
 目の前の黒い礼服の群れを眺めながら、ぼんやりとそんな事を考えた。

 俺の番になったので、焼香台の前に進んで頭を下げる。
 道路に飛び出した子供を庇ったなんて、そんな漫画みたいな出来事があったのだと聞いた。
 そう言えば、何かを思い付いて真っ先に飛び出すのがアイツなら、真っ先にヘマをして大人達に怒られるのもアイツだったか。
 『バカは死ぬまで直らない』と言うのは、意外と真理なのかも知れない。
 慣れてしまった所作で抹香を炭の上にくべ、目を閉じて手を合わせる。
 ふと、何処かのクソガキ共の声が聞こえてくる。

「バカ、さすがにバレるって!」
「だいじょーぶだっつの。上手くやるから、まあ見てろって」
0498ぷぅぎゃああああああ ◆Puuoono255oE
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2023/08/05(土) 08:09:56.44ID:smitIOnK
第六十二回ワイスレ杯参加作品

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只今、三十二作品!(`・ω・´)
0499第六十二回ワイスレ杯参加作品
垢版 |
2023/08/05(土) 10:42:50.38ID:N9fjbwJo
俺たちは出会った。あの、余り物を取り合う戦いの場で。
 スーパーの弁当売り場、PM7:30分。弁当や惣菜が半額になった頃。俺が掴もうとしたチキンカツ弁当を、寸でのところでその女は先に持っていった。呆然としている俺に女は一瞥、ふふん、と笑う。負けた、俺は負けたのだ。
 次の日、またあの女と出会う。
 今度は俺が一瞬の差でチキンカツ弁当を手にできた。目を丸くしている女に俺も一瞥、薄く笑うと悔しそうな顔をして他の弁当を手にし去っていった。

 俺の名はタカシ。37歳。毎日の仕事に追われ、独身のまま今に至った世間の余り物。
 半額弁当は俺のライフラインだ。特にチキンカツは俺の大好物、取り合いで負けるわけにはいかない。余っていても、美味しいものは美味しいのだ。
 俺が敵と認識した女性は、最近この売り場で頭角を現し始めた女だった。
 少しくたびれた格好の眼鏡女子、歳の頃は30過ぎか。彼女もまた、仕事帰りにチキンカツ弁当を買い求める者だった。
 俺たちは毎日あの戦場で戦った。チキンカツ弁当争奪の覇権を掛けて、夏が過ぎ秋が過ぎ、冬が来て春が来て、また夏になった今、俺たちが目と目を合わせてから一年、ずっと戦った。

 ある日、いつものように俺が戦場へと赴くと、やはりその日も彼女が居た。
 出遅れた、今日は負けてしまう! そう思って小走りに弁当売り場へいくが、やはり先にチキンカツ弁当を手に取られてしまった。
 ああ、またニヤリと勝ち誇られる。そう思ったそのとき。
「どうぞ」
 彼女は俺にチキンカツ弁当を手渡してきた。
 なんだって!? そんなばかな、俺たちは敵同士だったはず。
「どういうことですか?」
 俺は思わず問うてしまった。彼女とはライバル同士、このように譲られる謂われはないのだ。
 すると彼女は寂しそうに笑った。
「ふふ、初めて声をお聞きしました」
 確かに。俺も初めて彼女の声を聞いた気がする。
「そうですね。そう言われると俺もなんか不思議な気がします」
「もうここでは長い付き合いですのにね」
 彼女はやはり寂しそうな顔で言った。俺は殊更その顔を無視して言う。
「だからこそです。俺と貴女は敵同士、譲られる理由がありません」
「私、田舎に帰らなければならなくなりまして」
「えっ?」
 俺は目を丸くしてしまった。驚いたのだ。
 なんとなしに俺は、彼女とのこの時間が永遠に続くと思っていた。そんなはずはないのに、思い込んでいてしまった。
「理由を……お伺いしても?」
「田舎によくある話です。地元に戻って、お見合いをしろ、と」
「お見合い、ですか」
 急に彼女が遠くに行ってしまったようで、頭がクラクラした。
「はい。いつまでも遊んでいるな、と母が。おかしいですよね、私は仕事をしていただけで、遊んでいたわけではないのに」
「そうですよ、貴女は遊んでなんかいない。いつも仕事帰りにお弁当を買いにきて、質素に暮らしているだけの方だ」
「ありがとうございます。なんか不思議です、貴方にはそう言って頂けるような気がして今日は声を掛けてしまいました」
 彼女は笑った。でもその笑顔は、ちょっと寂しそう。
「でもね、母の言うことも少しわかるんです。私も会社ではそろそろお局様なんて言われる歳、余り物扱いですから」
「お、俺も! あの、その! 余り物です!」
「えっ?」
「あの、どうですか。これからそこの公園で、二人でこのチキンカツ弁当を食べるというのは。余り物同士、この余り物のチキンカツで関係をシメませんか!?」
「……いいですね」
 俺たちは公園で語らいあった。夏の夜7:30はまだ絶妙に明るくて、蝉が鳴いている。
 その蝉が鳴きやみ、空が満点の星に変わるまで語り合った。一年喋ることのなかった俺たちは、数時間でその時間を埋めるように喋り合ったのだった。
 そして一か月後。

 俺たちは再びスーパーの弁当売り場で顔を合わせた。
 微笑みを交わしあい、一つ残ったチキンカツ弁当に手を伸ばす。二人で。
「今日は他になにを買って帰ろうか?」
「そうね、タカシさんはなにが食べたい?」
「そうだな俺は――うん、これがいいかな」
 余り物の俺たちは婚約した。もう少しお金を貯めたら結婚する予定だ。だから今日も、半額弁当で節約する。余り物で節約する。

「余っていても美味しいものは美味しいんだ」
 俺は心の底からそう思ったのだった。そして、俺もそうありたいな、と。
0500第六十二回ワイスレ杯参加作品
垢版 |
2023/08/05(土) 11:05:32.40ID:LLZ1GAHt
 山の稜線から朝の光が差し込んでくると淡色の薄暗い街並みが鮮やかに色づいていく。それは見ようと思えば毎日見ることの出来る景色だったが、大学に通うためこの時間帯に家を出る真央にとってはその何気ない日常の景色を見るのが好きだった。まだ早い時間だ。人の姿を見かけることは殆どない。
 並木通りの街路樹の葉も散り、もうすぐ冬の寒さが来る予感がしてきていた。空気は乾き、少しばかりの冷たさを孕んでいる。つん、と鼻の奥をさすような冷たさに真魚は思わず鼻を啜った。今年の寒さはより厳しいものになるような気がしてならない。
 彼女は暑さには鬼のように強いが寒さには滅法弱いのだ。頭と手足を甲羅に引っ込めた亀のように身をちぢこませて歩き続けるが、ふと、視界の端に妙なものが見えた気がした。いや、見えた気がした、というのは訂正すべきだろう。そこには確かに妙なものがいた。物ではなく者ではあったが、それは確かに妙と表現すべき存在だった。
 それは背の高い男であった。背の高いとだけ表現するとその幅は広く人によって定義が異なってくるが、真魚の見立てではあれは二メートル近くあるのではないだろうか、と推測された。おまけに見たところ日本人かどうかはともかくとして黒髪ということは恐らく日本人である。
 日本人でこれだけの長身を見ることは殆どないため、それにも真魚は驚いたのだが、それ以上にその内臓が入っているようには思えない薄っぺらい身体に真魚は驚いたのである。
 男はぼんやりとそこに立っているように見えたが、やがて、こちらの視線に気づいたのか同様にこちらに視線を向けると二度ほど瞬きをして、こちらへと近づいてきた。
 普通ならばここで悲鳴の一つでもあげて逃げ出すのがセオリーのはずだったが真魚は特に逃げる素振りも見せずにじっと男を見ていた。
 キャメル色の薄っぺらいコートを着ているためか痩身が余計に強調されているが言うまでもなく生きている人間であるように見える。顔立ちは平凡というか人が良さそうというか、逆に特徴を見出すほうが難しかったが、害があるようには見えない。さて、近づいてきたが一体何をするつもりなのだろうか、と真魚が軽く身構えていると。
 「おはようございます、鮎川 真魚さん。これから登校ですか?早いですね」
 と声を掛けてきて、真魚は驚きの余りにあんぐりと口を開けることになった。何故自分のことを知っている!?ではなく、恐らくフルネームで知っているということは大学の関係者であるということに気づいたのだ。しかし、彼は自分のことを知っているようだが、自分は彼のことを知らない。これはどういうことだろうか。
 「お、おはようございます。すみません。私のことをご存じのようですが、どこかでお会いしましたか?」
 「直接の面識はありませんが、一応生徒の名前と顔は全て頭に入れるようにしているんですよ。意外かも知れませんが、こう見えて民俗学部の教授を務めさせてもらっている蔵太と言います」
 くらふと、と声に出されたが、随分と変わった苗字だ、と真魚は思った。
 「改めて、初めまして。鮎川です。ところで蔵太教授はこのような時間に何をされていたんですか?何やら熱心に見ているように見えましたが、何か面白いものでもあったのですか?」
 そう言いながら真魚が視線を向けた先には、墨と筆で描かれたような見事な鯉の絵があった。勿論キャンバスなど野外にあるはずもなくただの壁に、である。落書きではあったが、見事なものだと真魚はつい感心してしまったが、ちゃぽんと水音がした。雨も降っていないのに、と思いながら再度壁を見ると先ほどまでいたはずの鯉の落書きはまるで最初から存在しなかったかのように消えてしまっていた。
 思考が止まる。
 「あ、え?」
 いた、よね?と自問するが、現実にそこに鯉は存在しない。
 見間違いだったと考えるのが自然なはずだが。
 「残念。逃げられちゃいましたねえ」
 その言葉に、バッ、と勢いよく蔵太のいる方に振り返った真魚だったが、そこには楽しそうな笑みを浮かべてこちらを見つめる蔵太の姿があった。
 「色々私に尋ねたいことはあるでしょうが、ここで話すのもなんですからね。時間がある時に私の部屋に来ると良いでしょう。何時でも美味しい珈琲を準備して待っていますよ」
 そう言い残すと蔵太は古い洋楽を口ずさみながら大学とは別方向へと去っていった。
0501ぷぅぎゃああああああ ◆Puuoono255oE
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2023/08/05(土) 11:07:17.70ID:smitIOnK
第六十二回ワイスレ杯参加作品

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只今、三十四作品!(`・ω・´)
0502第六十二回ワイスレ杯参加作品
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2023/08/05(土) 11:10:15.37ID:LLZ1GAHt
 戦場カメラマンとは戦闘や紛争の行われている地域において戦争やそれによる被害や被害者などを取材することを目的としているが、そこに命の危険が常に隣り合わせに存在しているのは今更言うまでもない事実だろう。
 中東の某国において取材を行っていたY氏自身も同業者であった友人を亡くした経験から、何時自分が次にババ抜きのジョーカーを引く立場になってもおかしくはないと思っていた。
 目が痛くなるほどに白い太陽に日本では見ることのない砂漠の地平線がどこまでも続いている。乾燥地帯特有のサッパリとした暑さは不快ではなかったが、喉の渇きを覚えて彼は羊の皮で作られた水筒の飲み口を唇に寄せた。生温い硬水の味には未だに慣れないが、贅沢を言える立場ではない。少量の水で時間をかけてゆっくりと口の中全体を湿らせていく。現地民が濁った不衛生な水を飲む一方で日本から来た自分はこうして透き通った清潔な水を飲んでいる。ここに来ると改めて自分がいかに恵まれているかを実感し、それとともに得も言われぬ罪悪感が首をもたげてくる。
 ハゲワシと少女の写真を撮影した報道写真家はピューリッツァー賞を受賞したが、賞賛とともに多くの批判が寄せられることになり、その直後に自殺をしたという。批判そのものが直接の原因ではなかったが、彼もまたレンズに映った不幸に深い苦しみを抱いていたのだろう。
 Y氏はスリだらけのバザールの中を真っ白なカンドゥーラを着て歩いていたが、肌を隠すように真っ黒なアバヤで身を包んだ少女が所在なさげに立っているのを視界の端に捉えた。この国ではありふれた恰好であったが、どことなく彼女は周りから浮いているように見えてそれが気になったのだ。
 「撮影させてもらっても?」
 「私を?」
 「勿論」
 現地の言葉で話しかければ少女は表情をピクリとも動かさなかったが、Y氏からすれば端金を小さな手に握らせればあっさりと了承を得ることが出来た。離れた場所から真っ黒な光のない瞳がカメラのレンズ越しにY氏をじっと見つめている。
 「あなたはどこから来たの?チャイニーズ?」
 「ジャパニーズ。日本の東京から来た。カメラマンだよ」
 特別性のカメラはシャッターを押しても音が鳴ることはない。言うまでもないことだが戦場で撮影をする場合は少しの音でも致命傷になりかねない。レンズにも覆いをかけるなりして光が反射しないように工夫をすることになる。今のような状況ならばそれを気にする必要もないが、Y氏は一枚ではなく、何度かに分けて細かく角度を変えながら少女を撮影していった。
 「カメラマン?なら、きっとあなたはラッキーね」
 「どういう意味だい?」
 「多分あなたは衝撃的な写真を撮りたいんでしょう?」
 「否定はしない。それが私の仕事だからね」
 「なら、あなたの願いは叶うわ。きっと」
 それは子供の可愛らしい戯言であるはずだった。君の言葉が真実ならばどれほど嬉しいだろうか、とY氏が苦笑を浮かべると同時に凄まじい爆音とこれまでに味わったことのない強い衝撃が彼の全身を襲った。
 次にY氏が意識を取り戻したのは現地の病院だった。医療施設であることは直感的に解ったが何故自分がここにいるのかが解らずに混乱して意識を取り戻した直後はパニック状態にあったが、やがて次第に落ち着くと自分の身に何が起きたかについて医者に尋ねることが出来る余裕が出て来た。
 だが、彼が医者から聞かされ、自分自身で調べて確認出来たのは想像以上に悲惨な事実であった。現地のテロ組織が行う爆弾テロの一種である人間爆弾。彼が撮影した少女はそれの道具として使われ、氏はその爆弾テロに巻き込まれたのだった。
 意識を失っている間に現地民に盗まれることもなく無事だったカメラの中にはこれから自身の爆弾によって命を落とすことになる直前の少女を撮影したデータが残されており、奇しくもY氏は少女が言ったように衝撃的な写真を撮りたいという願いを叶えたのだった。
0503創る名無しに見る名無し
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2023/08/05(土) 11:25:02.20ID:yvXsxMDF
>現地民に盗まれることもなく無事だったカメラの中には

人間爆弾が間近で爆発して無事なのかよ

>直前の少女を撮影したデータが残されており、奇しくもY氏は少女が言ったように衝撃的な写真を撮りたいという願いを叶えたのだった。

少女の人間爆弾の衝撃のあとではオチもなんか弱いな
0504ぷぅぎゃああああああ ◆Puuoono255oE
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2023/08/05(土) 11:28:41.87ID:smitIOnK
第六十二回ワイスレ杯参加作品

