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巫女「来たれ!異界の勇者よ!」

0001創る名無しに見る名無し
垢版 |
2012/03/11(日) 03:04:50.36ID:3JjnXiLB
 割と魔王・勇者ネタが多いので俺も乗ってみる
上手く書けなかったらスマン。

 目を覚ますと、そこは見覚えのない石の祭壇
の上だった、まるでアニメに出て来るような
いかにも"神官"といったような服を着た少女が
見上げていた。

巫女「よくぞ参られました、異界の勇者よ」

魔王「…………………………。」

巫女「勇者様、今やこの世界は
   大魔王ゾーマの手によって闇に包まれて
   おります……我らにはもはや戦える
   力は無く異界の勇者様だけが頼りで──。」

魔王「…待て。」

 さも当然と言わんばかりに、初対面の相手に
臆面も無く厄介ごとを押し付けようとする
若い巫女の言葉を遮り、おずおずと手を上げる。

魔王「あー……業者間違えているんだが」

0068創る名無しに見る名無し
垢版 |
2012/03/20(火) 22:00:26.43ID:Smj8KxuS
>>67
感想サンクス、
まだまだ甘い所があるし、>>1000まで達成できるか
わからないけど、出来る限り頑張ってみるよ。
0069創る名無しに見る名無し
垢版 |
2012/03/21(水) 00:50:13.79ID:7/SQeJVa

 ◆◇◆◇ シャンパーニの塔(夜):塔付近の平原 ◆◇◆◇

 シャンパーニの塔が燃える明かりが、辺りを照らし、
真夜中であるにも関わらず、まるで昼のように明るかった。

 カンダタは煤煙で汚れた覆面を投げ捨てて、斧を構える…
見据えた先には例の黒髪の女が居た。

カンダタ「そういや、まだ名乗っていなかったな
     俺の名はカンダタ、ロマリアの大盗賊だ」

マオ「……………………マオだ。」

 凛とした声でカンダタに応えるマオ、その声には一分の隙も
無いようだ、戦い方はどこか慣れていない感じがしたが、
不思議と戦度胸はあるようだ…。

手下「………………親分〜〜…」

 子分の声に後ろにカンダタは背後に視線を送ると、
そこには屈強な中年の男が居た、以前も一度見た事があるし
ロマリアでは有名な男だ。

カンダタ「アンタは…勇者オルテガか
    勇者にしちゃ、結構エグイ手を使うんだな」

オルテガ「降伏しろ、貴様に勝ち目は無い
    おとなしくその金の冠を返すんだ」

カンダタ「ケッ…アンタもロマリア王国の
    犬って訳かい…このまま無傷で返してやっても良いけど、
    二つ条件がある」

オルテガ「言ってみろ」

カンダタ「………俺の首と財宝はくれてやる…
    だが、部下共は見逃してくれ、先日
    ロマリアで捕えられた連中もだ」

オルテガ「…………………もう一つは?」

カンダタ「そこの女、マオと一騎打ちさせろ
    もちろん、俺の部下には手出しはさせねぇ」

 オルテガがマオに目線を向けると、マオは微かに
頷いた…。

オルテガ「………………良いだろう
    この俺が頼まれたのは"金の冠を取り戻す事"と
    "盗賊カンダタを捕える事"だ、部下どもの命は
    どうでも良い」

カンダタ「オラ行け!お前ら!とっとと逃げろや」

手下「………ひぃ…」

 カンダタの子分達が慌てて逃げ出して行き、オルテガは
得物を収めてその場に座り込む。
0070創る名無しに見る名無し
垢版 |
2012/03/21(水) 00:53:33.47ID:7/SQeJVa
カンダタ「さて…と…」

 カンダタは斧を構えて、戦いの構えを取る、
そんなカンダタにマオは武器を正眼に構えたまま声を投げかける。

マオ「何故、師匠ではなく私と戦う事を選んだ?」

カンダタ「…おめぇさんとは、以前決着を
    付けられなかったからな……それに…」

 カンダタは未だに燃える塔に向かって、僅かに視線を向ける。

カンダタ「…こいつはテメェの仕業なんだろ?
    勇者オルテガがこんなエグイ手を使う訳ねぇよ
    ……………じゃぁ………行くぜっ!」

 カンダタは地を蹴って爆進する、大振りの鉄の斧がマオを襲うが
マオは羽のように身軽に斧を避ける、大振りな攻撃が当たらないのは
百も承知…本命は左手に仕込んだ斑蜘蛛の糸。

 左手の裾から斑蜘蛛の糸を放り投げようとするが。

マオ「バギ!」

 マオの放った真空の刃が斑蜘蛛の糸を弾き飛ばす。

カンダタ「…………同じ手は使えねぇか」

 吐き捨てつつ…マオの攻撃を斧でガードする、正確に的確に
急所を狙って攻撃してくるマオの攻撃もまた同じ事。

カンダタ「正確過ぎて、どこを狙っているかバレバレだぜ!」

マオ「お喋りな奴だ!」

 ギン…!

 鉄の斧と誘惑の剣が激しい火花を上げてぶつかり合う、
カンダタの攻撃は一撃一撃が大きい、だからこそ…丁寧に力の
方向を受け流す─────。

 ───力の大きい相手と戦う時、正面から
 打ち合ってはいけない───。

 マオの頭の中で染みついたオルテガの言葉を繰り返す、
かつて魔王だった自分と互角に戦ったのは、オルテガに戦い方を教えられた
オルテガの娘だった。

カンダタ「野郎!小癪な真似をっ!」

マオ「…………くっ!」

 カンダタの重い攻撃を、必要最小限の力で体力を消耗しないよう
丁寧に攻撃を受け流し続ける。

 ───空振りや受け流しは直撃以上に体力を使う
 体力が無いなら、相手に無駄な体力を使わせればよい───。
0071創る名無しに見る名無し
垢版 |
2012/03/21(水) 00:59:02.39ID:7/SQeJVa
 魔王の力も魔力も今の自分にはもう何も残ってない、
無くなった事に嘆いても何も始まらない!

 しかし…失った代りに手に入れた物は幾つもあるはず、
その一つがこの身軽な体…、身軽さを殺さない為に
防具は最低限の革の鎧しか装備していない…
 身軽さと素早さを重視し、この八か月ずっと訓練してきた。

カンダタ「ゼイ…ゼイ…ゼイ……くそっ!」

 体力が失われてきたカンダタが肩で息をし始める…、
焦りの表情が浮かびあがる、焦りで攻撃の隙が大きくなっていく。

 ───隙を逃すな、己が優位に立ったその瞬間にこそ
 勝者と敗者がひっくり返る可能性がある、仏心なんぞ出すな
 チャンスが出来たらそれは、確実にモノにしろ───。

カンダタ「死ねやぁぁぁ…マオォ!」

 カンダタとマオが正面からぶつかり、カンダタが
大きく振り下ろした斧をマオはジャンプして躱す。
 そのまま頭を踏み台にして、カンダタの背面に着地し…
前転して衝撃を殺す…。

マオ「…セイッ!!」

 マオの誘惑の剣がカンダタの両足のアキレス健を斬り付ける。

カンダタ「グアァァァァァ!」

 ダン…!

 カンダタが倒れ…マオの誘惑の剣がカンダタの首筋に当てられ、
カンダタの瞳から戦意が失われていく。

手下「………お…親分〜……」

オルテガ「………………勝負あったな…」

 傍観していたオルテガが決着を口にする。

カンダタ「ちっくしょおおおおおっ!」

 カンダタは吠えて地面に大の字に寝っころがる。

カンダタ「俺の負けだ、ほら!俺の首が欲しいんだろ
     持っていきやがれ!」

 カンダタは斧を投げ捨てて首を斬れと、差し出すが
オルテガは首を横に振る。

オルテガ「…必要なのはお前の首じゃなくて、お前の身柄と
     金の冠だ、悪いがロマリアまで付き添ってもらうぞ
     安心しろ、部下の身の安全は俺が責任を持って
     掛け合おう」
0072創る名無しに見る名無し
垢版 |
2012/03/21(水) 01:07:36.46ID:7/SQeJVa
やっと、次でカンダタの話が終わる
と、言うよりここまで書いて…まだ>>72
カンダタが終わるぐらいで>>200ぐらいの
予定だったんだけど全然足りない、
それに、もう10日目か…。
いつまでも創作板に個人スレが居座っててスマン
このまま、3か月ぐらい居たら、本当スマン。

とりあえず、今日が始まったばかりだけど今日はここまで。
0073創る名無しに見る名無し
垢版 |
2012/03/22(木) 23:12:45.45ID:s6Bn9saW
>>19
どうやら、風邪を引いたようだ
人稲だけど一応、諦めた訳じゃないよ
今日はおとなしくDQ3でもやって、ロケハン(?)する事にする。
0074創る名無しに見る名無し
垢版 |
2012/03/25(日) 01:42:51.55ID:k++6tQNh
 ◆◇◆◇ カザーブ村 ◆◇◆◇

 カンダタとの一戦後、カンダタを連れて
カザーブ村まで戻っていた。
 そのカンダタはカザーブ村の酒場で焼酎なんて
飲んでいたりしていた。

カンダタ「なぁ…思うんだけどよ
     俺って拘束とかされなくても良いのか?」

オルテガ「逃げるつもりが無い奴を縛っても拘束しても
     面倒なだけだろう?」

 カンダタにしたら、逃げる隙はいくらでもあるのだが
大人しくロマリアに付いて来るつもりのようだ。

マオ「拘束した人間や、死体を運ぶのは手間がかかるんだ
   あまり面倒を起こすな」

カンダタ「……そりゃぁ、アジトも焼け落ちちまったし
     逃げ出す先もねぇし、部下どもの命が助かるってーんなら
     かまわねーんだけどよ」

カンダタ「どっちにせよ、ロマリアに引き渡されたら
     賊は打ち首なんだ、最後にこうして酒が飲めるのは
     感謝はしているさ」

 手にしたグラスを一気に呷るカンダタ。

オルテガ「随分簡単に自分の命を諦めるんだな」

カンダタ「でねーと、賊なんてしてらんねーよ
     ヒト様のモノを盗むってこたー、それだけの
     リスクもまたあるって訳だ…はっはっはっは」

 まるで他人毎のように笑うカンダタ、ふと気が付くと
遠目に少女がこちらを見ている。

若い女「……………………もしかして…
    お姉ちゃん?」

マオ「へ?」

若い女「やっぱり、お姉ちゃん!」

 茫然とするマオに、少女が飛びついてくる。

若い女「勝手に町を飛び出して、
    探したんだから!ノアニールに帰るよ」

マオ「待てって…」

 一方的に手を掴んで外に出ようとする女を
振り払うマオ。
0075創る名無しに見る名無し
垢版 |
2012/03/25(日) 01:43:20.11ID:k++6tQNh
オルテガ「確かに…マオと瓜二つだが」

 丁度カンダタに関する報告書が書き終わったのか、
書状を書簡に詰めながらオルテガが言う。

オルテガ「実はこいつは記憶喪失でな…
     今は俺達と魔王バラモスを討伐する旅をしている」

マオ「ちょっと!」

カンダタ「俺達って…俺もかよ!?」

 勝手な話を進めるオルテガにマオは抗議の声を上げ、
カンダタは疑問の声を上げる。

マオ(師匠、何を勝手な作り話を言っているんですか!)

オルテガ(元々、巫女の体であって
   記憶が一切無いのは確かだろうが)

 それにしても作り話と言え、元異世界の魔王がこの世界の魔王を
討伐するって話は一体何の冗談なんだか。

 魔王を討伐するかどうかなんて、知った事ではないが
ひとまずこの場は、オルテガの話に乗って置く事にする。

マオ「…………と、とにかく…そういう訳だから
   悪いけど、そのノアニールとやらに帰るつもりは
   ………………………………って…泣くなよっ!」

 マオの言葉半ばに大粒の涙を流す娘、女の涙は武器だと
マギーは言っていたが、まさにその通りだ、今は自分も
女だったりする訳だけど…で話を聞いてみた所。

 双子の姉が居なくなったのは約1年程前の話らしい、
両親が目の前でモンスターに喰われる事件を引き金に
姉が突如ノアニール村から行方をくらませたらしい。

 妹である彼女はその後、親戚の住むカザーブ村へと
引っ越し、1年後の今日、両親の墓参りに行くために
護衛の冒険者を探してこの酒場に来たと言う。

オルテガ「なるほどな…、マオがお前さんの姉かどうかは
    判らないが、これも精霊ルビス様の巡り合わせだろう」

マオ「って…師匠?」

オルテガ「ノアニールならすぐそこだ、
     丁度良いからこの娘さんを送って差し上げろ」
0076創る名無しに見る名無し
垢版 |
2012/03/25(日) 01:43:44.92ID:k++6tQNh
カンダタ「送って差し上げろは良いんだけどよ」

 カザーブ村からさらに北のノアニールへ向かう途中、
娘と共に付いてきているカンダタが不平の声を漏らす。

カンダタ「なんだって、俺様まで一緒にノアニールに
     行く必要があるんだ?」

マオ「師匠に言えって」

 不満を言おうにも、そのオルテガは金の冠を持って
一人でロマリアへと向かった訳だが。

カンダタ「第一、ロマリアに報告に行くなら
     俺様も一緒に行くべきだろ、金の冠を持って
     逃げや───がったかっ!」

マオ「逃げたら逃げたで貴様は自由の身になれるから
   問題ないだ─────ろっ!!」

 カンダタと二人で街道を塞ぐ巨大なモンスター達を
討伐しながらも言葉を交わす…。

若い女「……………あの…」

カンダタ「オメェは…下がってな!
     それならそれで、俺はカザーブ村で
     のんびりして居たかったんだけどな」

マオ「働かざる者、食うべからずって言葉知らんのか?
   貴様が飲み食いした金は、全部必要経費ってことで
   国民の税金から出るんだぞ!」

 言いながらも、木の幹を蹴って飛び上がり、
ジャンプしながらデスフラッターを斬り落とす。

マオ「これでラスト!
   ……手伝いが居るか?」

カンダタ「馬鹿言え!こっちも終わりだぜっ!」

 カンダタの斧が最後の毒イモムシの頭を粉砕し、
飛び散った毒からマントで身を守る。
0077創る名無しに見る名無し
垢版 |
2012/03/25(日) 01:44:04.80ID:k++6tQNh
マオ「それで?
   ………どうかしたのか?」

 剣に付着した血を拭い去り、自称妹に向かって
マオは振り向く。

若い女「……………あの…
   いえ…その…お姉ちゃん強いなって…
   昔はずっと村から出た事も無かったのに」

マオ「そりゃぁ…………」

 アンタの姉じゃないからな、と言葉に出しそうなのを
ぐっと堪える。

 アンタの姉(確定ではないけど)は、筋骨隆々の魔族の
男と体を交換しました、なんて言ったらどんな顔をする
のだろうか?

