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オリジナルキャラ・バトルロワイアル2nd Part2
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0102蛮勇引力 ◆BUgCrmZ/Lk
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2011/09/07(水) 22:49:19.62ID:2UJbbMMo

「ちょ、ちょちょ、ちょっと何撃っちゃってるんですか!?」

突然の発砲に度肝を抜かれ加奈子は思わず叫んだ。

「ああ、ごめんごめん。手が滑った。
 でも大丈夫。今の弾丸で”死んだ人”はいないから」
「もう、当たり前です!」

あまりにも呑気なフィクションの様子に加奈子は大きくため息をついた。

「……やっぱりそれ預かっておきます、フィクションさんに持たせておくのも危なそうだし」
「そう、それは何より」

しぶしぶながら加奈子はフィクションからライフルを受け取る。
実弾の誤射など下手したら死人が出ていたミスをした直後だというのに、フィクションに悪びれる様子はない。
当然である。
先ほどの発砲は誤射で等ではなく狙って撃った弾丸なのだから。

フィクションからしてみれば、ターゲットと思しき相手をたまたまスコープの先に見つけたからとりあえず撃ってみただけの話だ。
なぜか思い切り狙いやすいところにいたわけだし、その好機を見逃す理由もない。
命中は確認した。
だが、仕留めきれたわけではない。

弾丸をぶち込んでも死なない相手とはなるほど確かに化け物に違いない。
だが、傷つけて傷つく相手なら、殺して殺せない道理はない。
弾丸を受けて血を流したのならそこまでの相手ではないだろう。

「ま。依頼続行かな、とりあえず」

加奈子のお小言を聞き流しながら、伝説の暗殺者はそう、小さくつぶやいた。

【一日目・黎明/D-5草原】
【葉桜加奈子】
【状態】健康
【装備】折り畳み式ライフル(5/6)
【スキル】なし
【所持品】基本支給品、不明スキルカード、不明支給品0〜1
【思考】
基本:日常に帰る
1.加山圓や知り合いと合流したい
2.フィクションと協力して脱出方法を探す

【フィクション】
【状態】健康
【装備】日本刀
【スキル】『ブラックアウト』
【所持品】基本支給品、不明スキルカード(確認済)、候補者名簿、不明支給品1〜3
【思考】
基本:脱出してヨグスを始末する
1.イロハと加奈子の知り合いを探して合流。オーヴァーはとりあえず放置
2.機会があれば板垣退助を殺す
3.正午に教会でイリアムと落ち合う
※板垣退助の外見的特徴を把握しています

■■■■■■■■
0103蛮勇引力 ◆BUgCrmZ/Lk
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2011/09/07(水) 22:53:07.78ID:2UJbbMMo

板垣退助に狙撃は通用しない。

どれほどの遠距離射撃であろうとも彼は殺気や機微と言ったものを本能的に感じ取り、回避することが可能だ。
故に狙撃など恐れるに足らない。

だが、その弾丸は違った。

弾丸に意志など込められて無いように。
それこそ当たり前のように放たれた弾丸に殺意などなく。
その弾丸は板垣の本能という防衛網を超え、彼の後頭部に直撃したのだ。

だが、あえてもう一度言おう。

板垣退助に狙撃は通用しない。

それは本能により回避能力という意味でもあり。
直撃すら耐えうる化物性という意味でもあった。

「ぐぬぬう……っ!!」

電柱から落下し、地に落ちた板垣が唸りを上げながら立ち上がる。
とはいえ、流石の板垣と言えど弾丸を頭部に受けて無傷とはいかない。
頭部から血液を垂れ流しながら、憤怒の表情で眼前の二人をにらみつける。

どこから弾丸が飛んできたのか。
誰が弾丸を放ったのか。
何故板垣を狙ったのか。
その真相をこの場にいる全員が知らない。

「…………よかろう。我に敵対するのであれば容赦はせぬ」

ただ、その攻撃はあまりにも完璧な不意打ち過ぎた。
板垣からすれば目の前にいる二人が何らかの方法で攻撃したとしか考えられない。
本能で周囲索敵ができる板垣だからこそ、確信をもってそう思った。

「ちょ、待て、誤解だ!」
「無駄だ。来るぞ!」

篠田の弁明も虚しく、板垣が動く。
踏み込まれた地面が砕ける。
弾丸のような加速。
小山のような巨体が駆け抜ける。
迫りくる様はまるで重戦車。

もっとも、その程度で怯む二人でもないのだが。

方や異世界の支配者たる魔王。
方やその魔王を相手取った勇者である。
その程度の相手、見慣れている!

二人は直線で迫る板垣を冷静に左右に展開し回避する。
0104蛮勇引力 ◆BUgCrmZ/Lk
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2011/09/07(水) 22:55:36.37ID:2UJbbMMo
「クソ、仕方ねぇ。その傷じゃ戦えねだろ、下がってろ魔王」
「いや、下がるのは貴様だ篠田!」
「うぉわ!?」

風切音と共に篠田の眼前を巨大な尻尾が通過した。
鞭のごとく振るわれた尾が板垣を打つ。
板垣は十字受けでコレを受けたものの、衝撃までは押し殺せず地面を削り後ずさる。

そこにいたのは、それまでの魔王ではなかった。

その外見は凶悪さを増していた。
頭部には角が突き出し、背に生える蝙蝠のような翼と鞭のようにしなる長い尻尾。
人と魔が入り乱れる、それは正しく―――魔王。

「第二形態!? いきなりかよ!」

かつて篠田も戦ったその姿。
その時は、一度追い詰めた上で奥の手として出されたものだった。
だというのに今回は魔王はいきなり本気だ。
それだけの相手ということか。

「があああああああああぁぁ!!」
「ふんぬうううううううぅぅ!!」

空気が炸裂するような衝突音。
超重量級の二人が互いに駆け出し、真正面から衝突する。

「…………なっ!?」

驚愕の声。
よもや人間に力負けするとは誰が思おう。
押し負けて吹き飛ばされたのは魔王だった。

「しゃーねーな。やっぱオレがいないとか!?」

篠田は自らに向かって飛んでくる魔王の体を、跳び箱のように跳んだ。
板垣からすれば、魔王の巨体に隠れた死角から突然篠田が現れたようにしか見えないだろう。

飛び上がった篠田が空中で縦に一回転し、その勢いのままエストックを振りおろした。
不意を付かれた形となった板垣はコレを躱せず、エストックの穂先が彼の胸元を薙いだ。
だが、
0105蛮勇引力 ◆BUgCrmZ/Lk
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2011/09/07(水) 22:58:23.05ID:2UJbbMMo

「な、に………?」

驚愕の声は篠田のものだった。
篠田の一撃は肌に僅かに跡を残したのみで、血を流すどころか皮膚すら切れていない。
いくらエストックが刺突用の剣であったとしても、これはあり得ない話だ。

「肌に粗塩を擦り込んである。古代の拳闘士はそうすることで切れにくい体を作り上げたという」
「いや、そういう次元じゃねぇだろこれ!」

篠田が突っ込みという名の叫びを上げるが、板垣は容赦なく鉄球のような拳を振りかぶる。
攻撃の直後。篠田の体制は崩れている。
なによりその身は今だ空中にある。

故にその一撃は、回避は不可能。

「篠田――――ッ!」

魔王の叫びも虚しく。剛。と唸りを上げて放たれた拳が篠田の脇腹に直撃した。
篠田の体が紙屑のように吹き飛ぶ。
はたして何メートル飛んだのか。
地面を何度かこすり、ゴムまりのように跳ね、勢いを弱めた後、やっとその体は停止した。

「ッ! 問題ねぇよ、クソッ!」

だが、篠田は跳ね上がるように起き上がり、すぐさま体勢を立て直す。
派手に吹き飛ばされたように見えたが、吹き飛ばされる直前に重力操作の能力により自身を無重力に設定していたのだ。
つまり吹き飛ばされたのはではなく自ら吹き飛んだ。

「…………それでもこのダメージってありえねぇだろ」

そういって篠田は脇腹をさする。
重力をなくすというほぼ完璧な消力であったはずなのに、内臓にはズシンと重い痛みが残っている。
何の工夫もなく直撃すればどうなっていたことか、想像に難くない。

「しかし、えらい飛ばされたな…………」

見れば、数百メートル先で魔王と板垣が衝突している。
無重力状態だったとはいえ人間のをここまで飛ばすとは尋常ではない。

見る限り魔王は劣勢。
篠田は一刻も早く援護に駆けつけようと足に力を籠めて。
0106蛮勇引力 ◆BUgCrmZ/Lk
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2011/09/07(水) 23:00:54.60ID:2UJbbMMo

前に進むのではなく、全力で横にその場から飛びのいた。
それとほぼ同時に篠田のいた場所を斬撃が掠めた。

「あははっ! こんな派手に戦ってたら見つけてくれって言ってるようなものだよね!」
「クソ、めんどくさいのが! それどころじゃねェってのに!」

現れたのは篠田とは違うもう一人の勇者、藍葉水萌。
水萌は立ちふさがるように篠田の道をふさぐ。

「どけよ。今はお前の相手をしてる場合じゃねぇんだよ」
「そんなに向こうが心配? 篠田のくせに魔王と仲良しだなんてホント、勇者の面汚しもいいとこねあなた」
「うるせぇよ」
「通りたいんなら力づくで通ってみれば?」
「言われなくても!」

水萌に向かって篠田が駆ける。
篠田も勇者の端くれだ、その動きは常人を凌駕するような加速だが、それでも水萌からすればまだ遅い。
このまま真正面から来るのならば、是非もない。
返す刃で一刀両断にしてお終いだ。

だが、その予測を裏切り、篠田は地面を強く蹴った。
自らを再度無重力に設定して跳びあがる。
自身の重力を操作したその跳躍は遥か高く、水萌の身体能力を持っても捕えきれない。
水萌の遥か頭上を越える軌跡を描き、篠田は跳ぶ。

「あはっ。すごいジャンプだね。けど、そんな程度で逃げられるとでも、」
「――――――――逃げるかよ」

言ってカクンと、ありえない軌道で篠田の体が落下を始めた。

「――――重力三倍」

篠田の体が上空から水萌に向かって一直線に落下する。
その勢いのまま、篠田は剣を振り下ろした。

「くっ!?」

咄嗟にフランベルジュで受ける水萌だったが、圧し掛かる重量は篠田の全体重×3。
その圧力に押し切られ水萌が膝をつく。
三倍近いレベル差を覆すには十分な威力だった。

「おおおおおおおおおおおおおおおおお!!」

そのまま剣を振り切り水萌を吹き飛ばす。
代償としてその負荷を一身に受けたエストックが叩き折れたが、それを気にせず倒れこむ水萌の脇を篠田は走り抜けた。

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0107蛮勇引力 ◆BUgCrmZ/Lk
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2011/09/07(水) 23:04:18.16ID:2UJbbMMo

魔王と板垣の死闘は激戦を極めていた。

突き。防ぎ。打ち。捌き。叩く。
常人であれば一撃でも食らえば絶命するほどの超重量級の打撃戦。

押されているのは魔王である。
地力の差というより、水萌から受けた傷が大きく響いていた。

そしてついに板垣のバットどころか、大木すらへし折りそうなローキックにより魔王の体制が崩れた。
そこに迫る追撃のアッパーカット。

「五倍スタァ―――ンプ!」
「篠田!?」

そこに、ギリギリのタイミングで上空から篠田が介入する。
強化重力の加速落下を利用した蹴りにより、突き上げられた板垣の拳を撃ち落とす。
だが、五倍の重力を籠めたその蹴りを物ともせず、板垣の拳は止まらない。

「嘘ぉ!?」

その拳は直撃から若干軌道が逸れたものの、投げ捨てられるような形で篠田の体が吹き飛ばされる。
その先には魔王が。
重力強化によって篠田が重量を増していたことも相まって、体制の崩れていた魔王はこれを受け止めきれず、二人仲良くゴロゴロと地面を転がった。

「……よう、長旅だったな篠田。いらんお客さんまで引き連れて」
「そりゃどうも。で、どうするよこの状況?」

二人は立ち上がりながら現状を顧みる。
前門の板垣、後門の水萌。
見れば、先ほど振り切った水萌が追いついている。

「こいつ一人でも手に余るというのに、藍葉まで加わられたらさすがに無理だ。何とか逃げる事だけ考えろ」
「は、魔王からは逃げられないとは聞くが。まさか魔王から逃げる相談されるとはな。だが、同意見だ」

