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小説書いて、アニメ化目指すスレ
0001伝説の居留守使い
垢版 |
2013/01/07(月) 17:24:07.17ID:K5Z1tAMo
いっちょ頑張ってみる。
0030創る名無しに見る名無し
垢版 |
2013/01/14(月) 18:55:50.23ID:SLgJiz0n
せつなの足元をかすめ、バスケットボールほどもある真っ赤な毬藻の様な毛玉が何個も転がっていく。
「おわ!」
面食らって跳びあがるせつな。
だが、毬藻もさっきの怪物と同じだった。
せつなに遮られることなく、彼の脚をころころと通過していくのだ。

 ぎしっぎしっ
頭上から聞こえる音にせつなは顔を上げた。
今度は猿だ。
街に巡った電線を、人の背丈ほどの緑色の猿たちが長い手足で伝っていく。
つちのこもいた。丸太の様な胴体を弾ませて道のまんなかをころがっていく。
いぼだらけの大蛙がマンホールの蓋をぬけ飛び出した。
街路樹に巻きついているのは金色の双頭の蛇だ。
真っ白な大狐が、アーケードをくぐって悠々と歩いて行く。

せつなは、目を覚ましながら見る悪夢のような光景に、しばし身動きが取れなかった。
みな一様に、道行く人など無きが如く、彼らをすり抜け、どこかを目指して行進していく。
エナも周りの人間も何も気付いていない!

せつなが、ふらりと歩きだした。
「エナ……ちょっと学校に忘れ物した。」
せつなはエナに一言かけると、誘われるように怪物たちの行進を追って走り出した。

「ちょっと、せつな君!どこ行くのよ?」
せつなの突然の奇行に戸惑うエナ。
路上に取り残された彼女は、大きくため息をついた。
0031創る名無しに見る名無し
垢版 |
2013/01/14(月) 20:01:19.24ID:SLgJiz0n
日が落ちた。
深々と冷え込む夜の公園。
滑り台やブランコを跨ぎながら怪物たちが静かに行進していく。
行進に加わる怪物の数は徐々に増えて行き、もう三十を超えた頃からよくわからない。
せつなは、街路樹や遊具の影に身を潜めたりしながら、彼らを尾行していた。
怪物たちは、せつなの事など気にもしてない風だから、そんなことをする必要は無いのだが、まあなんか気分だ。
「ぜってー奴らの『基地』があるはずだ!突きとめないと!」
せつなは根拠のない確信を胸に、寒さで鼻水をすすりながら怪物を追った。
「せつな君、いったいどうしたのよ?いきなり走り出して!」
背中からエナの声が聞こえた。
「どわ!何やってんだよエナ!」
急に背後を取られてビビリなせつな。
「学校なんて嘘でしょ、全然方向が違うじゃない。何やってんのよ……まさか『覗き』?」
嫌悪を露わにせつなを睨むエナ。
「ち、違うって、これには事情が、朝の、通り魔が、怪物で……あー説明できない!」
自分でもよく解ってないことをエナに釈明しようとして、せつなが頭を抱える。
あ、そうこうしている内に、怪物の列が公園を抜けた。
「もー、明日も学校でしょ。帰るよ!」
せつなの鞄をひっぱるエナ。
「……ちょっと待ってくれエナ」
せつなが、目を見開いて立ち上がった。
怪物たちの『行先』がわかったのだ。
聖ヶ丘公園の緑地を見下ろす荒れ放題の大邸宅。
『お化け屋敷』だ。
「んー?」
突然、せつなはジャケットの右ポケットに違和感を感じた。何かが動いている。
せつなはポケットの中身を取り出した。
今朝がた拾った、黒塗りの独楽だった。
なんということ!独楽がせつなの掌で、コロコロと勝手に動き始めた。
「エナ……見ろ」
「やっぱり……朝のあれ、気のせいじゃなかったんだ!」
エナが息を飲んだ。
0032創る名無しに見る名無し
垢版 |
2013/01/14(月) 21:22:58.55ID:SLgJiz0n
私に私が集まってくる。
まだ27%の私が冷たい肌にそれを感じる。
 曠野を吹き荒ぶ砂塵
  路地に転げた屍を焼いた灰
   暗い波間に燐光を瞬かす夜光虫
かつて私であった私の断片が私に収束してゆく。
時が逆さに流れる。
無であった私が無を思う何かに退行する。

 だめ、もう起きたくない。
私は呟く。
生きることは狂うこと。
絶えず血が通い流れ続ける混乱と惨苦。
闇と静謐に満たされた『ここ』で無限に広がり漂うことを
どうしてやめねばならぬのか。
 起きろ、お前には仕事がある。
出来たばかりの私の耳に、誰かが囁く。

私は半透明の瞼を開く。闇の中で何かが煌く。
 虹。しじまに光る七色の帯。
  虹は見る間に捻じくれ丸まり幾つにも千切れると
   細かいビーズのように輝いて暗黒に浮ぶ円環を形作る。
虹の門がゆっくり開く。門の向こうから何かが私を覗く。
眼だ。緑色に燃えさかる巨大な焔の眼。

 いやだ、あんなものとは関わりたくない!
私は目をそらす。でももう遅かった。
眼は私の内にあった。
私の心臓を緑色の焔が燃やす。

つづく
0033創る名無しに見る名無し
垢版 |
2013/01/15(火) 21:46:52.80ID:68g7fm+R
せつなの手の中で、独楽がコロコロと転がりだす。
呆然と立っていたせつなは、ふと思いついてエナに言った。

「エナ、ちょっと手、出せよ!」
「え、どしたのよ急に?」
いぶかるエナ。
「いいから早く!」
おずおずと差し出されたエナの掌に、せつなはそっと独楽を置いた。
 どくん。
エナの目に映る景色が、ぐにゃりと歪んだ。
「ぎゃ〜!何よアレ!」
エナが跳びあがり、せつなの背中に引っ込んだ。
これまで動くものの無かった『お化け屋敷』の錆びた鉄柵を囲み
白狐や大蛙、毬藻、つちのこの集団が蠢いているのだ。