カンダタ「見えたぞ!ノアニールだ
     けど…様子が変だぜ?…」

 平原の先にノアニールの街が見えてくる…
しかし…、今は夕方であるにも関わらず
どの家からも夕餉の煙が立ち上っていない。

 それに…村の入り口に草が生い茂っており
まるで破棄された村のように見える。

若い女「………………!!」

カンダタ「…おい!俺達も追うぞ!」

 ◆◇◆◇ ノアニール ◆◇◆◇

 ノアニール村は無事ではあった、モンスターに襲撃
されたとかではなく、町民も無事に生存していたし
建物が破壊された後も無かった…しかし…。


町民A「…Zzzzzzz……」

町民B「すぴー……」

町民C「…Zzz…Zzz………」
0078創る名無しに見る名無し
垢版 |
2012/03/25(日) 01:44:37.93ID:k++6tQNh
カンダタ「…なんだこりゃぁ!?
     寝てやがるのか?、しかも立ったまま」

 カンダタが驚きの声を上げる、無理も無い…
町民達は一人残らず眠っていた。
 カンダタが寝ている町民に手を触れようとするが。

マオ「……二人とも…触れるな!
   それと布を口元に当てておけ!」

カンダタ「急にどうしたんでぇ!?」

マオ「最悪、伝染病の危険性もある…
   原因が判らない以上、むやみやたらに
   触れない方が良い」

カンダタ「でっ…伝染病!?」

 命が惜しくは無いとは言っていたカンダタも
流石に病気には掛かりたくは無いらしい。
 驚くついでに町民から慌てて遠ざかる。

若い女「でも、このままにしておくなんて…」

マオ「様子を見る限り…
   随分と長い間放置されているみたいだが」

 しかし、不思議と衰弱している感じも無く
衣服も雨風に晒されて汚れている感じも無い。

 何より、まるで時が止まったかのように立って
寝ているのだ。

マオ「普通…寝る時は横になるはずだ…
   立ったまま寝てても、力が抜けるから
   地面に倒れるはずなんだが」

カンダタ「普通の眠りじゃねーって事か
   それで、どうするんだ?」

マオ「どうもこうも無いだろう、頼まれた事は
   この娘をノアニールに送る事だけだ、
   宿で一休みさせてもらったら、カザーブに帰るさ」

若い女「そんな!酷い!
    ノアニールの皆がこんな目にあっているのよ!
    お姉ちゃん」

 ─────って…言われてもなぁ。

マオ「再三言っているけど、私は姉ではない
   それに…どこで、何をして、どうすれば
   こいつらの目が覚めるんだ?」

若い女「そ…それは…………。」
0079創る名無しに見る名無し
垢版 |
2012/03/26(月) 00:14:57.04ID:yy+Wl0EG
カンダタ「ドライだなー…おめぇ
   オルテガのおっさんとえらい違いだ」

マオ「なら、お前がなんとかしてやるんだな」

 吐き捨てて宿へ向かう、この分だと宿屋も
機能しているとは思えないが、勝手に宿代を置いておけば
問題は無いだろう…。

  馬鹿らしい、私は元魔王だ…
 なんだって無償で人助けなんてしてやらなければいけないんだ。
 本当に馬鹿馬鹿しい。

 外は夕暮れ、やがて外は暗くなり、月明かりの元で村人達を
家に運び込む娘とカンダタの二人が見える。

マオ「…触れるなと言ったのに
   ……………………ん?」

 見るとノアニール村の外れの一件の家の一部屋にだけ
明かりが灯っているようだ…。
 村人達を家に運び入れるカンダタ達からは気が付かない角度の
ようだが…。

マオ「まぁ…私には関係ないか…」

 窓を閉めて、ベッドに潜り込み寝ようとするが…。

マオ「……………寝られない…。」

 外で村人達を、運び入れるカンダタ達…
そして、恐らく事情を知っているであろう村はずれの明かり、
自分には微塵も関係ない…翌日になれば、カザーブに
帰る積りだ…。

 しかしだ…、誘いの祠で倒れていた自分を助けてくれて
さらに見返りを要求せず、半年も面倒を見てくれたお節介な
男が居た、あの男なら見返りを要求せずにも手を貸していただろう
外に居るカンダタのように…。

 良いのか?魔王、お前は人如きに借りを作ったままで。
心の中でそんな声が響く…。

マオ「……………くそっ!…わかったよ!」

 マオは誘惑の剣を手に取り、腰のホルダーに固定して
部屋を飛び出す。
0080創る名無しに見る名無し
垢版 |
2012/03/26(月) 00:15:29.06ID:yy+Wl0EG
 ◆◇◆◇ ノアニール:外れの家 ◆◇◆◇

 ノアニール郊外の家を訪れてみると一人の
中年の男が住んでいた。

 夜に突然現れたにも関わらず、飲み物まで用意してくれた。
北国であるノアニール地方は夜になると夏でもかなり冷え込む
らしく、暖房も効いていない宿では一晩を過ごすのは厳しい
とのことらしい…。

男 「全ては…この村の男とエルフの娘…
  アンのせいなんですじゃ」

 なんでも…、偶然森に迷い込んだ男が偶然森で出会った
エルフの娘と恋に落ち、駆け落ちしたらしい…、

 その上エルフ達の至宝である確『夢見るルビー』を盗み出したらしく、
怒ったエルフの女王(そのエルフの母親)はこの村を
眠りの呪いで閉ざしたらしい…。

マオ「………なんとも、はた迷惑は話だ。」

 第一…その娘と男が気に入らないなら
なんで、その娘と男だけでは無く村人達に呪いを掛ける?

 ついでに、娘と男も何故にその村の至宝であるルビーを
わざわざ盗み出したんだ?

 尤も、魔物の住処にわざわざ入り込んで剣を振るい、
宝物を盗み、魔物を惨殺して毛皮や武器を剥ぎ取っていく
連中を勇者と崇める者達が人間であるから、そんなもの
かもしれないが。

マオ「けど、それなら話は簡単だ
   村で眠っている娘と男を台車にでも載せて、ルビー共々
   エルフの女王とやらに引き渡せば問題は解決だ。」

男 「その二人は…もう居ないのですじゃ」

 なんでも、駆け落ちした挙句に
半島の先端にある洞窟の地底湖で身投げをしたらしい…。

 本当に…自分勝手な連中だ。
マオはひそかに頭を抱えた。


 ◆◇◆◇ ノアニール:街の出入り口 ◆◇◆◇

カンダタ「一体おめぇ…どこに行くつもりだよ」

 村から出ようとしていたら、カンダタに背後から
声を掛けられる。

マオ「少し出かけて来る…明朝までには戻る
   戻らなかったら先にカザーブ村まで行っていろ」

カンダタ「この村の連中……どうにかするつもりなんだろ?」

マオ「…ちっ…」
0081創る名無しに見る名無し
垢版 |
2012/03/26(月) 00:16:26.33ID:yy+Wl0EG
 うるさい奴に捕まったもんだが、わざわざ嘘を教える
理由が有る訳でも無い、村の人間に聞いた話を
完結にカンダタに話す。

カンダタ「……うっ…うっ……いまどき恋に落ちた二人が
     種族を越えた愛を育む為に駆け落ちたぁ…
     泣かせる話じゃねぇか…」

 …………………そして、マジ泣きしていた。

マオ「死ぬぐらいの度胸があるなら、死ぬ気で母親を
   説得しろって話だな」

カンダタ「……うおぉおうぃ……うおぉおうぃ
     誰にも認められず…駆け落ちの果てに
     …地底湖に身を投げちまうなんてぇぇぇぇ」

 カンダタはハンカチを涙で濡らして号泣しているが、
マオの声は冷ややかだった。

マオ「地底湖の死体を引き上げるのって…かなり嫌だな
   水で死体が膨れてブヨブヨになっていそうだ
   『夢見るルビー』とやらを置いて自殺してくれていれば
   良いんだが」

カンダタ「……うおぉおうぃ……うおぉおうぃ
     エルフの女王様も、きっと…人間を誤解しちまって
     呪いを……ブビィイイイイィイイィイ………」

 カンダタが号泣しながら鼻をかむが…。

マオ「まるっきり逆恨みだな…
   よくもまぁそんなもんで女王の職務が務まる物だ」

カンダタ「……おめぇ…なんとも思わねェのか?
   どこまでもクールな奴だな、脳みその代りに
   氷でも入っているんじゃないか?」

マオ「思わない…同情する余地はまるで無いな
   その二人とエルフの女王とやらのせいで、この村は
   面倒な事になっているんだ」

 泣くだけ泣いて、カンダタは落ち着いたらしく。

カンダタ「……それで、話は戻って
   おめぇさんは、その女王を説得するってェ事か?」

マオ「話してはみるつもりだな」

カンダタ「なんのかんの言いながら
   おめぇはあのオルテガの弟子だよ」

マオ「あんな善人でも無いけどな」
0082創る名無しに見る名無し
垢版 |
2012/03/26(月) 00:17:01.82ID:yy+Wl0EG
 ◆◇◆◇ ノアニール半島:エルフの村 ◆◇◆◇

マオ「動くな!武器を捨てて!
   両手を頭の上に上げろ」

エルフの娘「ひぃっ!!」

 ノアニール半島の先端近くにある森の中、
エルフ達の村はその森の中にあった。
 村に入るなり、適当なエルフの一人に狙いを付けて
剣を抜きざまに首筋に当てる。

マオ「妙な動きはするなよ…
   抵抗する素振りを見せたり、大声を上げたら
   容赦なく殺す」

エルフの娘「たっ!助けてっ!」

カンダタ「ちょ!おめぇ!」

 首筋に誘惑の剣を当てたままエルフの娘の体をまさぐり
衣服の下からナイフを取り出す。

マオ「女王の居場所はどこだ?」

エルフの娘「泉の……奥の…建物……。」

マオ「よーし…案内しろ…
   …ただし…ゆっくりとだ…」

カンダタ「交渉じゃなかったのかよ!?」

マオ「これが私の交渉術だが…?」

カンダタ「これは脅迫って言うんだ!」

 カンダタが頭を抱えるが、何か間違った事をしただろうか?
第一、こう言った交渉はむしろ、カンダタのお家芸だとも
思うのだが。
0083創る名無しに見る名無し
垢版 |
2012/03/26(月) 00:20:03.00ID:yy+Wl0EG
なんか、回を増すごとに
話がどんどんチープになっていくな、
とりあえず、休日が終わるのでここまで
0084創る名無しに見る名無し
垢版 |
2012/03/30(金) 00:14:22.68ID:+e62wst3
エルフの女王「その娘を離しなさい」

 ふと…威厳のある声が響き、
十数人のエルフ達と共に、一人小奇麗な衣服をまとった
エルフが現れる。

 どうやらこいつが女王らしい。

 エルフ達は弓を構えて、マオへと狙いを定める。

マオ「貴様がエルフの女王か」

エルフの女王「もう一度言います、その娘を離しなさい」

マオ「…離してやっても良いが
   ノアニールの村の呪いを解いてもらおう」

エルフの女王「なるほど…
      それでこの村まで来た訳ですか
      ……………断ると言ったら?」

マオ「この集落が今日限りで無くなるかもな
   そちらと同じく、私も手段を選ぶつもりは無い」

カンダタ「なんでこうなるんだよ…」

エルフの女王「魂の中に荒々しい力を
      感じます…本気…なんですね」

マオ「けどまぁ…とりあえずアンタの命は最後にしてやるよ
   死なれて呪いが解けなくなっても困るしな」

エルフの女王「我々は人間如きに屈するつもりはありません」

マオ「10秒待ってやる…そこで気が変わらなかったら
   …一人づつこの集落の人口が減っていと思え」

人間の老人「……待って下され!!」
0085創る名無しに見る名無し
垢版 |
2012/03/30(金) 00:15:00.60ID:+e62wst3
 10カウントを始めようとした所で、老人に止められる
エルフの村の中にたった一人だけ、人間の老人が居たようだ。

人間の老人「貴方様がどんな方かは存じませんが
      この場は剣を退いてくだされ!」

カンダタ「……オメェは?」

人間の老人「私は…エルフの娘と共に駆け落ちした
      男の父ですじゃ…」

エルフの女王「まだ村に居たのですか…さっさと去りなさい」

人間の老人「この老いぼれの命ならいくらでも差し出します
      ですが、ウチの愚息のせいで人様の命だけは
      取らないでくださいませ」

 マオがエルフの喉元から剣を下げると同時に、
女王も弓を下ろすように合図する…。

マオ「行け」

 先ほど奪ったナイフを差し出すと、エルフの娘は
ナイフを受け取って、慌てて逃げ出す。

 ◆◇◆◇ エルフの村:村はずれ ◆◇◆◇

老人「お許し下され、旅の方」

マオ「許すも何も、許しを乞うのは
   ノアニール村の連中に対してだろう?」

人間の老人「その…通りですじゃ…
   なんとか、ノアニール村を元に戻すため
   こうして単身、エルフ達の村へ参ったのですが」

カンダタ「無茶しやがるぜ、じーさん…
   この辺りは結構狂暴なモンスターが出るぜ?」

老人「ですが…エルフの女王には聞き入れてもらえません
   女王は息子が女王の娘をたぶらかし、夢見るルビーを
   盗ませたものと思い込んでおるのです」
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2012/03/30(金) 00:15:26.48ID:+e62wst3

