「な、なんや.......」

驚きが大きすぎる。数度目を瞬かせる。

目が覚めたら部屋の配置がちょっと変わってたのはまあ些細なことだ。それよりも適当にニュースでも見ようと思ってつけたテレビの方が問題だった。やばかった。
内容自体は全く以ってそんな変なものじゃない、天気予報も犯罪報道も美味しい店の特集も全部ありきたりな典型に決まってる。
でもなおかしいと思うんだ。なんでニュースキャスターも街ゆく人々も皆被り物してるんだろうって。それは身の周りに溢れる日用品であったり様々な機器であったり、いろいろあるが、とにかくおかしい。強制ハロウィーン?
本とか傘とかエコバッグの頭してる人いるし。いや待てそれ襖.....え、平ら........どうやって被って...........?

「あかんどういうこっちゃ」

部屋の棚にはさも当たり前のように缶詰が置いてあった。でかい缶詰。全く見覚えのないインテリアに首を180度くらい捻れそう。や、フクロウじゃないし無理か。

それはかなり軽量で、しかし軽くたたいても別にへこんだり傷がついたりはしない。ぬいぐるみでもなく、発泡スチロールとかの類でもなく。プラスチックか?ひっくり返したり回したりしていると、缶詰のプルトップがついていない方(つまり底)に不自然な裂け目を発見した。
それを広げると、中が空洞になっていることが分かる。

なんとなく先程テレビで被り物をしていた人たちを見たばかりなので、試しに頭を突っ込んでみた。

「お....おお」

するとどうだろう。一面に広がる視界は少々不透明だったが、マジックミラーでできているようにしっかり外の景色が判別できる。
割と息苦しいけどこれはマスクをつけてるときに似ていた。小さい穴が空いているのかと思えばそうではない謎素材。何だ?分からんな。