桐山の悲鳴じみた声に振り向けば、マクシミリアンが最初の餌食になりかけていた。
四肢のパーツを破損し、まともに銃撃を放つこともできずに、迫り来るミサイルは直撃コース。
あと数秒もすれば、そこに転がっているベンケイと同じ末路をたどることだろう。
しかし、数秒あれば十分だ。

「私が居るわ、桐山先輩」

微塵改の腰部からワイヤーアンカーが射出され、動けないマクシミリアンを絡め取る。
そのまま自分の方へ引きずり込み、三式白兵防盾の下にマクシミリアンを収めた。
代わりに無防備になった微塵改は、ミサイルの直撃を受けた。
左腕のパーツが弾け飛び、耐久バーが大きく削れる。装甲特化型の微塵改ですら、このダメージだ。
マクシミリアンやノイジークラウンが受ければひとたまりもあるまい。

「桐山先輩。私ね、今とっても楽しいの。
 死力を尽くしてベンケイを打ち倒し、次の相手は全国区の選手。しかも全力のぶつかり合いよ。
 次はなにをしてくるのかしら。どうやって、それを攻略しようかしら」

微塵改は残った片腕をマクシミリアンの胴体に回し、抱き締める。
脚部を破損しまともに立てなくなったマクシミリアンを、微塵改の巨体で固定した格好だ。
機動力はゼロに等しいが、これで照準は安定するはずだ。

「あっけなくやられて、あとはずっと観戦席で指を咥えながら見ているなんて、御免だわ。
 こんな楽しい戦い、簡単に終わらせたくない。……もう一度、みんなで勝ちたい」

実弾系や爆撃は届く前に撃墜される。ビーム系は当たったとしても威力が足りない。
オリオンスペクターに対して決定打となり得るとしたら、それはマクシミリアンのレーザー刃だ。

「足が壊れたなら私が背負うわ。攻撃は全部私が受ける。桐山先輩は攻撃に集中して。
 まだ実装されていないけれど……マシンナリー同士の『合体』を、運営に見せつけてやりましょう」


【ギリギリですみません、過去編乙かれです。マクシミリアンと合体して、土台兼壁になる】