やっぱり!せつなは確信した。
独楽だ。これを身につけたり、触れたりした人間だけに『あいつら』が見えるのだ。
「せつな君、なんなのさあいつら!」
「わかんね!でもわかった!ここがあいつらの『基地』なのさ!」
なんにも分からないのに、大得意のせつな。

「こんなところで何をしている!」
せつなとエナの背後から、怒気を帯びた男の声が聞こえた。
ビクッとして振り返った二人の前には、三十半ばと思しき一人の男が立っていた。
口ひげをたくわえタイトなグレイのスーツに、黒のスカーフで洒落のめしている。
「え……七瀬先生!今日は風邪だって…!」
エナが目を丸くした。
せつなも彼の事はよく知っている。
立っていたのは、学園の音楽教師で吹奏楽部顧問、七瀬浩幸だった。

つづく
0035創る名無しに見る名無し
垢版 |
2013/01/16(水) 19:57:16.35ID:0a55+TRR
改行ポイントがわからないけどこんな感じかな?


せつなの手の中で、独楽がコロコロと転がりだす。
呆然と立っていたせつなは、ふと思いついてエナに言った。

「エナ、ちょっと手、出せよ!」

「え、どしたのよ急に?」
いぶかるエナ。

「いいから早く!」
おずおずと差し出されたエナの掌に、
せつなはそっと独楽を置いた。

 どくん。

エナの目に映る景色が、ぐにゃりと歪んだ。

「ぎゃ〜!何よアレ!」
エナが跳びあがり、せつなの背中に引っ込んだ。
これまで動くものの無かった『お化け屋敷』の錆びた鉄柵を囲み
白狐や大蛙、毬藻、つちのこの集団が蠢いているのだ。

やっぱり!せつなは確信した。
独楽だ。これを身につけたり、触れたりした人間だけに『あいつら』が見えるのだ。

「せつな君、なんなのさあいつら!」

「わかんね!でもわかった!ここがあいつらの『基地』なのさ!」
なんにも分からないのに、大得意のせつな。
0036創る名無しに見る名無し
垢版 |
2013/01/16(水) 21:36:50.22ID:0a55+TRR
「七瀬先生!どうしてここに……」
思わぬ場所で思わぬ人物に出会い、二の句が継げないエナ。

「焔上寺…、如月も!いったい何をしてるんだ!」
ナナセの語気が荒い。

「いいか!二人ともすぐにここを離れろ!」
怒っている、というより何か『焦って』いるようだ。
彼が長身を揺らして大仰に辺りを見回す。

授業や部活の指導に熱心な先生だが、
学園の教員の中でもちょっとおかしなくらいの洒落者で、
着てくるスーツは毎日イタリア製。
生徒からは半笑いで『007』なんて言われているが、
そんな恰好の彼も夜の公園で出くわすと、ちょっと異様な凄味がある。

「でも先生、何か変なんだ!あの家の周りに……」
せつなが必死で訴える。

「おまえら……?まさか、『見える』のか!」
ナナセが驚愕に目を見開く。
彼はエナの掌の独楽に気付いた。

「それは……夜見の衆の『標』!まさか、それをどこで!」
二人につめよるナナセ。

「え、いや、普通に道に落ちてて……」
頭をかいてモジモジするせつな。

「そんなはずは……常人の目に触れることは絶対ないはず!」
憤慨するナナセ。エナが彼に尋ねた。
「七瀬先生、先生にも『あいつら』が見えるんでしょ。いったいなんなの?」

ナナセの顔から戸惑いの色が消えた。
いや、その顔にはある種の『諦め』と『覚悟』があった。

「焔上寺、如月、あいつらは『影』にすぎない。俺達に触れることもできない。」
さっきとはうってかわった静かだが厳しい口調だ。
彼は2人から翻って決然と言った。

「これから、もっと恐ろしいモノが来る……いや、来た!」

 ばちん!ばちん!ばちん!

突如、何かが弾けるような音が辺りに響く。
公園を冷たく照らしていた街灯が、次々その灯を消してゆく。

一際深さを増した公園の闇の奥から、『何か』が歩いてきた。

つづく
0037創る名無しに見る名無し
垢版 |
2013/01/17(木) 22:45:03.68ID:mi6k+lau
 かさり、かさり

乾いた落ち葉を踏む音が、だんだんこちらに近づいてくる。

「七瀬先生、おひさしぶり。」
闇の奥から鈴の音のような声が響いた。女の声だ。。

「焔浄寺、如月……早くここから逃げろ!」
軋むような声で、ナナセが背中の二人に言った。
エナはナナセを見た。
恐怖からだろうか、彼の背中がワナワナ震えている。

「でも七瀬先生……」
「いいから早く!!」
ナナセが叫ぶ。

「……わかったよ先生!行くぞエナ」
せつなが、エナの手をとって駆けだした。

勘の鈍いせつなにも、はっきりわかった。
学園の音楽教師は、さっきの怪物よりもよほど恐ろしいものと対峙しているのだ!
だが、二人が彼から数メートルも離れぬ内に異変が起きた。
せつなとエナの足元の地面が、ぐにゃりと波打った。

「どわー!」
足をとられて地面に転がる二人。

 ずずずずずずずずず

何かを引きずる様な音が、せつなのすぐ耳元で聞こえる。
どうにか起き上がった彼は、自分の正面で起きていることが信じられなかった。
落ち葉を飲み込み波打って、まるで泥沼と化した地面の中から、何かが這い出てきたのだ。

「熊だ!熊が出た〜!」
混乱したせつなが叫ぶ。

「ちがう!」
エナが震えながら目をみはる。

せつなが、一瞬熊と見違えたのは、
全身を真っ黒な体毛に覆われた、仔牛ほどもある犬だった。

「ぐるあああああああ!」
犬が、真っ赤な目を爛々と光らせて、二人に牙を剥いた。

つづく
0038創る名無しに見る名無し
垢版 |
2013/01/20(日) 01:24:37.71ID:4Zcdh8w/
「いったいなんなんだよー!」
冷たい土に尻もちをつくせつな。

「せ、せつな君、逃げないと!」
彼の手を必死に引っ張り上げるエナ。
だが遅すぎた。

「ぐわお!」
涎を垂らした巨大な黒犬が、枯葉を蹴散らして二人に跳びかかってきた。
あぶないエナ、どうするせつな…その時だ。

 がきっ!