マオ「その夢見るルビーとは何物なんだ?」

カンダタ「俺は話には聞いた事があるぜ、赤子の頭ぐらいはある
   どでけぇルビーの塊なんだとよ、ただそのルビーは
   エルフどもの呪いがあって、覗き込んだが最後
   体が石みてぇに動かなくなるんだとさ」

マオ「そんなルビーを何故?」

カンダタ「なにはともあれ、価値はあるからな
   売り飛ばして新居でもおっ建てるつもりだったんじゃね?
   夢見るルビーとやらを取り戻せば、ひとまずは
   話を聞いてくれそうな気もするけどな」

マオ「手っ取り早く脅迫した方が早いんだろうけどな」

エルフの女王「貴女が何をしようと…
     我々は人間の脅しに屈するつもりはありません」

 話を聞いていたのか、エルフの女王は供を連れて
湖の畔にやって来る。

マオ「…………………盗み聞きか?」

エルフの女王「いつまでも我々の村から立ち去れない
     貴方達に注意しに来ただけです」

マオ「アンタの娘…アンって言ったか?男と逃げた上で
   地底湖に身投げをしたって話は聞いたか?」

エルフの女王「何を言い出すかと思えば、
     そのような下らない作り話、
     アンはそのような心の弱い子ではありません」

カンダタ「じゃー…証拠を見せれば納得するんだな?
   オメェの娘と男が地底湖でテメェの意志で無理心中したって
   証拠を見つければよ」

カンダタ「そうすりゃぁ…全部テメェの思い込み、
   人間に非は無ぇ以上、ノアニールを戻して
   ちゃんと詫びをいれるんだろうな」

エルフの女王「…………良いでしょう…」
0087創る名無しに見る名無し
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2012/03/31(土) 03:59:33.00ID:yfqbsbYS

 ◆◇◆◇ ノアニール西の洞窟 ◆◇◆◇

マオ「せいっ!」

ヴァンパイア「クケェーっ!」

 背中から羽根を生やした男のような魔物、ヴァンパイア達を
切り捨てつつ、マオとカンダタの二人は地底湖へと
歩みを進める。

カンダタ「こいつを見てみろ…
   古い松明だ」

 カンダタが指で示す先には随分古い松明の燃え残りが
地面に捨てられていた。

 どうやら…人が入って来たのは間違い無いようだ。

マオ「…………心中した二人のものか判らないが…先に進んだのか
   にしても、この洞窟は天井や横幅が広いのは有り難いが
   奥行は随分あるな」

カンダタ「狭かったら武器も振るえねぇからな
   おっと…こっちのルートは外れだ、さっきの
   十字路まで戻るぜ?」

 カンダタは書いていた地図に×印を記入すると、
歩いて来た道を引き返す。

0088創る名無しに見る名無し
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2012/03/31(土) 04:00:09.15ID:yfqbsbYS
マオ「聞きたかったんだが…なぜ
   お前はこの件に首を突っ込んだ?」

カンダタ「オメェに付いて行けって
   言ったのは、オルテガのおっさんだろうが」

マオ「そうではなくて…ノアニールの一件は
   お前にとってはどうでも良いだろう?」

カンダタ「確かにそーなんだけどよ、
   でも、それを言ったらオメェだってそうじゃねぇか」

 ──────全くだ…。

マオ「わ…私は…そのォ…
   寝付けなかったから、ただの散歩な…だけだ」

カンダタ「じゃー…俺も
   それでいいだろうよ…って…おろ?」

 洞窟を進むと、地底湖の近くに青い栗のような形をした
モンスターが4匹程集まっていた。

マオ「なんだって…こんな奥に
   スライムが?」

カンダタ「さぁなぁ…
   ほーら、どけどけ…踏み潰しちまうぞぉ?」

0089創る名無しに見る名無し
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2012/03/31(土) 04:00:37.36ID:yfqbsbYS
 カンダタが足でスライムを小突くと、スライムは
カンダタの足にかみつく。

カンダタ「いでぇっ!せっかく見逃してやろうと思ったのに
   テメェ!何してくれやがる!」

 斧を振るうがスライム達の動きは予想外に機敏であり、
4匹も居るのに、1匹も仕留める事が出来ない…。

マオ「一体…何を遊んでいるんだ?」

カンダタ「…いい加減にしやがれっ!」

 カンダタがようやくスライムの一匹を仕留めるが。

スライム「ピキー!!」

 残ったスライム達が吠えると、スライムの声が洞窟に
こだましてゆき…。

マオ「うわっ!?」

カンダタ「…仲間を呼びやがったのか!?」

 ありとあらゆる所から、スライムの声に応じた
スライムの仲間達が現れる…。

0090創る名無しに見る名無し
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2012/03/31(土) 04:01:00.03ID:yfqbsbYS
 この世界では見なかったが、マオには呼び出される前の
世界で、このタイプのスライムを見た事があった。

マオ「まさか…合体スライム!?」

カンダタ「合体スライムって何なんだ?」

 カンダタの声に応じるかのように、
スライム達が一つの箇所に集まり、積み重なっていく。

マオ「逃げろ!」

カンダタ「アイツら…何をしようってんだ?」

マオ「いいから!」

 スライム達に背を向けて、マオは走り出し、
カンダタがそれに続いて走り出す。
 やがて辺り一帯のスライムが全て集まり。

 ボン!

 冠を被った一匹の大きなスライムに変身する。

カンダタ「なんじゃありゃぁ!
     あいつら…合体しやがったぞ!?
     スライムってあんな事が出来んのかよ!」
0091創る名無しに見る名無し
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2012/03/31(土) 04:01:36.84ID:yfqbsbYS

マオ「キングスライムだ」

 巨体なスライムはバウンドしながら接近し、逃げる
カンダタを跳ね飛ばす…。

カンダタ「ぐはぁぁぁっ!」

 キングスライムの攻撃に跳ね飛ばされたカンダタに
さらに追撃を掛けようとする、キングスライム。

マオ「カンダタ!!」

 マオが剣を抜き、カンダタとキングスライムの間に
割り込む。
 幸いに洞窟の中は狭く、キングスライムは思った以上に
俊敏に動けないようでもある。

マオ「ハッ!!」

 マオはキングスライムの体当たりを躱して、巨体を深く斬り付けるが…、
キングスライムの体が白い光に包まれたかと思うと、切り口が
一瞬で塞がる。

マオ「…べホイミか」

 スライムの厄介な所は急所が無い所だ、力任せに粉砕出来れば良いが
その力は無い…。

カンダタ「おぅら!ベギラマァ!!!」

マオ「よせ、無駄だ!」

 カンダタの放った閃光呪文が空を切り裂き
キングスライムを両断するかと思われた…。
 しかし、キングスライムの手前で紫色の呪文に
包まれて霧散する。
0092創る名無しに見る名無し
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2012/03/31(土) 04:02:24.91ID:yfqbsbYS

カンダタ「呪文が利かねぇ!!」

マオ「走れ!逃げるしかない!
   細い通路に逃げ込めば撒けるかもしれない」

 カンダタを連れてマオは全力で走り抜ける、
背後からは冠を被った巨体スライムが凄い速度で
転がってくる。

カンダタ「避けろ!マオ!」

 カンダタが叫ぶと同時に、横に飛び
巨体スライムの体当たりを躱す…。

キングスライム「ピギー!!」

 巨体が洞窟の壁に激突し、天井から
ぱらぱらと破片が落ちる…。
 飛び退いた際に手放してしまったのか、
誘惑の剣が乾いた音を立てて転がる。

 戦いの音に誘われたのか…さらにモンスターが
通路の奥から出現する。

カンダタ「スライムの次は鉄の化け物が
    でやがった…!」

 青く輝くブルーメタルのボディ、勇者が着込んでいた
ロトの鎧やロトの盾と同じ材質、感情の無い一つ目に
右手に大振りの刀、左手にマウントされたボウガン。
 4足の足…殺人機械の名を冠するモンスター。

マオ「お次は、キラーマシンだと!?
   どうなっているんだ!」
0093創る名無しに見る名無し
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2012/03/31(土) 04:03:11.93ID:yfqbsbYS

カンダタ「無茶苦茶強そうだぞ、オイ」

マオ「前門のメカ、後門のキングスライムか」

カンダタ「ああ…俺様もここまでなのね…
    さようなら…俺の愛しい子分達よ…」

マオ「アホ言っていないで、戦えっての」

カンダタ「無茶言うなよ…
    こんな状況で…どーしろっていうのよ」

 キングスライム一匹相手にここまで苦戦している
と言うのに、キラーマシンまで出て来られると
流石に…旗色が悪すぎる。

 しかも…マオに至っては今は武器も持って居ない
丸腰状態なのだ。

マオ「カンダタ!なんでも良い!
   奴らを引き付けろ!」

カンダタ「分かった!おうおうテメェら…
   俺様を見やがれ!」

 カンダタが大声でモンスター達の気を引き、
マオがその間にキングスライムの横をすり抜けて、誘惑の剣に
向かって飛びつく。

0094創る名無しに見る名無し
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2012/04/03(火) 02:24:16.45ID:UEUWInk3

カンダタ「1番、カンダタ…
   とりあえず脱ぎます!」

 カンダタは自らのパンツに手をかける…。

 ───オマエ、パンツ一丁だろうが────。

 と言う、突っ込みをいれようとしたのか、しなかったのか
キラーマシンと、キングスライムはひとまずカンダタに
注目してはいる。

マオ「ハッ!!」

 マオは手にした誘惑の剣を高く掲げると、赤い光がキングスライムを
包み込む。

キングスライム「ピギー!?」

 赤い光…誘惑の剣には呪文…メダパニの効果がある…を
まともに受けたキングスライムは混乱し、キラーマシンに対して
襲いかかる。

カンダタ「おおっとぅ…!?」

 キングスライムとキラーマシンが争いはじめ、
マオやカンダタ達を相手にする余裕が無くなったよう見える。
0095創る名無しに見る名無し
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2012/04/03(火) 02:24:39.08ID:UEUWInk3
 キラーマシンの注意が逸れた隙に、マオはキラーマシンの背後に回り込み、
首の後ろのレバーを回す。
 重い音と共に、背後の装甲板が上下に開き人間が一人ぐらい入れるぐらいの
スペースがそこに現れる。

カンダタ「まさか…乗れるのか!?」

マオ「しばらく、スライムを引き付けていてくれ」

カンダタ「わかった!」

 カンダタにキングスライムを任せてキラーマシンの内部に滑り込み、
キラーマシンを自動操縦から手動操縦に切り替える。
 普通は魔王となるものの魔力で動き戦うはずだが、このキラーマシンには
なぜか主人となる魔王は居ないようだ。

 実際、動力源となる魔王の魔力が無ければ、やがて機内の魔力を使い果たし
勝手に止まるはずである、実際このキラーマシンは魔力が殆ど空だったりも
したのだが。

マオ「随分旧型のキラーマシンだが
   主は…誰なんだろうか?」

 疑問に思う所だが、今はそれどころではない…
人間にされてしまい、魔力も随分弱まったがキラーマシン一体動かすぐらいなら
なんとでもなるだろう。

 操縦桿を握り、魔力を流し込んでキラーマシンを再起動する。
0096創る名無しに見る名無し
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2012/04/03(火) 02:24:53.98ID:UEUWInk3

カンダタ「動きやがった!?」

マオ『よし!なんとかなりそうだ
   下がっていろ!』

 カンダタに下がるように指示し、キングスライムの前に出る。

キングスライム「ピギーっ!」

 キラーマシンを完全に敵とみなしたのか、キングスライムが突撃してくる、
マオはキラーマシンに攻撃を指示し…。
 キングスライムはたったの一撃で真っ二つに両断された。

カンダタ「おめぇ、どこでこんなのの動かし方を…」

マオ『背中に乗れ、このまま突破するぞ…』

0097創る名無しに見る名無し
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2012/04/03(火) 02:25:17.56ID:UEUWInk3
 ◆◇◆◇ ノアニール西の洞窟:奥 ◆◇◆◇

 キラーマシンを入手できたのは幸運だった、
動かす度にMPを消費するものの、キラーマシンの強さは
かなりのもので、敵と言う敵を片っ端から両断して行った。

 さらに、防水も効いているようであり、
水嵩が増した地下水の中も平気で歩いて行けるのだ。
 ややあって、広い部屋に辿り着く…広い湖のある部屋…地底湖だ。

カンダタ「…随分奥まで来たな」

マオ『……ここらが、最奥部か?…』

カンダタ「いくらなんでも、これ以上は素人には
     入り込めないだろうよ、おっと…そこに
     上がれそうだぜ」

 カンダタの指す方向にキラーマシンを上陸させ、
マシンの照明で辺りを照らしたままマシンの外に出る。

マオ「綺麗な所だな…」

カンダタ「マオ!こいつを見てみろ
    遺書だ!」

 カンダタの言う辺りを見てみると、遺書と書かれた
手紙が置いてある、その手紙の重しに使われているのは
赤い巨大な宝石。

カンダタ「すんげー、でっけールビーだ」

マオ「これが、夢見るルビーか」

0102創る名無しに見る名無し
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2012/04/12(木) 00:03:28.46ID:Ns9sAMNE
サンクス、
 少なくとも、ノアニール編は終わらせたいので結局書いた、
風邪でバグっている分は大目に見てください。
//------------------------------------

