たこやき
たこ焼きが食べたい
そう思って僕は近所のおばさんの店でたこ焼きを買った 出来たての久々の食事と近くの爪楊枝入れから一本の木の棒をもらい食べる
いつもの味、かわらない故郷の味だ
最後のたこやきをたべようと爪楊枝をと取ろうとしたら落としてしまったのでもう一本もらう
それを突き刺した時、たこやきがすっくと立ち上がった 湯気が立ち上がっているという表現があるがそうではない
子供が書いたような棒状の鳥の足が、たこやきの丸い体を持ち上げているのだ うわっ
僕は驚いてたこやきの器を落としてしまった
すると爪楊枝が刺さったままのたこやきがやおら屈伸したかと思うと、小さくジャンプして器から逃げ出した 数秒放心したが、僕は好奇心からか恐怖心からかそれを追いかけずにはいられなかった
まて
一瞬たこやきは止まったが、すぐに走って僕から逃げた
思ったより早い それでも小さな体、運動不足の僕でも流石に追いつける
そう思っていたのだがブロック塀の穴やガードレールの下、看板の隙間を通るので意外と追いつけない
かといって見失うかと言われればそうでもない
見失ったかときょろきょろしているとひょっこりとたこやきのソースのかかった部分が隙間から覗いているのだ >>7まだだ、まだ終わらんよ
僕はだんだん楽しくなってきた
例えるなら昔子供の頃、イモリを無中で追いかけていたあの気持ちに似ているだろう、あの思いを年甲斐もなく感じていた 排水溝の下を通ったと思ったときには隙間から覗き込み
ブロック塀のヘリを渡っていったかと思っていたらジャンプして確認し
大きなジャングルジムを登ったと思ったら僕も一緒に登った どうやっているのか走らないが驚くほど器用にその足で高いところに登ってみせる。
きっと僕を傍から見たら
間抜けな顔をしながら排水溝を舐め回すように見て
落とし物などあるわけがなさそうな高い塀の上を覗き込み
子供のようにジャングルジムを登る姿に見えるはずだ
間違いなく警察が花丸を上げたくなるほどの不審者だろう
僕もそんな奴が家族だったら知らない人のふりをする
問題はそれが自分だってことだ まあ今となってはそう思うのであってその時はよくわからない生物?を追いかけるのに必死だったわけだが さっきまでずっと逃げていた生物がその歩みを止めた
僕はそれを捕まえる前に、何故急に逃げるのをやめたのかが気になって立ち止まった
気がつくと自分が見たことない場所にいることに気がつく