せつなは我が目を疑った。
「ぎゃいん!」
跳びかかってきた黒犬が、横殴りに弾き飛ばされ地面に転がったのだ。

「二人とも、行けったら行け!」

 たん。

どういうことだ?せつなとエナの前に降り立ったのは、先程まで二人の背中にいたはずのナナセ。
教師が、信じられない跳躍を見せ二人を飛び越えると、
堅固な革製のアタッシュケースで黒犬の横面を張り飛ばしたのだ!

 だ!

間髪いれずに黒犬に跳びかかるナナセ。
0039創る名無しに見る名無し
垢版 |
2013/01/20(日) 01:25:11.84ID:4Zcdh8w/
だが見ろ、犬は既に迎撃の構え。
凍った地面から信じられないスピードで跳ね起きると、
鋭い牙を剥き、再びナナセめがけて跳躍した。

 がしっ

冷たい夜気を切り裂いて空中でぶつかる人と獣の影。
だが両者の体各差は歴然。

どさり。犬が、仔牛ほどの体躯でナナセを地面に組み伏せた。

「ぐあああああ!」
大顎を開き彼の喉首を噛みきらんと、犬の顔がナナセに近づく。

「七瀬先生!」
たまらずエナが叫ぶ。だが……

「ぐる、ぐる、ぐあ……」
これはどういうことだ?
犬がナナセの体を離れ、一歩、二歩と退くと、困惑したように頭を振った。

あ、エナは気付いた。
よく見れば犬の右眼には何かが突き刺さっている。
「……あれは指揮棒!」

なんと、黒犬の眼に深々と突きたてられていたのは、
ナナセが日頃から吹奏楽部の指揮に用いていたカーボン製のタクトだ!

「先生!」
ナナセに駆け寄るせつなとエナ。

「焔浄寺、如月、下がってろ!まだ、終わってない!」
教師が二人を制した。

つづく
0040創る名無しに見る名無し
垢版 |
2013/01/20(日) 18:35:42.00ID:4Zcdh8w/
「ぐるるるる……」
ナナセから被った不意の一撃。
黒犬がよろめきながらナナセから跳び退る。

「やっつけた!?」
エナがナナセを見上げる。
だが教師の顔は依然として厳しかった。

なぜだ?犬は倒れない。
深々と刺さったタクトは獣の眼窩を割って、脳に達していようと言うのに!
ナナセの額を汗が伝う。
冷たい汗だ。
獣は、体勢を立て直すと再びナナセを向き隻眼で彼を睨んだ。

「ぐわお……やってくれたな、男」
犬が…喋った!

「ううう……」
もう何を見ても驚かないと思っていたせつなも、眼前の怪異に改めて背筋が寒くなった。

「だが、こんな棒切れで我ら『一族』と張ろうとは……夜見の衆、聞きしに勝るうつけどもよ!」
獣が耳まで裂けた口を開け、嗤った。

「『無明一族』の黒犬、雨巻十郎!やはり仲間達を殺したのは…!」
ナナセが震えながら犬を睨んだ。

「ええ、お仲間はみんな私達が『いただいた』」
背後の闇からは女の声が玲瓏と響く。

「それにしても先生……」
声の主が嘲る調子で続けた。

「『影』たちが騒ぎ出すまで、何も気付かないなんて!貴方もお仲間も、つくづく鈍い鼻だこと!」

 かさり、かさり

落ち葉を踏む音。
樹間の影を割って、声の主が姿を現した。

女は、まだ若かった。成人に達しているだろうか?
スラリとした長身に真っ黒なロングコードを纏い、
長い髪はこれまた夜空を流し込んだような漆黒でまるで周囲の闇と溶け合っているようだ。
白い肌に整った目鼻立ちは、まるで人形のよう。
ただ人形と違うのは口だった。
嗤っている。
女が形の良い唇をきゅうと歪ませて、ナナセを指差し嗤っているのだ。

「やはりお前か!夕霞烈花!」
ナナセが、怒りに目を見開いて叫んだ。

つづく
0041創る名無しに見る名無し
垢版 |
2013/01/21(月) 22:37:26.83ID:f9VP0Sy9
ナナセに寄りそうせつなとエナ。
三人を挟むのは、黒衣の女と隻眼の獣。

「あの犬!……仲間?……殺した?」
せつなの中で、何かがつながった。
間違いない、通り魔殺人の犯人はあいつらだ!

謎は全て解けた!
せつなの灰色の脳細胞がパチパチスパークした。

だが解ったところで事態は変わらなかった。
犯人の正体が、こんな化け物じみた連中だなんて。
それにナナセ、こいつ、いったい何者なんだ?
せつなは唖然として彼を見上げた。

「ぐわお……どうした男?もう手品のタネ切れか?」
十郎と呼ばれた犬が、真っ赤な舌を出して嗤う。

「子供が足手まといか?ならば、先に喰ろうてやろう!」
せつなとエナを舐めまわすように睨みながら、十郎がゆっくりと間合いを詰めてきた。

ぴたり、ナナセの震えが止まった。
「無明の猟犬、雨巻十郎……何度も煮え湯を飲まされた。喰われた仲間も両手で足りない。」
彼が誰ともなしに呟いた。

あ、エナは気付いた。
七瀬先生が、スカーフを撫でている。
授業でも練習でも、調子が出てきた時にやる、あの仕草!