逃れる事すら困難な、正しく絶体絶命の状況である。
このままの流れならば確実にやられる。
何かこの危機的状況を変える流れがあれば。

「はーい。仲良く何の相談かしら。さっきはよくもやってくれたわねぇ。
 でも恨んでなんかないわ。ちゃんとあなたもそこの魔王も平等に殺してあげるから!」

たどり着いた水萌が楽しそうな笑顔で吠える。
だが、板垣は対照的に眉をひそめた。

「貴様――――今、平等といったか?」

流れが、変わった。

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0108蛮勇引力 ◆BUgCrmZ/Lk
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2011/09/07(水) 23:06:47.56ID:2UJbbMMo

「…………なんだあれは」

加山圓は強化された視力でその戦闘を見ていた。

四人の男女が入り乱れ殺し合うその様。
誰かが悪漢に襲われているのなら、助けたいと思う心はあるが。
誰が正義で悪なのか。
誰が被害者で加害者なのか。
その光景からは何一つわからない。

いや、ひょっとしたら全員が加害者で、全員が殺し合いに乗っているのかもしれない。

魔王としか形容し難い見た目をした化け物。
これまでの自分の常識の中ではありえない存在。
もはや存在が人類の範疇を超えている。

筋肉隆々の大男に関しても見た目からしておかしい。
正直日常生活なら絶対関わり合いになりたくない類の相手だ。

見た目だけで言うのなら、制服を着た女子高生が一番被害者然としているのだろうが。
実際、その少女が最も積極的に戦闘に及んでいるように見える。

なら残った最後の青年がまともかといえばそうでもない。
他と同じく明らかに戦い慣れた動きをしているし、動きからして魔王と協力体制にあるように見える。

全員が怪しく、全員が危険人物に見える。
だがそれ以前に、たとえ被害者が明確だったとしても、あの戦闘は介入できるレベルではない。
全員の動きの次元が違う。
加山は自らの弱さを認める。
剣術をかじった程度の自分などこの場においては弱者だろう。
そのうえで自らの身の振り方を決める。
0109蛮勇引力 ◆BUgCrmZ/Lk
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2011/09/07(水) 23:09:03.82ID:2UJbbMMo

無茶はできない。
なにせ彼は一人ではないのだ。
加山は傍らにいる少女を見る。
己の死は同時に少女の死に等しい。
綱渡りをするような慎重さが求められる。
無鉄砲のままではいられないのだ。

「イロハちゃん。進路を変えよう」

イロハは加山の言葉を疑問に思うでもなく、素直にコクリとうなずく。
加山はその戦闘に介入しないことを決める。

二人は知らず離れてゆく。
北に彼らを求める人物がいることも知らずに。
その決断がなにを意味するのか。

【一日目・黎明/F-5市街近く】
【加山圓】
【状態】健康、過剰感覚による若干の気持ち悪さ
【装備】小太刀
【スキル】『五感強化』
【所持品】基本支給品
【思考】
基本:徹底的に抗う
1.この場から離れる(北は避ける)
2.イロハを守る

【イロハ】
【状態】健康
【装備】なし
【スキル】なし
【所持品】基本支給品、不明スキルカード、不明支給品×1〜2
【思考】
1.マドカに付いていく

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0110蛮勇引力 ◆BUgCrmZ/Lk
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2011/09/07(水) 23:11:34.34ID:2UJbbMMo

「何かしら素敵なおじ様。
 安心して頂戴、あなたもちゃんと殺してあげるから」

板垣を舐めるような視線で見つめ、クスリと笑う水萌。
対する板垣が感情を抑えたような表情で水萌を問いただす。

「それが貴様の平等か?」
「ええ、私はすべての生命を平等に扱っているの。動物も虫も草木も全てね。
 だから全体の事を考えたらなら、人間を滅ぼした方が世界のためだと思わない?」

板垣の怒気が高まり、一触即発の空気が加速する。
そしてこの展開、水萌と板垣が争ってくれるなら篠田たちにとって好都合。
篠田と魔王の二人は無言で合図を起こり、その隙に逃れる算段を立てていた。

「そのような身勝手な理由で生命活動という基本的人権を損害するその行為。
 許すまじ―――――――!!」

板垣の怒号が響く。
瞬間、板垣の巨体が完全にその場から消失した。

あり得ない次元の爆発的加速。
その動きは、これまでとは完全に別物だった。
板垣は感情によってその戦闘力を大きく変動させるタイプのファイターだ。
今、板垣は怒りによってリミッターが完全に解除されている。

だが、水萌も伝説とまで呼ばれた勇者である。
この一撃に反応し、剣の腹に片手をそえ板垣の拳を受け止める。

ただ、そんな行為は無意味だ。
正面から正拳を叩き込む。
それだけのシンプルな攻撃もこの次元まで昇華すれば、必殺になりえる。

ペキリと、空き缶をつぶしたような嫌な音が鳴った。
板垣の巨大な拳はフランベルジュを根元からたたき折りその勢いのまま水萌の顔面にめり込んだ。

藍葉水萌の体はプロペラのように横回転しながら宙を舞い。
傍らを流れる川までたどり着いたかと思えば、回転しながら小石のように水の上を跳ね滑って行った。

「……ぁ…………ぁ………っ」

対岸で静止し、地面に転がる水萌の口から喘ぎのような声が漏れた。
生きている。
だが、それもかなり危うい。
プライドもあり、それには頼らなかったが、緊急事態だ。
最後の力を振り絞り、荷物の中に手を伸ばす。
かすかに指先に触れる感覚。

「…………………自……己さ、い…………生」

息も絶え絶えになりながらも、指先に触れたスキルカードを宣言する。
それと同時に彼女のプツンと意識は途絶えた。

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0111蛮勇引力 ◆BUgCrmZ/Lk
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2011/09/07(水) 23:13:50.11ID:2UJbbMMo

トーマス・A・エジソンとであった真琴真奈美と御木魚師の二人だったが。
ひとまずエジソンと行動を共にすることにし、発電所に向かう途中だった。

「お。まなみん、誰か倒れるぜ」
「だからその呼び方は止めろと……ってなに?」

言われて、御木の指す方向を見てみれば、そこには制服姿の女子高生が倒れていた。
警察官である真琴はもとより、御木も下っ端とはいえ裏社会の人間だ。
怪我人や死体も、ある程度は見慣れてるため、警戒はあれど動揺はない。
だが、もう一人は違った。

「う、うああああああああ〜〜!!
 死体! 死体だ! 死んでる! 誰かが殺した! 誰だ! 人殺しはよくない!!」

途端にパニックに陥るエジソン。

「落ち着いて、まだ死んでると決まったわけじゃないから!」

真琴が一喝するがエジソンは止まらない。
分けのわからない言葉を喚き散らし続ける。
真琴は眉間にシワを寄せて頭を抱える。

「あーもう。ゴキ、私が見てくるから、お前はトーマスさんを落ち着かせておいてくれ」
「え。ちょっとまなみん、そりゃねぇって!」

ゴキの抗議を無視して真琴は周囲を警戒しつつ少女に近づいてゆく。
そして少女のもとにたどり着くと、そこは警官、迅速に脈拍をとり生死を確認。
生きているものの意識はなく、命に別状はないとは現段階では言い切れない、危険な状態だ。
外傷、特に顔の損傷がひどく、裂傷や腫れがひどい。

「かわいそうに女の子だろうに…………」

美しかったであろうその面影は見る影もない。
真琴は少女を慈しむようにそっと髪を撫ぜた。

「どうどうどう。落ち着こうぜ、ジンたん。
 あ、どうだったのまなみん、生きてた〜?」

エジソンをなだめながら御木は戻ってきた真琴に問いかけた。

「ああ、まだ息はある、かなり危険な状態に違いないが」
「それで、どうするの?」
「このまま放っておくわけにもいかんだろ。運ぶぞ手伝えゴキ」
「えぇっ、マジっすか?」
「どうせ目的地は病院なんだ、いいから来いッ!」
0112蛮勇引力 ◆BUgCrmZ/Lk
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2011/09/07(水) 23:16:17.75ID:2UJbbMMo

嫌がる御木を引きずりながら真琴は少女へと近づいていった。
少女の状態は一刻を争う。
外傷は酷く、その顔はかつての面影などない。
それ故に真琴たちは気付けなかった。
自分たちの抱えた少女が、世間をにぎわせた殺人鬼であることに。

知らず、爆弾を抱えてしまったことを彼女たちはまだ知らない。

【一日目・黎明 E-3川沿い】

【真琴真奈美】
【状態】健康
【装備】H&KMP5(30/30)
【スキル】不明スキルカード
【所持品】基本支給品、H&KMP5予備カートリッジ
【思考】
1.少女を病院に運ぶ
2.御木、トーマスと行動を共にし、守る。
3.オーヴァーが居る…?

【御木魚師】
【状態】健康
【装備】特殊手錠、ケブラー防弾ヘルメット
【スキル】『パブリックエネミー』(AM8時以降再使用可)
【所持品】基本支給品
【思考】
1.真琴と行動を共にし、なんとかこの状況から逃れる。

※特殊手錠
 一見ワイヤーのついたごく普通の手錠。
 何か特殊な仕掛けがあるらしいが、御木しか確認していない。

【トーマス・A・エジソン】
【状態】健康
【装備】
【スキル】不明スキルカード
【所持品】基本支給品、不明支給品1〜2
【思考】
1.発電所で電気を使えるようにする。
2.その後病院へ行って首輪をレントゲンで調べる。

【藍葉水萌】
【状態】瀕死、再生中
【装備】なし
【スキル】『自己再生』
【所持品】基本支給品、手榴弾×4
【思考】
1.????

■■■■■■■■
0113蛮勇引力 ◆BUgCrmZ/Lk
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2011/09/07(水) 23:18:55.80ID:2UJbbMMo

それは、冗談のような光景だった。

「…………一撃かよ」

あの藍葉水萌が一撃でやられた。
生死は不明だが、ただではすんでいまい。
争っている隙に逃げ出す算段だったが、あまりにも一瞬でケリがついたせいでそれもおじゃんだ。

「さて、次は貴様らの番か」

板垣が篠田と魔王に向き直る。

「…………しかたねぇな、やるしかねぇか」
「とはいえ、真正面からいっても先ほどの焼き直しにしかならんぞ」
「お前はな。さっきは不意に一発もらっちまっただけさ、今度はそうはいかねぇよ」

そういって篠田はクラウチングスタートのような構えをとる。

「どうする気だ?」
「決まってんだろ、半端な攻撃が効かねぇんなら、デカイの一撃叩き込む!」

無重力の足取りで篠田が駆けた。
風に流されるような軽い動きで、板垣の眼前まで迫る。
その動きに対し板垣は撃退の一撃を放つが、拳圧に流される羽のように篠田が跳んだ。

「重力十倍!!」

板垣の真上を取った篠田が上空から重力を叩きつける。
だが、板垣は機敏なサイドステップでその効果範囲から抜け出し難を逃れる。

「ちぃ!」

篠田が舌を打つ。
この【重力操作】は強力なスキルではあるのだが、使用してみて、篠田はいくつかの弱点を認識していた。

一つは発動の遅さだ。
自身の重力を操作する場合は問題ないのだが、外部の重力を操作する場合はそうもいかない。
能力を発動させるのに座標指定と能力発動のツーステップが必要となり、若干のタイムラグが生じる。

並みの相手であればそれで問題ないだろうが、この板垣退助相手ではそうもいかない。
本能による危機察知能力。
そしてどのような状況でも反応できる身体能力。
当てることは困難と言える。

そしてもう一つは消耗の激しさ。
二倍、三倍程度であれば、大した消耗ではないのだが、五倍を超えたあたりからかなりの消耗になる。
最大の百倍など下手に使うことなどできないし、使ってはずしては目も当てられない。
使うにしても確実に当てられる状況を作れた場合のみだろう。

そして、自身にGをかける場合、Gが高ければ攻撃力は増すが当然かかる負荷も倍増する。
感覚としては自分にかけれる重力は五倍が限界だろう。
五倍での奇襲はすでに失敗している。

となると、やはりそれ以上のGを直接相手に圧しつけるしかない。
0114蛮勇引力 ◆BUgCrmZ/Lk
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2011/09/07(水) 23:21:08.29ID:2UJbbMMo

「なるほどな、ならば任せろ篠田!」

篠田の意図を察した魔王が板垣に突撃する。
突撃した魔王は、板垣に密着しがぶり寄つに組んだ。
腕力は互角。
確かに、これで動きは止まった。
重力操作の狙いを定めることも可能だろう。
だが、完全に密着した状態で魔王まで能力に巻き込んでしまう。
ならばどうするか。

「――――――――スキル【落とし穴】!」
「ぬぅ!?」

組みながら魔王が叫ぶと、板垣の足元に空洞が出現した。
足場を失った板垣はなすすべもなく穴に落ちた。
だが、穴の深さは1メートル程度、落ちたところでダメージにはならない。
つまり、これはただの足止めに過ぎないという事。

