ある大学生の日記
二〇二〇年十月七日
今日私は死ぬことにします。今日に至るまで、私は人間として許されないことばかり行ってきました。それに対する最大限の償いです。今までお世話になった人達に心から感謝いたします。ありがとうございました。そして被害者の方々、遺族の方々には大変辛い思いをさせてしまい申し訳ございませんでした。さようなら。 二〇一八年四月八日
今日は、大学の入学式だった。ツイッターで繋がった同大学の新入生と駅で待ち合わせて、会場に向かった。そいつは、身長が180近くあって顔も普通にかっこ良かった。女子と喋るだけで一大イベントの十八年間童貞を貫き通してきた俺とは、別世界の生き物だろう。しかし俺もしっかり大学デビュー準備をしてきた。まず髪を明るい茶色にして、渋谷でよく分からない服をそのままマネキン買いして(服は今までいつもお母さんがしまむらで買ってきた)、ドンキで一番安い香水をつけてきた。これでとりあえず見た目はオッケーだ。しかし一番重要な事を忘れていた。それは、コミュ力だ。そいつは、高身長イケメンなだけでなく、コミュ力も抜群に高かった。俺は、圧倒されつつもなんとか陽キャの振りして切り抜けた。これだけは、お金ではどうすることも出来なかった。今日は何とかなったが、女子と話すとなったらもう終わりである。手は震えるし、声も震える。そうなれば一瞬で「こいつ陽キャのふりした童貞陰キャじゃん(笑)」と思われ、俺の華々しい大学生活は終わりを迎えてしまう。どうすれば・・・。 二〇一八年四月十四日
今日は、新入生セミナーだった。この授業は、新一年生が三十人ずつに分けられ担当教授から研究の基礎を教わる。生徒からすれば、同学科の友達を作る格好のチャンスだ。俺もそれは理解していた。入学式に一緒に行った奴とは、別のクラスになってしまい、またぼっちからのスタートである。まあ何とかなるだろうと思いつつ教室に入ると、そこにはすでにみんなで楽しく話している奴らの姿があった。「え?初回授業なのになんでみんな仲良くなってるの?」と困惑しつつ、席に着いた。そこには、誰か話しかけてくれるだろうという甘い考えがあった。しかしその考えは簡単に崩れ去った。誰も話しかけてくれなかった。自分から話しかけようとも思ったが、見るからに陽キャな奴ばかりでハードルが高すぎた。陰キャっぽい奴もいたが、自分がまた陰キャグループに属してしまうことを恐れ話しかけなかった。この結果、華の大学生活というレールからは完全に外れたと思う。 もぐもぐもぐもぐもぐもぐもぐもぐもぐもぐもぐもぐもぐもぐもぐもぐもぐもぐもぐもぐもぐもぐもぐもぐ もぐもぐもぐもぐもぐもぐもぐもぐもぐもぐもぐもぐもぐもぐもぐもぐもぐもぐもぐもぐもぐもぐもぐもぐ 「何だ?こハンバーグ!噛み締める程に旨味が出てくる・・・」 「こ、これは、タコや!タコが入っとるんや!ハンバーグにタコ焼きが入っとるんや!柏原はん、なんちゅう事やりおるんや・・・」 「フ、フハハハハハハハ!」
「どうだ痔瘻。お前にはこのタコ焼きの意味がわかるか?」
「このたこ焼きこそが新郎新婦を思いやる気持ちを表した物だという事にな!
「上辺だけの安っぽい料理に執着したお前の完全な負けなのだ!」
「割腹せい!」