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只今、三十五作品!(`・ω・´)
0505第六十二回ワイスレ杯参加作品
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2023/08/05(土) 12:06:16.16ID:G/BHzLJg
 珠理は自転車に跨ったまま、丘の下を見据えた。学舎の中庭から数人、こちらに手を振っているのが見える。
「見ろよ神童だ。ありゃ遅刻だぜ。オーイ」
 同級生たちの声が微かに流れてくる。風向きは、逆風。
 珠理は息を大きく吸い込むと、ペダルに足をかけた。
 ⚫︎
 世の中には神童と呼ばれる人がいる。多くは生まれつき特別な才能をもった子供に与えられる呼び名だが、珠理がそう呼ばれているのはもっと別に理由があった。
「獅堂さん。聞いているんですか」「でも間に合いましたし」「そういう問題じゃありません」
 シドウだから、シンドウ。神童と呼ばれるには、もちろん、これだけの理由では到底弱い。
「誰にも迷惑かけてないじゃないですか」
「危険運転を指摘しているんです。あなたの乗ってきた自転車をご覧なさい。もう二度と役目を果たす事は叶わないでしょうね」
「だって、うちの道ボコボコで」
「境内から急斜面の林をぶち抜いてショートカットするコースは道とは言いません」
 二つ目の理由は、珠理が神社に住んでいるからだ。生後間もない乳児が本殿奥で発見され、獅堂珠理という名前が付いた……という噂もあるが、そんな事はない。彼女には両親がいる。
 茶化され、尾ひれがついて、不思議が生まれる。世に溢れる不思議の一つとして、神童珠理が存在しているのだ。噂が無くならないのは、彼女がそれを否定せずに楽しんでいるという点が一番大きいのだが。
 教壇の前で涙目になっていた珠理が踵を返すと、ぺろっと舌を出しながら席に戻る。教師からは背中しか見えない。
 ⚫︎
 同日、夕礼。
「犯人はただちに名乗り出てください」
 教師の隣で、一人の女生徒が俯いていた。数日前から問題になっている、ハンカチ盗難事件の犯人探しだ。夕礼を延長して犯人と根比べをする、というのがこの教師のやり方だった。その日に犯人が出てこないなら、次の日も行う。時間が経てば経つほど犯人も教師も意固地になり、クラスの空気は重くなる。無関係の生徒はもちろん、被害を受けた女生徒にとっては拷問に他ならない。
 女生徒が「もういいです」と何度言っても、教師は拷問を続けた。
「先生。犯人が見つかれば、我々は素敵な放課後を取り戻す事ができるんですね?」
 珠理が手を挙げ席を立つと、周囲はざわついた。まさか見当がついているのか。神童ならあるいは。そんな視線が珠理に注がれた。
「ええ。私だってこんな残業はうんざりですよ。でも、ちゃんと犯人である証拠も提出してくださいね。中途半端が一番よくない」
 即興の自己犠牲も却下だぞ、と言外に含ませている。珠理は腕を組みながら「うーむ」などと発音しつつ大袈裟に周囲を見渡した。教室の入り口に近い席で青い顔をしている男子生徒と目が合うが、すぐに外される。分かりやすい反応だった。
「まあ、全部揃ってますよ」
 調査はそれで完了していた。
「では犯人を教えてください」「うむ。連れてきましょう」
 珠理は制服のポケットの中に手を入れながら、教室の入り口へと歩き始めた。顔を青白くさせた男子生徒が、滝のような汗を流している。珠理のポケットの中には、証拠となるもの──つまり、ハンカチが入っていた。
 だが、これは彼を犯人と裏付けるための証拠にはならない。
 本物のハンカチは彼の手によって焼失してしまっているからだ。そして、彼は悪気があってハンカチを燃やしたわけではなかった。少し借りて、洗って返すつもりだった。うっかり、ポケットの中のゴミと一緒に焼却炉に投入するなんて事がなかったら、そうするつもりだった。
 この場合、どうすればこの『夕礼拷問』が上手く収まるだろうか。
 男子生徒が素直に名乗り出る。これは今となっては悪手だ。疑われ続け、時間を浪費させられる苛立ちが呪いとなって、場を蝕んでいる。彼への制裁は正当なものではなくなるだろう。
 珠理が名乗り出る。これも同じことだ。『今まで何故黙っていた?』という呪いを打ち破ることができない。
 これを打破するには、呪いの影響下にいなかった──教室に居なかった第三者が必要だった。誰かが外から手を伸ばせば、簡単に解決することなのに。
「獅堂さん、どこに行くんですか」「居るんですよ。ずっと、そこに」
 珠理が入り口の戸に手をかけ、開く。その目は青々と輝いて、こちらをとらえた。
 握手をするみたいに差し出されたハンカチを、僕は右手で掴んでいた。
「初めまして。ハンカチ泥棒さん」
 瞬間、ふわふわとしていた視界が固定された。二本の足で立っているという確かな感覚があった。

 探偵・神童珠理と僕との出会いは、こんな不思議なものだったと記憶している。それから今よりも可愛気があったとも。
0506第六十二回ワイスレ杯参加作品
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2023/08/05(土) 12:14:44.30ID:791lxjgA
 川に近づいてはいけないよ。村の外に出てはいけないよ。
 
 僕は物心ついてから、そう教えられてきた。

 四方を川に囲まれた小さな村――それが僕が十一年間過ごした村である。父である村長は言っていた。僕たちの村は『生き残り』で、この世のどこにも同じ民族はいない、と。
 
 つまり、村人が僕だけを残して死んでしまった現在、僕は唯一の存在なのだ。

 生き残った僕は、十一日間を一人で過ごした。村には蓄えがあったし、井戸もある。果物を木から採取して、ウサギや鳥を狩り、ただ命を繋ぐ。
 そして、村の書庫にある古い本を読み耽った。本の中では人間が愛し合ったり憎み合ったりしている。本を読んでいる間、僕は主人公になった気分になり、本を読み終えたとき、僕はどうしようもなく孤独を実感した。

 ――村の本を全て読み尽くして、そこからは読み返す日々が訪れる。そして、飽きた。僕は孤独を持て余した。

 人だ。
 人に会いたい。
 僕の存在を誰かに知ってほしい。
 誰かの心の中に、自分という存在を残したい。

 ……いるんじゃないか、どこかに?
 大人たちは「この世のどこにも同じ民族はいない」と言った――それって、他の民族はいる、ということじゃないのか?

 ――知りたい。見たい。外の世界を、見てみたい!
 
 僕は荷物をまとめた。ランタン。水を入れる皮袋。母さんの形見の首飾り。父さんの短刀と長弓。真っ白な地図……木の実や干し肉といった食料も、忘れずに。

 向かうのは、西の川にした。木の棒を倒して、西に倒れたから。

 村と外を区切るように巡らされた柵を越え、西の方に林に立ち入り、歩く。茂みをかき分け、虫に集られ、汗を拭って獣道を行く。
 頭上で木々の葉がさやさやと音を立てていて、鳥が仲間と情報交換するようにさえずる。世界は生命と音であふれていて、僕以外は仲間といる。それが感じられて、僕は寂しくなった。
 
 やがて、水の流れる音が聞こえてきた……。
 
「わ、あ……!」

 さらさらと涼しい音を立てて水が流れている。川幅は広くて、こちらの岸からあちらの岸まで、かなりの距離がある。
 でも、浅そうだ。
 地面に敷き詰められた黒や灰色の小石の上を魚が群れて泳いでいる。それが見て取れるほど透明で、綺麗な水だ。飲んでみたい――僕は吸い寄せられるように川に近づいた。

 膝をつき、手を水面につける。ヒヤッとして、じぃんと皮膚の内側に冷たさを伝える川の水は、気持ちいい。流れている勢いを手の側面に感じると、不思議とわくわくした。
 飲んでみたい! 手のひらに水をすくって顔を寄せた、そのとき。僕の耳に、ぽちゃっという音が聞こえた。小さな石が川に投げられた音だと気づいたのは、顔をあげてからだった。

「……!!」
 
 見ると、川の向こうに人がいた。僕と同じくらいの子供だった。

 人だ――僕以外の人間だ。動いている。生きている。僕を見ている。

「……お」
 喉から熱いものが込み上げてきて、僕は溢れる思いを獣のように吐き出した。
「おおい、おぉい……!」
 言葉が出てこない。言葉が通じるのかも、わからない。
 
 無我夢中で手を振ってみた。すると、相手も手を振りかえして、「おおい」と鳴いた。
0507ぷぅぎゃああああああ ◆Puuoono255oE
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2023/08/05(土) 12:36:03.61ID:smitIOnK
第六十二回ワイスレ杯参加作品

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只今、三十七作品!(`・ω・´)
0509第六十二回ワイスレ杯参加作品
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2023/08/05(土) 15:11:57.32ID:cjN49yyU
 アハハハ。軽薄な笑い声が湧き起り、ショーゴは読んでいるマンガから目を上げた。教室の前方で、眼鏡のひ弱な男子生徒が駆けまわっている。男子グループにノートを奪われたらしい。
「かっ返して!」
「えーと、”下がっていろ、アカネ”?」
 男子のひとりが可笑しそうに読み上げる。
「うわ、”彼女の胸が僕の手に当たっている”だって」
「なにコレ自作小説?」
「くっだらねー。だからお前は、いつまで経っても金原なんだよ」
 アハハハ。笑いが呼び水になってさらに笑いを呼び、眼鏡の金原は顔を真っ赤にする。女子たちの「え、キモ」「ムリ……」という声は、刑を求める裁判員のようだった。

――”正義は議論の種になるが、力は非常にはっきりしている。 そのため、人は正義に力を与えることができなかった”。ショーゴはふと、そんな言葉を思い出した。先日、図書室に昼寝しに行ったとき、傍で読書していた人物がそう呟いたのだ。
「どーいう意味?」
 その場で聞いたが、相手はクスリと微笑むのみだった。超越した空気を持つ男だった。

 その人物はいま、教室で席に着き、女子グループに囲まれている。
「妄想こわーい」とすり寄る女子。それに「さあ、どうだろう。僕は時々するけれど」と凪いだ声音で答えている。
「やだー、シンヤくん」
 女子たちは黄色い声で盛り上がる。

 調子に乗っているのかと見やれば、その男、白川シンヤの目はどこか冷ややかだった。――見下しているのだ、この空間の何もかもを。気付くとモヤモヤしてきて、ショーゴは静かに席を立った。

「か、返してって」
 金原は今もオモチャにされている。
 大股で詰め寄ると、ショーゴは集団の頭上からノートを掻っ攫った。高校1年で身長が185cmあるショーゴからすると、誰もが小粒だった。
「ど、うしたの。ショーゴ」
「ん」
 たじろぐ連中を放置して、ノートをぱらぱらと流し見る。これまで小説なんてこれっぽっちも読んだことがないので、内容は頭に入って来ない。しかしとにかくこの状況を変えてやりたい。
「”力が必要なんだ。正しいだけじゃダメなんだ”」
 たまたま目に着いた一文を読むと、金原はさらに縮こまった。
「なら。小説なんか書いてないで、筋トレすればいいんじゃねーの?」
 解決を見つけて、ノートを返す。金原はかろうじてという様子で受け取った。ひ弱だ。
 同時に、男子の集団が息を吹き返したようにけらけらと笑った。
「だよねー。矛盾してるよ? 金原」
「……」
 金原は沈黙し、自分の机へ戻る。男子グループの話題は筋トレへと移っていった。ショーゴはわずかな優越感を覚えた。自分は強い。場を収める力がある。そして満足して振り返ったが、そこにあったのは予想とは違う光景だった。
 白川シンヤが、金原をじっと見つめているのだ。その瞳には小さな好奇心がある。
――何で金原を見ている? 何が奴の気を引いたのだろう。場を沈めたのはこの自分だっていうのに。
 思いつくのはさっきの小説のセリフだ。”力が必要なんだ。正しいだけじゃダメなんだ”。一度おさまったモヤモヤが、再び胸に広がってくる。
 ショーゴは、金原の席へ向かった。
「オマエさ、本とかよく読むの」
「ぇっ?」
「なんか一冊で全部わかる本ってある?」
「ぇえ!?」
「”力と正義”とかの内容で」
「ぁ……」
 キョドキョドしていて中々返事をしない。ショーゴは苛々をつのらせ、返事を待つ間、白川シンヤを確認した。すると目が合った。奴は余裕のある微笑を浮かべる。同じ教室にいながら、上の土俵に立っているのだと肌で感じる。

「そ、その――力と正義についてなら、パパ、パスカルがいいかと……」
「パスカル?」
「図書室にありますっ、っぼく、図書委員で……」
 そういえば昼寝していたとき、時々カウンターにこの眼鏡がいた事を思い出した。
「じゃあ。放課後借りに行くから」
「取り置きしてぉおきますっ!」
 金原は裏返った汚い声で答えた。
 気取った男は今も口元に微笑を保っている。ショーゴは苛立ちを込めて睨みつけた。ただ見物しているだけの野郎が見下すなと思う。同じ土俵に立ってやる。
 放課後、金原は約束通りに取り置きしていた。
「か、貸出期間は、2週間です……」
「わかった」
 初めて貸し出しカードを利用し、受け取って、家で読もうと後にする。
 しかしパスカルの壁に撃沈し、一週間ねばったあげく、金原に解説を願うことになるのだった。
0510ぷぅぎゃああああああ ◆Puuoono255oE
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2023/08/05(土) 15:23:49.85ID:smitIOnK
第六十二回ワイスレ杯参加作品