 カンダタがキラーマシンのライトにルビーを
翳すと、赤く輝く。

カンダタ「すっげぇ…本物だ…
    ガラスなんかじゃねぇ…このサイズで本物のルビーだ」

マオ「どれどれ?」

 マオがカンダタの持つルビーを見ようとルビーに顔を近づけるが。

カンダタ「あぶねぇ!」

 カンダタはルビーを素早くマオから離す。

カンダタ「あまり顔を近づけるな…
     呪いが掛かっているらしく、体がマヒして動かなく
     なっちまうぞ?」

カンダタ「なぁ?こいつ返しちまうのか?」

マオ「ネコババする気かよ」

 ルビーと共に置かれた手紙を手に取ってみると、
やはり遺書のようだ、空気中の水分を吸って、
文字がやや滲んでいるが読めない訳でもない。

0103創る名無しに見る名無し
垢版 |
2012/04/12(木) 00:04:24.30ID:Ns9sAMNE
────お母様 先立つ不孝を お許し下さい。
私達はエルフと人間、この世で許されぬ愛なら
せめて天国で一緒になります────。

                  アン

カンダタ「うおおおおおぉぉぉぉおぅ…おうおう!」

 そして…カンダタが号泣。

マオ「やかましい奴だ…ん?」

カンダタ「………………なんでぇ」

マオ「見てみろ」

 カンダタが水面を覗き込んでみると、人型の
ようなものが水中に沈んでいるようなのが見て取れる。
 どうやら、自殺したエルフの娘と人間の男らしい。

カンダタ「ひえぇ…
     ナンマンダブ!…ナンマンダブ!」

マオ「よりにもよって入水自殺か
   浮かんでこない辺り、石でも抱えて飛び込んだみたいだな」

 遺書とルビーを袋に入れて、キラーマシンに再び乗り込む、
ここでの用事は済んだ、さっさと帰ろう。

カンダタ「仏さんはどうするんだよ?」

マオ「天国とやらで一緒になるのがお望みなんだろ?
   このまま死体を持ち帰っても、別々に埋められるのが
   オチだ」
0104創る名無しに見る名無し
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2012/04/12(木) 00:09:10.29ID:xlPMrAQ+

 ◆◇◆◇ ノアニール半島:エルフの村:女王の家 ◆◇◆◇

 再びエルフの村に戻るが、エルフ達の態度は冷ややかだった
他のエルフ達に関しては敵意や武器を向ける者も居たが、
実際に攻撃して来る者は居なかった。

エルフの女王「また、貴方達ですか、まだ何か言い足り無いのですか?」

 うんざりしたような口調で言葉を吐き棄てる女王、
道具袋から夢見るルビーを取り出し、テーブルの上に置くと
女王の顔色が変わった。

カンダタ(あぁぁ……さようなら、俺のルビー)

 ついでに言うならば、未練たらたらなカンダタの顔も
印象的だった。

エルフの女王「これは!夢見るルビー!
       一体どこでコレを!?アンは一体何処に」

マオ「それについては、お前に手紙を預かってきている」

 マオが遺書を取り出すと、女王は奪い取るかのように手紙を
受け取り素早く目を通すと、見開かれた瞳から大粒の涙が
零れ落ちる。

エルフの女王「これは…確かにアンの字…
       そんな…なんで…」

エルフの側近「女王様…お気を確かに」

エルフの女王「一体…なんでこんな事を…
       可哀そうなアン、人間に騙された上に
       殺されてしまうなんて」

0105創る名無しに見る名無し
垢版 |
2012/04/12(木) 00:09:34.02ID:xlPMrAQ+
マオ「殺したのはお前だ」

 ───パァン!!

 乾いた音が室内に響き、音が戻ると同時に
マオは女王に頬を叩かれた事を自覚する。

エルフの女王「アンは貴方達人間に騙されたんです!」

マオ「…………そういう思い込みが
   お前の娘を殺したんだ」

エルフの女王「…………………っ!」

マオ「それでもアンタ達が人間を避けようが、嫌おうが
   私には知った事ではないが」

マオ「これで何も変わらないとしたら、
   無駄死にだったって事だろうな、お前の娘も
   人間の男も」

カンダタ(…………よ…容赦ねぇ〜)

 女王に背を向けて部屋を出ようとするが。

エルフの女王「………待ちなさい」

 女王に呼び止められ、棚から袋が取り出され、
机の上に置かれる。

エルフの女王「これを…」

マオ「これは…一体?」

0106創る名無しに見る名無し
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2012/04/12(木) 00:10:05.97ID:xlPMrAQ+
 袋を手に取り、開けてみると金色の粉のようなものが
ぎっしりと詰まっている。
 まるで金粉のような綺麗な細かい砂のようなもの。

エルフの女王「目覚めの粉です、これがあれば
       ノアニール村の人達がかかった呪いが解けるでしょう」

 マオは女王を見るが、首を横に振り袋を受け取らずに
玄関から出て行く。

カンダタ「オイ!貰って行かなくて良いのかよ?」

マオ「それはお前が自分で始末を付けろ
   娘達への償いは、お前がやるべきだ」

 ◆◇◆◇ ノアニール〜カザーブへの街道 ◆◇◆◇

 空が白み始めてきた、そろそろ夜が
明けようとしているらしい。

 キラーマシンの肩の上に乗ったカンダタが、
ぼやいていた。

カンダタ「あー…もったいなかったよなぁ…
     あの馬鹿でかいルビー」

マオ「まだ、未練があったのか…」
0107創る名無しに見る名無し
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2012/04/12(木) 00:11:20.23ID:xlPMrAQ+

カンダタ「だってよ!単体であんな馬鹿でかいルビー
     売り飛ばせば100万ゴールドは楽に手に入ったぜ?」

マオ「じゃぁ、今からでも盗りに行ってくるんだな」

カンダタ「いくら盗賊でも、
     ンなだっせぇ真似出来るかよ」

マオ「……………お…?」

 キラーマシンのバックカメラが
不自然な光をとらえる。

 マオはキラーマシンを停止させ、不自然な光が
空に立ち上る方へとカメラを向ける。
 空高く…金色の光の柱が立ち上り、
金色に輝く粉のようなものが、空から降り注いでる。

カンダタ「アレは…ノアニールの方じゃねぇか!」

マオ「………………目覚めの粉。」

カンダタ「これで、村の連中も目を覚ますな
     ったく報われねぇよなぁ、結局タダ働きじゃねぇか」

マオ「今からノアニールに行って、
   カンダタがやりましたって、大声で騒いでくるんだな
   上手くすると、村長から謝礼ぐらいもらえるかもな」

カンダタ「そんな格好悪い真似出来るかよ」

 マオは再びノアニールに背を向けてキラーマシン動かす、
オルテガの待つであろうカザーブ村へと。
0108創る名無しに見る名無し
垢版 |
2012/04/12(木) 00:16:28.29ID:xlPMrAQ+
締めが微妙だったけど、
やっと、ノアニールの話が終わった、
次はイシスとアッサラームの予定
アッサラームと言えば、商人とぱふぱふの
街・・当時、ぱふぱふの意味知らなかったなぁ

で、例によって全然番号が消化できていない。
まだ>>107

それでは薬飲んで、風呂入って寝ます
0110創る名無しに見る名無し
垢版 |
2012/04/12(木) 23:24:22.87ID:xlPMrAQ+
サンクス、風邪が悪化した(ぇ
でも、折角(?)風邪ひいたので、風邪をネタに
1話書く
0111創る名無しに見る名無し
垢版 |
2012/04/12(木) 23:52:15.51ID:xlPMrAQ+
とは言え、作中の症状程
深刻な訳でも無いのだが。
//-------------------------------------
 ノアニールから、カザーブ村へと向かったが
オルテガは戻っておらず、そのままキラーマシンに
乗ってロマリアへと南下する。

カンダタ「あーあ…
    俺もこれでこの世の見納めか」

 遠目に見えてきたロマリアの街を見て、
カンダタは盛大に溜息をついた。
 それでも逃げ出さない辺りが、この男らしい
と言えばらしい。

カンダタ「よう…さっきから何を黙っているんだよ
     こちとら、年貢の納め時なんだ、少しぐらい
     話し相手になってくれよ」

 キラーマシンの肩に乗ったカンダタが空を見上げながら
マオに語りかけるが、返事が無い。

 ……………………ブゥウゥゥゥゥゥゥウン……ガクン。

 突如キラーマシンの動きが停止し、カンダタは地面へと
放り出される。
 
カンダタ「ってぇ…何をしやがるんだ!」

0112創る名無しに見る名無し
垢版 |
2012/04/12(木) 23:52:42.13ID:xlPMrAQ+
 カンダタが抗議の声をマオに投げかけるが、返答は無い、
キラーマシンのモノアイからは光が失われ、まるで鉄の人形の
ように動く気配が無い。

カンダタ「おい!、嬢ちゃん?」

 やがて、背後のハッチが上に開き、中からマオが
這いずり出して来る。

カンダタ「……どうしたんだよ!顔色が悪いぜ
     うわ…熱までありやがる」

マオ「………………カン……ダタ………ゲホゲホ。」

 マオの声はガラガラ声で喋るのも辛そうだ、
カンダタはマオの喉や熱を軽く診察し…。

カンダタ「…この馬鹿!…風邪を拾いやがったな
     そのままカザーブからずっと運転してやがったのか」

マオ「…そうか、これが風邪か
   結構しんどいものだな。」

カンダタ「おめぇよぅ…馬鹿は風邪ひかないって言葉
     知っているか?」

マオ「………馬鹿とは……心外だな……ゴホゴホ。」

カンダタ「正しくは馬鹿は風邪をひいても
     気が付かないって意味だ」

マオ「カンダタ、お前は先へ行け…ゴホゴホ
   私は少し休んでから追いかける」
0113創る名無しに見る名無し
垢版 |
2012/04/12(木) 23:52:58.88ID:xlPMrAQ+

カンダタ「とにかく、ロマリアはもうすぐそこなんだ」

 カンダタは、キラーマシンの背後に括りつけられていた
荷物をマシンのコックピットに素早く放り込む。

カンダタ「ほら、マシンをロックしてくれ
     俺には出来ないんだから」

 キラーマシンの開閉を含む全ての操作は普通の人間には
行えない、元魔王であるマオには人間でありながら操作できるようだが。

 カンダタの言うままにキラーマシンのハッチを閉じて
ロックを掛ける。

カンダタ「ちょっと待ってな」

 カンダタは斧を肩に抱えてニヤリと笑うと、
その辺りの木の枝やら、茂みやらを斧で刈り取っていく。

 刈り取った草木をキラーマシンに括りつけて、キラーマシンを
完全に覆い隠す。
 一刻程してカンダタは満足し、斧を腰のバンドに括りつける。

カンダタ「ほれ、おぶさりな
     ロマリアはすぐそこなんだ、なんとかなるだろ」

マオ「死刑囚に助けられるとはな…ゴホゴホ
   逃げ出すチャンスだろうに」

カンダタ「バーカ言っているんじゃねぇよ、可愛い子分のためだ
    それに、俺って紳士だからな」

マオ「……良く言う」

カンダタ「しんどいなら寝てろ、着いたら起こしてやるからよ」

 しかし…つくづくも人間とは不便なものだ、
爆発的な強さや賢さを持ちながらも、その実は酷く脆弱だ。

 カンダタの背中に揺られながら、マオは静かにめを閉じた。
0115創る名無しに見る名無し
垢版 |
2012/04/13(金) 23:26:59.92ID:E+Nl1eBo

 ロマリアに戻ると、マオは宿屋の自室へと直行となった、
さしもの回復呪文も病気には効果が無い、むしろ病原菌を
活性化させてしまう可能性もある。
 徳の高い僧侶の場合、どんな重症でも立ちどころに回復できるが、
病気の場合は別であった。
 よって、ロマリアでも

医者「キミ…回復呪文か何か使ったかね」

マオ「…ホイミを………何度か…」

医者「冒険者の端くれなら覚えておきたまえ、
   病気になった場合、回復呪文は厳禁だ、
   それと、体調が少しでも悪かったら街の外には
   出ないのが当たり前じゃ」

マオ「……面目ない…」

オルテガ「この俺とした事が、そんな基本的な事を
    教え忘れるとはな」

カンダタ「この世間知らずの嬢ちゃんは、
    とんでもねぇ事をするくせに、子供でも知っている事を
    知らなかったりしやがるな」

 背後でオルテガとカンダタが呆れ顔で言い合っている。
0116創る名無しに見る名無し
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2012/04/13(金) 23:27:26.03ID:E+Nl1eBo

オルテガ「とにかく、お前は大人しく養生して居ろ
    城へは、俺とカンダタで行く、
    細かい手続きは全部終わって、後は
    陛下から沙汰が降りるのを待つのみだ」

カンダタ「んじゃーな、達者でなお嬢ちゃん
    先に地獄へ行っているわ、また会おうぜ」

 死刑になると言うのに、カンダタはまるで
お使いにでも行くように気軽に挨拶してカンダタは
出て行こうとする。

マオ「…………………カンダタ」

 その背に声を変えると、カンダタは一瞬歩みを止める。

マオ「…………………………ありがとう。」

 礼を言うとカンダタばかりか、オルテガとマギーも
驚愕の顔を見せる。

オルテガ「…マ…マオが…」

マギー「笑っただって!?」

カンダタ「やっぱおめぇ…そうしている方が可愛いぜ、
    じゃぁな」

 そして今度こそ、カンダタは両手に腕輪をされたまま
オルテガと共にロマリアの城へと向かっていく。

 マオは城へと続く道を窓から見下ろし、兵士に連行されていく
カンダタの背中をいつまでも見送っていた。
0117創る名無しに見る名無し
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2012/04/13(金) 23:28:08.74ID:E+Nl1eBo
折角のシーンももう少し感動を与えるように書けない辺り、
三流だなぁ、俺。
んじゃ、寝る…おやすみ。
0119創る名無しに見る名無し
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2012/04/14(土) 12:52:01.33ID:sC2u9jLs
 ありがとう、どこまで出来るかわからんけど
誰かが見てくれている限り頑張ってみるよ
//---------------------------------------------
 ◆◇◆◇ ロマリア城:玉座の間 ◆◇◆◇

国王「おおっ!オルテガ殿
   よくぞ戻られた」

国王「そやつが国賊、カンダタであるか
   よくぞ捕えてくれた、礼を言おう。」

オルテガ「先日ご報告させて頂いた通り、
   この者、カンダタは自ら金の冠を返上し、
   自首と引き換えに部下の身柄を解放する事を
   希望しております、何卒…寛大な処置を」

国王「ふむ…………。」

 国王は顎に蓄えた髭を指で摩り、暫し思案する。

国王「カンダタよ、オルテガの言い分に相違は無いか?」

カンダタ「特にねぇな…
    約束通り俺の首と奪った財宝はくれてやる、けど
    部下の自由は保障してもらうぜ?」

オルテガ「敬語!」

カンダタ「…もらう…です。」

 脇腹を突くオルテガに、慌てて語尾を付け足すカンダタ。

カンダタ「全部は俺…いや…私が主犯だ…です、
     あいつらは関係無い…です。」

国王「盗賊は例外なく、斬首刑じゃ…」

国王「……しかし…、アリアハンの勇者と呼ばれた
   オルテガの名に免じて、条件付きではあるが
   部下共の釈放を許可しよう」

オルテガ「寛大なるご配慮、感謝します」

国王「首領カンダタの処刑は一週間後、
   ロマリアの中央広場にて執行する!
   異議の有る者は?」

大臣A「異議なし!」

大臣B「異議なし!」

 ………………。

国王「よって…これにて裁判は閉廷!」
0120創る名無しに見る名無し
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2012/04/14(土) 13:20:09.82ID:sC2u9jLs

 バァン!!!

