0683創る名無しに見る名無し
2019/08/11(日) 18:23:08.05ID:+obLPWswそこがシンシの実家のある町だ。
人気が少ない駅の『昇降場<プラットフォーム>』の椅子に腰掛けて、呆っと馬車の到着を待つシンシの、
直ぐ隣から人影が差す。
シンシが隣を見上げると、そこに居たのはヤナキの呪詛だった。
「来たのか、ヤナキ……」
「ああ」
ヤナキの呪詛は短く、それだけ言った後は沈黙した。
シンシは色々と言いたい事や聞きたい事があったが、ここは大人しく黙っている事にした。
やがて馬車が到着して、疎らに人が乗り降りする。
「えェー、第五魔法都市ボルガ東駅ィ、第五魔法都市ボルガ東駅でェ御座イマす。
乗客の皆様ァ、お忘れ物の無い様に、御注意願イマす。
この列車は東行き、東行きで、御座イマす。
お乗り間違いの無い様に、お気を付け下さいませ」
シンシは徐に立ち上がって、ヤナキの呪詛に呼び掛けた。
「それじゃ、行こうぜ」
2人は列車に乗り込み、空いた席に座って、オキニリ町に着くまで一休み。
途中、車掌が切符の確認に来たが、ヤナキの呪詛は無視された。
シンシは彼を揶揄う。
「只乗りかよ。
便利だな」
「シンシも死んでみるか?」
「はは、遠慮しとく」
列車は東へ、東へ。
そしてオキニリ町に停車する。