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非リレー型バトルロワイアルを発表するスレ part37 [無断転載禁止]©2ch.net

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0001創る名無しに見る名無し
垢版 |
2016/01/12(火) 00:10:53.13ID:Tf6AlFiL
1999年刊行された小説「バトル・ロワイアル」

現在、様々な板で行われている通称「パロロワ」はリレー小説の形をとっておりますが
この企画では非リレーの形で進めていきます。

基本ルール
・書き手はトリップ必須です。
・作品投下前に登場キャラクター、登場人数、主催者、舞台などを発表するかは書き手におまかせです。
・作品投下前と投下後にはその意思表示をお願いします。
・非リレーなので全ての内容を決めるのは書き手。ロワに準ずるSSであればどのような形式、展開であろうと問いません。
・非リレーの良さを出すための、ルール改変は可能です。
・誰が、どんなロワでも書いてよし!を合言葉にしましょう。
・ロワ名を「〜ロワイアル」とつけるようになっています。
  〜氏のロワは面白いでは、少し話題が振りにくいのでAロワ、Bロワなんでもいいのでロワ名をつけてもらえると助かります。
・完結は3日後だろうが5年後だろうが私は一向に構わんッッッ!!

前スレ
非リレー型バトルロワイアルを発表するスレ part36
http://hayabusa6.2ch.net/test/read.cgi/mitemite/1425485657/

非リレー型バトルロワイアルwiki
ttp://www26.atwiki.jp/anirowakojinn/pages/1.html
0051 ◆JqSWBMnSnWiX
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2016/03/09(水) 00:23:07.28ID:2LEgikTE
こんばんは
今日からここで非リレーを書かせていただこうと思っています、これからよろしくお願いいたします
目標は毎週更新と、完結する頃には文章力の向上を
OPのみ、投下します
0052第零話『オープニング』 ◆JqSWBMnSnWiX
垢版 |
2016/03/09(水) 00:26:24.66ID:2LEgikTE
男と女がいる。
男は緑色のスーツに身を包み、分厚いレンズの眼鏡をかけている。
女は黒のコートを纏い、髪を腰まで垂らしている。
「上手く行くでしょうか」
と男が不安そうに言った。
「何を不安がる?首輪がある、『ジョーカー』がいる、『エンペラー』がある。これだけ準備して、お前はいったい何を不安がるんだ、愛すべき同志よ」
「それでも彼らなら踏破するかもしれない。それだけの逸材を揃えたと自負しています」
「ならば何も問題はない。それだけの難行を突破した猛者ならば」
私の相手に相応しい、と女は獰猛に笑った。
頼もしい、と男も笑った。
「あなたという強力な同志が出来たことは、私の短い人生で一番の幸運なのかもしれません。何しろ、こと他者の殺害において、あなたの右に出る者はいない」
「まあ、だからこそ私はジョーカーとして殺し合いに参加することはできないんだがな。私が参加するということ、それはつまり、参加者の全滅エンドということなのだから」
大言壮語だと誰もが思うだろう。が、二人の間ではそれは今更証明する必要もない常識だった。
「だから弟子にですか」
「まあ、愛すべき弟子ならばそれほどワンサイドゲームにならないだろう。それに私はあくまで殺害者。防衛者ではない。依頼は全て成功してきたが、依頼者を全て守ってきたわけではない。私が参加者に敗北して愛すべき同志が死ぬ可能性も十分にある」
「……手は抜かないでくださいね」
「勿論。十全は尽くすさ」
では、そろそろ始めましょう。と、男は言った。
ああ、はじめようと女は笑った。



『今から君たちに殺し合いをしてもらう』
ああ、またかと女は思った。


「何故、君みたいな小さい子がこんなところにいるんだい?」
部屋の中にはロッカーがいくつかと、シャワー室が二つ。
そして、自分と筋肉質の若い男。
ここは、更衣室だ。
0053第零話『オープニング』 ◆JqSWBMnSnWiX
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2016/03/09(水) 00:27:18.62ID:2LEgikTE
男子用でも女子用でもないが、自分以外に使っているのはみんな男なので、どちらかというと悪いのは自分なのか。
「そりゃあ私が参加者だからだよ。出るのはお前の後だから、戦うことはないけど」
「僕が言いたいのは」
と、男は続けた。
「何故、君が闘技場に出るんだい?」
「何でだと思う?」
と、私は言い返す。
「……下卑た理由しか思いつかないな」
「それ、本人の前で言う?」
今のは、ちょっと意地が悪すぎたな、と思う。
年齢はともかく、闘士としては自分のほうが先輩なのだから、もっと大人な対応を。
「……すまん、確かに不謹慎だったな」
「……へえ、変わってるね、あんた」
てっきり怒ると思ったのに、まさか謝られるとは。
自分でも生意気だと思う態度に、真摯な対応をするこの男は、何故こんな地下にいるのか。
少し興味が湧いた。
「あんたはさ、なんでこの闘技場に出るわけ。はっきり言って場違いだよ」
「お金さ。僕みたいな若者が普通に働いても絶対に稼げないような、そんな額が必要なんだ」
その言い方は、と私は思う。
「誰かのためなんだね?」
「妹だ。年は、たぶん君とおなじくらい。病気なんだ」
世界には、こんな男もいるのか。
初めて見るタイプだった。
「今日の戦いが終わったら、ちょっと話さない?先輩として色々アドバイスしてあげる」
「君は、僕の後だったね。……もし、君が怪我をしそうになったら、助けに入る」
「私の試合まであんたが立ってたらね」
そこで会話が終わって、男は更衣室を出て、闘技場へと歩いて行った。
「そういえば、名前聞いてなかったな」
優しい男だ、と思う。
でもだからこそ長生きできるタイプではない。
この闘技場で闘わされる相手はそんじょそこらの相手ではない。
元軍人、元極道、元プロレスラー。これに当たれば、まだ幸運だ。彼らは、格闘のプロだが、慣れないうちは、まだ動きに迷いがある。
弱った相手の体をめちゃくちゃにして、相手を殺す覚悟がない。
0054第零話『オープニング』 ◆JqSWBMnSnWiX
垢版 |
2016/03/09(水) 00:28:37.54ID:2LEgikTE
相手が死ぬまで戦いを続行する、闘技場のルールに精神が追いつかない。
「運が悪いと、しょっぱなから人外だからねえ。猪とか、虎とか、熊とか」
奴らは、そういう葛藤がない。野生とは、それだけ恐ろしい。
そういうのと当たって、死んでいく男は何度も見てきた。
同情はするが、助けようとは思わない。
「だって、わたし運営(こっち)側だし」
自分は捨て子で、拾ってくれたのはここの闘技場の経営者で、今よりもっと幼い頃から余興として、闘技場に参加してきた。
5分経った――そろそろ行こう。

歓声が鳴り響いている。
自分へ、ではない。
ちょうど今決定された闘技場の勝者へと、熱気が注がれている。
筋肉質の若い男は、息こそ上がっているが、目だった外傷は無い。
中央には、柔道着を着た大男が大の字で倒れ、はだけた胴着の下に文字通り、大穴が開いていた。
「へえ、やるじゃん」
あれはたぶん、一撃で殺した傷だ。
この男は、最初の『相手を殺す』というハードルをクリアした。
彼はこちらに気が付き、近づいてくる。
「なんだ、てっきりボクシングジムとか、空手の道場に通っているんだと思ってた。でもあれ、そういうのじゃできる傷じゃないよね」
「僕は、無双八拳流だ」
聞いたことがない流派だ。しかし中国ならともかく、現代日本にこんな暗殺拳まがいのものがあるとは。
「で、あんたはそこの師範代とかそんな感じなわけ」
「いいや、道場には僕より強い者が3人いた。師範代なんて、とてもとても」
「それはまた、面白い話だね」
私は笑う。
闘争心が擽られる。
ああ、この男は良い奴だ。でも、私は良い奴じゃないし、良い奴になろうとも思わない。
「んじゃあ、次は私の番だ。ただの冷やかしじゃないことを示してやる」
「危なくなったら、すぐ助けに入る」
「いや、それ失格だから。あんたそんなことしたらお金貰えないよ」
「君みたいな小さい子が怪我するところを見過ごせるわけないだろ」
「損な生き方だね」
0055第零話『オープニング』 ◆JqSWBMnSnWiX
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2016/03/09(水) 00:29:03.89ID:2LEgikTE
じゃあかすり傷も負わずに、敵を倒さなければ。
「それに、ここは死ぬまでやるルールだ。私は今から人を殺すかもしれないんだよ?」
「……それも止める。たとえ君を怪我させてもな」
本当に損な生き方だ。
「あんた名前何て言うの?」
「国枝蓮根」
「蓮根……れんこん?」
「変な名前だと思うかも知れないけれど、本名なんだ。笑いたきゃ笑えばいいさ」
その拗ねたような口調が今までの優等生ぶった態度とのギャップで、ちょっと面白い。
「私の名前はユウキ。苗字はなくて、ただのユウキ」
「色々複雑な事情のようだね」
「それ、本人に直接言う?」
すまない、と蓮根が謝る前に、私は闘技場へと足を踏み入れた。
その瞬間
「―――――――――――――――――――――――――――――――――――ォォオ!」
さっきまでの蓮根に向けられたそれの比ではない、歓声が私に注がれる。
後ろから蓮根の戸惑う声が聞こえて、ますます私の心を喜ばせる。
そうだ、私はすごいんだ、すごいユウキちゃんだ。
と、闘技場の中央に移動した私に、名ばかりの審判が話しかける。
それに適当に対応する。
聞かれることは毎回そう変わんないし。
好きな食べ物、嫌いな食べ物、好きなタイプ、嫌いなタイプ。
一回マジセクハラをかましてきた奴がいたから、ぶっ殺してやったこともあったが、結果的にお客様に受けたので、OKだった。
お客様は大抵金持ちで、血に飢えている。
そうしている間に、私の対戦相手が闘技場に現れる。
「――ライオン、か」
それも大きい、2メートル、いや3メートル。サバンナにはこんなでかいライオンがいるのか、世界は広い。
ライオンはぐるぐる、と喉を震わせた。闘技場の猛獣は、普段から人の肉を喰わせ、人に対する執着を強めている。そのうえ、本番三日前から、エサを抜くので、生まれるのは、空腹で人肉大好きな肉食獣だ。
後ろで駆ける音がする。きっと蓮根が私を守ろうとしているのだ。
落ちつけよ、と思う。
たぶん、蓮根は私の相手は私と同じくらいの年齢の子供で行われるのはキャットファイト紛いの戦い、もしくは大の男に私が一方的にぼこられるリンチ劇、そんなことを想像していたのだろう。
0056第零話『オープニング』 ◆JqSWBMnSnWiX
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2016/03/09(水) 00:29:33.00ID:2LEgikTE
急がねえとな、とも思う。
蓮根が戦いを邪魔する前に、傷を負わずに、このライオンを殺さねば。
そう、難しい話ではない。
だって私は、こういう猛獣相手に、7年間無敗だったのだから。
私は地を蹴って、ライオンに躍りかかった。
歓声が、更に大きくなる。
私の戦う理由はこれだ。
大勢の観客の前で、自分の最強を示すことが、私にとっては何よりの娯楽だ。
ああ、もっと拍手を、もっと歓声を。
そして称えろ、私の強さを!

世界は暗転する。

気が付けば、大広間のような場所にいた。
「……?」
何が起こった、と辺りを見回す。
幾多の人間がそこに居て、私と同じように周囲をうろうろと見渡している。
いや、問題はそれだけじゃない。
首に奇妙な圧迫感を感じる。何だこれは。
「首輪?」
そう口に出した時、心に言いようのない不安と怒りが募った。
「ユウキちゃん!」
と、私に話しかける男がいる。
「蓮根!あんたもここに」
「ああ、これはいったいどうなっているんだ。闘技場の仕掛けか何かかい?」
「いや、私もこんなことは初めてだよ。それに寝ている時ならともかく、私もあんたも起きていて、私はさあ戦おう、と脳内麻薬どばーだったんだ。それが気づいたら、別の場所だなんて」
「……! ユウキちゃん、その首輪は!? いや、僕にもついている!?」
「私にもわかんない。気づいたら付いてた」
ああ、本当にわけがわからない。こんなの、まるで魔法使いの仕業じゃないか。
そう思った時だった。
「諸君、おはよう」
壇上に、眼鏡をかけ、緑色のスーツを着た男が現れた。
0057第零話『オープニング』 ◆JqSWBMnSnWiX
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2016/03/09(水) 00:30:08.81ID:2LEgikTE
「私の名前は、そうだね。このスーツの色から、『ミスター・グリーン』と呼んでくれ。もちろん本名じゃないよ」
ふざけた男だ、私を拾ったおじさんと雰囲気が似ている。
つまり、不愉快な大人だ。
「今回、諸君に集まってもらったのは他でもない、ちょっと殺し合いをしてくれないかい」
だから、次の言葉もおおよそ予想がついていた。
いいだろう、そんなに見たいのなら、見せてやろう。
私は、さっきの闘技場でのそれのように、地を蹴ろうとして。
「――いい加減にしろ!」
と、蓮根の怒号が、私を揺らした。
「突然拉致して、変な首輪を嵌めて、殺し合いをしろだと!」
そう言って、蓮根は他の参加者を見る。
「ここには、子どももたくさんいるじゃないか。彼らにまで、殺し合いを強要するのか!」
どうやら、さっきまでの色々貯まっていた鬱憤がついに爆発したようだ。
でも、確かに、と私は思う。
何人か、カタギが、一般人が混じっている。殺し合いどころか血が出るまで喧嘩もしたことがないような、そんな奴が何割かいる。
『もちろんだ』
とグリーンは言った。
『例外はない。場所はここではないが、君たちには最後の一人になるまで殺し合ってもらう』
「何のために!」
『君に教えるつもりはない。……ふむ、そうだな。首輪の説明は君で行おう。諸君はもう気づいていると思うが、首に首輪をつけさせてもらった。そして、この首輪には――爆弾が入っている』
驚愕の声が、あちこちで漏れた。
『だから、もし私に逆らうと、こうなる』
蓮根!と私は叫んだ。蓮根はこっちを見て。
ボン
と、小さな音が響いた。
蓮根の首がくるくると宙を舞って。
断面から零れた血液が、私を赤く染めた。
「あ、」
と私は声を出した。
血には、慣れている。人の血も、獣の血も、意外と臭いや味が一緒で。
それは、いい奴も、悪い奴も一緒だった。
【国枝蓮根 死亡】
0058第零話『オープニング』 ◆JqSWBMnSnWiX
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2016/03/09(水) 00:32:41.23ID:2LEgikTE

大広間にたくさんいた参加者は、皆どこかへと転送されていった。
ただ一人の例外を残して。
「それで、なんで私が残っているの?」
『うむ、それはだね、君は会場に送る前に会わせたい人物がいるんだ』
グリーンの言葉に、銀髪の少女、繭は呆れたように肩をすくめた。
「どうせ、師匠でしょ」
「そうだ、私だ。愛すべき弟子よ」
壇上に、新たな人物が現れた。
黒衣の女。グリーンの協力者。
「これはお前が私を引き継けるかどうかを示す最終試験だ。お前がその決意を示すなら、他の参加者を全て殺し、勝ち抜いて来い」
「……はーい」
やる気なさげな声を一つ残して、繭は会場へと転送された。
そして、男と女が残る。
「気づいていますか?あなたのお弟子さん、あなたのこと大嫌いだと思いますよ。人間って、あそこまで憎悪を込めた目ってできるんですね」
「まだ反抗期なのさ。なんとかこの殺し合いで愛すべき弟子も、一皮むけてほしいものだ」
溜息を吐く女と、それをジト目で見る男。
こうして、バトルロワイアルは幕を開けた。

登場人物紹介
【ミスター・グリーン】
主催者A。運営担当。緑色のスーツに眼鏡をかけた中肉中背の男。結構心配性
【師匠】
主催者B。荒事担当。黒コートにロング。他者の殺害に関しては、人類でトップだと嘯いている。衣笠繭の師匠。
【ユウキ】
参加者。地下闘技場の花形にして、絶対王者。7年間無敗。最強を証明することを何よりの喜びとするポケモンみたいな思考回路。
【国枝蓮根】
見せしめ。無双八拳流の使い手。病気の妹の手術代のために、地下闘技場に参加していた。
【衣笠繭】
ジョーカー。師匠の弟子。世界で一番嫌いな者は師匠。どれほどバトルロワイアルを真剣にやるかは不明。
0059第零話『オープニング』 ◆JqSWBMnSnWiX
垢版 |
2016/03/09(水) 00:35:39.68ID:2LEgikTE
投下を終了します
名簿と地図は、ある程度話が進んだら投下しようと思っています
このロワは魂ロワと呼んでいただけると幸いです
0060 ◆ymCx/I3enU
垢版 |
2016/03/10(木) 01:15:03.80ID:orPEMmdw
保守をかねて皆様投下乙です
生存報告もかねています
書かなきゃ(使命感)
0062 ◆JqSWBMnSnWiX
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2016/03/10(木) 21:31:29.91ID:v/oz5An3
トリ間違えた、こっちのはず
0063第一話『酒場で少女二人』 ◆JqSWBMnSnWiX
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2016/03/10(木) 21:32:34.63ID:v/oz5An3
私は、たぶん人じゃない。


酒場に少女が一人いる。
白いブラウスと灰色のスカートの、中学生くらいの少女は体をカウンター席に座り、ストローでオレンジジュースを飲んでいた。
(こういうのがあってよかったな)
と、少女は思う。
お酒は嫌いだ、とも思う。
だって酒は理性を溶かして、その人間の本性を晒してしまう。
でも、私の場合は溶かされるのは理性じゃなくて、必死に被っている人間の皮を溶かされてしまう。
それは、このさき人の世界で生きていくうえで致命的だ。
(でも、こんな状況だったら、ニンゲンのふりをしないでもいいのかも。むしろバケモノにでもならないと、やってらんない)
お酒、飲んじゃおうかなあ。
少女が自分の中の酒への好奇心と戦っている時だった。
カランカラン、とドアが音は立てて開き、少女はそちらを振り向いた。
「あれ?先客がいた」
現れたのもやはり少女だった。
緑色のジャージを着て、顔には眼鏡が乗っかっている。体つきは、インドア派な自分よりも更に貧相だった。
「私は神崎ミレイ。あなたは?」
「……諸星沙織」
ミレイは諸星の横に遠慮なく座ると、虚空に向かって、「マスター。この人と同じものを」と言った。
「……奥の冷蔵庫に色々入ってるから自分でとってきなよ」
「わ、わっかりやっしたー」
軽い調子でそう言った後、ミレイはとたとたと走って行った。
そして、すぐにとたとたと足音を立てて帰ってくる。
持ってきたのは、ワインだった。
どくとくとグラスに注ぎ、上品な動作で口に運ぶ。
「まあ、悪くは無いかな」
あれ?何この敗北感?
0064第一話『酒場で少女二人』 ◆JqSWBMnSnWiX
垢版 |
2016/03/10(木) 21:33:20.27ID:v/oz5An3
自身がグラスに注いだオレンジジュースを見て、沙織は悔しさを感じる。
そして、さも上手そうにワインをラッパ飲みし始めたミレイを見て。
「ふっ」
うわ、むかつく。
怒りを叩きつけたくなるが、それはやってはいけないことだと必死に自制する。
そして、ふと疑問を覚えた。
「ねえ、何であんたそんなのんびりしてるの?」
「というのは?」
「怖くないの?私達、殺し合いやらされてるんだよ?」
ミレイは頬杖をつき、ふふと笑った。
「それはこっちからでも言えるよ。私が入ってきた時、オレンジちゃん、逃げるどころか怯えもしなかったじゃん」
「だってあんた、全然怖くないんだもん。丸腰だし」
ところでオレンジとは私のことだろうか、と沙織は思った。
「それはこっちにも当てはまるわけ。オレンジちゃん、丸腰だし、とろそうだし、女の子だし」
「なるほど」
と、沙織は言った。
そこで会話は途切れ、二人はしばらくの間、お互いのグラスの中身に集中した。
「……言っとくけどさ」
と、最初に言葉を放ったのは沙織だった。
「私、けっこう強いよ」
「はは、女の子の強いほど当てにならないものはないよ」
言ってはいけない、と理性が止めている。
ここで、自分はか弱い存在だと意識させるほうが、この先の人生でも、これからの殺し合いでも、得に決まっている。
でも、舐められぱなっしは腹が立つ。
沙織はカウンターの端を掴み、そのまま捻じり千切った。
ミレイは目を大きく見開いて、それを見る。
そして、へえと可笑しそうに笑った。
「面白いね、それ。もしかしてモンスターズ?」
「何それ?」
「あれ、違うの?そういうのは大抵彼らの得意とするところなのに」
うん、気に入ったとミレイは言った。
「手を組もうよ」
「手?」
0065第一話『酒場で少女二人』 ◆JqSWBMnSnWiX
垢版 |
2016/03/10(木) 21:33:52.76ID:v/oz5An3
「そう、君を過小評価してたのは謝るよ。足手まといはいらないなあ、とかそんなことも思ってたけど、でも十分に戦力として期待できそうだ」
「手を組もうよ」
と、再びミレイは言った。
そして。
「見れば分かると思うけど、私はあのミスター・グリーンと因縁がある」
「どこが?え、まさかジャージの色が緑だから?」
「これ以上といってない因縁だ。私はあいつを打倒しなければならない」
ぐっ、とミレイは拳を握った。
「でも、一見分からないと思うけど、私は力が無い。暴力を有していない。だから、君の力を借りたい」
どうかな?とミレイは言った。
どうしようかな、と沙織は思った。
怪しい女だ。日常ならなるべく避けたい相手。
が、今は非日常。ならば、この怪しい女について行ったほうがいいのかもしれない。
「いいよ。手を貸してあげる」
「グッド。これからよろしく」
ただ、とミレイは言葉を続けた。
「あくまで私と君は対等。私は君に守ってくれとお願いするし、君に頼まれれば私が他の参加者相手に交渉したり、行動方針を決めたりする。それでいいかい」
「別にいいわよ」
ほぼ同時に、二人のグラスは空になった。
「じゃ、行こうか」
「うん」