「ナイス魔王!
 ――――自重で潰れろデカブツ!!」

魔王が身を引き、その場から離れると同時に、待ってましたと篠田が叫ぶ。
二度とないチャンス。
ここで決めるしかない。
範囲を落とし穴の位置に固定。
そこに向けて能力を最大開放。
上空からたたきつけるように解放する。

「重力――――――百倍!!」

地球上ではあり得ない超重力が板垣の全身に圧し掛かった。
板垣の体が初めて完全に崩れ、蛙のように地面にへばりついた。

「オマケだ」

そういって魔王はその膂力をもって人間大の岩を持ち上げた。
放り投げられた岩石はその範囲に入った途端に強烈な重力に従い超加速を得て落下する。
爆発したような破裂音とともに砂埃が舞い上がる。

「……八ァ…………八ァ…………八ァ。やったか?」

最大出力である重力百倍を使った反動か、篠田は立っていることすらままならないほど体力を消耗していた。
バタリと仰向けに倒れこみながら、その成果を確認する。

辺りを舞う砂埃が風に流され薄まってゆく。

砂埃の晴れた先には、血濡れの鬼神が立っていた。

■■■■■■■■
0115創る名無しに見る名無し
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2011/09/07(水) 23:22:21.78ID:20/5l9vB
支援
0116蛮勇引力 ◆BUgCrmZ/Lk
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2011/09/07(水) 23:23:36.08ID:2UJbbMMo
板垣退助。
彼は己が意志を貫き通すために、ありとあらゆる力を身に着けてきた。

国内最高峰の大学を首席で卒業し若くして政界に革命をもたらした知力。
また、政治活動との二足のわらじながら一代で築きあげた財閥の財力。
そして、自由主義国日本の初代総理大臣としての権力。
一国を率いる指導者としてのカリスマ性を放つ魅力。
その身一つでロシア軍を殲滅した圧倒的な暴力。

故に彼は地上最自由。
繋ぎ止められぬアンチェイン。
何者であろうとも彼を縛ることなどできない。

「八ァ……八ァ……やべぇな、こりゃ……絶体絶命ってやつ?」

息も絶え絶えになりながら、篠田が立ち上がろうとするがもはや体力は底をつきそれすらもかないそうにない。
折れた剣を杖代わりにして何とか立ち上がれるという有様だ。

「さて、どうするよ魔王。…………魔王?」

返答がないので篠田が視線を向けると、魔王は何やら思案している顔だった。

「……おい、何考えてんだ」
「助かる方法に決まっておる。
 だが、二人とも助かるのはどう考えても無理だな」
「んじゃ一人が足止めでもして、その間に一人が逃げるか?
 ま、今のオレじゃ逃げ切るような体力はないがな」
「いや、そうでもないぞ?
 なにより逃げはお前の専売特許であろう?」

そう言って魔王が篠田の胸ぐらをつかむ。

「おい……ちょっとまて、何のつもりだ、魔王」

ここにきて篠田も魔王の意図を察した。
睨みつける篠田の眼光に魔王はふっと皮肉気な笑顔を返した。

「決まっておろう、自分で走れないなら、流されろ――――!!」

ブンと、魔王は膂力だけで篠田を放り投げる。
抵抗する体力は篠田にはない。
放り投げられた篠田はそのまま川に着水し、その勢いに流される。

「テメェ何かっこつけようとしてやがる! ふざけんなクソ魔王―――――――!! ガボッ、ガッ」

叫びも水に飲まれる。
かき分ける体力もない。
溺れるように篠田は水の流れに呑みこまれていった。

【一日目・黎明/E-3川中】
【篠田勇】
【状態】疲労(極大)
【装備】なし
【スキル】『重力操作』
【所持品】基本支給品、フラッシュグレネード×4
【思考】
0.……魔王
1.殺し合いを潰す為仲間を増やす

■■■■■■■■
0118蛮勇引力 ◆BUgCrmZ/Lk
垢版 |
2011/09/08(木) 00:00:09.35ID:5Blr9Q8q
「ほう。仲間を逃がし自らが我に討たれる道を選んだか。見上げた覚悟だ」

板垣は敵を称賛する。
おそらく板垣ならば、魔王を突破し篠田を追撃することも可能だっただろう。
だが、板垣は魔王の覚悟に敬意を払い無理に篠田を追うようなまねはしなかった。

「は。勘違いするなよ人間。奴を逃がしたのではない。
 貴様を殺すのに、奴が邪魔だっただけの話だ」
「ほう?」

だが、違う。
その板垣の勘違いを、魔王は嘲笑う。

魔王の言葉は嘘ではない。
魔王には第三の形態が存在する。

「――――見せてやろう。魔族の王の真の力というモノを」

その身が人外のそれに変貌していく。
それは伝説に存在するドラゴンそのもの。
その体躯は漆黒に染まり、全身から傷口の様な眼が開く。
禍々しさは筆舌に尽くしがたい。

『GAAAAAAAAAAAAAA!!!!!!』

断末魔のような雄叫びが響く。
そこにはもうそれまでの魔王は存在していなかった。

そこにいたのはすべてを壊し。すべてを殺し。すべてを滅ぼす悪魔。
この姿になってしまったが最後。
彼は理性を完全に失い、敵も味方も判別なく周囲を破壊し尽くすまで止まらない、真の魔王と化す。

目の前の敵を殲滅すべく魔界の王が降臨した。

【一日目・黎明/E-4平地】
【板垣退助】
【状態】頭部にダメージ(中)、全身にダメージ(大)
【装備】なし
【スキル】なし
【所持品】基本支給品、不明カード1枚、不明支給品1〜2
【思考】
基本:自由を愛し、平等に生きる
1.闘いを挑む者には容赦しない
2.自由を奪う男(主催)を粛清する

【魔王】
【状態】最終形態、ダメージ(大)疲労(大)、背中に火傷
【装備】なし
【スキル】『落とし穴』
【所持品】基本支給品、釣り竿
【思考】
1.GAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAA
0119蛮勇引力 ◆BUgCrmZ/Lk
垢版 |
2011/09/08(木) 00:01:13.85ID:5Blr9Q8q
投下終了、支援に感謝
最後にさるっちった

まあ、動かしてかき乱すだけのお話
0120創る名無しに見る名無し
垢版 |
2011/09/08(木) 00:13:10.64ID:pOhbjmS7
投下乙です
板垣強すぎワロタ
銃弾効かないわ異世界組相手に一歩も引かないわ
魔王が早くも第三形態でなんだか序盤なのに最終決戦の臭いがw
0121創る名無しに見る名無し
垢版 |
2011/09/08(木) 14:04:37.74ID:xUQ0DBGF
投下乙
フィクションなにやってくれてんのwww
板垣マジチート、勇者と魔王を圧倒するとかなんだよこいつww
まなみんたちも爆弾抱えちゃったし、回復したらヤバイなこりゃ
0122創る名無しに見る名無し
垢版 |
2011/09/08(木) 20:09:48.02ID:xUQ0DBGF
現在地を更新
ttp://www10.atwiki.jp/orirowa2nd_ver2?cmd=upload&act=open&pageid=39&file=ori2map_022.jpg
0126創る名無しに見る名無し
垢版 |
2011/09/09(金) 23:28:31.81ID:oXKKJ/zv
もし魔王が負けたら後板垣に対抗できそうな奴って…?
オーヴァー辺りとも戦えそうな萌佳でも即死とかインフレやべぇww
0127創る名無しに見る名無し
垢版 |
2011/09/10(土) 01:59:57.00ID:JYXXGI/x
いいことを教えてやろう、板垣はこう見えて実は対主催なので倒す必要はない

まあ両方生き残って暴走マーダーと最強マーダーが暴れてくれるのがロワ的にはベストだけどww
0128創る名無しに見る名無し
垢版 |
2011/09/10(土) 23:27:30.60ID:0lHotwYi
初期スキルカード
>>76に蛮勇引力の分を追加

愛沢優莉【病の呪い】
藍葉水萌【自己再生】
板垣退助
一色亜矢
一色麻矢
猪目道司【未来予知】
イリアム・ツェーン
イロハ
オーヴァー【平賀源内のエレキテル】
カイン・シュタイン【その歌をもて速やかに殺れ】
片嶌俊介【ブレーキ】
加山圓【五感強化】
琥珀愛子【復讐するは我にあり】
逆井運河【二分の一!】
椎名祢音【変身】
宍岡琢磨【魔弾の射手】
篠田勇【重力操作】
白井慶一【<<]]巻き戻し】
田崎紀夫
橘蓮霧【剣技】
トーマス・A・エジソン
二階堂永遠【ネクロマンサー】
葉桜加奈子
花緒璃乃【光あれ!】
聖澤めぐる
ファンガール・J
フィクション【ブラックアウト】
フランツ・O・ブリュデリッヒ
フランドール・オクティル
魔王【落とし穴】
真琴真奈美
御木魚師【パブリックエネミー】
溝呂木桐子
安田智美【ブレインイーター】?
劉厳
龍造寺さくら【ある魔法少女の魔法能力(めぐる)】
0129創る名無しに見る名無し
垢版 |
2011/09/10(土) 23:28:52.31ID:0lHotwYi
未登場スキル一覧

【●REC】
【FaceBook】
【GPS】
【ある魔法少女の魔法能力(智美)】
【エターナルフォースブリザード】
【エネルギードレイン】
【ゴッドハンド】
【シュレーディンガーの猫】
【ハニートラップ】
【マッチセラー】
【ものまね】
【加速装置】
【我が胎の愛すべき蠱】
【給仕募集】
【血流操作】
【剣豪】
【航海術】
【高速思考】
【骨葬の儀式】
【殺人読本】
【自己再生】
【自動蘇生】
【赦されざる者】
【守護神の虫唄】
【重力操作】
【植物操作(プラントオペレート)】
【神の声】
【追憶の書庫】
【痛いの痛いの飛んでいけ】
【飽食の晩餐】
【密毒】
【落とし穴】
【霊媒】
0130創る名無しに見る名無し
垢版 |
2011/09/13(火) 00:23:40.04ID:IRTsTt85
話題も無いので話題を振ろう。



このロワのバスト比べみたいなのはどんなんだと思う?

俺は絶対にまなみんはBのクセにパット入れてCぐらいだと思う。
異論は認めない。
0134創る名無しに見る名無し
垢版 |
2011/09/14(水) 00:16:11.85ID:WXTOp2Ie
ヒロインポジにいるのがどいつもロリ年齢だからなーw
>>45を参考にすると、高校生以上の女性はほとんどがアレなのばっかりというのも一員かとw
0136創る名無しに見る名無し
垢版 |
2011/09/26(月) 23:00:23.62ID:xTyVs7+4
age
0138創る名無しに見る名無し
垢版 |
2011/10/07(金) 11:47:09.06ID:yNV1nMTh
早速過疎化……
まぁ、これでオリキャラ系の需要がないのがはっきりしたか……
0139 ◆2k068i6mGuam
垢版 |
2011/10/08(土) 02:23:19.49ID:CamBSLUn
あれ、これって予約してもいいんかな?
0141ドーン・オブ・リビングデッドを夢見て ◆2Gfp1DTsCA
垢版 |
2011/10/17(月) 02:44:18.36ID:yVc//5wf
 2chの方がアクセス規制に巻き込まれてしまったので、緊急避難的に以前の仮投下スレに投下させていただきました。
 てかあそこは引き続き使って良いのかしらん?

ttp://jbbs.livedoor.jp/bbs/read.cgi/otaku/14052/1281450330/96-

0142創る名無しに見る名無し
垢版 |
2011/10/17(月) 02:59:29.18ID:Whwvs5Qm
どうなんだろう……
前回参加してないから分からないや
とりあえず代理投下します
0143ドーン・オブ・リビングデッドを夢見て(代理投下)
垢版 |
2011/10/17(月) 03:01:10.20ID:Whwvs5Qm
【早朝:逆井運河】
 死んでいる。
 どこをどう見たところで、既に死んでいる。
 ぎょろりと見開かれた目に、弛緩した舌がだらしなく開いた口から覗き、乾いた涎の跡が白み始めた空の下に見えている。
 今ここに倒れている少女は、間違いなく死んでいるのだ。
 どこをどうしたところで、この事実は覆らない。
 
 さて。まさにこれこそが自分の運命だ。
「誰か別の人間と会いたい」 と願った結果、真っ先に「死体と巡り逢う」 ということ。
 運命に弄ばれし男、逆井運河にとっては、予定調和ともいえる展開。