 勢い良く謁見の間の扉が開かれ、黒髪の女が
乱入してくる。

マオ「異議あり!………ゲホ…ゲホ……」

オルテガ「マオ!」

カンダタ「おめぇ…宿屋で倒れていたんじゃねぇのかよ!」

 寝間着のまま上着をひっかけて飛び出した来たのだろう、
酷い姿だった。

マオ「…国王陛下…この様な姿で謁見するご無礼を
   お許し下さい…ゲホ…ゴホ…!」

国王「お主は…確かオルテガ殿の弟子の
   マオ殿?」

マオ「この者…カンダタは、ノアニールにてエルフ族を説得し
   昏睡事件を解決した功績者にございます…ゴホ」

 倒れそうになりがらも言葉を吐き続けるマオ、オルテガに肩を
貸してもらい、なんとか意識を繋ぎ止める。

マオ「さらにカザーブ村よりロマリアに戻る際、
   病気に冒された私を助けてくれた命の恩人にございます」

マオ「何卒…処罰の再考を…」

 …ガヤガヤ……ガヤガヤ…。

大臣A(ノアニールの昏睡事件?)

大臣B(先日にノアニールの住人が目を覚ましたとか報告を受けたが)

0121創る名無しに見る名無し
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2012/04/14(土) 13:20:43.31ID:sC2u9jLs
国王「静粛に!静粛に!」

カンダタ「そいつは俺だけの功績じゃねぇよ、
     そこに居る嬢ちゃんが動かなければ、俺は何もしなかったぜ?」

国王「そにかく…その件について、報告せよ
   …………マオ殿…は辛そうだから、被告人カンダタ…
   貴様が証言するが良い」

カンダタ「いいのか?俺が有利になる証言をするかもしれないぜ?」

国王「構わぬが…尋問した上で…故意による嘘だと知れた場合、
   即刻貴様の首を跳ね飛ばしてくれるわ」

カンダタ「おー…怖い怖い…」

 カンダタが証言し、国王や大臣がマオに確認を促し
マオが頷いて肯定して行く。
 たまに、カンダタに尋問が入り…カンダタの知らない事などを
マオが補足して行く。

 一通りの証言や尋問が終了し…、国王は再び髭を摩る。

国王「なるほど…の…
   ノアニール昏睡事件のあらましについては、粗方
   理解した、全てでは無いがこの者の功績はあるようだ」

大臣B「ですが陛下!城に忍び込んだ賊を
    無罪放免にしたとあっては、国のメンツに関わりますぞ」

騎士A「しかし…功績があるにも関わらず
    それを考慮せず処刑をしたとあっては、それこそ
    民にしれたら」

大臣A「いや…今回の裁判は傍聴人は居ない
    この場に居る者が閉口すれば済む話ではないか」

騎士B「貴様!誇りある騎士の国ロマリアが
    真実を覆い隠そうなどと、許されるはずも無いだろう!」

国王「……待て…待て…………
   静粛に!静粛に!」

 大臣や文官や騎士達を国王は片手で制すると、
ざわめきが収まる。
0122創る名無しに見る名無し
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2012/04/14(土) 13:21:10.43ID:sC2u9jLs

国王「……如何思われるか?オルテガ殿
   第三者たるお主の意見を聞きたい」

オルテガ「…そうですな…
    法は法…いくら功績者としても、特例を認め
    守るべき法を曲げては示しがつかないでしょう」

国王「……………ふむ…して?」

オルテガ「しかし…この者の戦力は相当なもの…
    未熟とは言え、私の弟子マオを一度は追い詰めた
    者にございます」

オルテガ「この者の命、このオルテガが預かって
    よろしいでしょうか?
    かねてよりお話のあった魔王討伐の件、
    この者を連れて行きたいと存じます」

マオ(魔王…討伐?)

 そんな話は初めて聞いた、しかし…アリアハンの勇者と
呼ばれるオルテガの事だ、ロマリア国王からも内々に依頼を
受けていても不思議ではない。

大臣B「しかし…それではこの者が逃げ出す可能性も」

オルテガ「その時はこのオルテガの首
    持って失態を償いましょう
    無論、本人にその意志があればですが」

カンダタ「オイオイ…おめぇはそれで良いのかよ…」

マオ「不足でしたら……ゴホゴホ…
   …私の首も預けましょう…」

カンダタ「嬢ちゃん…オメェまで…」

国王「良いだろう!選ぶが良い!カンダタ
   一週間後に公開処刑されるか、それとも
   死を覚悟して魔王討伐の旅に付き合うか」

カンダタ「まったく…このお人よしどもがよ
     いいぜ?どうせ死ぬんだ…地獄の果てまで
     付き合ってやるよ」

国王「良かろう!カンダタの処罰は保留!
   身柄はオルテガ殿とマオ殿で預かるものとする!
   本日はこれにて閉廷!」

 カァン!

 国王の振りかざしたハンマーが心地よい音を立てて
裁判が終了する。

0123創る名無しに見る名無し
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2012/04/14(土) 13:54:30.42ID:sC2u9jLs

 ◆◇◆◇ 宿屋2F:マオの自室 ◆◇◆◇

マギー「…………………39.7℃………」

 体温計を見て、そこに表示された温度を
マギーが読み上げる。

マギー「……見事に悪化したわね…
    部屋を抜け出して、城まで全力疾走すれば
    そりゃ、風邪も悪化するわ」

マオ「…………………申し訳ない…」

マギー「そりゃ、アンタの命の恩人だけどさ
    同時に命を奪おうとした敵だったんでしょ?
    なんだってそこまでして、助けに行ったんだか」

マオ「……………良くわからない」

 魔王時代なら、人間なんて一晩で村毎滅ぼすのは
当たり前だった、女子供であったとしても、老人だったとしても
そこには関係ない。

 殺戮…と言うよりも、戦争だったのもあるが
人や部下の死は当たり前だったし、作戦遂行のためには
仲間に生きては帰れない命令を下した事もあった。

 長く生きていた間にはその中には親友や兄弟の命ですら
含まれる。
 自らの病気を悪化させてまで仲間の命を助けに行く、
昔では絶対考えられなかった。
 風邪で思考が鈍っているせいか、それとも脳の構造が人間の
女になったせいだろうか?

0124創る名無しに見る名無し
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2012/04/14(土) 13:57:01.67ID:sC2u9jLs

マギー「……とにかく、今日は大人しく寝てな
    次に抜け出したらロープで縛りつけるからね」

 タオルを絞ってマオの額に乗せ、マギーは部屋を出ようと
扉を開ける。

 ドドドド………………。

 ドアを引くと、ドアの隙間から聞き耳を立てていたで
あろう、カンダタの子分達が倒れこんでくる。

マギー「………………あんたら…。」

子分A「マギーさん!姐さんは大丈夫ですかい!?」

子分B「お…俺、果物買ってきました」

子分C「俺は風邪薬買ってきやした」

 どうやら、風邪を押してカンダタを弁護に行った事で
カンダタ子分達に気に入られたらしい。

カンダタ「…おめぇら…
    仕事ほっぽり出して、こんな所で何してやがる!」

子分達『親分!?』

カンダタ「油売って売ってねぇで、戻らねぇか!」

子分A「そういう親分だって…油売っているじゃねぇっすか
    ずりぃっすよ、俺達だってたまには姐さん拝みたいっすよ」
0125創る名無しに見る名無し
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2012/04/14(土) 13:57:19.06ID:sC2u9jLs

 ゴチン!!

 口答えする子分の頭に、カンダタの拳が飛んだ。
子分Aの目から星が飛んだような気がする。

カンダタ「とにかく、代表して俺が見舞うから
     オメェ達はさっさと仕事に戻れ!
     その果物と薬はちゃんと渡しておいてやるからよ」

子分C「ええっ!薬って高かったんすよ」

カンダタ「もう一発欲しいか!?」

 カンダタが拳を振り上げると、子分達の顔が青ざめ。

子分達『うわぁぁぁぁあん…
    親分のおたんちーん』

カンダタ「あんだとぅ!?」

 そして、蜘蛛の子を散らすように子分達が逃げて行く、
子分達が居なくなり、カンダタも大人しく見舞うだろうと踏んだマギーは
階段を下りて戻っていく。

カンダタ「ったくあいつらは…………
    すまねぇな、騒がしい野郎どもで」

マオ「……慕われているんだな」

カンダタ「まぁ…な、ああ…
    これ子分どもから差し入れだ」

マオ「……礼を言っていたと、伝えておいてくれ」

 薬と果物をテーブルの上に置き、近くの椅子に腰を下ろす。
0126創る名無しに見る名無し
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2012/04/14(土) 20:54:54.25ID:sC2u9jLs

 マオは薬を手に取り、口に含んで水で飲み込む。
苦い薬に顔をゆがめるが、良薬はそう言う物らしい。

カンダタ「礼を言うのは俺の方だ
     おかげで首が繋がった」

マオ「礼なら師匠に言ってくれ、
   結局は師匠の名で助かったようなものだ」

カンダタ「おかげで、魔王退治に行くハメになっちまったがな」

マオ「…………………魔王退治…か。」

 小さく呟いてから、マオはカンダタになら
全てを明かせるだろうと、決意を決める。

マオ「カンダタ…魔王ってなんだと思う?」

カンダタ「そりゃ…おめぇ…人類の敵だろ…
    奴さんのおかげで、人間はボロボロ死んで行っている
    もっとも、規模は違えど…俺達盗賊も
    似たようなもんかもしれねぇけどな」

マオ「人類の敵…ね…
   けど、魔王や魔物にしてみれば人類こそ自らの種族や土地を荒らす
   害悪と思っているんだろうな」

カンダタ「まぁ…そうかもしれねぇなぁ」
0127創る名無しに見る名無し
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2012/04/14(土) 20:55:45.50ID:sC2u9jLs

マオ「となると、人間の王や勇者が…
   魔物にとっての魔王って事になる、魔物達も死にもの狂いで
   勇者…すなわち魔物から見た魔王を討伐しようとするだろう」

マオ「仮に…人間が魔物との戦争に勝利したら
   どうなると思う?」

カンダタ「そりゃ…少なくとも、魔物の脅威は無くなるだろうな」

マオ「そうだな、そして…今度は
   魔物に向けられていた武器や呪文、兵器が
   人間同士の争いに向けられるだろう」

カンダタ「そう…だろうな…
    俺も盗賊やって金持ちやら貴族やらを見て来たけど
    人間の欲ってのは、無限だからな」

マオ「魔物側にしても同じこと、
   現に人間の居ない魔界では、魔族や魔物同士の
   権力争いや覇権争いが絶える事は無い」

カンダタ「マオ…おめぇ………」
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2012/04/14(土) 20:56:53.55ID:sC2u9jLs

マオ「魔物同士で戦うよりも脆弱な人間を倒して土地を奪う、
   やがて…自らより弱い人間が居なくなったら、自らより
   弱い魔物を倒して奪う。」

マオ「かといって、戦いや争いを否定する事はできない…
   人間や魔物が使っている便利な呪文の数々は、戦う為に
   生み出された物だ、戦いが無ければ製鉄技術すら
   生み出されなかったかもしれない…」

マオ「戦いは本能だ、否定する事は出来ないし、
   戦いを否定されたとしたら文明は緩やかに滅んでいく」

 薬が効いてきたのだろうか、マオの表情に眠気が降りてくる。

マオ「結局は…神の手のひらの上…
   ………私達…魔王や…人間は…どこまで戦えば…良いん…
   だろう…な………」

 カンダタは眠りに落ちたマオから薬の瓶を受け取り、
再びテーブルの上に置く。
 額の上のタオルを取り、水で洗ってから搾り再び額に乗せる。

カンダタ「俺はよ…もう決めてんだ
    例え、世界中の連中に後ろ指さされても、テメェらに
    齧りついていくってよ
    魔王でも勇者でもロマリア軍でも喧嘩を売れっつーなら、
    そうするし、神を殴り飛ばせっつーなら、してやるよ」
0129創る名無しに見る名無し
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2012/04/14(土) 20:57:20.52ID:sC2u9jLs