登場人物紹介
【諸星沙織】
中学生。力が強いが、普段はそれを隠している。
【神崎ミレイ】
年齢不詳。緑色のジャージを着ている。主催者、ミスター・グリーンと因縁があるらしい。
0068第二話『ライオンハート』 ◆JqSWBMnSnWiX
垢版 |
2016/03/11(金) 12:14:29.87ID:u8Dd0OHn
胸糞悪い。
ミスター・グリーンの非道な行為に当然の怒りを示した、名も知らぬ男は、首と胴体が離れ離れになって死んだ。
人が死ぬところは見たことがある。仲間が殺されるところも。仲間が殺すところも。
が、あそこまで一方的に、凄惨に殺されるところを見るのは初めてだ。
男が自分たちアウトローとは違う、善良な人間だったらしいことも大きいだろう。
かたき討ちとか、そんな臭いことは考えない。
ただ、俺はあの男にむかついた。ムカついた奴は、仲間に迷惑がかからない範囲で、ぶん殴る。それが、俺、ライオンハート【六の牙・坂東太一】の流儀だ。
今俺はどこかの住宅街を歩いている。当然だが、俺の知らない街だ。
と、足音が聞こえてくる。どうやら、誰か近づいてきているようだ。
こつ、こつ。
ずいぶんと落ち着き払った足音。この状況で、全く臆してねえ。
どうやら、あの十字路の右側の建物から聞こえてくるようだ。もう少ししたら姿が見えるだろう。俺は立ち止まって、現れる者を待ち構えた。
こつ、こつ。
やがて、建物の陰から、足音の主は現れた。
小柄な体躯、整った顔立ち、輝くような金髪。
それは。
「リーダー!?」
俺達ライオンハートのリーダー、レオンだった。

ライオンハートとは、俺が所属する不良集団の名前だ。俺はそこで10人しかいない幹部の一人、【六の牙】として、主に荒事をメインに活動している。
構成員は300人と中々大きな組織だが、この組織の他とは違う大きな特徴の一つとして、リーダーが年端もいかない子供だということだろう。
リーダーの名はレオン。レオン自体が語らないもんで憶測だが、おおよそ12くらいか。
体つきも貧相だし、胸も貧しいしで俺のタイプじゃないこの女が、何故俺達のリーダーをはっているかといえば、その答えはただ一つ。この女が有能だから。
300人を超える組織を纏めるリーダーシップもそうだし、荒事に関しても俺達の中でも誰よりも強い。
そんなレオンと真っ先に合流できたのは、俺にとっても不幸中の幸いだった。
「それで、どうするレオン」
「そりゃあ決まってるしょ。私ら舐めてくれたあのおっさんをぶっ倒す。そんだけ」
さすがリーダー。シンプルでいい。

登場人物紹介
【坂東太一】
不良少年。ライオンハート【六の牙】。

【レオン】
不良少女。ライオンハートリーダー。
0070 ◆84AHk0CknU
垢版 |
2016/03/13(日) 02:24:00.47ID:dy0Dj3V+
新ロワ投下乙です
ミスター・グリーンや師匠と関係のある参加者は他にも居るのか
続きが楽しみです

自分も投下します
0071Knight of Zero ◆84AHk0CknU
垢版 |
2016/03/13(日) 02:26:05.37ID:dy0Dj3V+
面倒な事に巻き込まれたと、事務所のような部屋で枢木スザクは思った。
ルルーシュと共にゼロレクイエム達成の準備を進めている最中、こんな所に拉致されるなど頭を抱えたくなる。
ヴァルトシュタイン卿他ラウンズは撃破したものの、シュナイゼルと黒の騎士団は健在。
そんな状況で自分という貴重な戦力を失えばどうなるか。
ルルーシュやジェレミアを信じていない訳では無いが、間違いなく苦戦は免れないだろう。
一刻も早く脱出し、ルルーシュの元に戻らねばならない。
主催者は優勝すればどんな願いでも叶えると言っていたが、そんな与太話信じられる訳がない。
大方殺し合いを円滑に進める為の甘言だろう。
主催者の戯言を無視し、スザクはデイバッグの中身を確認する。
中身を全て取り出し、その一つである名簿を開く

「味方になりそうな人は来ていない、か」

名簿にあった気になる名は4つ。
まず扇要。シュナイゼルと同盟を結んだ黒の騎士団の幹部で、スザクとは敵対している。
とはいえ彼は同じ騎士団の紅月カレンや藤堂鏡志朗、黎星刻と比べ高い戦闘能力や指揮能力は持っていない、
良くも悪くも平凡な男だ。
警戒はするが対処はそう難しくないだろう。
続いてアーニャ・アールストレイム。ラウンズのNo.6でかつての仲間。
その彼女も今ではジノと共にシュナイゼル側へ付いた。
この場での一時的な共闘に持ち込める可能性もあるが、万一の時には彼女を殺す事も視野に入れておく。
3人目の人物はゼロ。かつてルルーシュが名乗っていた革命家としての名であり、近い未来自分が新たに名乗る記号。
だがルルーシュは既にゼロを捨て、ブリタニアの新皇帝として堂々と名乗りを上げている。
それにゼロというコードネームはそう珍しいものではないし、偶然同じ名の別人の可能性が高い。
が、ルルーシュ本人だという可能性も僅かだが考えられる。もしそうならば急ぎ合流し、彼の安全確保が最優先となるだろう。
ゼロレクイエムにはルルーシュの存在が必要不可欠なのだから。
そして4人目は――

(ロロ・ヴィ・ブリタニア。ブリタニア姓だがそんな皇族は知らない。何者なんだ?)

おそらくはブリタニア皇族なのだろうが、聞いた事がない。
偶然にもロロ・ランペルージと同じ名だが、彼は既に死亡している。何か関係があるのだろうか。
正体は分からないが、今のスザクの立場を知れば良い顔はしないだろう。
やはり警戒しておく必要がある。
0072Knight of Zero ◆84AHk0CknU
垢版 |
2016/03/13(日) 02:27:23.23ID:dy0Dj3V+
名簿を閉じルールブックを軽く読むと、それらをバッグに仕舞い、己に支給された武器を見る。
種類の違うオートマチックの拳銃が二挺。
それに予備のマガジンがそれぞれ5つ。
それぞれ動作チェックをしてみるが、問題なく動く。特に細工などはされていないようだ。
片方を装備し、もう片方はデイバッグに入れる。

最後の一つはナイフ。
何の変哲も無いそれをマントの裏に仕舞う。。
これで準備は整った。
まず殺し合いに反対する者を探そうかと考え、今居る建物を後にした。





暫く歩いていると、ふいに嗅ぎ慣れた血のにおいが鼻をついた。
何時でも銃を取り出せるようにしながら、警戒し臭いの元へ近付く。
辿り着いた先は裏路地で、そこに制服を着た少女がへたり込んでいた。
少女の目の前には頭部の無い死体が横たわっており、血溜まりを作っている。

「……ねぇ」

慎重に近付くスザクに気付いたのか、少女が背を向けたまま話しかけた。

「あんたが殺したの?」
「…違う。僕がこの場で会ったのは君が最初だ」
「そう…」

一言呟いたきり少女は黙り込む。
スザクが問いかけようとするがそれを少女が遮る。

「死ぬはず無いって思ってた」
「……」
「いっつも無茶ばっかりして、死にそうな目に何度も遭って、でもまた生きて会えて。
だからこんな意味分かんないとこでも、無事に会えるって思ってた」
「……」
「でも死んだ。魔法少女も関係ないようなのに巻き込まれて、呆気なくさ」

少女がそこまで言った時、爆音のようなものが聞こえた。
思わずそちらをスザクは警戒するが、少女は何も反応しない。

「僕はあの音の方へ行こうと思う。君は…」
「ごめん、今は一人にして」

相変わらず背を向けて言ったその言葉には、どこか拒絶が混じっているように感じられた。
スザクが武器を持っているかと聞くと、片手を億劫に上げる。
そこには銃が握られていた。

「僕は行くよ。君もなるべく急いで離れた方がいい」
「忠告どうも」
0073Knight of Zero ◆84AHk0CknU
垢版 |
2016/03/13(日) 02:28:51.43ID:dy0Dj3V+
素っ気無い言葉を最後に二人は分かれた。
お互いの名前も知らずに。

スザクが離れていく足音を聞きながら、改めて少女は思う。
どうしてこんな事になってしまったのだろうと。
あの魔法少女達による虐殺を生き延びた先で待っていたのは、理不尽な殺し合いでの呆気ない死。
必死に戦って、その末路がこれか。

「ねぇ、なんでよ、児上ぃ……」

何も考えられない程の絶望の中で、少女はただ涙を流していた。


【鞘野楓@魔法少女・オブ・ジ・エンド】
[状態]:精神疲労(大)、深い悲しみ
[装備]:スチェッキン・フル・オートマチック・ピストル(20/20)@BLACK LAGOON
[道具]:共通支給品一式、予備弾倉×5、不明支給品0〜2
[思考]
基本:どうすればいいか分からない
0:児上……
[備考]
※参戦時期は原作7巻で殿ヶ谷と接触した後。


支給品紹介
【スチェッキン・フル・オートマチック・ピストル@BLACK LAGOON】
鞘野楓に支給。
ホテル・モスクワの大幹部、バラライカが愛用。
セミ、フルオート両方の射撃が可能な大型軍用ピストル。



少女を裏路地に残したスザクは、爆発があったであろう場所へ歩く。
彼女の事が気にならない訳ではなかったが、今は急ぎ脱出する事が最優先だ。
だから彼女は置いていった。

ふと、もしも昔の自分ならどうしただろうかと思った。
間違ったやり方で得た結果に意味は無いと考えていた、愚直な正義感に燃えていた頃の自分ならば。
あの少女を置いて行きはしなかっただろう。無理やり引き摺ってでも連れて行っただろう。
けれど今ここに居るのはもう昔のスザクではない。
ルルーシュの敵を排除する為の剣、ナイトオブゼロだ。

余計な考えを振り払うように、スザクは足を速めた。
0074Knight of Zero ◆84AHk0CknU
垢版 |
2016/03/13(日) 02:30:00.13ID:dy0Dj3V+
【枢木スザク@コードギアス 反逆のルルーシュ】
[状態]:健康
[装備]:ゼロのハンドガン(予備マガジン×5)@コードギアス ナイトメア・オブ・ナナリー、不良少年のナイフ@チャージマン研!
[道具]共通支給品一式、ベレッタM1934(7/7、予備マガジン×5)@名探偵コナン
[思考]
基本:ゼロレクイエムのために急ぎルルーシュの元へ戻る
1:爆発音のした方へ向かう
2:扇、アーニャを警戒
3:名簿のゼロがルルーシュなのかどうか確かめる
4:ロロ・ヴィ・ブリタニアとは誰だ…?
5:少女(鞘野)が少し気がかり
[備考]
※R2第22話にてラウンズ撃破後からの参戦。


支給品紹介
【ゼロのハンドガン@コードギアス ナイトメア・オブ・ナナリー】
枢木スザクに支給。
6話にてゼロが草壁中佐を殺害するのに使った銃。
正式な種類は不明。

【ベレッタM1934@名探偵コナン】
枢木スザクに支給。
黒の組織の構成員、ジンが愛用している拳銃。

【不良少年のナイフ@チャージマン研!】
枢木スザクに支給。
第49話『不良少年の正体は!』に登場した不良(正体はジュラル星人)が所持していたナイフ。
0076 ◆JqSWBMnSnWiX
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2016/03/13(日) 15:34:48.01ID:ekSo/bnI
投下乙です
そうだよなあ、初期のスザクなら裏路地に女の子一人にしないよなあ
彼が悪夢版とどうかかわるのか期待します

私も投下します
0077第三話『喫茶店の変』 ◆JqSWBMnSnWiX
垢版 |
2016/03/13(日) 15:36:03.11ID:ekSo/bnI
殺し合いの必勝法とは、何か。
それは徒党を組むことだ。ランダムに武器が配られるこのゲームでは、生存率は運に左右される。ならば、当たり=銃器を引く可能性をあげるには、試行回数を増やすしかない。つまり、仲間を増やせば増やすだけ、銃器が手に入りやすくなるのだ。
もちろんこれは単純化した物言いで、実際そう上手く徒党を組めるはずがない。
が、とりあえずとして、とある中堅マフィアの構成員ケビンは、不良少年青木三平太と徒党を組むことに成功していた。
成功した理由は迅速に動いたからだろう、とケビンは思う。
見たところ青木少年は荒事に慣れてはいるが、ここまで危機的状況に陥ったことはなく、銃も持ったことは今まで無かったようだ。当然不安になる。自分はこの島で死ぬかもしれないと恐怖する。そこに、マフィアを名乗る自分が現れる。
一般人ならともかく、チンピラにとってマフィアは畏怖の対象であると同時に、一種の憧れを感じる職業である。青木少年は、殺し合いの場でのマフィアを名乗る男との出会いに恐怖し、そして僅かな安心を感じた。それをケビンは見逃さなかった。
ケビンは青木少年に素早く、そして分かりやすく自分が青木少年への害意はないこと、ミスター・グリーンに落とし前をつけさせるために行動しようとしていること、武器はバタフライナイフが一つだけだということを説明した。
青木少年は簡単にケビンを信じた。案外根は善良なのかもしれない。とにかく、殺し合いが開始して2時間も経たないうちに、二人はチームを組み、今は喫茶店で情報を交換しあっていた。
「へえ、ケビンさんはアメリカの……。日本には観光ですか?」
「はい、知り合いがいるもので。青木くんは日本のサイタマのほうで活動しているんですか」
窓から見える街並みを見ながら、ケビンは笑みを崩さない。
「ええ、まあ。一応うちのチームは関東最強名乗らせてもらってます」
「頼もしいですね。恥ずかしながら、私は荒事はそこまで得意ではないんです。なので、本職がこんなことを頼むのは情けない話なんですが、もしもの時は、任せますね」
「……うっす」
青木少年は懐に入れた銃に目をやる。
ケビンはあえて銃を青木少年に預けたままにしていた。こうすることで青木少年に「プロに信頼されている」と自信をつけさせ、戦闘時に利用しやすくなるのだ。
また、万が一青木少年が自分を銃で撃とうしても、武器を持った素人など容易く無力化できる自信があった。
また、この拳銃――正式名称S&W M29は通常の拳銃より反動が大きい。ケビンのようなプロならともかく日本のチンピラではまずまともに当てれない。
(現状は順調だな。後は他の参加者の顔ぶれ次第か)
0078第三話『喫茶店の変』 ◆JqSWBMnSnWiX
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2016/03/13(日) 15:36:34.87ID:ekSo/bnI
「で、ケビンさん。最初はどこに行くんですか」
「そうですね。この島の中央のタワーに――」
その時、エンジン音が外から聞こえてきた。
「え、なんでしょう、これ?誰かが車を運転してるってことですか?」
青木少年は不思議そうにケビンを見るが、その時にはすでにケビンは立ち上がり、喫茶店の奥へと逃げ込もうとしていた。
ケビンは気づいたのだ。自分に今から起きる悲劇を。
「ま、待ってくださいよケビンさ」
慌てて青木少年は立ち上がる。
エンジン音は大きくなる。
「なんだってんすか」
悪態をつきながらそっちを見て、少年は絶句した。
喫茶店の窓全体に広がるトラックの前面部。
それが少年が見た最期の光景だった。

衝撃で喫茶店が大きく揺れた。
ケビンの身に、喫茶店に突っ込んだトラックによって生じた壁や窓ガラスの破片が降り注ぎ、着ているスーツをずたずたに切り裂く。
が、ダメージはそれだけで青木少年のように挽肉になることは免れていた。
「くそっ、非常識なマネを……」
ケビンはスーツをはたきながら、トラックを睨み付ける。トラックは車両の半分ほどを喫茶店内部に乗り上げたまま、止まっていた。
運転席には誰もいない。
(下手人はどこだ、くそ。どこに隠れてやがる)
濛々と舞い上がる煙がケビンの視界を阻害し、彼を苛立たせる。
(どうする?ひとまず青木少年から拳銃だけでも回収するか)
そう考え、ケビンは人の形をなんとか保ってるといった状態の青木少年の遺体に近づく。
煙はもうもうと、たちこめている。
(……いや、ちょっと待て。何でこれをやった奴はこの場に現れない。それにこの煙はなんだ。土煙にしては量がおおすぎ――!?)
ケビンが真実に気が付いたのと、トラックのエンジンが文字通り『爆発』したのは、同時のことだった。

炎上する喫茶店を見ながら、少女は溜息をついた。
動きやすそうなパンツルックに頭頂部から伸びる一本のアホ毛、貧相な体つき。
名を、神崎小帯といった。
0079第三話『喫茶店の変』 ◆JqSWBMnSnWiX
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2016/03/13(日) 15:37:03.84ID:ekSo/bnI
(ついにやっちゃったなあ)
でも仕方がない、と小帯は思う。
自分がやらなきゃダメなんだ、とも思う。
小帯にはいくつかの才能がある。
その中で、最も大きいのは「何かを爆発させる」才能だった。
小帯はまず、支給された双眼鏡で喫茶店の窓際の席で談笑する男と少年を発見した。
その後、近場にあったトラックのエンジンをいじり、自分も乗って発進。
喫茶店に突っ込む直前にトラックから飛び降り、そのまま爆発の範囲外まで逃走。
結果として、彼女は参加者二人を葬ることに成功した。
(別に人殺しが好きなわけじゃない)
と、小帯は思う。ただ、彼女には生きていて欲しい二人の参加者がいるのだ。
神崎ミレイ。自分の義姉。三羽椿。自分の友人。
あの最初の大広間で見つけた二人の大切な人。
殺し屋崩れの自分にできた大切な繋がり。
(待っててね、二人とも。私が二人を生き残らせる)
そう硬く決意して、神崎小帯は修羅となった。

【青木三平太 死亡】
【ケビン・ウッテンハイアー 死亡】

【神崎小帯】
状態:健康
装備:無し
道具:不明
思考:1 神崎ミレイと三羽椿の生還。そのために参加者を排除

登場人物紹介
【青木三平太(あおきさんぺいた)】
不良少年。今回のロワではいくつかの組織が出てきますが(またおいおい紹介していきます)、彼はそのどれにも所属していない。アウトロー。誰にも相手にされていないとも言います。
【ケビン・ウッテンハイアー】
とある中堅マフィアの幹部。主な仕事は金銭関係なんで、荒事苦手なのは本当。主催者側に立っていればそこそこ優秀。
【神崎小帯(かんざきこおび)】
殺し屋崩れ。同じ神崎姓のミレイとは姉妹関係ですが、血の繋がりはありません。三羽椿は同じアパートに住み、クリスマスやお正月は一緒に祝う程度の仲です。年齢は不詳。本人も正確にはわかっていません。
0081 ◆ymCx/I3enU
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2016/03/14(月) 03:03:35.83ID:sRYC3k2g
皆様投下乙です
レス番35〜39
何だこの博士!? と思ったら出典元が違うんすね
本物の博士にあらぬ疑いがかかるのが見える見える……
レス番42〜46
野獣先輩とBASARAお市の対戦なんて誰が思い付いただろうか

>第零話『オープニング』
オリキャラロワ期待です&開催乙です
>第一話『酒場で少女二人』
年齢不詳(少女ではないとは言っていない)
>第二話『ライオンハート』
10人なのに「六の牙」とは
フィクションの不良集団は格好良いけど現実は勘弁

>Knight of Zero
必死に生き残っても呆気無く死ぬのはバトロワでも同じやで

>第三話『喫茶店の変』
しょっぱなから二人脱落、やりますねぇ
そしてそれはもう「才能」とかそういうレベルではないと思う>「何かを爆発させる」

・・・
久々に一話出来たので投下します
0082未来は二律背反 ◆ymCx/I3enU
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2016/03/14(月) 03:04:29.81ID:sRYC3k2g
26話 未来は二律背反

島役場の応接室。
金髪の美少女、室川美知は、灰色と白の毛皮の巨躯の雄狼と激しい交わりをし、一段落ついて呼吸を整えていた。
床には脱ぎ捨てられた衣類や、丸められたティッシュ、体液が散乱し、部屋の中にはむせ返るような獣臭が充満している。

