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非リレー型バトルロワイアルを発表するスレ part37 [無断転載禁止]©2ch.net
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0001創る名無しに見る名無し
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2016/01/12(火) 00:10:53.13ID:Tf6AlFiL
1999年刊行された小説「バトル・ロワイアル」

現在、様々な板で行われている通称「パロロワ」はリレー小説の形をとっておりますが
この企画では非リレーの形で進めていきます。

基本ルール
・書き手はトリップ必須です。
・作品投下前に登場キャラクター、登場人数、主催者、舞台などを発表するかは書き手におまかせです。
・作品投下前と投下後にはその意思表示をお願いします。
・非リレーなので全ての内容を決めるのは書き手。ロワに準ずるSSであればどのような形式、展開であろうと問いません。
・非リレーの良さを出すための、ルール改変は可能です。
・誰が、どんなロワでも書いてよし!を合言葉にしましょう。
・ロワ名を「〜ロワイアル」とつけるようになっています。
  〜氏のロワは面白いでは、少し話題が振りにくいのでAロワ、Bロワなんでもいいのでロワ名をつけてもらえると助かります。
・完結は3日後だろうが5年後だろうが私は一向に構わんッッッ!!

前スレ
非リレー型バトルロワイアルを発表するスレ part36
http://hayabusa6.2ch.net/test/read.cgi/mitemite/1425485657/

非リレー型バトルロワイアルwiki
ttp://www26.atwiki.jp/anirowakojinn/pages/1.html
0255 ◆ymCx/I3enU
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2016/06/07(火) 19:54:28.80ID:DxcQffEB
はいやっと出来た! 投下しやす
いつも以上に文章が汚いのはゆるして
0256竜虎相打つ 〜邪心と悪心どちらが勝る?〜 ◆ymCx/I3enU
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2016/06/07(火) 19:55:21.14ID:DxcQffEB
36話 竜虎相打つ 〜邪心と悪心どちらが勝る?〜

市街地へと到達した獣竜の青年、鳴海竜也。
今の所誰とも遭遇していない。好みの美人の女性や可愛い女の子にも会って居ない。

「誰とも会わないなぁ、もう欲求不満」

愚痴を零しつつ、歩道を歩く。
片手に持った、先の武器屋から失敬したZB26軽機関銃が歩く度カチャカチャと無機質な音を鳴らす。

同じ頃、同じく市街地を歩く二人の参加者が居た。
桃髪の美少女、伊藤椿と、白虎獣人の青年、トロフィム。
二人もまた、学校にて出会い、一緒に行動するようになってから、誰とも出会っていない。特に椿は友人である修明院美宇を見つけ出すと言う目的が有る故、
誰とも遭遇しないと言う経過が友人がまだ生きているのかと言う不安を増大させる。

「時々どこかから銃声みたいなのは聞こえるけど誰とも会わないわね……」
「そうデスね……その代わり、危険ニも遭ってハいませんガ」

椿の言葉に、適当に返事をするトロフィム。彼女の同行者と言う立場を取って居るが、その実彼女を自分の生存の為に利用する気で居た。
そんな事は椿は知りはしなかったし、そのような素振りを見せて疑念を抱かせるようなへまはトロフィムはしない。

所変わって、一度どこかで休もうかと考え始める竜也。
しかし、とある曲がり角を曲がり、二人の参加者の後ろ姿を認め、休憩は延期する事にした。
と言うのも、片方は明らかに女性、それも横顔を見る限りかなりの美少女。制服の上からでも分かる程スタイルも良い。
ようやく好みの女性を見付けてテンションが上がる竜也、同行者と思しき虎を追い払うか始末してあの子を頂いてしまおうと、邪に考える。
しかし距離が離れておりこのまま機関銃で狙えば少女も巻き添えになってしまう。銃の扱いに関しては竜也は慣れていない。
なので背後から、虎だけをどうにか出来る距離まで一気に近付く事にした。

「誰だ?」

トロフィムが気配に気付き、軽機関銃を持った緑と白の獣竜を発見する。

竜也はあっさり発見されてしまった。当たり前やん。

「バレたか……」

しかし竜也は動揺する素振りは見せない。一応見付かった場合の事も考えてはいた。
と言うより、二人は見た所、強力な武装は持っておらず、見付かっても機関銃を持った自分の方が優勢だと信じていたのだ。

「動くな。そこの白虎! 命が惜しければその女の子をよこせ」
「はぁ!? 何それ……」

余裕綽々と言った様子で機関銃の銃口をトロフィムに向け竜也が要求した。
意味が分からないと言った表情の椿だったが、この獣竜青年が考えそうな事はすぐに察する事が出来、トロフィムに縋るような視線を送る。

「と、トロフィムさん」

頼むから自分を売らないでくれと、椿は目で訴えた。

「……フゥ」

トロフィムは小さく息を吐き、椿に後ろに下がっているように促すと、獣竜を見据えゆっくり歩き出した。

「え? おい、動くなってば!」

機関銃を向けて脅していれば問題無いと思い込んでいた竜也は白虎青年の予想外の行動に狼狽える。

「〈君は勘違いをしているな。こっちより強力な兵器を持って脅せば、思いのままに出来ると、自分の方が絶対に優位だと、そう思い込んでいるみたいだが〉」
「な、何? 何て言ってるんだ?」
0257竜虎相打つ 〜邪心と悪心どちらが勝る?〜 ◆ymCx/I3enU
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2016/06/07(火) 19:55:47.00ID:DxcQffEB
ロシア語で口上を述べつつ、竜也との距離を詰めて行くトロフィム。日本語で喋らないのはこの男に配慮などは必要無いと思った為。
一方ロシア語など理解出来ない竜也はただただ困惑するばかり。

「〈そのような慢心は〉」

そしてトロフィムと竜也の距離が後5、6メートルと言う所まで差し掛かった時。
トロフィムは一瞬で竜也の懐に潜り込み、その右腕を掴んで背負い、アスファルトの上に叩き付けた。
ZB26を落とし、背中から固い地面に落とされ呼吸困難と激痛に襲われる竜也。
そこへトロフィムは右腕を竜也の背中に回しひねり上げると言う追い打ちを行う。

「ぎゃあああぁああぁあああ!!?」

竜也の悲鳴が木霊した。
ミシミシと骨が悲鳴を上げ、後少しで粉砕骨折と言う所まで、竜也の腕は捻じ曲げられた。

「〈こう言う悲惨な結果へと繋がる〉」
「うぎぃい!! 痛い痛いイタイ!! や、やめてぇえ! 折れる! 折れちゃうぅう!」

鮮やかとしか言い様の無いトロフィムの組み伏せに椿は呆然としていた。見とれてしまっていたとも言える。

「ドうします? 伊藤サン。こいつ、恐らく伊藤さんを犯ソうとしてイましたヨ。腕の一本デも、折ってオキまスか?」
「あぁぁあ! やめてくれぇ! ごめんなさい! 許してぇえ! 許して下さいぃ!!」
「え……えと……」

獣竜青年の処遇を委ねられる椿はしばし考える。
確かに性的に襲うつもりだったのだろうがトロフィムのおかげで未遂に終わった。それに、泣き叫び許しを乞うその様子を見て多少哀れに思えてきてしまった。
故に、椿は獣竜青年を処断出来ず。

「もう良いよ。トロフィムさんのおかげで何もされなかったし、放してあげて」
「良いんデスか?」

難色を示すトロフィムであったが、結局、椿の言う通りにして竜也を解放した。
苦痛から逃れられ、涙を流しながら捻られていた右腕をさする竜也。

「ううう……くそぉ……覚えてろよ!!」

捨て台詞を残し、ZB26を拾い上げて竜也は翼を羽ばたかせ飛び去って行った。

「あの様子でハ、反省してイないと思イますガね……始末シテおいた方が良かっタのデは?」
「う、うん……でも……目の前で誰か殺されるのを見るのは、嫌だったのよ」

例え自分に害を為そうとした相手でも目の前で泣き叫ばれるまま殺されてしまうのは耐え難い物が有った。
それが甘い考えである事など百も承知なのだが、椿はどうしてもその考えを捨てられない。

「優しいデスネ、伊藤さんは」
「はは……」

やれやれと言った様子のトロフィムに、椿は苦笑を向けた。

(〈全くお人好しな子だ。自分を犯そうとした奴を許してしまうなんて。まあ、だからこっちの事も信用させる事が出来るのだろうけど。
まあ、あんな男の為に利用価値の有る子を失うのも癪だからな〉)

トロフィムが椿を助けた理由は至って利己的なものだったのだが椿はそんな事に気付く由も無い。

一方、トロフィムから逃れた竜也は、二人からある程度離れた場所に有るビルの屋上に降り立つ。
捻られた腕がまだ痛んだ。骨にヒビが入っているのでは無かろうかと疑う程に。
0258竜虎相打つ 〜邪心と悪心どちらが勝る?〜 ◆ymCx/I3enU
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2016/06/07(火) 19:56:10.13ID:DxcQffEB
「くそっ、あの白虎……! 次に会ったら絶対に殺してやる……!」

涙を浮かべ、牙を剥き出して竜也はトロフィムへの憎悪を口にした。


【午前/C-5市街地】
【伊藤椿】
状態:健康
装備:改造スタンガン(バッテリー残り100%)
持物:基本支給品一式
現状:死にたくない。殺し合いはしたくない。ミーウ(修明院美宇)と合流したい。トロフィムさんと行動する
備考:取り敢えずトロフィムは安全と結論付けましたが心のどこかでは少し不安に思っている。鳴海竜也の容姿のみ記憶し危険人物と判断。

【トロフィム・クルトィフ】
状態:健康
装備:ヌンチャク
持物:基本支給品一式
現状:自分の生存が第一。その為に利用出来る物は利用していく。伊藤椿と行動しいざと言う時は盾にする
備考:修明院美宇の事を伊藤椿から聞いている。鳴海竜也の容姿のみ記憶し危険人物と判断。


【午前/C-5市街地】
【鳴海竜也】
状態:右腕に痛み(骨に異常は無いもののしばらく痛みが引かない)、トロフィムへの憎悪
装備:調達したZB26(30/30)
持物:基本支給品一式、調達したZB26の弾倉(5)、調達した青龍刀、不明支給品
現状:優勝狙い。好みの女性は性的に食べたい。好みじゃない女性、用済みの女性、男は始末する。市街地へ向かう。
備考:伊藤椿の容姿のみ記憶。トロフィムは容姿と名前を記憶。トロフィムに逆恨みしている。
0261 ◆ymCx/I3enU
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2016/06/13(月) 23:02:56.08ID:UbjH0xnl
保守
ちゃうねん書いてはいるねん
でも他にもやりたい事いっぱいあるねん
0263 ◆ymCx/I3enU
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2016/06/19(日) 17:24:23.52ID:PQ4y8tC7
やっと出来たんで投下しやす
0264武装確保 ◆ymCx/I3enU
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2016/06/19(日) 17:24:51.44ID:PQ4y8tC7
37話 武装確保

展望台にて大崎年光は悔恨の念に駆られる。一人の少女を救う事が出来なかった為だ。
その少女は年光を誤解して逃走し、展望台に辿り着いたは良いが、最上階で邪な黒豹獣人の男に襲われその身を汚されてしまった。
年光は男に憤り立ち向かったは良いが、力の差は歴然としており、あっさり気絶させられてしまう。
そして意識を取り戻した時、少女は展望台から身を投げてその命を絶ってしまっていた。
年光は悔やみに悔やんだが、最早時は戻せない。

少女の物らしいデイパックが、切り刻まれた少女の衣服と共に放置されているのを見付け、年光は気が進まなかったものの中身を調べる。
すると基本支給品一式に混じって、催涙スプレーが3本出てきた。
これを使えば或いは少女も助かったかもしれないがそのような余裕も無かったのだろう、そう思うと年光はますます少女が気の毒でならなかった。

「ごめん、これ、使わせて貰うよ……」

少女に断り、年光は催涙スプレーを入手する。
自分の命の事も考えなければならない。ナイフしか武装らしい武装を持っておらず、少しでも生存確率を上げるには仕方が無い。
そうあっさり割り切れれば楽なのだが、年光は上手く割り切れなかった。

階段を下りて建物の外に出る。
そして、少女の亡骸の元に向かう。

「うっ……」

近くで見ると本当に惨い有様であった。
頭蓋骨が砕け中身が血と共に飛び散り辺りには何とも言えない刺激臭が漂っていた。
おまけに少女は直前まで性的暴行を受けていた為、全裸であの黒豹の体液があちこちにこびり付いてそれが悲惨さをより一層際立たせる。

(このままにしていきたくは無いけど、掛けてやれそうな布も無いし、穴を掘れそうな道具も無い……)

死体を放置しておきたくは無かった年光だったが、出来る事は何も無く、そのままにしておく他無かった。

「誤解させて、助けてやれなくてごめんな……あの黒豹野郎……次に会ったらタダじゃおかねぇ」

少女へ詫びると同時に、年光の中で黒豹の男への怒りが再燃していた。

……
……
0265武装確保 ◆ymCx/I3enU
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2016/06/19(日) 17:25:24.86ID:PQ4y8tC7
草原に敷かれた二車線の幹線道路の上を歩く年光。
アスファルトは最初にこの道路が建設されてから一度も補修されていないのか傷みが目立つ。
道路標識も潮風の影響か錆が目立った。

「ふぅ……」

年光の怒りは展望台を後にした時と比べれば大分収まっていた。

(最終目標はあくまでこの殺し合いから脱出する事だ……怒りで目標を見失うのはまずい)

心中で自分に言い聞かせる年光。
先程は黒豹の男への怒りから彼への制裁が第一目標のようになってしまっていたが、そうでは無く、あくまで第一の目標は殺し合いからの脱出だ。
感情的になり過ぎてそれを忘れてしまってはならないと戒めた。
ただ、黒豹の男への制裁を完全に思考の外にした訳でも無い。
少女の件も有るが自分への暴力の恨みも有る。

「ん? あれは……」

年光はある物を見付ける。灰色に塗装されたトタン板の壁の小さな建物。
看板には「武器店」と書かれており、どうやら地図上のC-3エリアに記載されている武器屋のようだった。
丁度良い、あそこで装備を整えよう――――年光は武器屋に向かう。
金など持っていないが咎める店主もおるまい。
ドアを開けて中に入ると様々な銃器や刀剣類、その他の武器が陳列されている。
欲張っても仕方が無いので、年光はその商品の中から自動拳銃P225と、散弾銃イサカM37を選び、
それぞれの予備のマガジンや弾薬も手に入れた。

「こんなもんか……」

装備を整えた年光は武器屋を出た。
その足は、市街地方面へ向かう。


【午前/C-3武器屋】
【大崎年光】
状態:顔面打撲、身体全体に痛み(行動に支障は無し)
装備:シグP225(8/8)
持物:基本支給品一式、コンバットナイフ、催涙スプレー(3)、P225の弾倉(3)、イサカM37(4/4)、12ゲージショットシェル(10)
現状:殺し合いには乗る気は無い。あの黒豹男(シャーガ)に次に会ったら制裁を加えるつもりでいる。市街地方面へ向かう。
備考:シャーガの外見のみ記憶し彼を危険人物と認定。


《支給品紹介》
【催涙スプレー】
支給者:籠彩愛
分類:補助
説明:暴漢や野生動物などに襲われた際に、噴射して怯ませその隙に逃げる為の護身用アイテム。
0266 ◆ymCx/I3enU
垢版 |
2016/06/19(日) 17:26:14.21ID:PQ4y8tC7
投下終了です
何か、キャラの選定に失敗したような気がしてきたゾ
0267創る名無しに見る名無し
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2016/06/21(火) 20:09:39.52ID:v7U7nv5T
投下乙です
大崎年光は怒りを抑えましたか……
武器も遠距離と近接備えて、順調そうですね
0268 ◆ymCx/I3enU
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2016/06/24(金) 20:17:44.40ID:S9oOZdBq
保守、そして感想どうもです
0271Past time has no meaning for us ◆ymCx/I3enU
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2016/06/29(水) 13:46:19.47ID:67T/OccX
38話 Past time has no meaning for us

「何だありゃ……教会か。誰か居っかな?」

海沿いに建つ教会らしい建物を見付け、川田喜雄はそれに近付いていく。
大きな正面玄関の扉のノブに手を掛けてみるが、施錠されており開かない。誰も居ないのだろうか。
窓から内部を覗き込んで見る喜雄。

(あ? 誰か居やがんな)

すると、礼拝堂となっている内部に人が居るのを認めた。
神父等が立つ壇の辺りに、どうやら狐獣人の女性と何故かほぼ全裸の白山羊の少年が居る、のだが。

(何やってんだあいつら……)

その二人が行っている行動に、喜雄は疑問を抱く。
狐の女性は壇の上に乗り大きく股を開いて、その股の間に白山羊少年は顔を突っ込み、右手を自分の股間で激しく動かしている。
狐女性は喘いでいるようで気持ち良さそうにしていた。二人が何をしているのかはすぐに分かった。

「マジかよ……」

困惑と呆れの混じった表情を浮かべ、関わる必要も無いと喜雄は去ろうとした。

「あっ」

しかし、内部の狐女性と喜雄は目が合ってしまった。

◆◆◆

調子に乗って礼拝堂で淫らな行為を行っていた狐獣人女性、霧島弥生と全裸白山羊少年娼夫、キーレンは、
ばつの悪そうな顔をして自分達の行為を目撃してしまった中年男性川田喜雄と相対していた。

「恥ずかしいな〜……見られるなんて」
「うぅ」
「いや、まぁな……」
「私、霧島弥生、この子はキーレン。おじさんは?」
「川田喜雄。食堂やってるおっさんだ……殺し合いには乗ってはいないからそこんとこは安心してくれや」
「そうなんだ、私達も乗ってないよ」

私の場合は今の所はって付くけど、と心の中で付け加える弥生。
状況次第では殺し合いに乗る事も有り得る。
そのような事はキーレンにも話していないし話すつもりも無い。当然喜雄にも。話せば立場が悪くなるのに話すメリットも無い。
一方のキーレンはそんな弥生の真意は露知らず、殺し合う気も本気で無い。
その後は互いに情報の交換を行う。
キーレンからは喜雄に自分が襲われたスカーレット・ガードナーなる少女について、喜雄からは自分の知り合いである志水セナや、
この殺し合いで出会った馬に尻を掘られたい倉持忠敏なる男について。

「知り合いっつってもそこまで親しい訳じゃねぇけど……俺の店の常連客ってだけで。しかしだ、おっかねぇガキも居るもんだなぁ」
「殺し合いを楽しんでいるように見えました……今どこに居るのかは分かりませんが気を付けて下さい」
「お前見た目の割に意外としっかりしてんのな」
「はは……」
「にしても、馬に*されたいなんてハードな趣味ねその倉持って人」

喜雄から聞く所によればオス馬の長大な肉槍に尻を貫かれて死にたいと本望しているらしい倉持なる男に弥生は多少ではあるが興味を引かれた。
そう言えば参加者に大きなオスの白いユニコーンが居たと思い返す。
ユニコーンは処女にしか興味が無いと聞いた事が有るが果たして。
0272Past time has no meaning for us ◆ymCx/I3enU
垢版 |
2016/06/29(水) 13:46:47.65ID:67T/OccX
「白いユニコーン居たしそいつ捜してるらしいぞ。出会えた所でユニコーンが倉持の趣味分かってくれるかどうか分かんねぇけど。
ま、俺には関係無ぇ事だしな。ケツ破られて死のうがどうぞ好きにしてくれって感じだ」
「まあそりゃそうよねぇ」
「僕では無いですけど先輩の娼夫がオス馬に掘られるショーを見た事ありますね、あれは凄かった……馬の太くて長いのg」
「詳細言わんで良いから! んじゃ……俺はもう行くわ。悪かったなお楽しみ邪魔して。縁が有ったらまた会おうぜ」

挨拶の後、喜雄は教会を去って行った。
教会の礼拝堂には元通り、弥生とキーレンが残される。

「ヤってる所見られたのはアレだったけど、殺し合いに乗ってる奴じゃなかったのは幸いだったわね……やっぱ部屋とかでヤろ」
「そう言う問題でも無いと思いますけどまぁ良いや」

教会の玄関に改めて鍵を掛け、弥生とキーレンは奥に有る拠点としても使っている寝室へと戻って行った。

◆◆◆

教会を後にして再び喜雄の一人旅が始まった。

「悪い奴らでは無さそうだったし生き延びてくれる事を願っておくか……さて、俺は俺の身の振り方をだな」

弥生とキーレンの幸運を細やかに願いつつ、喜雄はひび割れたアスファルト舗装の道路と、
目の前に広がる森を見ながらこれからどこへ向かうか考える。


【午前/G-5教会前】
【川田喜雄】
状態:健康
装備:ペーパーナイフ
持物:基本支給品一式、調達した酒複数本
現状:死にたくない。自分が生き残る事を優先する。志水セナは取り敢えず放っておく。どこへ行くか……。
備考:スカーレット・ガードナーが危険人物である事をキーレンから聞いている。


【午前/G-5教会内】
【霧島弥生】
状態:健康
装備:レミントン デリンジャー(2/2)
持物:基本支給品一式、.41リムファイア弾(10)
現状:殺し合いには今のところ乗る気は無い。キーレン君と行動。
備考:スカーレット・ガードナーが危険人物である事をキーレンから聞いている。倉持忠敏、志水セナについての情報を川田喜雄より得ている。

【キーレン】
状態:健康
装備:園芸用シャベル
持物:基本支給品一式
現状:死にたくない。霧島さんと行動。
備考:スカーレット・ガードナーを殺し合いに乗った危険人物と判断。倉持忠敏、志水セナについての情報を川田喜雄より得ている。
0273 ◆ymCx/I3enU
垢版 |
2016/06/29(水) 13:47:16.30ID:67T/OccX
投下終了です
ああペースが遅すぎる
0276 ◆ymCx/I3enU
垢版 |
2016/07/06(水) 20:30:35.07ID:LbSEOd8n
保守
ウッソだろお前! こんなんじゃいつ終わるか…
0278 ◆ymCx/I3enU
垢版 |
2016/07/11(月) 09:27:02.79ID:M/oBJ588
二日書き込みが無かったらスレ落ちると聞いたが
違うのか……?
0279 ◆ymCx/I3enU
垢版 |
2016/07/12(火) 20:43:06.42ID:EFalMTAL
やっと一話出来たので投下します
0280逃れられぬカルマ ◆ymCx/I3enU
垢版 |
2016/07/12(火) 20:43:30.40ID:EFalMTAL
39話 逃れられぬカルマ

「あ、あ゛あ゛……」

血の跡を点々と地面に残しながら、緒方修二はようやく病院へと辿り着いた。
出血多量で獣人特有の強力な生命力も底を尽きかけている。

「ま、前が、見え……」

血を流し過ぎて視力にも悪影響が出ていた。ふらふらと病院のロビーの奥へ進む。
重量の有るレミントンM700が足枷になっていたが、思考能力も鈍りデイパックにしまうと言う選択肢も浮かばない。

(あれ、でもどうすれば良いんだ……?)