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只今、三十八作品!(`・ω・´)
0511第六十二回ワイスレ杯参加作品
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2023/08/05(土) 15:44:58.50ID:h1aGkyrY
 キラキラしている。
 手を翳すと、その光は自然と集まってくる。形はどれも歪で揃っていない。三角、四角、五角、六角なんてものもある。
「綺麗だなあ」
 でもそれだけだ。これが何なのかはわからない。人に話しても、そんなのは聞いたことがないと信じてもらえなかった。
 それでもいい。見ているだけで癒されるから。
「おい、サボッてねえでこっちこい!」
「は、はい!」
 まだ休憩時間だったが余計な口答えはしない。仕事は船の整備だ。この世界は海が多く、次の国へ行くのには大きな船が必要だ。
 ただ子供だということもあって、大したことはできない。乗船する人の確認をしたり、誘導、たまに食事の配膳もする。
「ええと、アレンさんとティアさん……え!? もしかして、勇者さんと魔法使いさんですか!?」
 いつものようにリストを確認していると、驚いた事に目の前にいたのは有名な二人だった。
 勇者アレンと魔法使いティア。誰もが憧れる二人だ。冒険者になってすぐSランクに到達。魔物をバタバタと倒し、救った国は数えきれない。
「そうだけど、なんか照れるなあ」
「全く、すぐ調子乗るんだから。でも、その通りよ。小さな船員さん」
 想像していたよりもアレンさんは華奢な感じだ。ティアさんは可愛らしくて、スタイルが良い。
「一等船室ですね。こちらに!」
 心臓が高鳴る。今、英雄を案内しているのだ。
 僕には親がいない。といってもこの世界で孤児は珍しくもない。そんな僕たちが憧れるのは冒険者だ。強くて格好良くて、何よりも自由に憧れる。今はまだ力も弱いし身体も小さい。魔物を見ただけでも怯えてしまうから戦う事なんて出来ないが、大きくなったら冒険者になると決めている。
「あァ? 同船したいだあ?」
「はい! 今回だけお願いします!」
 そして僕は船長に無理を言って次の国まで一緒に乗せてもらうことになった。いつもは整備だけで国から出ることはないが、勇者と魔法使いと乗船したかった。どこかのタイミングで声を掛けようとしたけれど、思いの他にやる事が多くてできなかった。
 それでも長い時間を一緒に船で過ごした。なんだか嬉しかった。
 ある夜、異変が起きた。いつもはありえない霧が、船を襲った。
 大きな音がして船が動かなくなる。甲板に出ると、そこには大きなタコの魔物がいた。
 とてつもなく大きい。この船は大型だが、それ以上だ。触手もいっぱいで気持ちが悪い。ああ、どうしよう――。
「下がって」
「アレン、魔大陸の上級魔物よ。何でこんな所に」
 忘れていた。そうだ、アレンさんとティアさんがいるのだ。
 僕は安心した。これで大丈夫。何も問題はな――。
「クっ、こいつ、強いぞ!」
「アレン!」
 だが驚いた事に、タコは強かった。触手が何本も伸びてくる。更に船を破壊しようとしていた。どうしよう――。
 しかし僕は気づいた。ティアさんが魔法を詠唱している時、空中の光が集まっていく。それが一つの形になると、魔法が放たれる。
「雷の存在を敵に示せ」
 タコは水属性だ。反属性の魔法なはずだが、それでも倒れない。
 だがアレンさんが見事な剣技でタコを追い詰める。しかしそこでタコはあろうことか、船を破壊しようと抱き着きはじめた。
 大きく揺れる。船体が傾く。まずい――。
「アレン、時間を稼いで! サンダーエンボルト――」
 ティアさんが魔法を詠唱する。光が集まってくるが、間に合わないとわかった。
 僕は――急いで駆ける。
「あなた……何をしてるの?」
 無我夢中で、ティアさんが集めようとしている光の欠片を代わりに集めた。
 それが一つの形になった瞬間、ティアさんが目を見開いた。
 けれどもすぐに前を向き、雷魔法を放った。それは、とてつもない威力だった。
「港街ー港街ー」
 無事に到着したが、船は壊れていた。そして僕は仕事を失った。
「これからどうしよう……」
 その時、アレンさんとティアさんが声を掛けてきた。
「ねえ君」
「え?」
「冒険者って興味ある?」
 心臓がドクンと脈を打つ。え、僕に聞いてるの?
「あ、あるけど……」
「あなたの魔法は凄かった。良かったら私たちと旅に出ない?」
 それは驚きの誘いだった。僕が、勇者パーティーに?
「でも、あれはたまたまで……」
「そんなことない。あれは詠唱に時間がかかるの上級魔法だった。それをあれだけ早く……凄い素質よ」
「俺も最初は何もできなかった。これからだよ。一緒に魔王を倒そう」
 その日、僕の物語がよやく動き出した。
0512第六十二回ワイスレ杯参加作品
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2023/08/05(土) 15:47:07.00ID:Xp3GGjzS


「泣き虫」というタイトルが付けられた一枚の写真がある。それはシンプルなアクリルのフォトフレームに入れられ、父の位牌の横に並んで置かれている。被写体は小学一年生のわたし、撮ったのは亡くなった父だ。この写真は、ある雑誌の写真コンテストで準グランプリを受賞した。
 「泣き虫」は、わたしの小学校入学式で撮られたものだ。すっきりと晴れた明るい陽射しに桜の花びらがほどよく舞っていて、いかにも入学式という雰囲気を盛り上げている。そんな晴れがましい舞台で、あろうことか、わたしはカメラを睨んでものすごく泣いていた。
 選評によれば「今では珍しいフィルムによる応募。入学式での少女の清々しいまでの泣きっぷりが素晴らしい」「彼女はこれから始まる学校生活への不安に耐えられなかったのだろう。そんな貴重な一瞬を写真に収めることのできた幸運は家族の特権であろう」「グランプリに男の子、準グランプリに女の子という結果。今年は子どもの当たり年だ」ということらしい。
 しかし、真実は少し違う。わたしは怖かったのだ。構えたカメラの後ろに覗く辛そうに歪んだ父の顔が、とても生きている人のようには見えなくて、わたしは湧き上がる恐怖を抑えることができなかったのだ。子どもではあったが、父の体調が思わしくないことは、わたしにもわかっていた。学校が夏休みになる前に父は亡くなった。繰り返しめくられた「泣き虫」の掲載誌はぼろぼろになって今でも写真の横に立てかけられている。

◆◇◆◇

 「泣き虫」はもうすぐ結婚する。彼との出会いは宛先の書かれた一封の封筒だった。中身はフィルムで、父のカメラバッグの奥に見つかった。大学への進学が決まり、寮に入ることになって使えるものを探して家中をひっくり返している時だった。
 母はしばらく記憶の底を探るように宛名や差出人を眺めたり、明かりに透かして中身を確認していたが、やがて諦めたように「開けてみようか」と呟いた。
「それはどうかな。パパがその宛名の人に送ったものなんだからちゃんと届けたほうがいいよ」
「だって、十年以上前の話よ。今更送っても何のことかわかんなくて相手も困るでしょ」
「大切な写真かもしれないじゃない。届いたら嬉しいよきっと」
「じゃあんた届けてよ。大学が始まるまで暇なんでしょ」
「ええっ、なんでわたし? パパの関係なんだからママの役目でしょ」
「あたしはね、仕事があんの。あんたの学費だって稼がなきゃならないんだから遊んでる暇ないのよ」

 結局、わたしは父の遺した忘れ物を届けるために、いつもよりちょっとだけお洒落をして知らない街にいた。封筒の宛先は廃業した商店といった風情の五階建の建物で、築年数はそれなりの経っていそうな外観だった。
 インターホンがなかったので、入り口の大きなガラスドアを押してそろそろと中に入った。遅い昼食なのだろうか、インスタントラーメンの匂いがする。奥に向かって「こんにちは」と声を掛けた。
 現れた背の高い青年を見て、あれっと思った。デジャヴという言葉が浮かぶ。青年もわたしを見て何かを感じたようにあれっという顔のまま、二人の時間が止まった。
 気まずい沈黙を破って、わたしは手短に訪問の理由を告げて封筒を渡した。青年はどうしたものかと迷うように、何度か封筒を表や裏にひっくり返して眺めていたが、唐突に「開けていいですか」と聞いた。わたしはちょっと驚いて「えっ」と間抜けな声を出してしまった。
「宛先は父ですが、実は今どこにいるかわからないんです。ひょっとしたら中に手掛かりがあるかもしれないし」
 時を待つように長いあいだ父のカメラバッグで保管されていたものが、いきなりこんな玄関先で開封されることになるとは想定外だった。
「わかりました。もうお渡ししちゃたし、お任せします」とわたしが言い終わる前に、青年は封筒を真ん中あたりでびりびりと裂き始めた。無造作と言っていいようなその手つきに、胸のあたりが微かにざわついた。
 破られたところから、三十五ミリフィルムが二本、足元に転がり落ちた。それを見た途端、なんとなくも遠くでやもやとしたものが、はっきりと目の前に現れて同時に「あっ」と声をあげた。
 わたしたちはフィルムから目をあげると、改めてお互いの顔をまじまじと見つめた。「グランプリ」とわたしが言うと「泣き虫」と青年が応えた。

0513ぷぅぎゃああああああ ◆Puuoono255oE
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2023/08/05(土) 15:52:35.83ID:smitIOnK
第六十二回ワイスレ杯参加作品

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只今、三十九作品!(`・ω・´)
0514ぷぅぎゃああああああ ◆Puuoono255oE
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2023/08/05(土) 15:53:19.85ID:smitIOnK
四十作品であった!(`・ω・´)
0515第六十二回ワイスレ杯参加作品
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2023/08/05(土) 15:56:18.71ID:TA5t9zYD
 宮川へ行けと命じられたのは、つい先月のことである。
 飛騨の山がよく見え、城下からはしばし離れた、山川の美しいたたらばの町であった。

 時は天保九年。
 陸奥国や出羽国では大飢饉により多くの死者が出ていると聞いたが、宮川はそんな世の動きなど知らぬ顔といったところである。
「ご不満でございますか」
 山を見遣り、腰に携えた刀の鞘を撫でていれば、背中越しに声をかけられる。
 振り返れば、この村の巫女を名乗る妙齢の女が微笑んでいた。
「否。主君の命に不服を覚えることはない」
「では、もし貴方様に主君がいなければ如何でしょう」
 グッと息を呑み、視線を山へと戻す。
「……この町に、俺が斬るべき鬼はいない」
 この世には、鬼が蔓延る。人間の吐き出す鬱々とした魔が鬼となり、人型を為して命を喰らう。帝が言うには、人が背負うべき業でもあると。
 しかし、宮川には鬼に襲われた嘆きどころか、現れたという記録もない。
 当然である。鬼は砂鉄を嫌い、特に宮川のようなたたらばには決して寄り付かない。
 巫女は数歩足を進め、俺の一歩手前に出る。長い黒髪と白い肌が太陽に照らされ、細い体の儚さの中に、神々しさを覚えた。
 魔の寄り付かぬ場所でしか産まれぬ、聖なる者。彼女の存在こそが、この宮川が安全である証明に他ならない。
 巫女は少しの間押し黙り、小さな声で語りだす。
「……人の世は、もう何百年と同じことを繰り返しております」
「左様。鬼には敗北もしないが、勝ち切ることもない」
 人がいる限り、鬼は生まれてくる。変わらぬ世こそが美しき。善は悪に勝るとはいうが、どちらが悪であるのか分からなくなることもしばしであった。
「巫女が何たるかはご存じでしょうか」
「ああ。鬼が唯一食えぬ存在であり、触れた人の魔を浄化する力がある」
「そうです。私は、巫女こそが鬼を絶やす武器なのではないかと考えております」
 目を見開く。巫女とは何度か会ったことがあるが、その誰もが守られることへ重きを置く。
 それが、戦いへの意欲。ましてや、己を武器などという女には出会った試しがない。
「意気上々。しかし案ぜよ。俺達には刀がある」
「貴方様の家系は、辿れば大宮仕であったとお聞きしております。志の高さはそれ故でしょうか?」
「昔の話だ。責務を全うできなかったことで任を解かれた。情けで現藩主の祖先が拾ってくれていなければ、ただの浮浪者であっただろう」
 家系図こそ己の恥だとさえ思っていた。巫女はクスリと笑い、髪を耳にかける。
「本題に戻りましょう。私が藩主様にお願い申し上げたのです。貴方様に会いたいと」
「なぜ」
「世とは、理があるから拮抗しているのです。世を変えたいのならば、理を壊すしかありません」
 巫女はこちらに向かい合い、胸に手を当てた。
「もしも」
 やけに高ぶった声色は、耳によく届く。
「今日まで続く巫女信仰が。いえ、巫女こそが、鬼を生む原因であるとしたら?」
「にわかには信じられんな」
「鬼は巫女に敵わないのです。ではなぜ、誰も巫女が鬼の支配者であると述べないのでしょうか」
 咄嗟の返事が出ず、言葉に詰まる。
 似たような話には覚えがあったからだ。平安の時代、帝に恋をした巫女がいたという。
 帝の死を受け入れられなかった巫女は気が狂い、ついには「帝の子を授かった」と訴える。いざ産まれてきたのは、人の子ではなかった。これが、鬼が生まれた始まりだと言われている。
「鬼の始祖巫女の話には、続きがあるのです」
 双子であった、と巫女は語る。一人は鬼であり、もう一人は女児であった。
「その話のどこを信用しろと?」
「するもしないも貴方様次第でございます」
 馬鹿らしい、とその場を立ち去ろうとした時だった。
「女児は忌み子として、すぐに寺に出されました。……私が、その忌み子の末裔であり」
「過度な想像は体に障るぞ」
「巫女こそが鬼の元凶であると唯一気づいたのが、当時巫女守を担っていた貴方様の祖先であったとしたら?」
 喉元に刃を当てられたかの如く、体が硬直する。
「真実を訴えるより早く、貴方の祖先は存在を消された。共に無き者として扱われた同士……互いが握る真実を合わせなければ、世の理は動かないでしょう」
 可能性、という言葉があるとするならば。
 自分でも否定したくなるような考えが、脳裏をよぎった。
「どうですか。鬼狩り様。二人で、世の理を壊しに参りませんか」
0516ぷぅぎゃああああああ ◆Puuoono255oE
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2023/08/05(土) 16:12:40.77ID:smitIOnK
第六十二回ワイスレ杯参加作品

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只今、四十一作品!(`#・ω・#´) オワア!
0517創る名無しに見る名無し
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2023/08/05(土) 17:16:11.58ID:KLQo/Tdo
>>486>>487は2レスになってるけどこのままだと失格だよ
まだ時間あるから1レスにまとめたらオッケーかもね
ワイさん次第だけど
0519ぷぅぎゃああああああ ◆Puuoono255oE
垢版 |
2023/08/05(土) 17:47:57.45ID:smitIOnK
なるほど、>>486>>487は一つの作品であったか!
そうなると二レスになるので一レスのルールでは認められない!

第六十二回ワイスレ杯参加作品

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只今、三十九作品!(`・ω・´)ワイスレ杯の終了後に一般評価に回す!
0520創る名無しに見る名無し
垢版 |
2023/08/05(土) 17:51:49.01ID:V9bXVgyF
あぁすいません。二つに分けてしまったことも明確に説明するべきでしたね。

ワイさん及び他の参加者さん達にも、また御迷惑をかけて申し訳ございませんでした。
0521486
垢版 |
2023/08/05(土) 17:54:05.79ID:V9bXVgyF
>>520>>486の書き込みです。
名前欄ではなくメール欄に486と書いてしまった

本当に粗忽者で申し訳ない……
0522第六十二回ワイスレ杯参加作品
垢版 |
2023/08/05(土) 18:05:24.20ID:+r0iHnza
顔も知らなければ、声も知らない。
知っているのは、性格がクズってことと、ゲームがやたらうまいってこと。
オンラインFPSゲームで良くマッチし、何気なくフレンド申請したことがきっかけで知り合った。
妙に気兼ねなく一緒に遊べ、気が付けば1年ほど一緒に遊んでいる。
ボイスチャットでのやり取りもなければ、テキストチャットで何か話すわけではない。お互いがオンライン状態であれば、ランク戦に誘うだけの仲。
上の下くらいのランクの俺たちは、数か月ここらへんで停滞している。

『バーカ。二度とこのゲームやるな』
『猿でもゲームできんのかよ』
『アル中で手ガタガタ震えてて草』

この通り、フレンドは口と性格が滅茶苦茶悪い。
俺たちのランクが停滞しているのは、この暴言がチームの士気を下げているのもあった。
けれど、俺は妙にこの暴言が好きだった。
俺はこんなこと言わない。言いたいけど、言えない。
気の小さい俺にはできないことを、ユーザーネーム【お前ら全員カス】は言ってくれるのだ。いつだって痛烈に、そして絶妙に的確に。俺はそれが楽しくて、一緒にランクをやっているのかもしれない。

『カバーしろよ雑魚が』
『てめーが飛びしすぎたんだろ低能。社会からもチームの輪からもはみ出てんじゃねーよ』

今日も痛快だった。
俺が言いたかったことを代弁してくれる。この日、俺たちはまたランクを下げた。
ゲームを終え、時計を見れば深夜2時を回っていた。
このままログアウトせず、フレンドのテキストチャットを開く。
ドキドキしながら、初めて【お前ら全員カス】に向けてメッセージを書き込む。

『あのさ、しばらくログインできないかも』
『は?なんで?』
『大学受験、始まるから』
『大学なんて行って何すんの?』
『うーん、彼女とか欲しいし』
『きもっ』
『相変わらず毒舌だな』