「…はぁ〜…。死にたい…」
 思わずそう声に出す。
 特にこれという意識も意図も無く、ただただ息を吐くが如く出されたその言葉。
 その言葉に反応があったのも、まさしく逆井の不運の成せる業だろう。
 何より、少女の死体の前に佇んでいるところほど、誰かに見られたくない場面というものは無い。

「話せば分かる」という言葉は、逆井の辞書にはない。
 あったとしても、そこの意味には、「徒労」としか書いてないのだ。
 話せば話すほど怪訝に思われ、説明すればするほど信じて貰えない。
 経験から、逆井は即座に逃げ出すことを選んだ。
 とはいえ逃げたところで、たいていは捕まる。
 それでも、何かしらの弁明をして信じられず、人殺し呼ばわりされてエライ目に遭うよりは、逃げている最中に転んで頭を打って死んでしまう方が、まだマシな様に思えた。
 そうだ。やってもいない殺人の汚名を着せられるのは、なんとしても避けたい。
 そう考えてから、ああしまった、今、俺、「なんとしても避けたい」と思っちまった、と後悔する。
 糞。
 せめて、少しはマシな方に陥って欲しい。

 背後で誰かの声が聞こえる。
 しかしもう足を止めるわけにはいかない。
 走る。逆井は走る。走り続けて逃げ続けて、背後を見ている暇もない。
 せめてこんなときくらいは…と思った瞬間、足元の石に蹴躓く。
 無様に倒れて這い蹲るが、それでもばたばたと藻掻いては、まだなんとか立ち上がろうとする。
 死にたがりのわりには、諦めが悪い。何せ諦めてどうにでもなれと思ったところで、むしろそうなるほどにどうにもならないのだ。
 緩い斜面にころりと半回転する。
 半回転して視線が背後を向くと、そこには球体そのものに見える丸まるとした男。
 男は走っているのか歩いているのか。いや、むしろ転がっているんじゃないかという態で、これならば普通に走っていて追いつかれる心配は無いのだが…。
 逆井が先程足を取られた石に、その丸い男までもが足を取られた。
 さて、今ここは緩やかな斜面になっている。
 自分は転んで、その緩やかな斜面を転がった。
 追ってきた丸まるとした男も、自分同様に転がった。
 その結果、どうなるか?

 おむすびころりんすっこんこーん♪

 逆井の頭の中で、昔話の中の一節がこだました。
0144ドーン・オブ・リビングデッドを夢見て(代理投下)
垢版 |
2011/10/17(月) 03:03:31.67ID:Whwvs5Qm
 
【早朝:田崎紀夫】
 
「もしかしたら、友達かもしれないし…」
 そう言って少しうつむいた電波系女子中学生ファンガールの言葉に、紀夫はいささかどぎまぎとした。
 紀夫はまだ彼が会っても居ない某バスケ部員などと違い、小中学生に欲情するタイプではない。
 巨乳好きだし、どちらかというと「年上のお姉様に優しく手ほどきをして貰いたい」なんていう願望があったりする。
 しかしだからといって、目の前で哀しげに目を伏せた女の子を無碍に出来るわけもないし、そもそも年下だろうと年上だろうと、女性という存在にまるで免疫がない。
 紀夫はそれまでの浮かれたテンションから一転。
 自分達が先程見た、見も知らぬ少女の死体について話した後のファンの様子に、思わず息を呑む。
 曰く、ここに連れてこられる前に、友達と一緒にいたのだ、という。
 そして、紀夫達が見た少女の特徴は、どうにもその友達と似ているように思える、という。
 だから、そこに案内してくれないか、と。
 共にその死体を見ていた猪目は、しかしそれには難色を示す。
「良く言うだろ? "犯人は現場に戻る"って。
 ヘタに戻ってバッタリ、ってのは、僕ぁ御免被りたいんだけどなぁ…」
 そんな風に言われると、たしかにそうかもしれないとも思う。
 しかし、ちらりとファンガールの顔を見てしまうと、なんとかしてあげたいとも思う。
「あの、俺…」
 意を決して、紀夫は声に出す。
「俺、こう見えても、柔道3段なンすよ!
 もし怪しい奴が現れたら、ズバーンと、ぶん投げちゃいますから! や、マジでマジで!」
 果たしてその宣言通りに、怪しい奴は、居たのだ。死体の直ぐ側に。

 柔道が得意、という人間は、得てして足が短いことが多い。
 足が短いというのは、重心が低いと言うことだ。そして重心が低いというのは、相手を投げるのにも、投げられないようにするのにも向いている。
 馬鹿でお人好しの田崎紀夫は、様々な面で柔道の神にだけは愛されていた。
 小柄な癖に体重があり、何よりその重心の低さは見事なほどだ。
 勿論、柔道の神以外には、そっぽを向かれてもいる。
 特に、徒競走の神(なんてのがもし存在するのなら)からの嫌われぶりと来たらたいしたものだ。
 とにかく、「走る」という行為に、これほど適さない体型の人間も居ないだろう、と言うほどに。

 すぐに見失うだろう。誰もがそう思う。何せ、必死で追いかけている紀夫自身、そう思っているのだ。
 しかし、慌てているからか本気じゃないのか、紀夫からすれば羨ましいほどにスマートな(というか、中肉中背でごく普通な)体型の怪しい男は、よろよろと巧く走れていない。
 走るのはヘタでもスタミナはバツグンな紀夫は、なんとか結構な距離を追い続け、終いに男が転んだ。
 しめた!
 そう思ったのも束の間、紀夫は男と同じ場所で躓いて、同じように緩やかな斜面を転がり落ちた。

 紀夫にダメージがないのは勿論、男の身体がクッションになったからだ。
 そして当然、男はその分さらにダメージを負っている。
 絡み合う二つの肉体は、どちらも荒く息をしている。
「こ、この…ハァ、ハァ…あや……あやし…ハァ…ハァ…」
 この、怪しい奴め、捕まえたぞ。
 紀夫が言いたいことは、こうだ。
 実際に口にしているのは、ほぼ言葉にはなっていない。
 逃げていた男の方も同様で、何かをもごもごと口にしているつもりのようだが、それは殆ど言葉になっていない。
 まだ白み始めたばかりの薄暗い空の下、荒い息と言葉にならぬ呻きだけが周囲にこだまする。

 ぬるり。
 何かが、紀夫の手を滑らせた。
 何だろうかと考える暇もなく、今度はそれが、身体を滑らせる。
 再び男の身体の上にのしかかる格好になった、と思ったが、それも違った。
 先程まで組んずほぐれつ絡んでいた男の身体からは、脈打つ血流と、呼吸の動き。そして何より、ほてった体温が感じられていた。
 しかし、違う。
 今、紀夫がのしかかる形になった身体からは、何も感じない。
 いや、冷たく、そして妙に強ばった感触と、鉄錆びた臭気が感じられている。
「ふあぁあああぁ〜〜〜」
 逃げていた男が、息とも悲鳴とも取れぬ声を漏らす。
 紀夫も又、ほぼ同時に、同じ様な息とも悲鳴ともつかぬ声を漏らしている。
 そこにあったのは、首を切り落とされ、血の海に浸かった、筋骨隆々の大男の死体であった。
0145ドーン・オブ・リビングデッドを夢見て(代理投下)
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2011/10/17(月) 03:06:56.48ID:Whwvs5Qm

【早朝:ファンガール・J(本名:金山純子)】

 これは良いチャンスだ。
 デブの紀夫と、にやけエロ親父猪目の話を聞いて、私こと、類い希なる時空戦士であるファンガール・Jはピンと閃いたワケさ。
 彼ら2人が既に見ていたという少女の死体。
 もしその死体にスキルカードが残っていれば、自分が手に入れた【ネクロマンサー】のスキルを試せるかもしれない。
 死体を蘇生して従わせる、なんて、素晴らしくウットリするようなスキルではあるが、いざ実戦という場で突然使ってみて、どれほどの威力を発揮できるかは心許ない。
 蘇生した死者が、昔の古典的ゾンビムービーの様な、うーあーうーがー言うだけの、ノロノロ動く死体であったりしたら、それこそ何の役にも立たない。
 それに、カードにあった但し書きによれば、使えるのは放送があるまでの間に1回のみ。
 だとしたら、早朝にあるはずのそれの前に、その1回分を使っておきたい。
 この素晴らしい閃きを実行するため、私は一芝居打つことにした。
 適当な話をでっちあげ、もしかしたらその死体は友人かも知れないなどと嘯く。
 言葉少なげにそう言ったのは、でっち上げられるネタがあまり思い浮かばなかったからなのだが、それがむしろ、不安に苛まれる美少女という雰囲気を醸し出した……と、我ながらにそう思う。
 にやけエロ親父は難色を示したが(ったく、いけすかないオヤジだ!)、見事なまでに単純馬鹿であるおデブの紀夫は大いに同情し、自分が守るから一緒に行こう、等と息巻いてきた。
 その勢いに押されてか、渋々ながらの態でにやけエロ親父もそれに従う。
 これで、死体探しパーティーの結成だ。
 あー、ヤバイ。
 頬が緩む。
 なんかオラ、ワックワクしてきたぞ! 
 生の死体(ん? 今何か変なこと言った?)をまた見れるってのもそうだけど、やっぱりこのスキルカードの力を確認出来るのがたまらない。
 なんてったって、最初にあたしに支給されてていたのは、【ものまね】のカード。
 要するに、それだけじゃ何の役にも立たないカードだったのだから! (ほんと、ヨグスってマジ信じられない!)
 にやけそうになる顔を見られぬように、うつむき気味に顔を伏せながら、前後をおデブと親父に挟まれて歩く。
 おデブは盛んにこちらの様子をうかがい、何とも益体もないことを喋っている。何だよ俺の心のカレーBest5って、しらねーよ。
(ってか、もしかしてこいつ、私のこと元気づけようとしているつもりなのか? それ、けっこう笑えるけど)
 まあ、こいつはそこそこ趣味も良いし、お人好しで便利そうだから、少しは相手をしてやっても良いだろう。
 気に障るのは、後ろにいるエロ親父だ。
 こいつは、確かに会ったときから一貫して、「もっとも」な事しか言わない。
「みんなで協力して助け合おう」だの、「困難に立ち向かおう」だの…。
 要するに、胡散臭い。
 俗物も俗物、俗から生まれた俗太郎、みたいな顔をしているくせに、こんなときこんなに場所で、何言ってやがる?
 美少女相手に浮かれまくっているおデブ紀夫の方が、遙かにマシだ。
 だいたい顔からしてエロ親父のくせに、美少女相手に何の反応も示さないのも怪しい。
(勿論反応されてもキモいだけだけどね)
 何れにせよ、このにやけ親父の猪目という奴は、なんだか妙に、気に入らない。

 そんな事を考えていると、急に生暖かい壁にぶつかった。
 それは文字通りに肉の壁で、要するに立ち止まったおデブ紀夫の背中だった。
(うわ、じっとり汗ばんでる。キモっ!)
 顔を上げ、前を見ると、白み始めた空の下に、ぽつんと立ち竦む男が一人。
 些か、焦る。ちょっと、なんだよこの想定通りの展開!?
「…はぁ〜…。死にたい…」
 突然、男がそう呟いた。また自殺志願者かよっ! どんだけ死にたがりがいるんだよ!?
 そう心の中で突っ込むより早く、おデブ紀夫が走り出した。
 あとはもう、無様な追いかけっこの始まりだ。 
 おいおい、俺が守るよ、的な事言ってたけど、そのもったらもったらは何なのよ。
「おい、紀夫くん!」
 うしろでにやけ親父が名前を呼んでるようだったが、聞こえちゃいない。
 おデブの頭の中はもう、この男が殺人犯で、そいつを捕まえてやらねば、という事にでもなっているのだろうか。
 あっけにとられている私たちを置いて、鈍足のくせに早速と姿が見えなくなっていった。
0146ドーン・オブ・リビングデッドを夢見て(代理投下)
垢版 |
2011/10/17(月) 03:08:55.15ID:Whwvs5Qm
 さて、どうしたものか。
 一応、この死体を確認しなきゃならない。
 友達、なワケは当然無い。けどそういう建前でここまで来たのだから、まあ近づいても不審な事はあるまい。
 ちらと後ろを見る。
 ニヤケ親父は、走っていってしまったおデブ紀夫達の方へと、追いかけるでもなく歩いていってる。
 追うべきか、ここに残って待つべきか、判断しかねているというところだろうか。
 だとしたら、今がチャンスかもしれない。
 距離を確認する。けっこう離れているし、小声なら聞こえもしまい。
「……ネクロマンサー」
 どうやら首を絞められたと思われる女の子の死体の脇に座り込んで、小さくそう呟いた。
 ―――反応、無し。
 チッ! なんだよもう!
 これ、カードが使えないのか、それとも、この死体がカードを持ってないのか…。
 考えてみる。
 たしか、最初に会った自殺女は、死んだ直後に身体の上にカードが浮かび上がってきた。
 つまり、死ぬと一旦、カードは外に出る、ということか。
 で、この死体の上にはカードはない。
 何故かと言えば、こいつを殺した奴が持ち去った、という事…だよな、やっぱ。
 となると…だ。
 やっぱりこのカードの力を発揮するためには、直接自分で殺してから、カードを奪わずに【ネクロマンサー】のスキルを使う、というのが正しい、という事になるのか…?
 自殺女から奪った拳銃に意識をやる。
 けどなあ…。銃なんて撃った事無いし、巧くできるかなあ。