「十郎、今日はもっと、いいものを喰らわせてやる!」
ナナセはそう言うなり、スーツの胸ポケットから何かを取り出し、もう片方の拳に打ちつけた。

 ぴんんんんんんんんんん……

夜のしじまを縫うように、張りつめた弦の音のような金属音が響いた。
音叉だ。ナナセが手に己が打ったのは、銀色に輝く音叉だった。

「ぐお?」
獲物の奇行に一瞬たじろぐ十郎。

ナナセが、犬を指差し呟いた。

「zunden!!!」

 ぼああああああああ!!

次の瞬間、暗闇の公園の真中で閃光が瞬いた!
黒々とした木々を橙色の光が照らす。

「う……うそ!」
せつなとエナは息をのんだ。

巨大な黒犬の右顔面から炎が吹きあがった!
まるで噴射式花火を仕掛けたように、
オレンジ色の炎が犬の顔を割り、七色の火花を散らし煌々と燃えている!

「ぎゃおおおおおおおおおお!!」
凄まじい咆哮が木々を揺らした。

つづく
0043創る名無しに見る名無し
垢版 |
2013/01/22(火) 01:14:18.24ID:VDT90dtg
誰もリレーしてくれないからつまらんの(´・ω・`)
0044創る名無しに見る名無し
垢版 |
2013/01/22(火) 23:11:21.17ID:VDT90dtg
「な……!」

女の顔から笑みが消えた。
ナナセに烈花と呼ばれた黒衣の女。
その整った貌を赤く照らしているのは、黒犬を焼く劫火だ。

「ぐううううううおおおお!!」
十郎が、この世の者とは思えぬ叫びを上げ、地面をのたうち回る。
突如十郎自身から吹きあがった紅蓮の炎。
炎は既に犬の顔半分を消し飛ばし、チロチロとした燐光の舌をその全身に伸ばしていた。

火のついた落ち葉が舞い上がり闇に散りながら、
深々冷たい夜に立つケヤキやクヌギの木肌をオレンジ色に照らしている。
せつなとエナは、眼前に展開される地獄の恐ろしくも幻想的な光景に、言葉を失っていた。

「がううう……うう」
苦悶に転げていた犬も、ついに力つき地に伏した。

ナナセが犬の体に向かって言った。
「ende!!!」

 しゅ!

犬の焼け焦げた体から、何かが飛び出した。

「あれは!」
エナが掌で口を覆う。
犬から飛び出してナナセの手に収まったのは、先程の格闘で彼が敵の眼に突き立てた、タクトだった。

ナナセが、女の方を向いた。

「犬は退治た!どうする烈花!!」
0045創る名無しに見る名無し
垢版 |
2013/01/23(水) 22:42:57.72ID:5yju4xuj
ナナセが烈花に叫ぶ。

 びゅうう。

寒風に逆巻いた火の粉が闇に立つ女の姿を妖しく照らす。
「七瀬先生、十年ぶりに会ったのに、随分な挨拶ね……」

烈花の声に再び嘲るような調子が戻ってきた。

「烈花……やはり…生きていたのか!」
ナナセが低く呻く。

「ええ、『竜神村』では随分お世話になったけど、あのくらいで私は死なない!」
烈花が三人の方に歩いてくる。

「先生、今日はこれくらいにしない?」
彼女は凄艶な笑みを浮かべてナナセに言った。

「私、急いでるの……十郎は死んだ。お仲間の仇もとったし、満足でしょ?」

 ざわわ!

せつなとエナは、空気が震えるのを感じた。
二人の傍に立つ教師の全身からは、それほどの怒気が漲っているのだ。

「夕霞烈花……!十年前のお前の所業、未だに瞼の裏から離れない!」
ナナセは右手のタクトを大きく振った。

「今度こそ、お前を殺す……私はそのために、生まれ変わった!」

タクトの先端が赤く光った。

「空気が……燃えた!?」
せつなは我が目を疑った。

 ぼおおおおおお

ナナセのタクトから生じた火炎が、螺旋を描きながら空を裂き、
まるで吸い込まれるように烈花の体めがけて奔っていく。
0046創る名無しに見る名無し
垢版 |
2013/01/23(水) 23:57:28.19ID:h56oJR7p
リレー進行だったのか。
0047創る名無しに見る名無し
垢版 |
2013/01/24(木) 00:27:55.21ID:5GcL20pD
ひとりリレーだけどね今んとこ
0048創る名無しに見る名無し
垢版 |
2013/01/24(木) 21:25:24.73ID:5GcL20pD
冬の夜の聖ヶ丘公園で、悪夢のような死闘が続く。
なぜだ。夜とはいえ、周囲を通る者は一人としていない。。
黒衣の女と炎の使い手の戦いに固唾を飲むのは、せつなとエナの二人だけ。

 ごおおおおお!

烈花むかって、ナナセの放った炎の奔流。
炎が烈花を包んだ。
その長身を業火に焼かれ、身悶えする女。
と、見えたその時。

 ぼわっ

烈花の体が、千々に砕けて樹間に散った。

「なに!」
ナナセが声を上げる。
なんということ、赤熱の劫火の中に、女の姿は既にない。

ナナセはようやく気が付いた。
彼の炎が焼いたのは、いつの間にか彼女が脱ぎ捨てた真黒の外套だ!

