スキル……これは魔法が使えたり身体能力が上がったり、物の名前や性能が見ただけでわかったりするというものだった。これはファンタジー小説やゲームによく出てくるやつなのですぐに理解できた。物の名前とかがわかるのは鑑定のスキルだろう。

 魔法か……欲しい……小説やゲームの世界のように無双したい。けど、完全装備の自衛隊が壊滅するようなダンジョンなんて怖くて入る勇気なんてない。そもそも封鎖されていて入れない。

 それからは海外の情報でダンジョンがどれほど危険なのか思い知らされることとなり、ダンジョンに入ろうなんて微塵も思わなくなった。

 そして2年が経った今でも各国はこぞってダンジョンの中に入っていっている。
 これはスキル書以外にも理由があるんだけど、俺には関係ないからな。欲の塊の人間は勝手にダンジョンに挑んで死ねばいいさ。

 陸上自衛隊なんてあまりの犠牲の多さに、ダンジョンに行かさられるのが嫌で辞めていく奴が多くて人手不足らしい。国防そっちのけで欲に駆られやがってさ、いま他国が攻めてきたらどうすんだよ。俺のニートで平和な生活が終わっちゃうだろ? しっかりしろよ政治家。

 まあそんな世間とは隔離された生活を4年間続け、その間は両親が残してくれたこの広い家に俺は一人で暮らし、食糧や欲しい物はネットで手に入れ、人肌が恋しくなった時はそういうお店に行ったりしてスッキリして、社畜時代に貯めてた貯金と両親が残した遺産を食い潰しながら俺は生きていた。

 預金残高を見てまだ大丈夫、まだ大丈夫と自分に言い聞かせながら……そう、この日までは。