ここで修二は気付く。
自分一人でどうやって、背中の深い斬り傷の治療を行うのかと。
絆創膏を貼ったり消毒薬を塗る程度ならどうにかなるがそのようなレベルの傷では無い事は分かっていた。
急激に絶望感が修二の心を支配していく。ガクッと膝をつく修二。ここで自分は死ぬしか無いのか。
生き残ろうとして人殺しにまで手を染めたと言うのに。

「い、嫌だ……死にたくない……くそっ……」
「どうしたの?」
「え……」

突然聞こえた女性の声に、修二は俯いていた顔を上げる。
ぼやけた視界に映ったのは、銀髪の半獣人の美しい女性。外国人のようだった。
一瞬、自分が殺し合いに乗っている事も忘れ他に人が居た事に修二は安堵したが、すぐにその表情は凍り付いた。
女性の右手には物々しい金属製の鈍器が握られていたのだから。

「凄い怪我してる……痛いでしょ、苦しいでしょ……でも大丈夫……楽にしてあげる」

半獣人の女性は鈍器を持って修二に近付く。
逃げなければ、修二は身体を起こそうとしたが、最早力が入らず言う事を聞かない。ライフルを構える余力も無い。

「やめ、ろ……! やめろぉ!」

必死の修二の懇願も虚しく、その頭部に鈍器が振り下ろされる。
鈍い音、そして床に飛び散る血。
例えようの無い激痛に修二の意識が一気に遠のいた。
身体中が痺れ、どこが上なのか下なのかも分からなくなる。
そして容赦無く何度も、修二は鈍器で殴られた。

(い、き、たかった……の……に……)

自分が生き残る事を願い殺し合いゲームに乗った漫画家の鹿獣人は、病院にてゲームオーバーとなった。


◆◆◆
0281逃れられぬカルマ ◆ymCx/I3enU
垢版 |
2016/07/12(火) 20:44:04.16ID:EFalMTAL
メイスで殴り殺し、頭部が無残な状態になった鹿の男の死体を見下ろすマリア。
怪我をして弱っていたおかげであっさり殺す事が出来た。
心臓は鼓動を早めており軽い興奮状態だったが、思っていたよりは落ち着いていられた。初めての殺人であるにも関わらずだ。
殺人への抵抗が薄いと言うのは恐らくこのゲームにおいてはプラスに働く要素であろう。普段の生活ではマイナスに違い無いだろうが。

「良い武器持ってるじゃない……ライフルなんて」

しめしめと言った様子でマリアは鹿の男が持っていたスコープ付きのライフルを手に取る。
強力な武装を確保すればそれだけ自分の生存率も上げられる。

「重いなぁ……」

但し、ライフルはマリアには少々重量が有り過ぎた。


【緒方修二  死亡】
【残り34人】


【午前/E-6病院ロビー】
【マリア・ベーラヤ】
状態:健康
装備:メイス、レミントンM700(3/4)
持物:基本支給品一式
現状:殺し合いに乗り、優勝を目指す。但し身の安全を優先し無茶はしない。ウラジーミルについては放置。
備考:これから予備弾も回収するつもりで居る。
0284 ◆ymCx/I3enU
垢版 |
2016/07/22(金) 11:16:21.72ID:YWnnOMmw
やっと出来たんで投下
今回から状態表の装備と所持品をまとめます
省力化
0285ゆらりゆらり揺れているのは ◆ymCx/I3enU
垢版 |
2016/07/22(金) 11:17:23.44ID:YWnnOMmw
40話 ゆらりゆらり揺れているのは

島役場に辿り着いたテオ。
古い鉄筋コンクリート製の二階建ての庁舎が彼を出迎える。
誰か居るだろうかと思いながら玄関へ歩いて行く。しかし、扉の前まで来た時足に何かが引っかかりガランガランと大きな音が鳴った。

「えっ、えっ」

何事かと戸惑うテオだったが、どうもそれが即席の警報装置による物だと気付くのとほぼ同時に玄関の扉が開いて、中から巨躯の狼が姿を現す。

「どちらさん?」

狼は低い男の声で言葉を発しテオを睨み付ける。
筋肉質の大柄な狼で、鋭い牙と爪はテオの身体など容易に引き裂くであろう、テオはどきどきしながら受け答えした。

「ぼ、僕はテオ……テオ・オトマイアー。こ、殺し合う気は無いよ」

殺し合いには乗っていないと答える。決して嘘では無く「殺し合う」つもりはテオは無かった。
しかしやはり簡単には信じて貰えず狼は訝しそうに尚もテオを睨む。すると役場の中からもう一人、今度は金髪ショートヘアの人間の少女が現れた。
かなり乱れているが制服を着ており中高生のようだ。

「あらまあいやらしい格好の牛さん……」
「……まあ乗っていないのなら別に良いがな。俺はゼユック、こっちは美知だ」
「美知ですー、私とゼユックの作った即席の警報装置が早速役立つなんて。牛さん、取り敢えず中入る?」
「は、はい」

狼と少女の二人に促されテオは役場の中に入る。
先程の警報措置はこの二人が糸や空き缶等を使い役場周囲に設置した物らしかった。

(この二人でさっき手に入れたアレ、試そうかなあ)

先刻手に入れた毒物「シアン化カリウム」の効能を試す時が訪れたとテオは内心思う。
役場に入り応接スペースへと通される。そこには雄と雌の体液の臭いが漂い、使用済みのティッシュが転がり、
幾度と無くここで淫らな行為が行われていた事を示していた。
誰が行ってたか、ほぼ間違い無くゼユックと美知であろう。この狼と少女はどうやら何度も身体を交えているらしかった。

「ちょっと臭うけどごめんね」
「い、いや……」
「美知の***は気持ち良くてよぉ、何度もヤっちまうんだヘヘ」
「いやーんゼユックったら」
「……」
「テオもするかァ?」

ゼユックが美知のスカートをめくりながらテオに言う。美知は少し恥じらうような素振りをしつつ抵抗しない。
スカートの下の下着は無かった。テオは目を逸らしつつ断る。
興味が無い訳では無いが今は別の目的を果たしたかった。

「しっかしお前すげぇ格好してんな」
「……仕事着と言うか、何と言うか」
「仕事? ……あっ(察し)、もしかして男娼とかそんな感じかな?」
「うん……借金のカタで」
「まあ安心しろ、俺も美知も職業の貴賎を問うような事はしねぇ。なあ?」
「そうだよ、その辺は安心して」
「ありがと……折角だから、コーヒー入れるよ」

おもむろにテオは立ち上がり、コーヒーを入れに給湯室へ向かう。
背後でゼユックと美知が顔を見合わせた事には気付かない。
給湯室に入り、コーヒーを二人分作り、その中にシアン化カリウムを入れて良く混ぜる。
0286ゆらりゆらり揺れているのは ◆ymCx/I3enU
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2016/07/22(金) 11:17:46.38ID:YWnnOMmw
(これの死に方はどんな風だろう……)

殺人への抵抗、忌避はとうに消え去りテオの頭に有るのはシアン化カリウムの効能がどのような物かと言う事のみ。
コーヒーを持って二人の元へ戻る。

「おーサンキュー」
「ありがと」
「いえいえどういたしまして」

二人はテオからコーヒーを受け取る。
後は二人がコーヒーを飲めば、テオが見守ろうとした。

「……何か変なニオイがするな」

しかしそんなに事が上手く運ぶ筈も無い。ゼユックがコーヒーに疑問を抱く。美知はカップを持ちはしたが、口に運びはしない。

「あれ? そうかな……豆が傷んでいたのかな」
「白々しいなテオ」
「え」

とぼけようとしたテオにゼユックが飛び掛かり、腕に食らいついて思い切り投げ飛ばした。
テオは事務机にぶち当たり机の上に有った備品が辺りに散らばった。
食らいつかれた傷、投げ飛ばされる際に捻った腕、そして強打した全身の痛みにテオは悶える。

「ぐあ、あ……」
「涼しい顔して、俺らに一服盛ろうとしやがるとは良い度胸だな? 急にコーヒー入れるなんて言ったら怪しむに決まってんだろ?」

ゼユックがゆっくりテオに近付きながら言う。
確かに彼の言う通りなのだがテオはそこまで思考が至らなかった。
「何を入れたんだ」とテオの腹を思い切り踏み付けながらゼユックが尋ねる。黒目に光る獣の瞳には怒りが湛えられている。

「シアン、化、リウム」
「ええ!? 猛毒じゃんそれ」

美知が驚き反応する。飲んでいれば間違い無く死んでいただろう。

「お前何でそんなモンを」
「自殺の方法を探してるんだ、僕」
「ああ?」
「楽に死ねる、自殺の方法無いかなって。さっき手に入れた、毒を試そうと思って」
「ふざけんなテメェ! 俺らをお前の実験台にしようとしやがったんだな!?」

余りに身勝手極まり無いテオの目的にゼユックも美知も憤怒する。
この白牛に然るべき制裁を加えなければならないと心に決めた。
テオはゼユックに踏み付けられながら、全てを諦めたような、ぼんやりとした表情を浮かべている。

「テオ、お前は『自殺』は出来ねぇよ……俺達に『処刑』されるからな!」

ゼユックにより、テオに死刑宣告が為される。
処刑の準備は直ぐに始まった。
腕を後ろで縛られ、美知の手によりテオの両足が合口によって刺され身動きが出来ないようにされた。

「あぎゃぁああああ!!!」

当然テオは激痛によって悲鳴をあげ泣き叫んだ。だが完璧に無視される。
裏庭へと引き摺り出され、一本の大木の元へと放り投げられる。この木こそがテオの処刑台である。
どこからかロープが持ち出され、ゼユックが大木に登り太い枝の上にロープを通し、一端を停められていた軽トラックに繋ぐ。
そしてもう一端を美知がテオの首に結び付けた。
0287ゆらりゆらり揺れているのは ◆ymCx/I3enU
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2016/07/22(金) 11:18:20.91ID:YWnnOMmw
(あ……絞首刑にされるんだ……僕)

ここまで来ればテオは自分がどのような運命を辿るのか察する事が出来た。
「もっと恥ずかしい姿で死ね」とゼユックがテオの下着を乱暴に剥ぎ取りそこそこに大きい逸物があらわになる。
しかし今まで何度も何度も、恥辱を重ねてきたテオに取って今更全裸が恥ずかしいと言う事も無い。
今彼の頭に有るのは絞首刑で死ぬのはやはり苦しいのだろうか、と言う事のみ。

最期の言葉を聞くと言った温情も与えられず、テオの処刑が始まった。

ゼユックが軽トラックを発進させると、テオの身体がゆっくりと持ち上がる。

「うっ、え」

この時点でもう殆ど呼吸は出来なくなっていたが、遂にテオの身体が宙に浮くと、いよいよ呼吸も血流も遮断され、想像を絶する苦しみがテオを襲う。

「ぐっ、え゛え゛っ]

血塗れの両足を激しくばたつかせ、泡を吹き、両目を血走らせ、激しくもがく白牛青年。
とても品の無い声が大きく舌を垂らした口から吐き出される。
もしこれが高所から突き落とす方式の絞首刑だったのなら恐らく首の骨が折れてすぐに死ねたであろうが、今回テオに適用された方式は引き上げる物で、
ロープが急所からなまじ逸れてしまいそれが苦しみを長引かせる要因となった。
いくらもがこうとテオの首のロープは彼の気道と血管を締め上げる。

(苦しい、苦しい!! 痛い!! 苦しいよぉ!! 早く終わって!! お願いだから!! 早く終わってよおお!!)

一刻も早く、この苦しさから解放される事を、テオは願った。

そして。

「ア……げぉ……お」

段々と白牛青年の動きが緩慢になり、ビクビクと大きく身体を痙攣させ、股間からは小水や便が溢れ地面に垂れ落ち始める。
だらしなく開いた口からは血の混じった泡と舌が垂れ、粘り気の有る唾液が排泄物同様地面と彼の身体を汚す。

(だん、だん、なにも、わからなく、なって……き……なんか……あった、か……ここち……いい……よぅ……――――)

ほんの一瞬、僅かな心地良さと暖かさを感じた後、テオは何も分からなくなり、それと同時に、彼の身体はゆらりゆらりと揺れ動くのみとなった。
役場の裏の大木に、大きな実が出来た。
枝に引っ掛けられたロープで首を絞め、釣り上げられた全裸の白牛青年。
薄ら開いた両目は虚空を見詰め、瞳孔は開き切り、血の泡と排泄物でその身体は酷く汚れ悪臭を放ちながら、ぶら下がっている。
◆◆◆
「全くとんでもねぇ奴だったぜ」
「ホント……気晴らしにまたヤろ」
「よっしゃ」

白牛青年を処刑し終えたゼユックと美知は、再び役場の中へと戻って行った。
ぶら下がった白牛青年の死体をどうするか少し協議もしたがとても汚く触るのも億劫なので放っておく事で合意した。

【昼前/D-5島役場】
【ゼユック】
状態:健康
所持品:基本支給品一式、合口
現状:殺し合いはしないが襲われたら戦う。美知と行動。しばらく島役場に籠る。
備考:特に無し。

【室川美知】
状態:健康
所持品:基本支給品一式、チェーンソー
現状:殺し合いはしないが襲われたら戦う。ゼユックと行動。しばらく島役場に籠る。
備考:服は着ている。
0288 ◆ymCx/I3enU
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2016/07/22(金) 11:18:55.85ID:YWnnOMmw
投下終了
チェーンソー使えば良かったんじゃね? と思ったがまあいいや
0289 ◆ymCx/I3enU
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2016/07/22(金) 13:14:10.91ID:YWnnOMmw
もう一話行きます、短いです
短くする方向で行きます(じゃないと終わらない)
0290森を抜けると ◆ymCx/I3enU
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2016/07/22(金) 13:14:39.31ID:YWnnOMmw
41話 森を抜けると

森の中を彷徨い歩いていた黒牙とウォラゴであったがどうにか森を抜ける事に成功した。
疲弊しつつ喜びを顕にする二人。目の前に広がる草原と道路の広々とした風景は二人を大いに癒す。

「うおお! やっと出れたぜ……黒牙さまさまだな」
「俺を道具みたいに言うな……」
「ありがとうな。んじゃ、俺は行くわ」
「あ、そう」

早々に黒牙と別れるウォラゴ。もうこれ以上黒牙と居る理由は無い。森を抜けた後始末してしまおうとも思ったが疲労でそれどころでは無かった。
対する黒牙も去って行くウォラゴを見送るに留まる。

(今は疲れてるから見逃すが、次会ったら容赦無く殺らせて貰うぜ黒牙)
(もう疲れたから今は放っておくけど、次に会ったら殺っちゃおう)

互いに心の中で殆ど同じような思考をしながら、ウォラゴと黒牙は離れた。
ウォラゴはしばらく歩いてC-3エリアの武器屋に到着する。
休んでいくついでに武器を入手しようと考えウォラゴは扉を開け入店した。
様々な武器が陳列された店内、だが物色した跡も有り先客が居た事を物語る。しかしそれは然程気にする事でも無い。

「んじゃ、こいつ貰っちゃおうかねぇ」

ウォラゴはリボルバー拳銃とその予備弾薬を幾つか手に入れ、カウンターの椅子に座り一息ついた。

黒牙は展望台を訪れる。
見た目で廃墟だと分かるこの高層建築物にやって来たのは何となく目を引いた為であるが、近付くと異臭を嗅ぎ取った。
その異臭を辿り展望台の外周部を周り裏手に行くと、臭いの元を見付ける。

「うっ、これは」

それは脳漿を撒き散らした人間の少女の死体。
全裸で、性的暴行の痕跡も見られた。
展望台から墜落死したと思われるが、自殺なのか他殺なのか。

(犯されて殺されたのか、ショックで自殺したのか分からないけど、可哀想に……)

何れにせよ、この少女の最期が悲惨であっただろう事は疑いようは無く、黒牙は憐れんで黙祷を捧げた。

螺旋階段を上り、展望室へと上がったが、少女の物らしい引き裂かれた衣類と基本支給品しか入っていないデイパックの他は、
特に何も見当たらなかった。強いて言うなら青い海を眺める事が出来る位である。

「休むか……弓那、どこに居るんだろ。無事だと良いけど」

どこに居るのか分からないパートナーの少女を心配しつつ、黒牙は古びたベンチに座って休息する。

【昼前/C-3武器屋】
【ウォラゴ】
状態:疲労(大)
所持品:基本支給品一式、ハンティングナイフ、消毒用エタノール(500ml)、リボルバーと弾薬(現時点ではモデル不明)
現状:優勝狙い。取り敢えず休む。
備考:黒牙を警戒している。

【昼前/B-4展望台】
【黒牙】
状態:疲労(大)
所持品:基本支給品一式、薪割り斧
現状:殺し合いには乗らないが襲い掛かってきた者や危険と判断した者は排除する。
弓那や殺し合いに乗っていない者の捜索。ビデオテープの内容を確認したい。
備考:ウォラゴを警戒している。
0292 ◆84AHk0CknU
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2016/07/24(日) 02:05:50.44ID:W/O+iU8B
お久しぶりナス!