 ◆◇◆◇ 宿屋の前の広場 〜一週間後〜 ◆◇◆◇

マオ「せいっ!はっ!」

 カラン…カラン……

 空中に放り投げられたマキをマオの剣が片っ端から
両断して行く。

カンダタ「1498…1499……これでラストだ!」

マオ「はいよ!」

 カンダタが宙に放り投げたマキをマオの剣が両断する…。
綺麗に均等のサイズに割られた最後のマキが地面に落下した。

マオ「ふぅ…これで、ようやく全盛期!」

マギー「……ほい、お疲れ!…完全に体力が戻ったみたいね」

 マギーが放り投げたタオルを受け取り、汗を拭きとる。
病気自体は直ぐに治ったのだが、冒険の最中に風邪がぶり返したら
薬草は使えても、回復呪文が使えなくなったりする大変な事態になる。

 体力を戻すのと、風邪が抜けるまでの大事を取って一週間、
ロマリアの宿屋に滞在していた。

マギー「……それと、コレ…
    オルテガさんからの手紙」

カンダタ「旦那から?なんだって?」

 マギーから受け取った手紙を一読し、カンダタに渡す。

マオ「イシスに着いたってさ」

カンダタ「へぇ…無事についたのか」
0130創る名無しに見る名無し
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2012/04/14(土) 20:57:56.26ID:sC2u9jLs

 マオが養生している間、オルテガは先に砂漠の国イシスへ向かって
旅立っていた。
 魔王の城…バラモス城は山に囲まれた先にあるため
陸路からは容易に潜入できない…、したがってイシス王家に伝わる
熱気球を借り受ける事になり、熱気球の準備とイシス女王の協力を
取り付ける為、一週間程前に出発した。

子分A「姐さーん!!…………げ、親分…」

カンダタ「なんだ、その『げ、親分』ってのぁ」

 何か包みを持って現れるカンダタの子分達、
一抱えするほどの大きなもののようだが。

子分A「姐さんの為に、防具屋に拵えてもらいやした
    俺達の礼の代りっす、使ってやってくだせぇ」

マオ「私に?」

 包みを解いてみると、中から綺麗な鎧が姿を現す…
白のレザーで出来ており、胸の部分のみ金属の
プレートで補強されてた上、模様まで彫金されている…。

マギー「…随分綺麗な鎧じゃないかい…」

子分A「姐さんの為に、防具屋に拵えてもらいやした
    俺達の礼の代りっす、使ってやってくだせぇ」

 装着してみると、今までの革の鎧よりも軽いぐらいだ
それでいてかなり頑丈な作りになっている。
 動きも全く邪魔にならない…、さらに白のマントもある。

子分B「こっちのマントはある程度の炎のブレスを
    防ぐ事もできまさぁ」

マオ「これって…凄い値段したんじゃないのか?」

子分C「……いいんす…いいんすよ…
    どうせ塔から持ち出した親分のへそくり…じゃなかった
    俺らの気持ちっすから」

マオ「ありがとう、大事に使わせてもらうよ」
0131創る名無しに見る名無し
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2012/04/14(土) 20:58:34.29ID:sC2u9jLs

カンダタ「今一瞬聞き捨てならねぇ話が聞こえた気がしたが
     まぁいい…それよりも、俺の装備は無ぇのか?」

子分A「あー…はい…
    親分にはこれっす…」

 子分達が小さな包みを取り出す…。

カンダタ「ず…随分ちいせぇが…
     大きさじゃネェよな…」

 包みを開けると、中から出てきたのは。

子分B「親分のステテコパンツ…洗っておきやした」

カンダタ「おうめぇぇぇえええぇらぁ!
     良い度胸だ、歯ぁくいしばれ!」

子分達『うわぁぁぁぁあん…
    親分がキレたぁぁぁぁ』

カンダタ「待ちやがれぇぇぇぇ!」

0132創る名無しに見る名無し
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2012/04/14(土) 20:59:22.20ID:sC2u9jLs

 ◆◇◆◇ ロマリア〜アッサラームの街道 ◆◇◆◇

 オルテガに遅れる事一週間後。

 アッサラームへ続く海岸沿いをを突き進むキラーマシン、
その後ろには幌付きの馬車の荷台のようなものがけん引されていた。

 カンダタ子分達が用意した中古の馬車の荷台を改良し、
キラーマシンが牽引出来るように改良したものだ。

 キラーマシンはマオが操縦し、カンダタはキラーマシンの
肩ではなく、荷台に乗っている。

マオ「こんな物まで用意してくれていたとは」

カンダタ「あいつら…よっぽとオメェの事が
   気に入ったらしいな」

 伝声管のようなホースで荷台に居るカンダタと
キラーマシンコックピットのマオが喋れるようにも
改良してくれていた。

カンダタ「けどまぁ、…キラーマシンの肩に
    乗らずに済んだのは素直にありがてぇな
    上下に揺られて吐きそうになっちまうぜ」

マオ「だったら、あんな顔の形が変わるまで
   殴らなくても」

カンダタ「オメェさんは良いぜ?
    そんな立派な鎧貰ってよ、俺なんてステテコパンツだぜ?
    しかも、新品ですらねぇ」

0133創る名無しに見る名無し
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2012/04/14(土) 20:59:58.62ID:sC2u9jLs

マオ「………ん?」

 牽引するキラーマシンが突如歩みを止め、それに引かれる馬車も
同時に停止する…。
 首を回転させて、カメラを拡大する…。

カンダタ「なんかあったのか?」

マオ「馬車が倒されている」

 キラーマシンが指差す先には、アッサラームとロマリアを繋ぐ
乗合馬車が横倒しになっていた。
 客であろう者達が、協力して馬車を立て直そうとしているようだが、
馬車は完全に横転しており、容易に立て直せないようだった。

カンダタ「よう!大変そうだな!」

馬車の客『うわぁぁぁぁっ!?、な…なんだありゃぁ!?』

 荷台からカンダタが手を振りながら声を掛けると、馬車の客達は驚きの声を上げた。
まぁ、大きいキラーマシンに牽引された妙な馬車を見れば
驚きもするだろうが。

カンダタ「そう、ビビる事ぁねぇって…
     動かしているのは人間だから安心しろよ」

乗客A「あんた…ロマリアから来たんかい?」

カンダタ「ああ…そうだ…
     その前に…ちと、馬車から離れていてくれや
     マオ!頼むわ!」

マオ「分かった」

 キラーマシンを馬車から切り離し(連結・切り離しが自由なジョイントを
付けてもらった)、馬車を掴むと、軽々と持ち上げ…
そのまま立て直す。

馬車の客『おおおおお…すげぇぇ…』

 感激の声を漏らす馬車の乗客達、乗客の中には踊り子やら
冒険者やら子供やら…とにかく色んな人間が居た。
0134創る名無しに見る名無し
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2012/04/14(土) 21:00:32.39ID:sC2u9jLs

カンダタ「ご苦労さん、ついでにちと休もうぜ
     熱いだろ、その中は」

マオ「ふぅ…確かにな…
   随分南下したから暑くて仕方が無い」

 乗り込み口のハッチを空けて、外に出る…
ノアニールやカザーブなどは北国だったため、むしろ快適だったが
南下すればするほど、キラーマシンの中は蒸し暑い。

商人「すげぇモンに乗っているな…
    どこで手に入れたんだ、そんなもの
    しかも武器がついているって、戦闘用か?コレ」

 言ってくるのは乗客の一人であるアッサラームの商人のようだ、
キラーマシンに随分興味をもったらしく…色々聞いてくる。

 まぁ…元々は勇者や冒険者を殺す為の、殺人機械などと
言える訳も無く、適当にお茶を濁す事にする。

カンダタ「で、どうしたんだよ…
     魔物にでも襲われたか?」

御者「それが…見た事ねェモンスターに襲われて
   ウマどもが慌てて暴れ出しちまったんだ」

マオ「見た事も無い…魔物?」

御者「すっげーでっけー豹の化け物でな、
   赤い鬣に、2本のデッカイ牙を持ってて
   背中に剣を背負っていた」

 赤い鬣に、2本のデッカイ牙の豹の化け物…
特徴を頭に思い描くと、一匹の魔物が思い浮かんだ。
0135創る名無しに見る名無し
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2012/04/14(土) 21:02:14.89ID:sC2u9jLs

マオ「………地獄の殺し屋……………
   キラーパンサー…………」

 背中に背負った剣の辺りは知らないが。

カンダタ「キラーパンサー?
    なにものだよ、そいつは」

マオ「その名の通り、馬鹿でかい豹のモンスターだ
   人間の頭がい骨なんて、一齧りで粉々だ
   その上かなり獰猛で、素早く力もある
   奴に出会えて命があるなんて、運が良かったな」

御者「代わりに、ウマどもが食われちまったよ」

マオ「…ウマが?…」

 珍しいな…これだけ鈍重そうな民間人の人間が居るというのに
わざわざ足の速い馬を狙うなんて…、
 馬が怪我でもしていたのだろうか?

 どうにも、そのキラーパンサーはここ数日前から
突如現れ始めたらしい、散発的に馬車を襲いかかり、
食べ物を奪って逃げて行くとか。

 話を聞くとさすがにカンダタも妙に思ったらしい。

カンダタ「死人が…出ていない?」
0136創る名無しに見る名無し
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2012/04/14(土) 21:03:19.59ID:sC2u9jLs

 そうなのだ、馬車の荷物とか徒歩で歩いていても、逃げ出す時に
投げ出した荷物とかは奪って行っても、人間を殺す事は
しないらしい。

カンダタ「どう思う?」

マオ「妙な話だな…妙な話だが…
   私達には関係無いな…」

カンダタ「それも…そうだけどな…
    とにかく、俺達はイシスへ向かう途中に
    アッサラームへ寄る途中だが…
    お前達はどうする?」

マオ「アッサラームへ行くなら、ついでに馬車を
   引いていってやるが…」

御者「すまない、よろしく頼むよ…
   俺達もロマリアに行く途中だったけど
   こうなった以上、一度アッサラームへ戻るさ」

 キラーマシンに馬車を2台連結し…歩き出す…
馬車1台ぐらいだったらなんともないが、2台も引き摺って
歩くとなると、さすがにパワーを使う…。

 本当はスピードを上げる事も出来たが、重いものを引いたまま
スピードを上げると、今度はキラーマシンを動かすための
MPが尽きてしまう…。

 アッサラームに着く前にマシンが停止するのは困り物だった。
そんな訳でゆっくりあるく為、外はすでに夜になってしまった。
0137創る名無しに見る名無し
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2012/04/14(土) 21:03:48.92ID:sC2u9jLs

マオ「まずいな…アッサラームまでもうギリギリだ
   MPが持たない場合、途中で野宿するしかない」

カンダタ「スピードを落としても良いから
   とにかくなんとか誤魔化してくれ」

マオ「分かっている」

 とはいえ…モンスター達に襲われても、わざわざキラーマシンを
使うまでもなく、カンダタや乗合馬車に乗り合わせていた冒険者達
の力を借りれば事足りる訳で。
 戦闘に関してエネルギーを使わないで済むのは
助かった…だが。

 ぐるるるるるる……………。

 キラーマシンの足が止まる…。

御者「ひいいっ!出た!!」

 馬車の乗客達は唸り声を聞いて縮こまる…
カンダタは斧を取り出し、伝声管に向かってどなりつける。

カンダタ「マオ!今のを聞いたか!?」

マオ「間違いない、キラーパンサーだ!
   なんとかしてみる…お前は乗客達を頼む」

カンダタ「気を付けろ!お前のMPは
     もう殆ど尽きているんだろ?」

マオ「分かっているが、こいつでないと
   闇夜のキラーパンサーには太刀打ちできん!」

 マオは馬車を切り離し、カメラを暗視モードに切り替える…
切り離すと同時にカンダタは馬車のブレーキをロックし…。
 松明に火を灯す

0138創る名無しに見る名無し
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2012/04/14(土) 21:21:16.01ID:xa1ccQR2

 カメラを回転させて…辺りを見回す…と…
突如闇夜に浮かび上がった二つの瞳…。

Kパンサー「ガウッ!!!」

 ギャリッ!!!!

 反応すらできず…キラーパンサーの爪が
キラーマシンの装甲板を引っ掻く…。
 予想以上の力強さと素早さに…キラーマシンの装甲は擦れて
火花が散る。

 幸い外装が少し削られただけで、深刻なダメージは無い…。

マオ「このっ!」

 近くに着地したパンサーをロックオンし、左腕のボウガンを発射する…
が、ボウガンの矢は宙を切り…闇の中へと消えていく。

Kパンサー「ウウウウウウウ…!」

 キラーパンサーは身を低くして…次の攻撃を繰り出そうと…
キラーマシンの周りを威嚇しながら、ぐるぐる回る。

マオ「一匹のみ………群れから逸れたのか…」

 背中に背負った大きな剣…それと耳の後ろに着けられた古びたリボン…
女物のリボンのようだ…。
 何匹も居たらアウトだっただろうが、一匹ならまだ互角にもちこせる…
ただ、キラーマシンのエネルギー残量は15%を切っていた。

 こんな事なら…魔法の聖水を買ってくれば良かった…。
後悔するが…今は無いものに期待しても仕方が無い。

Kパンサー「ガォゥッ!!!」

 再びキラーパンサーの猛攻が始まり…今度はその鋭い牙を
キラーマシンの剣で受け止める。
0139創る名無しに見る名無し
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2012/04/14(土) 21:22:33.78ID:xa1ccQR2

マオ「こんのぉおおおおおおぉっ!…」

 牙と剣が絡み合ったまま…マオは力任せにキラーマシンのスロットを
全開にし、近場の岩にキラーパンサーを叩き付ける。

Kパンサー「ギャゥン!!!」

 悲鳴を上げて…投げ出されるキラーパンサー…
手ごたえアリ!!