「あ〜気持ち良い……最高」
「全部吸い取られそうだぜ……ハッ、ハッ」

美知と狼、ゼユックは役場内にて遭遇し、早々に意気投合、そして親睦を深め合う事となった。

「はぁ、でもこの後どうしようか」
「別にどうも……ここに留まってても良いんじゃねぇか? 美知、知り合いとか居ねえんだろ? なら動く理由も無ぇだろ」
「それもそっか……ちょっとしたらまたヤろ」
「いいぜぇ」

興奮した、いやらしい笑みをゼユックは浮かべ、それに美知も頭を撫でてやって応える。
応接室のテーブル上には、二人のデイパックと、チェーンソー、合口が置かれている。
チェーンソーが美知の支給品、合口がゼユックの支給品である。
二人共、殺し合うつもりは無かったものの、有事の際は自分の身を守る為に相手を殺す事も辞さぬ程度の覚悟は決めていた。

◆◆◆

役場周辺の通りの一角を歩く、白い牛獣人の青年。
ガーターベルトにブリーフパンツと言う変態そのものの格好だが彼、テオ・オトマイアーの表情は至って真摯に見える。

「ゲームが始まって、二時間位経つのか。今の所誰とも会っていないけど……。
でもなあ……このゲーム、優勝出来て生きて帰れた所で僕は……」

生還出来た時の事を考えるテオの表情は真摯を通り越し暗い。
彼は知人に多額の借金を背負わされる羽目になり、その借金元の非常に危険な金貸し業者に脅され、
借金返済の為ゲイ向けのアダルトビデオに出演する事になったのだが、いつしか彼は娼夫にまで身を堕とし、快楽に溺れてしまっていた。
「仕事」の最中は淫乱そのものながら、「仕事」が終わり素に戻ればそんな自分の痴態を嫌悪し鬱状態になり、しかし、
また「仕事」が始まれば、を繰り返す毎日にテオは嫌気が差していた。
借金は確実に減ってはいたが、完済する前に自分の精神は崩壊してしまうかもしれない。どうしたら良い。逃げたい。
そんな矢先の今回の殺し合い。

「よーし、いい機会だ……」

テオは決心する。

「死のう!」

人生と言う名のリングで戦い続ける自分にタオルを投げてやろうと。

「どんな死に方が一番、苦しくなくて済むかなぁ……」

自殺の方法を考え始めるテオ。

「誰……うわ! 変態!」
「!」

ここに来てテオはようやく他参加者と遭遇する。
いかにも今時の若者と言った風貌の人間の青年。

「変態か、別に良いけど……僕はテオ。貴方は?」
「え? 俺は、千品武紀……あんた、殺し合いには乗ってないのか?」
「僕、自殺しようとしててね」
「えっ」
0083未来は二律背反 ◆ymCx/I3enU
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2016/03/14(月) 03:05:17.34ID:sRYC3k2g
武紀の質問には答えず、自分のやろうとしている事を告げるテオ。武紀は驚いた様子だ。

「それでどんな方法が一番楽に死ねるかなって」
「え、いや、何が有ったか知らないけど、やめた方が良いんじゃね……?」

取り敢えず止める素振りを見せる武紀。
事情は全く知らないし赤の他人であるが故何の義理も無かったが、目の前で自殺すると言われ無視は出来ない。

「それでね、千品さん。僕支給品これだったんだけど」
「え?」

しかしテオは武紀の制止の言葉には反応せず、自分の支給品である出刃包丁を武紀に見せる。
先程から一方的な会話しか出来ないのもそうだが、テオの口調や表情がどことなく無機質に思え、
段々と武紀は目の前の白牛青年に対し妙な恐怖を感じ始める。逃げた方が良いかと考えた。

「あ、ああ。悪いけど俺はこれで……」

いよいよ危機感を覚え断りを入れて去ろうとした。

グサリ。

次の瞬間、出刃包丁の刃が武紀の腹に潜り込む。

「あ? ……ああああああああ!?」

焼けるような激痛。武紀の絶叫が木霊する。

「痛い?」
「げあっ……! なに、なに、や、あ゛」
「うん痛そうだね。刃物はやっぱり痛いんだね」

その手を血塗れにして、テオはとても淡々と所見を述べた。
こいつは正気じゃない、と激痛で揺らぐ意識の中、武紀は確信する。確信するのが遅過ぎたと後悔もした。
テオが包丁を武紀の腹から引き抜いた。刺された所を押さえて呻く武紀。

「うぎ、ぎ、い、あんた、いかれてるよ……!」
「そりゃあね。すっかり淫乱にされちゃったからね」
「そういう意味、じゃ」

グサ。

武紀が言い終わらぬ内に、包丁の刃が次に潜ったのは武紀の胸。
肋骨の隙間を通り抜け、心臓へと。
そしてその瞬間、武紀の命も終わった。
どさりと重い音を立てて武紀は路上に崩れ落ち、血溜りを作って二度と動かなくなった。

「心臓なら楽って訳でも無さそう。刃物で自殺はやめといた方が良いかなぁ」

淡々と、余りに淡々と、テオは再び所見を述べた。殺人への抵抗、罪悪感は微塵も感じられず。
武紀が思った通り、テオは最早正気では無かった。
殺し合いに放り込まれ彼自身も無自覚の内にその精神は異常を来し始めていたのだ。
「どのような致死方法が一番楽か」それを突き止める為、他の参加者を犠牲にする。その行為に対し全く疑問も抱かない。
近くの洋品店に侵入し売り物のタオルで自分の手と包丁に付いた血を拭き取る。
その後武紀の所持品を漁る。

「これは……毒?」

手に入れたのは小瓶に入った白い粉末状の薬品。
ラベルに書かれている薬品名は「シアン化カリウム」。よく推理物の小説や漫画等で「青酸カリ」として登場する毒物だ。
0084未来は二律背反 ◆ymCx/I3enU
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2016/03/14(月) 03:06:12.53ID:sRYC3k2g
「うーん苦しそう。誰かで試さないと」

さも当たり前のようにシアン化カリウムの効果を試す為の「実験台」をテオは探し始めた。
全ては自分の「楽な自殺」の為に。
そしてその足は島役場の有る方向へと向かっていた。

◆◆◆

「いやーん」
「ハッ、ハッ、ハッ」
「さっきヤったばかりなのに、元気ねぇ、もう」

ゼユックは性欲旺盛である。それは美知にも言える事だが。
何度も達した筈だと言うのに、今再び美知に息を荒げ、涎を垂らし尻尾を振りながら迫る。

「お前だって嫌じゃないだろ〜?」
「まあそうなんだけどね〜」

美知も特に嫌がらず、むしろ嬉々としてゼユックを受け入れる。
少女とオス狼の喘ぎ声が響き始める。これで何度目かは当人達にも分からない。


【千品武紀  死亡】
【残り42人】


【明朝/D-5島役場応接室】
【室川美知】
状態:健康、ほぼ全裸
装備:チェーンソー
持物:基本支給品一式
現状:殺し合いはしないが襲われたら戦う。ゼユックと行動。しばらく島役場に籠る。
備考:衣類は応接室内に脱いだ状態で置かれている。

【ゼユック】
状態:健康
装備:合口
持物:基本支給品一式
現状:殺し合いはしないが襲われたら戦う。美知と行動。しばらく島役場に籠る。
備考:特に無し。


【明朝/D-5島役場周辺】
【テオ・オトマイアー】
状態:精神に異常
装備:出刃包丁
持物:基本支給品一式、シアン化カリウム
現状:楽な自殺の方法を探す。
備考:「自殺に使える方法」を他人で試そうとする。島役場方面に向かっている。


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0085未来は二律背反 ◆ymCx/I3enU
垢版 |
2016/03/14(月) 03:07:49.75ID:sRYC3k2g
《キャラ紹介》
【室川美知】
読み:むろかわ みち
年齢:18
性別:女
種族:人間
特徴:金髪ショートヘアの美少女。学校制服のブレザー姿。爆乳
職業:高校生
備考:淫乱である。男でも女でも獣でも何でもござれ。

【ゼユック】
年齢:30代?
性別:♂
種族:魔狼
特徴:濃い灰色と白の狼。筋肉質。黒目に赤い瞳
職業:傭兵
備考:とある傭兵ギルドに所属している。戦闘能力は高い。二足歩行にもなれる。
下品で好事家であるが仲間と思った者の事は大切にする様子。

【テオ・オトマイアー】
年齢:21
性別:男
種族:牛獣人
特徴:白い牛獣人。細身ながら引き締まった肉体。ブリーフにガーターベルト姿
職業:娼夫
備考:元は普通の会社員だったが知人に借金を背負わされその上借りていた業者が悪質な闇金だった為、
借金返済の為にホモ向けAVに主演させられた挙句快楽漬けにされ娼夫に身を堕とした。
娼夫の仕事をしている時は淫乱になるが仕事が終わり素に戻ると気弱な性格になり、自分の現状を嘆いて鬱になる毎日を送っている。

【千品武紀】
読み:ちしな たけのり
年齢:24
性別:男
種族:人間
特徴:金色に染めた髪。少しチャラい印象。私服姿
職業:メンズショップ店員
備考:少しチャラい印象を受けるが特に悪さはしない。
むしろ真面目に働いて真面目に稼いでいる。

《支給品紹介》
【チェーンソー】
支給者:室川美知
分類:その他
説明:多数の小さな刃の付いたチェーンを動力により回転させて対象物を切る動力工具の一種。
某ジェイソンの武器として認識される事が有るがジェイソンさんはチェーンソーは使った事は無い。
【合口】
支給者:ゼユック
分類:刃物
説明:小型の刀。白鞘タイプ。
【出刃包丁】
支給者:テオ・オトマイアー
分類:刃物
説明:和包丁の一種で主に魚を捌くのに使われる。
【シアン化カリウム】
支給者:千品武紀
分類:薬物
説明:良くフィクションで「青酸カリ」で登場する毒物の代名詞とも言える存在。
小さなガラス製の小瓶に入れられている。
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※行数制限の為支給品紹介欄を詰めています
0086 ◆ymCx/I3enU
垢版 |
2016/03/14(月) 03:08:41.39ID:sRYC3k2g
投下終了です。
何度も書き直した末にサイコパスっぽいキャラになった>テオ
0087 ◆ZC0oB5s5Dg
垢版 |
2016/03/16(水) 12:53:29.87ID:RS2Q8du3
こんにちは「ランダム制で2014・15年あたりのアニロワ」というのを投下したいと思います。
100人規模ですが、まあやるだけやってみます。
ランダム制とは参加者が合う人数とか支給品の種類とかを色々とランダムで振り分けました。
ただ最初の段階だけそれという感じです。
数え間違いとかもあってガバガバランダムだったりしますが、そこは許してください。。
よろしくおねがいします。
0088オープニング ◆ZC0oB5s5Dg
垢版 |
2016/03/16(水) 13:08:36.25ID:RS2Q8du3
あと言い忘れましたので、投下乙です。ついでにOPもこのレスに書きこみます。


 暗転。
 自分の目の前がいきなり黒く染まったら、そう答えるのが普通だろう。
 ましてや「歩いていたら」とか「死んでいたら」とかそういう状態なのに、いきなり目の前の景色が変われば、そう思うほかない。
 ここに集まった100人ほどの人間はその状態にいる。
 ここはどこか、ということはわからない。
 ただわかるのは、地面があることくらいである。

 その中の一人に男がいた。
 ジャン=ピエール・ポルナレフ。特徴的な髪型をした、筋肉質な男である。
 彼は「スタンド」と呼ばれる精神から発生される超能力と、それを支える熱い心があった。
 そんな猛者であっても、この場にいる。何の抵抗も、いやそもそも抵抗すべき対象がいるのかどうかすらわからない状態で、この場に連れてこられている。

(なんだってんだァ……ここは? 俺は確かアヴドゥルとイギーと一緒にDIOの野郎をぶっ倒そうとしてたはずだ。つまり『歩いて』いたッ! 俺は単純に『歩いて』いたはずなんだッ!)

 彼は困惑する。館は確かに暗かったが、こんな場所ではない。
 完全に真っ暗というわけではなく、マジシャンズレッドの炎が照らしていたはずだ。

(スタンド攻撃かッ!?)

 ポルナレフは自身のスタンド、シルバーチャリオッツを出す。
 鎧を纏う戦士の出で立ちをした、その姿が現れる。
 周囲を警戒する。が、一向に攻撃されない。
 もし何らかの方法で自分と仲間を引き離す、あるいは仲間を殺したとしたら、すぐさま攻撃されるはずだ。
 だとするとスタンド能力ではない。異様な状況が続く中、ポルナレフは警戒の手を抜かない。
 何が何やらわからない中、変化は突如として訪れた。

「諸君ら、こっちを見るべぇ〜〜〜」

 間の抜けたような老人の声が響く。
 響く、ということはここは室内なのだ。
 その老人がいる場所は光に照らされ、目にショックを与えるのと同時に、その場所が大体どのようなものかを明らかにする。
 床は灰色のコンクリートであることから、全体図までもは流石に見えないけれども、何らかの建物の中にいることはわかった。
 老人は痩せている。
 錨のような白髪に片眼鏡、威厳を纏うように作られたようなマントを着ていた。
 おそらくこの場に人間を集めた者だろう。
 勝手に連れてこられた者達の前で、その老人は口角を釣り上げていた。奇妙な笑顔である。

 ポルナレフは警戒する。どんな相手かと思えば単なる老人だった。
 ただ、それが恐ろしい。
 単なる老人でしかないような人間が、素手でさえも倒すことができそうな相手が、自分をあっという間にこの場に連れてこられた。
 故にスタンドは出したままである。
 にも関わらず相手はニヤけたままだ。異様な自信家なのだろうか。

「え〜、こんなに人数多かったのかべ? やっていることが派手だべ。まあそんなことはどうでもいいべ。諸君らには今から『殺し合い』をしてもらうべ」

 殺し合い。
 簡単に、その男は語った。
 まるでデパートの迷子を店内でアナウンスするような、何の不可思議さも感じていないような口調である。
0089オープニング ◆ZC0oB5s5Dg
垢版 |
2016/03/16(水) 13:10:10.96ID:RS2Q8du3
「その『殺し合い』とはどのような意味だ。比喩か、それともそのままの意味か?」

 男の声が聞こえた。その声を知るものは、少なくとも一人いた。 ポルナレフはその男の声と、そして姿を知っている。
 老人を映す光に写るその男を彼は知っている。
「アヴドゥル!」
 褐色の肌をした大男。灼熱のスタンド使い、モハメド・アヴドゥルである。
 おそらく彼もここに一緒に連れてこられたのだろうとポルナレフは思った。
 アヴドゥルも自分を呼ぶ仲間の声をわかったので、その方向に目くばせする。
 仲間の確認ができ、何か返そうとした時、そこに老人の声が入り込んだ。

「そのままの意味だべ。殺し合いの意味は殺し合いだべ」
「なぜそんなことをする必要がある? 貴様の趣味か」
「そんなことを語る必要はないべ。お前らはわからず適当に殺し合っていればいいんだべ」
「そうか……。ただ、必要性もないことに私も付き合う義務はないのでね。今の私にはやるべきことがあるんだ」
「そうかそうか。なら、貴様はどうするべ? 何をするべ?」
「今すぐ消え去ってもらうッ! 魔法使いの赤(マジシャンズレッド)!」

 アヴドゥルは炎を纏った鳥の顔を持つ人型のスタンド、マジシャンズレッドを出す。
 そして躊躇なく火炎を発射させる。
 いくら相手が老人とはいえ、自分をあっという間にこの場に持っていける能力、そして殺し合いをさせるという狂気性を持った人間に、遠慮をする必要などない。

 だが火炎は空中で大きく広がり消滅する。
 簡単にいえば、これはバリア・結界である。
 例えそのようなものを実際に目にしなくても、それは感覚として見てわかるものであった。
 老人を何か見えない壁が守っているのだ。

 アヴドゥルは瞬時にこの老人は生半可な攻撃では倒せないとわかった。
 全力を出さねば、可能性が見えない。
 今までの戦いの経験から、すぐさま己のスタンドのフルパワーを発揮する。

「クロスファイヤーハリケーンスペシャル(C・F・H・S)!」

 十字の炎が連射され、老人の元へ向かう。
 火炎が大きく広がり、同時に大きな爆風が吹き荒れる。
 その衝撃は建物を響かせ、炎は光源をさらに増幅させる。
0090オープニング ◆ZC0oB5s5Dg
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2016/03/16(水) 13:12:41.03ID:RS2Q8du3
 だが、効かない。
 老人はニヤけたままであった。
 余裕満々な笑顔でアヴドゥルを見下す。
 対する炎のスタンド使いは緊迫の汗を流した。

 老人は言う。

「お前がどんな攻撃をしてもダメだべ。大体、こんなことで死ぬようなら殺し合いなどしないべ。そうだべ、お前がここで目立ったのはちょうどいい。わかりやすい説明台になってもらうべ」
「貴様は何を……」

 困惑するアヴドゥルを尻目に、老人は指を弾いた。その音は屋内を包む。

 爆音と共に男の首は飛んだ。

 本当にそのままである。
 さっきまで異次元の能力を扱っていた男はあっという間に、殺されてしまったのだ。
 その死体はバランスを崩し、粘土細工のように床に転がった。

「アヴドゥルーーーーーーゥッ!」

 ポルナレフは叫ぶ。
 自分の仲間の死に、叫んで、その場まで駆けつける。
 彼が見てもアヴドゥルは確実に死んでいることがわかった。
 首から上はなく、その頭が無造作に転がっていた。
 ポルナレフは何も言葉にでなかった。
 簡単に言い表せるようなものではなかったのである。あらゆる感情が彼の元で湧き上がり、交差し、複合する。

「この男の首が吹き飛んだのは首輪だべ。諸君らの首元をすぐに確認するといいべ。その中には爆弾が内臓されていて、わしらの胸先三寸でいつでも『おしおき』できるんだべ」

 ポルナレフも言われてその存在に気付いた。
 自分の首元に、自分の仲間を、友を殺した忌々しい存在がある。
 そして何より許せなかったのは『おしおき』である。
 自分の友を殺したそのやり方を『おしおき』というふざけた表現で、もっといえばそんなゴミのような理由で殺したことを許せなかった。
 ポルナレフは哀しみを怒りに変えて、老人を睨む。
0091オープニング ◆ZC0oB5s5Dg
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2016/03/16(水) 13:16:24.02ID:RS2Q8du3
「てめぇ、この借りは安くつくなんて思ってねえだろうなッ!」
「何も借りた記憶はないべ。なんだべ。お前もその男と同じようにわしに攻撃するべ?」
 ポルナレフは攻撃しない。
 それは冷静な判断である。彼は戦士として冷静な状況判断をしたのである。
 ここで攻撃したとて、アヴドゥルの高火力の攻撃を防いだことを考えると、無謀というものである。
 怒りにまかせて攻撃したとて、返り討ちになるのが関の山だ。
 だがその闘志は燃え尽きていない。
 それは未だにポルナレフの心を燃やし、眼光がそれを老人に伝えている。
「ずいぶん挑戦的な目だべ〜。いいだろう、名前を教えてやるべ。わしの名前はドクロベエ。覚えておくがいいべ、ジャン=ピエール・ポルナレフ」
「ああ、覚えといてやるよ。ついでにてめーの脳みそには俺の名が残らねえように、いずれバラバラにしてやるッ!」
「いい気概だべ! ならば、この殺し合いで生き抜くがいいべ。または対抗するがいいべ、できるものなら!」

 老人、もといヤッター・キングダムの支配者・ドクロベエは前を向く。
 参加者全員を眼前に、その言葉を放った。

「諸君らには今から最後の一人になるまで殺し合ってもらうべ。ただ、モチベーション向上のために生き残ったものには、1つだけ願い事を叶えてやるべ。
 どんなことでもいいべ。不老不死でも、誰かを生き返すことや、大金が欲しいことやエロ本を買ってもらいたいことでもなんでもだべ。
 殺し合いに勤しむなら渡される支給品を活用するべ。
 追加ルールもあるので、6時間ごとに行う放送をよ〜く聞くがいいべ」

 マイペースにルールを解説するドクロベエ。彼は自分が言ったというのにポルナレフには全く関心を向けるそぶりをださなかった。

(おそらくヤツは『絶対に自分は殺されない』と思ってやがる……。絶対的な優位にいるから、余計な心配をする必要がないと思ってやがるんだ……)

 それはわかっている。実際に優位な立場だろう。だが

(そんな余裕ぶっこいた外道野郎に一泡ふかせてやるってのは最高だよなあ……アヴドゥル! 血の泡をカニみてえに浴びせてやる……だから、それまで待ってろよ……)

 復讐を誓う。弔い合戦を彼の心は決めていた。
 しかしその不屈の魂は、暗転と共に沈む。
 参加者は再び意識が飛ぶ。そして次なる場所に移るのだ。
 
 そう、殺し合いの場に。


【ジョジョの奇妙な冒険 スターダストクルセイダース】モハメド・アヴドゥル 死亡確認

 GAME START
0092参加者名簿 ◆ZC0oB5s5Dg
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2016/03/16(水) 13:17:15.66ID:RS2Q8du3
参加者

