スマートフォンが古い友人からの電話を告げて、に私はまのぬけたアクション映画の同学年再生を停めた

「よお。どした。元気か」電話の向こうに私は言った
「おったな。俺、所帯持つわ」古い友人は言った
自分の顔が、そいつとよくあわせていた悪い笑い顔になるのがわかった。いろんなことが頭の中に一気に湧き上がった
「うっひょおめでとう。よくやった」言った私の声がうらがえっていた
その古い友人は、30をとうにまわっても、平気で女子高生と付き合ってはふられていた、私をはるかに上回るろくでなしだった

「いやー、ながかったわー。おまえは結婚せんの?」
私は苦笑した。もう一歩を踏み出せないでいる女性の笑顔が浮かんだ
「ぼくは結婚しないんじゃない。できないんだ」
「なんか欠陥でもあっとや?」ふるさとのことば
「性格と生活力に」
古い友人は笑った「なんとかなるもんやじ」
「そうかもしれない」私の中の、女性の笑顔がより明るくなった

「式には来るけ?」
「やめとくよ。もうそっちの知り合いはわからん。まけど、腹の底から言うんだけど、おめでとう」
「ありがとう。ほんとありがとう。また風俗一緒に行こやい」
「嫁さんになぐられろ」
古い友人は声を出して笑った「じゃあな。しぶとく生きろ」
「あい。くれぐれも、おしあわせに」私は言った
「ありがとな。じゃまたなー」うっとうしくて苦笑いが出るくらい明るい声で、古い友人が言った
「また」私は笑って短く締めた

電話を終わり、私はまのぬけたアクション映画の1カットを映したモニターの画面を眺めた
何度も観た、まのぬけた主人公が、仲間にたすけられまくりながら、ぎりぎりのところで踏ん張ってよいことをする、まのぬけたアクション映画だった
画面の、ハンサムだがまのぬけた主人公に笑いかけ、私はスマートフォンの電話帳から、もう一歩を踏み出せないでいる女性の番号をタッチした