「どこだ!?烈花!」
ナナセは狼狽して辺りを見回した。

「消えた……」
呆然のせつな。だがその時。

「先生、どこを見ているの?」
頭上から声が聞こえた。烈花の声だ。

「うお!」
見上げたナナセの鼻先には、艶然と嗤う烈花の白い顔。

「と……飛んでいる!?」
エナは息を飲んだ。

女の体が、逆さ宙吊りに空中に浮かんで、ナナセを見下ろしている!

 ずどん!

「ぐあああああ!」
ナナセが悲鳴をあげた。
これまた頭上から飛んできた何かが、彼の右手を刺し貫いたのだ。
0049創る名無しに見る名無し
垢版 |
2013/01/24(木) 23:16:38.84ID:5GcL20pD
「うううう!!」
右手を押さえて後ずさるナナセ。
彼の右手にあったタクトが、『何か』に巻き取られて烈花の方に上っていく。

「先生、本当におめでたいわね、火遊びの一つ覚えたくらいで私に勝てて?」
タクトを弄りながら女が嗤う。
外套を脱ぎ捨て、スラリとした体の線も露わなタートルネックの烈花。
彼女の体が、空中でゆっくりと反転した。

 ぎしっ!ぎしっ!
周囲の木々の幹や枝から、幽かに軋んだ音がたつ。
なんだ?風ではない。

「ああ!」
せつなは気付いた。
烈花は、飛んでいたのではない。
文字通り『吊られて』いたのだ。

彼女を吊りあげているのは、木々に結えられた幾本もの黒縄。
それは、よく見れば、
……烈花の髪だった。

彼女の豊かな黒髪が、まるで生き物のように蠢いて、四方八方に伸び
闇に溶けあい周囲の木々に巻き付くと、烈花の体を宙に持ち上げていたのだ。

そしてまた、ナナセの右手を貫いたのも髪!
黒縄が絡まり合い、先端鋭い槍の穂を形成しナナセを刺したのだ。

ナナセの背後に、しゅるしゅると二本の槍の穂が伸びてきた。

 ずどん!ずどん!

黒髪の槍が、教師の両膝を貫いた!

「ぐあああああああああ!」

ナナセは、なす術なく地面に転がった。
0050創る名無しに見る名無し
垢版 |
2013/01/25(金) 23:55:12.28ID:hcNryQHe
「あっけないわね先生、竜神村のアレはやっぱり偶然だったの?」
烈花が空中から、苦悶のナナセの前に降り立った。

「うううう……」
せつなは恐怖で身動きが取れなかった。

間近で見る烈花の姿は、まさに人外の化けものだった。
周囲の木々から解けた黒髪が、擦れた音を立てて絡んだり解けたりしながら
海中で獲物を待つ海月の肢のように、彼女の周りをユラユラ漂っている。

「う、ぐう!」
ナナセが彼女から距離を取ろうと足掻く。
冷たい土を血の這跡が伝っていた。

 ぴたり。

烈花がナナセを指した。
その手に在るのは先程教師から奪った炎のタクト。

「成り行きとはいえ寂しいわ、さようなら先生……」
烈花がちょっと神妙な顔をすると、タクトを振った。

 ぼおお。

タクトの先端に膨れる火球……だがその時。

「だめ……やめて!」
ナナセの前に走り寄り、烈花を遮る少女の姿。
エナだった。
0051創る名無しに見る名無し
垢版 |
2013/01/26(土) 00:07:44.11ID:Q71RycxZ
「エナ!やめろってー!」
せつなが叫ぶ。
だが彼は腰が抜けて動けない。

「焔浄寺……逃げろ!」
地面に伏したナナセが呻く。

「よくできた生徒ね……先生もろとも死ぬつもり?」
烈花がニタリと笑う。
だめだ!せつなは歯噛みした。
烈花の目を見ればわかる。子供相手に躊躇する相手じゃない!

だがエナの目にもまた決意の光があった。
震えながらも烈花を見据え、敢然と立つ少女!
炎が彼女の貌を照らす。その瞳の中に何かが輝いた。

「…………!!」
烈花が息を飲んだ。彼女の顔から笑みが消えた。

「お前……、その顔……!!」
当惑した様子の烈花。

しばしの沈黙の後、烈花がタクトを下ろした。
烈花はナナセに向かって言った。

「やめよう七瀬!今宵は祝いの夜、裂かれた世界が重なって、我らの悲願が叶う時!」
これまでとは打って変わった、決然とした、だが暗い声だ。
擦れた音を立てながら、蠢く髪が彼女の元に収束していく。

「夜見の者の下賤な血で祝宴を汚すこともあるまい。先生、あなたの血は、次に会った時に啜るとしましょう!」
再び嘲笑を貌に貼り付かせた彼女が、ナナセとエナに背を向けた。
0052創る名無しに見る名無し
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2013/01/27(日) 00:02:19.27ID:Q71RycxZ
 びゅうう。

一際強く吹いた風が、公園の落ち葉を舞い上げて烈花を包んだ。

「消えた!?」
エナは目をパチパチさせた。
ひらひら舞い散る落ち葉の向こうに、烈花の姿は既にない。
後には闇があるばかりだ。

「先生!大丈夫ですか!」
エナはナナセを振り返った。

「うう……焔浄寺、何でこんな!逃げろと言っただろう!」
ナナセが上体を起こした。

ナナセを見たエナは、言葉を失った。
エナが胸を押さえる。
心臓を冷たい手に撫でられたようだ。先生……。
教師が被った傷は想像以上の惨さだった。

烈花に貫かれた両膝からは止めどなく血が流れ続けている。
病院で治療しても、しばらく歩く事はかなうまい。
いや、ひょっとしたらこの先ずっと……。

「七瀬先生、今救急車を呼びます!」
エナはポケットに携帯を探った。

「焔浄寺、待て!」
ナナセがエナを止める。

「……焔浄寺、如月、頼みがあるんだ。」
教師がエナを見て言った。

「ひー、なんだよ先生!」
ようやく動けるようになったせつなが、二人の方に這ってきた。
0053創る名無しに見る名無し
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2013/01/29(火) 22:36:19.71ID:bzkARS/Q
「お………」