「駄目だなぁ、もっと巧く隠さなきゃあ」

 思案していたところに、丁度耳の後ろから、そう声がした。
 
 
【早朝:猪目道司】
 
「何よッ…!?」
 慌ててバッグの中の銃に手を伸ばそうとするが、猪目の手がそれを押しとどめる。
「い…痛ッ…何すんのよ!?」
 怒気をはらんだ声だが、それ以上に混乱と不安が現れている。
「いやね。だってお嬢ちゃんさ。
 全ッ…然、隠せて無いんだもんさ!
 嬉しそうにニヤニヤしてるし、死体見てるときだってどー見ても友達かどうかなんて気にしてる風じゃないしさ。
 その点僕なんかね。元から顔がニヤケ面! むしろ逆に怪しまれない、なーんつってね! なははは」
 笑っている。
 酒でも飲みながら冗談を言い合うときの中年そのものの口調で、饒舌にそう話している。
「ただ死体を見てみたいだけ、ってんなら、まあ分かるよ。うん。
 でも、違うよね。それにしちゃあ大げさな嘘だ。
 だから、お嬢ちゃんは死体そのものに用があった。
 そして多分それは、さっき呟いていた【ネクロマンサー】とかって言葉と関係がある…だよね?」
 苦々しい、とでもいわんばかりの顔をするファンガール。
「だ…だッたら何だっていうの…よッ!?」
「僕もね。スキルカードってのに、本当に不可思議な力がある、って事、もう知ってるの。
 使ったからね。【未来予知】だってさ。スゴイよねぇ。だって、本当に未来の様子が、見えちゃったんだもん! は、ははっ!」
 猪目の声音は、次第に躁病じみたものに変わっていく。
「だから、この娘も簡単に殺せちゃった」
   
 息を、飲んだ。
 叫び出しそうに開かれた口を、猪目がもう片方の手で塞ぐ。
「めっ! 駄目でしょ、おっきい声だしちゃあ。誰かに聞こえちゃうでしょ?
 おじさんね。大人でも子どもでもイケる口なんだけどね。
 ま、今は残念ながらタイミングが悪いよね。
 急がないと、紀夫くん帰ってきちゃうかもしれないし…って、こんな事話しているのも、よくないな、うん!
 善は急げ、って、言うじゃない?
 それじゃーばいばい! 元気でなー!」
0147ドーン・オブ・リビングデッドを夢見て(代理投下)
垢版 |
2011/10/17(月) 03:11:34.54ID:Whwvs5Qm

【早朝:二階堂永遠】 

 溜息をつく。
 いや、実際には溜息なんてつけることはない。私は現時点で、意識だけの存在だからだ。
 それでも、私は溜息をついた。少なくともその意識の上では、だが。
 考え得る中でも、最悪な状況に物事が進んでいる。
 ゲーム開始から出会った中で、最も自分を所持して欲しくない相手が、私の本体である、【ネクロマンサー】のカードを所持してしまっているのだ。
 猪目道司。連続殺人犯。見るからに風貌も冴えない、どこにでもいるようなニヤケ面の親父ながら、平然と、日常的に人を殺せるサイコパス…。
 ああ、いやだ。
 私が最初に取り憑いた相手、未来から来た厨二病電波少女のファンガール・Jは、うかつにもこの男と2人きりになり、そして背後から組み付かれ、首を絞めて殺された。
 ファンガール自体、たしかに浮かれていたし注意力不足でもあったけれど、それでもこ男の観察力は侮れない。
 嘘をついて死体まで案内させたことに何か裏の意図があると見抜いて、さらには【ネクロマンサー】という呟きから、スキルカードを使って死体に何かをするつもりだとまで見当を付けた。
 猪目は、その言葉が死霊使いを意味する言葉だと言うことは知っていたらしい。
 死者蘇生、とまでは想像していなかっただろうが、所謂降霊術とか、イタコの口寄せみたいなもので、そこから自分の殺人が発覚するかもしれないと考え、即座に
口封じの決断をしたようだった。
 私からすれば、たまったものではない。
 
 ただ。
 少しだけ、楽しい事もあった。
 猪目は【ネクロマンサー】のカードを手に入れて、すぐさまたった今殺したばかりのファンガールにそのスキルを使ったのだ。
 そう、念願のゾンビ少女第一号の誕生である。
 ゾンビ化の効果には相当面食らってはいたが、この男そういう点ではやけに適応力がある。
 こりゃ死体を始末する手間も掛からなければ、ファンガールが居なくなった言い訳をしなくても済む、ということで、意外にアッサリそれを受け入れた。
 まあ言うなれば今いるのは、【ファンガール・M・J】 というところか。
 M、は、【ものまね】、のM。
 【ネクロマンサー】が疑似人格を与えるのは、厳密には死体ではなく、死体が持っていたスキルカードだ。
 ファンガールだった死体を、ファンガールの人格をベースに、【ネクロマンサー】カード所持者への忠誠心を加えた、【ものまね】のカードが動かしている…。
 要するに、そういう事だ。
 
 ああ、まったく猪目の奴、楽しそうにしている。
 それに引き替え、こっちはだんだん意識すらぼやけてきた。
 所持者の自我が揺らいでいけば、【ネクロマンサー】のカードである私は、所持者の意識を浸食して、最終的には支配することも出来る。
 しかしこの男、ファンガールなどとは比べものにならないほど、強固で強烈な自我を持っているのだ。
 むしろ今、その猪目の自我の強さに圧されて、自分自身の意識体としての自我を保ち続けるのも難しい。
 仕方ない、しばらくは眠っていよう。
 生ける死者達の世の夜明けを思いつつ、早いところ誰か、出来れば可愛らしい少女が、このイカレ殺人鬼を殺して、私を所持してくれることを願いながら……。

【ファンガール・J:死亡】

0148ドーン・オブ・リビングデッドを夢見て(代理投下)
垢版 |
2011/10/17(月) 03:12:01.98ID:Whwvs5Qm
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【一日目・早朝/C-5 劉厳の死体の近く】

【逆井運河】
【状態】健康、疲労
【装備】なし
【スキル】なし
【所持品】基本支給品、スキルカード『二分の一』、不明支給品1〜2
【思考】
1.死体だし、追っかけられるし、また死体だし、もう死にたい…。

【田崎紀夫】
【状態】健康、疲労
【装備】なし
【スキル】なし
【所持品】基本支給品、不明スキルカード、不明支給品1〜2
【思考】
1.うわ、これ、死体っスか!? またスか!? また死体スか!?

【一日目・早朝/C-6 林】

【猪目道司】
【状態】健康
【装備】S&W M10(5/6)
【スキル】『未来予知』 『ネクロマンサー』(浸食率0%)
【所持品】基本支給品、不明スキルカード、不明支給品2〜4 、予備弾薬(48/48)
【思考】
1.生き残って自由になる。
2.ゾンビのファンガールと共に、紀夫でも捜すかな。

※以下、【ネクロマンサー】によって生み出されたゾンビ
【ファンガール・M・J】
【状態】外的損傷無し
【装備】果物ナイフ
【スキル】『ものまね』
【所持品】基本支給品、
【思考】
1.【ネクロマンサー】所持者に従う。

0149創る名無しに見る名無し
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2011/10/17(月) 03:13:59.74ID:Whwvs5Qm
以上で代理投下終了です。
状態表のみ行数制限に引っかかったので、こちらの独断で分割させて頂きました。
申し訳ない。


ああ、ファンガール……
まあ、やはり一介の中二病患者とベテラン殺人鬼じゃこうなっちゃうよなあ。
ファンガールの一人称視点、面白かっただけに残念だけど、仕方ないね。
ようやく効力を発揮したネクロマンサーがどうなることやら……
0150創る名無しに見る名無し
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2011/10/17(月) 15:46:15.51ID:34Gn9UUx
投下乙
二階堂さんが封印されてしまった…殺人鬼スゲェwww
果たしてゾンビ化したファンガールちゃんの実力は…?
0154創る名無しに見る名無し
垢版 |
2012/07/02(月) 07:06:01.69ID:BovNgoep
なるほどね
0156創る名無しに見る名無し
垢版 |
2012/09/10(月) 00:40:21.23ID:EvLnd1We
ほぼ一人の票だった気がしないでもないが

というかそんな情熱あんなら再開させろよww
0157R-0109 ◆eVB8arcato
垢版 |
2012/10/24(水) 19:12:42.35ID:VOh5ja4r
初めまして、そうでない人はお久しぶりです。
現在、投票で決めた各パロロワ企画をラジオして回る「ロワラジオツアー3rd」というものを進行しています。
そこで来る11/3(土)の21:00から、ここを題材にラジオをさせて頂きたいのですが宜しいでしょうか?

ラジオのアドレスと実況スレッドのアドレスは当日にこのスレに貼らせて頂きます。

詳しくは
http://www11.atwiki.jp/row/pages/49.html
をご参照ください。
0162僕たちの失敗 ◇EDO/UWV/RY (代理)
垢版 |
2012/11/04(日) 18:55:18.23ID:GGR5rvWO


あの生きる都市伝説フィクションさんがいなくなってしばらくしてのこと。私はとりあえず近くにあった電波塔のてっぺんに登っていた。
理由は単純。他人に迷惑がかからないようスキルをこっそり試し打ちしたかったし、地図と辺りの風景を照らし合わせたかったからだ。
え? どうやってわざわざ登ったって? 気にしないの、そういうのは。元エージェントよ私は。軽いってのこれくらい。
まぁとにかく、登ってね。まずさっそくスキルカードのパワーを解放して、そして試し打ちしたわけですよ。
そして満足したら、今度は一心不乱に地図を見ていたわけですよ。それはもう穴が空くくらいにはね。実際手汗で空いたわ、隅っこが。
で、その結果、気付いたことがあるのよ。いや、ぶっちゃけ気付きたくなかったんだけどこれ。
でも気付いちゃったからには、見て見ぬふりは出来ないんですよ、この問題は。

やってしまいましたなぁ。

実はね、首輪を解析するためのグッズとかメカとかが置いてそうな場所を求めてたの。技術者が腕を振るえるように、ね。
だから私はわざわざこんな高い場所で地図を見ていたんだけどね……どうも、それが出来そうな施設がないのよ。
いや、ホントに。だって見てよこれ。デパートにそんなグッズある? よしんばホームセンターチックなコーナーがあっても、ちょっと厳しいでしょ。
神社とか警察署でこんなもんどうにかなるわけないし……希望があるとすれば病院かな。でも病院に行ってX線検査しても、どうかなぁ。
実際ね……素人なら自転車直すような工具とかドライバーあればいいんじゃね?≠チて思うかもしれないけどね……無理よこれ。
見てよ、つなぎ目一つ無いでしょこれ。ドライバーがあってもさぁ、刺さんないわよ。こんな状態でX線検査してもさ、解決しないっしょ。
だからね、うん……やばい。ちょっと生半可なことじゃあ、この首輪は中を探れそうにはない。エージェントの目で、はっきりとそう分かった。

ほぼ詰んだわー。

やばいなー、どうしよっかなー。
いやー、首輪に対してアクション起こせないのも辛いけど、何よりもフィクションにどう言い訳すりゃいいか考えなきゃなのが辛いわー。
いっそこう、架空の世界に出てくるようなドラゴンがいてくれたりしないだろうか。出来ればこう、すっごく強そうな。
そんでもってぎゃおーとか言いながら熱いブレス吐いてくれたら、この継ぎ目のないガワ≠熄緕閧「具合に溶けて……その前に中身ごと溶けますよねー、わかります。

いや、まぁ、私のスキルでどうにかならないかな? とか思ってたりはするんだけどね。

私はさっき「ほぼ詰んだ」と思ったわけだけど、それが「ほぼ」だったのはそれが理由。
実はだ、今の私ってば……なんか凄い能力ゲットしちゃったわけなのよ。いや、本当に。
試し打ちもしたから分かる。このスキル自体はまったくもって素晴らしいものだ。

ご覧下さい。この凍り付いた電波塔を。
0163僕たちの失敗 ◇EDO/UWV/RY (代理)
垢版 |
2012/11/04(日) 18:56:40.11ID:GGR5rvWO