>>ゆらりゆらり揺れているのは
一応対主催者なんだろうけど過激すぎィ!
テオはまぁ当然の報いだな

>>森を抜けると
今回は戦闘無しで別れたけど、次はどうなるか分からないですね

自分も投下します
0293LOST COLORS ◆84AHk0CknU
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2016/07/24(日) 02:07:37.37ID:W/O+iU8B
森林エリア、墓地の奥に建つ教会の一室で爬虫類似の青年、遠野はデイバッグの中身を確認していた。
出てきたのは拳銃。当然使ったことなどないが当たりの部類に入るだろう。

「待っててください先輩。僕が必ず助けますから…」

遠野は殺し合いに乗ることを決めていた。
なんで殺し合いなんかする必要があるんですか(正論)と思うかもしれないが、これには彼なりの理由がある。
この場に居る恋人の野獣先輩こと田所を守る、その為に遠野は他の参加者を皆殺しにする決意をしたのだ。
無論人殺しになる事に抵抗が無いわけではなかったが、自分が手を汚す事で野獣を守れるのならそれでも構わない。
45人だろうが114514人だろうが、見ず知らずの大勢よりも野獣一人の命の方が遠野にとっては大きかった。サイコホモ怖いなー、とづまりすとこ。

「ん?」

ホモ特有の鋭敏さで何やら外が騒がしいのに気付く。
窓からそっと顔を覗かせ様子を窺う。
可能ならば殺し、相手がこちらよりも強力な武器を持っていたら撤退する事も考えつつ、
右手で銃を強く握り締めた。



マントをなびかせ、仮面の下では息を乱さず、
肌寒い夜の森をゼロは駆け抜ける。
目指すは中央の市街地エリア。
少なくない数の参加者が集まるであろうその場所で、目に付く者を全て殺す。
ついさっき名も知らぬ無力な少年を一人その手に掛けた。
残る標的は最愛の妹とその騎士、超高速で動く少女、そしてまだ見ぬ41人と呪われし愚弟。

突然足を止め前方を見据える。
目の前には墓地が、墓に囲まれ佇む参加者が一人。
男――いや、少年だろうか――は異様な外見をしていた。

衣服は一切身に着けておらず、中々に鍛えられた肉体を晒している。
顔も童顔といえば童顔かもしれないがよく見ると顎鬚が生えており、ただのオッサンのようだ。
ついでに股間の辺りも黒い。これもう分かんねぇな。

これだけならただの露出狂か何かと思われるが、それよりも目に付く箇所がこの少年が単なる変態ではない事を証明している。
全身は紫色に染まっており、背中からは蝙蝠のような翼が、頭部からは二本の角が突き出ている。
少年は近付いてくるゼロに気付いたのか、ゆっくりと顔を上げた。

「ぼくひで」

唐突に少年の口から出た四文字の言葉。
どうやら自己紹介のつもりらしい。(初対面の相手にもきちんと名乗る人間の鑑)

「早速だけど死んぢくり〜(挑発)」

ひでが笑顔で言う。
歯茎を剥き出しにしたクッソ気持ち悪い笑みであった。
発せられたのは言葉だけではない。
ひでの全身から漂ってくる禍々しい気配、人ならざる者の殺気とでも言うのだろうか。
体中を虫が這っているかのようなおぞましさ、或いは眉間に銃口を突きつけられているかのような緊張感。
常人には到底耐えられないであろうプレッシャーが墓地一帯を包んでいる。
0294LOST COLORS ◆84AHk0CknU
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2016/07/24(日) 02:09:51.47ID:W/O+iU8B
「フッ、ただの気狂いではないようだな」
「っ!?」

ひでの顔から笑みが消え、驚きと焦りが浮かぶ。
恐怖に固まると思っていた相手に平然と受け流されたのだ。仕方ないね(レ)
確かに“ただの人間”ならばひでが放つ負のオーラに屈しただろう。
しかし、今対峙しているのは人間を超越したエデンバイタルの魔王。
クソ汚いオスガキの殺気など何の障害にもならないってハッキリ分かんだね。

「…怒らせちゃったねぇ。ぼくのこと本気でねぇ!」

ほんの一瞬とはいえ醜態を見せたのが気に食わなかったのか、怒声を上げながらゼロに襲い掛かった。
雄叫びを上げ両手に握った巨大な錨を振り下ろす。

「オラアアアアアアアア!!」

直撃すればミンチであろう迫り来る錨を、ゼロは拳を放ち相殺。
互いに一撃だけでは終わらず続けて何度も得物をぶつけ合う。

横薙ぎに払われる錨、右拳をぶつける。
斜めに振り下ろされる錨、左の手刀で弾き返す。
振り上げられた錨、蹴り弾く。
我武者羅に振るわれ、四方八方から襲い掛かる錨。
右拳、左拳、右脚、左足、マント。
全てを駆使し防ぎ、弾き、受け流す。

そんな攻防がどのくらい続いただろうか。
二人の衝突の余波で周囲の墓は原型を留めていない(罰当たり)。なんてことを…。
リーチでは勝り、常に先手を打ち攻撃の隙を与えさせない。
にも関わらずひでは未だに、ゼロを殺せずにいる。

「あ〜もう!」

苛立ちながら錨を振るうが徐々にその速度は落ちてきている。
こ↑こ↓に来てひでの肉体に疲れが出てきたのだ。
このまま錨を振り回していればあっという間に体力が底をつく。
そうなれば今度はひでが一方的に攻撃を受ける番となる。
それはまずい。

ゼロが両腕で攻撃を防いだ瞬間、錨を押し付けるように放つ。
僅かだが相手が後退した隙に、背中の羽を広げ上空に舞い上がる。

「あ^〜出る〜」

気の抜けた声とは裏腹にひでの周囲には黒い煙のようなものが集まっている。
相手が何をするつもりかは分からないが、黙って眺めているつもりもない。
ゼロはひで目掛けマントを飛ばそうとする。
だが、既にひでは『新たな一手』の準備を終えていた。

「出ちゃっ…………たぁ!!」

ひでの全身から溢れ出るかの如く、ドス黒い液体のようなものが地上へと降り注ぐ。
咄嗟に液体の直撃をゼロは避ける。
さっきまで立っていた場所を見ると、地面も墓も煙を出しながら無残に溶けている。
かつて神聖な学び舎を悪臭漂う小便で汚した時のように、今度は自らに宿る邪悪な力を液体へと変え、
排出したのである。きたない(確信)
0295LOST COLORS ◆84AHk0CknU
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2016/07/24(日) 02:11:26.67ID:W/O+iU8B
「あ゛〜」

液体が次から次へと降り注ぐ。
ゼロは回避に専念し、ひたすら動き続ける。
時折マントを飛ばしてみるが、よく狙いをつけたものでは無い為簡単に躱されてしまう。
何度目かの排出を避けようとするゼロだが、そこで周囲が液体塗れになり逃げ場が無い事に気付く。

「うー☆うー☆」

勝利を確信したのかひでは尻を振って挑発した。汚ねぇケツだなぁ(TNOK)
最早相手に逃げ場は無く、マトモな飛び道具も無い。
圧倒的有利な自分の立場にほくそ笑みながら、液体を発射しようとした。

その時、発射される寸前ひでの尻に激痛が走った。

「あぎぃ!?」

唐突な痛みに悶え、攻撃を中止してしまう。
ひでが尻の激痛の原因に気付くよりも早く、右の羽と背中を同様の痛みが襲った。
痛い痛い痛い熱い熱い痛い熱い。
何だ何だ何が起こった何をされた。
訳が分からないまま地面に落下し、自らの排泄物に身を沈めながらピクピクと痙攣し動かなくなった。

ひでの無様な姿を見届けるゼロの手には長大な銃身を持つリボルバーが握られている。
ゼロがした事は至って単純。
ひでが尻を振っている最中デイバッグから支給品の銃を取り出し引き金を引いた。それだけである。
敵が飛び道具を一切持っていないと勝手に思い込み、慢心したオスガキには似合いの末路なんだよなぁ。

「うぅ……あ…あァァァァァァァ……!」
「ほう?」

しかしひではまだ生きていた。
元来の頑強さからか、満身創痍となりながらも立ち上がり再び液体を出すべく力を溜める。
ゼロが銃を撃つが弾丸はひでに到達せず、周囲のドス黒いオーラに阻まれてしまう。

「出るゥゥゥゥゥゥ!!」

カッと目を見開いたひでの全身から、今度は真横に液体が発射された。
死と苦痛を。
自分を痛めつけたこの男に死と苦しみを!

邪悪な願いの込められた液体は、あっという間にゼロを飲み込んだ。

「ハァ、ハァ、ハァ、ハーッ…」

荒い呼吸を繰り返しながらひでは地面に腰を下ろす。
液体が体に付着するが、元々ひで自身の怨念により生み出されたもの、自分にとって害は無い。
それより今は傷つき疲弊した肉体の治療が先決だ。
何とか敵は殺したが、この状態で他の参加者と遭遇したら呆気なく殺される。
まずはここから離れようと、痛む体に鞭打ち立ち上がろうとし、


「今のは少しばかり肝が冷えたぞ」
0296LOST COLORS ◆84AHk0CknU
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2016/07/24(日) 02:15:41.48ID:W/O+iU8B
その声にひでの心臓が止まりかけた。
冷や汗を掻きながら顔を上げる。
視線の先には居たのは巨人。
体の所々を溶かされ、それでも主人を守るべく仁王立ちする魔王の愛機。
ナイトメアフレーム、ガウェイン。

ゼロは咄嗟にガウェインを召喚し、身を守る盾として活用した。
そのお陰で今も傷一つ無い。
その代償としてガウェインは各部に損傷を負い、見るも無残なひでに完全敗北したガウェインくん UCと化している。
主武装のハドロン砲も右肩は溶かされているがもう片方は健在。
一つでも十分過ぎる程の兵器だ。

「やだ!ねえ小生やだ!」

砲口がひでへ狙いを付ける。
ひでは必死に逃げようとするが、傷だらけの体は思うように動いてはくれない。
弾丸で撃ち抜かれた羽もマトモに機能せず、飛ぶ事もできない。

「お兄さんやめちくり〜(懇願)」
「ひで、と言ったか。少々手間取ったが、さよならだ」

「あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛もうやd――――――」

墓地一帯が光に包まれ、圧倒的な熱にひでは包まれた。



「うわああああああああああああ!!」

悲鳴を上げ遠野は森を走っていた。
殺し合い開始当初の使命感に溢れた時とは打って変わり、今の遠野には恐怖心しかない。
墓地で戦っていた仮面の魔人と全身紫の悪魔。
現実では有り得ない化け物同士の戦闘を見て、殺し合いに乗る決意はあっさり折れてしまったのだ。
何だお前根性なしだな(棒)

「うぁっ」

木の枝に躓き転倒する。
うつ伏せに倒れたまま動かない。
気持ちを落ち着けるために当初の使命感を思い出そうとする。

「僕、は…先輩のために…殺す……殺さないと……」

――そうだ、あんな連中まで参加してるなら余計に先輩が危ないじゃないか。
――何時までも怯えてる訳にはいかない。
――拳銃なんかよりもっと強い武器か、強くてお人好しそうな人をぶつけるか。
――方法はなんでもいい。
――先輩を助けられるなら何でもっ!?

何が起きたのだろうか。
突然背中に鋭い痛みを感じた。
立ち上がろうとしたら更に痛みが襲った。
誰かに刺された?

「いや、だ……せん、ぱ………」

消え行く意識の中、鬼気迫る顔でナイフを振り下ろす金髪の少女が見えた。


【遠野@真夏の夜の淫夢 死亡】
0297LOST COLORS ◆84AHk0CknU
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2016/07/24(日) 02:17:17.81ID:W/O+iU8B


那須原アナスタシアがこの会場で最初に目撃した男は、何かから逃げているようだった。
悲鳴を上げみっともなく転んだ男にどう対処するか考えながら慎重に近付いた。
大丈夫かしら、と声を掛けようとし、耳に入ったのは男の「殺す」という呟き。
男は殺し合いに乗っている。
逃げるか?いや近付きすぎた。
仮に逃げれたとしても、男は別の誰かを襲うだろう。それは誰だ?
あの壊滅的ブラコン女か、可愛い純情銀髪娘か、それとも“彼”か――。

気付けば支給品のナイフを振り下ろしていた。

「服…着替えないと」

聖リリアナ学園の制服は返り血で汚れている。
自分のデイバッグに衣服の類は入っていない。
男のバッグにあればいいが、そうでなければ街までいかなくてはならないだろう。
フラフラとした足取りでアナスタシアはその場を去ろうとする。

「何をしているのかしら……こんな…」

この男を殺した意味はあるのだろうか。
姫小路兄妹と銀兵衛が襲われる可能性は一つ減っただろう。
代償として自分は人殺しとなった。
もう二度と、あの寮での日常には戻れない罪を犯して。

「着替え……探さないと…」

目を背ける。
取り返しのつかない事をしてしまった後悔と、秋人たちとは一緒に居れないという悲しみから。
少女はただ必死に逃げ続けていた。


【那須原アナスタシア@お兄ちゃんだけど、愛さえあれば関係ないよねっ】
[状態]:精神疲労(大)
[装備]:不良少年のナイフ@チャージマン研!
[道具]:共通支給品×2、TNOKの拳銃(6/6)@真夏の夜の淫夢、予備弾×30、不明支給品0〜5
[思考]
基本思考:私はどうしたら……
0:服……
[備考]
0298LOST COLORS ◆84AHk0CknU
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2016/07/24(日) 02:18:25.90ID:W/O+iU8B



「余計な真似をしてくれる…」

墓地を離れたゼロはそう独りごちる。
ひでとの戦闘中に感じた肉体への違和感。
腕がいつもより重く、マントが遅い。
全身が妙な倦怠感に包まれている。
ハドロン砲の威力も落ちていた。
間違いなくロロが何らかの細工をしたのだろう。
この分ではギアスと瞬間移動にも何らかの制限が掛けられている可能性が高い。

首輪か何らかの装置か。
いずれにせよこの枷は邪魔でしかない。
ロロを殺す前にどうにかしておきたいものだ。

疲労もある為ゆっくりと、されど足は止めない。
寄り道をしたがここからは真っ直ぐ中央へ向かう。
魔王の脅威は確実に近付きつつあった。


【ゼロ@コードギアス ナイトメア・オブ・ナナリー】
[状態]:疲労(極大)、ガウェイン(損傷大、右ハドロン砲使用不可能)3時間召喚不可
[装備]:なし
[道具]:共通支給品一式×2、手斧@現実、エレファントキラー(0/5)@バイオハザードシリーズ、500S&Wマグナム弾×20、不明支給品0〜4、真尋の首輪
[思考]
基本:魔王の使命を果たす
1:全参加者及び主催者を殺す
2:中央の都市エリアへ向かう
3:首輪を外したい
[備考]
※参戦時期は本編終了後


0299LOST COLORS ◆84AHk0CknU
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2016/07/24(日) 02:20:06.34ID:W/O+iU8B
ひでしね

何度罵倒されただろうか。

ひでしね

その度に何度苦しんだだろうか。

ひでしね

もうやめて、助けて。そう願っても地獄は終わらない。

ひでしね

積年の怨みが爆発し、悪魔の如き力を得ても変わらなかった。

ひでしね

殺し合いに巻き込まれた時は、正直チャンスだと思った。

ひでしね

優勝すればこの苦しみから解放されるのではないかと思ったからだ。

ひでしね

しかし現実は非情だった。自分以上の怪物に蹂躙され死ぬ。

ひでしね

もういいや。どうせならこのまま死んで楽に…

ひでしね

……いやだいやだ死にたくないやっぱり死ぬのはいやだくるしくてもいきていたいねぇだれかたすけてよねえだれかだれでもいいからねえねえねえねえねえねえ

ひでしね





ひでしんだ

【ひで@真夏の夜の淫夢 死亡】
※墓地一帯がハドロン砲により吹き飛びました。
※ひでのデイバッグとブロブの錨@バイオハザードシリーズは消滅しました。


投下終了です
0300 ◆ymCx/I3enU
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2016/08/02(火) 19:43:09.38ID:VALURXu4
投下乙です

遠野呆気無いっすね
そしてひでしんだ
ちょっとだけかわいそう、でもひでしね

自分も投下します
0301幸福な死 ◆ymCx/I3enU
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2016/08/02(火) 19:44:10.98ID:VALURXu4
42話 幸福な死

とある人間男とオスのユニコーンの盛り場と化した境家の納屋の中はむせ返るような雄臭さで満ちていた。

「あぁ……あぁ……何度イったんだ俺は……」

全身をユニコーンの唾液と種汁で塗れさせだらしなく拡がりきった門からも下痢の如くどば〜っと種を漏らす全裸男、倉持忠敏。

「こんなに良い穴は初めてだぜ……忠敏……フーッ……」

数え切れぬ程の発射を行いながらも、尚も怒張を保つそれを股間にぶら下げ恍惚とするユニコーン、ユージーンは、
忠敏、と言うか忠敏の門へと賞賛の言葉を送った。
そして二人は幸せなキスをして終了、とはならない。

「ユージーン、頼みが有る」
「何だ忠敏、急に改まって」

いきなり真面目な様子になる忠敏。とは言っても全裸で馬の体液塗れで真面目もクソも無いのだが。
ともかく、忠敏はユージーンの顔を見据えて言った。

「俺を掘り殺してくれ」
「何?」
「思い切り突き上げて腸を破って殺してくれ」

忠敏がユージーンに請うたのは自身の殺害。
それも、ユージーンの肉槍で自分の直腸を引き裂き殺して欲しいとの事。
当然二つ返事で了解する事など出来ず困惑の表情を浮かべるユージーン。

「いや、そんな事……」
「頼むよユージーン。俺みたいな馬に尻掘られてよがってるような変態が、どうせ最後まで生き残れる筈無いんだ。
ならせめて、自分の死に方ぐらい自分で決めたい、自分の趣味に殉じて死にたいんだよ。お前にしか頼めない事なんだ、お願いだ……」
「忠敏……」

ユージーンの頬に手を添え、忠敏は懇願した。
その瞳は先程までとは別人のように真剣で凛々しささせ感じさせる物。
これで全裸で馬の体液塗れでは無くて話の内容が酷く無ければ更に格好良く見えたであろう。
ユージーンは迷ったが。

「本当に……それで良いんだな?」
「やってくれるのか?」
「ああ。やってやるよ」
「ありがとう」

結局は忠敏の願いを聞き入れた。
短いながらもとてもとても濃密な時間を一緒に過ごした相手の最期の願いを無碍には出来ない。
自分しかそれを叶えてやれないと言うのであれば、果たさなければ。

「これを……」
「こいつは、催淫剤?」

忠敏は自分の支給品である催淫剤をユージーンに差し出す。これを使えばユージーンは理性を失い忠敏の望み通り、
その腸をズタズタにする程に突き上げるであろう。先程までの行為でもユージーンは腰を思い切り動かしてはいたが、
やはり理性は有り忠敏の腸を傷付けない程度に手加減はしていた。

「最期にお前と過ごせて良かった。俺は幸福だ。これから幸福な死を迎えられると言っても過言じゃない。ありがとう、ユージーン」

微笑みながら、忠敏は最期の言葉を言い残す。
ユージーンは何か言おうとしたが、言葉に詰まり、言い出せず。
そして、忠敏はユージーンに催淫剤を使った。
0302幸福な死 ◆ymCx/I3enU
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2016/08/02(火) 19:44:46.79ID:VALURXu4
効果はすぐに現れる。

ユージーンの目付きが変わり、鼻息が荒くなる。
涎を垂らし、股間の肉杭はそれまでと比べ物にならない程、いきり立った。
ガン、ガン、と前足のヒヅメを鳴らし、尋常ならざる興奮状態になった事を示す。

忠敏は一回、深呼吸をした後、ユージーンに尻を向けた。

何の気遣いも無い、ただ本能のみの突き上げは、忠敏の腸をいとも容易く引き裂いた。
ダラダラと涎を垂らし、忠敏に向かって腰を振るユージーン。最早目の焦点も合っていない。
びちゃ、びちゃと鮮血が飛び散り、忠敏の下半身と、ユージーンの下半身が、忠敏の血で、真っ赤に染まって行く。
しかし、彼は、忠敏は嬉々とした表情で、幸福感に包まれていた。
馬に掘られ死ぬのは本望、自分の人生を自分の望んだ形で終わらせられる、幸福に違いないと。
本気でそう思った。

もしかしたら思い込みたかっただけなのかもしれないが。

意識が途絶える直前、忠敏が最後に耳にしたのは、自分のはらわたで絶頂を迎えたユニコーンの嘶きだった。

◆◆◆

ユージーンが理性を取り戻した時、全ては終わっていた。
尻から夥しい量の血を流し、絶命した忠敏の表情は涅槃の如く安らかであった。

「……忠敏……お前一人じゃさみしいだろ……?」

自分も後を追おうと、股間付近を忠敏の血で赤く染めたユージーンはバリケードをどかし納屋の外に出た。

歩き、辿り着いたのは海岸。
それも高さ五メートル程の崖になっている場所。
下には白波打ち付ける岩場が有り、落ちればまず命は無い。そんな場所にユージーンは立ち、ふぅ、と息を吐く。

「俺も、生き残れる気がしないし、お前と一緒にあの世へ逃げる事にしたよ。
忠敏、あの世でまた会おうぜ、んで、また楽しもうぜ」

遺言を終えると、ユージーンは崖から飛び出した。

五メートル程下の岩場へと真っ逆さま。
ぐしゃりと嫌な音が、波の音に混じって響き、ユージーンは首があらぬ方向へと向いて、口と鼻から血の泡を吹いて死んだ。
硬い岩は彼の体重による落下エネルギーも相まって、彼の太い首の骨をも粉砕したのだ。

崖下の岩場に、波に洗われる白いユニコーンの死体が残った。


【倉持忠敏  死亡】
【ユージーン  死亡】
【残り31人】
0303 ◆ymCx/I3enU
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2016/08/02(火) 19:45:48.59ID:VALURXu4
投下終了です
もうどんどん退場させないと進まないんだゾ
0304 ◆ZC0oB5s5Dg
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2016/08/08(月) 01:38:38.11ID:K8wMKEIr
投下乙です。これは心中シーンからして原作リスペクトですね。