それっきり返信はなかった。
ゲームを閉じて、アンインストールしておいた。
俺は参考書を買いためて、受験籠りする態勢を整える。並べられた参考書。倉庫から取り出したストーブ。高校二年の冬、冷えて来た時期に、部屋のストーブと受験熱が俺の体を温めた。
それから一週間もしないうちに、俺はゲームを開きたい欲求に襲われた。なんと意志の弱いことだ。情けない。
少し言い訳をすると、またゲームをしたいというよりも、【お前ら全員カス】に会いたかったのだ。
勉強中にインストールして、疲れたときにゲームを開いてみた。

新着メッセージが届いております。

心臓が少し高鳴った。
急いでメッセージボックスを開く。
【お前ら全員カス】『日曜日15時。代々木公園らへんに行く』
メッセージはそれだけだった。
今日は土曜日、時間は23時を回っていた。
【お前ら全員カス】はオフライン。一応返事はしておいたけど、届いているかどうかは分からない。
代々木公園なら高校生の僕でも行ける範囲だった。
次の日、早めの10分前に到着するように、僕は電車を乗り継いだ。
人が多く、場所も広い。そんなところで確実に【お前ら全員カス】と出会うために、僕はもこもこしたダウンジャケットのファスナーを開けた。
白いTシャツの胸元に、『僕は【お前らチンカス以下】です!』と書かれていた。
一人の女性が、少し笑みを浮かべながらこちらに歩み寄ってくる。
あの意地悪そうな顔、大胆な性格が見え隠れする歩き方。ああ、間違いない。【お前ら全員カス】だ。
0523創る名無しに見る名無し
垢版 |
2023/08/05(土) 18:07:40.19ID:KLQo/Tdo
>>521
初参加だといろいろやらかすよね
そんな人がワイスレにはいっぱいいるよ
どんまいどんまい
0524ぷぅぎゃああああああ ◆Puuoono255oE
垢版 |
2023/08/05(土) 18:25:16.42ID:smitIOnK
第六十二回ワイスレ杯参加作品

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只今、四十作品!(`・ω・´)
0525第六十二回ワイスレ杯参加作品
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2023/08/05(土) 18:33:22.85ID:12akYxL6
 起きしなに窓から空を仰いだ。青々とした葉から青空が覗いている。快晴だ。
 三日三晩も雨音を耳に入れていたから、重くなっていた頭を持ち上げるのに少し苦労した。
 寝室のある部屋から階下に降りると、頭の重みはどんどん取れていった。耳の穴から三日分の雨音が排水されているような、そんな感覚を覚える。さらさらさら、と外から聞こえる音のせいだろう。
 昨日のうちに用意した釣具を持って、玄関の扉を開けた。

 さらさら、さらさら。

 予想通り、家の前は大きな川になっていた。いくら晴れたところで、客なんて来やしない。流れはそこまで急ではないが、水位が高いのだ。この建築を設計した人は大したもんだと思う。最初は玄関の高さに懐疑的だったが、たびたび周囲が『川化』することを知っていたに違いない。地上から十五段もある階段を設けて大木のウロを整形して住居にするなんて、それでも酔狂としか言えないけど。
 アヒルやカワウソなら泳いで来れるだろうが、おそらくうちのコーヒーは好かないだろう。何か、彼らに出せるメニューでも考えておこうか。ひまわりの種ならいけるだろうか。
 そんな事を思いながら、やっぱり今から来られても困るので『洪水につき閉店中』の看板を立てた。
 階段上から三段目に座って両足を川に浸す。運動不足で浮腫んだ足に、ひんやりとした水が心地良い。そのまま釣竿をゆるゆると振る。針の代わりに付けた巨大なフックのおかげで、思いの外よく飛んだ。
 この釣りの狙い目は魚じゃなくて、家具だ。上流の街から流れてくる椅子や机なんかを狙いたい。前回、一度だけピアノが流れてきたことがあった。さすがに大きすぎて釣り上げられなかったが、今回のフックはあの時よりもずっと良いものだ。釣竿もロープで家の柱と結びつけてある。もし力負けするような大物がかかったら、私は自分の家と職場を同時に失う事になるだろう。

 しばらく釣り糸を垂らしていると、奇妙なものが流れてきた。
 大きな黒革の鞄……そこまではいいのだが、上にヒトが寝ている。大の字になって、空を見上げているヒトだ。両手両足を水に浸しながら、木にぶつかりそうになるとバタバタと動かしていた。溺れているようにも見えなくもない。が、表情に必死さを感じない。何とも脱力した風である。

「おーい、きみ。大丈夫かね」
「んあ……ああ、釣り人? 釣り人がいる。ウケるな。釣れますか?」

 親切で声をかけたのに、逆に煽られた。こんな理不尽、あるだろうか。

「釣れないよ。それよりきみ、流されてるようだけど大丈夫なのかい?」
「うーん……ダメかも」

 彼は急に苦しそうにすると、顔を横に向けた。こちらからは見えないが、鞄の周囲が虹色に染まっていく。おろろろろろ。どうも酔っ払いのようである。

「……このフックに捕まってくれ」
「いいのか?俺は金を持ってないぞ」
「未来の釣果をきみの体液で染めたくないんだ」

 ぐいぐいと彼を釣り上げて、家に招き入れた。
 それから、カップ一杯の水を与えると、さっきの気怠そうな気配とは打って変わって、はきはきと喋り始めた。

「いやあ!悪いな。今は払える金はないが、俺、実は売れないルポライターなんだ!いずれ恩返しできる日が来るまでここに住ませてくれ!」
「さてはきみ、シラフの時の方が厄介だな?」

 言っている事がめちゃくちゃなやつだが、彼がいると新しいメニューをたくさん思い付くような気がした。
 明日からこき使ってやろうと思う。

 ▲

『郊外の喫茶店・ヤマミ』

 隠れ家的な、という表現にぴったりの喫茶店がある。ここは街から離れた、水捌けの悪い森の中にある喫茶店だ。
 立地条件は最悪で、マスターの愛想もすこぶる悪い。が、誰でも分け隔てなく接してくれるのがこの店の良いところだ。この前はガチョウがコーヒーを飲みに来ていた。
 私がこの店に出会ったのは数日前のことで、その時は洪水の日だった。洪水の日にやることと言えば、酒場でギャンブル。内容は割愛するが、大負けした私は川に流された。
 流されている時に偶然、釣りをしているマスターと出会ったのがヤマミを知るきっかけとなったのだ。
 彼女と出会った時の洒落たやり取りを、私は今でも覚えている。

 記者「やあ、こんなところでも釣れるのかい?」
 マスター「ああ、今まさに釣れたところだよ。きみがね」
0526ぷぅぎゃああああああ ◆Puuoono255oE
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2023/08/05(土) 18:45:25.44ID:smitIOnK
第六十二回ワイスレ杯参加作品

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只今、四十一作品!(`・ω・´)
0527第六十二回ワイスレ杯参加作品
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2023/08/05(土) 20:29:57.56ID:J4KAFIgv
「ねぇ、あんた高濱でしょ?」
 仕事帰りに晩飯を買おうと足を向けたコンビニで、そう呼び止められた。
 目を細める。店舗の明かりを背に立つ女だった。垢ぬけた、しかし社会人にも見えない、如何にも女子大生という外見の女だ。
「誰だ?」「はあ? 同級生の顔を忘れるなんて、サイアク」
 同級生。その言葉を聞いた瞬間、俺は踵を返したくなった。
「椎名だよ、し・い・な。久しぶり。あんたが高校を中退して以来よね?」
 名前を聞いて思い出す。言われてみれば、確かに記憶の中の彼女の面影があった。
 椎名はジロジロと俺の服を見る。道路工事帰りの泥だらけの作業服だ。羞恥に自分の顔が赤く染まったのが分かった。
 椎名は嘲りを宿した目で俺を見詰める。
「苦労してそうねえ」
「ッ! だったら何だよ! お前が今日の晩飯でも恵んでくれんのかよ!」
 本気の怒り半分、怒鳴りつけたらどっかに行くんじゃないかという打算半分で、俺は声を荒げた。
 しかし椎名は全く動じもしない。
「うーん、そうねぇ」
 椎名は小首を傾げる。その目から嘲りの色は消えて、まるで品定めするかのように俺を見る。
「……うん、面白そうだ」
 椎名は怪し気に笑う。
「高濱、あんた闇バイトをしてみない?」

 平日の昼下がり。俺は高級住宅街を歩いていた。――「ここだな」
 ウン億円はするだろう豪邸の表札を見る。『椎名』の二文字。間違いない。
 俺は侵入経路に適していると『住人』から教わった裏手に回る。自分の心臓が煩いくらいに鳴っている。
 椎名の話に乗って本当に良かったのか? 今更ながら思う。こんな危ない橋を渡る切っ掛けとなった、あの晩の会話が脳裏に蘇った。

「闇バイト?」「そう、闇バイトよ」
 椎名は怪しげな笑みを湛えたまま頷く。
「ま、正確にはその真似事ね。ねえ、高濱。ウチが金持ちなのは覚えてる?」
「あ、ああ。親父さんが会社経営しているんだろう?」
「そ。でも、金持ちなのはあくまでパパ。ウチは厳しいから、ロクに遊ぶ金もくれないの。酷くない?」
「酷くなんてねえよ」
 イラっとして否定するが、椎名は気分を害した様子もない。
「まあ、そんなわけでさ。高濱、あんたウチに泥棒に入ってよ」「はあ?」
「私が手引きしてあげる。家に誰もいない日時を、侵入経路を、金目の物がある場所を、全部教えてあげる。どう?」
 吞まれそうになる。慌てて口を開いた。
「何で俺が? そもそもお前が自分で持ち出せばいいだろ」
「あんた、おバカ? そんなことしても、真っ先に疑われるのは私なのよ。見ての通り、品行方正なお嬢さまとは言えなくてね」
 椎名はツートンカラーに染めた自分の髪を弄んで見せる。
「だから、あんたが必要なの。お分かり?」

 椎名の手引き通り、俺は邸の裏庭まで侵入していた。
「あの窓だな」
 二階の窓。椎名の部屋だ。窓の鍵を開けっぱなしになっている筈。登る方法は――室外機と雨どいを使えば登れるでしょ? とお嬢さまは仰せだ。
「簡単に言ってくれる」
 俺は室外機に足をのせると、軍手をした手で雨どいに手をかける。
「お、らぁぁ」
 力いっぱい体を持ち上げる。直後、ガンと宙に浮いた足が壁を蹴りつけてしまう。……落ち着け。今、この家には誰もいない。
 今日はまず椎名の父が出社し、続いて椎名が大学に。最後に椎名の母が昼一番に手芸教室に。そういう話だ。
 家を最後に出たのが椎名の母。そして最初に家に戻るのも椎名の母だ。つまり、大学で学友に囲まれ講義を受けている椎名には、絶対のアリバイが生まれるという寸法だ。
 どうにかこうにか、椎名の部屋への侵入に成功する。意外というか、普通の女の子の部屋だった。
 いや、そんな事はどうでもいい。金目のものは一階のリビングだ。椎名の母の趣味で、マイセンだの、純銀製のカラトリーだのが、わんさと飾っているらしい。
 マイセンは割れてしまうから難しいが。純銀製のカラトリーなら持ち出すのは難しくなく、換金も容易……らしい。
「よし……」
 椎名の部屋を出て、階段を降り一階へ。そしてリビングの扉を開ける――「あ?」
 中年の女性が仰向けに横たわっている。その胸にナイフが突き立っていた。
 呆然と見ていると、カシャカシャカシャカシャという音。視線を向ければ固定されたスマホがある。
「何だ、何なんだ」
 直後、ポケットの中のスマホが震える。無意識に確認すると、椎名からラインで通知が来ていた。
 そこには、死体の前に立つ俺の写真がアップされている。ポコンと、続いてメッセージが表示された。
『これで、あんたは私の犬だね。まずはワンと鳴いて見せてよ。ワンコ君』
0528ぷぅぎゃああああああ ◆Puuoono255oE
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2023/08/05(土) 20:33:18.41ID:smitIOnK
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0530第六十二回ワイスレ杯参加作品
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2023/08/05(土) 21:08:19.87ID:i4KKCfqO
「オノ! オノ!」
 夕暮れ時、オノが家の外でトウモロコシ粉を搗いていると、孫娘のワフが大声で叫びながら走ってきた。
「どうしたんだワフ、そんなに慌てて。豹でも出たのか?」
「ううん、豹なんかよりもっと大きいのだよ! オノ教えて! 海からやって来る大きな神様はなんていうの?」
「海から? はて、それなら風神ノディか鯨神ワホイか、太陽神トナルツィトリも海から昇るが」
「そんなのじゃなくて! 鯨なんかよりももっともっと大きなのが、海の向こうから来てるの!」
「待て、お前はそれを見たのか?」
 孫娘の尋常ではない様子に何かを感じたオノは、粉搗きの手を止めた。
「見たよ! 浜で貝拾いをしていたら、遠くにちっちゃな黒いのが見えて、それがどんどん大きくなって近づいて来るの! 海に浮かぶ岩みたいで、ヤシよりも高い木も生えてるんだよ!」
 岩? 神ではないのか。とにかく海岸で何かが起きていると理解したオノは、ワフの手を引いて長へのもとへ向かった。
 話を聞いた長も、要領を得ないながらも異常を感じ取り、供を連れ海岸へと走る。
「なんだ、あれは」
 ワフの言葉に嘘はなかった。沖合に、鯨よりも大きな岩山の如き何か浮いているのだ。巨木が生えているのも、ワフの言った通りだ。
 いや、よく見ると岩ではない。もしやあれは……。
「舟……なのか」
「なんだと!」
 オノの呟きに村人が振り返る。無理もない、皆が知る舟といえば、木彫舟か筏くらいのものだ。あんな大きな物が水に浮かび、しかも動くなど想像も出来なかった。
 やがて陽が沈むと、長は見張りを残して村へ戻り、主だった者を集めた。
「どう思う」
「どうもこうも、あんな物が自力で動けるとは思えません。どこかの建物が嵐で流されてきたのでしょう」
「それにしては、壊れているようには見えなかったが」
「中に何かいるかも知れぬ。まさかと思うが、悪霊の住処ということも」
「武器を集めよう」
 武器と言っても、木の槍と石斧くらいしかない。それでもありったけを持ち寄り、百人ほどの村人は残らず長のもとへ集まり夜を過ごした。
 翌朝、日の出とともに村人達は海岸へ向かった。
 異形のものは、朝日のもとまさしく神殿のごとき偉容をさらしている。その周囲に、紛れもない舟が数隻、漂っていた。
 その舟も、オノ達が知るそれより一回りも二回りも大きい。それぞれ数人が乗り込み、櫂を漕いで浜へ向かって来る。
「皆は木陰に隠れていろ。まずはわしらが会ってみる」
 上陸したところを、長とオノの二人だけで出迎える。
「お前達は何者か。どこから来たのか」
 砂に立つ、十人ほどの異形の者達。裸の二人とは違い、全身を色鮮やかな装飾で包んでいる。舟には大きな動物も乗っており、その動物を使って荷下ろしをしていた。
「×××××××××!」
 先頭に立つ男が何かを叫んだが、知らない言葉だった。
 だがその顔を見た瞬間、長とオノは驚愕に眼を見開く。自分達とは違う、白い肌をしていたのだ。
 思わず逃げ出してしまう二人。男は後を追うでもなく、振り向いて盛んに叫んでいる。どうやら、荷下ろしを急がせているようだ。
 木陰に戻った二人は、息を切らせながら皆に告げた。
「し、白い神だ」
「我々と違う、白い肌をしていた。あれは伝説にある白い神だ! とうとう戻られたのだ!」
「まさか、ただの人間に見えるぞ」
「神でなくても、あんな大舟と立派な衣装を持っているのだ。機嫌を損なうわけにはいかない。武器をしまえ、贈り物を集めろ!」
 皆は村へ駆け戻り、作物や装飾などありったけの品をかき集めて浜へ運んだ。
 ヤシ籠数杯のも贈り物を前に、男は大袈裟に手を広げ笑顔を見せた。気に入ってくれたかと、長も息を吐く。
 男は、籠の中を興味深げに覗き込んでいたが、ふと手を伸ばすと、小さな装飾品をつまみ上げ朝日にかざした。
「おお、それがお気に召しましたか。それは都で手に入れた細工物の指輪でございます。村に戻ればもっと大きな腕輪もございますよ」
 陽の光に燦然と輝くそれを見つめながら、その男エルナン・コルテスはニヤリと笑った。
 思った通り、やはりこの地には金がある。鉄も衣服も知らぬ未開人がこんな精巧な細工を作れるほどの、大量の黄金が。
 右手を上げ合図すると、控えていた兵が大砲に火を点す。
 雲一つない青空の下。朝凪の静かな浜辺に、南北両大陸の中心にあって三千年の長きにわたり栄華を誇ったメソアメリカ文明・アステカ王国の滅亡を告げる、最初の号砲が鳴り響いた。
0531ぷぅぎゃああああああ ◆Puuoono255oE
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2023/08/05(土) 21:31:21.65ID:smitIOnK
第六十二回ワイスレ杯参加作品

