今日の日本では、寄生虫病にかかる人は少なくなりました。ですが、海外ではとても多くの人が寄生虫病にかかり、そして命を落としています。寄生虫の恐ろしさを知っていただくため、いくつかの例をご紹介いたしましょう。

寄生虫の中には、脳に寄生するものが数多くあり、有鉤嚢虫(ゆうこうのうちゅう)はその一つです。有鉤嚢虫は、有鉤条虫(ゆうこうじょうちゅう)(サナダムシの一種)の幼虫で、ブタに寄生しています。人がそのようなブタの肉を十分加熱せずに食べた場合、腸の中で成虫(有鉤条虫)となり、糞便とともに虫卵を体外に排出することになります。この虫卵に汚染された水や食品を摂取することにより、ブタだけでなく人も感染し、体内で有鉤嚢虫になります。有鉤嚢虫は体の様々な場所に寄生しますが、脳に寄生することもあります。多数の虫卵を摂取することにより、脳が虫だらけになっていることがあります。有鉤嚢虫が脳に寄生すると、体が痙攣したり、意識を失ったり、失明したり、場合によっては死亡することがあります。有鉤嚢虫症は、他の人の大便が原因となる以外にも、自分の体内に寄生している有鉤条虫からうつってしまうこともあります。