8/8【ルパン三世】〇ルパン三世/〇次元大介/〇石川五ェ門/〇峰不二子/〇銭形幸一/〇レベッカ・ロッセリーニ/〇ニクス/〇レオナルド・ダヴィンチ/
7/7【ジョジョの奇妙な冒険 スターダストクルセイダース】〇空条承太郎/〇ジャン=ピエール・ポルナレフ/〇ラバーソール/〇偽キャプテン・テニール(偽)/〇マライア/〇テレンス・T・ダービー/〇DIO/
7/7【ニンジャスレイヤー フロムアニメイシヨン】〇ニンジャスレイヤー/〇ダークニンジャ/〇ヤモト・コキ/〇ラオモト・カン/〇フォレスト・サワタリ/〇シルバーカラス/〇ミュルミドン/
7/7【ローリング☆ガールズ】〇森友望未/〇小坂結季奈/〇響逢衣/〇御園千綾/〇宇徳真茶未/〇籾山蔵之介/〇石作志麻/
6/6【ヴァルキリードライヴ マーメイド】〇敷島魅零/〇櫻美鳳/〇柊晶/〇シャルロット・シャルゼン/〇時雨霞/〇相良百華(A3)/
6/6【おそ松さん】〇松野おそ松/〇松野カラ松/〇松野チョロ松/〇松野一松/〇松野十四松/〇松野トド松/
6/6【GATE 自衛隊 彼の地にて、斯く戦えり】〇伊丹耀司/〇レレイ・ラ・レレーナ/〇ロゥリィ・マーキュリー/〇ピニャ・コ・ラーダ/〇栗林志乃/〇ゾルザル・エル・カエサル/
6/6【桜Trick】〇高山春香/〇園田優/〇野田コトネ/〇南しずく/〇池野楓/〇飯塚ゆず/
6/6【城下町のダンデライオン】〇櫻田茜/〇櫻田葵/〇櫻田修/〇櫻田奏/〇櫻田輝/〇佐藤花/
6/6【東京喰種】〇金木研/〇霧嶋董香/〇芳村/〇月山習/〇亜門鋼太朗/〇真戸呉緒/
6/6【七つの大罪】〇メリオダス/〇エリザベス・リオネス/〇ホーク/〇ディアンヌ/〇ヘルブラム/〇ビビアン/
6/6【パンチライン】〇伊里達遊太/〇成木野みかたん/〇曳尾谷愛/〇台初明香/〇友田千早/〇ぐり子/
6/6【モンスター娘のいる日常】〇来留主公人/〇ミーア/〇パピ/〇セントレア・シアヌス/〇スー/〇ラクネラ・アラクネラ/
5/5【アイドルマスター シンデレラガールズ】〇島村卯月/〇渋谷凛/〇双葉杏/〇諸星きらり/〇城ヶ崎美嘉/
5/5【アカメが斬る!】〇アカメ/〇レオーネ/〇エスデス/〇セリュー・ユビキタス/〇シュラ/
5/5【アルドノア・ゼロ】〇界塚伊奈帆/〇スレイン・トロイヤード/〇アセイラム・ヴァース・アリューシア/〇網文韻子/〇ザーツバルム/
5/5【寄生獣 セイの格率】〇泉新一/〇加奈/〇田村玲子/〇島田秀雄/〇後藤/
5/5【下ネタという概念が存在しない退屈な世界】〇奥間狸吉/〇華城綾女/〇鬼頭鼓修理/〇アンナ・錦ノ宮/〇《頂の白》/
5/5【Charlotte】〇乙坂有宇/〇友利奈緒/〇高城丈士朗/〇西森柚咲/〇乙坂歩未/
5/5【ハナヤマタ】〇関谷なる/〇ハナ・N・フォンテーンスタンド/〇笹目ヤヤ/〇常盤真智/〇常盤沙里/
5/5【ヘヴィーオブジェクト】〇クウェンサー=バーボタージュ/〇ヘイヴィア=ウィンチェル/〇ミリンダ=ブランティーニ/〇フローレイティア=カピストラーノ/〇プライズウェル=シティ=スリッカー/
5/5【六畳間の侵入者!?】〇里見孝太郎/〇東本願早苗/〇虹野ゆりか/〇笠置静香/〇藍華真希/
4/4【異能バトルは日常系の中で】〇安藤寿来/〇神崎灯代/〇櫛川鳩子/〇高梨彩弓/
4/4【がっこうぐらし!】〇丈槍由紀/〇恵飛須沢胡桃/〇若狭悠里/〇直樹美紀/
4/4【ご注文はうさぎですか?】〇保登心愛/〇香風智乃/〇天々座理世/〇桐間紗路/
4/4【監獄学園】〇藤野清志/〇諸葛岳人/〇白木芽衣子/〇緑川花/
4/4【干物妹! うまるちゃん】〇土間埋/〇土間大平/〇海老名菜々/〇橘・シルフィンフォード/
4/4【落第騎士の英雄譚】〇黒鉄一輝/〇黒鉄珠雫/〇桐原静矢/〇東堂刀華/
3/3【オーバーロード】〇モモンガ/〇クレマンティーヌ/〇シャルティア・ブラッドフォールン/
3/3【SHIROBAKO】〇宮森あおい/〇高梨太郎/〇矢野エリカ/
3/3【夜ノヤッターマン】〇レパード(ドロンジョ)/〇ヴォルトカッツェ(ボヤッキー)/〇エレパントゥス(トンズラー)/
2/2【純潔のマリア】〇マリア/〇ガルファ/

計163人


みせしめ

【ジョジョの奇妙な冒険 スターダストクルセイダース】●モハメド・アヴドゥル/


主催者
【夜ノヤッターマン】〇ドクロベエ/
0093 ◆ZC0oB5s5Dg
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2016/03/16(水) 13:18:58.19ID:RS2Q8du3
投下終了です。色々と記憶したいのでwikiもついでに作ります。
0096 ◆ZC0oB5s5Dg
垢版 |
2016/03/20(日) 18:19:44.43ID:d8Q6wZJO
こんにちは。連投? にはならないんですかね。
投下します。
0097一話 海辺 ◆ZC0oB5s5Dg
垢版 |
2016/03/20(日) 18:22:31.46ID:d8Q6wZJO
 魔法使いは海辺を見る。自分の来ているところはここじゃなかった、ということはすぐわかった。
 状況判断。レレイ・ラ・レレーナはまず己の状況を判断する。
 確かに彼女にとっても「殺し合いに参加させられる」ということは突然の出来事である。
 だが、からといって動転するほど彼女は甘い者ではない。炎竜との戦いなど場数を踏んできた魔法使いである。
 なおかつ彼女は天才と言われる者だ。安直な状況判断などはしない。
 まず必要なことは身の安全を図ることである。
 彼女は殺し合いに参加する気はなかったが、殺されたいわけではない。 
 近くにあった草原に生える岩陰に身を隠し、支給品を確認する。

(しかしこれはどういう構造……?)
 レレイは不思議に思う。彼女がこの場にいた時、近くにバッグについてである。
 彼女はバック自体は知っている。かつて日本に訪れた時、そこの人間が持って歩いていたからだ。
 考えるに中にものをいれて運ぶ、便利のよい籠のような存在。そこまではわかっていた。
(だけどこんなに「物が入る」ことなんてあるのだろうか……?)
 その中には鉈と白い謎の衣装とショベル、そして猫が入っているのだ。
 普通に考えてバッグの中に入る量ではない。仮に入っていたといても、バッグの大きさを考慮すればギチギチになっているはずだ。
 にも関わらず、それぞれが余裕あるような隙間がある。
(いくらなんでも日本の技術力でもここまでできるのか……? そもそもこれはあちらの世界の「物理」を超越しているのでは……)
 レレイは興味津々を形にしたような少女である。この未知の構造をしたバッグも気にならないとなれば嘘になる。

(だが、そんなことをしている暇はない)

 レレイはすぐに切り替え、支給品の詳細を確認する。
 ショベルと鉈は、何の変哲もないものであった。
 武器として使えないことはないが、レレイは白兵戦は不得手である。
 盾や、なんらかの防具があれば、自分の魔法の補助になる。
 彼女の得意とする爆裂魔法はそれなりな威力があるため、本体の防護さえきちんとしていれば、効果的なのである。

(これもまた……もしかして日本以外には実用化されているのか?)
 そんな怪訝な目を向けた先は白い衣服である。
 頭が三角筋、もっというならイカのようになっている。
 両腕の裏に赤が配色がされており、胸の部分には目のような突起物がある。
 おそらく「イカ」を模したものだろう、とレレイは思う。
 興味で日本を調べる時に、そんな生き物を目にしたような記憶があったのだ。
 そんな現実的なものに反して、この服の効果は着ると透明になるという。
 そんな機能があるものは日本でも聞いたことがなかった。本当かと試しに着てみたが、どうやら効果は確かなようだ。
 流石に強い衝撃を受ければ壊れるらしいが、そんな技術を獲得している時点ですごい。
 そして猫。単なる猫である。それ以上でもそれ以下でもなかった。
 先ほどのイカスーツにも説明書がついており、それで透明化の要素を知ったのだが、今回の猫はそれでしかない。
 櫻田家、という「王族」の家で飼われている猫、という説明を見て、レレイは思う。

(櫻田……という名前からしておそらく日本の人間と思われる。だが少なくとも私の知っている日本は『王政』ではなかった。確かに日本には皇族はいるが、それならば説明も皇族になっているはず。仮に大雑把に『王族』としていても、日本のそれには名字がなかったはずだ)

 矛盾が伴う。そもそも地図を見るに、ここに自衛隊駐屯地がある時点でおかしい。
 彼女が知っている限り、こんな土地に自衛隊は駐屯していないはずだ。
 たとえそれを知ってなくても、門がなぜこんなところにあるのか。アルヌスの丘はここではないはずだ。

(となると、意図的にここに門を召喚させた可能性もある。門は異世界を繋ぐ者だから、『櫻田』という王族がある世界と繋げたかもしれない。そうやって参加者を集めて……)

 と思いながらレレイは参加者名簿を見る。
 櫻田と呼ばれる王族であるらしいものは、なんと5名もこの殺し合いに参加させられているらしい。
 とは言ってもこれは憶測にすぎない。レレイがいくら天才と言ってもGATEの向こう側の世界を完璧に把握しているわけではないのだ。
 もしかしたら櫻田という王族が他の世界にいるかもしれないし、自分の知っている皇族の知識が間違っているかもしれない。
 確証を得るにはもっと情報が必要だ。レレイはまだ判断しない。
0098一話 海辺 ◆ZC0oB5s5Dg
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2016/03/20(日) 18:24:37.59ID:d8Q6wZJO
(……少なくとも自衛隊の隊員と、そしてロゥリィをここに呼んでいる時点で油断はできない)

 自衛隊。自分の生きる世界においては最強の軍隊。
 ロゥリィ。自分の生きる世界において最強クラスの人物。
 そんな人物をこの殺し合いに参加させている。生半可な実力や組織力がなければ不可能だろう。
 とはいえ、仲間にはしたい者達だ。彼女は参加者名簿を確認すると、とりあえず仲間に合流する方法を考える。
 おそらくこの自衛隊駐屯地、ついでに付近にある門に集まるだろう。
 だとしたら、そこに向かうのが一番確実。とすると、まず現在地を把握する必要がある。

 現状の把握のためには歩く必要がある。ならば今、必要なものは姿を隠すことだろう。
 透メイカーはそれに最も適している。今のところ、敵と交戦する必要もないし、武器も必要ないだろう。
 そう思ってまず鉈を入れ、次にショベルをバッグにしまうと手にとった。
 土を掘る先端が他の者を映した時、レレイの耳に声が入ってきた。

「そこの人ー!」

 呼び止められたようだ。レレイは振り向く。
 敵意はなさそうな声だが、油断せず、防御魔法の展開を考慮する。
 眼前にはツインテールの――おそらく日本の「学生服」を着た少女がいた。

「そのシャベル、私の―!」


 少女の名前は恵飛須沢胡桃。私立巡ヶ丘学院高等学校三年。学園生活部部員。
 男勝りで、性格に合うように運動神経もいい。
 レレイが色々と会話を交わしてわかるのはそのことと、彼女の移動した地理情報から自分のいる場所がC-1だということ、そして胡桃という少女は少し甘い性格なのではないか、ということである。

(おそらく日本に住んでいる「学生」という、言うなれば一般市民なのだろう。しかし、だからといって不用意に人の元へ近づくのは危険。殺し合いという場では迂闊ともとれる)

 もちろん自分は殺す気はないし、相手も殺す気がないのはわかっている。
 先ほどの「異世界から集められた」仮説を証明するためにも情報は得たい。
 ただ、これから行動するとなると、かなり厄介になるのでは、と思っただけである。

(ただ、運動神経は恐らくこの少女の方が上。先ほど、こちらへ向かってくる走りをみれば健闘はつく。もし、何らかの状態で魔法が使えなくなれば、心強い味方になるかもしれない)

 もっとも、一番は自衛隊などの戦士であるが、などとレレイは考えていると、胡桃は不思議そうな顔で話しかける。

「何か言いたいこと、ある?」
「あ、いや、別に」
0099一話 海辺 ◆ZC0oB5s5Dg
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2016/03/20(日) 18:25:33.76ID:d8Q6wZJO
 言っても仕方のないことだ。
 レレイはまず少女から開口一番にねだられたシャベルを手渡す。 どうせ自分には扱える武器にはできないし、飛ばす武器としてはそこそこの効果があるかもしれないが、せいぜい「そこそこ」止まりだ。
 それより物々交換の材料に使った方がいいと判断したのである。

 そのようにレレイは思っているが、この胡桃という少女は、彼女の思うほど、甘くはない。
 胡桃の支給品の1つに双眼鏡がある。彼女がこの地に着いた時、まずこれで周囲を観察した。
 わかるだろうが、これは警戒のためである。
 その途中で彼女は、青髪の少女、レレイを見つけたのである。
 修道士というか、魔法使いのような格好をしていたのでそこは不思議だが、まず警戒対象として目星をつけた。
 彼女の支給品ももちろん把握できた。そして自分の獲物であるショベルを目にしたのである。
 胡桃からしてみればこのショベルは手に入れたいものであった。
 彼女は映画でいう「ゾンビ」、彼女の世界で言う「かれら」を相手に生き残ってきた者である。
 そんな生死の狭間を行き交っていた彼女であるが、あくまでも敵は「人間ではない」存在である。
 というよりは「人間でない」と思わなければ殺せなかった。
 それはさておき、つまり相手が人間というのは初めてなのだ。
 だからこそ、かつて持っていた武器は持っておきたい。
 シャベルは本来武器として使うものではないが、それでも使い慣れたもの得るというのは、この不可思議な状況下、必要とするものであった。
 幸い、自分の武器に中に銃器があった。
 青い髪の女は何やら透明になれるらしいが、武器はあくまでも近距離用。
 少なくとも逃げる術には活用できるだろう。
 相手は見るところ、自分よりは体格がよくない。チャンスは十分にあるだろう。

(にしても……あたしも少し安直だったかもな)

 胡桃も完全に安全というわけではない。レレイの思ったように「甘い」部分もある。
 その要素の1つは現在、胡桃が見ているものである。
 鉈が浮いているのである。比喩でもなんでもなく、鉈が浮いている。
 それがまたヘリコプターのように動く。
 そのような物理法則を無視したような動きを、レレイは起こしていたのだ。

「それがレレイちゃんの、魔法、ってやつ? こんなの初めて見たよ……」
「あなた達の『日本』でもそれは滅多に見ないということ?」
「滅多に……というよりさっぱりだな……」

 こんなもので攻撃されたら慣れない銃撃などあまり意味がない、と胡桃は心の中で冷や汗をかいた。
 彼女もその類のものがこの世界にないと思っているわけではない。
 会場に集められた時の「アヴドゥル」という男は謎の炎を発射する人型のものを召喚していた。
 だが、胡桃はそれだけでは確信できない。あまりにも非現実的で信じられなかったのだ。
 主催者の使ったマジックや、演出や、そういう類のものと思っていたのである。
 今回の魔法をみてやっと納得できたが、これは迂闊だった。
 たまたま運がよかったからいいものの、これから気を付ける必要はあるだろう。

(あたしも『絶対に』ないとまでは思ってなかったんだけどな)

 胡桃はレレイの持っている杖をみながらそう思う。
 この杖は本来、胡桃の支給品である。ショベルとの物々交換で決めたものだ。
 釣り針のような杖の頂上に丸い球がついている。
 奇怪な形だがこれは単なる変なオブジェではなく、魔法使いにとっては優れものである。
 簡単にいえば「魔力を使う段取りを省略し威力を高める」ものである。
 例えば呪文や詠唱など、そういうものが必要になる魔法を省略し、すぐさま効果を発揮できる、ということだ。
 それプラス威力を高めるおまけつきである。
 元々魔法使いではない胡桃には魔力もごく少ないため、使用にはできないがレレイは天才的な魔法使いである。
 その効果は絶大だろう。レレイにとっては強力な武器となる。
0100一話 海辺 ◆ZC0oB5s5Dg
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2016/03/20(日) 18:29:19.92ID:d8Q6wZJO
「さて……ここで聞きたいんだけど、あなたのいる『日本』では死霊、もしくは『ゾンビ』が跋扈しているのか?」
「『ゾンビ』……まあ例えるとすればそんなもんかな。詳しいことはわからないが、多分、壊滅的な状態かな」

 壊滅的、となるとおかしい。レレイは思う。
 彼女も日本全土を渡っていたわけではないが、壊滅的となれば話は別だろう。
 日本には自衛隊と言う相当な戦力があるわけだし、ゾンビの退治など造作もない筈だ。
 そんな軍隊でも太刀打ちできない状態のゾンビの跋扈……となるとレレイの知っている日本とは大きく異なるわけである。
 また「櫻田」という王族を知っているか、と聞いても知らないと答えられた。

(となると、櫻井家がいる世界と胡桃のいる世界は別。もちろん私のいる世界は別……ということになる。もちろん、精神が錯乱している可能性はあるけれども、「門」と存在がある以上、それはそこまで重視できるべきこととは思えない)

 おそらく「櫻田家」の一人と会えば確信が持てるだろう。
 レレイはそう思いながら、胡桃に話しかけた。

「ここからあなたはどこに行くつもり? やはり巡ヶ丘学院高等学校?」
「まあそっちには向かいたいところだが……そもそも私と同行するのか? 魔法なんか使えないし足手まといもいいところだと思うぞ」
「そこまで不要とはいえない。確かにあなたに魔法は使えないが、運動神経は私より優れている。これは憶測だが私に対抗できる魔道士もいるかもしれない。その際に私の魔力が尽きた時、一番頼りになるのはあなた」
「運動神経って……そりゃ戦ったことがあるけど、レレイの言ってた自衛官やら、ロゥリィって人やらに比べたら、格下だぞ」
「たとえそうでも、現時点の私においてはとても必要な存在。もちろん、あなたが嫌というならそれでいい」
「いやいやいや、あたしはむしろ同行を頼みたいよ。その魔法なんてのは大きな武器になるし。逆にレレイは行きたいところってあるの?」
「自衛隊の駐屯地、および門。おそらく仲間もそこに集まると思われる」
「レレイの仲間って強いんだろ? ……もちろん私も自分の友達には会いたいけどさ、私が死んじゃったら元も子もないし」
「その点は大丈夫。そもそも戦闘力・生存能力が共に優れているため、後から合流しても問題はない。距離としても巡ヶ丘学院高等学校が近いため、手っ取り早い」
「そうか……? いやそうしてくれるのはありがたいんだが、どうして」
「西部の都市部は学校が集結している。あなたの在籍していた高校が本来の場所ではなくここに写されているということは、他の高校もそうなっている可能性はある。つまり人が集まりやすいということ。私達の仲間を増やすことはできる」
「脱出する同士ってことか……。でもこの殺し合いにも乗ってる奴はいるかもしれないぞ」
「殺し合いに乗っていても学生か、教師の類。兵士や戦士のような人間に比べたら危険性も戦闘力も弱いだろう。仮に高い者がいても、遮蔽物が多い方が私の魔法や、一般市民のあなたにとっては有利。少なくとも草原という範囲が広い場所よりは生存できる可能性が高い」
「おお……すっごい考察……。なんか全然考えてなくて申し訳ない気分だよ……」
0101一話 海辺 ◆ZC0oB5s5Dg
垢版 |
2016/03/20(日) 18:31:10.77ID:d8Q6wZJO
 胡桃はレレイが仲間で本当によかったと思った。
 稚拙な表現だがそう表すのが最もわかりやすいのだ。
 感心した表情で胡桃が青髪の天才魔法使いを見ていると、レレイはポツリと言った。

「それに……人間が殺されるのは好きじゃない」

 レレイは冷静な魔法使いである。
 ギブ&テイクを重んじる、天才で平静を辿る少女。
 だが、彼女は冷血ではない。炎龍と戦う際も啖呵をあげ、仲間が死ぬ中、奮起する人間なのだ。
 戦闘に全く関係ない人間が強者に蹂躙される姿など、彼女でも忌み嫌う存在なのである。
 胡桃はそれを聞いてフッと笑い、言った。