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只今、四十三作品!(`・ω・´)
0532第六十二回ワイスレ杯参加作品
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2023/08/05(土) 21:55:41.99ID:i7ERL3jT
 男は仕事から帰宅するなり長々とシャワーを浴びていた。
 執拗に何度も何度も洗体を繰り返してようやく満足し、清潔なバスタオルで体を拭く。
 洗いたての服に袖を通すと、彼は自らの持ち家である一軒家を掃除機と使い捨てのモップで徹底的に掃除をしていった。玄関から風呂場までの導線は磨きあげるように特に注意した。
 元々恐ろしいほどに彼の家は綺麗だったので、ゴミ箱へと捨てられるモップのシートは少し色を変えた程度だったし掃除機が拾い上げた埃も少なかった。
 掃除を終えると今度は洗面台へと向かう。たっぷりと石鹸をつけて手を洗って水で流すのを数回ほど念入りに繰り返した。流水を止めるとペーパータオルで手を拭き、消毒用エタノールをやはりたっぷりと取って手に刷り込む。
 一日に何十回と手を洗っている男の手は皹だらけで荒れている。エタノールが沁みることにもすっかり慣れているようで、少しも表情を変えなかった。
 続けて食事を作るために台所に立った彼だが、食材を取り出すよりなにより先に戸棚から薄手のゴム手袋を取り出した。いや、正確には取り出そうとした。彼の指先はゴム手袋が入っているはずの紙箱の底を擦った。空だ。
「あと百枚しかないのか」
 在庫はもう一箱分残ってはいる。
 もっと余裕があるように日頃からAmazonで注文しているはずだが、直近の注文は配送がかなり遅れている。これはAmazonが大規模なセールを先日行った影響だった。
 あと百枚。それを意識すると男の胸中はざわついた。普段の使い方であれば数日は持つ量だが、もし配送がさらに遅れたら? 大量に使うようなことが起きたら? 一度抱いた不安感は頭の中でぐるぐると反復し続けた。
 いっそ薬局かホームセンターに今から買いに行こうかとすら考えたところで、彼の家のインターホンが軽快な音を上げた。
 ちょうど配達について考えていたことと、他に自宅を訪ねるような人物に心当たりが無い。インターホンを推したのは当然配達員だと思っていた男は玄関を開けて面食らった。

 少女がいた。大きな荷物を背負っている。
「パパだよね……。ただいま」
 男はパパと言われてようやく、目の前にいるのが五年前に他に男を作って出て行った妻が連れて行った娘だと分かった。あれから五年経っているので今の彼女は十二歳になる。茶色に染められた頭髪やチャラチャラした服装から素行不良気味な印象を抱いたが、それでも確かに面影は残っていた。
「紗英か?」
 少女はこくりと頷いた。
「良かった。引っ越ししてなくて」
 紗英が腕を広げて父親に抱き着こうと一歩近寄ったその瞬間。
「触るな!!」
 身をよじって怒鳴りつけた自分自身に対して男は困惑した表情を浮かべる。少女の方は途端に泣きそうになっていた。
「ごめん。パパは……潔癖症になっちゃったんだ」
 謝りつつも、一歩空けた距離を詰めようとはしない。
「急にどうしたんだ」
「もうママは嫌なの」
「何かあったのか」
 妻と娘が家から出て行ってからの経緯を男は全く知らなかった。妻への連絡先はブロックされていたし、二人がどこに行ったのかは妻の実家も知らなかった。それに、あちらからの連絡も当たり前のように無かった。
「ママは家でお酒をずっと飲んでるんだ。それで、新しいパパも最近全然帰ってこなくて。二人ともいっつもイライラしててもう嫌」
 娘の方が愛想を尽かせて出ていったらしい。
「新幹線で二時間もかかったんだよ。疲れちゃった。入っていい?」
 家から出て行ったことについて、当時七歳だった娘には非がないことは男には分かっていた。少なくとも、言われるがままに手を引かれて付いて行ったのだと解釈していた。だから「もちろん」と口では応えたものの、身体の方が娘を迎え入れようとしてくれなかった。
 清潔極まりない自宅に娘とはいえ、人を迎え入れることを躊躇しているのだと頭では分かってもだ。
 妻の不倫が判明し、二人がどこかに行ってしまい、一人でこの家に住むようになってから男は「穢れ」と言うものに敏感になり始めた。他の男に抱かれた身体で妻が触っていたドアノブに、横になっていたベッドに、身体を洗っていた浴室に触れていたことが気持ち悪くて仕方がなかった。それ以来、穢れていると感じるものを見たり触れたりすると背中に妙な寒気が走るようになった。
 男にとって、娘は穢れているように感じた。
 妻と触れ合ってきたこともそうだが、娘の見てくれには清潔さが感じられない。
 とはいえ娘は娘だ。辺りは真っ暗で、もう少しすれば夜中と呼べる時間にさしかかるので返すわけにもいかない。
 眼を瞑り、深く呼吸をしてから男は言った。
「まずはお風呂に入ってゆっくりしたらいい」
 その間にまた掃除をすることを決意して。
0533ぷぅぎゃああああああ ◆Puuoono255oE
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2023/08/05(土) 22:18:11.81ID:smitIOnK
第六十二回ワイスレ杯参加作品

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只今、四十四作品!(`・ω・´)
0534第六十二回ワイスレ杯参加作品
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2023/08/05(土) 22:23:14.93ID:TA5t9zYD
 これは片田舎の、とある百姓のところに生まれた末の息子の、なんとも奇妙な話である。
 勝吉と名付けられたは良いものの、いつまでたっても乳離れせぬ子であったが、母は吾子可愛しと愛に情を込めて育てた。
 そんなこともあってか、勝吉は大層頭が弱かった。年頃になってもクワの持ち方一つ覚えられぬので、父は勝吉を蔵にいれて養うことにしたそうな。
 蔵神様と共に過ごせば、やがて種の撒き方くらいは覚えてくれるであろう、と。
 いつの日にか、村の者はからかいがてらに「蔵吉」と呼ぶようになった。

 蔵吉はとんだ穀潰しであったが、愛嬌はあった。それに、奇妙なことに囲碁だけは得意であった。村の長さえもひょいと打ち負かすので、農作業の合間に「ちょいと相手をしてみせろ」と村人たちは蔵へと通った。

 とある日、蔵吉は碁石を磨こうと碁笥を手に取る。するとどうだ、一つの碁石がころころと地面に転がり落ちた。
 これはいかん、と蔵吉は追いかける。蔵を出て家の外へと。何度掴もうとしても、蔵吉が鈍いのでしゃがむ頃には碁石は先へと進んでしまう。

 それはそれは一生懸命に碁石だけを見つめるので、蔵吉は今自分がどこを歩いているのかすら分からぬ。
 蔵吉は頭も弱けりゃ、運も悪かった。

「蔵吉が大名行列を横切っちまった!」

 誰かが悲鳴を上げた時には、もう時すでに遅し。蔵吉に向かって白刃が振りかざされていた。

「オラの命で勘弁してくだせぇ!」

 寸でのところで父が割って入って頭を地面に擦りつける。

「倅の兄弟はみんな流行病で死んでしまったのです! オラにはもう、こやつしか残っておらぬのです!」

 憎しと思っていても吾子である。父の訴えには、「否。二人まとめて切り捨て御免」との声が返ってきた。
 周囲がグッと覚悟したとき、

「人一人を斬るのに、一体いつまで時間がかかっておる」

 騒ぎに野次を入れたのは、時の大名――毛利勝永である。刀の先をちらりと見た勝永は、「ほう」と声を上げた。

「何故、百姓が碁石を持っておるのだ」

 己が死にかけていることも分からず、蔵吉は散らばった碁石をせかせかと着物の裾におさめている最中であった。

「こ、これは見様見真似で作ったものでございます。決して、盗ったものではございませぬ!」
「百姓が囲碁を打つか! なんともけったいな村である!」

 誰が最も上手いのかと勝永が問えば、父を初めとした村人の視線は蔵吉へと集まった。
 ならば、と勝永は口角を上げる。
 
「儂に勝てたのならば、今日の無礼はなかったことにしてやろう」

 そうして、片田舎の畦道の真ん中にて、馬と侍らに見守られながらの真剣勝負が始まった。
 数分もしないうちに、勝永は感嘆の声を上げる。

 蔵吉が打つ手は、どれもが常人には到底思いつけぬものばかりであった。
 このうつけ者には、軍師の才がある。見抜いた勝永は、負け囲碁をものともせぬ賭けに出た。

「我々はもう間もなく、大阪天王寺にて敵を打つ! お主が共に秀頼様の役に立つというのであれば、家の安泰を生涯約束してみせよう!」

 蔵吉は何を言われているのか分からぬ。ただ、父からは人に頼まれごとをされたときは首を縦に振れと教えられていたので、「へぇ、かしこまりました」と間の抜けた返事をした。

 そこから先は、史実通りである。通常であれば撤退を選ぶ場面にて、勝永らは前進を選び、敵の首を打ち取った。
 蔵吉がどうなったかは誰ぞ知らず。ただ後の巻き絵には、馬の後ろに隠れてクワを持った男が一人、いたそうな。
0535第六十二回ワイスレ杯参加作品
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2023/08/05(土) 22:32:15.52ID:kDkXurI+
 いらっしゃい。若い女店主の声で出迎えられた彼は、冬空の下から暖かい店内へと足を踏み入れた。
 木目調と明るい雰囲気が、気を引き締めていた彼の心を緩く解していく。
「あら、初めてのお客さんですね」
 にこりと、カウンターの向こうで百合の華が咲いた。黒い髪をまとめた化粧気のない姿は一見すれば野暮ったく地味な仕事着だ。しかし端正な顔立ちを強調する白い肌が白い割烹着に合って、良く映える。
「この辺りに用事がありまして」
 上着を壁際のハンガーにかけ軋む椅子を引く。席についたと同時に「どうぞ」と芋の煮転がしが出てきた。小鉢には紅葉の人参と緑の豆、味が染みているであろう茶色い馬鈴薯が湯気を立てている。
「突き出しです、何からお出ししましょう」
 熱燗と答えなかったのは、彼がここに来た目的を忘れていない証拠だ。この煮物と抜群に合うだろうその欲求を堪え「何か腹持ちが良いものを」と注文する。
 今時メニューも見ずにお任せなどする客も少ない。しかし彼女はただ「かしこまりました」と応じ、すぐに手元を動かし始めた。
 小気味の良いまな板と包丁が当たる音、微かに聞こえる気遣われた火加減で煮込む音、穏やかなそれらが消し飛ぶ力強い『かららら』と油の跳ねる音が、店内に響く。
 その音だけで、芋を口に入れた彼の脳裏にいくつもの料理が浮かぶ。咀嚼した最後の芋をお冷やで流し、微かに香る臭いからさらに推測を広げていると、答えが来た。
「お待たせしました」
 空の小鉢に向けていた彼の視線は、ことりと新しい皿が置かれた音で動かされた。白い油吸い紙に並べられた黄色い衣をまとった天ぷらは、彼が脳裏に浮かべていたものと近かった。
 それが期待外れとは思わない。『料理人は客を裏切るエンターテイナーでならない』テレビでそうほざいた軽薄な後輩を思い出し、鼻で笑う。
 料理人は客の予想は裏切っても良いが、期待を裏切っては決してならない。それは料理人の鉄則だ。黄金色をした美しい鶏天を箸で摘まんだ彼は、それが正しいと固く信じている。
「こちら塩か出汁つゆ、少し変わり種ですが、山葵塩でお召しがりください」
「……いただきます」
 彼はまず、どの調味料で一口目を味わうか迷った。鶏肉自体は淡泊だ。揚げたての食感を損なうと言われつつ、しっかりと味の濃いつゆも悪くない。それでも塩の風味とシンプルさでカリッとした衣を味わうのは捨てがたい。山葵塩という珍味から挑むのも冒険心をくすぐる。思わず店主へ視線を向けると彼女はにこりと微笑んで、
「鶏天、お好きなんですか?」
「えっ、ああ……」
 言い淀んでから、すぐにその意図に気付けた。
「はい、特に揚げたては好物で」
「でしたら、追加でもう少しお揚げしますね」
 彼はその心遣いに感服した。その好意に甘え、まず鰹節から丁寧に煮出して作られた出汁つゆで鶏肉を食す。
 後はもう語るまでもない。彼は鶏天から枝豆と香味野菜のかき揚げ、お吸い物に締めの焼きおにぎりまで、ここへ来た目的を忘れかけるほど夢中で食した。正しく、予想通りで期待以上だった。
「どうぞ」
「ありがとうございます」
 暖かい煎茶を啜り、息を吐いた。しばし食器を洗っている店主を見め、意を決した。
「女将さん、私と一緒に来ていただけませんか」
 途端、食器とスポンジの擦れ合う音が止まる。店主はしばし考えた素振りをしてふっとまた微笑み、細い垂れ目を柔和に曲げた。困ったような作り笑いだった。
「いやですよお客さん、突然そんなこと」
「貴方の兄の一番弟子として、お願いしに参りました」
 あの人を止めてくれ。そう呟いた彼は食事に舌鼓を打っていたのとは真反対に、苦虫を噛み潰した表情をしていた。とても、料理人が客にさせて良いものではない。
「……私はただの居酒屋の一人店主ですよ」
「しかし私は先ほど確信したのです、あれを止められるのは貴女しかいない」
 声音は真っ直ぐで、己で食した料理から真にそう信じられたのだと。若く信念に燃える眼差しは、一度は重責から逃げた彼女にはあまりにも眩しい。
 数分。いくら待っても彼に引く気はないと見た店主は、ふうと息を吐き諦めた。若者の陳情に、妹として責任を取るべきとも思えたからだ。
「わかりました、お請けします」
「ありがとうございますっ!」
 白百合の貴婦人。若者が述べた過去の栄光を表す名に、店主は苦笑した。
「共に止めましょう、あのエンタメ狂いを……!」
 この頭を深く下げる若者にここまで言わせた兄は、いったい何をしているのだろう。もう五年以上連絡を取っていない実の兄の面影を浮かべて、彼女は小さく口の中で呟く。
「兄さん……」
 料理で人々を幸せにすると共に誓った兄への憂いを帯びた呟きだった。
0536ぷぅぎゃああああああ ◆Puuoono255oE
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2023/08/05(土) 22:40:09.53ID:smitIOnK
第六十二回ワイスレ杯参加作品