私に与えられたスキルカード。それは「エターナルフォースブリザード」とかいう、なかなか奇妙奇天烈な名前のものだった。
曰くこれは、対象を大気ごと凍らせる力らしい。ぶっちゃけ強すぎじゃないですか、と思って電波塔に登ったまま℃獅オ打ちしたんだけど……ほら、ご覧の有様ですよ。
もはやこの電波塔、電波塔じゃない。こりゃ氷山だ。しかもこう、タイタニックに大打撃与えられる類いの硬度の。
だから、もしやこのパワーで首輪を氷付けにしてしまえば、後は割るだけで安全に中身が見られたりするんじゃないかなと思うのよ。
……ただね、それを試す勇気は今はない。何せ首輪なんてまだ一つしか持ってないし、それが仮に凍った状態でも容赦なく爆発されると困る。
しかもほら、下手したら私の手首から先が吹っ飛びますし。それだけは駄目だよね。エージェントが片手吹っ飛ばしてちゃ話にならないですよ。
だからほぼ詰み≠ニはそういうこと。私はもっと首輪を集めなきゃいけない。そうじゃなきゃフィクションとの約束なんて絶対に守れない。
下手な鉄砲数打ちゃ当たる。危険人物相手ならば自分から喧嘩を売ることも視野に入れなきゃ。私は、闘いには無縁ではいられないらしい。
よし、そうと決まればじっとしているわけにはいかない。逆井運河を探しつつも、急いで首輪を集めないと。

だからとりあえず、誰か助けてください。

え? 急にどうしたって? いきなり助けを求めるとかエージェントらしくない? 支離滅裂?
いや、あのね、聞いて欲しいんだけどさ……実は私ね、動けなくなっちゃった!
さっきほら、足下の電波塔めがけてスキルを試し打ちしたって言ったじゃない? そして見事に電波塔は凍って、ね?
でさぁ……初めてだから、コントロール出来なかったのよ。だからほら、見てよ……足首まで凍っちゃってやんの。
本来は電波塔の先まででよかったのに、勢い余って氷がバキバキバキって私の足首まで侵蝕してね。そんでこれなのよ。

助けてー。

どうしようね、これ。レディ・スミスで叩きまくったら氷割れるかな? 割れたら良いな。割れませんかねぇ?
とりあえず自分でも頑張ってみるけど、もしも割れなかったら……ほぼ詰んだわー。

やってしまいましたなぁ。



【一日目・早朝/C-5電波塔のてっぺん】
【イリアム・ツェーン】
【状態】健康、足首から先が凍り付いて電波塔とドッキング、動けない
【装備】M36レディ・スミス
【スキル】エターナルフォースブリザード
【所持品】基本支給品×2、不明支給品0〜1、首輪×1
【思考】
1.やってましましたなぁ。ほぼ詰んだわー。助けてー。
2.参加させられてるであろう逆井運河を探す
3.首輪を解析できる技術者を探す
4.正午に教会でフィクションたちと落ち合う
※参加者候補の名前は記憶しています
※電波塔が凍り付いています

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以上で投下終了です。
したらばがないとの事なので先日のラジオツアースレ(下記)に投下されていました。
http://jbbs.livedoor.jp/bbs/read.cgi/otaku/5008/1351943650/
しばらくはここを使うのもいいかも?

というわけで投下乙!
エターナルフォースブリザードが日の目を見たと思ったら自爆wwwwww アホスwwwwwwwww
マーダーに会う前に脱出したいですね!
0164創る名無しに見る名無し
垢版 |
2012/11/04(日) 19:19:45.74ID:58Br8/TQ
投下&代理投下乙です
イリアムさん、登場話から失敗しかしてない気がするなw
探してる運河は近くにいるから早めに見つけてもらえるといいね!
0166騎士と騎士 ◇BUgCrmZ/Lk
垢版 |
2012/11/08(木) 00:35:50.54ID:nvboJMLX
じきに夜も明けようかという頃。
薄暗い山中で、足元すら見えぬ獣道を進む二つの影があった。
一つは姫フランドール・オクティルであり、もう一つは騎士フランツ・O・ブリュデリッヒの影である。

道なき道をかき分けるように先頭を行くのはフランツだ。
周囲への警戒を怠らず、後を行くフランドールのため獣道をかき分け最低限ながら道を整え進む。
その表情にはいまだ疲れの色は見えず、余裕すら感じられる。

対照的に、その後を行くフランドールの顔色は優れない。
見せぬようにはしているがその表情の端からは若干の疲労の色が覗いた。
それも当然。夜行訓練などによりある程度は慣れているフランツとでは溜まる疲労度が違う。

「フランドール様。このあたりで少し休息に致しましょう」

そう言ってフランツが足を止めた。
見れば、少し先に休憩に適しているであろう、比較的開けた平地が見えた。
その提案が自分を気遣っての事だと気づいたのだろう。
フランドールはその提案を否定するように首を振った。

「フランツ様、お気遣いは無用です。今は先を急ぎましょう。
 こう見えても私、山歩きは得意ですのよ?」

この言葉自体は嘘ではない。
フランドールは日頃から城を抜け出して動物や子供らと戯れるおてんば姫だ、山道には慣れている。

だが、整備された山道と獣道ではわけが違う。
加えて、夜道ともなれば、その歩き方も変わってくる。
更に異常なこの状況下における精神的な負荷。
どれも無視できるようなものではない。

「逸る心中はお察しします。ですが、逸ればこそ今はまだ無理をするべきではありません。
 時期日が昇ります、せめてそれまでは身を休めご自愛下さい」
0167騎士と騎士 ◇BUgCrmZ/Lk
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2012/11/08(木) 00:36:55.84ID:nvboJMLX
この手の場面での定番である、自分が付かれたから休もうなどという、気の利いた事をこの武骨な男が言えるはずもなく。
フランツはただ、実直に自らの意思を述べた。実直で不器用な男である。

「……そうですね。申し訳ありません。少々気が逸っておりました」

だが、その裏表のない言葉が響いたのか、フランドールが折れた。
フランドールはフランツに感謝の意を表すと、腰かけに丁度良さ気な岩の上に腰かけ一息ついた。
少し緊張の糸を緩めると同時に、一瞬フラリとするような疲労が襲い掛かった。
そして自分が思っていた以上に気を張っていたことに気づく。

「出発は日の出の後に致しましょう。このような場所で申し訳ありませんが、それまではゆっくりとお休みください」
「承知いたしました。そうですね。それまでまだ時間がありますし、少しお話しましょうか。フランツ様」
「話、ですか?」

その言葉にフランツは眉をひそめる。
必要な事であれば自然とは口を付くが、改まって話をしようと言われると戸惑ってしまう。
彼にとっては女性を楽しませる話術など、あるいは戦闘などより難しい事なのかもしれない。

「ええ、私たちはまだお互いの事を知りません。一時とはいえ主従の誓いを交わした身。
 よろしければフランツ様のお話などを聴かせていただけませんか?」

そう言われては断るのも無粋である。
窮しながらもフランツは腹を決める。
当然、自分語りなど得意ではないが、女性の好む話を無軌道に話せと言われるよりかは、幾分かマシである。

「そうですね…………では、」

そしてフランツはポツリポツリと語り始めた。
友の話を。

■■■■■■■■

偽りの姫君、溝呂木桐子と騎士らしらぬ騎士カイン・シュタインがたどり着いたのは、市街の端にあるとあるホテルであった。
安ホテルと呼んで差支えないような飾り気のない施設だったが、贅沢を言っていられる状況でもない。
ここを一晩の宿と決め、まずは安全確認のためカインがホテル内へと先行した。

「姫様。一先ず待ち伏せやトラップと言った形跡はありませんでしたので、夜明けまではここで休むことに致しましょう」

一通り安全を確認したカインが戻ると、二人はいざという時のため脱出しやすい最下階の一室を陣取り、ようやくの休息に息を吐いた。
真っ先にベットに腰かけ身を休めた木桐子とは対照的に、カインは何かあればすぐに動ける入り口近くに起立する。
周囲にばれぬよう、明かりはつけていないため室内は薄暗く、これと言った娯楽もない。

「このまま休んでるだけってのも退屈ねぇ。
 そうだ、騎士様。何かお話しませんこと?」
0168騎士と騎士 ◇BUgCrmZ/Lk
垢版 |
2012/11/08(木) 00:39:05.73ID:nvboJMLX
唐突な木桐子の提案にカインはにこやかにに応じる。

「よろしいですよ。どのようなお話をお望みで?」
「そうねぇ。あなたの話なんてどうかしら?
 聞きたいわ。勇敢な騎士様のお話」

そう言って木桐子は誘うように笑う。
その笑みはあるいは妖艶であり、あるいは獲物を狙う蛇の様であった。

その言葉に互いの理解を深めようなどという真摯な気持ちはない。
少しでも相手の情報を知ることで、いざという時のための何らかの弱みを掴もうという魂胆である。

その意図に気づいてかいないのか、カインは変わらず笑顔で応じる。

「構いませんよ、と言っても私に誇れる武勇などそう多くはありませんので。
 つまらない話になるかもしれませんが、よろしければ私の昔話などを一つ」

そしてカインはスラスラと語り始める。
友の話を。

■■■■■■■■

カインがブリュデリッヒ家に従者として迎えられたのは13の時だった。

戻る宛ても住処もないカインはブリュデリッヒ卿の温情により屋敷の一室を与えられ、住み込みで小間使いとして働いていた。
そのためフランツとは同じ屋根の下で暮らしていたのだが、嫡男と小間使いでは立場が違いすぎるため、二人の接点などほとんどなかった。

彼らの関係が変化したのは、とある事件を切欠としていた。

それはカインがブリュデリッヒ家に住みついて1年が経とうという頃、他の使用人らと共にある一室の清掃を命じられた時の話だ。
その一室は他の部屋とは――少なくともカインが入室を許された部屋の中では――明らかに一線を画していた。
まず入室してすぐ目に入るのは壁際につりさげられたブリュデリッヒ家の家紋を模した巨大な旗である。
大理石で拵えられた床の上には、一般人には価値も計れないほどの豪華な絨毯が敷かれており。
壁際には厳かな鎧兜が立ち並び、調度品も一見してわかる一流品ばかりだ。
聞けば、この部屋は昨年、死去したブリュデリッヒ家の大祖父の部屋だという。
このような場所への侵入を許されるのは、着実に自らが信頼を勝ち得てきている証であると考え、周囲の心証をさらに高めるためカインは清掃に励んだ。

だが、その途中、カインはあるものに目を奪われ作業の手を止めた。
それは手のひらに収まるほどの小さな装飾だった。

それはブリュデリッヒ家の大祖父が先の戦乱での多くの武功を認められ陛下より賜ったという騎士の勲章。
その存在感は膨大であり。その絢爛豪華な装飾はさることながら、何よりカインの心をつかんだのはその在り方。
これこそが武力と権力と名誉の象徴。
カインの憧れる全てである。
その象徴に、彼の心は強く魅かれた。
0169騎士と騎士 ◇BUgCrmZ/Lk
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2012/11/08(木) 00:41:36.60ID:nvboJMLX
その夜。カインは高ぶり抑えきれず、こっそりと大祖父の部屋へと忍び込んだ。
くすね取り自分のモノにするなどという大それたことは考えていない。
そんなことをすればどうなるかくらいは理解している。
まずいことだと理解しつつも、だた、どうしても一度手に取ってみたかったのだ。

掃除の際に最後に閉めておくと言って鍵は預かっていた。
そっと音を立てず鍵を開け、部屋の中に忍び込む。
当然中には誰もいない。
カインは吸い込まれるように勲章の前まで移動すると、そっとそれに手をかける。
それを手に取った瞬間、カインは言いようのない高揚感に包まれた。

それは人に、国に、全てに認められた証である。
己の存在を、己の武功を、己の名誉を。
他人のモノではなく、己の力でこの勲章を手に入れる事。
これこそが虐げられ、侮蔑されてつづけた男の、己の野心の到達点なのだと、この瞬間彼はそう確信した。

陶酔するカイン。
それを現実に引き戻すように。
ガチャリと、背後から扉が開く音が聞こえた。

「ッ!?」

カインが振り返ると、そこには慌てて扉から立ち去る小さな影が見えた。
影は一瞬でその場から立ち去ったため、その全容は把握できなかったが、その影が誰のモノであるかはすぐにわかった。
この屋敷に子供はカインとフランツしかいない。つまりあの小さな影はフランツのモノだ。
おそらく、夜中に部屋を抜け出したカインを偶然見つけ、何をしているのか気になりその後をつけていたのだろう。
尾行への警戒を怠った己の不覚に舌を打ちそうになるが、それよりも重大な事実に気付きカインの全身から血の気が引いた。