「冷静そうに見えて結構熱いところもあるんだな……。ん? なんだそれ」
「これは透メイカーと言って……」
「ああ、透明になるやつか」
「その双眼鏡……で確認済みということか。私の仲間になってくれたことに関してのお礼。私には防御魔法があるし、あなたの武器の特質を考えると透明な方が効果的」
「それはそうだな……いやー、色々とやってもらって申し訳ないな……。ところでなんだが、レレイって何歳なんだ? 見た目から私と近いかなって思ってたからタメ口だったんだけど、なんか話していると大人びているからさ……」
「私は16歳。日本でいうところの……中学生くらい」
「あたしは高3!」

 いったん、間が空いた。

「……胡桃さん」
「いや、呼び捨てでいいよ……」

 2人の少女はお互いを見ていた。
0102一話 海辺 ◆ZC0oB5s5Dg
垢版 |
2016/03/20(日) 18:40:04.36ID:d8Q6wZJO
【一日目・午前0時頃/C-3・草原】

【レレイ・ラ・レレーナ@GATE 自衛隊 彼の地にて、斯く戦えり】
【状態】健康
【装備】エンジェルハイロゥ@六畳間の侵入者!? 鉈@現実
【道具】ボルシチ@城下町のダンデライオン 通常支給品一式
【思考】基本:殺し合いから脱出する。
1:胡桃と行動して巡ヶ丘学院高等学校に向かう。
2:かつての仲間と合流したい。ゾルザルは勘弁。
3:自分と行動を共にしてくれる仲間を集めたい。
4:門も気になるので向かいたい。
5:色んな異世界から人が集まっているかもしれない……?
※登場時はまだアニメ終わってないのでそのうち決めます。
※恵飛須沢胡桃と情報交換しました。

【エンジェルハイロゥ@六畳間の侵入者!?】
魔法の杖。元々は虹野ゆりかの所持品。
ウィキペディア先生によれば魔法の発動を早くしたり、威力を高めたりできる。
ロワ内では魔法を使わない人もいるが、少々の魔力を使ったりはできる。

【鉈@現実】
木とか斬ったりする刃物。某蜩が鳴いたりする話ではメインウエポン。

【ボルシチ@城下町のダンテライオン】
櫻田家にいる猫。声が速水奨。とても尊大な性格。


【恵飛須沢胡桃@がっこうぐらし!】
【状態】健康
【装備】胡桃のショベル@がっこうぐらし! ワルサーP38(8/8)@ルパン三世
【道具】ワルサーP38の予備マガジン×2 双眼鏡@現実 透メイカー@パンチライン ヒロイック・ガーネット@ローリング☆ガールズ 通常支給品
【思考】基本:仲間と一緒に脱出したい。
1:レレイと行動して巡ヶ丘学院高等学校に向かう。
2:自分の仲間と合流したい。
3:脱出してくれる仲間を集めたい。レレイの仲間とも合いたい。
※ワクチン効いた頃に参戦。多分、最終回あたり。
※身体能力がすごい上がっているかもです。
※レレイ・ラ・レレーナと情報交換しました。

【胡桃のショベル@がっこうぐらし!】
ショベル。なんだけどゾンビの首とかを真っ二つにできるくらい丈夫。

【ワルサーP38@ルパン三世】
ルパンの愛銃。八発装弾。予備弾薬マガジン付。
詳しくないけどなんかいい銃らしいですよ。

【透メイカー@パンチライン】
着ると透明になるイカの形をしたスーツ。流石に強い衝撃をつけると壊れる。
グーグル先生では「透明イカスーツ」で検索したほうが画像を見つけやすい。

【ヒロイック・ガーネット@ローリング☆ガールズ】
石の名前。執行玖仁子の所有物。
チョーカーにあしらう形で付けられている。
ついでに石の名前というよりは勝手に執行さんが付けてるだけ。

【双眼鏡@現実】
双眼鏡です。遠くのものとか見えますよ。
0103 ◆ZC0oB5s5Dg
垢版 |
2016/03/20(日) 18:41:39.29ID:d8Q6wZJO
投下終了です。wikiにも多分書きます。
0104 ◆84AHk0CknU
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2016/03/22(火) 11:19:38.25ID:8vVCimlo
新ロワ投下乙です

アブドゥルー!!ポルがアヴさんの無念を晴らしてくれることを祈る
そしてこれは良い可愛いコンビ。

愛好作品ロワがちょっと行き詰ってるんで、息抜きに別のロワ投下します
まずオープニングと名簿を
0105開幕 ◆84AHk0CknU
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2016/03/22(火) 11:21:28.13ID:8vVCimlo
選ばれた11の世界。

クッソ汚いホモたちが欲望のままに生きる世界。
遥か未来の汚染都市で生まれたニードレス(不用者)の世界。
地球侵略を目論む宇宙人と正義のヒーローである少年が日々戦い続ける世界。
企業の陰謀で生まれた生物兵器が蔓延る世界。
ある霊感体質の兄妹を中心に、おばけ騒動が起こる世界。
兄に恋する妹とそれを取り巻く少女たちの世界。
異形を騎る魔女と、帝国へ反逆する魔王の世界。
とある少年と邪神達による騒動が日々絶えない世界。
未知なる力を手に入れた4400人の生還者が居る世界。
偶然怪物への変身能力を得たティーンエイジャーが、怪事件に立ち向かう世界。
壊れた赤い女王が原因で世界中で屍者が闊歩する世界。

交わるはずの無い世界の住人達が、ある儀式に巻き込まれた。

「やぁ」

黒一色に塗り潰された空間。
人々の困惑と恐怖と怒りの声が響く中、前方が光で照らされた。
光を浴びた事でステージ上に居る男の姿が、人々の目に映る。

黒髪で端正な顔立ちの青年。
気味の悪い笑みを浮かべ、未だざわつく人々を見下ろしている。
中にはこの男の知り合いだろうか、名前を呼ぶ者もいた。

「まずは自己紹介といこうか。既に知っている者も数人いるが、名乗らせてもらおう。
 私はロロ・ヴィ・ブリタニア。今回の儀式の進行役を担当している」

儀式。
それはなんなのか。
一体自分達に何をさせようというのか。
人々の顔にはそんな疑問がありありと浮かんでいる。

注目が集まる中、青年はゆっくりと口を開く。

「我々の崇高な儀式、バトルロワイアル。君たちには今から―――殺し合いをしてもらう」

静寂。
青年の言葉を受けた人々は一斉に口を噤む。
沈黙の空間で青年は楽しげに続ける。

「儀式のルールを説明しよう。これから君たちを儀式の会場へ送る。そこで思う存分殺しあってくれたまえ。
 会場は中央に都市が位置し、四方を森林や海岸で囲んでいる。会場には君たちに馴染み深い施設が色々と用意されているぞ。
 君たちにはこのデイバッグが各自配られる。これには会場の地図、食料、水、コンパス、筆記用具、懐中電灯など一式が入っている。
 それから殺し合いをする為の武器や防具もだな。ランダムで1〜3個入っているが、必ずしも役立つものが入っているとは限らん。
 まぁ外れでも気を落とすな。他の参加者から奪ってもいいのだからな」
0106開幕 ◆84AHk0CknU
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2016/03/22(火) 11:22:22.73ID:8vVCimlo
一旦話を止め、自らの首をトントンと指で叩く。

「既に気付いているかもしれんが、君たちが付けているその首輪。それには爆弾が仕掛けられている。
 ああ待て待て、無闇に外そうとすればドカン!だ。首輪は他にも会場から脱出しようとしたり、我々へ攻撃をした場合にも爆発する。
 中にはこの程度の爆発では死なない者もいるが…残念、そういった者の能力には手を加えさせてもらったよ。
 信じられないのなら好きにするといい。とはいえこちらとしては死ぬのは殺し合いの最中にしてもらいたいのだがな」

誰も首輪に触れなくなったのを確認し、青年は説明を続ける。

「儀式を生き残れるのは二名だ。残り人数が二名になったらバトルロワイアルは終了。無事に家へ帰してやろう。
 そして生き残った者には儀式に参加した報酬として、あらゆる願いを一つ叶える権利が与えられる。
 あらゆる願いを、だ俗物的なものから、死者の蘇生、敵対者の完全消滅など全てが可能だ。
 信じられないかな?だが君たちの中には、今こうして自分が存在していること自体、本来ならば有り得ない者も居るだろう?」

含みを感じさせる言葉に何人かが反応した。

「だが願いを叶えられるのはどちらか片方のみだ。生憎二人分の願いは聞き入れられないのでな。
 どちらの願いを叶えるかは生き残った者で相談するといい。それくらいは待っておいてやろう。
 どうしても意見が纏まらないのなら片方を殺しても構わん。儀式が終了したのなら、優勝者が死んでも問題はない。
 さて説明は以上となるが……ああそうだ、最後に首輪の威力を実際に見てもらうとしよう」

青年が指をパチンと鳴らす。
すると奇怪な事に、突然ステージ上に二人の人間が姿を現した。
一人はメガネを掛けた中学生くらいの少年。
もう一人は白衣に肌色のズボンを穿いた老人で、一見生足を晒しているようにも見える。
二人とも両手と両足を拘束され、猿轡まで嵌められている。

「君たちには私に逆らったらどうなるかの、丁度良い見本となってもらおう」

首輪のランプが激しく点滅し、二人は必死にもがく。
彼らの知り合いらしき者たちが、必死の声で静止を求めるが当然聞き入れられる訳も無く。

ボンッという音と共に、首なしの死体が二つできあがった。

悲鳴と怒声が次々と起こる中、青年は再び指を鳴らす。
すると徐々に声は数を減らし、やがて無音となる。
自分以外居なくなった空間で、青年は全てを嘲るようにけらけらと笑い続けていた。


【主催者:ロロ・ヴィ・ブリタニア@コードギアス ナイトメア・オブ・ナナリー】
【委員長@でろでろ 死亡】
【吉阪博士@チャージマン研! 死亡】

GAME START
0107名簿 ◆84AHk0CknU
垢版 |
2016/03/22(火) 11:23:43.50ID:8vVCimlo
【真夏の夜の淫夢】8/8
○野獣先輩/○MUR/○KMR/○遠野/○AKYS/○虐待おじさん/○ひで/○KBTIT

【NEEDLESS】7/7
○アダム・ブレイド/○クルス・シルト/○照山最次/○六道銀/○セツナ/○未央/○梔

【チャージマン研!】6/6
○泉研/○泉キャロン/○バリカン/○星君/○雄一/○ボルガ博士

【バイオハザードシリーズ】5/5
○クリス・レッドフィールド/○ジェイク・ミューラー/○シェリー・バーキン/○アルバート・ウェスカー/○ウスタナク

【でろでろ】4/4
○日野耳雄/○日野留渦/○サイトーさん/○カントク

【お兄ちゃんだけど、愛さえあれば関係ないよねっ】4/4
○姫小路秋人/○姫小路秋子/○那須原アナスタシア/○猿渡銀兵衛春臣

【コードギアス ナイトメア・オブ・ナナリー】3/3
○ナナリー・ランペルージ/○ゼロ/○アリス

【這いよれ!ニャル子さん】3/3
○ニャル子/○八坂真尋/○クー子

【the4400】2/2
○ショーン・ファレル/○イザベル・タイラー

【ハイスクール・ウルフ】2/2
○トミー・ドーキンズ/○マートン・J・ディングル

【バイオハザード(実写版)】1/1
○アリス・アバーナシー

45/45
0108 ◆84AHk0CknU
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2016/03/22(火) 11:26:30.15ID:8vVCimlo
投下終了です
また淫夢が出てるけどおじさん許しちくり〜(懇願)
0110 ◆84AHk0CknU
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2016/03/24(木) 01:38:53.00ID:QszNotc+
(なんなんだよこれ……)

会場東部の森林エリア、そこで参加者の少年が困惑していた。
少年――八坂真尋はどうしてこうなったと、先程の惨劇を思い出す。
つい最近恋人になった居候の邪神との相変わらずな一日を過ごし、自室で眠りに就いたと思ったら、
いきなりあのホールで目を覚ました。
当初はまたどっかの宇宙人の珍騒動に巻き込まれたかとため息を吐きつつも、どうせニャル子達が解決するだろうと楽観していた。
だが見せしめと称し二人の人間が無残に殺された時、そんな考えは吹き飛んでしまった。

(よく分からないけど、これは今までのアホな騒ぎとは違う…。)

これまでも、アホらしい動機で発生した地球規模の事件に度々遭遇して来ている。
一ヶ月程前にニャル子が地球に来て以来、心休まる日など無いドタバタの連続。
続けてクー子やハス太までが八坂家に住むようになってからは、更にふざけた騒動に巻き込まれ頭を痛める日々が続いた。
だが人死が起きた事は一度も無いし、ニャル子たちだってここまで悪趣味な真似はしないはず。
普段から邪神へ容赦なくツッコミをしてるだけあって、真尋のメンタル面は強い方である。
だがこれほど明確に死を近くに感じた事など一度もない。
噴水のように血が噴出する頭部の無い死体。
思い出すと、想像以上のグロテスクさに吐き気がする。

(とにかく早くニャル子かクー子を探そう。僕だけじゃどうしようもない)

名簿には我が家に居る邪神の内、二体の名前があった。
あのニャル子たちまでもが拉致した主催者に戦慄を覚える。
とにかく今は彼女たちと急いで合流しなくては危険だ。
フォークで邪神を撃退できる真尋だが、この異質な場で普段のノリが通用するとは思えない。
支給された自衛に使えそうな手斧を持ち、まずは森を抜けようと歩き出す。

数分歩いたところで前方に人の姿が見えた。
緊張により汗ばむ手で手斧を握り締め、慎重に近付く。
そこに居たのは真尋と同年代と思われる少女だった。
青いショートヘアで、スリットの入ったロングスカートに胸元が大きく開けた服。
顔立ちは整っており、美少女の部類に入るだろう。

露出度の高い服装に一瞬、真尋が恥ずかしげに視線を逸らし考える。
彼女は殺し合いに乗っているのかどうかを。
少女とは大分距離があり、見た所武器も持っていない。
ここから声を掛け、大丈夫そうならそのまま近付き、危険そうなら逃げる。
これでいこうと決断し前を向く。
0111 ◆84AHk0CknU
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2016/03/24(木) 01:40:28.68ID:QszNotc+
その僅かな間に、真尋の目の前に少女が移動していた。

「なっ!?」

驚く真尋だが少女はそのリアクションを無視し、彼の腹部に蹴りを入れる。
突然の衝撃に呻く真尋の首根っこを掴むと、地面に叩きつけた。

「ガっ…」

少女は痛みに身をよじらせる真尋を片足で強く踏みつけ動きを封じる。
その際真尋の手から落ちた手斧を拾い、片手で弄ぶ。
真尋を冷たく見下ろしながら、少女が話しかけてくる。

「あんな無用心に近付いて来るなんて…。あんた、状況分かってるの?」
「ぐっ、な、何が…」
「殺し合いよ、こ・ろ・し・あ・い。
 ま、ロクに反応できないってことはニードレスでもない、レジスタンスでもないただのガキなんでしょうね」
「お、お前殺し合いに乗ったのかよ…」
「ええ。あいにくこっちはこんな所でモタついてられる程暇じゃないのよ。
 それに丁度良くあいつらも来てるみたいだし、纏めて殺すには良い機会だわ」

平然と殺すと宣言する少女を見て、真尋は己の不運を呪う。
よりにもよって最初に会ったのがこんな危険人物だとは。
抵抗しようにも、それを阻止するように足に力を込められ、自分の胸に痛みが走る。

真尋は知る由も無いが、少女の名はセツナ。
アダム・アークライト率いる、巨大製薬企業シメオンの少女部隊の一員。
そしてミッシングリンク級のニードレス。
人を殺すのに躊躇などする筈も無い相手である。

「おしゃべりはここまでね」

弄んでいた手斧を握りなおし、振り下ろす為に構える。
真尋は青ざめた顔で尚も身じろぎするが、やはり抜け出す事はできない。

(こんなとこで死ぬのか……?)

真尋の頭に絶望の二文字が浮かぶ。
このまま自分の支給品で頭をかち割られ死ぬ。
ニャル子達と過ごす日常も悪くは無いと思えてきた矢先、こんな理不尽な死を迎えるというのか。

(僕は……)
「バイバイ。どっかの誰かさん」
0112 ◆84AHk0CknU
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2016/03/24(木) 01:41:37.57ID:QszNotc+
「二人、か」

ゾクリと、真尋とセツナが共に悪寒を感じた。

セツナは振り下ろしかけた手を止め、真尋は目前に迫る死を一瞬忘れ、声の主を見る。
彼らから少し離れた場所、そこには夜の闇とは違う、黒が居た。

漆黒のマントと仮面に身を包んだ異形。
マントの下には同じく黒の装甲服と、金の刺繍が入った紫のボディスーツ。
スーツ越しに強調された肉体は、鋼のように強靭な印象を見る者へ抱かせる。

男の名はゼロ。
ルルーシュ・ヴィ・ブリタニアが魔女C.C.との契約により生まれ変わった姿。
エデンバイタルより与えられた使命を遂行する魔王。

バキリと地面に転がる枝を踏み折りながら、ゼロは固まる真尋達へ近付く。

「っ、ディーンドライブF・H(フォックスハウンド)!!」

ゼロが何かを仕掛けるよりも先にセツナが動いた。
真尋にやったよりも速く、速〈スピード〉の能力でゼロへ拳を繰り出す。
が、その一撃は容易く避けられた。
しかしその程度はセツナにとっても予想の範囲内。
能力を駆使し、繰り出されるは無数の拳。
柔な一般人なら全身風穴になる程の威力を持つそれが、魔王へ襲い掛かる。

「ほう、ヤツと同じような能力か」

ゼロはそれらを全て避ける。
契約で得た超人的な肉体を用いれば、実に容易い。
セツナは拳だけではなく、次第に蹴りも織り交ぜゼロを叩き潰さんとする。
だがゼロはその全てを躱し、両手でいなす。
時折十に何発か当たるものの、怯む様子は見られない。
反撃の暇を許さぬセツナの攻撃だが、決定的な一撃は与えられずいた。

「くっ…」

埒が明かず苛立つセツナ。
更に速度を上げようとした時、左右から黒い布が襲い掛かった。

「っ!?」

攻撃を中断し布を回避。
そこへ追撃とばかりにゼロが拳を突き出した。
咄嗟に両腕でガードするも、勢いは殺せず後退する。
腕の痺れに顔を顰めるも、油断無く構え直す。

(そういえばあいつは?)

チラリと真尋の方を見るが、彼の姿はそこに無い。
セツナとゼロが争っている間に逃げたようだ。
0113 ◆84AHk0CknU
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2016/03/24(木) 01:45:53.97ID:QszNotc+
「一人逃げたか」
「ええ、でもいいわ。あんたを殺した後で追いかけて殺す」
「あの程度のスピードでか?」

ゼロの言葉に嘲るような笑みを浮かべるセツナ。
あれが限界だと思っているのならば見せてやろう、更に上の速さを。
そしてそのまま無様に死ね。

「ディーンドライブ…」

静かに構え、

「B・B(ブラックバード)!!」

突進する。

DD・FF(ディーンドライブ・フォックスハウンド)よりも上の速度を持つ必殺技。
一撃で決めようと拳を強く握り締め、

「――――えっ」

唐突に能力が解除された。
何が起こったか分からず顔を上げると、目の前にゼロが立っていた。
その手には紋様のようなものが浮かび、光を発している。

(まさか、こいつの能力――)


―――ゴッ!!