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只今、四十六作品!(`・ω・´)
0537第六十二回ワイスレ杯参加作品
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2023/08/05(土) 22:52:46.34ID:eeJDYA24
「こんな辺鄙なところまでよく来たな、兄さん」
「高名な武道家であり、生きた伝説である貴方に会えるならこの程度、苦労の内にも入りません」
「若ぇのに殊勝なこった。で、用件は何だい……と聞くのは野暮ってもんだな」
「話が早くて助かります、どうかこの若輩に胸を貸して頂きたく!」

「ぐっ……参り、ました……」
「おう、お疲れさん」
「分かっていたつもりですが、これ程までに差があるとは……!」
「そうしょげるない。ここ最近の挑戦者の中じゃピカ一だったぜ」
「……本当にそう思ってくださるのなら、願いがあります」
「弟子なら取らねえ」
「ぐっ」
「何だってそんなに力が欲しい?兄さんはもう年の割に十分強いじゃねえか。金か、名誉か、それとも女や家族のためか?」
「どれも違います。その笑わないで頂きたいんですが……ただ、強くなりたいからです」
「あ?」
「弱い自分が嫌で、自分が強くなっていくのが好きで、どこまで行けるのか知りたくて。それをひたすら、死ぬまで続けたいだけなんです」
「そう、か」
「はは、おかしいですよね?さっきはああ言いましたが、笑ってもらって構いません」
「笑わねえ、いや、笑えねえよ。俺も……同じだからな」
「え?」
「いやいや、何でもねえ!何というか、そう……よく1人でこの森を抜けてここまで来られたな?若いのにほんと大したもんだ」
「ありがとうございます。とはいえ、この魔獣だらけの森で生活されている貴方に褒められるとなんだか複雑です」
「まぁ、俺にとってこの森は都合が良いんでな」
「自身を鍛え上げるのに、ということですか?」
「少し違う。うーむ、兄さんにだけ話させるのもなんだしなぁ……他言無用で頼むぞ」
「心得ました!」
「何年も前、俺ぁ世界最強の武道家だなんて言われてた。だがそんな絶頂期に突然姿を消した。その理由、知ってるかい?」
「いえ。色々な憶測が飛び交いましたがどれも確固たる証拠はなく、死んだなんて話も出ていたくらいです」
「その理由はな……呪いだ」
「へ?」
「呪いだよ、の・ろ・い。それも『周りの奴より少し上の実力までしか発揮できない』なんて馬鹿みたいな呪いだ」
「それはまた……ん?相手よりも少し"上"ですか?下ではなく?」
「ああ。だから多少弱っちくなるがタイマンなら問題ねえ。でもよ、同じくらいの実力の奴らが複数人で襲ってきたら話は変わるわな」
「ああ、なるほど……無思慮でした、すみません」
「いいさ。この森は魔獣の質が高い分群れる奴が少ないんでな、鈍らずに生活するには都合が良かったんだ」
「そういう理由でしたか、納得しました。貴重なお話、ありがとうございます」
「良いってことよ。この話をしたのは久しぶりだ。俺も多分、悪意のない誰かに聞いてほしかったんだろうさ」

「それで、その呪いは解けそうなんですか?」
「難しいな。術者が死んじまってるからなぁ……色々試してはみたんだが」
「そうですか。でしたら……自分に協力させて頂けませんか?」
「ほう、一体全体どうするんだい?」
「まず、弟子として私を鍛え上げて頂きたいのです。そうしたら必ず、貴方よりも強くなってみせます」
「大きく出たねぇ。だがよ、それで俺に何の得がある?」
「そうして貴方の傍に常に控えていれば貴方は呪いに縛られることなく自分の実力を存分に発揮できる。それどころか、呪い如何では本来以上の実力が出せるかもしれない!」
「……」
「どう、でしょうか」
「……ぶ、ぶはははははっ!若造が、こいつはまた、とんでもねえ大風呂敷を広げやがったな!!」
「す、すみません!」
「いや気に入った!さんざ俺のことを苦しめてくれた呪いを逆に利用するって部分が特にな!」
「へ?」
「だが、仮にも世界最強である俺の前でそれより強くなって見せる、なんて息巻いたんだ。今更撤回すんのは無しだぜ?」
「も、もちろんです!」
「よし、今から俺とお前は師弟だ。どちらかが死ぬか、お前が俺より強くなるまで、この関係は絶対だ」
「……誓います」
「良い目だ。じゃあまずは……ひとっ走り街まで行って酒と食料をありったけ買ってこい。全速力でな!」
「はいっ!!」
0538ぷぅぎゃああああああ ◆Puuoono255oE
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2023/08/05(土) 23:09:26.87ID:smitIOnK
第六十二回ワイスレ杯参加作品

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只今、四十七作品!(`・ω・´)
0539第六十二回ワイスレ杯参加作品
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2023/08/05(土) 23:16:50.40ID:sSXW3VoW
 2135年。日本の出生率は0.6人を下回り、いよいよ国家存亡の危機が現実味を帯びてきた。「結婚はリスク」「結婚はコスパが悪い」という意識が若者の中で一般化し、既婚者を馬鹿にする風潮が蔓延。そんな中、政府がとった少子化対策は過激なものだった。

「うっ……ここは……?」
 目を擦りなごら、上半身を起こす。ぼんやりとした頭で、辺りを見渡した。体育館だろうか? 広い空間に五十人ほどの男女が転がされている。
『皆さん! そろそろ起きてください!!』
 ピエロが壇上にいた。大きな拡声器でがなり立てる。流石にうるさい。皆、目を覚まし「ここは何処だ?」とざわめきが広がった。

『全員起きましたね! 皆さんは日本政府の少子化対策プログラムのパイロット生に選ばれました。このプログラムの名前は【結婚するまで出られない部屋】です!」
 なんの冗談だ? 結婚なんてするわけないだろ?
「ふざけるな! 俺は帰るぞ!!」
 すぐ側にいた金髪の男が立ち上がり、体育館の出口に向かって走っていく。

『はいはーい。丁度良かったです! 結婚せずにこの部屋を出ようとするとどうなるか見てもらいましょう』
 ピエロが合図を出すと戦闘服を着た集団が舞台の袖から現れ、銃を構えた。
『殺さない程度にお願いします!!』
 パンッ! と乾いた音がして、金髪の男が倒れた。太腿を押さえている。

『日本政府は! 本気なのです! 婚姻届に必要なものは全て揃えてあります! 結婚するまで出られない部屋、スタートです! 早く婚姻届を提出して、ここから出て下さいね!!』
 なんてことだ。日本政府は狂ってしまったのか……。

「私は東大卒で一流企業に勤めています! 私と結婚しても良いと思う方は来てください!!」
 如何にもエリートという風貌の男が立ち上がり、声を張った。女の視線が集まる。
「私! 結婚したいです!」「ワタシも!」「はい! 立候補します!」
 東大男のところにワラワラと女が集まる。こいつら、正気か? こんな短時間で結婚だなんて……。

「ぼ、僕は親が金持ちです! 働かなくても一生安泰です! 僕と結婚したい方は来てください!」
 見るからにボンボンという小太りの男が自己アピールをする。恥知らずめ。
「はいはーい!」「あっ、私も!」「私が先よ!」
 信じられない。世も末だ。人間、追い詰められるとこんなにも簡単に結婚してしまうものなのか。
 それからも続々とカップルは成立し、体育館から人は減っていった。

 体育館に閉じ込められて三日目。飲まず食わずで過ごすのは限界を迎えていた。
『もう残っているのは二人だけですよ! 早く諦めて結婚したらどうですか!?』
 ピエロの言った通り、ここには俺ともう一人の女しかいない。頑なに結婚を拒む二人だけが残ったわけだ。

「あなた、頑固ね」
 今までダンマリを決め込んでいた女が初めて口を開いた。
「結婚なんて、人生の墓場だからな」「同感よ」
 もううんざりと、女はため息を吐く。

『これ以上は本当に死んじゃいますよ! いいんですか!?』
 ピエロが煽る。

「君はこのまま死ぬつもりなのか?」「そうなるでしょうね」
「俺も付き合うことにしよう。死ぬまで一緒ってやつだ」「今のセリフ、プロポーズみたいね」
 女は力なく笑ってから、床に寝そべり瞼を閉じた。俺もそれに倣う。意識は遠のいていった。

 次に目覚めた先は病室のベッドの上だった。腕に刺さった点滴の針が邪魔くさい。
「おっ、お目覚めかな? 最後の独身者君」
 すぐ側で男の声がした。化粧はしていないが、分かる。こいつは、あの体育館にいたピエロだ。
「なんだ。結婚しない奴は死ぬんじゃなかったのか?」
「タダでさえ日本は人手不足なんだ。貴重な労働人口を減らすわけないだろ。銃で撃ったのも仕込みだよ。劇団員を雇ったんだ」「とんだ茶番だったわけか」「茶番でもなんでも、たった三日で何組ものカップルが本当に結婚したからね。プログラムは成功だよ」
 ピエロは得意げだ。
「そういえば、俺と一緒に最後まで残った女は無事か?」「あぁ。先に目覚めて退院したよ。それで──」
 ピエロが紙切れを差し出す。
「なんだ?」「女の連絡先だよ」「何故俺に?」「価値観の一致が理由らしい」
 紙を押し付けると、ピエロはサッと病室から去っていった。

 さて、どうしたものか。俺は11桁の数字をずっと眺めている。
0540創る名無しに見る名無し
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2023/08/05(土) 23:24:33.53ID:YJqcdgTs
廃屋の床がきしむ。
土埃で汚れた窓から入る月明かりは、足元を照らすこともおぼつかない。
懐中電灯で廊下の突き当りを照らすと、何かの影が動いて見えて、友哉は思わず足を止めた。
ぬらりと姿を現したのは痩身矮躯の女。
古風な和服に長い黒髪という典型的な幽霊スタイル。
友哉は声にならない悲鳴を上げて、廃屋から這う這うの体で逃げ出した。
友人たちが呼び止めるのも無視して自転車に飛び乗ると、そのまま全力で家へと向かう。
休み明けに友人たちからからかわれるだろうと思ったが、そんなこともどうでも良かった。
今友哉の心を占めていたのは、肝試しになんか来なければよかったという後悔ばかりだった。

翌日、朝日に安心してようやく眠りに落ちた友哉の部屋に、インターホンの音が鳴り響いた。
ひどい悪夢を見ていたような気がする。
体中汗びっしょりで、ひどくだるかった。
応対をする気が起きずに無視しようとすると、さらにもう一度なるインターホンが鳴った。
訪ねてくる人に心当たりはない。
昨日の今日だから、呼び出す機械音ですら、なんだか不気味な響きに聞こえてしまう。
しかしお化けだの幽霊だのというのは、夜に出るのが相場と決まっている。友哉は首を振って、ペタペタと廊下を歩き玄関へ向かった。
左肩が妙に重い気がして、大きくため息をつきながらドアノブに手をかけたところで、もう一度インターホンが鳴る。
「はいはい、今出ます」
声をかけながら扉を開け、友哉はまた後悔した。昨日から後悔してばかりだ。
「昨晩ぶりですね……」
妙な和服に長い黒髪、両手を後ろに回した女がにやーっと笑う。
「うわぁああ!」
慌ててドアを閉めようとすると、女はするりとその間に体を挟み込む。気づけばドアが閉まり、友哉と女は体を寄せ合うようにして狭い玄関に並んでいた。
「よかった、間に合って」
「な、なに、誰ですか!?」
布越しに感じる体温、うっすらと汗をかいている女の顔、わずかに当たる呼気。気が動転していたものの、友哉はこれが生きた人間であると気づいていた。
だからと言って突然訪ねてきて玄関にまで入り込む、みょうちくりんな格好の女への恐怖度が下がるわけではない。むしろ目的がわからない分、危険度はさらに高いくらいだ。
「今はそれどころじゃないの」
そういって女は背中に回していた手を前に出す。
友哉はまたも悲鳴すら上げられなかった。その場でしりもちをついて、荒い呼吸を繰り返す。
女が手に持っていたのは、妙な文字がびっしりと書き込まれた包丁だった。
包丁を振り上げた女は、勢いをつけて友哉の体に覆いかぶさるようにそれを振り下ろす。
親の言いつけを破ったのが悪かったのか。
友人の挑発に乗って心霊スポットなんかに行ったのが悪かったのか。
警戒もせずに玄関を開けたのが悪かったのか。
何も解決しない後悔ばかりをしながら、ぎゅっと目を閉じていた友哉に風切り音が迫る。
しかし、体にはいつまでたっても痛みが襲ってこなかった。
ただ感じるのは、のしかかっている女の重さと温かさだけだ。
恐る恐る目を開けると、女の顔がすぐ近くにあった。
長い黒髪で隠れて分からなかったが、近くで見ると整った容姿をしている。
「もう大丈夫」
視線をずらすと、左耳をかするようにして床に包丁が突き刺さっている。
「除霊完了よ」
よくわからないけれど命が助かり雰囲気に友哉は混乱しながらもほっとしていた。
女がにやーっと笑う。
安心させようという意図のもとかもしれないが、それはやはり少々不気味なものだった。
0541創る名無しに見る名無し
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2023/08/05(土) 23:26:34.94ID:YJqcdgTs
>540
修正します。以下本文です。

廃屋の床がきしむ。
土埃で汚れた窓から入る月明かりは、足元を照らすこともおぼつかない。
懐中電灯で廊下の突き当りを照らすと、何かの影が動いて見えて、友哉は思わず足を止めた。
ぬらりと姿を現したのは痩身矮躯の女。
古風な和服に長い黒髪という典型的な幽霊スタイル。
友哉は声にならない悲鳴を上げて、廃屋から這う這うの体で逃げ出した。
友人たちが呼び止めるのも無視して自転車に飛び乗ると、そのまま全力で家へと向かう。
休み明けに友人たちからからかわれるだろうと思ったが、そんなこともどうでも良かった。
今友哉の心を占めていたのは、肝試しになんか来なければよかったという後悔ばかりだった。