カンダタ「やった…野郎!
     骨か内臓を痛めやがった!」

Kパンサー「ヲォオオオオォッ!!!」

 しかし…キラーパンサーも必死なもの…
キラーマシンの背後にとり付くと装甲板に鋭い牙を突き立てて
こじ開けようとする…。
 手負いの獣は強いとはよく言った物、さしものキラーマシンの
装甲もメキメキ言い始める…。

 こいつ…賢い…!
中に人が乗っている事に気が付いているのか。

 だが…!

マオ「くらえぇっ!」

 キラーマシンの首を回転させて…とり付いたキラーパンサーに
レーザーを発射する!

Kパンサー「ギャ!!」

 キラーパンサーの毛皮を焼切り…たまらず距離を置くキラーパンサー…
しかし…。
0140創る名無しに見る名無し
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2012/04/14(土) 22:03:51.89ID:iYn/HKzr
連投しすぎて、怒られました。ので、今日は終了
反省します、おやすみなさい。
0141創る名無しに見る名無し
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2012/04/15(日) 10:00:19.92ID:TeA0/z+E

マオ「浅いか!?」

 キラーパンサーの背負った剣にレーザーは半分阻まれ、
決定打とはならなかった…その上…。

 ピーっ!

 エネルギー残量が0%になった警告音がコックピットに鳴り響く…
途端にモノアイから光が失われ、キラーマシンは停止する…。

カンダタ「くそったれ!限界か!」

 キラーマシンが停止した瞬間に…。
キラーマシンの左腕にキラーパンサーは齧りつき。

 バキン!!!

 左腕を根本からもぎ取る、左腕を肩下の付け根から持っていかれ
アッサラームの闇夜にキラーマシンの青白い火花が飛ぶ。

マオ「レフトアーム全損!やるな!」

カンダタ「やっべぇ!」

冒険者「あそこまでやったんだ!後は俺達で仕留めるぞ!」

 カンダタや冒険者達が馬車を飛び出そうとし…、キラーパンサーの
注意が逸れた瞬間に、マオもキラーマシンから脱出した。

マオ「よせ!奴はまだ動けるんだ!
   殺されるぞ!」

冒険者「けど、アンタのマシンももう動かないだろうが!」

カンダタ「………………!?」

0142創る名無しに見る名無し
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2012/04/15(日) 10:00:46.39ID:TeA0/z+E

 カンダタは近くで震える乗客の一人、アッサラーム商人が妙な指輪を
しているのに気が付いた…。

カンダタ「こいつは…いのりの指輪じゃねぇか…
     テメェ!隠してやがったな!」

商人「ひぃ!これはダメです!」

カンダタ「命にはかえられないだろ!寄こせ!!」

 乗客全員に抑え込まれて、アッサラーム商人から
いのりの指輪を毟り取る…。

カンダタ「マオ!!」

 いのりの指輪をマオに放り投げ、マオは
シングハンドでキャッチする。

カンダタ「コックピットに入って
     そいつを嵌めて祈れ!!」

マオ「祈るって何に!?」

カンダタ「何でも良いから!!」

 馬車の連中は害は無いと判断してか、再びキラーマシンを
標的にしようとする、コックピットに滑り込み
指輪を嵌めて祈る………。

 ヴィン…………

 再びキラーマシンに火が灯り、マシンのジェネレータが
駆動しはじめる…。

 さらに…祈る!祈る!祈る!祈る!…………。

 MPがどんどん回復して行き、
エネルギー残量70%…さらに、各部は異常なし…………よし、行ける!!

 キラーマシンの状態を立ち上がらせて、キラーパンサーと
再び対峙する…。
0143創る名無しに見る名無し
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2012/04/15(日) 10:01:18.73ID:TeA0/z+E

Kパンサー「ガルゥ!!」

 キラーパンサが飛びかかってくる…、応戦するように右のソードで受け流し、
体当たりで弾き飛ばす!

 MPが戻れば元気になり、痛みや疲れが無い機械と違ってキラーパンサーには
疲れが出る…足が鈍った所にさらに右腕でジャブ…。

Kパンサー「ギャウ!!!」

マオ「止め!」

 右に持った剣を突き刺しフィニッシュにしようと思った瞬間、キラーパンサーと
一瞬目が合う…。

マオ「っ!」

 操縦桿を引き上げて狙いをわずかに外し、剣の柄を握った右手を
キラーパンサーの胴に叩き付ける。

Kパンサー「クオォォオォゥ…!!!」

 やがて…キラーパンサーは力無く鳴いて、地面にその身を横たえる。

カンダタ「よっしゃぁぁぁぁぁぁああああ!!」

 カンダタ達が喜びの声を上げて、馬車から飛び出して来る。
マオもコックピットから抜け出し、動かなくなったキラーパンサーに
近づく。

アッサラーム商人「ワシの!ワシの祈りの指輪は!?」

マオ「助かった、返すぞ!」

 指輪をアッサラーム商人の手に返し、商人が指輪を掲げた瞬間、
いのりの指輪は音も無く崩れ去った。

アッサラーム商人「ほわぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!?」

 アッサラーム商人の悲痛な叫びが印象的だった。
───────それは別にどうでも良いとして…。
0144創る名無しに見る名無し
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2012/04/15(日) 10:02:02.05ID:TeA0/z+E

 倒れたキラーパンサーの耳の裏に着けられていたピンクのリボンを見ると、
名前が書いてある…。
 ─────────プックル。

マオ「お前…プックルって言うのか」

 マオの声に応えるようにキラーパンサーの鼻がピクピク動く。
その瞳に先程までの狂気にそまったような色は無い…、だからこそ
最後の一撃を必殺の一撃から普通の打撃に切り替えたのだが。

商人「ま…まだ生きている!何をしている止めをさせ!」

カンダタ「黙ってろって!」

 後ろで見ていた商人をカンダタが首根っこを掴んで摘み上げ、
馬車の方に放り投げる。

プックル「フッ!!」

 キラーパンサーが鼻息を吹くと、馬車の乗客達は慌てて
馬車の中に戻る。

 しかし…地獄の殺し屋と言われた獰猛なモンスターは
敵意が完全に消失していた。

マオ「ベホイミ!」

 マオが手を翳すと、キラーパンサーの傷がみるみる癒えて行く、
一度じゃ回復しきらない分は2度…3度…。

乗客達『ぎゃぁぁぁぁ!なに回復さしとんじゃぁ!?』

 馬車の乗客達が何やら悲鳴を上げて、散り散りに逃げるが
無視する。
 やがて、キラーパンサーは立ち上がりマオの手を舐めて
犬が座るみたいにお座りする。

プックル「ガフッ!」

 言葉は通じる訳では無いが、不思議とマオは今のプックルが
何を伝えたいか分かるような気がした。
0145創る名無しに見る名無し
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2012/04/15(日) 10:02:43.85ID:TeA0/z+E

マオ「………そうか、気にするなプックル」

冒険者「お…おい…どうするんだよ…
    そいつ、また人間を襲うぞ?」

カンダタ「だったら、今度はおめぇが何とかしてみせな!」

冒険者「む…むむむむむむむ…無理言うなよ
    俺に勝てる訳ないだろ!?」

カンダタ「だったら、アイツに任せておけって…」

 表面上は、平静を装っているカンダタだが
内心は動揺しまくっていた。

 ────魔物を理解している…だと?
 オメェ、一体何者なんだよ!

 だが、なんであれ信じられる仲間であるのは間違いない、
こいつがキラーパンサー……いや、プックルか……を信じられると言うならば
俺も信じるだけの話だ。

マオ「焼け焦げた剣………書いてある名は…パパス…
   これが、お前のご主人様の大事な人の形見って訳か」

プックル「ガウ!!!」

0146創る名無しに見る名無し
垢版 |
2012/04/15(日) 10:04:47.06ID:TeA0/z+E
カンダタ「…………んで…コイツなんだって?」

マオ「どうやら、主人と逸れたらしい…
   さまよい続けている間に、この辺りまで来て
   んで、腹減って食べ物を探す内にキラーパンサーの野生に目覚め
   人を襲うようになったみたいだ…とさ」

カンダタ「ったく…ペットはちゃんと責任持って飼えよな!」

プックル「フーッ!」

マオ「ペットじゃなくて、『親友』なんだと」

商人「だ…だったら、もうご主人様を探す旅にでも出れば良いだろ
   少なくとも、このアッサラーム辺りではこんな巨大な魔物を飼っている奴
   知らんぞ!
   私達もさっさとアッサラームへ行くぞ!」

プックル「ガウガガウーガゥ!!」

カンダタ「…………………………………あー…なんだって?」

 マオに通訳を求めるカンダタ。

マオ「『言われなくても、この辺りに居ないのは
    なんとなく分かる』だって」

 耳の裏の裏を掻いてやりながら、マオは言う。

マオ「それなら、私と一緒に来るか?」

プックル「ガゥ!!」

 最後の吠えは、通訳をしなくてもカンダタには分かる気がした。

//----------------------------------------
あまり連投すると、まーた怒られて規制がかかるので
今日はここまで、後は書き溜めておきます。

0147創る名無しに見る名無し
垢版 |
2012/04/17(火) 00:05:29.04ID:wak8EoL7
 ◆◇◆◇ 砂漠の入り口、アッサラーム ◆◇◆◇

 キラーマシンに牽引された2台の馬車が街に入って来た時は悲鳴があがり、
さらにプックルも一緒に街に入った時にはパニックになったりもしたが、
一晩も開けたらアッサラームはパニックは見る影も無くなくなっていた。

 乗合馬車に乗っていた連中も各自の家や宿に戻り、その上でロマリアへ
行く者達は翌日の乗合馬車で再びロマリアを目指すつもりらしい。

 街道に出現するキラーパンサーの脅威はもう無い。

 宿屋の裏でキラーマシンの修理をするマオ、その横で
申し訳なさそうな顔をするプックルと、暑いためか水の入った桶に両足を突っ込んだまま
団扇で顔を扇ぎながら、修理を見守るカンダタの姿があった。

プックル「わふぅ…………」

カンダタ「ンな顔すんなよプー公、やっちまったもんはしゃーねーし
     やらなきゃ、お前さんも死んでたかもしれねぇんだろ?」

 前の装甲板は大きく削れた上に、亀裂が発生しており、後ろの装甲板兼ねるハッチは
ひん曲がった上に、牙を突き立てた後の大きな穴が二つ空いている。
 そして、肩の付け根から失われた左腕…。

 外されたそれは地面に置かれており、左腕部が失われた部分は布が覆い被されていた
破損した腕はフレームから折られており、部品交換しなければとり付けが出来ない状態だった。

0148創る名無しに見る名無し
垢版 |
2012/04/17(火) 00:06:14.39ID:wak8EoL7
カンダタ「どうだ?、なんとかなりそうか?」

マオ「…応急処置はした、左腕は諦めて部品取りにするしかないな
   後は雨水が入らないように装甲板の穴を塞ぐぐらいか」

カンダタ「いっそ…例のノアニールの洞窟まで
    また、こいつを取りに行くしかねぇか?
    上手くすれば部品の一つもあるかもしれねぇし」

マオ「それはここから大陸を縦断しないと無理だろし
   それに…あそこがキラーマシンの住処となっているかどうかも
   怪しいものだ」

カンダタ「どういう事でぇ?」

プックル「ガウ…ガウワーウウ!!」

マオ「プックルも、そしておそらくこのキラーマシンも
   別の世界からやって来たって事」

カンダタ「別の世界?」

マオ「どうにも、プックルが言うには
   歩いている間に黒い靄のようなものに包まれて
   気が付いたら、この辺りに居たんだとさ」

カンダタ「確かに…あの合体する妙なスライムやら
     こんな奇天烈マシンやら、プックルみたいな奴は
     俺ぁ聞いた事も見た事もねェからなぁ」

カンダタ「ま…いいか、壊れちまったもんはしゃーねぇな
     最悪馬車が引ければ良い訳だし」

プックル「ガウ!!」

マオ「壊した左腕の分ぐらいは、プックルが
   頑張ってくれるって」

カンダタ「そりゃ…頼もしいこった
     一区切りしたら市場に言って見ようぜ?」

マオ「市場?」

カンダタ「おおよ、アッサラームはイシスとロマリアを結ぶだけじゃなく
     たまにだが南の方から交易船も入って来るんだ」
0150創る名無しに見る名無し
垢版 |
2012/04/18(水) 23:50:09.46ID:T6L6+4uI

 市場を見るとロマリアに比べて、活気付いている感じがする、
武器屋、防具屋、道具屋に食べ物屋、さらには劇場なんてのも
あるらしい・・もっとも、劇場が開くのは夜かららしいが。

カンダタ「アッサラームって言えば、ベリーダンスってのも
     有名でな」

プックル「わふぅ?」

カンダタ「ベリーダンスってーのは
     若ぇ美人の娘さんが、こー色っぽく腰を
     くねらせながら踊るのよ」

 劇場の中から声が聞こえる。

マオ「どうやら、今は
   そのベリーダンスを練習しているみたいだな」

カンダタ「練習中に入るのは失礼ってもんだろ
     どうせ見に来るなら本番やっている時にしようぜ?」

 などと、色々散策しながら歩いていると

商人?「おー…私の友達…
   お待ちしておりました、
   売っているものを見て行ってください」

 武器商人に声を掛けられ、
無理矢理露店の前で足を止めさせられてしまう

0151創る名無しに見る名無し
垢版 |
2012/04/18(水) 23:50:36.58ID:T6L6+4uI

商人?「あなたのために
  珍しい武器や防具を仕入れました」

 まどうしの杖:24000G
 ホーリーランス:36800G
 鉄の斧:40000G
 マジカルスカート:24000G
 黒装束:38400G
 鉄の兜:16000G

マオ「なんだ、この価格設定は
   ふざけているのか?」

カンダタ「悪いが時間の無駄だ…
     他を当たんな」

商人?「おお、お客さんちょっと待ってください
   今のはほんの冗談ですよ」

 まどうしの杖:12000G
 ホーリーランス:18400G
 鉄の斧:20000G
 マジカルスカート:12000G
 黒装束:19200G
 鉄の兜:8000G