投下します。めっちゃ長くなりそうなので、結構時間がかかるかもです。申し訳ない。
0305今宵、月が見えずとも ◆ZC0oB5s5Dg
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2016/08/08(月) 01:41:36.19ID:K8wMKEIr
 深夜の街に足音が鳴る。
 どうやらここは本屋のようだ。それにしても自分のいるところとはだいぶ違う。
 そのように彼は思う。端正な容姿だが格好は洗練されていて、なおかつ変という、普通では計り知れない者だった。

(いやいや……ドクロベエも、まさかここまで歪んでいたとは)

 ヴォルトカッツェ、有名な方の名前でいえばボヤッキーはそう思う。
 変わった眼鏡に全身緑のような色立ち。とても目立つ。
 暗闇とはいえ、この格好は標的にされかねない。
 だから彼はビルの物陰に隠れ、支給品を確認していた。

 1つ目は銃器だ。といっても拳銃といった便利なものではない。 そんな近代的なものではなく、古式の銃である。
 全体的には筒のような形で、長細い鉄パイプに木の持ち手がある。
 装弾の仕方は、まず銃口に弾をつめ、火薬を別の場所から入れる。
 その後、火種を直接当て、弾丸を発射するというものだ。
 お世辞にも使いやすいとはいえない。クロスボウよりも威力が劣るほどだ。
 命中精度もよくはない。
 利点は「音がとても大きいので相手がビビる」というものである。
 これが使われていた百年戦争でも、そんな扱いだった。
 一応は携帯火器であり、手先が器用なヴォルトカッツェにとっては使えないこともない。
 ただガンマンでもないのだ。
 一流の者が使えば強い武器になるが、ズブの素人の彼にとっては悩みものである。

 二つ目はくじ引きである。文字通り、くじ引きである。
 割り箸に紙が貼りつけられ、それぞれに「買い物」とか「洗濯」とかそういう言葉が書かれている。
 衣食住をするには円滑にものを進めてくれるかもしれないが、殺し合いでは意味がない。

 三つ目は日本刀である。紫色のまがまがしい柄と鞘である。
 名前は「妖刀『ベッピン』」。その歪さを感じる見た目に合うかのようだった。
 だが矛盾しているようであるが、その刀は奇抜にして精巧。
 伝説のニンジャ「カツ・ワンソー」を殺すため、その相手の指を鉄骨と混ぜた、かなりの力を持つ刀である。
 刃の色はなんと金色。鉄のはずなのだが、なぜか金色なのだ。
 しかもそこにはまがまがしい、よくわからない文字が書かれている。
 説明書によれば、どうもこの妖刀は「特別な文字が書かれていて、太刀筋を追うことができない」というものらしい。
 そんな非科学を通り越したものはバカな、とヴォルトカッツェは科学者のはしくれのような存在なので思った。
 彼は家に転がってたネジやらで目覚まし時計を作れるほどの腕前の、いわば天才技術屋であるが、こんなものは見たことがない。
 ただ、実際のところ、太刀筋をみようとすると、不思議と目で追えないのである。
 理屈はわからないが、とにかくすごいものだ。彼は腰に携える。
 彼もヤッターキングダムの追手から逃れている身だけあって、運動神経は普通の人間よりは優れている。
 ただ、剣術の才能などはからっきしだ。
 振り回せば「使える」が「使いこなす」のは不可能だろう。

(とはいっても、このような名刀をうまくこの手で再武器化するのは……そもそも仕組みが全くわからないので難しいか。あの携帯火器でしたらやれないこともないですが、効果は期待できませんね)

 ボヤッキーはそこらにあるもので巨大ロボットを作れるような技術力を持っている。
 さらに彼は殺し合いに乗る気はない。
 あのドクロベエを倒す、という決意をした段階で彼は殺し合いに巻き込まれたのだ。
「ヤッターマン」と名を騙り、独裁王国で人々からエレルギーを吸収するような者の思惑に参加するなどもっての外である。
 殺し合いの打倒、ということになると首輪の解除も不可欠だ。
 彼からしてみれば首輪の解除はできる可能性の1つである。外す装置も作るかもしれない。
 だがそのためには材料が足りない。
 まずは首輪の構造を把握する必要がある。自分につけられてはいるが、おそらく解除対策もしているだろう。
 その危険性も考えると、別の首輪があるに越したことはない。
 もう一つは外す装置の部品だ。
 前にも言ったように彼はロボットも製造できる科学力の持ち主だ。
 ただ、それはヤッターキングダムという世界の科学力が発達したこともある。
 そのような優れた部品があるからこそ、優れた機械が生み出せたのだ。
 だが現在の支給品はそんな代物はない。材料が不足している。
 不足しているのならどこかから集める必要がある。なかなか手間のかかりそうな事態だ。
0306今宵、月が見えずとも ◆ZC0oB5s5Dg
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2016/08/08(月) 01:43:14.24ID:K8wMKEIr
(そのためには仲間が欠かせませんね。レパード……ドロンジョ様の保護は不可欠ですし、エレパントゥス……トンズラー……まあこれはいいか……とも合流したい)

 それプラス、この殺し合いに参加していない同士だ。
 もちろん、それを見つけるのは難しいだろう。
 乗っている者もいるはずであり、いなければ殺し合いは成立しない。
 主催者もおそらくそういう人物を呼び寄せているはずだ。

(ですが、まあ彼らなら大丈夫でしょう。そんな簡単に殺されるようなタマではない)

 彼は信用する。それは共に旅をして、苦境を駆け抜いた人物だからこそできる信頼だった。
 とはいえ、なるべく早くには合流したい。
 仲間が集まるであろう場所は、かつて自分達が住んでいた「辺境の地」であろう。
 なぜ、この場所にあるのかはわからない。自分達が住んでいたであろうところではない場所に、その名称はある。
 そもそも島ではないが、そう書かれているのだ。変なところはあるが探ってみる必要はある。
 
 ボヤッキーがそこに向かうため地図を確認する。とはいえ、コンパスだけではここがどこかわからない。
 何か目印になればいいが、そういうものはどうも見当たらないのだ。
 しかし、それならば地図の意味などない。何かに手掛かりはあるはずなのだ。
 ここまで用意周到に殺し合いという場所を出している主催側だ。
 おそらくこの地図も彼らにとっては何らかの意味があるものである。
 とすると手がかりは街中にあると思いたい。
 どこかに看板とかにここがどこが書いているかもしれないが、それだと街中を歩き回る必要がある。
 その場合はとても危険だ。なので安全なのは建物内で速やかに済ませたい。
 その時、ボヤッキーの近くには本屋があった。
 何せ看板に「本屋」とあるのだから本屋なのだろう。
 店内は暗くてよくわからないが、おそらくこの中には、場所がわかる「手がかり」がある。
 一番目星がつくのは店内の事務室に住所が書かれた書類だろうか。
 住所と言っても「D-1」とかそういう書かれ方をしているものだ。それをなんとか手に入れたい。
 にしても、この本屋はこれといって地図には書かれていない。どうでもいいものなのだろうか。
 それにしては他の場所には個人の住宅名が書かれていたりと不可思議なところがある。
 疑問に思いながらもボヤッキーはまず、行動をうつすために店内へ足を踏み入れた。
0307今宵、月が見えずとも ◆ZC0oB5s5Dg
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2016/08/08(月) 01:47:26.89ID:K8wMKEIr
 いくつもの本棚に書物が敷き詰められている。
 道を作るように仕切られた店内は以前として暗いままだった。
 とはいえ電気をつけると「殺してください」と言うようなものだ。
 幸い、肉眼でも目が慣れれば支障はない。ボヤッキーは店内を歩き回る。
 実はボヤッキーもこのような場所は人生において初めて見るものだった。
 近代的な店舗というのは建てられるほど発展した場所ではなかったのだ。
 異様な科学力はヤッターメトロポリスに集中していて、それ以外は荒れた大地に小さな集落があるだけだ。
 ヤッターキングダムを除いても、辺境の地にはそんなものはない。
 メトロポリス自体もそんなに詳しく探査したわけではなく、巨悪の正体をとっちめるために侵入しただけだ。
 もちろん「本屋」や「カウンター」という概念はわかるのだが、実感するのは初めてなのである。
 そのような場所を主催者、ドクロベエはわざわざ作ったのであろう。手抜かりはない。
 単に殺し合わせるのなら、このような大がかりな仕掛けをする必要はあるのだろうか。
 いやドクロベエの、そのねじ曲がった考えを予想すれば、わざわざ作るのも、楽しむための手段といえる。
 ヤッターマンの報復が達成された後でも、国を作り、住民に圧政を強いて、なおかつ「ヤッターマンが支配する国」と嘘を吐く男だ。
 このような細かい場所の再現も、そのようなものを飾る前菜になるのかもしれない。

(許せない)

 ボヤッキーは強くそう思う。
 そのような殺し合いに、自分達はまだしも、この名簿にみえる無関係な人物を巻き込むなど言語道断だ。
 はやくとっちめなければならない。彼は床を踏みしめる。

(何かカウンターがあれば事務的な書類も見つかるかもしれませんが……)

 と彼が思っていたらその時は来たようだ。
 おそらく木製であろう台のようなテーブルが、その床から生えている。
 レジスターや「今日のおすすめの本!」などを見せているようなつい立など、会計をするための装備が置いている。
 ただ気になる点があった。これは、この異常事態では大切なものである。
 目の前には女性がいたのである。

 女性と目が合う。下半身はカウンターで隠されているが、その
 殺し合いの場において、お互いの存在を確認するというのは「敵か味方」を判断するためのファーストインプレッションである。
 淡く長い赤髪、大きな丸い目、それをアンバランスに見せない整った顔立ち。
 美人である。少し「かわいい目」の美人といった感じだろう。
 だが、見た目からして単なる美少女ではない、とボヤッキーは思う。
 まず耳の部分に、耳を模した、いや耳なのだろうか。
 そう謎を臭わせる、髪よりは深めの赤色、の耳がある。
 形もまるで悪魔というか、上に刃を向ける包丁のようだ。
 さらには頬には四角形の、それも皮膚と一体化している、赤い何かがある。
 そしてなによりも

(おっぱいが大きい……!)

 それはどうでもいいとして、ボヤッキーは彼女に対して何か「異様さ」を感じていた。
 単なるコスプレ趣味とか、そういう大したことじゃないかもしれない。
 ただ「装備」の可能性もある。ドクロベエはかなり高い技術力を持っているのだ。
 彼が携える妖刀も、主催による道具かもしれない。
 つまりは目の前の女性が武器をもっているかもしれないということだ。
 それが何かはわからないが、この殺し合いと言う状況下、敵でない事を祈るしかない。
 ボヤッキーが考えを巡らせていると、女性は話しかけてきた。

「あなた……誰っ!? な、名前を名乗りなさいよっ!」
 二重語のような気がする。綺麗な声だが口調は激しい。
 ボヤッキーはあくまでも冷静、かつ丁寧に腰を軽く折りながら言った。
「これは失礼しました。私の名前はボヤッキー。盗賊団ドロンボーの……言うなれば……頭脳です!」
「いや盗賊団っていう時点で怪しすぎるんだけど……」
「あ、いやいやいや。盗賊団といえど義賊のようなもので! そう、例えるなら石川五右衛門!」
「えっ、あなた、ゴエモン? この参加者名簿にある、ゴエモン!?」
0308今宵、月が見えずとも ◆ZC0oB5s5Dg
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2016/08/08(月) 01:50:15.49ID:K8wMKEIr
 そう言いながら彼女は名簿にある名前を突きつける。
 とっさに出てくる記憶力はあるが、考察力はないようだ。
 ボヤッキーは苦笑いになりながら答えた。

「いやあ……それとは違いますし、まず名前を名乗ったのですが……」
「あっ、そっか……。で……何の用よ。そっちが攻撃する気なら私も相手になるわよ!」
「それでしたら今ごろ攻撃していると思うのですが」
「それもそうね……。じゃあ何よ! わけわかんないわよ!」
「わかってくださいよ〜……。私は殺し合いに参加する気はありません。主催のドクロベエに反撃してやろうと思ってましてね。とりあえずは仲間を探している最中です」
「仲間……がいるの? なんて名前? よかったら協力するわよ」

 どうやら悪い子ではなさそうだ、とボヤッキーは胸を撫で下ろす。
 逆にこの殺し合いと状況下で、安心した相手といえど、すぐさま手助けしようとするとは、とてもお人よしなのかもしれない。
 友好の合図はわかったのだし、ボヤッキーは彼女に近づこうと足を前に進め、そして口を開いた。

「助力とはありがたい。できれば貴女のお名前もうかがえると嬉しいです」
「あっ……えっと、私の名前はミーア。で、その、あの、そのちょっと、止まってくれないかな?」

 そう赤髪の女性、ミーアは宙を手で押している。
 敵意が突如出てきた、とかそういう様子ではない。
 不可解な表情でボヤッキーは聞いた。

「えっ、はい……。何かあったんですか?」
「ま、まあ何かあるというか、常にあるというかなんというか……」
「はっ、まさかその豊満なバストでブラジャーが外れることが日頃……そして今も」
「な、な、何言ってんのよ! こんな状況で言うっておかしいんじゃないの!」
「あー……ご先祖がよく言ってた下ネタらしいですが、ここでは流石に逆効果ですね……というか効果あるんでしょうか」

 彼がそう反省していると、ふと物音が聞こえた。
 足音、である。カツカツと静かな店内で響き渡る。
 しかもその数は2つ。おそらく「2人」いるのである。
 足音は拡散し、その数を、これまたカウンター付近にいる2人に伝える。
 一体、なんだろうか、とボヤッキーは警戒する。
 敵なのか味方なのか。

(まあ『仲間』を組んでいるのなら、そこまでの危険人物じゃないかもしれませんが、注意に越したことはないですね……)

 とはいえ、その音の方向に近づこうとはしない。
 例えばロボットやそういう武器を支給されている可能性や、一時的に殺し合いを進めるため、協力して殺しまわっているかもしれない。
 まだ安全とはいえないのだ。だからそこで留まる。
 
 予想は的中した。
 ドッグォンと大きな何かを破壊するような音が聞こえる。
 窓ガラスに何かがぶつかり、割れる高音が連続する。
 雨のように地面に大量の何かの落下音が聞こえる。
 暗闇だが破片が周りに乱舞しているのは、うっすらと影からわかった。
 おそらく本、そして本棚だ。
 本棚がレゴブロックを解体するように壊れ、あたりに散っている。

(これはマズい!)

 相手は武器だろうが身体能力だろうが、何らかの高い攻撃力があることはわかる。
 同時に当たりの本棚を意味もなく破壊しているのだ。
 もしかしたら主催への怒りへの八つ当たりかもしれない。
 しかし穏やかな人物でないことは明らかだ。
 どちらにしろ、身を隠す決断をするには十分な状況である。

「失礼しますよっ」
0309今宵、月が見えずとも ◆ZC0oB5s5Dg
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2016/08/08(月) 01:53:44.95ID:K8wMKEIr
 ボソッとボヤッキーは彼女に伝えると、そのカウンターに向かって飛び込んだ。
 ミーアは異様にびっくりした顔だが、急だから仕方がない。
 着地したとき、なぜか不思議な感覚がおび寄せる。

(これは……丸太?)

 丸い謎の物体が足元にある、というのはわかった。
 バランスがとりにくい。すぐにカウンター内に隠れる準備はしていたが、足が崩れて床に座る。
 床も不思議な感覚だ。手で触ってわかるが、何か堅いものが外面にあり、内側は柔らかい何かを感じる。
 そして丸い。何か、何かに似ている。
 その時、ボヤッキーはミーアの顔を見た。
 彼女の表情はどうみても平常ではない。しまった、とでも言いたげな焦ったものだ。

(蛇……)

 ボヤッキーの思い浮かんだものは蛇だった。
 その触っている謎の正体は蛇の身体だ。
 鱗を纏った太いそれをたぐっていくと、1つのものに繋がる。
 身体である。それも人間の身体、腰部である。
 スカートからへそへ、胸から顔へ。
 顔はミーアだった。
 ミーアの下半身は「蛇」だった。
 それも太い蛇の身体である。体長は七メートル。
 カウンター内に隠すためトグロを巻き、簡単な座布団のようになっている。

 ラミア、身体の七割を蛇が占める変温動物である。
 蛇と似た背負うな習性を持ち、特徴もそれに近い。
 女性しかいない種族であり、繁殖に人間の男を必要とする。

 当たり前だが、人間ではない。
 むしろ「怪物」や「化物」といった類のものであった。
 この殺し合いの場においてそれは見た目だけで不利になるものである。
 ミーアはそれを避けたかった。見た目だけで攻撃される可能性があるのだ。
 もちろん彼女のいた世界では人間と人外の種族の間に協定がある。
 これは「他種族間交流法」と言われ、ホストファミリーシステムの文化交流もあるくらいだ。
 であるから、街中にこのような存在があることも彼女のいた地球では珍しくない。
 ただ偏見の眼や差別の眼、恐怖としての対象として見る者もいないわけではないのだ。
 彼女はそれが怖かった。
 この殺し合いに乗る気もないが、殺されるのも怖いのだ。

 その姿をみてボヤッキーは

「へええ……そういう人もいるんですね……」

 と小声で言った。
 ただそれだけだった。
 驚いてないわけでもないが、そこに敵意はない。
 純粋な驚愕があっただけである。

 ミーアは逆に驚いた。全く危険視したりとか、そういうところがない。
 対するボヤッキーも別に彼女の身体を機械と勘違いしたわけではない。
 優れた技術屋は生命体と鉄のマシンを間違えないのだ。
 それは彼の旅での経験から来ている。
 なにせボヤッキーは恐竜に会っているのだ。それも親子である。
 恐竜は本来、既に絶滅していて、相当な年数が経っていることは知っていた。
 それが存在し、しかも彼らと深い関係を築いたのである。
 本来いないであろう存在と会ったくらいである。
 ラミアのような本来存在しない者とあっても、異常なほどの驚きはない。
 そういうこともあるんだな、と思うだけである。
 もちろん敵意などは全くだ。
0310今宵、月が見えずとも ◆ZC0oB5s5Dg
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2016/08/08(月) 01:55:19.67ID:K8wMKEIr
 彼が隠れた理由は、おそらく「何かの破壊音」から来るものと、ミーアでさえもわかった。
 彼女はお世辞にも頭がいい方ではないが、それくらいは判断できる。
 上半身をくねらせカウンターの下に隠れ、下半身をうまく使い、ボヤッキーを床へ降ろす。
 そして彼女は近づき、ボヤッキーに向かって囁いた。

「……なんでそんなに平気なの?」
「まあ……似たようなものを見たことあるので、そこまでね……」
「そう……。流石にあの法律が施行されたって言ってもまだ三年よ……。変わってるのね、あなた」
「法律? なんのことですか?」
「えっ……いやーその……私も正確には覚えてないけど、他種族間なんちゃらかんちゃらっていう……」
「全然知らないですね……。まあ私も他の世界がどのような状況なのかは知りませんが」

 嘘はついていない、とミーアはわかる。おそらく本当に知らないのだろう。
 どこまで世間知らずなのか、あるいは情報が遮断されているところに暮らしていたかだ。
 それなのにこの反応である。不思議だ。
 ただ、敵に回らなかったのは幸いというものか。

(にしても……あの音も鳴りやんだわね……)

 先ほどの物を破壊する轟音はすっかり収まったのである。
 おそらく八つ当たりか何かだろう、とラミアは思う。
 ケンタウロスやオーガなど色々と力が強い他種族は知っているため、おそらくそのような人物なのだろう。
 あまり関わりたくない人物だ。少なくともこの殺し合いに巻き込まれた自分の知り合いにはいない。

 カツカツ、とこちらに音が近づいてくる。
 ミーアは目の部分だけをカウンターから出し、向かってくる方を確認する。
 廊下はまだまだ闇に包まれ、目が慣れたとしても何があるのかははっきりと見えない。
 だが、それは人間の場合である。ミーアにはその姿がはっきりと確認できる。
 それは彼女には蛇が持つ「ピット器官」があるからだ。
 ピット器官とは簡単にいえば赤外線を感知できるものであり、つまり熱を捉えられるのだ。
 蛇は視力が弱いため、暗い場所でも獲物が探知できるよう備わっているのである。
 先ほど、ボヤッキーとあった時も、ミーア側はちゃんと見えていたのだ。

(体格を見る限りは……普通の人間ってところね。ただ身長は高いからもしかしたら巨人の一種かもしれない。でも……)

 先ほど「赤外線を感知」と言ったが、これを応用した機械がサーモグラフィである。
 温度を可視化できるミーアからしてみると、それは異様な光景だった。

(一方は体温があって……もう一方は……分散してるの? 温度はあるようだけど、人間のそれじゃない。ゾンビ……でも名簿にはいなかった気がするし……何がなんだかわからないよ……)

 ミーアは対してよくない頭をフル稼働したが、結果困ってしまった。
 この殺し合いと言う状況下、彼女も考察をその場でできるくらいには脳が回るようになったが、限界はある。
 それが証拠に、敵がこちらに向かっているのに目をぐるぐるさせている彼女の頭を、ボヤッキーが手で押してカウンターに隠したくらいだ。
 少々、ぼやっとした子なのかと彼は思う。
 ボヤッキーもまた、彼女と同じく、相手2人に対して考察していた。