翌日、朝日に安心してようやく眠りに落ちた友哉の部屋に、インターホンの音が鳴り響いた。
ひどい悪夢を見ていたような気がする。
体中汗びっしょりで、ひどくだるかった。
応対をする気が起きずに無視しようとすると、さらにもう一度なるインターホンが鳴った。
訪ねてくる人に心当たりはない。
昨日の今日だから、呼び出す機械音ですら、なんだか不気味な響きに聞こえてしまう。
しかしお化けだの幽霊だのというのは、夜に出るのが相場と決まっている。友哉は首を振って、ペタペタと廊下を歩き玄関へ向かった。
左肩が妙に重い気がして、大きくため息をつきながらドアノブに手をかけたところで、もう一度インターホンが鳴る。
「はいはい、今出ます」
声をかけながら扉を開け、友哉はまた後悔した。昨日から後悔してばかりだ。
「昨晩ぶりですね……」
妙な和服に長い黒髪、両手を後ろに回した女がにやーっと笑う。
「うわぁああ!」
慌ててドアを閉めようとすると、女はするりとその間に体を挟み込む。気づけばドアが閉まり、友哉と女は体を寄せ合うようにして狭い玄関に並んでいた。
「よかった、間に合って」
「な、なに、誰ですか!?」
布越しに感じる体温、うっすらと汗をかいている女の顔、わずかに当たる呼気。気が動転していたものの、友哉はこれが生きた人間であると気づいていた。
だからと言って突然訪ねてきて玄関にまで入り込む、みょうちくりんな格好の女への恐怖度が下がるわけではない。むしろ目的がわからない分、危険度はさらに高いくらいだ。
「今はそれどころじゃないの」
そういって女は背中に回していた手を前に出す。
友哉はまたも悲鳴すら上げられなかった。その場でしりもちをついて、荒い呼吸を繰り返す。
女が手に持っていたのは、妙な文字がびっしりと書き込まれた包丁だった。
包丁を振り上げた女は、勢いをつけて友哉の体に覆いかぶさるようにそれを振り下ろす。
親の言いつけを破ったのが悪かったのか。
友人の挑発に乗って心霊スポットなんかに行ったのが悪かったのか。
警戒もせずに玄関を開けたのが悪かったのか。
何も解決しない後悔ばかりをしながら、ぎゅっと目を閉じていた友哉に風切り音が迫る。
しかし、体にはいつまでたっても痛みが襲ってこなかった。
ただ感じるのは、のしかかっている女の重さと温かさだけだ。
恐る恐る目を開けると、女の顔がすぐ近くにあった。
長い黒髪で隠れて分からなかったが、近くで見ると整った容姿をしている。
「もう大丈夫」
視線をずらすと、左耳をかするようにして床に包丁が突き刺さっている。
「除霊完了よ」
よくわからないけれど命が助かりそうな雰囲気に、友哉は混乱しながらもほっとしていた。
女がにやーっと笑う。
安心させようという意図のもとかもしれないが、それはやはり少々不気味なものだった。
0542創る名無しに見る名無し
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2023/08/05(土) 23:28:50.88ID:YJqcdgTs
勝手がわからず連続投稿申し訳ありません。
>>541は第六十二回ワイスレ杯参加作品です。
0543第六十二回ワイスレ杯参加作品
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2023/08/05(土) 23:35:49.96ID:yeiEO1YZ
 夏のある日の夕方。公園のベンチで読書をしている男が居た。
 文字が読める程度には明るく、暑さも大分マシになっている。その上、子供を始めとした喧しい存在はいなくなっている。
 男が読書に耽っていると、公園に足を踏み入れる中年がいた。犬を散歩させている訳でもなく、運動がてらに立ち寄った風でもない。しかし、自分の方を見てズカズカと歩み寄って来た。

「どうして、こんな所で読書を?」

 不躾な質問だった。立ち去ろうとも考えたが、この場を離れたくないのか、男は淡々と答えた。

「家に居ては、スマホやPCを触ってしまいますから」
「読書に集中できないと言うことですか?」
「少し違います。私は本を読むのが好きで、感想を言うのも同じ位に好きなので直ぐに書き込んでしまうのです。しかし、それが問題で」
「自分の感じたことを文章に出来るなんて凄いじゃないですか。何が、問題なのですか?」

 男は本の表紙を見せた。中高生向けのライトノベルスであり、可愛らしく美麗なイラストが描かれていた。

「好意的な物ばかりだと良いのですが、こういった物を揶揄する意見も少なくは無くて。沢山の称賛より、僅かな批判ばかりが気になってしまうのです」

 昨今はアニメ化やコミカライズの影響で、一般人が目にする機会も増えた為か、批判も多いように思えた。

「そう言った物を見なければ良いのでは?」
「頭では分かっているんです。でも、この感動を誰かと共有したいという気持ちが止められずに、つい見てしまうのです」

 誹謗中傷でもない限り、意見を述べる自由はある。だが、誰かの意見が自分にとって不快だったりすることは往々にしてあり得ることだった。

「なるほど。読書だけに集中したいから、この公園に来ているのですね」
「その通りです。何をどう思ってもスマホが無ければ、公に意見を発信することは出来ませんから」

 自分に言い聞かせる様だった。本当は、今。自分が感じた思いや考えを誰かに伝えたくて堪らない。そんな様子の彼に、中年の男性は語り掛けた。

「では、私に話してくれませんか?」

 男も最初は戸惑っていたが、やがて堰を切った様に話し始めた。ただ、何処かぎこちなかった。

「今まで元の世界に戻りたいと思っていた主人公がですね。この世界で出会った人達を守りたいって決意するシーンが本当に良くて……」

 常に相手の気を伺い、賛同を得たがっている様な。何処か卑屈さすら感じさせる喋り方だった。一頻り喋り終えると、男は中年の反応を待っていた。

「とても面白そうな話です。少年少女の勇気ある冒険譚に感動した様子が伝わってきました。だから、もっと堂々と話してくれていいのですよ」
「すみません。自分が面白いと思った作品は誰かにとっても面白い物であるはずで、ソレを批判されたくない。と言う気持ちもありまして。ついつい、相手の顔色を見てしまうのです」
「気にすることはありません。誰が何と言おうと、自分が好きな物は好きと言えば良いのです。批判なんて気にする必要はありません」
「ですが、私自身も面白くないと思う物はあるので、批判を否定したくも無いのです」

 ただ、受け入れられないというだけだった。誰かを攻撃することに転じない、男の自制心に対して中年は感心していた。

「批判から身を遠ざけようと、否定までしないのは良いですね。誰がどう解釈してもいい。と言うのも、また楽しみ方の1つですから」
「そう言って貰えると嬉しいです。貴方は、どうしてその様な考え方が出来るのですか?」

 男は不思議に思っていた。今まで、この様な話をすると面倒だと思われることも多かっただけに、中年の度量の深さが気になった。

「私がそう言った作品を耽溺しているからです。見る者によって幾重にも解釈を変え、褒め称えても良いし、貶しても良いのです。貴方になら楽しんでもらえると思います」

 どちらを取ってもいいという解釈は魅力的だった。作品のタイトルを教えて貰い、家に帰った後で検索に掛けた。

「貴方だったんですね」

 すると、先ほどまで話していた中年が跳梁跋扈する作品群と出会った。彼の言う通り、幾重もの解釈と賞賛と批判が混じり合う、雑多としながらも互いを許し合う様な心地良い空間があった。
 自分もこの世界に飛び込めたら、あの中年の様になれるだろうか。そう思いながら、二次創作元となった作品のタイトルを読み上げた。

「真夏の夜の――」
0544第六十二回ワイスレ杯参加作品
垢版 |
2023/08/05(土) 23:42:08.49ID:pcwD/sZX
 俺の名は鈴木陽磨。どこにでもいる平凡な中学二年の男子だ。但し、前世が魔王である点を除けばだが。
 記憶が戻ったのはつい先日、14歳の誕生日である。なんという間の悪さであろうか。夢の中で前世の人生を追体験し、目覚めた俺は思わず頭を抱えて呻いた。こんな事が誰かにバレでもしたら事だ。完全に中二病じゃないか。

 特にアイツにバレるのだけはマズイ。隣の家に住む俺の幼馴染のアイツ。
「陽ちゃーん。今週のジャンプ読ませて―」
「お前……窓から来るなって何度も……」
 まさに今、俺の部屋の窓を勝手に開け放って入ってきた、佐藤有希にはだけは――。

「あはは! ロボコ面白すぎ! あはは!」
 俺のベッドに我が物顔で寝っ転がってジャンプを読みながら、バカ笑いを上げているショートカットの中二女子。最近すっかり女らしくなった太ももが制服のスカートからチラチラと覗く様子は、思春期男子には目に毒すぎる。
「有希おまえさぁ……少しは恥じらいってもんがねぇのかよ。いや確かにロボコは面白いけどよ」
「別にいいじゃん。つーかクラスではちゃんと女子らしくしてるでしょうが。陽ちゃんも知ってるでしょ」
「まぁ……うん」

 そうなのだ。俺の部屋ではこんなざまだが、有希の学校での立ち居振る舞いは正に文武両道という感じで、男子女子問わずにファンが多いのである。それがなぜ、俺の部屋でだけ素を出しているのか。
 男として見られていないだけなのだろう。誕生日を迎えるまではそう思っていた。だが、魔王として一つの人生を生き抜いた記憶を持つ今ならばわかる。この幼馴染は、間違いなく俺に惚れている。俺だって吝かではない。前世は前世、今世は今世だ。

 ときおり俺にバレない様にこっそりと枕の匂いを嗅ぎ、ちらちらと意識させるように足を組み替える。思春期に入ってからは特に顕著だ。

「ねえねえ陽ちゃん。こんどの連休、イオンモールに遊びに行こうよ。欲しい物があるんだよね」
「なんで俺が買ってやる前提なんだよ。自分で買え」

 何気なく会話を続けながら、俺は考える。まだまだ人生は長い。その間、どうやって彼女に秘密を隠し通していくのかを。蘇ったのは記憶だけでは無いのだ。魔王の魂に宿る力の使い方。森羅万象を操る魔導術。神の肉体にすら迫る、肉体強化の秘法。使わなければ良いという問題ではない。例えば、有希の命に関わる様な自体ともなれば、俺はそれを行使する事に躊躇いすら持たないだろうから。

「陽ちゃん忘れてるの? ボク明日、誕生日だよ?」
「え……あっ……そうか。わかった。けどあんま高いモンは困るぞ。俺だって小遣い少ないんだからな」
「やったー」

 なんだろう。何故だかとてもそわそわする。魂を刷毛でくすぐられている様な……なんとも言い難い不可思議な感覚。次の瞬間、脳裏にかつての最期の記憶が鮮やかに蘇った。

『魔王……。なんでボクたちは、殺し合わなければなかったんだろうね』
『それがさだめだったのだ。システムに選ばれし魔王と勇者。そこに我らの意思は介在しない。所詮我らは、神の操り人形よ』
『こふっ……。ふふっ、でもボクを殺したのが魔王で良かった。もしまた生まれ変われるなら次は――』
『ごふっ……。逝ったか。俺も間もなく逝こう。貴様と同じ想いを抱いてな。また会おう、我が愛すべき永遠の好敵手よ――』
 
 死の間際、互いの刃に貫かれながら抱き合った好敵手の顔が――目の前の幼馴染に重なった。

「陽ちゃん? 急にボーっとしてどうしたの? もしかして貯金使い果たしてた? 別に来月でも――」
「有希」
「うん?」

  まじまじと有希の顔を見つめる。勇者とは似ても似つかない。そもそも世界が違うのだ。髪の色も目鼻立ちも似ているはずが無い。けれど、瞳に魔導力を集めて魂を観察してみれば一目瞭然だ。隔てられていた過去と現在が今、繋がった。

「明日が楽しみだな」
「うん? 出掛けるのは連休だけど……。えへへ、でもまぁいいや。ありがと陽ちゃん」

 はにかみながら俺を見つめる有希の笑顔を眺めながら、俺は先ほどまでの杞憂を振り払った。きっと明日からは、想像もつかない未来が俺たちを待っているだろう。
 この奇跡が偶然などあり得ない。何かしらの意図が必ず裏にあるのだ。それが俺たちにとって吉か凶かなど、もはや関係が無い。俺は再び彼女と出会えた。ならば今度は絶対に、奪わせはしない。それが例え神であろうとも。
0545第六十二回ワイスレ杯参加作品
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2023/08/05(土) 23:43:27.05ID:yeiEO1YZ
校舎裏の雑木林でタバコを吸っていたら、誰かが息を切らせて走ってきた。センコーにバレたと思ったけど、アタシは気にせずにいた。しかし
「火事だ!!」
「えっ」
 隠れて煙草を吸っていたアタシへ、誰かがそう叫んで走ってきた。思わず落としてしまったタバコを見てか、「わぁぁ!」なんて叫んで、私の事なんて構わずにバケツの水をぶっかけた。
「……そういう趣味なの?」
 それが、アタシこと椎名美鈴と北条義之の出会いだった。

 ★

 義之の事を、アタシはどうせ「綺麗事だけ言って消える人」。そう、荒んだ心で思っていた。案の定義之は「タバコはよくない」と注意したし、次の授業をサボろうとしてたアタシを連れて行こうといた。
「あーもうウッサイ!」
「しかしよぉ、タバコは寿命を縮めるだろ。授業も受けないと進級できないぜ?」
 追い払うのも面倒で、アタシはハッキリと「どうせもうすぐ死ぬ」と言った。言葉に詰まる義之に、続けて「もうほとんど目も見えてないけど、スカート履いてなかったからアンタが男だってわかった」とも告げた。当然義之は黙りこくっている。気にも留めず、アタシは「治らない病気なの」と、こういう時のために持ち歩いているメディカルアラートカードを見せた。「私は難病です」と他人へ簡単に教えられるカードだ。
 この難病の治療を医者は諦めていた。不幸中の幸いか、最後の時がくる直前までは体が動く病気だった。だからか、せめて最後の数年間を学生として過ごすようにと、登校許可をくれたのだ。「私には治せませんからどこへなりとも消えてください」と追い出されたようで嫌気がさす。もちろん沢山の人が心配したけど、アタシなりの短い命の使い方――吸ってみたかったタバコを吸って、授業をサボったりしていたら、両親も友達も誰もかも、アタシから離れていった。いつもいつも、綺麗事だけ抜かして。
 こいつだって、どうせ同じだろう。今にも”それっぽいこと”を言うだろう。だから先に言ってやる。「止まない雨はないっていうじゃん?」と。
「例えなのはわかるけど、アタシはその時が来る前に死ぬ。だから、余計な綺麗ごとで励まそうとしないで……難病のアタシを使って、自己満足に浸ろうとしないで」
 とことん跳ねのけてやったつもりだった。どうせ死ぬのだ。鼓動が弱まって、目も見えなくなって、衰弱して死ぬ。こんな真っ暗い世界での出会いなんて、どうでもいい。そう、どうでも……
「んじゃ、俺もサボるか〜」
「……は?」
「一本くれよ。どうせだから吸ってみたい」
「アンタ、さっきまでと言ってること違くない?」
「相手が相手だからな。誰もが一度は憧れる「秘密の悪行」ってやつだ」
 この時から、義之と二人で過ごす日々が始まった。

 ★

 それから、沢山の事を義之とやった。一人じゃ校舎裏でタバコを吹かしているだけだったけど、義之と二人だと、想像もつかない日々が待っていた。ずっと難病指定されて、病院に監禁されていたアタシには、この暗くなっていく世界が、とても輝いて見えた。生きている感覚に包まれて、楽しかった。
 だから、
「もう、いいよ」
 ”その時”が近づいていた。立ち上がるのが精いっぱいな程で、視力も無いに等しい。もう長くないことは、アタシが誰よりも知っていた。たぶん近いうちに、アタシは義之とお別れする。生きているうちに、大人たちが悪あがきをするからだ。アタシはそれを全て義之に話した。もう一緒にいられないから、せめて引き裂かれるなんてお別れは嫌だと願った。なのに朧げな視界の中で義之は笑った気がした。「まだ終わってない」と、最初にサボった時のような飄々とした口調で言った。
「お楽しみはこれからだぜ?」
 聞き返す暇もなく義之は私を抱き上げると、「逃げるか」と言った。アタシは、もう自分の命は闇に飲まれてもいい。けど、義之の未来だけは光り輝いていてほしい。
「アタシを連れ去ったら、義之の人生だってメチャクチャになるんだよ?」
「知るか。まぁ俺の酔狂を押し通すのは難しいことだけどよ、それがいいんだ。お前が離れたくないなら、なおさらな」
 頬を涙が伝った。駄目だと言わなくてはならないのに、気づくと義之の胸の中で泣きじゃくっていた。これからは、義之がアタシの目と足になってくれて、輝く世界へと連れて行ってくれる。最後の瞬間まで一緒にいてくれる。それがとても、嬉しかった。