セツナの腹部に衝撃が来た。
ゼロの拳による一撃が容赦なく彼女を襲ったのだ。
木々をへし折りながら勢いよく吹き飛ばされ、それでもどうにか受身を取る。

「ガっ…あっ、うぅ……」

激痛に倒れそうになるがどうにか踏み止まる。
今は倒れている場合ではない。
確実にトドメを刺すべく、ゼロが追いかけてくるだろう。
傷ついた体に鞭を打ち、再び能力を発動する。

「ディーンドライブ・FF(フォックスハウンド)!」

己が技の名を叫ぶ。
声を聞いたゼロは迎え撃たんと構える。
だがセツナからの攻撃は一向に来ない。

「逃げたか」

あちらは重症、こちらはほぼ無傷。
不利を悟っての撤退か。

「さて…」

落ちていた手斧を拾うと、デイバッグ内に放り投げる。
セツナの居た方向と、真尋の逃げたであろう道を見比べ、やがて片方へ駆け出した。
0114 ◆84AHk0CknU
垢版 |
2016/03/24(木) 01:49:05.06ID:QszNotc+


「ハァ、ハァ、ぐぅっ……!」

木に背中を預け、痛みに耐えるセツナ。
少しでも遠くへゼロから逃げるために、彼女は能力を発動し続けた。
だが戦闘によるダメージと、全身に重く圧し掛かる疲労に耐え切れず、座り込んでいる。
警戒を緩めず周囲を睨み付けるが、ゼロや他の参加者が現れる気配は無い。
一先ずは逃げ切れたのだろう。

「クソっ、畜生っ!」

悪態が口を突いて出る。
少女部隊の人間としてあるまじき下品な言葉。
ここにマダム・ブラックが居れば、罰は免れないだろう。

「なんで!なんでなのよ!どいつもこいつも…っ!」

セツナの脳裏に浮かぶのは、殺し合いの直前に行われていた戦闘。
シメオン本社で、復活した照山と自分達を裏切った未央。
梔と共に二人と戦っている最中、照山が聖痕(スティグマータ)の保持者である事が明らかになった。
培養ポットから取り出された照山の死体に、未央が手に入れたエデンズシードを刺したことで照山は復活。
その時エデンズシードの影響で、偶然彼に聖痕が浮かび上がったのだ。

だがセツナにとってそんな経緯はどうでもいい。
重要なのはミッシングリンク級のニードレスである己が、三流のニードレスである照山にあっさり追い越された事。
この事実はセツナのプライドを大きく傷つけた。
何故血の滲むような努力で少女部隊のトップの座に上り詰めた自分ではなく、あんな雑魚にミッシングリンクを越える証が浮かび上るのだ。

それにさっきの仮面の男。
能力をいとも簡単に無効化し、手痛い一撃を食らわされた。
立て続けに自分よりも上の能力者に遭遇しプライドを傷付けられた事で、彼女の心は酷くささくれ立っていた。

「殺してやる…!照山もあの仮面男もみんな…!」

この場に居る仲間は梔のみ。
残りはブレイド一味と裏切り者の未央、そして顔も知らぬ有象無象。
敬愛する主、アークライトの下へ戻るためなら幾らでも手を汚せる。

嫉妬という感情に支配されながら、次なる戦いへ向け少女は体力の癒えを待つ。

【セツナ@NEEDLESS】
[状態]:疲労(大)、全身打撲、腹部にダメージ(大)、両腕に痺れ(徐々に回復)
[装備]:なし
[道具]:共通支給品一式、不明支給品1〜3
[思考]
基本:梔と共に優勝し帰還する
0:今は休む
1:梔を探す
2:皆殺し。特に照山は絶対に自分が殺す
3:優勝したら私にも聖痕が…?
[備考]
※第99話にて照山、未央との戦闘中からの参戦
※制限により速〈スピード〉の連続使用で肉体への疲労増加。
またディーンドライブR・Tは特に負担が掛かる。
0115 ◆84AHk0CknU
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2016/03/24(木) 01:51:25.07ID:QszNotc+
(なんなんだよあいつら!?)

ゼロとセツナから必死の思いで逃げ出した真尋。
ニャル子の外道戦法で耐性が付いた真尋だが、殺意を振りまき本気で殺しあう光景には恐怖を覚えた。
それでも何とか正気を保っていられるのは、それなりに場馴れしているからなのだろう。
人間では在りえない動きを平然と行うあの二人も邪神か何かなのかと考えつつ、ひたすら走り続ける。

―――ヒュン。

ふいにそんな音がして、ぐらりと体のバランスが崩れた。
地面に倒れ、何だと思い足を見ると、腿から下が無くなっていた。
体からあるはずの部位が失われているのを認識した瞬間、感じた事のない激痛が真尋を襲った。

「がっ、あああああぁぁぁぁァァァァ!!!」

言葉にならない絶叫が森に木霊する。
のた打ち回る真尋の下へ、マントを飛ばし彼の右足を切断したゼロが近付いてくる。

「無駄だ。私からは逃げられん」

セツナのような能力の持ち主ならともかく、一般高校生としての運動能力しか持たぬ真尋ではゼロを振り切るなど不可能だった。
真尋は痛みに涙を流し荒い呼吸を繰り返す。
その悲痛な姿に心動かされることもなく、ゼロは確実に息の根を止めようと手を伸ばす。





今度こそ終わりだ。
逃れられない己の死が近付いてくる。
まだ死にたくなんてない。
もう一度あの日常に戻りたい。
少し前は本気で嫌だった、けど今は悪くないと思えるあの日常に。

クー子がいて、ハス太がいて、母さんに暮井に余市、それにルーヒーやアト子、シャンタッ君。
そしてあの最も騒がしくてウザくて迷惑ばかり掛ける、大好きな邪神が隣にいる。

そんな日々に戻りたかった。

―――まっひろさーん!

目を瞑れば自分を呼ぶニャル子の声が安易に脳内再生される。
それ程に聞き慣れた、そしてもう聞く事のない声。

(はは…。なんだろうなこれ…)

無性にニャル子に会いたい。
会って、あいつのたわけた話にツッコミを入れて、そうして一緒にいたい。
けど叶わない。

魔王の手が首に掛けられ、持ち上げられる。
霞んでいく視界の中、右手で手刀を作っているのが見える。
この化け物染みた男なら、そりゃ素手でも殺せるよなぁと他人事のように思った。
意識が薄れ何もかもが見えなくなっていく中で、眩しい銀色の長髪が見えた気がした。


「ニャ……ル………ご…………め………………」


【八坂真尋@這いよれ!ニャル子さん 死亡】
0116 ◆84AHk0CknU
垢版 |
2016/03/24(木) 01:53:18.87ID:QszNotc+
心臓を貫き真尋が死んだ事を確認し、首を掴んだままの左手でねじ切る。
血塗れた首輪を外しバッグに仕舞う。
そうして首輪とデイバッグを回収すると、死体には目もくれず立ち去る。

(何故生きている?)

ロロ・ヴィ・ブリタニア。
あの呪われし愚弟は既に死んだはず。
なのに生前と変わらぬ姿のままゼロの前に現れ、彼を含む大勢に殺し合いを強要した。

(仮に奴が本当に生き返ったとして、この殺し合いには何の意味がある?)

奴はこの悪趣味な催しを崇高な儀式と言った。
つまり娯楽目的や自分とナナリーへの復讐という動機ではなく、何か別の目的があるということなのだろうか。
それにロロは『我々』という言葉を使っていた。
協力者がいてその者に何かを吹き込まれたのだろうか。

(…まぁいい。私は私の使命を果たす。それだけだ)

この殺し合いは存分に利用させてもらう。
参加者と主催者は全て殺し、その果てに新たな混沌を生み出す。
そうして世界は明日を迎える。
C.C.との契約を履行し、次代の魔王となったゼロに迷いは無い。
ただ気になる参加者は居る。

ナナリー・ランペルージ。
ゼロとは違う道を選んだ最愛の妹。
殺し合いに反抗するであろうナナリーとの戦いは避けられないだろう。
いずれ敵対する事を告げ旅立ったが、まさかこんなに早くその機会が来るとは予想外だ。

「俺はこの選択を変えるつもりはない。ナナリー、お前はどうする?」

【ゼロ@コードギアス ナイトメア・オブ・ナナリー】
[状態]:疲労(中)、全身にダメージ(小)、回復中
[装備]:なし
[道具]:共通支給品一式×2、手斧@現実、不明支給品1〜3、不明支給品0〜2(真尋)、真尋の首輪
[思考]
基本:魔王の使命を果たす
1:全参加者及び主催者を殺す
2:首輪を外したい
※参戦時期は本編終了後
※以下制限
1:身体能力及び回復速度の低下。
2:ガウェイン召喚可能時間10分。再召喚には3時間のインターバル必要。
3:ワープ能力の移動範囲縮小。
4:ザ・ゼロの出力に制限。


投下終了。規制くらいそうなのでこっちに宣言を。
0118 ◆ymCx/I3enU
垢版 |
2016/03/27(日) 23:19:26.64ID:Zwmll8mv
皆様投下乙です

久々に一話出来たので投下します
一人死にます/時間帯が明朝から午前に変わります
0119行先、定マラズ ◆ymCx/I3enU
垢版 |
2016/03/27(日) 23:20:41.81ID:Zwmll8mv
27話 行先、定マラズ
スカーレット・ガードナーはE-5エリアの市街地へとやって来た。
先刻襲撃し、教会方面へと逃げて行った白山羊の少年は結局放置する事にした。

「誰か居るかな?」

右手に得物のコルトS.A.Aを携え、スカーレットは市街地を歩く。撃った分の弾は補充済であった。

◆◆◆

シェパード種犬獣人の青年、沼倉勇喜はE-5エリア市街地を警戒しつつ歩く。
先刻交戦した狼兵士が逃げて行った方向へ彼も進んだが狼兵士の姿は見失ってしまった。拘っている訳でも無かったが。
右手には自分の武器の自動拳銃、スタームルガーP85を固く握り締めている。

(誰か居るのか? この辺りには……)

全ての死角に注意を向けられる訳では無いがそれでも出来る限り辺りに気を使う。

「……!」

勇喜は人影を発見する。
人間の少女、いや、よく見れば頭に角が生えているので純粋な人間では無いようだ。しかしそれ自体はどうでも良い事。

(あいつはまだ俺に気付いていない? 隠れて様子を見よう)

近くに停められていた軽トラックの陰に隠れる勇喜。
程無く、足音が自分の方向へ近付いて来る。
どうやら少女は自分の隠れている方向へ歩いているらしい、なら物陰から不意を突いてやろうと勇喜は画策する。

(さあ来いよ名前も分からない女の子。お前がこの軽トラの傍を通る時、それがお前の最期だ)

今か今かとその時を待つ。
しかし足音は止まる。代わりに車のドアの開閉音と、エンジン音が聞こえた。

「ん?」

流石におかしいと思い、何が起きているのか少しだけ顔を軽トラックの陰から出して確認しようとした。
直後。激しいアクセル音。そして衝突音。
大きく軽トラックの車体が跳ね、勇喜は撥ね飛ばされた上に、軽トラックの車体が勇喜の身体を押し潰した。
声にならない悲鳴をあげ、血反吐を吐き散らす勇喜。タイヤによって押しつぶされた胸部は最早彼の生命維持活動の役目は果たさない。
軽トラックの下敷きとなったシェパード犬獣人青年はしばらく呻いていたが、目を開けたまま、ぱたりと動かなくなった。

◆◆◆

「お兄さん、私を殺そうとしてたでしょ? 気付いてたからね? うわー胸潰されちゃって痛かったよねー? ま、もう死んでるけど」

軽トラックの下敷きになったシェパード青年の死体に向かって馬鹿にした口調で話し掛けるスカーレット。
青年が自分を待ち伏せしている事に気付いた彼女は、軽トラックの後ろに停められていたSUVに乗り込み、思い切り発進させ、軽トラックに追突させた。
結果、軽トラックは前方に跳ねるように押し出され、隠れていた青年を見事に圧潰す形となった。

「もーらい」

そしてスカーレットは青年が持っていた銃と予備のマガジンを回収する。

「新しい武器ゲット。ラッキー」

新たな武装を手に入れた事に喜んだ後はもうシェパード青年の死体には興味は無くなり、スカーレットは市街地の奥へと歩き去った。

【沼倉勇喜  死亡】
【残り41人】
0120 ◆ymCx/I3enU
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2016/03/27(日) 23:21:52.03ID:Zwmll8mv
【午前/E-5市街地】
【スカーレット・ガードナー】
状態:健康
装備:コルトS.A.A(6/6)
持物:基本支給品一式、.45ロングコルト(8)、スタームルガーP85(7/15)、スタームルガーP85の弾倉(3)
現状:殺し合いを楽しむ。次はどうする?
備考:キーレンの外見のみ記憶。



・・・・



投下終了です

最近執筆が滞っておりますが生きています
0121 ◆84AHk0CknU
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2016/03/28(月) 10:21:53.50ID:kYU4O3BP
投下乙です
ハッテン場トリオは全滅か
悲しいなぁ…(諸行無常)

自分も儀式ロワ投下します
0122新たに咲いた花を散らさないように ◆84AHk0CknU
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2016/03/28(月) 10:23:44.24ID:kYU4O3BP
「ぐすっ、うぅ〜……」

廃ビルの一室で緑色の生き物が蹲り泣いていた。
全体的にガチャ○ンに似たこの生物、名をカントクと言い、れっきとした妖怪である。
その名の通り彼は映画監督であり、自主制作映画を自らが館長を勤めるシネマ淵ヶ関で上映している。
自分の映画を敬わない者へ苛烈な私刑を行う以外は、人畜無害で臆病な妖怪。
それがカントクである。

「うぅ…。委員長くん…」

見せしめで殺された委員長こと平川和彦はカントクの友人だった。
その友人を惨たらしく殺された事に、カントクは涙を流している。

委員長が理不尽に死んだ事への悲しみ。
笑いながら彼を殺した、ロロという青年への怒り。
友の危機に慌てふためくだけで何もできなかった悔しさ。

カントクの中では様々な感情がごちゃ混ぜになっていた。

(私はどうしたらいいんだ……?)

このまま泣いていたって何も解決しないのは分かってる。
こんな恐い場所で殺されたくない。
できる事なら、委員長の仇を取りたい。
けどその為にどう動けばいいのか、何をすればいいのかが分からない。

自分には耳雄のような戦闘力も無く、留渦のような常に冷静な行動もできない。
己の命すら守り抜けるか怪しいのに、委員長の無念を晴らす事など可能なのだろうか。
それにロロを倒そうにも、反抗すれば首輪を爆発させられ委員長と同じ目に遭う。
(カントクの場合、首が無いので胴体に巻きつけられているようなものだが)
当然首輪を解除できる知識も技術も持っていない。
こんな様で何ができるというのか。

(私は、無力だ…)

己の力の無さを責め続けるカントク。
と、その背後へゆっくりと近付く影が一つ。
0123新たに咲いた花を散らさないように ◆84AHk0CknU
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2016/03/28(月) 10:24:54.25ID:kYU4O3BP
「はっ!」

気配に気付いたカントクが振り返ると、そこには金髪の女性が居た。
年の頃は20代前半といった所、顔立ちから日本人では無いことが分かる。
女は驚きと警戒が混じった目でカントクを見ていた。
現れた自分以外の参加者に驚き固まるカントクだが、女がバールのようなものを握り締めているのが視界に入ると一変、
殺されるかもしれない恐怖に堪らず飛びずさる。

「うおおぉぉォォン!?」
「っ!」
「ききききき君は、なな何だ!?わ、私を、ここここ、殺すつもりか?」
「えっ、あの」
「わわ私はまだ、し、死ぬわけにはいかん!や、やるならやるぞ!映画監督の底力見せたらぁ!」

必死に虚勢を張り構えてみせるが、ガクガクと全身が震え涙目になっているので、あまり意味は無い。
そのどこかコミカルな姿を見た女は、戸惑いながら話しかける。

「あなたは…何?B.O.W.じゃないの?」
「は、は?」





その後、女は自分が殺し合いには乗っていない事を伝え、怯えるカントクをどうにか落ち着かせた。
現在二人は廃ビル内にあった所々が錆付いたパイプ椅子に腰掛け、情報交換を行っている。

「じゃあカントクは妖怪…ジャパニーズ・モンスターっていう生き物なの?」
「は、はい。あの…、シェリーさんは本当に見覚え無いですか?一応ハリウッドで映画を撮らせていただいたことも…」
「そ、そうなの。でもごめんなさい。分からないわ」
「あ、そ、そうですか」

ションボリするカントクを尻目に女――シェリー・バーキンは考える。
この状況は何なのだろうかと。
中国でのバイオテロを食い止めた矢先、新たな事件に巻き込まれている。
何度記憶を巡らせてみても、拉致された、或いはガスなどで眠らせた覚えはない。
本当に何時の間にか首輪を嵌められ、あのロロという青年の前に、そしてこの会場に居た。
これだけでも十分不可解なのに、更に奇妙な事が二つ。

一つは名簿にあったアルバート・ウェスカーの名前。
クリスやジェイクといった頼れる仲間に混じり、その名が記されているのを見つけた時は首を傾げた。
直接会った事は無いがウェスカーは既に死んでいるはず。
重症を負いながらも、密かに生き延びていたのだろうか。
いずれにせよこれは実際に本人に会ってみなければ分からない。

そして二つ目は今シェリーの目の前にいるカントク。
最初カントクを発見した時その異様な見た目から、シェリーは彼を新手の生物兵器か何かだと思った。
だが驚いた事に彼はB.O.W.と違い、知性を持ち言語を話す妖怪という種族であるという。
彼が言うには日本で映画監督の職に就いているとのこと。
更にカントクの住む町では彼以外にも大勢の妖怪が暮らしており、人間との交流もそれなりにあると言うのだ。
俄かには信じがたいが、こうして実在する以上信じるしかない。

考え込むシェリーを余所に、カントクは自身のデイバッグの中を確認していた。
委員長の死にショックを受けそれどころでは無かったが、シェリーとの会話で少し落ち着いたので、
支給品と名簿を確認する程度の余裕は取り戻せていた。
0124新たに咲いた花を散らさないように ◆84AHk0CknU
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2016/03/28(月) 10:26:08.78ID:kYU4O3BP
「何てことだ…。彼らまで…」
「知っている名前があったの?」
「はい…。日野耳雄くんに妹の留渦ちゃん。それにペットのサイトーさん。委員長くんと同じ、私の友人達です…」

またしても友を傷つけようとするロロに怒りが湧くカントク。
シェリーもまた何の罪も無い少年を殺し、その友人たちまで殺し合いに巻き込む非道なロロに怒りを覚えていた。
湧き上がる怒りを抑えつつ、続いてランダムに配られた支給品を取り出す。
取り出したのはオートマチックの銃とその予備の弾倉。
シェリーにはその銃に見覚えがあった。
東欧と中国で共に戦ったジェイクが使用していたものだ。

「あ、シェリーさんの支給品はそのバールみたいなものですか?」
「ええ。あとは…」

そう言ってシェリーがバッグから取り出したのはビデオカメラ。
殺し合いの場には必要ない、外れ支給品というやつだろう。
しかし、カメラを見たカントクはハッとした表情で、何かを呟く。

「そうだ。私にできることは…」
「カントク?」

怪訝に思ったシェリーが話しかけると、カントクは真剣な眼差しで彼女に向き合う。

「シェリーさん。私の銃とそのカメラを交換していただけないでしょうか」
「えっ?」
「お願いです!今の私には、どうしてもそれが必要だ!」

頭を下げて頼むカントクに、シェリーは困惑する。

「銃が手に入るなら助かるけど…。いいの?」
「はい。私は映画監督としてカメラで戦いますから!」
「どういう事?」
「ロロの悪事をカメラに記録し、ドキュメンタリー映画を作る。
そうして奴の悪事を白日の下に晒して、委員長くんの無念を晴らすんです!」

戦う力が無くても、やれることはある。
映画監督として、そして委員長の友人として、それがカントクの決意だった。

「分かったわ。このカメラはあなたに」
「あ、ありがとうございます!」
「この事件の証拠を記録する為にも必要だし、ね」

微笑みカメラを渡すシェリー。

「そろそろ出発するわよ。まずはカントクの友達を探しましょう」
「は、はい!」

カントクから譲り受けた銃を手に、シェリーが先頭で廃ビルを出る。
その後ろを付いて行きながらカントクは思う。

(天国で見ていてくれ委員長くん。私は私なりのやり方で、きっと君の仇を取ってみせる!)
0125新たに咲いた花を散らさないように ◆84AHk0CknU
垢版 |
2016/03/28(月) 10:26:59.80ID:kYU4O3BP
【カントク@でろでろ】
[状態]:健康
[装備]:GOのビデオカメラ@真夏の夜の淫夢
[道具]:共通支給品一式
[思考]
基本:ロロの悪事をカメラに記録する
1:シェリーさんと行動
2:耳雄くん達を探す
[備考]
※原作終了後からの参戦


【シェリー・バーキン@バイオハザードシリーズ】
[状態]:健康
[装備]:ハンドガン909(15/15)@バイオハザードシリーズ
[道具]:共通支給品一式、予備弾倉×6、名状し難いバールのようなもの@這いよれ!ニャル子さん
[思考]
基本:殺し合いを止める
1:カントクと行動し彼の友人を探す
2:ジェイク、クリスとの合流
3:ウェスカーは生きていた…?
[備考]
※参戦時期はバイオハザード6終了後

支給品紹介
【GOのビデオカメラ@真夏の夜の淫夢】
シェリー・バーキンに支給。
皆さんご存知、絶対唯一神GO様がかつて使用した神器。
正式名称はDCR-VX1000 Handycam。
GO is GOD

【名状し難いバールのようなもの@這いよれ!ニャル子さん】
シェリー・バーキンに支給。
ニャル子のメインウェポンで、その名の通りバールのようなもの。
というかまんまバール。
敵を滅多打ちにしたり、投合して攻撃したりする。

【ハンドガン909@バイオハザードシリーズ】
カントクに支給。
バイオハザード6においてのクリスとジェイクの初期装備。
予備のマガジンが6つ付属している。
0127 ◆ZC0oB5s5Dg
垢版 |
2016/03/29(火) 00:51:44.76ID:2kWYHKGr
投下乙です。
GO様のビデオカメラもホモビを作る以外で活かされるなんて…(涙が)で、出ますよ。

ランダムアニロワの「2話 普通の生活」を投下します。
0128 ◆ZC0oB5s5Dg
垢版 |
2016/03/29(火) 00:52:45.82ID:2kWYHKGr
(やってらんないわよ、殺し合いなんて)

 端正な顔、豊満な体、堂々とした出で立ち。
 女性の中では上の上、それを超えたような容姿を持つ女は森林の中にいた。
 峰不二子。その赤いコートを着た出で立ちはアウトドアには不釣り合いである。
 彼女は裏社会に生きる人間だった。とはいってもマフィアや泥棒など、明確な立ち位置にいるわけではない。
 言うとしたらアウトロー。自分の目的のためには手段を選ばない女である。
 だが彼女は殺人鬼ではない。手段の1つとしてあるわけであり、趣味ではないのだ。
 彼女がこの殺し合いで望むのは「生存」である。
 生きて物種、というし、彼女は殺し合いに参加するのも「手段」の1つである。