ナナセが二人に何か言おうとした瞬間、銀光がきらめき―――――――――――――

夜見の衆 竜神不馬の二つ名を持つ七瀬浩幸の胴は―――――――――――――二つに分かれ、あっけなく絶命した。




「え…あ…」
「……!!!!!!!!!」






未だに未覚醒の如月せつなは思考停止に陥り、

焔上寺エナは、《獄炎怒涛 ヴァミリオン エンゲージ 機構》が赤く、紅く、朱く、

呪祖子レベルに染まり――――――――――――――――

――――――――――――――――今こそ高らかに

――――――――――――――――悪逆上等
 
――――――――――――――――逆鱗激震

―――――――――エナの首はもがれた。

「あれれれえれれえっれれれれえれれれっれ?」

常人ならばとっくに絶命しているはずのエナはナナセをヤッたそいつに疑問を浮かべる。

「どおぅうううううぅうううして、時城コータがいるのかな?」

七瀬浩幸、焔上寺エナを強襲したのは、分厚いメガネがトレードマークの時城コータ…ではなかった。
たしかに、時城コータの面影はあるが、背の高さも、年齢も、髪の毛も何もかも違った。
メガネもかけていなかった。だが、エナはそれが時城コータということを知っている。
むしろ、それこそが本当の姿といわんばかりの確信を持って。

「………」

ぐしゃあ!!!!!!

時城コータは黙して語らずクラスメートの女の子の生首を踏み潰した。

「はぁあああああああああ!?」

憤慨する如月せつなは怒りを――――――――――――――――認識する前に時城コータにより灰燼と化した。
0054創る名無しに見る名無し
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2013/01/29(火) 22:38:05.34ID:bzkARS/Q
時城コータは誰も居なくなった公園で独白する。

「如月せつな、焔上寺エナ、桜久遠、魁皇冥、来栖滑落、無量零、涅槃阿僧祇、発条器械柘榴、アーサーブレード皇女、メギド魔人……………
この物語は多くの人外魔境により多くの破滅が救われた。だが、それではダメなのだ。
彼ら程度の叡智では、この先迫り来る混沌に太刀打ちできないのだ…

なぜならば…」



シャン……


シャン……


シャン……


公園に凛とした錫杖の音が響き渡る。


「うわはははははは!!!なぜならば、、、、、ねぃ!!!!!!」


ギャリィィィィィンと空間にヒビが入る。


「ぐぅぅぅぅ!!!!!」


時城コータは【空間限界値収束不良】の一撃を辛くも防いだ。
辛くもだ。
次はない。それほどの圧倒的膂力。圧倒的能力。圧倒的後だしジャンケン。


「この世界を紡ぐ神は一人ではないからだよぉん!!!!!!」

そうなのだ。この世界は一部の蒙昧無知なる書き手により混沌の坩堝と化すのだ。
0055創る名無しに見る名無し
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2013/01/29(火) 22:42:14.00ID:bzkARS/Q
たとえば『お化け屋敷』の主の正体はねぇぃ!!!!!」



   ヘ⌒ヘ
  /(・)(・)\
 ( △――△ )
   ̄/ ̄ ̄| ̄
  (⌒\_ノ⌒)
   ̄ ̄  ̄ ̄

【クリボー】



「なんだよ!!!」


「もちろん大きさは、せいぜい60cmくらいだねぃ!
でも、それで世界は崩壊するのさねぃ!
たった一つのくりぼーによってねぃ!
何故なら土管兄弟でないかぎりこいつをとめることはできないのだねぃ!!!」





{あーーーーーーーーーーーおめーーーーーーら、うるさいぞ}

隣近所のヤンキー君、大村菊太郎が時城コータ、【空間限界値収束不良】という名前の少女に拳骨を食らわせた。
彼はとても機嫌が悪いのだ。



「……という小説を書いているのだが、アニメ化までどのくらいだろうか?兄者」

「ふむ…あともう少しといったところかな、弟よ」

「ダメだ、こいつら」

頭を抱える大きなリボンがトレードマークの彼女の名前は、炎上時凜。

家事手伝いであり―――――――――――――この書き手のヒロインである。
0056創る名無しに見る名無し
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2013/01/29(火) 22:48:41.04ID:bzkARS/Q
こんなリレーでよい?
0057創る名無しに見る名無し
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2013/01/29(火) 23:23:35.61ID:b34uKnEN
よいよい。
こっちも勝手にすすめるわい。
0058創る名無しに見る名無し
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2013/01/30(水) 22:16:42.24ID:RheDuZVN
「……うおわ!」
せつなは、一瞬の脳裏をよぎった悪夢のようなビジョンに思わず声を上げた。
一瞬トッキーが出て来たようだが、今のは一体何だったのだろう。

「どうしたのよ、せつな君?」
訝るエナ。

「いや……なんでもない、それよか先生、頼みって何さ?」
普段は優しいナナセにはタメ口の、なめた子せつな。

「手を貸してくれ、あの女を追わないと。」
ナナセが苦痛に堪えながら言う。

「お前たちを巻き込みたくなかったが、そんな事言ってられなくなった……まだはっきりとは解らんが、あいつを止めないと大変な事になる!」
ナナセがどうにか自分の足で立った。