(危ない危ない……下手をしたら、彼女、敵に見つかってしまうところかもしれなかったですね……。にしても、相手は一体、誰でしょう。いきなり本棚を破壊するような連中ですしね。ここはとりあえず様子見ですか……)

 ボヤッキーはカウンターの中に隠れる。
 相手の素性がわからない以上、身の安全を図るのが一番の戦法だからだ。
 果たして鬼と出るか、蛇と出るか。
 彼は、隣にいるラミアの彼女が何か言おうとする口元を見た。
 一体、何を言う気なのだろうか。

 だがそれは、母音を発するための息が吐き出されるだけで終わった。
 壁になっていたカウンターは、まるで紙細工のように、轟音をたてながら吹き飛んだ。
 1つの人間が、いや鎧が、紫色の鞭の様な触手で破壊したのだ。
 後ろにいる男は、ただ歪んだ笑顔を浮かべていた。
0311今宵、月が見えずとも ◆ZC0oB5s5Dg
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2016/08/08(月) 01:57:50.64ID:K8wMKEIr
 オブジェクト。簡単に言えば「核爆発にすら耐える巨大兵器」である。
 これだと逆にわからないだろうか。
 もっと詳しくいえば、巨大な動力炉と並外れた硬さの装甲を持ち、レールガンやマシンガンも放つような、馬鹿げた兵器だ。
 荒唐無稽、ともいえるが、少なくとも、とある世界では確かに存在し、その圧倒的な力が故に「クリーンな戦争」が行なわれていた。
 つまりオブジェクトが強すぎるため、兵隊などを集めても意味がないのだ。
 必然的に勝負はオブジェクト同士の対決となり、片方が負ければそので戦争は終了する。
 だから被害が最小限であるため「クリーン」なのである。ものはいいようだ。
 既存の戦争のあり方すら変えてしまった、この壊れたような兵器を自らの思想信条のために使用するだろうか?
 その思想信条にもよるだろうが、かいつまんで言えば「極右」だ。
 自分達の使っている言語が最も素晴らしいため、他の言語を使う民族は滅ぼしてしまえ、というものだ。
 無茶苦茶な論理であり、酔っ払いが居酒屋で適当にわめく言葉のように見える。
 だが、これを信じていたものが、そしてオブジェクトを取り出しても戦おうとする者がいたのだ。

 プライズウェル=シティ=スリッカー。

 今、ボヤッキーとミーアの前に立っている男である。

 彼は他の民族を嫌悪している。それは奴隷制を復活させようとするほどのものである。
 オブジェクトが存在する世界では勢力が大きく四分している。それも国というよりは、思想や理念で繋がっている共同体に近い。
 その中に1つ「正当王国」というものがある。
 名前の通り、王族の集合体である。
「血統と名誉」を重んじているため、このような考えも極端とはいえ、浮かぶ可能性はあるのだ。
 ただ実行する彼が異常なのである。
 ついでにプライズウェルは「貴族」と呼ばれる身分の出身だ。
「正当王国」に所属するそれぞれの諸国の政治は、この「貴族」が行なっているため、実権があるわけである。
 実権があるならば行動するだけ、ということなのだろうか。
 そのためには自らの軍事的な発言権が強固になる必要がある。
 プライズウェルは工作をしてまで、それを得ようとしていた。
 だが目論見は発覚。彼は乗っていたオブジェクトを爆破され、死んだ―――はずだった。

 彼が目を覚ましたのは、その時だった。そして目の前に、あのドクロベエがいたのだ。
 殺し合いの参加。願いが叶えられる報酬。
 街中に転送され、名簿を見渡した時、プライズウェルのスタンスは「殺し合いに乗る」というものになった。
 参加者に自分の仲間もいない、というのも一つの要因だったが、因縁ある者がいたのも理由だった。
 クウェンサー=バーボタージュ。自らを殺した張本人である。
 先ほど「オブジェクトは最強の兵器」と言ったが、このクウェンサーという男は独力で破壊できる、工作兵である。
 厳密にいえば異なるが、彼の大活躍によりプライズウェルの計画は見事に崩されたのだ。
 恨むだろう。そんな存在は許してはおけない。
「多言語の浄化」のために移民が住む場所を破壊しようとした彼にとって、他の人間を殺す躊躇はなかった。

 彼の支給品の1つに「シュリ」があったのは運がよかったといえよう。
 これは人工エクスターという、簡単にいえばロボットである。
 詳しい説明は後々するとして、人型の兵器だ。
 鋭い眼光にユニコーンのように生える頭部の角。
 肩パットのついた白いマントに冠を模したものにぶら下がる2本の長い紫色の鞭。
 鞭と言うだけあって、それは自由自在に操れる武器なのである。
 それプラス奥の手もある。殺し合いにおいては十分な支給品だろう。
 その王族の様な出で立ちに、ついてきた支給品は王冠だった。
 これはまさしく自分に「王になれ」と言っているようなものではないか。
 独善的な政治思想を持つ彼は思い込む。この殺し合いの勝利も全ては自らの理想の世界のため。
 彼は王冠を被り、シュリを横に並ばせ、クロスボウを装備していた。
 傍から見ればどうも怪しい人間。
 だが元々頭のネジが色々とぶっ飛んでいる彼は気にしない。
 そのまま闊歩し、彼はたまたま本屋に入った。
 情報収集も兼ねて、何か役に立つと思ったのだ。
0312今宵、月が見えずとも ◆ZC0oB5s5Dg
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2016/08/08(月) 02:00:41.31ID:K8wMKEIr
 プライズウェルはそこで憤怒した。
 彼にとってみれば、異界の言語が飛び交っている場である。
 しかも、彼はその意味がわかるのである。何故かわかるのだ。
 ありえない。何か主催が細工をしたとしか思えない。
 だが彼は他の言語を蔑視するような人間だ。
 その存在はもちろん、意味を「解してしまう」ことは許し難い。
 シュリを起動させ、彼は本棚を攻撃した。
 こんな、劣悪な言語は存在すべきではない。壊してしまわねばならない。
 紫色の鞭は本棚を飛ばし、壊し、切り裂き、無茶苦茶に破壊した。
 見るも無残な姿になったそれは、彼の発散の材料となった。

 ただ、彼は聞き逃さない。
 
 カウンターの向こうの誰かの声を。
 
 オブジェクトは強力な兵器であるが、それ故に乗るパイロットにも相応のスキルが求められる。
 操縦時に発生する大きなG、様々な機器を正確に使いこなす技能、そして相手を倒す戦闘技術。
 オブジェクトはそう簡単に大量生産できないため、乗るパイロットも特定のオブジェクトしか基本、操縦できない。
 そのような機密性の高いものに乗るのは、もはや「強化人間」くらいのものではないと、割に合わないのだ。
 彼らは「エリート」と呼ばれ、一般人より彼らの能力は遥かに高い。
 プライズウェルも危ない人間だが、その一人なのだ。
 身体能力の優れる彼なら、その声など簡単に聞き取れる。
 彼が話している2人を見つけることなど、造作もなかったのだ。

「みしらぬ顔だな、きさまらは。ん……?」

 カウンターを破壊した先に見える男女を見据えるプライズウェル。
 エリート特有の平仮名が多めの話し方をしながら、ある異変に気付く。
 女の腰から下が……何か妙なのだ。
 スカートにしては長すぎる。しかし微妙に暗いのではっきりしない。

「おじさん! 捕まって!」

 その女ことミーアは叫ぶ。
 ボヤッキーは名乗ったのに、と思いながらも彼女の伸ばした手をとった。
 そのままグイッと引かれると、ちょうど彼女の背中に辿りつく。
 すると、いきなり彼女は加速した。なんとかボヤッキーもしがみつく。
 その動き、まさに疾風迅雷。
 成人男性1人が背中に抱えられた状態とは思えないほどの速さ。
 そして蛇のように曲がりくねって道を進む正確さ。
 
 それは彼女が蛇だからだ。
 
 ブラックマンバと呼ばれる毒蛇は50メートルを11秒ほどで渡れるという。
 一見、遅いように思われる。しかし体長は平均2.5mもあるが、頭を人間の片手で捕まえられるほど、細い。
 さらにミーアは全長7〜8メートル。ブラックマンバの3倍の長さに、より大きい身体。
 速さも3倍になるとしたら、50mを3秒ほどで走る計算になる。
 もちろん、体長より大きなニシキヘビは、そんな速さではないし、単純比較はできない。
 ただ、蛇というのは、本屋のように入り組んだ地形を的確に進むには早い生物なのである。
 ミーアもまた然り、いくら強化人間といえど「人間」であるプライズウェルより素早いのである。

 彼女は急いでいた。あの参加者、なのかわからないが、その鎧、どう考えても危ない。
 簡単にカウンターを壊し、隣のボウガンを持った男も危なそうだった。

(大体、何よ、あの王冠! どう考えてもキケンな人だよ!)
0313今宵、月が見えずとも ◆ZC0oB5s5Dg
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2016/08/08(月) 02:02:50.10ID:K8wMKEIr
 泣き言を頭に思い浮かべながらも、走る。
 出口はどこなのかはわからない。ただ、進まなければ話にならない。
 運よくも、ドアが見つかった。相手はまだ追ってこない。
 扉をあけ、そのまま突き進む。月光と街灯の明るさと、夜風が体に吹き込んだ。
 道路。どうも出口だったようだ。アスファルトの感触が伝わる。
 とりあえず、向こう側の店に行くしかない。彼女は身を潜めるため、進む。


 中に入る。どうも薬局のようだ。様々な医薬品が棚に並べられている。
 それを陰に彼女は身を隠した。後ろでしがみついているボヤッキーに話しかける。

「おじさん、大丈夫?」
「え、ああ、はい。生きてます」
「はぁ〜……よかった」

 ホッと胸を撫で下ろすミーア。ただボヤッキーは心中、惑っていた。
 それは簡単、下乳が手に触れていた。
 急いでいたおかげか、彼女は全く気付いてないのは運がよかった。

(いや、これはそういう問題以前に運がよいことなのでは?)

 ボヤッキーは紳士である。とりあえず無事に手を取り外せた今ならよいだろう。
 背中から離れたボヤッキーは薬品の店を見渡す。

「これだけあれば……爆弾くらいは作れるでしょうね」
「えっ、おじさん、そんな物騒なことやってるの……?」
「失敬な。あと私はボヤッキーです。それはともかく、現在、私達の武器は非常に貧弱なんですよ。ついでに日本刀とくじ引き、古代の銃しかありません」
「まだ、おじさんはツイてるほうだよ。私なんてぬいぐるみと何かのドリンクに、ドライバー。あ、でも私の作ったお粥があるよ」
「えっ……。すいません、もう一度お聞かせくださいますか?」
「私のお粥? ダメよ、手料理はだぁりんじゃないと……」
「いえ、その前!」
「ドライバー……? なんか手料理に箸にも棒にもかからないのはそれはそれでアレだけど……」

 とミーアはブツブツ言いながらディパックを調べる。
 そこから緑色の持ち手のドライバーが出てくると、ボヤッキーは息を飲んだ。

「それ……やはりそうだ。私のものだ。私の愛用品なんですよ!」
「ええっ! そんなこともあるのね……。おじさんのものなら返すよ。私は使えないし」
「私はボヤッキーです」

 と、彼は言いながらもドライバーを受け取る。
 彼は、それをまるでガンマンかのようにクルッと手慣れたように回す。
 かつて仕えていた、ドロンジョ――またはレパードの母親から授かった形見だ。間違いない。

「これさえあれば百人力……。どんなメカでも作り出せますよ」
「メカ……とか作れるの? 本当? 爆発しない?」
「いやまあ、自爆装置くらいはありますが」
「自爆って……随分と派手なことをするのね……。おじさん、普通の変な人のように見えて、変な人ね」
「それはどっちに転んでも変な人なのではありませんか?」
0314今宵、月が見えずとも ◆ZC0oB5s5Dg
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2016/08/08(月) 02:08:16.65ID:K8wMKEIr
 ボヤッキーは若干悩みながらも、自分の武器が手に入り、頼もしく思う。
 とにかく、武器を作り上げることだ。薬品を応用すれば爆弾の作成ならできる。
 信管とかスイッチとかはレジスターなどを利用すれば可能だ。
 彼は思いだす。カウンターを吹き飛ばした、あの鎧。
 その鎧はヤッター兵のような、人型のロボットを連想させた。
 あの動き、おそらく人間じゃないのではないか?
 協力者ではなく、支給品。
 彼の技術者としての勘が伝えるのだ。
 あんな武器に対抗できるのは、今の支給品では無理だ。
 そしてあれが支給品なら、パワーバランスが崩れぬよう、同じような用途の武器も支給されている可能性がある。
 一刻も早く、それに対応できる武器を作るしかない。爆弾でも不十分なほどだ。
 彼は棚を見据える。何か爆弾の材料となる薬品はないか。

 そして爆発のように、棚は吹き飛んだ。

 目の前にはシュリ。2人を狙う触手が月光に照らされている。
 プライズウェルは舌なめずりをするように、彼らを見据え、口を開く。

「おそらく、きさまらが考えたことは、こんなところだ。
 まず、そこの女はからだがでかい。だから街中をはしりまわっても、いずれ見つかってしまう。
 わたしはクロスボウというとび道具を持っている以上、こうげきの的になってしまうだろう。
 だからベストなせんりゃくは隠れることだ。となると近くの薬局にかくれるのは当然のながれだ」

 薬品は粉々に、ひしゃげた棚を飾っている。
 プライズウェルが戦闘態勢にいることはすぐにわかった。
 何もしなければ殺されてしまう。

 ボヤッキーはディパックから日本刀を取り出す。
 鞘から禍々しい模様をした刃を引き抜いた。
 プライズウェルに向かって、振り向く。
 その動きは隙がありすぎた。シュリで防護するのも楽だ。
 刃が向かう方向にシュリを置く。
 双方の触手で剣を弾き、片方で攻撃する。
 その予定だったが、狂った。
 刃は片方の触手を潜り抜け、胴体に当たった。
 ただ、踏み込みが甘い。
 シュリには対したダメージにならない。
 剣の素人であるボヤッキーが繰り出す斬撃だ。
 なので結局、結果は変わらない。
 片方の触手がボヤッキーを弾く。
 どんっと彼の身体が吹っ飛ぶ。
 孤を描いて、棚にぶつかる。
 瓶詰された薬が割れ、箱が潰れた。
 床に背中をつけるボヤッキー。
 棚も衝撃に耐えられず、倒れた。
 ガタン、とそのままボヤッキーは棚の下敷きになる。

「おじさん……ッ!」

 ミーアがその方向に向かって叫んだ。
 あれでは大けがだ。なんとかして助け出さないと。
 その彼女の意志を察したのか、彼女の目の前にシュリが立ちはだかる。
 横を見ればボウガンを構えたプライズウェル。彼は話し始める。

「しかしその体……なにかのぎそくか、それとも機械なのか? それにしては、ほんとうにヘビのようだ」
「そうよ、蛇よ! 私はラミア!」
「ラミア……かはんしんがヘビという……想像上のばけものじゃないのか。ただ、そんざいしているのも事実のようだな」
0315今宵、月が見えずとも ◆ZC0oB5s5Dg
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2016/08/08(月) 02:11:35.72ID:K8wMKEIr
 プライズウェルの攻撃の姿勢は一切変わらない。
 ミーアも反撃の必要がある。何もしなければ殺される。
 もしかしたら、あの鎧も尾っぽで縛れば無力化できる可能性がある。
 ただ自分は体が大きい。クロスボウの矢では狙い撃ちにされる。
 ならば、とる方法は1つだ。
 うまくいくのかはわからないが、やるしかない。

 相手が鞭ならこちらも鞭だ。

 尾っぽをぐうっと、振るった。
 それは対抗する鞭のように、キックボクサーの蹴りのように飛ぶ。
 2メートルを超す巨大な物体が、しなってプライズウェルに襲いかかる。
 ただ、彼もそれを読んでいた。
 棚を足で駆け上がり、攻撃をよける。
 ただ、攻撃はまだ続行しているのだ。
 シュリに向かって降りかかる。
 ただ、そんなに問題ではない。
 その鎧は跳び上がり、尾っぽをかわした。
 この状態だとどうなるか。
 ミーアはシュリに背中を向けた状態になるのだ。
 もう一度、彼女は強引に尻尾を振りかぶろうとした。
 だが遅い。
 彼女はシュリによって羽交い絞めにされたのだ。

「腕!?」

 思わず声にでるミーア。
 シュリはその頭部から見える触手が目立つが、マントの中には両腕が隠されている。
 その締める力、並大抵ではない。パンチ一発で人を吹き飛ばすほどだ。
 予想以上の強さにミーアも驚く。これでは動けない。

「なんとかうまく、いったようだな……」

 男の声が聞こえる。プライズウェルはミーアの眼前に立っていた。
 ボクサーのガードの姿勢だ。片手にはクロスボウ。
 薬の残骸を踏み潰し、歩を進める。

「な……なにビビってんのよ! そんな守りの姿勢にして!」
「威勢のいいおんなだな。というか『守り』か……そうみえるのかもな」

 プライズウェルは軽く笑いながら、矢じりを彼女に向けた。
 引き金に指をかける。
 間違いない、発射の兆候だ。
 逃げれない。どうする!?
 光る銀色の尖りは、飛び出した。

「ンンンッッッッ……ア゙ア゙ア゙ッッ!」

 あまりの痛みにミーアは声が出た。
 その叫びは薬局中に響くほどであり、そして痛々しかった。
 ただ、致命傷だけはなんとか避けた。
 彼女は自分の尻尾を矢の盾にしたのだ。
 ただ、いくら鱗があるといえど、鉄は弾くことはできない。
 表側かつ、肉がまだ太いところで受けたため、貫通は無く、致命傷ではない。
 それにしても、痛い。
 熱い感覚と鋭い痛覚が容赦なく伝わってくる。
 思わず涙が出てくる。
 こんなのは嫌だ。どうしてこんなことになったのか。
 守っていた尻尾も力なく床に落ちる。
 その先には矢をクロスボウに装填するプライズウェルがいた。
0316今宵、月が見えずとも ◆ZC0oB5s5Dg
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2016/08/08(月) 02:13:56.60ID:K8wMKEIr
 ただ、攻撃は異なる。

 シュルは羽交い絞めをはがすと、2つの触手でミーアを攻撃した。
 壁に吹っ飛ぶ彼女に、予断を許さず、腹に拳を向かわせた。

「ごおっ……」

 鈍い痛みがミーアを襲う。
 痛すぎて、声すら出ない。嗚咽しかでない。
 そして両手で彼女の首を締める。
 なんとかミーアもシュリの腕を掴んで抵抗する。
 だが、足りない。相手の力が強すぎる。

 プライズウェルの作戦は成功していた。
 クロスボウの装填は単純に次の攻撃のためである。
 彼女を仕留めるのはシュリで十分だと判断したのだ。
 唯一の武器である尻尾も矢によって無力化した。
 無駄に矢を消費するのは意味がない。シュリで片付ける。

 意識が遠のく。首元が締まっていく。
 彼女は空気が薄くなるその最中、男のことを思い浮かべていた。
 来留主公人。彼の愛しの人物だ。
「化け物」と言われる中で一人だけ「女の子」として接してくれた人だ。

(だぁりん……嫌だよ……。こんなところで死んじゃうなんて……やだよぉ……)

 彼女の涙が増える。
 声に出ない悲しみは澄んだ瞳から流された。
 想い人に会えないまま、ここで惨たらしく死んでいくのか。
 そんな悔しさなど全く解さぬよう、シュリは首を締め続ける。
 プライズウェルももちろん、手を緩めない。
 全員の殺害が前提である以上、意味がないからだ。

 ただ、その彼も読めない事態はある。
 第三者の介入だ。

 街灯にワイヤーがかかる。
 振り子のように動くと、そのワイヤーを出した者は大きく跳び上がる。
 薬局の屋上部、そのギリギリ外側に宙に浮く。
 ディパックから獲物を取り出し、振り落す、というより持って落ちる。
 それはハルバード。紫色の絵をした、禍々しい模様だ。
 巨大だ。人間一人を超えるような大きさだ。
 らせん状に何かを巻き付けた持ち手。
 2本の穂先が髑髏を突き刺している。
 素早く腕時計から飛ばしたワイヤーを収納する。