(ただ、メンツがとんでもないのよね)

 不二子は参加者名簿を眺める。彼女も知っているメンツが、なんと7人もいる。
 ルパン、次元、五ェ門、銭形、レベッカ、ニクス、レオナルド・ダヴィンチ……タダでは殺せないような者達だ。
 そんな相手を敵にするのは厄介だ。
 レベッカは分からないが、単純な戦闘で五ェ門・銭形と張り合うなどは自殺行為に等しい。
 もちろん彼女もそれなりな手練れであるが、あんな人間離れした者達には及ばないのである。
 もっと言えばそんな連中を殺せるような者がいたら、それこそ勘弁である。相手にしたくない。
 そうすると今のところ一番の定石は「ルパンと行動する」であろう。
 強敵を相手にしない一番の方法は仲間になることである。
 そしておそらくルパンは殺し合いに乗らないだろう。
 不二子はわかる。理由は「今までの経験上」だ。
 長年付き合ってきた相手である。そのくらいは容易にわかる。
「殺し合いに乗らない」ということの最善の手は「殺し合いから脱出する」ことである。

(ルパン一味をさらってこんな殺し合いに参加できるような力を相手に、脱出、ねえ……)

 これもまた嫌になる話だ。とても勝算の高い話とはいえない。
 とはいえルパンらを相手にするのは、いわば死ぬ可能性は100%のようなものだ。
 主催の具体的な戦闘力はわからないが、もしかするとルパンを相手にするよりは楽かもしれない。
 つまりは単なる憶測である。
 死ぬのが確実なのと、もしかしたら死なないかもしれない方では、まだ後者の方がマシというだけのことだ。

(分の悪い賭けは趣味じゃないんだけどね)

 この賭けにおけるいわば金、そう支給品を彼女は漁る。
 食糧とか地図を除けば、あるのはたった一つだけだった。
 ベルトのバックルのような……よくわからない何かだった。
 機械っぽい見た目ではあるが、メカニックに精通している彼女でもこれはわからない。
 説明書を見ると名前は「次元方陣シャンバラ」というようだ。
「帝具」というオーパーツであり、超科学的な能力があるというのだ。
 なにせ「マーキングした場所に人間を転送する」というものである。
 例えばある木にマーキングすると、不二子が遠くに離れていても、そこにワープできるということだ。
 というか、それは峰不二子が試したものだが。

(一体、どういう構造なのかしら……)

 不二子は顔をしかめる。こんな機能、どんな技術があれば可能なのか。
 しかも身体の疲労も感じる。説明書には「エネルギーを消費する」とあり、一回の転送でどれほどのものかはわかった。
 不可解な話である。
 普通、機械を使って消費するのはガソリンなどの燃料であり、身体ではない。
 まるで身体のエネルギーを転換しているような感じだ。
 マーキングも「マークした」と思えばなんとかなるようだ。
 思念や身体によって動く機械ということだ。
 構造はさっぱりわからないが、効果はあることは間違いない。
 不二子は体の疲労を感じながらそれを持つ。便利だが多用すると身体疲労でかえって危ないだろう。
0129二話 普通の生活 ◆ZC0oB5s5Dg
垢版 |
2016/03/29(火) 00:54:15.81ID:2kWYHKGr
「おい、女」

 そう彼女が思っていると、後ろから男の声が聞こえる。友好的な声には思えなかった。
 彼女が振り返ると、そこには銃を構える男がいた。
 体つきはよく、青い服に赤いズボン、刈り上げた髪に鋭い眼光。
 格好は少し古いというか、まるで中世ヨーロッパの市民という感じである。

(というかあれ、次元の獲物じゃないの?)

 その拳銃がS&W M19ということはわかる。マグナムも撃てる、威力の高い回転式拳銃だ。
 ついでに鎧のような、おそらく義手であろう左手には剣。武器だらけである。

「お前の持っている支給品を全て俺に渡せ。そうすれば命だけは助けてやる」
「ずいぶん簡潔なご要望ね。それで、私が確実に助かる保障なんてあるのかしら」
「ねえよ。とにかく持ってるものをよこせ」

 絶対、殺す気だ。不二子は確信する。
 ここでおめおめと渡せば自分が死ぬことは間違いない。
 となれば逃げるしかない。自分も「弾」を避けることには自信がある。
 ついでに相手の銃の持ち方も何か変である。
 一般人は見てもわからない領域だが、銃器の扱いにそれなりに長けている不二子から見ると、それはわかる。
 だが欠点もある。
 まず第一に銃を突きつけられていること。
 第二に自分の身体が先ほどシャンバラを使ったことにより疲労していること。
 第三に男は山の下りにいて、不二子は登りにいる。
 逃げるとすれば疲れた体で、山を登り、なおかつ銃弾を避けなければならないということだ。

(さっそく部の悪い賭けだわね!)

 彼女は心の中で舌打ちした。
0130二話 普通の生活 ◆ZC0oB5s5Dg
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2016/03/29(火) 00:55:24.03ID:2kWYHKGr
 ガルファは殺し合いに乗る気であった。
 彼はフランスの、正確にいうなら「中世」フランスの傭兵である。
 百年戦争の中、生きている彼は別に国に報おうとかそういうことではなく、単に金のため、自分のために戦っている。
 この殺し合いは別段やりたいわけではないが、しなければならないとすれば仕方ないことだ。
 それに優勝すれば「何でも願いを叶える」というではないか。
 例えば「一国を持つ」なんてことも不可能じゃないかもしれない。
 本当かどうかはさだかじゃないが、どちらにしろ殺し合いには乗らないといけないのだ。何か目標があった方がいいと彼は判断する。

 支給品も足りている。
 自分がかつてよく使っていた小型の手持ち盾・バックラー。
 殺すには十分な切れ味があると思われる両刃の剣。
 そしてかつて自分の世界にあった銃を高性能、かつ小型にした、拳銃だ。
 唯一の外れは、彼からしてみると「何か絵が描かれている封筒」だが、それよりも驚くべきものは、その「拳銃」だった。
 この技術には驚いた。自分の知らない間にこんな技術があるとは思ってもみなかった。
 こんなものがあればもっと功績もあげられただろう。
 いや、そもそも、自分につけられている首輪も知らない技術だ。
 そもそも主催は魔術を使えるのかもしれない。
 自分が最初のよくわからない建物内から森林に送られたことや、異様なほど物が入るのに軽いままのバッグなども、そのおかげかもしれないのだ。

 となると、相手は魔術も使えるし、異常な技術力も持っているということだ。
 なおさら逆らえる気がしない。主催に刃向うなど不可能だろう。
 彼は主催から用意された支給品から己の行動を決定した。

 ガルファ自身が戦争の中に生き抜いてきただけあって、拳銃の扱いや、彼の時代にはまだなかった機器なども、「一応の」使用はできるようになった。
 防御・近距離武器・遠距離武器と合わせて彼はかなり優位な立場にいる。
 
 ただ、彼にとってはそれだけでは足りなかった。
 なぜなら彼にとって宿敵となる相手、魔女がこの殺し合いの参加者にいるからである。
 その名前はマリア。戦争を止めたがる、自分の職業上、とても迷惑な存在である。
 彼女のおかげで自分は左手を失い、とてつもない痛みを伴う羽目になった。
 彼の義手はそれを伝えている。中にあるギミックはまだ残っているようだ。
 彼女を殺したい。ガルファはその怨念を抱いていた。

 彼は一回だけ彼女を殺したことがある。
 それは物理的なものではない。彼女の魔法を使えなくしたのだ。
 元々は彼女の純潔、処女を奪うことで魔法が使えなくなると聞いたため、襲ったことがあるのだ。
 実際はマリアは処女のままなのだが、何故か知らないが彼女は一切魔術が使えなくなった。
 それは「魔女」という存在上、死んだも同然であった。だから彼はかつて「殺した」ことがあるのだ。
 さらにマリアは異端として逮捕され、処刑させる予定だった。肉体的にも殺せるのだ。
0131二話 普通の生活 ◆ZC0oB5s5Dg
垢版 |
2016/03/29(火) 00:56:31.53ID:2kWYHKGr
 だが協会で彼がジョセフと戦っている時に、その魔女は壁を突き破り、飛び込んできた。
 鉄格子に囚われていた彼女がなぜそんなことができたのか。
 もしかしたら魔法をまた使えるようになったのかもしれない。
 もちろん、他にも可能性はあるが、用心するに越したことはない。
 消えないのは、その場でも魔女に邪魔され、馬乗りになったジョセフに幾度も、意識が消失するまで殴られた記憶。
 その後に彼は目覚めた。彼女に対する怒りもまた保っていた。

 魔女を殺すのに武器は足りない。もっと強いものがほしい。
 人もそうだ。仲間がいなければあの魔法に対処できない。
 自分は殺し合いに乗っているが、同時に「他の人間を殺す」ということで同盟を組むことも考えている。
 参加者だけで100人近くいるのだ。これを独力でやるのはとても骨が折れる。
 そこで「殺し合いに乗る者」同士で同盟を組み、一定の人数まで減らすということを望む者がいると踏んだのである。
 殺し合いに乗らなくても自分に怖気づいて協力してくれる人間でもいい。
 そう思いながらガルファは峰不二子に銃口を向けたのである。

 だが、それも「不二子」を殺そうとしたのである。
 彼からしてみれば「異様な格好」で「変わった容姿」をしている女、ということで異民族なのかもしれないと考えた。
 だから辺地で銃の存在も知らない。そこで左手に剣を持つ。
 剣ならば武器としてわかりやすいし、威嚇の対象になるだろう。
 それでも、その女は一切「恐怖」を見せなかった。
 警戒していることはわかる。だが全く畏怖はしていない。
 思い出すのは自分の知り合いの娼婦・ロロット。それに戦場でも平然と「争いを止めろ」というマリア。
 そのような肝の据わった女だ。そして彼女には何か異様な、底知れない何かがある。
 少なくとも恐怖で押さえつけてどういうできると思える人間ではない。
 それならば殺すしかない。自分の脅威となるかもしれない存在は消す。
 女だが、ここは殺し合いの場だ。遠慮は自分に跳ね返ってくる。

 そんな女だが、なかなか殺せない。

(弾が全く当たらねえ!)

 彼が引き金を引いても女にはかすりもしなかった。
 そもそも拳銃という形状で銃を扱ったはないし、反動や重さやらで全く命中しない。クロスボウの要領ではうまくいかないのだ。
 おまけに今は深夜。月明かりがわずかに森を照らすが、標準が合うわけがない。
 加えて女の身のこなしが弾丸の軌道を上手く避けるような形で逃げている。
 男のガルファでも追いつくのがやっとだ。

(やっぱりただの女じゃねえ。ここで殺さねえとな)

 殺意をガルファは再確認する。生かしてはおけない。
 そんな女は山を駆けあがると、目の前に見えてきた建物の窓に向かって、そのまま突き破るように入り込んだ。

(あれは……ガラスか?)

 現在の我々から見れば不二子が突き破ったものは窓ガラスとわかる。
 だが百年戦争の時にいたガルファの時代には窓ガラスは、少なくとも今のようにあちこちの建物にあるわけではない。
 一応は教会にあるステンドグラスを思い出し、おそらく「ガラス」であることはわかった。
 だがそれがなぜ、窓にあるのかはわかってない。

(こんな建物をどうやって作り上げたっていうんだ?)

 奇妙だ。ガルファからしてみればこの世界は異様である。
 その疑問は一旦、頭の外に置いておくことにした。
 今、肝心なのは目の前の女を殺せるかどうか。
 そして建物内に入れば逃げ場は少なくなるということだ。

 壊れた窓からガルファが建物内に入ると、おそらく何らかの「飲食店」であることはわかった。
 自分の時代の頃とは少々異なるが、そういう場所ではあると想像できる。
 店内を見ても、どこも窓やドアは空いていない。
 そして入る時に少し見えた、女が奥の調理場らしきところへ隠れる様子。
0132二話 普通の生活 ◆ZC0oB5s5Dg
垢版 |
2016/03/29(火) 00:59:40.48ID:2kWYHKGr
「おい、女。そこにいるのはわかってんだ。早く持ってるもんを全部差し出せ」

 調理場、現代に住む我々にとってわかりやすく言えばカウンター越しに、隠れて見えない彼女にガルファは言う。
 一旦、間が空いたが、声はすぐに返ってきた。

「……それを差し出して私に何のメリットがあるのかしら?」
「殺されないってわけだ。武器をおいて殺されないのと、武器も命も全部奪われるの、どっちがマシかわかるだろ」
「そうね。だけど私の支給品はラジオよ。携帯ラジオ。何かに使えると思う?」
「ラジオ……? 何、言ってんだお前」

 当然、ガルファのいた時代には存在しえないものである。

「何よ。私の持ってるものがダメすぎて信じられないの? そんな無駄なものを集めたって、仮に私を殺したとしても武器を無駄に浪費するだけよ」
「信じるもクソも、お前の言ってるラ……なんとかってのがわかんねえだけだ。ド田舎の異民族のものかもしれねえが、武器なのかどうか説明しろ」
「ド田舎の異民族とは失礼ね。なんならあなたが持ってる武器を答えてやっていいわよ。それ、拳銃でしょ?」
「……てめえ、知っていやがったのか」
「当然よ。回転式拳銃のS&W M19。まあざっくりいえば、でかい弾を撃てる、携帯しやすくて強い銃ってとこかしら」
「御託は知らねえが、お前を殺すのにはちょうどいいってことは知ってるぜ」
「そんなに強い武器ならわざわざ私なんか殺さなくてもいいじゃない。もし私が強い武器を持ってたらすぐに反撃するし、対して強いものはないってわかるでしょ?」
「いや、お前の身のこなしだけはさっき見てわかったように一流だ。俺の仲間にしてやってもいい」
「仲よし子よし他の参加者を殺しまくって協力するってこと? 残念だけど私は避けとくわ。ルパン一味がいるもの」
「ルパン……ってのは初めて聞いたがヤバいんだな。なら俺と一緒に組めば奴らも殺せるかもしれねえぜ」
「あんたじゃいても足手まといにしかならないわよ。無理だわ。少なくとも動いている私を撃ち殺せないようじゃ話にならない」
「へえ……じゃあてめえを今からぶっ殺してやれば仲間になってるってことか?」

 ガルファは女の舐めきった挑発に怒りがこみ上げる。
 これ以上、話をしても無駄と決めた。
 殺すため、カウンターに足を進める。
 その足音を聞くと、不二子は言葉を続けた。

「私を殺すのね。じゃあ殺したがり屋のあなたに忠告。その拳銃の装弾数は六発」

 ガルファは足を止める。

「さっき私を追って何発も撃ったでしょ? 今、まだ弾は残っているのかしら」

 彼は拳銃を見る。確かめる方法など、実際、弾丸が残っているか抜くしかない。
 先ほど弾を装填した時もスピードローダーという便利な道具はあったが、それを考えても面倒である。
 ましてや初めて拳銃を使うのだ。そんな暇があるだろうか。
 ガルファからしてみれば、不二子が本当に武器を持ってないかなど根拠がない。確かなものではないのだ。

「なら」

 簡単なことだ。
 彼は拳銃を素早くディバックに戻し、そして手慣れた様子で義手を扱い、すぐさま右手に剣を持ちかえた。
 ガルファも正直なところ、銃を何発撃ったかなど覚えてない。
 だから確実に殺せるのは使い慣れた剣になる。
 彼はカウンターを乗り越える。そして剣を女がいるであろう方向に構えた。
 どうせ相手は逃げられないし、先に殺せるのは自分だ。

 だが、女はいなかった。
0133二話 普通の生活 ◆ZC0oB5s5Dg
垢版 |
2016/03/29(火) 01:02:14.92ID:2kWYHKGr
「なっ」

 ガルファはカウンター奥の床に着地する。
 間違いない。声の方向ではそこに女がいたのだ。
 戸棚をあけても、隠れているわけではないのがわかる。
 完全に消えたのだ。

「ありえねえ」

 ありえない。
 そんなことはガルファにとってみればありえないことだった。
 女は確実にそこにいるはずだったのだ。
 戦場にいた経験は鈍っていない。
 自分が間違えたとは思えない。
 そのような思念が錯綜する中、ガルファにある一つの結論が出る。

「そうか」

 彼は呟く。そしてこう思ったのだ。
 奴の正体は魔女だ。
 魔女ならば俺に幻影を見せたり、あるいはどこかへ瞬間移動したりできるのではないのか。
 だから自分の目の前にはいないのではないのか。
 あの女の余裕はそれからきていたのだ。
 自分が絶対的に、武器を持っている者より強いと思っているからこそのものなのだ。
 あの意味不明な用語もおそらく魔女の使う何かなのだろう。
 ガルファがそう洞察するたび、憎しみがこみ上げる。

(魔女は……ここでも……どこでも俺を邪魔しやがる)

 怒りは戸棚にある瓶詰めされた何かに向かう。
 その鍛えられた剣筋は、それでいて大雑把に、戸棚のものを切り裂いた。
 色々に割れる瓶もまた、ガルファの頃には見かけないものだった。
 それが苛立たせる。よくわからないものが自分を追い詰める。

「許せねえ……。ぶっ殺してやる」

 殺意は継続する。


 ガルファは場所を確認する。看板を見る限り、自分がさっきまでいた店は「ラビットハウス」というらしい。
 方位磁石を使う限り、どうも自分はB4の右上あたりにいるらしい。
 ここはどうも「サンタマリノ風の都市」らしい。
 そのような土地名はどこかで聞いたことがあるようなないような、風の噂レベルだ。
 少なくともこんな都市ということはわからない。

(気味が悪い)

 ガルファにとっては初めてのわけのわからないものがあるだけだ。
 まるで魔女のようだ。気味が悪い。
 そのように、彼は土地にさえ、強い嫌悪感をおぼえた。
0134二話 普通の生活 ◆ZC0oB5s5Dg
垢版 |
2016/03/29(火) 01:06:02.87ID:2kWYHKGr
(なんであの魔女が俺を殺さないかわからないが、おそらくロクな女じゃない事は確かだ。そしてあいつも魔女ならマリアを知ってるはずだ。何せ、あいつは変わり種だからな)

 地図を見る。ちょうど真上には忌々しい魔女の自宅がある。

(あいつもマリアに俺がどういう行動しているかを伝えるはずだ。俺が危険人物扱いされると困ることも知ってるはず。もしかしたら他の参加者にも知らせるかもしれねえ)

 それはガルファにとってとても困る事だ。

(だが、それは仕方ねえ。あいつは魔女だ。今の俺に同行できる問題じゃねえ。だから大切なのは奴らの攻撃力を抑えることだ)

 彼は歩きはじめる。

(マリアの家にはおそらく魔術に使う……まあ何かがあるんだろうよ。おそらくあの異民族の魔女がいるってことは他に魔女もいるはずだ。そいつらに対抗するには、武器庫にも等しいあの家を破壊することだ)

 つまりガルファはマリアの家を、焼き払う気なのである。

(それに、こんな意味のわからねえものが大量にある街なんざ、いたら精神がまいっちまうぜ。少なくとも、ここでうだうだしている暇はねえ。あの魔女の家を焼き切ってやる)

 それは彼の中で一種の復讐でもあった。
 彼も実のところ、このどう考えてもフランスではない土地で、あるはずのないマリアの家があるのか不可解である。
 だが、ここにマリアがいるし、それに胸の中の鬱憤を解消するための行動であるので、家を焼くことも彼の中で「復讐」の内に入っているのだ。
 彼自身もそれを薄々気づいている。
 だがそれでいいのである。
 イライラしている状態で、あのような魔女を殺せるとは思えない。
 冷静に、確実に、あの魔女たちは殺さねばならないのだ。
 彼は道を歩く。確実な復讐のため。


「ハァ〜……疲れたわね〜」

 不二子は溜息と言葉を呟く。
 撒けたことを確認すると、彼女はベッドに横たわった。
 おそらく読者の皆様はわかるだろうが、彼女は次元方陣シャンバラを使って、ガルファから逃げたのである。
 具体的にいえば窓の外に予めマークしていて、そこから別の家へ逃げたのである。
 泥棒で鍛えた真夜中に身を隠すスキルは、ラビットハウスから出て、遠くへと足を進める彼の様子を確かめるのに、大きな役にたった。
 どうしてかは知らないが、この店内にはまるで興味がないようだった。
 不二子は包丁を持って呟く。この店内を色々と物色し、見つけたものだ。一応の武器にはなるだろう。

(それにしても、この『シャンバラ』ってのは思った以上に体を酷使するわね)

 体力には自信があったが、やはりこの道具はかなり体力を消耗するものだと彼女は気付く。
 近くに住居があってよかったが、だだっ広い場所ではロクに動けず、かえって的になるだろう。
 便利だが、あまり多用できないものだと思った。別の移動手段も彼女は望むところである。
 もしくは重火器。疲れていても飛び道具なら反撃に困らないところもある。
 だが、現在いる、この「サンタマリノ風の都市」ではそんなものは期待できない。
 期待できるとすれば……。
0135二話 普通の生活 ◆ZC0oB5s5Dg
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2016/03/29(火) 01:12:22.13ID:2kWYHKGr
(自衛隊駐屯地、ね。一国の防衛組織なんだから可能性はあるわ。その近くにある『門』ってのが不可解だけど……)