「だ……だめです七瀬先生!」
愕然とするエナ。
「そんな足でどうやって!それにさっきだって負けちゃったし……」

「焔浄寺、如月、もうすぐ仲間がここにやってくる!それまでは私だけで時間を稼がねば、さあ行こう、肩を貸してくれ。」
「行くって……どこに?」

ナナセの右肩を支えながらせつなが聞く。
ナナセは黙って目線を『お化け屋敷』の方に遣った。
0059創る名無しに見る名無し
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2013/01/30(水) 22:26:58.70ID:RheDuZVN
「見ろ二人とも!」
ナナセにいわれて、せつなとエナも屋敷を見た。
もう二人には、独楽がなくてもはっきり見える。
先程よりもさらに数を増した異形の怪物達が、屋敷を囲みながら呻き一つ立てずに揺れている。

「先生、あいつらは一体……それにさっきの犬と女の人は……知り合いなの?」
エナが不安に顔を曇らせながらナナセに聞いた。

「あいつらは『影』……さっきの奴らは『無明一族』、平たく言えば……『妖怪』だ。」
ナナセが一言ずつ噛みしめるように答えた。

せつなも、エナも無言だった。
戯言にしか聞こえないナナセの言も、眼の前で繰り広げられた惨事の後では強烈な切迫感がある。

「そして、私達は『夜見の衆』、古来から『奴ら』を見張ってきた、秘術の使い手、ざっくり言えば『魔法使い』だ」
ナナセが続けた。
0060創る名無しに見る名無し
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2013/01/30(水) 22:42:44.81ID:1hJ+wbpc
凜は自分を棚に上げ説教する。

「あんたらもっと現実を見なさい。こんなくだらないもんを書く前に…」

カッ――――――――――――――――


閃光。
轟音。


「ひゃあっ!?」


とてつもない衝撃に凜たちは見舞われた。
ガラスは砕け、机、椅子が客たちを襲った。

「な、なんのよ…もう…」
机の下からのろのろと這い出して凜はうめいた。

「あ、あんたら、ぶ…」

じ?、といいかけて彼女は凍りついた。
彼女と同じくニート仲間の若竹兄弟が精悍な顔つきで明後日の方向を睨んでいた。
これほどまでに深刻で覚悟を決めた顔を彼女は見たことなかった。

「兄者…まさか…」

「うむ、そのまさかだ、弟よ。きゃつめが復活したのだ…」

「え?え?」

凜はたちどころに混乱する。
兄弟の意味不明な言葉のやり取りはもう慣れているが、髪を逆立てて宙に浮くのははじめてみる光景だった。


「凜殿…」


「へ?な、なに…?」


兄に声をかけられ動揺する凜。

「会計をねがいまする――――――――――」


え?ちょ、と言う前に、バビューン、と兄弟たちは地平線の彼方に消えていった。
0061創る名無しに見る名無し
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2013/01/30(水) 22:43:56.90ID:1hJ+wbpc
「こんばんわ、兄弟」


兄弟は声に急停止する。慣性を無視したように服はよそとも揺れなかった。
髪は相変わらず揺れているが。

「久しいな、新月満月」

兄が声の主に返事をする。
兄弟たちの視線には、漆黒のドレスを纏った金髪碧眼の少女がいた。

「お久しぶりね。あら?あの子は一緒じゃないのね。そうね。そのほうがいいかもね」

少女は勝手に自問し勝手に自答する。

「状況は?」

「いつも通りよ。苦戦して、苦戦して、でも最後は活路を見出すのよ…アハン」

「そうか。そうだな。我らはただ傍観するのみ。」

「ええ、わたしたちはいわくありげにお喋りするだけ、よ…」


超人たちは、とある街のとある危機を眺めるだけに留めた…
0062創る名無しに見る名無し
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2013/01/30(水) 22:46:07.72ID:1hJ+wbpc
「…………」

ソレは生まれた。ソレは凶悪な面をしたなんともたわいのない造作のモノノケであった。
ソレは黙して、語らない。



「あ”あ”…?なんだ、こいつ?」



八本の腕をもち、傾いた格好の巨大なモノノケ、土蜘蛛は、『悪意の御霊』から甦ったソレをみて呟いた。
彼は西日本のモノノケの覇者であり、歴代最凶の土蜘蛛であった。
彼は全日本を支配するため、東日本の最狂に挑んだ。
だが、その最狂は、魔術の源流を組む陰陽師たちにより封印されており、彼はなんとしても復活させ、
堂々と自らも膂力で打ち負かしたかった。
そのため古今東西のモノノケを生贄に捧げ、封印の加護を弱めたりした。
そして、ついに今宵、封印にヒビが入り、ソレは復活したのだ。

だが、いざ蓋を開けてみるとソレがなんとも矮小なモノノケであった。
大きさは二尺足らずで、足はあるが、腕はなく、顔には鼻も耳も髪の毛もなく、
あるのは硬く閉じられた口と睨みつける大きな目だけであった。

これがかつての最狂だというのか?
永きにわたる封印により力は衰え、餓鬼にも悖るほどになってしまったのか…?
なんにせよ、土蜘蛛は、ただひたすらに打ち負かすのみ!


轟ォォォォオ…!!


土蜘蛛は渾身の一撃を拳にのせ振り上げた。
そして、振り下ろす。


「…………」


次の瞬間、塵すら残らず消えうせるだろうと、狸の妖怪、ワラダヌキは生まれて間もないソレに同情した。

だが、それは大きな間違いだったのだ。
0063創る名無しに見る名無し
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2013/01/30(水) 22:46:50.63ID:1hJ+wbpc
「は………?」

土蜘蛛は山ほどの大きさの金剛石でも殴りつけたのかと錯覚した。
彼にも作用反作用という法則があることを感覚的に知っていたのだが
この身の丈2尺ほどの物体にいったいどれほどの質量があるのだろう?
彼の放った運動量を受け止めるものは彼の感知しうる限りありはしないのだ。
デイダラボッチですら昏倒させる自信はあった。

なのに…

なのに、だ!!