 コンクリートの天井が破壊され、窓ガラスを砕く。
 大きな斧の刃は、プライズウェルに向けられている。

「くそっ!」

 すぐさまシュリの触手で斧を追撃。
 だが弾けない。
 重力に従い、巨大な刃は彼の目の前に降りてくる。

「うおおおおおおおっ!」
0317今宵、月が見えずとも ◆ZC0oB5s5Dg
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2016/08/08(月) 02:16:00.47ID:K8wMKEIr
 シュリ本体をすぐさま斧に向ける。
 降りかかる刃にシュリは触覚をクロスさせ、ガードした。
 ぶち当たる。金属音が鳴り響く。
 驚いたことにシュリがこちらに落ちてくる。
 重すぎるのか。一体、どれだけの大きさのハルバードなんだ。
 なんとか落ちてくるシュリは逃れた。
 が、プライズウェルの隣に鎧と斧が落ちてくる。
 ガタンと横に倒れたハルバードと、下敷きになったシュリを確認する。
 まだ、外傷もひどくない。十分に動けるようだ。

 シュリの動作確認は簡単である。自らの身体を動かすのだ。
 その体と連動して、腕などは動く。その方が操作がしやすいのだ。
 もちろん、触手や並外れた腕の動きなどは自動でやってもらうしかない。
 そんな動きは操縦者は並大抵の手練れじゃないと不可能だからだ。
 もちろんできるならできるにこしたことはない。
 ただ、動作の確認程度なら、腕を少し動かすだけで可能なのだ。

 シュリを立ち上がらせると、プライズウェルは前を見据える。
 瓦礫を足で踏み、目の前に立つ者がいた。
 先ほど、巨大なハルバートを落としてきた者だろう。
 ボウガンを向けても動じずに立っている、肝の据わった人物。
 おそらく戦士だろう。目つきで分かる。場馴れしている。

 その戦士は、女だった。



「ゼェー……ハァー……ゼェー……」

 首絞めから解放されたミーアは荒々しく息を吸っていた。
 なんとか殺されずに済んだ。どうも助太刀が来たようだ。
 体がうまく動けない。酸素が脳に回らなかったこと、負傷のことも関係している。

(女の人……なの? それも強そうというか……)

 ミーアが見た、その女の眼は鋭かった。
 長髪の金髪に褐色の肌。へそが見えるような開放的な学生服の着方をしている。
 スタイルもいい。バストは大きいがウエストは細い、理想的な体系だ。
 それらが不釣り合いにならないような、整った容姿。
 キリッとした美人である。

 そんな彼女が、今、プライズウェルと対峙している。

(まもりさんでは……当然ないか)

 そう思いながら女・敷島魅零はミーアを見る。
 下半身が隠れているので、まだ彼女をラミアとはわかっていないが、目当ての人物でないことくらいは確認できた。
 その人物は処女まもり。
 彼女はシュリと同じく「エクスター」である。
 それも人工ではなく天然。本来の「エクスター」だ。

 外的な精神的高揚、一例としては「性的快感」により、身体そのものを武器化してしまう。
 これは彼女たちの世界で10代・20代の女性にしかかからない病である。
 発症者は原因であるA−ウイルス(アームドウイルス)から名をとって「アーム」と呼ばれる。
 その中でも自らを武器化できる者が「エクスター」である。
 そして、その武器の力を引き出せる者が「リブレイター」と呼ばれる。
 敷島魅零はそのリブレイターであり、相方であるエクスターを探している、ということなのだ。
0318今宵、月が見えずとも ◆ZC0oB5s5Dg
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2016/08/08(月) 02:17:09.10ID:K8wMKEIr
 魅零はまもりを探す目的は、単純に相方だからというわけではない。
 彼女の記憶では、まもりは誘拐されたのである。
 誘拐した者は、因縁の人物である相良百華。
 相良百華はこの殺し合いの参加者である。
 だが、まもりは名簿の中にいない。ただ安心はできないのだ。
 言うなれば、彼女は武器である。武器となりうる存在はこの殺し合いにおいてどうなるか。
 つまり支給品だ。彼女が支給品として出されているかもしれない。
 まもりは気の弱い女性だ。その場で利用されてしまうかもしれない。
 もし、百華に支給されてしまったら、それは――。
 考えたくもないことだ。魅零は記憶を逸らす。
 杞憂ならいいが、可能性がゼロという確証はどこにもない。
 だから探さないといけないのだ。
 そう、大事な人のために。

 そこで聞こえた声は女の悲鳴。
 深夜の街中、よく響く甲高い声に、彼女はまもりを思い出した。
 もちろん、声色を考えれば違うだろう。
 だが、それだからと言って悲痛な声を、彼女は無視できなかった。
 誰かがこの殺し合いに乗り、そして殺されかけている人物がいる。
 クールそうな見た目だが、中身は純粋かつ、熱い。
 そんな彼女なら助けにいこうとかけつけるのは当然だった。
 そして支給品のワイヤーが飛び出す腕時計と巨大なハルバードを使い、奇襲を決行したのである。

「あれは……シュリ! しかし人工エクスターと言ってもリブレイターは女のはず……」

 彼女の目の前には人工エクスターであるシュリと、それを操る男。
 店の中が荒れ果てていることを考えると、シュリの力を使ったことはわかる。
 そもそもシュリを使用している者は、この殺し合いの参加者の一人でもあるリブレイターの柊晶のはずだ。
 ということは支給品となったということだろう。
 すると本来の持ち主が愛用の武器などもバラけている可能性があるのだ。
 処女まもりも、その可能性はある。
 ただ、今ではそれは考えないように、魅零は集中する。
 あの女性の首を絞めていたシュリを見る限り、襲ったのはこのクロスボウを持つ男だ。
 人工エクスターの仕組みはそこまで詳しいわけではないが、エクスターというくらいなのだから、女性にしか扱えないはずだ。
 とすると男が使っているのは贋作か、それともそれ専用に改造したのか。
 とはいえ、シュリは並大抵のリブレイターでは倒せない力を持つ。
 今、魅零はエクスターの助力も借りれないし、手持ちにちょうどいい武器はない。
 唯一の武器ともいえるハルバードも重すぎて扱えなかった。
 逆に扱えるのはどんな者なのか……気になるほどだった。

「どこの誰だかしらんが、俺のじゃまをするきか。まあ、どちらにしろころすのは変わりない」
「……」

 魅零に容赦なくシュリは鞭で攻撃する。
 彼女はその攻撃をなんなくかわす。
 その動きにプライズウェルも驚く。見事な身のこなしだ。

(おそらく、戦士かなにか……。めんどうなことになったな)
0319今宵、月が見えずとも ◆ZC0oB5s5Dg
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2016/08/08(月) 02:17:55.84ID:K8wMKEIr
 後ろには非戦闘状態とはいえ、二人も敵がいるのだ。
 前には、あのハルバードの奇襲をやり遂げた女がいる。
 若干、彼が不利な状況なのだ。
 とりあえず牽制にクロスボウで、撃ちこむ。
 グゥンと矢は飛び、魅零のいる方向に向かう。
 ただ、それも見切られていたようだ。
 魅零は矢を避け、後ろのコンクリートブロックの壁に刺さった。
 そこに触手で追撃。
 魅零の眼前に、左右に襲いかかる紫色の鞭だ。
 片方をステップでよける。
 もう片方が襲いかかる。
 後ろに下がるが、意味はない。
 魅零の腹部にクリーンヒット。そのままのけぞる。
 コンクリの壁にぶち当たるが、なんとか体勢は保ったままだ。

 飛び道具に、鞭の攻撃。
 おまけに相手も武器をそれなりに使いこなしている。
 相手はもしかしたら兵士か何かなのだろうか。
 だとしたら、自分は不利ではないか、と魅零は判断する。

 この状況、双方が自分が不利と思っているのである。
 とすれば、取る行動は慎重になる。
 慎重になった場合、有利なのはプライズウェルだ。
 単純な話、手数が多いほど、防戦は有利なのだ。
 攻撃なら奇襲などで不意をつけるかもしれないが、防戦は不意をつくことはない。
 持っているスペックが勝っている者ほど優位に立てる。
 武器も何もない魅零と、2つ持っているプライズウェルなら、明らかであろう。

 その状況、変わればまた別の話であるが。

 パァン。

 銃声が鳴った。
 残響が薬局内を駆け巡る。
 硝煙の煙が空中を浮かんでいた。
 空気を揺らがしたその音は、当然ながら銃から発せられたものである。
 撃った者は、ボヤッキーだ。
 彼は薬局の棚に下敷きになっていたが、死にはまだまだ至らない。
 ヤッターキングダムで曲がりなりにも戦ってきた男だ。
 それに、ミーアの尻尾を振るったおかげで、上に覆いかぶさっていた棚が飛ばされたのだ。
 だから彼は支給品の携行火器を準備できたのだ。
 幸いにも、彼は器用だし、プライズウェルは店外にいる魅零との勝負に集中していた。
 これがもし、大したことのない敵ならばプライズウェルは火器の準備に気付いていたかもしれない。
 だが相手は魅零、ボヤッキーから見れば「えらい強い美人の女性」である。
 携行火器の手間は相当かかるが、なんとか装弾が完了できた。
 そして発射したのである。
 本来なら命中精度が低い、この中世の火器も、距離が近いせいか、成果があったようだ。
 つまり命中した。
 背中に弾丸があたったのか、プライズウェルはのけぞっている。
 事実、彼は弾の軌道上にいたことは確かである。
 そして鉄の塊が彼の背部に当たったことも確かなのだ。

 しかし、事実が必ずしも結果を呼び寄せるとは限らない。

 それは防弾チョッキ。プライズウェルの4つ目の支給品である。
 衝撃は分散されて到達するため、彼をよろけさせるほどの威力はあった。
 特にボヤッキーの撃った弾は鉛。着弾時に大きく広がるのだ。
 それ故に威力は高いはずだ。
 ただ、致命傷には至らない。
 プライズウェルのその強化された肉体は、まだ十分に動けるものだった。
0320今宵、月が見えずとも ◆ZC0oB5s5Dg
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2016/08/08(月) 02:19:02.01ID:K8wMKEIr
 シュリの双方の鞭がボヤッキーに襲いかかる。
 ガァインっと銃砲は弾かれ宙を舞う。
 ただ、その火器はボヤッキーがさっき手放したものだ。
 彼の手には日本刀がある。
 金色の禍々しい文字を纏った妖刀・ベッピンだ。
 彼は吹っ飛ばされたものの、その刀は手から離さないままだったのだ。
 2つの触角の攻撃をなんとか受けきる。
 だが威力は変わらない。
 ベッピンは崩れないが、ボヤッキーに対する負担は、そのまま伝わる。
 動きが止まる。
 プライズウェルはそこを見逃さない。
 すぐさまクロスボウに矢を装填。
 相手は刀を持って防戦をするのが精いっぱいなのがわかるからだ。

(もっとも、その防壁もよわい。だからいそがなくても、きっかけさえあたえれば、かんたんにくずれる。それより……)

 魅零の方向に眼を向ける。
 彼女に気を付けさえすれば、ボヤッキーは殺せると踏んだのだ。
 また彼は、魅零と交戦していたもの、立っている位置は変わらないのだ。
 ミーアの状態も把握している。
 どうも彼女はダメージにより、倒れ込んだままのようだ。
 矢が刺さり、みぞおちの強打に、首に対する強い締めつけ。
 相当なダメージだろう。
 もしかしたら、回復のために動かないふりをしている可能性はある。
 だが死んだふりをしているなら、当分は動かないはずだ。
 そこまで気にする必要はない、と彼は判断した。
 魅零をなんとか封じ込め、ボヤッキーを始末することを目的にする。

 そこに、奇襲。
 プライズウェルの眼前には2つの物体がある。
 魅零が投げたようだ。何らかのものだ。
 何らか……それはなんだろうか。
 外は夜で街灯はあるが、明確に見えるわけではない。
 いや、明確に見えているからと言ってなんだろうか。
 例えば果物としても、それを偽装した爆弾でない可能性などはあるだろうか。
 ない。
 特に殺し合いという場だ。そういうダミー武器があってもおかしくはない。
 つまりなんであろうが関係ないのだ。
 自分の元に来るのが一番マズいということには変わりない。
 触手で素早く追撃。
 謎の物質2つを吹き飛ばす。
 見事にそれは破壊され、吹き飛ばされた。
 何もない。何も起きない。
 それもそのはず、魅零が投げたものは「ぬいぐるみ」と「おでん」だ。
 武器ではない。単なる目くらまし。

 それで十分だ。

 魅零は腕時計からワイヤーをショットする。
 黒き堅い紐は闇にまぎれるが、標的は着実に捉えている。
 ボヤッキーの持っている刀である。
 剣の柄にワイヤーが巻かれ、そのまま引っ張られる。
 ボヤッキーの手が弾かれ、まるで宙を浮くように刀が魅零に向かう。
 プライズウェルはそれに気づいたが、もう遅い。
 刃が街灯にキラリと光り、魅零は柄をキャッチする。
 ワイヤーを外し、握りしめ、構える。
 その先にはプライズウェルだ。
0321今宵、月が見えずとも ◆ZC0oB5s5Dg
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2016/08/08(月) 02:20:26.19ID:K8wMKEIr
 シュリの二本の鞭で攻撃する。
 風の切る音が、ずぅぅっと道路に響く。
 二線。
 魅零が瞬時に刃を振るう。
 鞭に打撃を与え、カキンと甲高い音が2つなった。
 元々、彼女が使っていたエクスターは剣である。
 さらに妖刀ベッピンという業物。使いこなせるとかなりの武器になるのだ。
 そして鞭の効力が消え去る。
 紫の武器は砕け、地面に破片が落ちた。
 今の鞭は単なる短くて、動く何かだ。使い物にならない。
 シュリの2本の鞭も先ほどからずっと酷使していて、疲労していたのだ。
 おまけに巨大なハルバードを高い位置からぶつけられたのだ。
 切れ味が鋭い刀と、剣技の達人の攻撃。
 この2つだけで、折れるには十分な理由となった。

 魅零は武器を失ったシュリに向かって刀を構える。
 攻撃手段が失った今、プライズウェルにとっては不利な状況。
 の、はずだった。
 だが、彼の顔は、まだ余裕のある笑みを浮かべている。
 まだ手ごまがある、と危機感を強める魅零。
 それに対し、プライズウェルは話しかける。

「こんな序盤も序盤でつかうことになるとは、まったくよそうしていなかった。まあいい。どちらにしろ、きさまがしぬことには変わりはない」

 プライズウェルがそう言うと、空気が――変わった。

 オオオオオオオォォォォォォォォォォォ

 高音の、ハモったような声が響く。
 発したものはシュリだ。その機械の口から発せられた奇妙な声だ。
 マントの内部から、剣が飛び出る。
 それも巨大だ。あのハルバードよりは小さいが、それでも人が使えるような大きさではない。
 それらが魅零にいくつも発射される。
 だが、不思議なことに、それは彼女を全く狙いすましてなかった。
 ガッ、ガッ、ガッとアスファルトに刃が刺さる。
 赤き巨大な剣はいくつも、まるで樹林のように魅零を囲った。
 そして目の前には見違えたシュリである。
 そのマントがなくなった姿はスリムで、歴戦の兵士のような体形をした鎧だった。
 これがシュリの真の力である。
 鎧は走りだし、右手で刺さった剣を引き抜く。

(まさか、攻撃する気!?)
0322今宵、月が見えずとも ◆ZC0oB5s5Dg
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2016/08/08(月) 02:21:59.57ID:K8wMKEIr
 魅零はベッピンを振りかぶる。
 が、その攻撃も守られた。
 シュリは左手で剣を引き抜き、黄金の刀の軌道を破った。
 彼女が一旦引くと、今度はシュリが構えはじめる。
 巨大な剣を二刀流。それも何の無理もなくだ。
 そして一刀を振るう。
 ぐるう、と魅零の横を突き抜ける。
 剛腕。
 その言葉が似合う、素早くも力強い振りであった。
 魅零はなんとかよける。
 あれは受けたらマズい。
 一発で体の部位が離反する。
 魅零はシュリの存在は知っているが、奥の手まではまだ把握していない。
 この形態が見られたのは、フェステでの戦いを見た者だけだ。
 この参加者の中では魅零以外は知っている。
 彼女が外れくじを引いた、と言ってもいいだろう。
 とはいっても対抗しないわけにはいかない。
 横に一刀。
 だが魅零の、その剣筋は止まる。

「……ッッ!」

 刺さっている赤き剣にひっかかったのだ。
 対するシュリは躊躇は一切、ない。
 上から下へ、薪割りのように斬撃が向かう。
 それも二刀同時に。
 受け止められる重さではない。
 すっと魅零は横に転がる。
 剣先はアスファルトを砕く。
 破片がチッと飛んだ。
 ただ、魅零もダメージがないわけではない。
 左腕から血が流れた。
 原因は横にある刺さった剣。
 彼女は立ち上がり、その傷を確認する。
 大した傷ではないが、状況はまずい。
 この無造作に刺さった剣達は、行動を狭めているのだ。
 横の斬撃は難しいことと、避けようとしても剣が邪魔をする。
 剣を引き抜くことも、大きさが大きさだけに困難だ。
 もちろん、逆にいえば相手の行動範囲も限られている。
 攻撃の太刀筋は少ないため、そこの衝突が勝負なのだ。
 その点、巨大な二刀の剛腕は大体の相手ならパワー勝ちする。
 技量で勝負といってもシュリは機械だ。
 この戦闘方法に慣れているし、ベッピンの「捉えられない太刀筋」も意味がない。
 ベッピンの刀身を追えない理由は、その刃に書かれた禍々しい文字である。
 幻惑的な、呪術的な作用がその文字にはあるのだ。
 故に視界がぼやけ、太刀筋を追えないのである。
 ただ、それは人間の場合だ。
 シュリのようなロボットであるなら、その効果は薄い。
 もちろん、プライズウェルが操作するといった人の手が入っているなら、ボヤッキーのよれよれの攻撃でも当たる。
 だが、今は言うなればオートモード。
 シュリは魅零を倒す、という命令のみに動いているのだ。
 倒せるとするなら、実際にシュリを無力化した、並外れた火力。
 それか奇襲、くらいのものであろう。

「これで『的』にできたな……」
0323今宵、月が見えずとも ◆ZC0oB5s5Dg
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2016/08/08(月) 02:22:49.65ID:K8wMKEIr
 プライズウェルは呟く。
 彼の手にはクロスボウが握られている。
 矢の先は、鍔迫り合いをしている魅零。
 前線はシュリに戦わせて、後方をボウガンで支援する。
 もちろん相手は止まっているわけではないが、行動パターンも限られる。
 読めれば狙って撃つことは造作もない。簡単に仕留められるのだ。

 魅零も当然、その作戦には気付いている。
 伊達に戦場を渡ってきたわけではない。あらゆるところに注意が向くのである。
 ただ、だからと言ってできる対処は今のところ、撃たれないよう動き回るくらいだ。
 シュリを盾にしようとしても、目の前だとパワー負けしてしまう。
 かといって早く逃げるとしても、まわりは剣が道を塞いでいる。
 つまりは相当な判断をして、逃げ回らねばならない。
 それはどういうことかというと、疲れるのだ。
 特に魅零は先ほどから動いてばかりだからスタミナも消費される。
 そして動きは遅くなる。遅くなるなら狙いやすい。
 プライズウェルとしてはこのままの状態で完璧なのだ。

「そこのお嬢さーーーーーーん! 逃げてくださーーーーーい!」

 男の声が聞こえる。
 声の主はボヤッキーだ。魅零もそれを確認する。
 大声をあげる彼はなんと屋上にいたのだ。
 声が聞こえたプライズウェルはボヤッキーがいないことを確認する。
 
「まだ、あの男、うごけたのかッ!」

 プライズウェルは思わず苛立ちが声に出る。
 しかし、それにしても不可解な行動である。

(おそらく屋上にいるんだろうが、なんのいみがあるんだ? あのシュリをえんごするような武器はもっていないはずだ。あのわたしをうった銃も前時代、それもふるすぎるしろものだ。やくには立たないだろう)

 全くもって不合理な行動である。魅零を応援しにわざわざ体を動かすなどありえない。
 何らかの策があるのだろうが、その策も考え付かない。

(ただ、いえることは、あのおんなに何らかの援護をするということだ……ッ! ならば、そのおんなをころせば問題はない!)

 ボウガンを構え、標準を揃える。
 狙うは刀を持った女戦士である。

「逃げる……って言っても……」

 斬撃を掻い潜りながらも、なんとか考える魅零。
 どちらにしろ、今の状況ではシュリに勝ち目はない。
 いや、厳密にいえばあるのだが、それにしては博打的な要素が高いのだ。
 あの男は「刀を持っている人」くらいのイメージしかないが、とりあえず頼るしかない。
 ただ、この剣の空間から逃れるのは厳しい。
 シュリはうまく動きながら、その空間から逃げないようにしているのだ。
 この戦闘方法はシュリは完璧に熟知しているのだろう。
 その状態で逃げるというなら――。
0324今宵、月が見えずとも ◆ZC0oB5s5Dg
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2016/08/08(月) 02:23:17.77ID:K8wMKEIr
(上だ!)