 不可解なことはまだある。

(あの男、おそらく『昔の時代』から来た人間ね)

 彼女がガルファに対して予想していることだ。
 先ほどの自分の支給品が「ラジオ」と嘘をついたのも、それを確かめるためである。
 現に、彼はラジオに対して全く存在を知らなさそうな回答をした。答えを考えるのはたやすいものだ。
 なぜそう思ったかには経験がある。
 この殺し合いの参加者「レオナルド・ダ・ヴィンチ」だ。
 彼は実際、600年も昔にいた人間である。そして彼自身でもある。
 ただ、正確にいえば、その「人格」が現代に蘇ったわけであり、タイムスリップをしたというわけがない。
 もっといえば「ダ・ヴィンチ本体」というわけではない。
 細かい説明を省けば、彼はクローン人間の身体にダ・ヴィンチといった「過去の偉人たちの人格」を入れた存在なのだ。
 ガルファの妙に昔風の出で立ちから、もしかすると、と不二子は考えていたのだ。
 ついでに少しは体力を回復させる時間稼ぎにもなったし、十分である。

(だけどダ・ヴィンチのクローンを何体も生み出すなんてそうとうな手間じゃないのかしら。『最高のエージェント』を生み出そうとしたMI-6はそんな金銭的に余裕があるわけ? ……それはありそうね)

 それに、あの男が単なる狂人で、自分が百年戦争を生きていた兵士と錯覚しているかもしれない。
 ただ、クローンにしろ、狂人にしろ、はたまた「タイムスリップ」したものにしろ、それは仮説にしかすぎないのだ。

(けれど、こんなわけのわかんない状況下じゃ『情報』は持つにこしたことはないけどね)

 そう思いながら彼女は服を脱ぐ。豊満なその乳房や、麗しい肉体が露わになった。
 別に彼女が痴女というわけではない。ここは脱衣所だ。
 そう、彼女はこの場でも風呂に入ろうとしているのだ。
 先ほどの戦闘の流れから体も汗でいっぱいである。洗いたい気持ちはわかる。
 もちろん、護身用に包丁は用意しているし、敵に発覚されないよう電気もつけていない。

(大体、この店に敵が侵入してきたら、寝ててもわかるけどね)

 それはもはや不二子という幾多の修羅場をまるでショッピングに行くような感覚でこなす、その野性動物並みの感覚でできる話だった。
 もっとも、相手が侵入のプロだったら、それは確かではない。
 そのために不二子は店じゅうに逃走用のマーキングしている。
 シャンバラでいざというとき、脱出できるのだ。
 更衣室や自分の寝ている部屋に鍵をかければ、それをこじ開けようとする敵に気付かない程、彼女も鈍ってない。

(それに今は夜中の12時よ。寝たいところだわ)

 彼女にとってこれは修羅場ではあるが、修羅場というのは日常のようなものだった。
 何か外に出る必要があるなら出るが、今は体は疲れているし、別段出る用もない。
 どうせルパンらもどっかで生きているだろう、と不二子は思いながらシャワーを浴びる。
 そのきめ細かい肌から染みだす汗を、水がしたたり流していく。

(自衛隊のところには行きたいところだけど、他の参加者だって『外れ』の支給品だったら、そこに向かうはずだわ。それを狙ってくる殺し合いに乗ってる……まあ言うなら『マーダー』だっているはずだしね。そんな状況を、今の身体で行ったところで対した収穫はないわ)

 おそらく一時間も仮眠すれば、自分の体力は全開だろうと不二子は思う。
 夜はなんだかんだで自分が活動する上で最も優れている時だ。
 その状態ならおそらく自衛隊駐屯地で成果を得やすいと踏んだのである。
 重火器やら、場合によっては仲間も手に入れば、あとは寝るだけだ。
 安全を確保できたなら、殺し合いという異常な状況下、体力というのは大切な要素になる。
 睡眠は体力を温存するのに必要なものだ。だから寝るのだ。

(それに、こんな意味不明なゲームで必死になるってのも、なんか癪だしね)
0136二話 普通の生活 ◆ZC0oB5s5Dg
垢版 |
2016/03/29(火) 01:14:23.42ID:2kWYHKGr
 そう思いながら彼女は体を拭く。
 そしていつのものように、下着を着るのだ。

 悪女は殺し合いの場でも「いつも通り」行動していた。


【一日目・午前0時頃/B-4・ラビットハウス(浴室)】

【峰不二子@ルパン三世】
【状態】健康 疲労(大) 風呂上り 下着姿
【装備】次元方陣シャンバラ@アカメが斬る! 包丁@現地調達
【道具】通常支給品
【思考】基本:生存したいので、脱出するしかない。
1:寝て体力を回復したい。
2:自衛隊駐屯地に言って武器や仲間など、何か得たい。
3:どっかでルパン達と合流したい。
※最終回後からの参加です。
※ガルファを「過去の人物」と関わりがあるものと予想しています。

【次元方陣シャンバラ@アカメが斬る!】
シュラの持っていた帝具。マーキングしたところに瞬間移動できる。
とても便利だけど身体能力がめっちゃあるシュラでも多用は体力を使う。
ところでこれって、一体何を模してるんですかね。

【包丁@現地調達】
ラビットハウスの台所から調達。普通の包丁。
0138二話 普通の生活 ◆ZC0oB5s5Dg
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2016/03/29(火) 01:18:06.48ID:2kWYHKGr
【一日目・午前0時頃/B-4・サンタマリノ風の都市(街道)】

【ガルファ@純潔のマリア】
【状態】健康 イライラ
【装備】S&W M19(1/6)@ルパン三世 ピニャの剣@GATE 自衛隊 彼の地にて、斯く戦えり ガルファの義手(飛び道具1/1)@純潔のマリア
【道具】バックラー@純潔のマリア 「えくそだすっ!9話」のカット袋@SHIROBAKO S&W M19のスピードローダー×3@ルパン三世 通常支給品
【思考】基本:殺し合いに乗って生き残る。
1:マリアを殺したい。
2:魔女を殺すには武器が足りないので集める。
3:マリアの家を燃やす。
4:可能なら徒党を組んで数を減らしたい。
5:魔女に対する強い嫌悪感。
※11話でジョセフにボコボコにされて気を失った直後の参加です。
※峰不二子を魔女と思っています。
※現代的なものの扱いは「ある程度」は理解しました。

【S&W M19@ルパン三世】
次元の愛銃。六発装弾。回転式拳銃。
マグナム弾が撃てるパワーの強さと、携帯しやすさがいいらしい。警察とかも使ったりしているらしいですね。

【ピニャの剣@GATE 自衛隊 彼の地にて、斯く戦えり】
ピニャが持っていた両刃剣。
劇中でそんなに使ってたイメージはないけど、フィギュアではあったので。

【ガルファの義手@純潔のマリア】
支給品というより備えているもの。鉄製の義手。
もう片方の手で操作する必要はあるが、剣も持てるし、指の部分から刃が出るし、よくわからない飛び道具も撃てる。

【バックラー@純潔のマリア】
小型の盾。劇中でもよく使われていた。
防御は勿論、相手をパンチしたりと攻撃にもなる。

【「えくそだすっ!9話」のカット袋@SHIROBAKO】
武蔵野アニメーションが製作しているアニメの原画とかが色々入ったファイル。
制作進攻は宮森がやっていた。

【S&W M19のスピードローダー@ルパン三世】
リボルバーでもわりと早く装弾できる代物。なんか丸いやつですね。

投下終了です。規制こないかヒヤヒヤしてました。wiki多分書きます。
0139 ◆84AHk0CknU
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2016/03/29(火) 01:32:05.29ID:hvgX+wRH
投下乙です
不二子は乗らない方針かー。アニ1知ってるだけにヒヤヒヤしたw

自分も儀式ロワ投下します
0140ACCEED ROYALE ◆84AHk0CknU
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2016/03/29(火) 01:35:31.56ID:hvgX+wRH
「あっ蓮さ〜ん」
「タクヤさん!」

市街地の一角にある店、名をSMバー平野。
捕獲し調教した少年を奴隷として客に提供するという、一般人が聞いたら「えっ、何それは…(ドン引き)」
と反応すること間違いなしのクッソ汚い場所。
そこに二人の男が再会を果たした。

一人はKBTITことタクヤ。
SMバー平野の従業員で、上半身に比べ下半身が貧相というアンバランスな体型が特徴的なグラサン男。
もう一人は虐待おじさんこと葛城蓮。
SMバー平野の常連客である男だ。

スタート会場が市街地だった彼らは、地図に載っていたSMバー平野をとりあえず最初の目的地として行動。
偶然にも考える事は同じだったのか、店の前で鉢合わせになったのだ。

「驚きましたよ。まさかこの店が殺し合いの会場にあるなんて…」
「参っちゃいますよ〜。店長の店を勝手にこんな所に持ってきやがって…。
あのロロとかいうガキもう許せるぞオイ!」
「許すんですか(困惑)」

殺し合いという異常な事態に巻き込まれたものの、知り合いと会えたことで、互いに安堵感が生まれていた。

「蓮さん。あのガキは殺しあえとか抜かしてましたけど、どうしますか?」
「決まってるじゃないですかタクヤさん。選択肢は一つだけっすよ」
「ですよね〜。やっぱ殺し合いなんてするw「精々楽しませてもらいますよ」――は?」

KBTITはおじさんの言葉に、一瞬理解が追いつかなかった。
楽しませてもらう?
殺し合いを?
蓮さんが?

「蓮、さん?」
「パッと見可愛い子も結構居たし、悶絶顔見放題じゃないですか。それに死ぬ瞬間はどう苦しんでくれるのか。
考えただけで興奮しますね〜(マジキチ)」
「え、ちょ」
0141ACCEED ROYALE ◆84AHk0CknU
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2016/03/29(火) 01:38:30.02ID:hvgX+wRH
おじさんの物騒な物言いに困惑するKBTIT。
冗談か何かかと思ったが、おじさんの目は明らかに本気の目だ。
笑顔で絶やさないおじさんへ堪らず叫ぶ。

「蓮さん何言ってるんすか!?」
「タクヤさん?」
「そりゃ俺も調教するぐらいなら良いと思いますけど…。だからって殺し合いに乗るこたぁないじゃないっすか〜!
それに男の子の悶絶顔見るのだって、ここから脱出した後でも問題ないでしょ!?」

十分問題あるんだよなぁ
犯罪を後押ししてはいけない(戒め)

「……そうですか。タクヤさんは殺し合いには反対なんですか」
「んなの当然っすよ。だから蓮さんも考え直して――」
「じゃあ、死のうか(暗黒微笑)」

言うやいなや、デイバッグから日本刀を取り出しKBTITに斬りかかる。
KBTITは驚きながらも寸での所でそれを躱す。
しかし、避けた先でまたしても刀が振るわれた。

「動くと当たらないだろ!動くと当たらないだろぉ!?」

怒声と共に刀を振るうおじさん。
襲い掛かる凶刃に応戦すべく、KBTITも自らの支給品を取り出す。
手にしたのは長方形の板。
警察や軍が使用する防弾盾だ。

「おぉ〜、良い道具だぜぇ〜(恍惚)」

刃を盾で防ぎつつ、力任せに突進する。
刀でガードするおじさんだが、あえなく力負けして吹き飛ばされる。
貧弱な下半身と違い、屈強な上半身のパワーは流石に高かったようだ。

「怒らせちゃったねぇ!俺のこと本気でねぇ!」

立ち上がり憤怒の形相で切っ先を向けるおじさん。
迎え撃つためにKBTITはバッグから出した鞭を構える。
0142ACCEED ROYALE ◆84AHk0CknU
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2016/03/29(火) 01:40:16.24ID:hvgX+wRH
(悲しいなぁ…)

彼ならばこんな殺し合いを止める為共に戦ってくれる。
心強い仲間になってくれる。
そう信じていたのに、現実は余りに非情だ。
何が彼をそうさせたのかは分からないが、おじさんは殺し合いを肯定してしまった。
ならば力ずくでもここで止める。
それでも駄目なら、この手で―――

「じゃあオラオラ来いよオラァ!!」
「ジュージュー(従順)になるまでやるからなぁ!!」

一人は怒りを、もう一人は悲しみの感情で対峙する。
サングラスに隠されたKBTITの瞳からは、一筋の涙が零れ落ちていた。


【虐待おじさん@真夏の夜の淫夢】
[状態]:疲労(小)
[装備]:枢木スザクの日本刀@コードギアス ナイトメア・オブ・ナナリー
[道具]:共通支給品一式、不明支給品0〜2
[思考]
基本:可愛い男の子の悶絶顔が見たい。その為には殺しも辞さない
0:タクヤさんを殺す
1:好みの子を探す
[備考]
※参戦時期はまひろの調教終了後

【KBTIT@真夏の夜の淫夢】
[状態]:疲労(小)
[装備]:エリカちゃんの鞭@チャージマン研!、防弾シールド@現実
[道具]:共通支給品一式、不明支給品0〜1
[思考]
基本:殺し合いはしない
0:蓮さんを止める
1:余裕があれば好みの子を調教したい
2:ロロってガキもシゴいとかねぇとなぁ
[備考]
※参戦時期はポイテーロが弟子になって以降のどこか
0143ACCEED ROYALE ◆84AHk0CknU
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2016/03/29(火) 01:41:10.22ID:hvgX+wRH
支給品紹介
【枢木スザクの日本刀@コードギアス ナイトメア・オブ・ナナリー】
虐待おじさんに支給。
ユーフェミアの騎士、枢木スザクが帯刀している刀。

【防弾シールド@現実】
KBTITに支給。
SWATなどが制圧の為に用いる透明のシールド

【エリカちゃんの鞭@チャージマン研!】
KBTITに支給。
第58話「悪魔のサーカス団」に登場したエリカちゃん(正体はジュラル星人)が使った鞭。
彼女はこれでライオンを手懐けていた。
0145 ◆ymCx/I3enU
垢版 |
2016/03/29(火) 23:56:26.83ID:mk0UlIne
保守
二日書き込みが無いと落ちるってHARDじゃなかろうか
0146 ◆ymCx/I3enU
垢版 |
2016/03/30(水) 00:16:20.92ID:Jlf3CPlg
あ、書き込み来てた
リロードしても出なかったから保守してしまいました
ついでに短いけど感想

>新たに咲いた花を散らさないように
「うおおぉぉォォン!?」が野獣の咆哮に見えた、訴訟

>二話 普通の生活
某所では不二子は酷い役回りだったが今回は果たして
中世の人からしたら現代の建物は全くの未知であろう

>ACCEED ROYALE
何か実際にビデオのタイトルにありそう(小並)
おじさんやめちくり〜
やっぱりKBTITは人間の鑑だってはっきり分かんだね
0147 ◆84AHk0CknU
垢版 |
2016/03/31(木) 02:53:31.96ID:9dGDuMsb
感想ありがとナス!

儀式ロワ投下します
0148 ◆84AHk0CknU
垢版 |
2016/03/31(木) 02:54:29.41ID:9dGDuMsb
深夜の公園は何となく不気味だ。
日中は子ども達が元気に遊んでいるであろう、ブランコやジャングルジム。
誰も居ない静まり返った夜にそれら見ると、どこか薄気味悪く感じる。
現在ベンチに腰掛ける少女、日野留渦も自分が居る公園にそんな感想を抱いていた。
幼少時からお化けや幽霊に遭遇したお陰で、滅多に恐怖感を抱かなくなった。
なのに今更こんなことを思うのは、やはりこの殺し合いに対して動揺しているからなのか。

(それだけじゃないよね…)

吹き飛んだ頭。
大量の血を噴出し倒れる胴体。
絶望の表情で転がる知らない老人と、知っている少年。
兄の友だちで、留渦とも交流のあった少年。
その少年は映画でしか見た事のない首無しの死体となった。

(委員長さん……)

留渦はこれまで多くの幽霊や妖怪と遭遇してきた。
時には命に関わる程の危険な相手と対峙したことだってある。
けれどいつだって最後は、兄の耳雄が力ずくで解決してきた。
しかし、生身の人間による殺人を、人がただの肉袋に変わる瞬間を見たのはこれが初だ。
今や死は驚くほど身近なモノと化している。

「っ…」

全身が震える。
自身が、そしてに家族が殺されるかもしれないという恐怖。
耳雄は自分を探すために無茶をして、命の危機に晒されているのではないか。
サイトーさんは怯えて隠れている所を、殺し合いに乗った危険人物に発見されてるのではないか。
脳裏に浮かぶ最悪の光景を何とか振り払おうとするが、そう簡単には消えてくれない。

「行かないと…」

デイバッグを手に立ち上がる留渦。
一刻も早く兄たちに会いたい。
今も頭に浮かび続けるイメージなんて、起こる訳がないと確かめなければ、不安でどうにかなりそうだった。
焦る気持ちのままに駆け出そうとした時、背後に人の気配を感じた。
心臓が飛び上がりそうになり、呼吸が緊張で荒くなる。
恐る恐る振り返り目にしたのは坊主頭の男。
0149 ◆84AHk0CknU
垢版 |
2016/03/31(木) 02:55:34.88ID:9dGDuMsb
どこか間の抜けた顔でゆっくり近付き、留渦の手前で止まった。
警戒する留渦だが、男はじっと立っているだけで動こうとしない。

「あの…」

留渦が声を掛けると、男はニッコリと笑った。
それは邪気の無い幼い子どものようだった。

「大丈夫だゾ」
「えっ…?」
「不安なのは分かるゾ。でも心配しなくていい」

安心させるようにゆっくりと頷く男。
それを見て留渦は、相手は殺し合いには乗っていないんだと思い、警戒を緩める。
そして男の笑顔に釣られ、安堵の笑みが自然と浮かび―――上がらず引き攣った。
男はデイバッグから大き目のナイフを取りだし、それを留渦に向けている。

「ちゃんと一撃で済ませるから大丈夫だゾ〜」
「こ、来ないで……!」
「後で俺とポッチャマが生き返らせるから安心だゾ」

踵を返し逃げようとするが、首根っこを掴まれ地面に押し倒される。
馬乗りになり、ナイフを持つ手を首に当てる男。
留渦は必死に逃げ出そうとするが、中学生の小柄な体では体格の良い男には敵わない。

「おし、じゃあブチ込んでやるぜ!」

涙が浮かぶ目をギュっと閉じる留渦。
死にたくない。
兄と、飼い犬と、両親や友人達と一緒に居たい。
怖い。
怖いよ。
助けてお兄ちゃん―――



「オラァッ!!」
「ぶぼぉっ!?」



声が二つ聞こえた。
馬乗りになっている男のものと、知らない声。
それと同時に、男の拘束が解かれた。
なにが起きたか分からず、目を開ける。
0150 ◆84AHk0CknU
垢版 |
2016/03/31(木) 02:57:16.76ID:9dGDuMsb
「おにい、ちゃん?」
「あぁ?悪ィが別人だ」

ぶっきらぼうな返答。
それを口にしたのは、自分を殺そうとしたのは別の、坊主頭の青年。
目つきは鋭く、頬には刃物でできたであろう古傷。
ガッシリとした長身で、拳を握り締めている。

「結構力入れたんだがな。意外とタフじゃねぇか」

青年の睨む先に居るのは、頬を押さえ立ち上がる男。
そこで留渦はようやく気付く。
自分はこの青年に助けられたのだと。

「い、いきなり酷いゾ…」
「こんなガキをマジになって襲うペド野郎には言われたくねぇよ」
「襲ったんじゃなく、ちょっと眠ってもらうだけだゾ!ポッチャマが言うんだから間違いないゾ〜」
「薬でもキメてんのかテメェは」

意味不明な事をほざく男を、青年はキチ○イを見る目で睨む。
殺し合いの空気に耐え切れず発狂したのか、それとも元々こんななのか。
男の境遇は分からないが、放置しておくのは危険な存在だ。

「仕方ないゾ。あんまり痛くはしないようにしたかったんだが…」

ボソボソと呟きながら、デイバッグ新たな支給品を手に取る男。
バッグから出した両手に握られているもの。
それは二挺の銃だった。

「ブチ込んでやるぜェェェェェェェェェ!!」

絶叫と共に引き金を引く男。
青年は男の手に銃のグリップが握られているのを目にした時点で、既に行動していた。
留渦の手を引き、遮蔽物へと走り出す。
驚く留渦の声を無視し、青年は公衆トイレの後ろに彼女諸共ダイブ。
間一髪、二人そろって蜂の巣になるのを防いだ。

「クソが!無茶苦茶しやがる!」

銃弾が壁を削る中、どうするか考える。
あのイカれたトリガッハピーに対抗するには銃が必要。
一抹の期待を込めて自分のデイバッグを開く青年。
出てきたのは妙な形のマスク、どこかの制服を着た少女二人の写真、赤いヒヨコのような生き物のぬいぐるみ。
銃どころかマトモな武器自体入っていない。
クソすぎる状況に舌打ちしたくなる。
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