先ほどまで手に持っていた勲章がない。

慌てて地面を見れば、大理石の床に直撃した勲章は、装飾の一部が砕け欠け落ちてしまっていた。
勢いよく振り向いた拍子に落としてしまったようだ。

フランツに気付かなかった事。
鍵を閉め忘れた事。
目撃されてしまった事。
いや、それ以前に、そもそもらしからぬこんな愚行を犯した事。
いくつもの不覚が積み重なり今の最悪を引き起こした。
取り繕うこともできない、大失態だ。

終わった。何もかも。
絶望の中カインはそう思った。
失意に包まれながら、最低限の体裁を整え大祖父の部屋を後にした。

ブリュデリッヒ家の家宝ともよんでいいモノの欠損だ。
すぐに使用人の誰かが気づくだろう。
勲章を壊した瞬間をフランツが見ていたとも思えないが状況からして、追及されるのは間違いないだろう。
逃げ出してしまおうか、そう思えど行くあてなどない。

いつ呼び出され、首を切られるのか。
それから数日は、生きた心地がしなかった。
死刑を待つ死刑囚の気分だった。
0170騎士と騎士 ◇BUgCrmZ/Lk
垢版 |
2012/11/08(木) 00:45:32.92ID:nvboJMLX
だが、意外なことに数日たってもカインに何も御咎めが下ることはなかった。

激動する心中を隠しながらも日常は続く。
小間使いである彼に暇はなく、業務をこなしているなかで、数日ぶりにカインはフランツの姿を見ることとなった。

廊下で偶然すれ違う瞬間、カインが見たのは顔を腫らしたフランツの姿だった。

カインはその事情をそれとなく噂好きのメイドに聞いたところ。
大祖父の賜った大事な騎士勲章を、夜中に大祖父の部屋に忍び込んだフランツが誤って壊してしまったという。
あの顔は、その話に激昂した現当主であるブリュデリッヒ卿によるものであり、フランツはここ数日、謹慎と称して部屋に閉じ込められていたという話だ。
品行方正なお坊ちゃんがなぜそんなことをしたのか、などと噂好きのメイドはその後もいろいろとまくしたてていたが、カインの耳にはもはやそんな声は聞こえてはいなかった。

従者見習いという立場のカインが家宝に近い勲章を壊したとなれば、すぐさま屋敷を追放され路頭に迷うだろう。
最悪、この事態に当主であるブリュデリッヒ卿が激昂すれば、小間使いなど命を落としてもおかしくない。

だが、勲章を壊したのが嫡男であるフランツであったという事ならば話は別だ。
追放されることはまずないし、殺されることもあり得ない。
大目玉をくらうだけで済むだけの話だ。

その天秤を顧みれば、フランツがカインを庇うのは当然の事である。
少なくともフランツ自身は何の疑問もなくそう思っていた。

だが、カインの中では違った。
その時カインが感じた感情は一言で言い表せないほどに複雑なものだった。

当然のようにその選択を選ぶ、選べるフランツの環境、人間性への嫉妬。
最大級の弱みを握られた恐怖。
単純に助かったという安堵。
何を狙っているのかという猜疑心。
なにより、この行為を恩に着せるでもなく、何事もなくふるまうフランツの態度は完全に理解不能な代物であった。

その直後の話だった。
フランツが此度起こした愚行に対する罰としてお目付け役が付くこととなり。
年が近かったこともあるだろう、その役目を命じられたのはカインだった。
この命とともにカインは正式な従者として迎えられ、その地位を高めた。

カインの壊した勲章の罰としてフランツにお目付け役としてカインがつけられる。
なんとも皮肉な話だった。

あの日から二人の関係は変化した。
良くも悪くも、劇的に。

■■■■■■■■

「――――それから今日この日までカインは私を支え続けてくれました。
 彼は感謝して若し足りないほどの恩がある」
0171騎士と騎士 ◇BUgCrmZ/Lk
垢版 |
2012/11/08(木) 00:47:33.94ID:nvboJMLX
フランドールがフランツから聞いたのは、彼の従者であり騎士でもあるカインという男との昔話だった。
フランツの言葉の端々から、この場にいないカインへの信頼を感じとり、フランドールは笑みをこぼす。

「カイン様というのは、どのような方なのですか?」

フランツがこれほどまでに信頼を寄せる、カインという男がどのような男なのか。
この場にいないカインへの興味が湧き、フランドールはそう尋ねた。

「ハッキリとした性格故、誤解されることも少なからずありましたが。
 私などは違い何事も器用にこなす、とにかく優秀な男でした」

フランツはそう素直に友を評した。
己の持たぬ器用さを持ち合わせたカインは、憧れの対象だった。

フランツは少しだけ照れの様な表情を浮かべた後。
噛みしめるように口を開いた。

「そして、」

■■■■■■■■

「それで、それからその次期当主って子と友情を育んだって訳ね。素敵な美談ね」

話を聴き終え、木桐子はそう頷いた。
本心からではない。
水商売で鳴らした耳触りのいいただの相槌だ。

「ええ、屋敷に年の近い者がおりませんでしたので、それからは自然と。
 あれからもフランツには助けてもらってばかりで、彼には感謝してもしきれない」

嘘である。
もちろん野盗紛いの事をしていた過去はぼかしてあるし、その他の細かい部分も適当に脚色している。
何よりカイン自身がフランツへ向ける感情は、単純に友情とは言い難い。
この話の意図は、フランツを己の弱点として仕立てことだった。

「どんな人なの、そのフランツって人は?」

興味を持ったのか木桐子がフランツの話題に喰いついてきた。

「そうですね。私と違い、実直かつ誠実な真面目な男でした。
 家柄、実力、人柄どれを取っても非の打ちどころのない騎士の鑑の様な男ですよ」

流れるようにカインは友褒め称える。
心からの本心とはいかないが、客観的な事実としてカインも認めている。

そしてカインは注意しなければ気付かぬような一瞬の間の後。
確かめるようにように口を開く。

「そして、」
0172騎士と騎士 ◇BUgCrmZ/Lk
垢版 |
2012/11/08(木) 00:50:54.49ID:nvboJMLX
■■■■■■■■

『彼は私にないモノを持った、掛替えのない友ですよ』

持つ者と持たざる者。
器用な男と不器用な男。
それが互いに共通する真実だった。

【一日目・深夜〜早朝/C-2 山道】
【フランドール・オクティル】
【状態】健康
【装備】なし
【スキル】なし
【所持品】基本支給品、不明スキルカード、不明支給品1〜2
【思考】
0.夜明けまで休息をとる
1.すべての悲劇を止める
2.ヨグスにしかるべき裁きを与える

【フランツ・O・ブリュデリッヒ】
【状態】健康
【装備】なし
【スキル】なし
【所持品】基本支給品、不明スキルカード、不明支給品1〜2
【思考】
0.夜明けまで休息をとる
1.フランドールに忠誠を誓い、その理想を叶える

【一日目・深夜〜早朝/F-5 市街地】
【カイン・シュタイン】
【状態】健康
【装備】スタンロッド
【スキル】『その歌をもて速やかに殺れ』
【所持品】基本支給品 、不明支給品0〜1
【思考】
0.夜明けまで休息をとる
1.トウコと共に行動をし、情勢を見る。

※スタンロッド
 長さ60センチほどの金属製のロッド。スイッチを入れるとスタンガンの様な電撃を発し、触れた者を気絶させうる効果がある。
 数回使うと電気切れして、ただの固い鉄の棒同然になる。

【溝呂木桐子】
【状態】健康
【装備】魔王のドレス
【スキル】不明カード
【所持品】基本支給品 、液体の入った小瓶
【思考】
0.夜明けまで休息をとる
1.カインと共に行動し、守って貰う。

※魔王のドレス
 魔王が女性の姿をするときに身につけるドレスの内一つ。非常にエロスなデザイン。
 防御効果など何らかの魔法効果が付与されている。

※液体の入った小瓶
 10p程度の小瓶に、何かの液体が入っている。説明書きがあったため、桐子はその効果が何かは知っている。
0173創る名無しに見る名無し
垢版 |
2012/11/08(木) 22:04:16.82ID:riv/6NbI
投下乙!
うーん、この2通りの騎士コンビ。
それぞれがそれぞれを補い合う感じだったんだろうなあと、思ったり。
0174創る名無しに見る名無し
垢版 |
2012/11/13(火) 01:14:31.91ID:x/PgsBrY
ここに来て投下だと……
騎士コンビは、果たしてどうなるのかなあ。
ロワで騎士とか、嫌な予感しかしないですわw
0177目まぐるしく回る事態 ◆42Xd0tQxv2
垢版 |
2012/11/13(火) 01:15:24.88ID:F65I4UDd
魔法少女。
一言で言ってしまえば、ファンタジーの生き物だ。
どのあたりが魔法少女なのかは、魔法少女ごとに異なる。
その中でも、めぐるの能力は異色の方だった。
私が思い描いていた、魔法少女とは遠くかけ離れた能力。
自分がもしあの能力だったら、きっと絶望していたと思う。
それでも、そんな能力を手に入れさせられても。
めぐるは、いつも笑っていた。



二人は相談の結果人が集まりそうな場所を目指す、ということを決めた。
地図との照らし合わせで、一番近かったランドマークが南の学校だったため、そこに向かうことにしたのだ。
歩きながら、二人は会話を紡いでいく。
日常生活のこと、好きな食べ物のこと、大切な友人のこと。
他愛もない会話を挟みながら、笑い、怒り、悲しみながら歩き続ける。
ここが、殺し合いの現場であることを忘れようとしているかのように。
「ねえ」
そんな会話の途中、ふと智美がさくらを呼び止める。
「やっぱ、言っとく」
さくらが振向いたとき、その顔は少し強張っていた。
「めぐるの能力について……」

聖澤めぐるの能力。
それは血液を代償に力を手に入れるというシンプルかつわかりやすい能力だった。
血液を消費すれば消費するほど、強大な力を手に入れることが出来る。
腕一本をカラカラにするほどの血液を消費すれば、素手の一振りでそこらの人間は即死させられるほどだ。
病院生活の聖澤めぐるが健常な肉体を手に入れることが出来たのは、この能力をじわじわ使っていたお陰だ。
但し、そのまま生活し続ければ血液が枯渇して死んでしまう。
だから戦いの場に身を投じ、血液を浴びて染み込ませる事によって、自身の血液を消費しないようにしていた。
彼女が魔法少女としての武器に双剣を選んだのは、近接戦闘を必要とし、大量の血を浴びることが出来るから。
聖澤めぐるは普通の生活を守るために、戦い続けていたのだ。

「嘘……」
思わず漏れた言葉は、否定。
「ホントだよ」
否定を、否定する。
「あのヨグスってのが、どーやってめぐるとアタシの力を抜き出したのかは知らない。
 けれど、本当にめぐるの力がそのままだったとするなら……」
一息ついて、智美はさくらへ警告する。
「もう一度言う、頼むから無理だけはすんな」
無言。
警告はさくらの心に届いたのかどうか、智美は知ることは出来なかった。
学校は既に、二人の目の前まで近づいていた。
0179目まぐるしく回る事態 ◆42Xd0tQxv2
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2012/11/13(火) 01:15:41.44ID:F65I4UDd
「琥珀さん! 見てくださいよコレ! 発電所っすよ! マイクロ波でウニョニョニョ〜ンっすよ!?」
バカバカアンドバカ、バカにバカを上塗りしたようなキングオブバカの発言が脳を揺さぶる。
考えるだけでも頭が痛くなってくる、やはりまともに取り合わないのが正解だったか。
バカの思いつきのような「発電所に行きましょう!」という発言に付き合った結果がコレだ。
バカは大騒ぎ、電波シスターは何考えてるのかわからない。
先が思いやられる、いや既にもうどうしようもないのかもしれないが。
バカと電波を放っておき、巨大な画面に記された数々の情報を頭に入れていく。
マイクロ波による発電、明らかにオーバーテクノロジーである存在による膨大な発電量。
この会場の電気を全て賄えるほどの技術が、あんな小さなパラボラアンテナで実現できるというのか。
「まあ、宇宙人の技術だからムリもクソもないか……」
あの二人に聞こえないようにぼやく。
続けて操作盤をいじくり、様々な項目を閲覧してみる。
そのうちの一つ、監視カメラの映像を見ていたときだった。
何故だか分からないけれど引き込まれるような感覚に襲われ、その画面に釘付けになっていた。
何か嫌な予感がする、なぜかその画面から目を離すことが出来ない。
「璃乃ちゃん! パラボラ見に行こうぜ! パラボラ!」
その時、バカの声が頭に響く。
パラボラの映像を見ていた事を察してか、いやただの好奇心か。
電波女は既に言いくるめられ、あのバカについていくようだ。
流石に一人取り残されるのも面倒だと思ったので、私も渋々ついていくことにした。