 攻撃を避け、赤い剣を足で踏む。
 柄をジャンプで踏み抜け、上空に飛ぶ。
 コンクリートの壁にベッピンを突き刺した。
 腕の力で体をあげて、刀の柄を蹴りあげる。
 今、魅零は上空にいる。
 シュリの攻撃の範囲にも入らない「逃げ場所」だ。

「逃げたぞ! 一体何をする!?」

 ボヤッキーに向かって叫ぶ魅零。一体何があるのか。
 それに応えるよう、ボヤッキーは声をあげる。

「それは見ての、お楽しみです!」

 そういうと彼は「よっ」と声をあげながら投擲した。
 暗闇だから何であるかわからない。月の明かりでは不十分だ。
 わかるのは、何かがシュリに向かって飛んでいくことだ。

 着弾。

 ドッグォォォォォーーーーンッッッ!

 爆発。
 爆音。

 間違いない。それは爆発したのである。
 爆音は響き、シュリを吹き飛ばす。
 魅零は避難したおかげで傷一つないが、驚愕は残る。
 アスファルトまでは破壊されていないようだから、軽度の爆発物のようだ。
 ただ、そんなものを何故持っていたが、なぜそれで対抗しようとしなかったのか、と魅零は不思議に思った。
 その答えは単純なものである。ボヤッキーは爆弾を『作った』のだ。
 事実、薬局には爆弾を作るための材料が揃っている。
 ヘキサニンは利尿剤。過酸化水素は消毒剤。美容にも使える尿素。
 ざっとあげただけでも、これだけあり、材料は十分なのだ。
 だとしたら、必要なのは過程。
 ボヤッキーが爆弾を作る手間暇は刀を奪われた後にあった。
 確かにプライズウェルはボヤッキーとの戦いは必要なしとして、魅零との戦いに集中していた。
 ただ、短時間。一時間も、いや数十分も経っていない。
 それでも可能なのはボヤッキーの驚異的な技術力である。
 ありあわせのもので目覚まし機器を作れるくらいだ。
 今回は携帯火器や瓦礫、薬品を使って雷管や信管も作り上げた。
 銃砲の形を活かして、鉄パイプ爆弾の要領で武器にした。
 常識的に考えればありえない。
 ただボヤッキーは常識から、かけ離れた力を持つのだ。
0325今宵、月が見えずとも ◆ZC0oB5s5Dg
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2016/08/08(月) 02:23:43.50ID:K8wMKEIr
 シュリといえど機械であることには変わりない。
 その頑丈な身体は軽度な爆弾では微々たるダメージしか与えられなかった。
 だが、コンピュータで動いていることに代わりはない。
 現在、シュリの目的は魅零の排除である。
 そこに奇襲、そして強い衝撃である。
 たとえ、それが致命傷にならなくても「思考が止まる」のだ。
 情報を正確に処理するためには、いくらかの時間をかけねばならない。
 そこがチャンスだ。

「なにッ!」

 プライズウェルは驚く。
 クロスボウで牽制さえすれば、シュリが再起動するまでの時間は作れると思っていた。
 だが、違う。異なる。
 目の前の女は速すぎる。速すぎるのだ。
 先ほどのシュリと戦っていた彼女とは大違いの、速さである。
 片目は青く、血走ったような白い血管線が見える。
 それが本当に血管なのかどうかはわからない。
 ただ目の前の女の脅威さが滲み出ていることが確かだ。

 エンハンス処置。
 ざっくりと説明すると「改造人間手術」である。
 詳しくいえば身体の部位をアーム化できるのだ。
 魅零がリブレイターである以上、その身体能力も向上する。
 だから速いのだ。少なくとも先ほどの速さの比でない。
 何とか撃ったボウガンの矢もあっという間に弾かれる。
 ベッピンの振りも高速だ。
 あっという間に距離が詰められる。

「な……めるなァッ!」

 プライズウェルは頭に被っていた王冠を投げつけた。
 それは武器ではないが、ところどころが尖っていて危ない。
 薙ぎって王冠も斬り払う。
 予想以上の斬れ味。
 ちょうどいい。
 魅零は先に進む。
 次に魅零の目の前に向かってきたのはクロスボウだ。
 ボウガン自体を投げつけてきたのである。
 武器自体が飛んでくるのである。
 それはアーム化した手で薙ぎ払う。
 せっかくの飛び道具だ。斬り捨てるにはもったいない。
 魅零は先に進む。
 またもや彼女の眼にはあるものが飛び込んだ。
 それは武器ではない。
 だが、危機である。

 プライズウェルは矢を持っている。
 向かう先は、倒れているミーア。
 その矢を握りしめ、振り下ろすように襲いかかる。

 彼女を殺す気だ。
0326今宵、月が見えずとも ◆ZC0oB5s5Dg
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2016/08/08(月) 02:24:20.26ID:K8wMKEIr
 魅零はプライズウェルの背中に飛び込む。
 成人男性の軍人と女性とでは体格差がある。
 足で腰部を堅く挟み、羽交い絞め。
 両手をアーム化し、首の裏をきっちりと組み合わせる。
 その状態だと手首を下に下ろせないのだ。
 しかも堅い。
 改造人間の彼であっても外すのが困難である。
 ならばそのまま前に倒れるしかない。
 それならば勢いで刺せる。
 ただ、そのためには腰や足の動きで倒れるしかない。
 腕の注意は止まっている。
 ハンマーロック。
 背中に腕を引っ張り、捻りあげる関節技である。
 腕と肩関節は極めている。
 それを矢を持っていた腕にかけた。
 しかもアーム化した腕である。
 強すぎる。とても外せるものではない。
 プライズウェルはそのまま体重に乗せられる。
 そのまま、地べたに這いつくばった。
 完全に無力化の姿勢である。
 このままチョークスリーパーに移行すれば、アームの力で簡単に落とせる。
 その前に刀を確認する。
 それは飛び込む際に一旦手放した、ベッピンである。
 そのタイミングと同じ時に、声が聞こえた。

「お嬢さんっ! 危ないーーーーっ!」

 ボヤッキーの声である。
 そしてその状況もわかっている。
 魅零の目の前には最大の危機が訪れていた。
 シュリが眼光を照らしていた。

 全ては時間稼ぎである。
 プライズウェルがくじ引きを投げたり、ミーアを刺そうとしたのも、全てシュリの再起動のためだ。

(シュリは爆弾のこうげきを受けたが、こわれたわけではない。エラーをおこしているだけだ。もちろん、まったくダメージがないわけではないが、うごけるだろう)

 というか、プライズウェルはそう信じるしかなかった。
 武器はクロスボウのみ、相手は身体能力が向上した剣術の使い手。
 いくら自意識が高い彼でも勝算は見えなかった。
 だから「再起動するだろう」という望みをかけて、行動するしかないのである。
 その、合理的だが虚しい最終手段ともいえる行為は、成功した。
 魅零の特性である。
 
 彼女は、人を殺せない。
 いや、正しくは「殺せなくなった」というべきか。
 AAA機関。
 彼女の世界にある、世界政府が設立した機関である。
 主な任務は世界平和、つまり治安維持。
 紛争鎮圧のための兵器の行使等も入るのだ。
 その「兵器」が敷島魅零であった。
 エンハンス処置を受けた彼女は「ソルジャー」と言われていた。
 当然、治安維持で武力を行使することもある。
 つまり人も殺すこともある。
 彼女はかつて人を排除していたのである。
 だが突然、殺せなくなった。
 それは戦いの中で性格が突然変わったのか、良心を持ってしまったのか、どちらかはわからない。
 実際、第二次大戦中のアメリカの調査では兵士の8割は敵に向かって発砲していないという。
 それくらい人は「殺し」ということに拒否感を感じるのだ。
 魅零も途中で割り切れなくなったと考えてもおかしくない。
0327今宵、月が見えずとも ◆ZC0oB5s5Dg
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2016/08/08(月) 02:25:21.42ID:K8wMKEIr
 だから日本刀でプライズウェルを殺さなかったのだ。
 攻撃はするが殺しはしない。その甘さが時間を稼がせた。
 シュリは再起動し、魅零を排除するように命令する。

 ボヤッキーが気付いたといえ、その行動は早かった。
 剣がないことで軽量化され、すぐに魅零のそばに寄る。
 武器ならば、その場にあった。
 斧である。
 巨大なハルバードだ。
 魅零が奇襲をかけた時の巨大すぎる斧である。
 人間が持つのには難しい。
 だがシュリは剛腕だ。
 あの赤き巨大な剣を二刀流で扱えるほどだ。
 ハルバードもまた、片手で持ち上げる。

「くっ!」

 魅零はベッピンを見た。
 その刀はシュリによって柄を蹴られる。
 ぐるりぐるりと回って、シュリの後方を緩く走る。
 届かない。
 獲物を奪われたのである。
 どうするべきか。
 このままプライズウェルを落とすのが速いか。
 それとも自分が斬られるのが速いか。
 操作者の意識を遮断すれば無力化できる。
 そのまえに自分が殺されれば、目の前の倒れている女は死ぬ。
 助けてくれた男も死ぬ。
 シュリは上へ大きくハルバードをあげた。
 それも両手できっちりと、頭の上に構える。
 剣道でいうところの上段の構えだ。
 反り返った刃が、暗闇の中、光を照らす。

 だが振りかぶらない。
 止まったまま。
 それは不動のまま。
 魅零はわかった。
 その姿勢は意識が失っても「落ちてくる耐性」なのである。
 つまりプライズウェルが失神しても、魅零に危機が訪れる。
 そのハルバードはシュリの支えを失い、自分に向かって襲いかかる。
 一撃だろう。
 同時に、それはプライズウェルも死ぬ恐れがあるということだ。
 あの巨大なハルバードをあの高さからでは、二人を切り裂くだろう。

「とりひきだ。このまま私のこうそくを解けば、これ以上はこうげきしないと約束しよう」

 プライズウェルが口を開いた。
 拘束しているのだが、相手は余裕そのものである。
 状況が状況だけにだろう。魅零は返す。

「お前が攻撃してこない保証はどこにある……? あの人工エクスターは強力な破壊手段のはずだ」
「保証? そんなものはないに決まっているだろう。これは、めいれいだ。私をころしても、結局、おまえはしぬだけだ」
0328今宵、月が見えずとも ◆ZC0oB5s5Dg
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2016/08/08(月) 02:26:02.98ID:K8wMKEIr
 ロクでもない挑発、そして脅しだ。
 どちらにしろ死ぬかもしれないので条件を飲めとは、結局殺すという事ではないか。
 打開策が必要である。
 こちらはプライズウェルを拘束している。
 相手は自分をハルバードで確実に殺そうとしている。
 プライズウェルを無力化しても確実に殺される。
 もちろん、抵抗しても殺される可能性は高い。
 それに1つ、魅零には危機的な状況がある。
 エンハンス処置によるアーム化には時間に限界がある。
 長時間続けるには抑制剤がないと、身体の負担が激しくなってしまうのである。
 なのでこの駆け引きに時間は稼げない。
 どうするか。どうすればいいのか。
 困惑する。魅零の中は困惑の状態である。
 勝ち得るには、他の手が無ければならない。

 手は尾であった。

 それは巨大な蛇の尾である。
 赤く人間大の大きさを持った尾が、魅零の隣を通った。
 ぐるん、と斧を持ち上げるシュリを巻く。
 強固な締め付けがシュリの身体を固める。
 そして宙に浮く。
 矢が刺さった傷から血が噴き出す。

「痛ッ……たァ……ッッ」

 ミーアは思わず声に出す。
 先ほどの傷が響いている。
 力を入れればその分、痛みも傷も増してくる。
 だが、耐える。
 耐えなければならない。
 彼女はそのまま、シュリを持ち上げる。
 エクスターは宙を浮く。
 そのまま、横に向かって投げつける。
 グオン、と巨大な鞭が鳴った。
 その攻撃の徴候に気付いた魅零は、プライズウェルの背中に覆いかぶさる。
 彼女の後ろを風を切る音が通り過ぎる。
 シュリはもがく。
 エクスターの目的は魅零の排除である。
 それを実行ができない状態にいるのだ。
 もがくしかない。
 ダメでもやるべき行動はとって、ベストを選ぶしかない。
 シュリはハルバードを投げつける。
 巨大な刃が飛んでいく。
 方向は、魅零だ。
 そしてその先には、あの巨大な尾を持った女性だ。
 シュリを投げ捨てた赤髪の女性だ。

「うおおおッッ!」
0329今宵、月が見えずとも ◆ZC0oB5s5Dg
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2016/08/08(月) 02:27:07.06ID:K8wMKEIr
 魅零は立ち上がり、両腕でガードする。
 あの巨大なハルバードを守れるかどうかわからない。
 だが向かわせてはいけない。
 自分のことを助太刀してくれた女を。
 その者の仲間であろう、上にいる男も。
 自分を助けてくれた人間を手助けしなければならない。
 両腕は黒く染まり、硬質化する。
 頭を守るように固くガードした。
 ピーカブースタイル。
 アーム化した鎧のカーテンである。
 刃が襲いかかる。

 ドォン。

 衝撃。
 その衝撃は両手に伝わる。
 重たさがアーム化した腕でも感じる。
 魅零は大きくのけぞり、壁に背を置く。
 だが守りきった。
 ハルバードは下に落ちる。
 ガン、という鉄の音がしたとき、彼女は眼前を確かめた。
 シュリはまだ動いている。
 こちらの排除のために、まだ攻撃する気だ。
 耐えられるか。
 疑問が浮かぶ。
 先ほどのアーム化もあってか、負担を感じる。
 体が持つかどうかわからない。
 本来ならもう、アーム化も切らねばならない。
 それであのエクスターに勝てるのか。
 無理だろう。
 第一、エンハンス処置の力を活かしても勝てるかどうか、定かではない。
 彼女は時計からワイヤーを、瓦礫の上にあるベッピンに向かって発射する。
 シュリはこちらに向かって走ってくる。
 どっちが早いか。
 さながら西部劇だ。
 シュリが近づく。
 ワイヤーが飛ぶ。
 シュリが近づく。
 ワイヤーが柄を掴み始める。
 シュリが近づく。
 ワイヤーが柄を巻く。
 シュリが近づ――。
0330今宵、月が見えずとも ◆ZC0oB5s5Dg
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2016/08/08(月) 02:27:48.73ID:K8wMKEIr
 飛んできたのは薬品の入った瓶。
 割れるガラスがシュリの額に向かう。
 投げたのはボヤッキーだ。
 そこらから拾ったものを投げつけた。
 そんな深刻なダメージがあるわけではない。
 だが、シュリは自分を攻撃された方向を確認する。
 つまり攻撃が一瞬、遅くなる。
 ワイヤーは日本刀を引き寄せる。
 シュリが足を踏む。
 ベッピンは魅零の手に握られた。
 手足をアーム化し、彼女は走る。
 シュリは彼女に殴りかかる。
「アーム化した女が振るう日本刀」と「アームが振るうパンチ」はどちらが先か。
 魅零が攻撃を避け、斬りこんだ。
 頭部に向かって鋭い一線。
 機械といえど、頭部は重要な位置である。
 壊れれば無事では済まない。
 斬撃はシュリの頭部に深い傷を与えた。
 その王冠のような顔から火花が飛ぶ。
 二太刀目を入れようとしたとき、魅零は気付く。
 プライズウェルはどこにいった。
 守るためとはいえ、自分は拘束を解いてしまった。
 周りに目くばせして、確認する。
 もう遅かった。

 ミーアの胸には矢が刺されていた。

 プライズウェルはミーアを憎む。
 自分のせっかくの生み出した状況をあの女が不意にしたのである。
 何なのかもよくわからない化物が、自分の道を塞いだ。
 許せなかった。
 彼の高い自尊心はボウガンの矢を握らせ、襲いかからせる。
 対するミーアは、もう体力的に余裕はなかった。
 人間に置き換えれば彼女は、矢の刺さった右足でハイキックや三角締めをしたということになる。
 しかも彼女は戦闘民族でもない。
 ほんのちょっと、力が強い、恋する少女なのだ。
 痛みにだって慣れてない。疲労にだって慣れてない。
 その気力と勇気を振り絞った攻撃をした時、彼女の体力は追い詰められていたのである。
 プライズウェルの矢の攻撃も止めることは、できなかった。

「貴様ァーーーッ!」

 魅零は怒号をあげる。
 その表情は血管を浮かばせ、使用限度が近いはずの彼女のアーム化は加速していく。
 日本刀を構え、二太刀目をプライズウェルに向ける。
 それをシュリは見逃さない。
 踏みこんだ足と、右ボディフロー。
 魅零の腹へ、一直線に拳が進む。

「が……は……っ!」
0331今宵、月が見えずとも ◆ZC0oB5s5Dg
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2016/08/08(月) 02:28:16.66ID:K8wMKEIr
 アーム化していない腹部へ、人工エクスターの打撃。
 その威力は計り知れない。
 だが、みぞおちは運よく避けれた。
 シュリの処理能力も、頭部への打撃のおかげで落ちているのだろう。
 まだ立てる。
 彼女は日本刀を床に刺し、杖のように倒れそうな体を支える。
 だが、シュリは冷静なままだった。
 ハルバードを持ち上げ、魅零に向かう。
 そう、そのシュリが居る場所は、弾いたハルバードが落ちたところなのである。
 両手でしっかりと握りしめ、シュリに向かって構える。
 床から日本刀を抜くのはロスタイムだった。
 振りかぶるため、大きくシュリは腕をあげた。

 赤き尾は、まだ死んでいなかった。
 シュリの足元は、ミーアの尾に弾かれる。
 バランスが崩れ、エクスターは後ろに倒れる。
 上へ構えられたハルバードは、重い方が後ろへ回る。
 つまり、刃である。
 巨大な刃が後方を襲う。
 そこにいるのはミーア。
 そしてプライズウェルである。

(クソッ! この女、よけいなことを!)

 彼は心の中で悪態をつく。
 危険的な状態。逃げるしかない。
 だがそれも、防がれる。
 ミーアは転ばすために軽く巻いた尾を、プライズウェルに向かわせた。
 彼は逃げられず、その赤い尾に体を締めつけられる。
 抜け出せない。なんて力だ。
 ニシキヘビは強い力で相手を締めつけ、窒息死させる。
 その締めつける力は人間一人ではどうしようもないほどだ。
 しかもミーアの尾は、そのヘビより大きい。
 いくら手負いでも、いや瀕死でも、プライズウェルが簡単に脱出できるものではない。

「ふざけるなッ! きさまらのような、みたことのないような劣等民族にわたしがころされるいわれはないッ! みとめない! こんな状況はみとめな――」

 彼の叫ぶ口をハルバードが引き裂く。
 顎を引き裂き、首輪の下を刃が通り過ぎる。
 紅の尾も赤き血を吹きだしながら、切り裂かれていく。
 刃はプライズウェルの防弾チョッキさえも破壊し、肉体を貫く。
 骨を砕き、内臓を破壊し、生命を遮断する。
 文字を断とうとした男は、身体を断たれたのだ。

【プライズウェル=シティ=スリッカー@ヘヴィーオブジェクト 死亡確認】

残り162人。
0332今宵、月が見えずとも ◆ZC0oB5s5Dg
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2016/08/08(月) 02:28:37.86ID:K8wMKEIr
 視界はまだ正常だった。
 だが体に不思議と力が入らない事を、ミーアは感じている。
 全身の至る所が痛かったのに、熱かったのに、今じゃ何も感じない。
 感じる余裕もないくらい、身体が動かないのか。
 それは「死ぬ」ということなんだろうか。
 目の前に倒れる男と、倒れた機械とハルバード。
 それらが視界から外されると、2人の男女が見えた。

(おじさんと……女の人だ……)

 2人は何か自分に声をかけている。
 わからない。耳さえも聞こえない。
 感覚がなくなっていくのがわかる。

(そっか、死ぬんだ、私)

 身に近づく死を彼女は感じていた。
 だが不思議と悲しくない。
 何故だろう。
 多分、あの目の前の戦っていた女の人を助けたからだ。
 だから不思議な満足感がある。
 実際は何もやり遂げてない。
 後悔だって十分にある。
 だけど、哀しさはないのは、おそらく錯覚だろう。
 それでも、それはアリな気がした。
 後悔を感じないまま、死んでいくのも悪くない、くらいに思える。
 さっき、自分が死ぬと思った時は怖かったのに、いざ死んでみるとなると、真逆の感情だ。
 自分の感情だがミーアは不思議だと思った。