0152創る名無しに見る名無し
垢版 |
2012/04/18(水) 23:51:23.59ID:T6L6+4uI
カンダタ「オヤジ…ふざけているのか?
     この街の税金がどれくらいかしらねぇが
     2万ゴールドもあれば、ドラゴンだって
     殺せる武器も買えるぜ?」

商人?「お客さん、本当に買い物上手ね
    これ以上まけると、ウチは大損ですよ
    けど貴方、トモダチ・・こんな感じでどうでしょう?」

 まどうしの杖:6000G
 ホーリーランス:9200G
 鉄の斧:10000G
 マジカルスカート:6000G
 黒装束:9600G
 鉄の兜:4000G

カンダタ「……………………………。」

マオ「……………………………。」

商人?「こ…この価格でも不満ですか…
    これ以上まけると、私首つり自殺ですよ
    わかりました、これが最後の価格です!」

 まどうしの杖:3000G
 ホーリーランス:4600G
 鉄の斧:5000G
 マジカルスカート:3000G
 黒装束:4800G
 鉄の兜:2000G

マオ「……………………………。」

カンダタ「………まだ…高いな。
     オヤジ、俺の目効きを舐めているんじゃないか?
     これでもまだ市場価格の倍はしやがるだろ?」

商人?「そんな事ないですよ!
    少なくともこの街では一番安い価格ですよ」

カンダタ「そうかい?
     行こうぜ?マオ……………マオ?」

 マオは…商人の顔をじーっと見つめる…
どこかで見た覚えのあるような顔だ…、随分昔…
どこかで…。
0153創る名無しに見る名無し
垢版 |
2012/04/18(水) 23:54:44.35ID:T6L6+4uI
………と、行った所で
今日はここまでです、わざわざアイテム価格を調査するために
DQ3を立ち上げてしまったと言う。

ちなみに、俺はこのアッサラームの商人からモノを買った事は無いが、
FC版では「鉄の兜」
SFC版では「金のブレスレット」を買うために、この商人を
利用する必要があるとかなんとか。

喉がまだ治らない・・ではまた。
0156創る名無しに見る名無し
垢版 |
2012/04/24(火) 22:37:12.22ID:6fd03c1S
ありがとうございます、
最近ちょっと、遅筆ですが頑張りたいと思います。
0157創る名無しに見る名無し
垢版 |
2012/04/25(水) 01:27:28.84ID:zglJJY/R

 あれは……随分昔…まだ魔王だった頃…。

マオ「あーっ!!アリアハン国王!!」

商人?「っ!?な…ななななななにを…
    突然何を言うんですかお客さん!?
    そんな訳ないじゃないですか?」

カンダタ「アリアハン国王!?
    こいつがか!?」

 黒く日に焼けたり、アッサラームの民族衣装を
着ていて、少し太ったとは言え、商人の男には
確かにアリアハン王の面影がある。

マオ「貴様!こんな所で何をしている!
   巫女はどこに居る!バラモス城か!?」

国王「うぐ…ぐぐぐぐぐぐぐ…
   ぐるじい…だじげて…」

 胸倉を掴み上げ、尋問する…国王は
息が出来ないのか顔を紫色にして口をパクパクする。

カンダタ「まてまて…マオ
     そいつ、死んじまうぞ?」

 カンダタの仲裁に、マオはやや力を緩めて
息をさせる。
0158創る名無しに見る名無し
垢版 |
2012/04/25(水) 01:29:18.99ID:zglJJY/R

 ◆◇◆◇ アッサラーム(夜)アリアハン国王の家 ◆◇◆◇

 市場の一件から1時間後、マオとプックルはアリアハン
国王が住んでいる家に訪れていた。

 ちなみに、カンダタはアッサラームの夜の街へと
遊びに行った、良いぱふぱふ屋があるとか言っていたが
マオに気を使っての事なんのかもしれない。

国王「まぁ、座りなされ」

 椅子を勧められ、アッサラームで有名なお茶とやらを
出されたが、口を付ける気は起きなかった。

 国王は苦笑しつつも、自分の茶に口を付ける
黒い猫を飼っているらしく、国王が落ち着いて座ると
彼の膝元に猫が座って丸くなる。
 砂漠の猫の相応しく、毛が短い種類のようだ。

国王「何から、話そうかの」

 猫の体をなでながら、国王が話を切り出す。

マオ「何もかもだ、私を召喚した事
   私の体を奪う事を企てていた事、
   何故こんな所にいるのか、それに
   巫女はどこに行ったのか?
   洗いざらい、全てを吐いてもらうぞ?」

国王「わかった、わかった
   そう急かすな」

0161創る名無しに見る名無し
垢版 |
2012/04/29(日) 22:19:22.38ID:C5XyOdo5

 …国王の話を、全部そのまま書くと長くなるので
要点だけ。
 アリアハン王はこの世界も魔王、バラモスに脅され
異世界から召喚する儀式をとり行ったと言う。
 軍事力を持たないアリアハンは戦う力など無く、
魔王軍の脅しに屈するしかなかった。

 魔王バラモスが送り込んだ巫女(血はつながっておらず、
バラモスに育てられただけで人間だったと言う)の元、
異世界の魔王の召喚は行われた。

 やがて、魔王の召喚に成功し…知っての通り、よび出した
魔王を騙して、予定通りに全ての力を奪い取った。

 その後、用済みのアリアハン国王は途中のアッサラーム近郊で
放り棄てられ、アリアハンへ帰るのも怖くなり、アッサラームで
商人として暮らしていたと言う。

国王「魔王どもの言いなりになって、お前さんを呼び出して以降
   ワシは逃げ回る毎日じゃよ…
   今でも夢に見るんじゃ、アリアハンの民達の
   魔物に屈したワシを責める顔を毎日な…」

マオ「それが、アリアハンに帰らなかった理由か…」

国王「魔王バラモスに脅迫され、ワシは民の命を護る為とはいえ、
   異世界から魔王を呼び出すなどと言う、
   禁術に手を出した……あわよくば、この世界の魔王と
   潰しあってくれるだろうと…だが結果はこのザマじゃ」

国王「アリアハン王は魔王に屈したと、世界中の連中から
   後ろ指をさされている、ワシはもう疲れた
   殺すなら殺せ、お主にはその権利があるだろう」

マオ「…………そうか、覚悟は出来ているようだな」

 マオは剣の柄に手を掛け、腰を落とす…殺気を放っても
アリアハン王は抵抗する素振りすら見せなかった。
 恐怖で顔をゆがめる事すらない。
0162創る名無しに見る名無し
垢版 |
2012/04/29(日) 22:20:07.57ID:C5XyOdo5
マオ「………………………くだらない…。」

 剣の柄から手を放し、マオは吐き棄てる。

マオ「一生ずっとそうして後ろを向いて後悔いろ、
   私が手を下すまでも無く
   お前は生きていない、ただ死んでいないだけだ」

 うつむいたままの国王を部屋に残して、
マオは部屋を出て扉を閉じる。

 ◆◇◆◇ 翌日 ◆◇◆◇

 キラーマシンの応急修理が完了し、旅に必要な物資は
馬車に詰め込んだ…。

カンダタ「こいつで、最後だぜ…」

 カンダタは水が入った大きな樽を荷台に乗せて、ロープで
ぐるぐる巻きに固定する。

カンダタ「…随分大荷物になっちまったな…」

プックル「…ばう!…」

マオ「仕方が無いだろ…これから行く砂漠は
   危険な所だからな…」

 とりあえず…キラーマシンで軽く牽引して、問題なく
動ける事を確認する。

 砂漠の中央に存在するイシスへ向かう為には、当然
装備がそれだけ多くもなる…、特に水や食料は欠かせず
万一に備えてキャンプ用品なども搭載した。
 水や食料は余裕をもって、往復できるぐらいの量を
搭載している。

マオ「よし、出発する」

 キラーマシンのエンジンを始動し、一歩踏み出した時。

国王「………待ってくれーっ!
   ワシも乗せてくれーっ!」

 国王の言葉が聞こえて、キラーマシンを停止する…。
荷物を大量に抱えたアリアハン国王が転げるかのように、
走って来る。

カンダタ「…こいつ…昨日の元アリアハン国王じゃねぇか」

国王「ワシも!一緒に行く!
   連れて行ってくれ」

カンダタ「連れて行けっていったってよぉ?」

プックル「わふ?」

 困ったようにマオを見るカンダタとプックル、
マオはキラーマシンのハッチを空けて顔を出す。
0163創る名無しに見る名無し
垢版 |
2012/04/29(日) 22:20:44.31ID:C5XyOdo5

マオ「……アリアハン国王?
   どういうつもりだ?」

国王「許してくれとはいわん、じゃが
   何かをしたいんじゃ、せめてワシに
   何か出来る事を見つけ出したいんじゃ」

カンダタ「だってよ?どうする?」

 こいつが巫女に通じている可能性もあるし、
昨日の話も全て本当の事かどうかもわからない。

マオ「勝手にしろ!!」

国王「感謝する…!」

0164創る名無しに見る名無し
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2012/04/29(日) 22:21:03.53ID:C5XyOdo5
 ◆◇◆◇ 砂漠 ◆◇◆◇

 砂の海の世界…砂漠、太陽は容赦無く照り付け
気温は軽く50度はあるようだ……。
 …馬車は砂漠を越えて
オアシスの国、イシスへと向かっていた…、

 基本は朝と夕方の日が高くないウチに距離を稼ぎ、
一番気温が高くなる時間帯は外す。

カンダタ「……あつい………」

プックル「……わふぅ…」

 カンダタの声に、プックルは声を絞り出すように
応える…。
 こちらは純毛100%なせいだろうか、砂漠の暑さが
一際応えているようだった。

カンダタ「……アッサラームを出て一週間ぐらいか?
     いつになったら、イシスに着くんだよ」

国王「もう、そろそろじゃと思うんだが」

 地図とコンパスに線を引きながら国王が答える、
こちらはアッサラームからイシスへと買い付けに行くために
何度もイシスへ渡った経験があるらしい。

国王「大丈夫か?」

マオ「……まぁ、なんとかな……」

 伝声管でキラーマシンの中のマオに声を掛ける国王。
キラーマシンの中にクーラーが有る訳でも無く、しかも
熱が籠るため、定期的に声を掛けて様子を伺わないと
脱水症状で倒れかねない。
0165創る名無しに見る名無し
垢版 |
2012/04/29(日) 22:21:36.80ID:C5XyOdo5
国王「まぁ、あともう少しすれば
   イシスも見えて来る頃じゃろう」

マオ「…………?」

 遠くに見えて来たのはイシスの街…、だが…そこから立ち上るのは…。
黒い煙…、マオはキラーマシンを止めてカメラをズームモードに切り替える。

カンダタ「………………どした?…」

 なんか、不穏な空気を感じたのだろう…暑さで横に転がっていた
カンダタは身を起こし、単眼鏡を取り出す。

国王「…火事…かの?…」

プックル「グルルルルル………」

 カンダタと同じく暑さでダレていたプックルも身を起こし、
背中の毛を逆立てていた。

 ふと…、遠くに見えるイシスで光が瞬いたように見える。

マオ「…呪文の光!…戦闘だ!」

 それも冒険者が魔物に襲われたなんて、小規模な戦闘じゃない…
魔物の大群がイシスと戦うような、大規模な襲撃のようだ。

カンダタ「……イシスが…、魔物の大群に襲われてやがる!」

国王「……なんじゃと!?」

カンダタ「急げ!マオ!」

マオ「わかった!」

 カンダタの話を聞いて、マオは
キラーマシンをイシスへと急がせる。
0166創る名無しに見る名無し
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2012/04/29(日) 22:22:15.62ID:C5XyOdo5

 ◆◇◆◇ イシス城門 ◆◇◆◇

イシス兵A「正門!破られます!」

イシス兵B「なんとか持ちこたえろ!
      民間人を城まで避難させるんだ!うわぁっ!」

 イシスを守護する兵の一人が、巨大な緑色のカニのような魔物
じごくのハサミに胴を掴まれ。そのままその巨大なハサミに
胴体が両断されてしまう…。

イシス兵A「くそっ!まさか、いきなり王都を襲撃してくるなんて」

 以前から散発的に魔物達と小競り合いはあったものの、大群を
連れて襲撃して来るとは。
 勇者オルテガがバラモス討伐に向かおうと言う、このタイミングを
狙って来たようだ。

イシス兵A「オルテガ殿は!?」

イシス兵C「すでに、出発されました!」

イシス兵A「それだけが、せめて救いか…」

 勇者オルテガはすでに熱気球に乗って、魔王バラモス退治に
出発したようだ、人類の希望たる勇者が殺されると言う
最悪のシナリオだけは回避できた。
0167創る名無しに見る名無し
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2012/04/29(日) 22:22:42.66ID:C5XyOdo5

イシス兵D「小隊長!
     南からキャットフライと人食い蛾の群れです!」

イシス兵A「くそ!ここまでか!」

 イシスの小隊長が諦めようとしたその時、遠くから光がキャットフライ達の
群れに突き刺さり、切り裂いた。

イシス兵C「なっ!?なんじゃありゃ!?」

 兵の一人が光の立ち上った元を見て、驚愕の声を上げる。
右手に剣を持ち、左手が無い代わりにマントで肩を覆い隠された
一つ目の鉄の化け物がそこに立っていた。

 人も魔物も動揺している間に、斧を持った男が大きな牙を持った
デカい豹に跨って突撃してくる。

カンダタ「……往生しやがれぇ!」

 叫ぶなり、豹の上の男が投擲した鉄の斧が、火炎ムカデの頭に直撃し、
頭をぶっ潰す。

カンダタ「よう!イシスってのはここで間違いねぇか!?
     ウチのオルテガがここに世話になっているはずだがよ」

 豹から飛び降りた男が火炎ムカデの頭から斧を抜きながら
ニヤリと笑う。

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