ソレはそよとも動かなかった。
まるでこの惑星そのものだというように。
そして、ソレの外見はまったく変化していなかった。
完璧な剛体だとでもいうのだろうか?


彼は次の瞬間―――――――――絶命した。

ワラダヌキは見た。
その異様なまでの奇怪な、大妖怪の最期を。



tekeという音がどこからか聞こえたとおもったら

土蜘蛛が万歳の格好で飛び上がり続いて、teketeketeketenという音とともに
屋敷の床に吸い込まれていった。
地面を自由に行き来する土蜘蛛は物質透過の秘儀を会得していたが、
それでもあまりにも意味のないパフォーマンスであった。

「…………」

あきらかに土蜘蛛は一貫性のない行動をとりこの場から退場した。
いくら歌舞伎者の土蜘蛛といえどこのような場でこのようなおふざけをする道理もなく、
とどのつまり―――――――――口を閉ざし、なにかとんでもない強敵を見据えるそのするどい眼光のソレの特殊能力であろうか。

そのあまりの不気味さに百鬼夜行たちは沈黙した。

「…………」


ソレはただ睨むのみ。
0064創る名無しに見る名無し
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2013/01/30(水) 22:47:51.22ID:1hJ+wbpc
「やいやいやい!!なにおめえら黙っていやがるんだ!!!!土蜘蛛の旦那はちと幻術体勢がなかっただけだ!おれっちにまかせろい!!!」


おぉ、と歓声が沸きあがる。

この威勢のいい声を張り上げるのは、鴉天狗の若頭であった。
大妖怪たちのなかでは一番の新参だが実力は折り紙つきであった。

神仙蔦女の夕霞烈花らを擁する『妖艶の五芒星』の創設者といえば、おわかりだろう。


「我、うちほぼすは芭蕉の腕!喰らえ、次元旋風!!!!」


鴉天狗はソレを原子レベルにまで分解するような突風を見舞わせた。


「あ、わわわ」


その余波でワラダヌキは自慢の髭をなくすところだった。



「ふふ、まさに跡形もなく…あ?…」



「…………」


まさに目を疑う光景だった。ソレはまさにそよとも動いてなかったのだ。

ソレは沈黙のカーテンを下ろしたまま唐突に動いた。

周囲の妖怪たちはみじろぎできない。


ぐるりとソレは回転しだした。
なにかを探るように。
なにかを求めるように。

向きを変えると、歩き出した。
0065創る名無しに見る名無し
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2013/01/30(水) 22:48:47.28ID:1hJ+wbpc
周囲の妖怪たちはみじろぎできない。

とことことその小さい歩幅で歩き出した。

とことことことことことこ、と…

周囲の妖怪たちはみじろぎできない。

とことことことことことこ

ソレの進行方向に樹齢五千才の霊樹翁がいた。

ソレはそんなこともしらず進む。

霊樹翁、夕霞烈花の遠き、祖先だ―――――――――

翁は―――――――――みじろぎできない―――――――――


ソレは翁の足元の根に触れた。
その瞬間、あの不気味な音がな響き、
翁は万歳して飛んで、床に吸い込まれる。


鴉天狗は無視されたと逆上し、ソレの肩(らしきものだが)をつかむと――――――――


teke、teketeketeketen…


床に沈んだ。
0066創る名無しに見る名無し
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2013/01/30(水) 22:49:27.36ID:1hJ+wbpc
ウワーーーーー



蜘蛛の子を散らすように大妖怪たちは逃げ出した。
ワラダヌキも便乗して『お化け屋敷』から逃げ出した。


「ご主人様に報告だぽぬ!!!主の復活ぽぬ!!!!」



そう。
何を隠そう。
ワラダヌキは『夜見の衆』、『秘術の使い手』、『魔法使い』の七瀬浩幸の『使い魔』であったのである。


いそげ!
せつなたち!

この窮地を救うのは、あなたたち…よ?」


真紅の月光の下、『不死者』、『吸血の姫君』、新月満月は呟くのだった。
0067創る名無しに見る名無し
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2013/01/30(水) 22:57:54.51ID:1hJ+wbpc
クリボーを相手に、せつなたちはどう立ち向かうのか―――――――――他の書き手の手腕に乞うご期待…!
0068創る名無しに見る名無し
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2013/03/12(火) 01:34:37.44ID:M7vrIUO0
つづきは?
0071創る名無しに見る名無し
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2014/03/23(日) 05:58:42.38ID:TPyYqcUV
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0072創る名無しに見る名無し
垢版 |
2014/05/10(土) 15:22:47.26ID:1Q5uW2a+
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    ̄ ̄ I WANT YOU              ニュー速(嫌儲)
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     【ひろゆき】今2chで何が起こっているのか?【#偽2ch騒動】
      http://www.youtube.com/watch?v=Rhi87ky-Dqo
0075創る名無しに見る名無し
垢版 |
2017/12/27(水) 10:42:34.50ID:C1Z7QFDy
家で不労所得的に稼げる方法など
参考までに、
⇒ 『武藤のムロイエウレ』 というHPで見ることができるらしいです。

グーグル検索⇒『武藤のムロイエウレ』"

9P5O8GQGEO
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2018/05/21(月) 08:28:12.16ID:tRZnwP6O
知り合いから教えてもらったパソコン一台でお金持ちになれるやり方
参考までに書いておきます
グーグルで検索するといいかも『ネットで稼ぐ方法 モニアレフヌノ』

V903W
0077創る名無しに見る名無し
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2018/07/03(火) 19:27:21.11ID:f1dClnnX
IZW
0078創る名無しに見る名無し
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2018/10/17(水) 18:43:52.34ID:ZU7x6aHX
中学生でもできるネットで稼げる情報とか
暇な人は見てみるといいかもしれません
いいことありますよーに『金持ちになる方法 羽山のサユレイザ』とはなんですかね

W9T
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