それが、あんなことになるなんてこの時は全く考えていなかった。



少しずつ、視界が戻る。
足下にあるのは一人分の死体。
特に興味を引かれることなく、その上に浮き上がったスキルカードを体に取り込む。
技能は大いに越したことはない、より多くの技能があれば、殺人を容易にすることができる。
この場の全てを殺戮し尽くすと決めた以上、有利に働く物は全て奪い去る。
ただ、それだけ。
その時、耳に二人分の足音が聞こえてきた。
特に抱く感情はない。
生きている奴がいるのならば、殺すだけ。
0181目まぐるしく回る事態 ◆42Xd0tQxv2
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2012/11/13(火) 01:16:26.14ID:F65I4UDd
自信がなかった。
戦いの場に立ったことなんて当然あるわけもなく、ましてや人殺しの経験なんてもってのほかだった。
ああは言ってみたものの、やはりいざとなった時に彼女を守れるかどうかは正直言って不安である。
そもそも、戦いとはどうすればいいのか?
人を殺すとは、どういうことなのか?
今まで考えたこともなかったことが、頭の中でグルグル回って止まらない。
気がつけばただ足を動かすだけで、目の前の光景なんてまったく見ていなかった。
だから、反応できなかった。
「さくら! 危ない!」
その声に反応して意識を向けたとき、全身を貫くような痛みに襲われた。
「クソッたれ!!」
襲い掛かった雷をすんでの所で避け、拳銃を数発放ちながらさくらを抱えて脇に隠れる。
遠距離から放たれた光速の雷は、一般人のさくらには到底避けられない物だった。
自分は殺気を感じ取り先に一歩引いていたが、さくらはその強烈な雷に焼かれてしまった。
白と水色を基調としたドレスが薄く焼け焦げ、体中からは煙が立ち登っている。
「とも、み、ちゃ……」
「喋るな!」
声が弱弱しくなっている上、目に見えて衰弱しているのが分かる。
雷を放ってきた相手がこちらに向かっていることは分かりきっている。
拳銃を数発打ち込んだところで、どうにかできているとは到底思えない。
危機は迫っている、それは分かっているのに答えが見えない。
この状況ではさくらは戦うことは出来ない。
しかし自分の武器は拳銃のみだ。
雷を操るのが相手なら、圧倒的に分が悪すぎる。
この先に待ち受けるのは、二人とも死ぬ未来しかないというのか。
「あの、ね」
さくらが言葉を紡ぎ続ける。
今にも死んでしまいそうなその声は本当に弱弱しく。
それでも、智美の耳に届き続ける。
「めぐる、ちゃんに、よろ、しく」
その一言の後、さくらは笑った。

ああ、死ぬんだな。
自分のことは自分が一番よく分かっている。
体から力が抜けていくのが何よりの証拠だ。
いろいろ考えたが、やはり自分に戦闘なんて出来るわけも無い。
このまま起き上がったとしても、自分は微塵の役にも立ちはしないだろう。
いくら戦闘経験があって手には拳銃があるとはいえ、智美ちゃんがあの雷に一人で対抗するのははっきりいってムリだろう。
ではどうすればいいか、それを考えたときに智美の言葉が頭を過ぎった。
聖澤めぐるの能力は、血液を力に変える能力。
ならば、この身に流れる血を全て力に変えれば。
少なくとも智美ちゃんだけは生き残れるのではないか。
スキルカードは装着者が死ねば、その遺体の上に現れる。
ならば、やるしかない。
そうすれば、彼女は生き残れるのだから。
彼女は、この場所でやることがある。
自分もやることはあるが、この状況をどうにかできるのは彼女しかいない。
だから、彼女に全てを託す。
お父さん、お母さん。
先立つ不幸をお許し下さい。
ごめんなさい。
智美ちゃんへ。
絶対めぐるちゃんを見つけて、殺し合いを止めてください。
任せっきりになるけど、ごめんなさい。

ああ。
死にたく、ない、なあ……。
0183目まぐるしく回る事態 ◆42Xd0tQxv2
垢版 |
2012/11/13(火) 01:16:51.50ID:F65I4UDd
無感情。
目に映った二人の少女に対し、特に思うことも無く雷を放っていく。
一人が素早く反応し、此方に向けて銃弾を打ち込んできたのは意外だったが、特に驚くことも無い。
一歩ずつ確実に歩み寄っていく、命を確実に刈り取るために。
一歩ずつ、一歩ずつ、近づいていく。
その途中で、銃を撃ったほうの少女が現れる。
雷を浴びた方の少女のような衣装を纏いながら。
「テメぇだけは……」
少女が息をすうっと吸い込む。
「ぶっ飛ばす!!」
その一言と共に、少女は一瞬で自分の目前に現れた。
超速で振りぬかれるその拳に、全く反応することは出来なかった。
左頬に突き刺さるその力が、全身をふわりと浮き上がらせる。
そして自分の体が、まるでギャグ漫画のように。

空を舞った。

「……馬鹿野郎」
襲撃者の男を一撃で吹き飛ばした後、めぐるの衣装を纏った智美は小さく呟く。
さくらはあの一言の後、眠るように死に果てて行った。
浮かび上がった一枚のスキルカードと、青ざめた死体を見て全てを察する。
その身に宿る全ての血液を、力へと変換したことを。
「馬鹿ヤロォオオオオオオオオオオオ!!」
そのお陰でこの窮地を切り抜けることは出来た。
だが、その代償はあまりにも大きすぎた。
能力が無い自分なんて、こんなにも無力で、弱くて。
どうしようもないのだろうか。
「めぐる……早く逢いたいよ……」
親友の名を、この能力の本来の持ち主の名前を小さく呟く。
涙が一粒、ぽとりと落ちた。
0184目まぐるしく回る事態 ◆42Xd0tQxv2
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2012/11/13(火) 01:17:08.06ID:F65I4UDd
管理部から少し離れた場所にある小型のパラボラアンテナ。
そこに近づくにつれてバカのテンションはうなぎのぼりに上がっていった。
バカっぽい単語の一つ一つが、イライラを加速させていく。
そして、ようやくその直下に辿り着いた時。
一人の人間が、超速でアンテナに突っ込んできたのだ。
「なッ……!?」
驚いたのはそれだけではない。
その男の全身から雷が発せられ、パラボラアンテナにその光が密集され、一筋の光となって男に打ち出された。
パラボラからの雷を、さらに自身の雷で相殺する。
そんなありえない光景に意識を奪われていた。
超人のような男が、空から舞い降りてくる。
「す、すっげ」
そこまで言いかけたバカの首が、瞬時に飛ぶ。
熟練された者の、疑いようの無い動き。
それを認識したとき、自分の視界が宙を舞う。
ああ、私も首を刎ねられたのか。
そう思ったと同時に、意識が暗転した。

「あなた、天罰が下りますよ」
一人残された愛子は、突然の襲撃者にその一言を放つ。
瞬時に二人を肉塊にして見せた男に、恐れの一つすら抱かずに。
「関係ないな」
男も、勿論恐怖しない。
恐怖する理由が無い。
「神なんざ、居る訳が無いからな」
その一言と共に雷を放ち、まるで日常生活のように一人の女子大生の体を真っ黒の炭へと変えていく。
天罰だろうがなんだろうが、恐れる物は何も無い。
自分に立ち向かう存在がいるのならば、殺すだけだから。

次の獲物を求めて、オーヴァーは歩き出す。
0186目まぐるしく回る事態 ◆42Xd0tQxv2
垢版 |
2012/11/13(火) 01:17:34.53ID:F65I4UDd
【龍造寺さくら 死亡】
【花緒璃乃 死亡】
【白井慶一 死亡】
【琥珀愛子 死亡】

【一日目・早朝/E-2学校】
【安田智美】
【状態】健康
【装備】小型拳銃
【スキル】ブレインイーター、『ある魔法少女の魔法能力(めぐる)』
【所持品】基本支給品、空のカード(残り9枚)、不明支給品1〜3(さくら)
【思考】
基本:めぐるととっとと会って、早くこの殺し合いをぶっ潰す
1.……バカ
※どの小型拳銃は不明。残弾も不明ですので、後の書き手様に任せまする。
※双剣はめぐるの魔法少女としての能力で生成された物です

【一日目・早朝/E-7・発電所、パラボラアンテナ傍】
【オーヴァー】
【状態】左頬にダメージ
【装備】サンダーソード、ヘルメット
【スキル】『剣技』『平賀源内のエレキテル』『雷剣士』『魔弾の射手』『<<]]巻き戻し』『光あれ!』『復讐するは我にあり』
【所持品】基本支給品、デザートイーグル、金属バット アンドロメダ星マジカル消臭スプレー、金槌、不明支給品×0〜1(愛子)
【思考】
1.この場にいる全てを皆殺し
2.最後にヨグスも殺す

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以上で投下終了です。
0189 ◆yXlaa6e0uc
垢版 |
2012/11/13(火) 22:24:07.29ID:egd8DAsY
短いですが、投下します
0190さよなら、私  ◆yXlaa6e0uc
垢版 |
2012/11/13(火) 22:24:49.91ID:egd8DAsY
歩く。
歩く。
今にも倒れそうになりながら、歩く。

歩かなくては。
歩かないと。
ここで倒れるわけにはいかない。
せめて、どこかの岩陰に隠れなければ。

少し前までの自分の判断を呪う。

こんな崖まで深追いしなければ。
あの二人が山に逃げ込んだ時に諦めていれば。
そもそもあの二人を襲っていなければ。
最初からこの殺し合いなんかに乗らなければ……

「……っ!」

一瞬、頭に浮かんだ後悔に戦慄する。
私は一体何を考えているんだろう。
あの二人を死なせた私が、後悔するなんて許されるはずはないんだ。

もう、正義のヒーローには戻れない。
日常に戻る資格なんて、ない。

だから私はこのカードを使う。



「【エネルギードレイン】」



少し前に同じ能力を持った怪人と戦ったことを思い出す。
愛する人を守るためにすべてを壊そうとした悲しい人だった。
あの人は命は落としたけれど、大切な人は守り抜いた。

これは私の決意だ。
あの人と同じように大切な人を守るためにすべてを殺す。

これは私への罰だ。
一瞬でも人の命を奪ったことを後悔してしまった私への罰。
0191さよなら、私  ◆yXlaa6e0uc
垢版 |
2012/11/13(火) 22:26:25.39ID:IHoe+6Az
もう手をつなぐことはできない。
だけど、構わない。

私が後に戻ることはない。
私が後を振り返ることはない。
私が止まることは許されない。


私はこれから人を利用し、裏切り、殺すだろう。

だから、最後に一言弱音を吐いて終わりにしよう。

殺した二人へか片嶌さんへかそれとも昔の自分自身へか、
誰に向けたものなのかは自分でもわからない。
でもこれは私の、椎名祢音の最後の言葉。


「ごめん…なさい」


自分の中でナニカが変わるった、そんな音が聞こえた気がした。


【一日目・黎明/C−3 山道】
【椎名祢音】
【状態】疲労(極大)、精神摩耗
【装備】ダイバーズナイフ
【スキル】『変身』『エネルギードレイン』
【所持品】基本支給品×2、不明支給品×0〜2(確認済み、武器はなし)
【思考】
1:????
2:片嶌俊介以外全員殺す
3:しばらく休む。場合によっては同盟の結成や保護対象として演技をすることも視野に。
0193創る名無しに見る名無し
垢版 |
2012/11/15(木) 01:06:25.02ID:SnpL/R4s
投下乙!

うーん、もう戻れない決意ってのはこう、何回見てもツライっすなあ。
望みが叶うといいけれど……
0195創る名無しに見る名無し
垢版 |
2012/11/23(金) 10:06:16.23ID:RK1dTfxb
久々に来たら来てたage
智美ちゃんこれ精神やられちゃうじゃないですかーやだーwwwwww
0196 ◆IjfUSUNsIR9f
垢版 |
2012/11/25(日) 09:28:57.28ID:Cg9ab6Zd
愛澤、片嶌、篠田を予約
0197創る名無しに見る名無し
垢版 |
2012/11/25(日) 18:04:12.63ID:HmaFz5UI
http://junko717.exblog.jp/
魔法をかけてあげよう、小便小僧に・・・
僕に魔法をかけて、小便小僧に・・・
この野郎、小便はかけんなよ・・・
0199創る名無しに見る名無し
垢版 |
2012/11/29(木) 00:23:50.40ID:FdSgMDrF
wktk
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