「だぁりん……私ね……女の人を助けたんだ……。私……死んじゃったけどね……けどね……だぁりんは……生きててね……絶対だよ……絶対……」

 ミーアの口からは、そんな声が出ていた。
 彼女自身も気づかない、言葉だった。
 心の内から噴き出した、願いだった。

 ―――好きだよ、だぁりん。



【ミーア@モンスター娘のいる日常 死亡確認】

残り161人。
0333今宵、月が見えずとも ◆ZC0oB5s5Dg
垢版 |
2016/08/08(月) 02:28:55.80ID:K8wMKEIr
 ボヤッキーは今、1人だけ立っていた。
 ミーアの亡骸の外傷は、ハルバードがあってもそれほどひどくなかった。
 後方の防弾チョッキまでは刃は突き通せなかったのだろう。
 だからミーアの上半身にあるのは胸元の矢傷だけである。
 ただ、下半身の尾は引き裂かれ、千切れかけ、壮絶な戦いを示していた。
 心配していた魅零もまるで電池が切れたように倒れる。
 アーム化の酷使に、過激な戦闘。抑制剤なしの今では仕方のないことだろう。
 だから立っているのは彼だけである。

「だぁりん……ですか」

 誰かはわからない。おそらく男性なのだろうが、彼女の知り合いの情報は全く聞いてなかった。
 わかるのは、彼女の名前がミーア、くらいということだ。
 それでも、伝えなければならないだろう。
 彼女が呟いた、その希望を伝えないといけない。

「拝借……しますね」

 回収するのは彼女のバック。何か手がかりがあるかもしれない。
 そして……クロスボウ。
 あの男が持っていた、憎き武器だ。
 しかし、ここで放置していても、仕方がない。
 彼はそれを自分のバックに入れる。
 重さは全く感じない。
 だが、それが彼を思い出させる。
 殺し合いを始めたドクロベエという邪悪。

「待っていてください……ミーアさん。必ず奴を……この殺し合いを破壊してみせます」

 1人の機械工は、月を見ていた。
 ちょうど、雲に隠れている頃である。


【一日目・午前0時30分頃/D-1・街中(薬局)】

【ヴォルトカッツェ(ボヤッキー)@夜ノヤッターマン】
【状態】疲労(中) 身体全体にダメージ ドクロベエへの怒り
【装備】クロスボウ@純潔のマリア(0/1)
【道具】予備矢(残り6本)@純潔のマリア くじ引き@城下町のダンテライオン
ボヤッキーのドライバー@夜ノヤッターマン スタミナドリンク@アイドルマスター シンデレラガールズ
ミーアの作ったお粥@モンスター娘のいる日常 ダンディくん@城下町のダンテライオン
ミーアのディパック 通常支給品×2
【思考】基本:殺し合いを破壊し、ドクロベエを倒す。
1:ドロンジョ様とトンズラーと合流したい。
2:知らないお嬢さん(魅零)をどうにかしないと……。
3:首輪を解析するための道具が欲しい。
0334今宵、月が見えずとも ◆ZC0oB5s5Dg
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2016/08/08(月) 02:29:36.94ID:K8wMKEIr
【敷島魅零@ヴァルキリードライヴ マーメイド】
【状態】昏倒状態 疲労(大) 腹部に打撲 左腕に切り傷
【装備】妖刀「ベッピン」@ニンジャスレイヤー フロムアニメイシヨン
【道具】ルパンの腕時計@ルパン三世 通常支給品
【思考】基本:とりあえず、まもりさんを探す。
1:…………………………………。


※携帯火器@純潔のマリアとその予備弾薬はボヤッキーが爆弾の材料にしました。

※シュリ@ヴァルキリードライヴ マーメイドは機動停止中。
損傷はありますが、なんとか治せばいけるかも。鞭は折れてます。

※ネコロンブス@干物妹!、うまるちゃんとおでん@おそ松さん、王冠@城下町のダンデライオンは破壊されて、放置されてます。

※ロゥリィのハルバード@GATE 自衛隊 彼の地にて、斯く戦えりは放置されています。

※防弾チョッキ@現実は損傷し、プライズウェルの死体に装着されています。

※薬局の入口付近は破壊されています。
 近くの本屋も内部はかなり破壊されています。
0335 ◆ZC0oB5s5Dg
垢版 |
2016/08/08(月) 02:31:06.81ID:K8wMKEIr
投下終了です。支給品の説明は後でWikiに書きます。本文も後でwikiに乗せます。
長文、失礼しました。
0336 ◆ymCx/I3enU
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2016/08/14(日) 16:43:49.18ID:GaMY77gi
投下乙です
ミーア合掌

自分も投下します
0337瓦礫と屍を目にして ◆ymCx/I3enU
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2016/08/14(日) 16:45:37.94ID:GaMY77gi
43話 瓦礫と屍を目にして

襲禅、真紀、小春の三人は、港を後にして東に広がる田園地帯に移動した。
長閑な風景が広がっていたがそれに似付かわしくない酷く破壊された民家を発見する。
まるで何かが爆発したかのような有様で壁に大穴が空き、室内も滅茶苦茶で瓦礫が散乱していた。

「ええ……何これ、何か爆発したの?」

驚く真紀。その横で冷静に現場検証をする襲禅。

「こんなんなってからまだそんなに時間は経ってねぇみてぇだが……爆弾支給された奴でも居んのか?」
「だとしたら怖いですね……爆発物なんてひとたまりも……」

家を破壊する程の爆発物を支給された者が居るのではと言う襲禅の可能性示唆に怯える小春。
真紀と襲禅は念の為に瓦礫の下に誰かが埋まっていないか確認したが、瓦礫の層は薄く誰も居ない事はすぐに分かった。
粉微塵になってしまったと言う訳でも無さそうなので誰も居なかったか、居たとしても死にはしなかったのだろう。

「死体が埋まってるなんて事は無ぇみてぇだな」
「そうみたいね。良かった。グロ死体でも見付かるかと思ってたけど。
他には何も無いみたいだし、とてもこんな所じゃ休めそうにも無いし、別の場所に行く?」
「そうだな……小春、それで良いか?」
「はい。大丈夫です」

民家は大穴が空いている以外はこれと言った発見も無く、休憩にも使えそうに無い。
これ以上滞在は出来ないと三人は考え、移動し始める。
が、移動した先の別の民家で三人を出迎えたのは玄関先で斃れた有翼半獣人の女性の死体。
そして銃殺されたと思しき全裸の狐獣人青年の死体。
二つの屍であった。

「おえええ……」
「大丈夫? 小春ちゃん」

堪らず嘔吐する小春にそれを気遣う真紀。
襲禅は死体の放つ血の臭いに顔を顰めつつも、民家の奥へ進む。

「奥の様子見てくらぁ。待ってろ」
「気を付けてよ」
「心配すんな」

真紀からの心配の声に軽く応えた後、ガバメントを片手に家の奥へ進む。
奥からも血の臭いがしていた。

「……ヒデェなこりゃ……」

そして襲禅は奥の一室にて、首と胴体が別れた露出度の高い格好の獣人女性の死体を発見する。
とても鋭利な刃物で一瞬で首を斬り飛ばされたらしくその断面はとても鮮やかだった。
真紀はともかく小春には見せられまい。先の二つの死体で嘔吐したのだからこんな物を見せれば卒倒するかもしれない。

「気絶されたらめんどくせぇしな……見せねぇ方が良いだろ」

後頭部を掻きながら襲禅が言う。
小春を心配していると言うより自分の行動が制限されるのを嫌っての判断であった。
外に待たせる真紀と小春の元に戻った襲禅は直接的な表現は使わず首に手を当てジェスチャーで伝えた。
真紀は顔が引き攣り小春は青ざめた。
三人分のデイパックも転がっていたのだが余りの惨状に中身を漁る気にもなれず、放置。
この民家も長居は無用と、三人は民家の門へと歩く。
0338瓦礫と屍を目にして ◆ymCx/I3enU
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2016/08/14(日) 16:46:38.86ID:GaMY77gi
(リフィアさんも、あんな風に転がっているんだろうか……)

死体を目撃した小春の胸に去来するのはこの殺し合いが始まって初めて出会い、直後に殺された狼の少女、リフィア。
彼女も先の犠牲者のように無残に死体が野晒しになっているのかと思うと居た堪れなくなった。
実際はリフィアは生きているのだがまだ彼女は知る由も無い。

三軒目の民家。
そこには特に何も問題は無く、至って綺麗に見えた。

「放送の時刻が近くなってきてるし、ここで落ち着こうか」

真紀が提案した。
襲禅と小春もそれに賛同する。

(タローは生きてるのかな……)

心の中で小春は愛犬(?)のタローの身を案ずる。
今もどこかで生きていると良いのだが。ひょっとしたら大怪我を負って動けなくなっているかもしれない。或いは。
一瞬、血溜まりの中で動かなくなったタローを想像してしまい小春の背筋に悪寒が走った。

(もうすぐ放送が有る、そうすれば分かる)

放送では死者の名前が呼ばれる筈、遅かれ早かれ、もうすぐタローの生死が分かるのだ。
どうか生きていて欲しい。また会いたい。また会って思う存分「抱いて」欲しい。
小春は願い続ける。


【昼前/D-7市街地】
【須牙襲禅】
状態:健康
持物:基本支給品一式、コルト ガバメント(7/7)、コルト ガバメントの弾倉(3)
現状:殺し合う気は無いが必要有らば戦う。真紀と行動。布川を連れて行く。放送を聞く。

【新藤真紀】
状態:健康
装備:基本支給品一式 拳銃型ライター
現状:殺し合う気は無い。武器が欲しい。襲禅と行動する。布川さんを連れて行く。放送を聞く。

【布川小春】
状態:左上腕に矢傷(応急処置済、余り左腕は動かせない)、少し気分が悪い、藤堂リフィアは死んでいると思っている
持物:基本支給品一式、スペンサーM1860カービン(7/7)、.56-56スペンサー弾(14)
現状:殺し合いには乗らない。タローを捜す。須牙さん、新藤さんと行動する。放送を聞く。
0339 ◆ymCx/I3enU
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2016/08/14(日) 16:47:27.53ID:GaMY77gi
投下終了です
状態表の備考欄も無くしました(リレーじゃないなら多分無くても良いと思い)
0341朽ちた集落抜けた先 ◆ymCx/I3enU
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2016/08/14(日) 19:03:16.82ID:GaMY77gi
44話 朽ちた集落抜けた先

有翼獅子獣人ウラジーミルと、小学生の少女和歌子は、廃村から脱出すべく草が生い茂ったかつての村の生活道路を南下する。
何年も使われていない故の荒廃ぶりに悩まされつつも、どうにか二人は村の外へと出る事に成功した。

「ふぅ、ようやく抜けられたね……」
「ウラジーミルさんの翼が使えればもっと早く出れた気もしますけど」
「いや、流石に人一人抱えて長時間飛ぶのは無理だよ……」

もし廃村からウラジーミルが和歌子を抱えるか背負うなりして飛翔出来れば更に楽に村を脱出出来たであろうが、
普段飛翔をあまりしないウラジーミルにはそれは無茶な相談であった。

「それよりほら、あそこに建物が有るよ」

ウラジーミルが話題の切替も兼ねて前方に見える小規模の建物を指差す。
正面に回って見るとその建物は武器屋らしかった。
地図のC-3エリアに表示されている物だろう。
放送の時刻も近付いている為、武器の調達も兼ねて二人は中に入る。
しかし、二人はある物を目にして入口から数歩もしない内に立ち止まった。

「ZZZ……」

カウンターの向こう、事務スペースの椅子に座って寝息を立てている狼獣人の青年。
完全に眠っているらしくウラジーミルと和歌子の扉を開ける音や足音にも気付く様子は無い。
しかしこの時点で二人は武器屋の中を探索したり休めるかどうか調べると言う選択肢が消えた事を悟った。
狼の青年が殺し合いに乗っているのかどうか分からない状態で彼を起こすような真似は危険である為だ。
ウラジーミルが小声で和歌子に言う。

「和歌子ちゃん、別の所を探そう……あの狼の人、乗っているかどうか分からないし、起こさない方が良い」
「分かりました……」

放送の時刻が近付いていると言ってもまだ休憩場所を探す位の時間は有るだろう。
最悪、道端で聞く事になるかもしれないが。それもやむを得まい。
ウラジーミルと和歌子は狼の青年を起こさないよう静かに武器屋から出た。

一方、惰眠をこいている青い狼獣人青年、ウォラゴ。
椅子に座って一息付いている内に眠ってしまった彼は、二人の訪問者に気付く事無く、尚も眠り続けていた。


【昼前/C-3武器屋】
【ウラジーミル・コスイギン】
状態:やや疲労
持物:基本支給品一式、拾った木材、作業用ロープと切断用カッターナイフ
現状:殺し合いには乗らない。和歌子ちゃんと行動。彼女を守り、友達である彩愛ちゃんを捜す。どこかで放送を聞く。

【長嶺和歌子】
状態:やや疲労
装備:基本支給品一式、コルト ポリスポジティブ(6/6)、.32コルトニューポリス弾(12)
現状:死にたくない。あやちゃん(籠彩愛)と会いたい。ウラジーミルさんと行動する。放送を聞く。

【ウォラゴ】
状態:睡眠中、ウラジーミルと和歌子には全く気付かず
持物:基本支給品一式、ハンティングナイフ、消毒用エタノール(500ml)、リボルバーと弾薬(現時点ではモデル不明
現状:優勝狙い。
0344ミーウ独考 ◆ymCx/I3enU
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2016/08/15(月) 19:52:22.24ID:aoV8cIDQ
44話 ミーウ独考

放送時刻の正午が迫る。
ミーウこと修明院美宇はD-5エリア一角の民家の中で休息し放送を待っていた。
結局、捜し人の伊藤椿の手掛かりは掴めていない。

「あ〜椿、今どこに居るの?」

果たして、まだ生きているのだろうか。それとも――――。
最悪の事態は考えたく無いが可能性を捨て去る事も出来ない。
もう少し経てば第一回目の放送が始まる、そうすれば嫌でも現時点での椿の安否が知れる。

「もし椿が死んでいたら……」

最悪の事態になった時、自分はどうするか。
ミーウは考え、そしてすぐに結論に至った。

「決まってるじゃない、一択よそんなの。その時は私も死ぬ」

伊藤椿が死んだら、自身もすぐに後を追おう。
彼女が居ないのなら生きている意味なんて無いし彼女の居ない世界に未練も何も無い。
本気でそう考える程、ミーウにとって椿の存在は重要だった。

「椿が居ないのなら私が生きる意味も無いもんね〜」

壁に掛けられた時計に目をやりながら、ミーウは己の生死を決める事にもなる第一回目の放送を待つ。


【昼前/D-5市街地戸倉家】
【修明院美宇】
状態:健康
持物:基本支給品一式、グロック19(15/15)、グロック19の弾倉(3)
現状:殺し合いには乗らない。椿及び殺し合いに乗っておらず役に立ちそうな参加者の捜索。殺し合いからの脱出方法を探す。
伊藤椿が死んだら自分も死ぬ。
0345 ◆ymCx/I3enU
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2016/08/15(月) 19:52:53.12ID:aoV8cIDQ
投下終了です。短いです。次は放送です。
0347第一回放送 ◆ymCx/I3enU
垢版 |
2016/08/15(月) 20:22:02.57ID:aoV8cIDQ
46話 第一回放送

「あーあー、テストテスト。聞こえるか。柴田だ。
正午になったから、第一回目の放送を始めるぞ。
まず禁止エリア。
午後1時より、A-6、C-3、C-6、E-6、G-5。
繰り返す。午後1時より、A-6、C-3、C-6、E-6、G-5。
次は死者、大体死んだ順番に言うぞ。

黛康裕
イライアス・ウィズダム
六浦春部
ゼンル
志水セナ
スィヴレバル
籠彩愛
盛朋未
久保永悠歩
千品武紀
沼倉勇喜
北原大和
ザスキア・フェルカー
コンゼノア
隠塚英紀
本庄忠朝
伊藤文子
緒方修二
テオ・オトマイアー
倉持忠敏
ユージーン

以上21名。残り31名。
かなりペースが早いな。それは良いんだけど、これなら放送の間隔を短くしても良さそうだ。
と言う事で放送を6時間間隔から4時間間隔に変更するぞ。次の放送は午後4時だ。
以上だ。この調子でゲームを頑張ってくれ。それじゃあな」


【残り31人】
0348 ◆ymCx/I3enU
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2016/08/15(月) 20:27:44.41ID:aoV8cIDQ
投下終了です
オープニングと口調が違うことに気付く…後で直してWikiに入れます
0350出会いは突然、アウトも突然 ◆ymCx/I3enU
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2016/08/15(月) 22:17:40.08ID:aoV8cIDQ
47話 出会いは突然、アウトも突然

E-4市街地の一角、路地裏にて鉤丸聖人は第一回放送を耳にし、地図と名簿に放送で得た情報を書き込む。
今まで彼がどうしていたのかと言うと、明朝に女性の爆殺死体を見た後南下し市街地へ。
利用出来そうな人物を捜すも見付からずそうこうしている内に放送の時間になった、と言う経緯である。

「21人、随分死んでるな……しかし放送の間隔わざわざ短くする必要有るのか?」

進行役の柴田が言うには、ルールを少し変更し放送の間隔を6時間から4時間に短縮するとの事。
死者が多いからと言ってわざわざそんな事をする必要性は有るのかと聖人は思う。

「ま、そんな事どうでも良いか」

思いはしたが、柴田の意図など考えても答えが出る筈も無い。
それにまだゲームは終わっていない。自分が生き残る事を優先して考えるべきだ。
聖人は思考を切り替えて、自分の武器の拳銃を持って路地裏を出た。

そして彼が待ち望む他参加者との出会いは数分も経たずやって来た。
彼が望む形などでは全く無いが。
47話 出会いは突然、アウトも突然

E-4市街地の一角、路地裏にて鉤丸聖人は第一回放送を耳にし、地図と名簿に放送で得た情報を書き込む。
今まで彼がどうしていたのかと言うと、明朝に女性の爆殺死体を見た後南下し市街地へ。
利用出来そうな人物を捜すも見付からずそうこうしている内に放送の時間になった、と言う経緯である。

「21人、随分死んでるな……しかし放送の間隔わざわざ短くする必要有るのか?」

進行役の柴田が言うには、ルールを少し変更し放送の間隔を6時間から4時間に短縮するとの事。
死者が多いからと言ってわざわざそんな事をする必要性は有るのかと聖人は思う。

「ま、そんな事どうでも良いか」

思いはしたが、柴田の意図など考えても答えが出る筈も無い。
それにまだゲームは終わっていない。自分が生き残る事を優先して考えるべきだ。
聖人は思考を切り替えて、自分の武器の拳銃を持って路地裏を出た。

そして彼が待ち望む他参加者との出会いは数分も経たずやって来た。
彼が望む形などでは全く無いが。

「あっ、発見ー」
「え」

突然の声に顔を向ければ、そこには黒髪の少女。角が見えるので人間では無いのだろう。
但し、角よりも聖人が目を引かれたのは、少女が自分に向けて構えている、銃。

(え、嘘、ちょっと待って)

慌てる聖人。
突然の事に対応出来ず、持っていた二十六年式拳銃を構える事も出来ず、その前に少女の銃が先に火を噴いた。
放たれた銃弾は聖人の右目から彼の頭蓋骨を貫通し、衝撃で聖人は後ろへ吹き飛ばされ仰向けになり、
アスファルトに血と肉片を飛び散らせて息絶える。

本人も何が何だか分からない内の、あっさり、呆気無い死に様であった。

◆◆◆ 👀
Rock54: Caution(BBR-MD5:0be15ced7fbdb9fdb4d0ce1929c1b82f)
0351出会いは突然、アウトも突然 ◆ymCx/I3enU
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2016/08/15(月) 22:18:52.22ID:aoV8cIDQ
あっさりでつまらなかったがまあいいと、スカーレットは少年の持っていた武器を回収する。
放送は聞いた。放送時間変更も知った。
禁止エリアも勿論重要だがそれよりスカーレットが気になったのは死亡人数の多さ。
たった6時間で21人も死んだ。自分が殺した者も含めてだが。
他にもやる気になっている人物が大勢居るのだろうか。

「結構死んでるみたい、早くしないと獲物が無くなっちゃうかも……」

うかうかしていると自分が楽しめる分の獲物が居なくなってしまうかもしれない。
今のスカーレットの唯一の心配事と言えばそれである。

「まあ市街地なら人も集まるだろうし、ぶらぶらしてよっと」

とは言え、そこまで切羽詰まった心配、と言う訳でも無い。
一応、自分を除きまだ30人が生き残っているのだから、まだまだ楽しめはするだろう。
スカーレットは適当に鼻歌を歌いながら、次の獲物を探す。


【鉤丸聖人  死亡】
【残り30人】


【日中/E-4市街地】
【スカーレット・ガードナー】
状態:健康
持物:支給品一式、コルトS.A.A(5/6)、.45ロングコルト(8)、スタームルガーP85(7/15)、スタームルガーP85の弾倉(3)、
二十六年式拳銃(6/6)、二十六年式拳銃実包(12)
現状:殺し合いを楽しむ。獲物探し。
0352 ◆ymCx/I3enU
垢版 |
2016/08/15(月) 22:21:02.06ID:aoV8cIDQ
投下終了
あれ、前半がおかしな事になってる
何かマウスの調子が悪いのかドラッグが上手く出来ん
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