 ★

 アタシはまだ生きている。今がどこで、何をしているのかはわからない。わかるはずもない。それらは全部、これから起こるのだから。
0546第六十二回ワイスレ杯参加作品
垢版 |
2023/08/05(土) 23:49:34.87ID:baGYjOYP
 光差し込まぬ洞窟の奥で、男が骸骨を見つめている。
 
「この洞窟の主はおぬしか。すまんが、しばらく邪魔するぞ」 
 男は骸骨の前にどさりと座り、頭を下げた。骸骨は簫を手にしており、その足元には琴がある。
「洞窟の主よ。あいにく巧みではないが、かの笑傲江湖のように我は友情を示そうぞ」
 男はぎこちなく琴を鳴らした。すると、上から何かが降ってくる。琴を鳴らす男の頭にちょうどよくぽすりと落ちる。男は投げつけられたものを拾い、中身を確認した。
「下手くそめ。だが、曲洋への友情を示そうという心根は評価してやる。それはたいそう貴重な秘伝書だ。やるから帰るがよい」
 洞窟に声が響く――男は歯を剥いて笑った。
「いやだ」
「なにっ」
 男は秘伝書を懐に入れて壁際に寄った。
「洞窟の主よ。我はここに来るまで駆けてきた。ちと休む」
 静寂を共に休息を取った男が次に目を開けると、目の前には飯が置かれている。
 ――洞窟に声を響かせる。
「それを食ったら出て行くがいい」
「いやだ」
 男は飯をいただきながら骸骨を見る。
「これも何かの縁だ。埋葬してやろう」
 食後に骸骨を抱えて外に出る男を追いかけてみれば、外は目も眩むような晴れ空が広がっていた。男は骸骨を草むらに放り込み、洞窟に戻っていく。

 骸骨のいない洞窟で秘伝書を読み、夜を迎えて、男はごろりと横になった。
「洞窟の主よ、我は眠る。曲洋が埋葬に恩を感じる心を持つ人物であると思うなら明朝も飯をくれたまえ」
 骸骨はもういないというのに就寝を宣言した男は、すぐに眠りについた。寝付きの良い男だ。さて、曲洋を愛する私としては、かように嗾けられたのでは無視できぬ。

「仕方のないやつ――あっ!」
 そろそろと男に近寄り、飯を置こうとすると、男は目を開けて私の腕を取り、内効の大きさを感じさせる声量で笑った。

「やあやあ、捕まえたぞ、我の曲洋!」
 男はそう言って貴き身の上を明かし、簫を私に差し出した。
「我はこの地方に隠遁せし賢者は残念ながら儚くなられたと聞き申したが、賢者には孫がいたのだとか。たいそう悪戯好きで人嫌い――間抜けで考えも浅く、良いところをあまり聞かぬが!」
「ええい、放っておけ!」
「だが、滅びし魔教の由緒正しき血統であり、なにより可愛い」
「はっ……」

 男は、意思の強さを感じさせる眼差しで、とびきりの遊び仲間を見つけたように笑うのだった。

「かような洞窟で悪戯をしておってもつまらぬぞ。我と共に、もっと広い盤上で踊らぬか?」

 へたくそな琴が鳴り、やがて簫がおずおずと音を添わせる。かくして、主従は出会ったのである。
 
0547ぷぅぎゃああああああ ◆Puuoono255oE
垢版 |
2023/08/06(日) 00:02:28.29ID:G5ihKg0/
第六十二回ワイスレ杯参加作品

>410
>412
>417
>419
>422
>426
>427
>428
>431
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>440
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>502
>505
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>512
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>535
>537
>539
>540
>543
>544
>545
>546

今回は五十三作品で頂点を競う!(`・ω・´)今回の特別ルールで修正は認めない! 早く寝なければ!
0549創る名無しに見る名無し
垢版 |
2023/08/06(日) 08:29:46.86ID:gCio6Yrj
修正は認めないというルールは今後も継続した方がいいな。
推敲を本気でやるようになって、作品の質が上がる気がする。
0550創る名無しに見る名無し
垢版 |
2023/08/06(日) 15:05:28.76ID:D1I784SN
>>546
>光差し込まぬ洞窟の奥で、男が骸骨を見つめている。

光差し込まぬ洞窟の奥なら暗闇であろうに
光差し込まぬのに見えるのか?と気になってしょうがないので
見つめるなら、せめて懐中電灯、松明等、何らかの光源を描写したほうがいいだろうな
0551創る名無しに見る名無し
垢版 |
2023/08/06(日) 15:09:05.66ID:D1I784SN
光差し込まぬ洞窟の奥で、男が持つライターの灯りで照らされた骸骨を見つめている

みたいなwww
そういう一つ一つのさりげない描写が文章にリアリティーを生む
0553創る名無しに見る名無し
垢版 |
2023/08/06(日) 16:05:02.02ID:gCio6Yrj
最近はライターも時代遅れになりつつあるので、現代ものではスマホ画面の灯りを使うようにしている。
0554創る名無しに見る名無し
垢版 |
2023/08/06(日) 16:21:09.01ID:D1I784SN
>かような洞窟で悪戯をしておってもつまらぬぞ

みたいな科白回しからライターやスマホの灯では時代に合ってないと認識した次第
0555創る名無しに見る名無し
垢版 |
2023/08/06(日) 20:34:15.23ID:L2SXJATg
締め切った当日の夕方に全作の寸評をスレッドにて公開! 同日の午後八時頃に順位の発表を行う!


お?

ワイさんどうかされました?
0557ぷぅぎゃああああああ ◆Puuoono255oE
垢版 |
2023/08/06(日) 22:21:19.82ID:G5ihKg0/
第六十二回ワイスレ杯全作品の寸評

>410
一レスには未来人と現代人、別の時間軸から訪れた政府関係者が出会って思惑を巡らせる!
命の遣り取りを匂わせているので血腥い展開に発展するのだろう!
少々、設定を詰め込み過ぎているきらいはあるが悪くない!

>412
容姿に自信が持てない主人公は先方の希望でお見合いをすることになった!
相手の男性も不細工! 本人はイケメンを主張した! 主人公を美人とも!
男性からすると見た目の美醜は主観であると云い、付き合えばわかると! わくわくする展開は設定に相応しい!

>417
高校での部活の勧誘から始まる出会い! 展開としては悪くないのだが些か力が入り過ぎた!
意味の重複や「製作、制作」の言葉が入り混じる! 推敲を重ねて文字数を削れば、
その出会いからどのような結果を齎したのか! 読者の期待値をもう少し上げることができたように思う!

>419
今回のお題は人間を対象にした出会いである! この話に登場する人物は人間なのだろうか!
あとバッジが三個と思われて女性の疑いが晴れた! 果たしてそうだろうか! 女性はバッヂを無くした! 主人公はバッジを拾った!
もう一人、彼がバッジを所有していたとして、ここに出てくるバッジは二個! 三個とは限らない! 少し展開に無理があるのでは!

>42
開店前のラーメン屋の行列を利用した似顔絵師の強かさに目がいく! 主人公は騙されて並んだ!
行列の先頭の八人はラーメン目的で、主人公は九番目にいたのだろう! 作中には書かれていないが想像はできる!
その後、主人公はネットで検索して他の似顔絵を楽しむ! が、最新の情報は出なくなり、現地にいくことに! 高齢女性とあって牽引力が弱いような!

>426
夏場のハロウィン! いきなり主人公の元に押し掛けてきた少女は何者なのだろうか!
愉快な会話のあとなので首吊り用の輪にはそれなりのインパクトがあった!
少女は明日もくると云う! 自殺を阻止する行動に思える! 故に主人公と少女の関係が明かされるであろう後半に期待が持てる!

>427
既視感のある話ではあるが、それよりもオリジナル要素が目を引く! ヒーローを引退した主人公は伴侶を求める!
しかし、その意図に反して過去の名声に群がる者ばかりが集まってきた! 嫌悪感を覚えるところに、
かつての好敵手である悪役が着け狙う! その公平な態度に惹かれ、主人公は伴侶に選んだ! LGBTsに踏み込んだ内容が今風でもある!

>428
現実の仕事に疲れ果てた主人公が狭間の世界に呼び出された! 並行世界の自分は女性で魔王との戦いに明け暮れていた!
しかも時を巻き戻せる能力まで有して、別世界の自分に助けを求める! 良心の回路役とあるが善悪の区別が曖昧になった者が、
果たして大人しく助言に耳を傾けるだろうか! そのような疑念は残るが導入部分としては興味を惹かれる! 少し文章に拙いところはあるが!
0558ぷぅぎゃああああああ ◆Puuoono255oE
垢版 |
2023/08/06(日) 22:22:04.44ID:G5ihKg0/
>431
殺害を心から愉しむ者が登場する! 虫から動物、そして人間に欲望の牙を剥く! ただし捕まりたくはない!
樹海をうろついていた時、偶然に少年と出会う! 自殺願望があるので一石二鳥! 少年は殺されることに同意した!
その前に両親の殺害を依頼する! 目的を果たしたあとは二人で組み、裁かれなかった者達に鉄槌を下す者に! 悪人による正義執行に熱い展開が期待できる!

>435
ファンタジーなのだろうか! 部族の話は取って付けたような感じはするが、少女と少年の設定は活きていた!
目の見えない少女は聴力が飛躍的に伸びた! 声を出せない少年は目からの情報量が凄まじい! その二人は敵対関係にあると思いきや、
手を繋ぐことが切っ掛けとなってお互いの足りない部分を知り、世界は一気に広がった! 完結でもおかしくない出来はお題を活かし切ったとは云い難い!

>440
主人公は働かない父親に代わって物乞いで日銭を稼いでいた! あまりの空腹に耐えられず、貴族の家に忍び込む!
そこで自分と瓜二つの少年と出会う! そこで一か月の代役を引き受けることに! なぜ、容姿がそっくりなのか!
病死した母親の本当の父親が貴族、と云う考えが頭に浮かぶ! フィアンセについては想像する余地が少ないこともあって少し魅力に欠けた!

>443
勇者の一人と女騎士は謂れのない戦いを強いられる! 現代日本からきたと思われる「クッコロやらいん」が酔った設定で上手く伝えていた!
圧倒的な力の差を見せつけられて女騎士は辛酸を舐める! 勇者を倒すと声に出して誓う! この世界の勇者の目的が気になる!
勇者を倒すことで生じる弊害はないのだろうか! 国の威光に逆らうと騎士の地位が危うくなるのでは! それ等を踏まえて先の展開が気になった!

>445
指揮官の目を介して語られる軍隊物! それはいいのだが、指揮官と小隊長の関係が気になる! 接点となる部分は作中に書かれていなかった!
小隊長が名乗っても言葉のニュアンスを除けばおかしなところはなかった! この二人にどのような背景があるのだろうか!
匂わせている部分は他にないので想像の余地が少ない! ツカミとしては弱く、もう少し言動で伝えても良かったのでは!

>447
都市伝説のメリーさんと思わせて話が進む! 怪異の類いではなくて普通の大人の女性であった!
その後、どのような展開を見せるのか! 今で着いてきた女性は語る! 主人公に声を掛けた理由を!
持っていた布バッグから取り出した物を見て主人公は態度を硬化させた! まさかの訪問販売! ショートショートのような切れはあるが、話が終わっていた! 設定はどこに!

>448
この話は内容で少し矛盾を孕んでいるように思えた! テオの絵は画商の父親の手腕もあって売れていた! 高名な画家の絵を模倣したようなスタイルと、
わかる者にはわかる! 後ろめたさからテオはクェルクンと云う偽名を使って画家の活動をしていた! 実績を伏せて美術学校に通うが名前で露見するような気がする!
学校で出会ったオデットはテオを尊敬の目で見ていた! クェルクンを蛇蝎のように嫌う! 模倣で金儲けが芸術を穢す行為と断罪する! それはテオの活動の方なのでは!
0559ぷぅぎゃああああああ ◆Puuoono255oE
垢版 |
2023/08/06(日) 22:22:54.13ID:G5ihKg0/
>449
小洒落たバーの一場面ではなかった! ある酒を呑むことで本人が見たいものを見られると云う! アルコール度数の高い酒で酩酊した末に夢を見るのだろうか!
その原理はよくわからないが過去の場面が蘇る! 消去と云う言葉には意味があった! 義体化は未来を思わせる! 造語ではあるが義眼、義足、義手から想像して、
作り物の体であるサイボーグが頭に浮かんだ! 攻殻機動隊の予備知識がなくても思いつく! 問題は義体化していない顔は頭部まで含むのか否か! 頭部まで義体化していると酒の効果がないように思える!

>451
文章は悪くない! すらすらと読める! 既存の作品に頼る必要はあったのか! タイトルだけでは話の内容がわからない!
澤井君が時間を掛けていた理由も内容にある! 鼻毛や腋毛を使った技の数々を異性に説明するのは厳しい!
その状態も漫画の内容を知らないとわからない! かなり読者を選ぶ内容なので加点は少ない!

>456
試験会場での緊張感を伴う場面で主人公の心情が面白おかしく書かれていた! 最後に行き着く答えがカンニング!
話の流れとして理解できる! 隣にいた人物の解答用紙を盗み見て自分と似たような状況にテストを投げた! 反面、得るものもあった!
選択式の数字から「にじさんじ」のグループの立ち上げを持ち掛けた! 実際にいるライバーグループなのでマズイと感じる! カンニングの時に思い付いた名なので印象が悪い!

>459
文章は読み易くて話の流れがよくわかる! 姫の扱いが少しまどろっこしい! なぜ生かす必要があるのだろうか! 血筋を完全に絶たないと王国復活を企てる勢力を生むのでは!
娼館に連れていった理由もはっきりしない! 殿下は自分のものと云いながら姫を突き放す! 今のところ、価値らしいものが見えて来ない!
姫が一人前の娼婦となって、それでどうなるのだろう! 王政と関わりのない話と殿下の関心の薄さが相まってあまり没入感を得られなかった!

>460
平安時代の話! 想像と史実が上手く連動していた! 実在した彰子との遣り取りを興味深く読んだ!
仕えている相手によって主人公の素性も薄っすらと窺える! ある男との因縁を絡めて物語にすることを決意する!
その名は光源氏! 同時に主人公が紫式部と仄めかす! 一レスながらも読み応えのある話であった!

>463
ふむ、前回のワイスレの寸評と今回の話を繋げたのか! 二人の遣り取りは想像上のものではあるが、
書かれている内容に噓はない! 最後の映画の宣伝も現実に告知されていた!
これでツカミはオッケーなのだろうか! 漫才を見ているような気分にはなった! 作者が楽しんで書いたことは伝わる!

>470
現実を誇張したように野良猫が多い! 主人公は幼いように思うが一人で動物園に行ける! そこで出会った園長と会って不思議なボタンを押した!
そのボタンの作用で動物園にしか猫がいなくなる! 動物園に元々いた動物は野に放たれる! 二度目の現実でマヌルネコやライオンが近所を歩いていた!
ここで引っ掛かる! 動物園にしか猫がいなくなっても所詮は猫で珍しいものではないのでは! 動物園の動物が近所にいる方が珍しいと思うのだが!
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